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特開2022-161514空気入りタイヤの製造方法及び製造装置
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  • 特開-空気入りタイヤの製造方法及び製造装置 図1
  • 特開-空気入りタイヤの製造方法及び製造装置 図2
  • 特開-空気入りタイヤの製造方法及び製造装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161514
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20221014BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20221014BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20221014BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066395
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 集平
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AH20
4F202AP05
4F202AR20
4F202CA21
4F202CB01
4F202CY15
4F203AA45
4F203AH20
4F203AP05
4F203AR20
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DC28
4F203DK08
4F203DK13
4F203DK15
(57)【要約】
【課題】 空気入りタイヤの寸法及び性能を安定化することを可能にした空気入りタイヤの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】 金型内で加硫された空気入りタイヤTに対してポストキュアインフレーションを行うにあたって、ポストキュアインフレーション中に空気入りタイヤTの外表面を外部冷却装置18により冷却する一方で、空気入りタイヤTの内表面温度を温度センサ21により測定し、その内表面温度に基づいて制御部22が外部冷却装置18の冷却能力を制御する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内で加硫された空気入りタイヤに対してポストキュアインフレーションを行うにあたって、前記ポストキュアインフレーション中に前記空気入りタイヤの外表面を冷却する一方で、前記空気入りタイヤの内表面温度を測定し、その内表面温度に基づいて前記空気入りタイヤの外表面に対する冷却能力を制御することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記ポストキュアインフレーション中の前記空気入りタイヤの内表面温度について予め規定された標準冷却モデルと前記ポストキュアインフレーション中に測定される前記内表面温度の実測値との差異を演算し、その差異が小さくなるように前記冷却能力を制御することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
空気入りタイヤの一対のビード部に嵌合する一対のリム板と、前記リム板を通して前記空気入りタイヤ内に加圧媒体を供給する供給路と、前記リム板を通して前記空気入りタイヤ内の加圧媒体を排出する排出路と、前記空気入りタイヤの外表面を冷却する外部冷却装置と、前記空気入りタイヤの内表面温度を測定する温度センサと、前記温度センサにより測定される内表面温度に基づいて前記外部冷却装置の冷却能力を制御する制御部とを備えることを特徴とする空気入りタイヤの製造装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ポストキュアインフレーション中の前記空気入りタイヤの内表面温度について予め規定された標準冷却モデルと前記ポストキュアインフレーション中に測定される前記内表面温度の実測値との差異を演算し、その差異が小さくなるように外部冷却装置の冷却能力を制御することを特徴とする請求項3に記載の空気入りタイヤの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポストキュアインフレーション(PCI)を行う空気入りタイヤの製造方法及び製造装置に関し、更に詳しくは、空気入りタイヤの寸法及び性能を安定化することを可能にした空気入りタイヤの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機繊維コードからなるカーカス層を備えた空気入りタイヤの製造工程において、空気入りタイヤを加硫機の金型内で加硫した後、金型から取り外された加硫済みの空気入りタイヤに内圧を充填した状態で該空気入りタイヤを自然冷却するポストキュアインフレーションが一般的に行われている(例えば、特許文献1参照)。空気入りタイヤは加硫直後においても依然として高温であり、カーカスコードの熱収縮による寸法変化を生じる傾向があるため、ポストキュアインフレーションを行うことにより、空気入りタイヤの寸法安定性やユニフォミティを改善することができる。
【0003】
従来、ポストキュアインフレーションは大気中において予め決められた時間で行われている。しかしながら、加硫機中の温度の変動のみならず、周囲の設備の稼働状況や季節・時間帯による外気温の変動により、ポストキュアインフレーション中のタイヤ温度は変動する。従って、カーカスコードの熱収縮による寸法変動が問題にならなくなるまでの時間はタイヤ1本毎に異なる。そのため、ポストキュアインフレーションの時間を固定した場合、ポストキュアインフレーション終了時のタイヤ温度にばらつきが生じ、それが寸法にばらつきを生じさせる要因となる。また、周辺環境に起因してタイヤの熱履歴が変動した場合、タイヤ材料の加硫度がばらつき、製品の物性が変動する要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-273095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、空気入りタイヤの寸法及び性能を安定化することを可能にした空気入りタイヤの製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤの製造方法は、金型内で加硫された空気入りタイヤに対してポストキュアインフレーションを行うにあたって、前記ポストキュアインフレーション中に前記空気入りタイヤの外表面を冷却する一方で、前記空気入りタイヤの内表面温度を測定し、その内表面温度に基づいて前記空気入りタイヤの外表面に対する冷却能力を制御することを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の空気入りタイヤの製造装置は、空気入りタイヤの一対のビード部に嵌合する一対のリム板と、前記リム板を通して前記空気入りタイヤ内に加圧媒体を供給する供給路と、前記リム板を通して前記空気入りタイヤ内の加圧媒体を排出する排出路と、前記空気入りタイヤの外表面を冷却する外部冷却装置と、前記空気入りタイヤの内表面温度を測定する温度センサと、前記温度センサにより測定される内表面温度に基づいて前記外部冷却装置の冷却能力を制御する制御部とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の空気入りタイヤの製造方法では、ポストキュアインフレーション中に空気入りタイヤの外表面を冷却する一方で、空気入りタイヤの内表面温度を測定し、その内表面温度に基づいて空気入りタイヤの外表面に対する冷却能力を制御するので、加硫機中の温度の変動、周囲の設備の稼働状況や季節・時間帯による外気温の変動に拘わらず、ポストキュアインフレーション終了時のタイヤ温度の変動幅を小さくし、空気入りタイヤの寸法及び性能を安定化することができる。特に、カーカス層は一般的にタイヤ内表面に近い位置に配置されるので、ポストキュアインフレーションにおける空気入りタイヤの外表面に対する冷却能力を制御するための指標として内表面温度を利用することにより、寸法安定性及び性能安定性の改善効果を高めることができる。
【0009】
また、本発明の空気入りタイヤの製造装置では、従来のポストキュアインフレーションの装置構成に加えて、空気入りタイヤの外表面を冷却する外部冷却装置と、空気入りタイヤの内表面温度を測定する温度センサと、温度センサにより測定される内表面温度に基づいて外部冷却装置の冷却能力を制御する制御部とを備えることにより、上述の空気入りタイヤの製造方法を実施することが可能となる。
【0010】
本発明の空気入りタイヤの製造方法において、ポストキュアインフレーション中の空気入りタイヤの内表面温度について予め規定された標準冷却モデルとポストキュアインフレーション中に測定される内表面温度の実測値との差異を演算し、その差異が小さくなるように冷却能力を制御することが好ましい。これにより、ポストキュアインフレーション終了時におけるタイヤ温度を任意の温度に到達させ、空気入りタイヤの寸法及び性能を最適化することができる。
【0011】
このような製造方法を実施するために、本発明の空気入りタイヤの製造装置において、制御部は、ポストキュアインフレーション中の空気入りタイヤの内表面温度について予め規定された標準冷却モデルとポストキュアインフレーション中に測定される内表面温度の実測値との差異を演算し、その差異が小さくなるように外部冷却装置の冷却能力を制御することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの製造装置(ポストキュアインフレーション装置)を示す子午線断面図である。
図2図1の空気入りタイヤの製造装置の制御系を示す図である。
図3】空気入りタイヤの製造方法におけるポストキュアインフレーションの時間とタイヤ内表面温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの製造装置を示し、図2はその制御系を示すものである。
【0014】
図1に示すように、この空気入りタイヤの製造装置は、タイヤ中心軸が鉛直方向になるように配置された空気入りタイヤTの一対のビード部に嵌合する一対のリム板1,2と、これらリム板1,2を鉛直方向に駆動する支持軸3,4と、下側のリム板1を通して空気入りタイヤT内に加圧媒体Miを供給する供給路5と、上側のリム板2を通して空気入りタイヤT内の加圧媒体Miを排出する排出路6とを備えている。空気入りタイヤTはその中心軸が水平方向となるように配置されていても良い。リム板1,2は空気入りタイヤTのビード部に対して嵌合することで空気入りタイヤTの空洞部を閉塞するように構成されている。供給路5及び排出路6はリム板1,2のいずれの側に形成されていても良く、共通の流路であっても良い。加圧媒体Miとしては、空気を使用することが好ましいが、他の気体又は液体を使用することも可能である。
【0015】
リム板1,2で支持された空気入りタイヤTの上方には水平方向に延長する支持梁11が配設され、該支持梁11から垂下するように複数本の支持棒12が配設されている。支持棒12にはブラケット13を介して2本の環状パイプ14が取り付けられている。各環状パイプ14は空気入りタイヤTを取り囲むように延在し、その内周側に複数のエア噴射孔15を備えている。環状パイプ14には配管16を介して冷却媒体供給源17(図2参照)に接続されており、ポストキュアインフレーション中にエア噴射孔15から空気入りタイヤTの外表面に向かって冷却媒体Moを噴射するようになっている。これら環状パイプ14、エア噴射孔15、配管16及び冷却媒体供給源17が外部冷却装置18を構成している。冷却媒体供給源17から供給される冷却媒体Moとしては、空気を使用することが好ましいが、他の気体又は液体を使用することも可能である。
【0016】
また、上側のリム板2には空気入りタイヤTの内表面温度を測定する2つの温度センサ21が配設され、これら温度センサ21により測定される内表面温度が制御部22に入力されるようになっている。温度センサ21としては、赤外線放射温度計に代表される非接触式の温度センサを用いることが好ましいが、接触式の温度センサを使用することも可能である。また、温度センサ21は、空気入りタイヤTの両ショルダー部に対応する2つの位置で内表面温度を測定するように配設されているが、内表面温度の測定個所は特に限定されるものではなく、トレッド部やサイドウォール部やビード部の内表面温度を指標とすることができる。
【0017】
図2に示すように、制御部22は、2つの温度センサ21により測定される内表面温度(例えば、平均値)に基づいて外部冷却装置18の冷却能力(例えば、冷却媒体供給源17の駆動力)を制御するように構成されている。
【0018】
次に、上述した空気入りタイヤの製造装置を用いて空気入りタイヤTを製造する方法について説明する。先ず、不図示の加硫機において空気入りタイヤTを加硫した後、その加硫機の金型から取り外された加硫済みの空気入りタイヤTをポストキュアインフレーション工程に供する。つまり、図1に示すように、一対のリム板1,2を空気入りタイヤTの一対のビード部に嵌合させ、排出路6を閉止した状態で供給路5から空気入りタイヤT内に加圧媒体Miを供給する。その一方で、冷却装置18を構成する環状パイプ14のエア噴射孔15から空気入りタイヤTの外表面に向かって冷却媒体Moを噴射する。このようにして空気入りタイヤTに対するポストキュアインフレーションを開始する。
【0019】
ポストキュアインフレーション工程においては、空気入りタイヤTの外表面を冷却しながら空気入りタイヤTの内表面温度を温度センサ21により測定する。そして、温度センサ21により測定される内表面温度に基づいて制御部22が外部冷却装置18の冷却能力を制御する。より具体的には、ポストキュアインフレーション中の空気入りタイヤTの内表面温度が想定範囲内にある場合は外部冷却装置18の冷却能力を標準レベルとするが、ポストキュアインフレーション中の空気入りタイヤTの内表面温度が想定範囲よりも高いと判断される場合は外部冷却装置18の冷却能力を高くし、ポストキュアインフレーション中の空気入りタイヤTの内表面温度が想定範囲よりも低い判断される場合は外部冷却装置18の冷却能力を低くする。このようにしてポストキュアインフレーションを実施し、予め設定された時間が経過した後、ポストキュアインフレーションを終了させる。即ち、空気入りタイヤT内の加圧媒体Miを排出路6から排出し、一対のリム板1,2を空気入りタイヤTのビード部から離脱させる。
【0020】
上述した空気入りタイヤの製造方法によれば、ポストキュアインフレーション中に空気入りタイヤTの外表面を冷却しながら空気入りタイヤTの内表面温度を測定し、その内表面温度に基づいて空気入りタイヤTの外表面に対する冷却能力を制御するので、加硫機中の温度の変動、周囲の設備の稼働状況や季節・時間帯による外気温の変動に拘わらず、ポストキュアインフレーション終了時のタイヤ温度の変動幅を小さくし、空気入りタイヤの寸法及び性能を安定化することができる。特に、カーカス層は一般的にタイヤ内表面に近い位置に配置されるので、ポストキュアインフレーションにおける空気入りタイヤTの外表面に対する冷却能力を制御するための指標として内表面温度を利用することにより、寸法安定性及び性能安定性の改善効果を高めることができる。
【0021】
図3は空気入りタイヤの製造方法におけるポストキュアインフレーションの時間とタイヤ内表面温度との関係を示すグラフである。図3において、A,Bはそれぞれ異なる環境でポストキュアインフレーションが行われた空気入りタイヤの試験例を示すものである。試験例Bは試験例Aに比べて温度低下が緩やかになっている。
【0022】
図3に示すように、試験例A,Bのタイヤのポストキュアインフレーションを一定の時間t1で終了させた場合、時間t1における試験例A,Bのタイヤ温度に差異が生じ、それが寸法や性能に差異を生じさせる要因となる。そこで、上述のようにポストキュアインフレーション中に空気入りタイヤTの外表面を冷却しながら空気入りタイヤTの内表面温度を測定し、その内表面温度に基づいて空気入りタイヤTの外表面に対する冷却能力を制御することにより、ポストキュアインフレーション終了時のタイヤ温度の変動幅を小さくすることができる。例えば、試験例Aの場合よりも試験例Bの場合における外部冷却装置18の冷却能力を高めることにより、ポストキュアインフレーション終了時の試験例A,Bのタイヤ温度の変動幅を小さくすることができる。
【0023】
外部冷却装置18の冷却能力を制御する手法として、冷却媒体Moの流量や温度を調整したり、冷却媒体Moの種類を変更したりすることが考えられる。冷却媒体Moの流量は例えば5.0m3/min~25.0m3/minの範囲内で変化させることができる。冷却媒体Moの温度は例えば10℃~35℃の範囲内で変化させることができる。冷却媒体Moの種類を変更する場合、例えば熱容量が異なる複数種類の気体を使用することができる。
【0024】
上述した空気入りタイヤの製造装置において、制御部22は、ポストキュアインフレーション中の空気入りタイヤTの内表面温度について予め規定された標準冷却モデルとポストキュアインフレーション中に測定される内表面温度の実測値との差異を経時的に演算し、その差異が小さくなるように外部冷却装置18の冷却能力を制御するように構成されていると良い。例えば、図2における試験例Aの曲線を標準冷却モデルとした場合、空気入りタイヤTの内表面温度の実測値が標準冷却モデルよりも高い側(試験例Aの曲線よりも上側)にあるとき外部冷却装置18の冷却能力を増強し、内表面温度の実測値が標準冷却モデルよりも低い側(試験例Aの曲線よりも下側)にあるとき外部冷却装置18の冷却能力を低減させる。これにより、ポストキュアインフレーション終了時におけるタイヤ温度を任意の温度に到達させ、空気入りタイヤTの寸法及び性能を標準冷却モデルに基づいて最適化することができる。標準冷却モデルは特に限定されるものではないが、1年間に観測され得る内表面温度の冷却曲線のうち中間的な冷却曲線を採用することができる。このような標準冷却モデルを採用することにより、安定化のための制御を容易に行うことができる。
【0025】
なお、ポストキュアインフレーション中の空気入りタイヤTの内表面温度に基づいて空気入りタイヤTの外表面に対する冷却能力を制御する場合、空気入りタイヤTの外表面に対する冷却能力の制御による影響が空気入りタイヤTの内表面温度に反映されるタイミングは制御のタイミングよりも遅延する。そのため、制御に際しては、標準冷却モデルとポストキュアインフレーション中に測定される内表面温度の実測値との差異の大きさに応じて、冷却能力を増減させる程度及び時間を予め設定しておくと良い。つまり、任意の時間における標準冷却モデルと内表面温度の実測値との差異が大きい場合は、冷却能力を増減させる程度を大きくし、或いは、冷却能力を増減させる時間を長くすれば良い。逆に、任意の時間における標準冷却モデルと内表面温度の実測値との差異が小さい場合は、冷却能力を増減させる程度を小さくし、或いは、冷却能力を増減させる時間を短くすれば良い。
【0026】
上述した実施形態では、環状パイプ14、エア噴射孔15、配管16及び冷却媒体供給源17からなる外部冷却装置18の冷却能力を制御する場合について説明したが、本発明では、空気入りタイヤの外表面を冷却する外部冷却装置の構造は特に限定されるものではない。また、環状パイプ14、エア噴射孔15、配管16及び冷却媒体供給源17からなる外部冷却装置18の冷却能力を一定とする一方で、他の外部冷却装置(例えば、スポットクーラー)を追加し、その追加された外部冷却装置の冷却能力を制御するようにしても良い。
【0027】
また、上述した実施形態では、ポストキュアインフレーション工程においては、空気入りタイヤTの外表面を冷却しながら空気入りタイヤTの内表面温度を測定し、ポストキュアインフレーション中に変化する内表面温度に基づいて空気入りタイヤTの外表面に対する冷却能力を制御する場合について説明したが、本発明では、空気入りタイヤTの外表面に対する冷却を開始する前の段階で内表面温度を測定し、その冷却開始前の内表面温度に基づいて空気入りタイヤTの外表面に対する冷却能力を制御するようにしても良い。
【実施例0028】
乗用車用空気入りタイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造するにあたって、一定時間のポストキュアインフレーションを行い、タイヤ外表面の冷却条件だけを異ならせた従来例1,2及び実施例1のタイヤ製造方法を1年間実施し、それぞれ10000本の空気入りタイヤを製造した。
【0029】
従来例1では、ポストキュアインフレーションにおいて、空気入りタイヤの外表面を自然冷却した。従来例2では、ポストキュアインフレーションにおいて、空気入りタイヤの外表面を一定条件にて冷却した。実施例1では、ポストキュアインフレーションにおいて、空気入りタイヤの外表面を冷却しながら空気入りタイヤの内表面温度を測定し、予め規定された標準冷却モデルとポストキュアインフレーション中に測定される内表面温度の実測値との差異を演算し、その差異が小さくなるように冷却能力を制御した。
【0030】
上述した空気入りタイヤの製造方法で得られた試験タイヤについて、下記評価方法により、RFV歩留まり、操縦安定性のバラツキを評価し、その結果を表1に示した。
【0031】
RFV歩留まり:
各試験タイヤのラジアル・フォース・バリエーション(RFV)を測定し、RFVの観点から歩留まり(良品率)を求めた。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど歩留まりが良好であることを意味する。
【0032】
操縦安定性のバラツキ:
各試験タイヤについて、連続して製造された4本を一組とし、リムサイズ15×5.5Jのホイールに組み付けて試験車両に装着し、空気圧230kPaの条件にて、乾燥路面からなるテストコースにおいてテストドライバーによる操縦安定性に関する官能評価(100点満点)を実施した。このような官能評価を従来例1,2及び実施例1の各々について異なる季節及び異なる時間帯に製造された50組のタイヤに対して行い、官能評価スコアの標準偏差を求めた。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が小さいほど操縦安定性のバラツキが少ないことを意味する。
【0033】
【表1】
【0034】
表1から判るように、実施例1の方法で得られたタイヤは、従来例1,2との対比において、RFV歩留まりが良好であり、操縦安定性のバラツキが少ないものであった。実施例1の方法によれば、空気入りタイヤの寸法及び性能を安定化することができた。
【符号の説明】
【0035】
1,2 リム板
3,4 支持軸
5 供給路
6 排出路
11 支持梁
12 支持棒
13 ブラケット
14 環状パイプ
15 エア噴射孔
16 配管
17 冷却媒体供給源
18 外部冷却装置
21 温度センサ
22 制御部
Mi 加圧媒体
Mo 冷却媒体
T 空気入りタイヤ
図1
図2
図3