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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161525
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】熱転写シート
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/392 20060101AFI20221014BHJP
   B41M 5/385 20060101ALI20221014BHJP
   B41M 5/395 20060101ALI20221014BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B41M5/392 300
B41M5/385 300
B41M5/395 300
B41M5/40 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066414
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】掛川 駿太
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 司
(72)【発明者】
【氏名】有賀 友紀
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111AA26
2H111BA03
2H111BA14
2H111BA34
2H111BA53
2H111BA55
2H111BA61
2H111BA78
(57)【要約】
【課題】熱転写時の切れ性が良好で、熱転写顔料層を薄膜化しても高反射濃度を実現できる熱転写シートを提供する。
【解決手段】熱転写シート1は、基材10と、基材の一方の面に設けられ、バインダー樹脂と、着色顔料と、分散剤とを含む熱転写顔料層20とを備える。バインダー樹脂に対する着色顔料の質量比は70%以上150%以下であり、着色顔料に対する分散剤の質量比は10%以上40%以下である。熱転写顔料層の厚さは0.6μm以上3μm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一方の面に設けられ、バインダー樹脂と、着色顔料と、分散剤とを含む熱転写顔料層と、
を備え、
前記バインダー樹脂に対する前記着色顔料の質量比が70%以上150%以下であり、
前記着色顔料に対する前記分散剤の質量比が10%以上40%以下であり、
前記熱転写顔料層の厚さが0.6μm以上3μm以下である、
熱転写シート。
【請求項2】
前記着色顔料の粒径が、0.05μm以上0.5μm以下である、
請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記基材上に、複数の前記熱転写顔料層が繰り返し設けられている、
請求項1または2に記載の熱転写シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱転写記録方式に使用される熱転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルヘッドを有するプリンターを用いて被転写体上に画像形成を行う熱転写記録方式として、昇華型熱転写方式と溶融型転写方式が知られている。昇華型転写方式は、昇華性染料とバインダー樹脂からなる染料層を有する熱転写シートを被転写体に重ね、熱をかけることにより、昇華型染料が被転写体に移行し、画像形成を行う方式である。
昇華型熱転写方式は、熱量を制御することで高精細な階調表現が可能であるが、耐久性、特に耐熱性や耐光性を要求する分野への展開が制限される。
【0003】
一方、溶融型転写方式は、基材上に着色顔料とバインダー樹脂からなる熱転写顔料層を有する熱転写シートを用いて、被転写体上に熱転写顔料層を熱融着させて画像形成を行う方法である。溶融型転写方式によって形成される画像は、高濃度で耐久性に優れ、文字、線画等の2値画像の記録に適している。
【0004】
近年、熱転写により得られる転写物の解像度向上や、転写感度向上の観点から熱転写顔料層を薄膜化することが求められている。解像度の向上に関しては、熱転写顔料層の切れ性が悪いと、熱転写時に非熱印加部の熱転写顔料層が被転写体側にとられ、著しく解像度が悪化するため、切れ性の向上が必要である。また、薄膜化に関しては、熱転写時の反射濃度を保持しつつ薄膜とするために、熱転写顔料層中の顔料濃度を増加させることが必要となる。
また、溶融型転写方式は、写真等の印刷以外に、熱転写顔料層を用いてドットパターンや細線パターンなどの微細パターン、面積の広いベタパターン等を形成することにより、機器コントロールパネル、家電製品の表示板、タブレットやスマートホン端末の額縁や筐体の絵柄など、プラスチック成形体や電子部品、さらには光学部品などへの加飾や遮光等の目的にも用いることができる。
【0005】
熱転写顔料層の熱転写時の切れ性を向上する例として、特許文献1では、基材上に着色顔料とエポキシ樹脂、シリカ微粒子を含有する熱転写顔料層を有し、熱転写顔料層の膜厚が0.5μm~1.0μmである熱転写シートで、エポキシ樹脂の軟化点が70~150℃であり、着色顔料がバインダー樹脂に対して20%~30%である熱転写シートが提案されている。
【0006】
また、熱転写顔料層中の顔料濃度を高濃度とし、薄膜の熱転写顔料層で高反射濃度な転写物を提供する例として、特許文献2では、基材上に着色顔料を含有する熱溶融性着色インキを塗布してなる熱転写シートであり、熱溶融性着色インキ中に金属フタロシアニン系化合物を分散剤として用いた熱転写シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-213053号公報
【特許文献2】特開平4-250094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の熱転写シートは、着色顔料が樹脂に対してあまり多くないため、転写物の反射濃度を高くすることが困難であり、上述した薄膜化に対応しがたい。
【0009】
特許文献2の熱転写シートは、着色顔料を熱転写顔料層中に高濃度で含有することはできるが、切れ性について考慮されていない。
【0010】
本発明は、熱転写時の切れ性が良好で、熱転写顔料層を薄膜化しても高反射濃度を実現できる熱転写シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基材と、基材の一方の面に設けられ、バインダー樹脂と、着色顔料と、分散剤とを含む熱転写顔料層とを備える熱転写シートである。
バインダー樹脂に対する着色顔料の質量比は70%以上150%以下であり、着色顔料に対する分散剤の質量比は10%以上40%以下である。熱転写顔料層の厚さは0.6μm以上3μm以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱転写時の切れ性が良好で、熱転写顔料層を薄膜化しても高反射濃度を実現可能な熱転写シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る熱転写シートを示す模式断面図である。
図2】(a)は、同熱転写シートの他の態様を示す模式平面図、(b)は模式断面図である。
図3】(a)は、同熱転写シートの他の態様を示す模式平面図、(b)は模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る熱転写シート1の模式断面図である。熱転写シート1は、長尺の基材10と、基材10上に形成された熱転写顔料層20とを備えている。
【0015】
(基材)
基材10としては、各種のプラスチックフィルムを使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレ-ト(PEN)等のポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルム、およびコンデンサー紙、パラフィン紙などの紙類等を単独、又は組み合わされた複合体などが使用可能である。基材10の厚さは、その強度及び耐熱性等が適切になるように、材料に応じて適宜選択することができるが、通常は2μm以上50μm以下の範囲のものが使用でき、転写適性や加工性等のハンドリング性を考慮すると、2μm以上9μm以下程度のものが好ましい。
【0016】
(熱転写顔料層)
熱転写顔料層20は、バインダー樹脂と、着色顔料と、分散剤とを少なくとも含んで構成されている。
バインダー樹脂としては、各種熱可塑性樹脂を使用でき、ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、フェノール誘導樹脂、エチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリアミド樹脂、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体等の熱可塑性樹脂を主成分として使用することができる。
【0017】
着色顔料としては、公知の各種顔料を使用できる。
熱転写顔料層20は、基材10上に1種類設けられてもよいし、複数種類設けられてもよい。例えば、基材10上に着色顔料としてカーボンブラックを含む熱転写顔料層のみが形成された単色印字用の熱転写シートは、本実施形態に係る熱転写シートの一態様である。
【0018】
図2および図3に、熱転写顔料層を複数有する構成例を示す。図2に示す熱転写シート1Aは、基材10上に、イエローを形成する顔料を含む熱転写顔料層Y、マゼンタを形成する顔料を含む熱転写顔料層M、およびシアンを形成する顔料を含む熱転写顔料層Cの、色彩の異なる3つの熱転写顔料層を有する。図3に示す熱転写シート1Bは、顔料としてカーボンブラック/墨を含む熱転写顔料層Bkを加えた4つの熱転写顔料層を有する。
熱転写シート1Aおよび1Bにおいては、複数の熱転写顔料層が検知マーク25とともに1単位を形成し、この単位が基材10の長手方向に繰り返し多数形成されている。
上記以外にも、熱転写顔料層の数や種類は、熱転写シートの用途等に応じて適宜設定できる。
着色顔料の粒径は、0.05μm以上0.5μm以下が好ましい。本明細書において、「粒径」とは体積平均粒径を示し、例えば、BET法、電子顕微鏡観察結果を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア解析により測定できる。
【0019】
熱転写顔料層には、層の平滑性や顔料分散性を向上させる目的で分散剤が添加されている。
分散剤としては、転写顔料層中の組成物に相溶するものならば特に制限はなく、界面活性剤が使用できる。例えば、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、脂肪族アミンもしくは脂肪族アミドの硫酸塩類、脂肪族アルコール燐酸エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類、脂肪族アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタレンスルホン酸塩類等のアニオン系界面活性剤、脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩類等のカチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類等の非イオン系界面活性剤、カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体等の両性界面活性剤等、パーフルオロアルキルカルボン酸類、フルオロ脂肪族基含有アクリレートもしくはフルオロ脂肪族基含有メタクリレートとポリオキシアルキレンアクリレートもしくはポリオキシアルキレンメタクリレートとの共重合体、パーフルオロアルキルスルホンアミド類等が挙げられる。
【0020】
熱転写シート1Aおよび1Bにおいては、基材10の熱転写顔料層が設けられていない側の面に、耐熱滑性層11が設けられている。
耐熱滑性層11は、任意の構成であり、基材10に設けることにより耐熱性、及び印画時のサーマルヘッド等の加熱部との接触走行性等を向上させることができる。
このような耐熱滑性層を構成する材料としては、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アセタール系樹脂等の樹脂にフッ素樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス、燐酸エステル等の滑剤を含有させたもの、またはシリコーン変性樹脂等が挙げることができる。またシリカ、炭酸カルシウム、タルク、樹脂ビーズ等のフィラーを含有してもよく、また、耐熱性を向上させる目的で、架橋剤を併用してもよい。
耐熱滑性層11は、上述の材料の中から選択された単独または複数の材料、および必要に応じて各種添加剤等を加え、水または有機溶剤等の適当な溶剤に溶解または分散させて耐熱滑性層用塗工液を調製し、これをバーコート、ブレードコート、エアナイフコート、グラビアコート、ロールコート等のソルベントコート法によって塗布し、乾燥して形成することができる。耐熱滑性層11を設ける際の塗布厚は、0.1~4μmが好ましい。
【0021】
発明者らは、切れ性が良好であり、熱転写顔料層を3μm以下に薄膜化しても転写された印画物において十分な反射濃度を確保できる構成について種々検討した。その結果、着色顔料の質量比をバインダー樹脂に対して70%以上150%以下とし、かつ分散剤の質量比を着色顔料に対して10%以上40%以下にすることにより、熱転写顔料層の厚さが0.6μm以上3μm以下である場合に、切れ性と反射濃度の両方を良好とすることができることを見出した。
【0022】
本実施形態に係る熱転写シート1は、上述の知見に基づいて完成したものであり、熱転写顔料層20を0.6μm以上3μm以下に薄膜化しつつ、切れ性と反射濃度とを両立している。
【0023】
熱転写シート1は、上述の比率を満たしたバインダー樹脂、着色顔料、および分散剤を溶媒に希釈した塗布液を基材10上に塗工および乾燥することにより製造できる。塗工方法は公知の各種方法を適宜選択して使用でき、乾燥条件は、例えば100℃、1分とできる。
【0024】
本実施形態の熱転写シートについて実施例および比較例を用いてさらに説明する。本発明の技術的範囲は、実施例および比較例の具体的内容のみによって何ら限定されない。
なお、以降の記載において「部」とは、特にことわらない限り質量部を意味する。
【0025】
(実施例1)
基材として樹脂フィルムを準備した。
基材上に、以下の組成を有する熱転写顔料層用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の膜厚が1.5μmとなるように塗布した。その後、100℃ 1分の条件で乾燥することにより、熱転写顔料層を形成し、実施例1に係る熱転写シートを作製した。この熱転写シートは、黒色の熱転写顔料層を有する。
<熱転写顔料層用塗布液>
バインダー樹脂:エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製 jER(登録商標)1007) 20部
着色顔料:カーボンブラック(平均粒径0.14μm) 20部
分散剤:フッ素系界面活性剤 4部
溶媒:酢酸エチル 28部
メチルエチルケトン 28部
【0026】
(実施例2)
熱転写顔料層用塗布液において、分散剤の量を6部とした点を除き、実施例1と同様の手順で、実施例2に係る熱転写シートを作製した。
(実施例3)
熱転写顔料層用塗布液において、着色顔料の量を16部とした点を除き、実施例1と同様の手順で、実施例3に係る熱転写シートを作製した。
(実施例4)
熱転写顔料層用塗布液において、着色顔料の量を26部とした点を除き、実施例1と同様の手順で、実施例4に係る熱転写シートを作製した。
(実施例5)
熱転写顔料層用塗布液を、乾燥後の膜厚が0.7μmとなるように塗布した点を除き、実施例1と同様の手順で、実施例5に係る熱転写シートを作製した。
【0027】
(比較例1)
熱転写顔料層用塗布液において、分散剤の量を9部とした点を除き、実施例1と同様の手順で、比較例1に係る熱転写シートを作製した。
(比較例2)
熱転写顔料層用塗布液において、分散剤の量を1部とした点を除き、実施例1と同様の手順で、比較例2に係る熱転写シートを作製した。
(比較例3)
熱転写顔料層用塗布液において、着色顔料の量を10部とした点を除き、実施例1と同様の手順で、比較例3に係る熱転写シートを作製した。
(比較例4)
熱転写顔料層用塗布液において、乾燥後の膜厚が0.3μmとなるように塗布した点を除き、実施例1と同様の手順で、比較例4に係る熱転写シートを作製した。
(比較例5)
熱転写顔料層用塗布液を、乾燥後の膜厚が3.5μmとなるように塗布した点を除き、実施例1と同様の手順で、比較例5に係る熱転写シートを作製した。
【0028】
各例の熱転写シートを用いて、以下の評価を行った。
(被転写体への転写)
被転写体として、表面未処理のポリエチレンテレフタレートシートを使用した。
各例の熱転写シートの熱転写顔料層を被転写体に向けて重ね合わせ、評価用サーマルシミュレーターにて熱転写顔料層を被転写体に転写した。転写条件は以下の通りである。
(転写条件)
印画環境:23℃ 50%RH(相対湿度)
印加電圧:17V
転写速度:0.33インチ/msec
印画密度:主走査300dpi、副走査300dpi
【0029】
各例に係る転写物について、以下の項目を評価した。
<切れ性>
被転写体に転写された熱転写顔料層において、キーエンスデジタルマイクロスコープVHX-1000を用いて端部の凹凸(設定形状からのはみだし)を測定した。評価基準は以下の3段階とし、◎および〇を合格とした。
◎(very good):凹凸の最大値が50μm未満
〇(good): 凹凸の最大値が100μm未満
×(bad): 凹凸の最大値が100μm以上
【0030】
<反射濃度>
被転写体に転写された熱転写顔料層の表面の反射濃度(OD)を、X-rite社製X-rite528を用いて測定した。評価基準は以下の3段階とし、◎および〇を合格とした。
◎(very good):ODが2.5以上
〇(good):ODが1.5以上2.5未満
×(bad):ODが1.5未満
【0031】
さらに、各例に係る塗布液について、以下の項目を評価した。
<塗布液安定性>
各例の熱転写顔料層用塗布液を調製後に1時間放置し、凝集物の有無を目視にて評価した。評価は以下の2段階とし、○を合格とした。
〇(good):凝集物を認めない
×(bad):凝集物を認める
【0032】
各例のパラメータおよび評価結果を表1に示す。表1において、「着色顔料比」とは、バインダー樹脂に対する着色顔料の質量比であり、「分散剤比」とは、着色顔料に対する分散剤の質量比である。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例2は他の実施例より分散剤が多いことにより、わずかに切れ性が低下し、実施例3は他の実施例より着色顔料が少ないことにより、わずかに反射濃度が低下したが、いずれの実施例も良好な結果であった。
【0035】
比較例1は、反射濃度は良好であるものの、分散剤量が上記の範囲を超えていることで許容できない程度の切れ性の悪化が見られた。比較例2は、切れ性は良好であるものの、分散剤量が上記の範囲に満たないことで分散が十分でなく、塗布液安定性が悪化した。
比較例3は着色顔料の量が上記の範囲に満たないことにより、反射濃度が著しく低下した。比較例4,5は熱転写顔料層の膜厚を変更したことでそれぞれ反射濃度、切れ性が著しく悪化した。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記内容に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。以下にいくつかの変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更が2以上適宜組み合わされてもよい。
【0037】
・基材において、熱転写顔料層が設けられる側の面に接着処理を施して、熱転写顔料層の密着性を高めてもよい。接着処理としては、コロナ処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗画化処理、プラズマ処理、プライマー処理等の公知の技術を適用することができ、それらの処理を2種以上併用してもよい。
【0038】
・基材において、熱転写顔料層が設けられない側の面に層を設けたり処理を施したりして、滑性や耐熱性を向上させてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1、1A、1B 熱転写シート
10 基材
20、Bk、C、M、Y 熱転写顔料層
図1
図2
図3