(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161529
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】コークス炉装入口
(51)【国際特許分類】
C10B 25/20 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
C10B25/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066424
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100195877
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻木 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】西口 英邦
(57)【要約】
【課題】 装入孔蓋と装入孔枠の間に隙間が生じにくいコークス炉装入口を提供すること。
【解決手段】 コークス炉装入口は、円形の装入孔蓋と、装入孔蓋が嵌合される装入孔枠とを有し、装入孔蓋は、装入孔枠との嵌合側に、円周方向に連続する円弧状部を有し、装入孔蓋の円弧状部は、球体の下半球の一部の外周面で形成され、外周面は、球体の直径と平行な、円周方向に連続する面であり、装入孔枠は、装入孔蓋の円弧状部が嵌合される、円周状の内周面を有し、装入孔枠の内周面(曲率:1/R)は、円弧状部の外周面の曲率(1/r)と実質的に同一の曲率(1/R=1/r)で窪んでいる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の装入孔蓋と、前記装入孔蓋が嵌合される装入孔枠とを有し、
前記装入孔蓋は、前記装入孔枠との嵌合側に、円周方向に連続する円弧状部を有し、
前記装入孔蓋の前記円弧状部は、球体の下半球の一部の外周面で形成され、
前記外周面は、前記球体の直径と平行な、前記円周方向に連続する面であり、
前記装入孔枠は、前記装入孔蓋の前記円弧状部が嵌合される、円周状の内周面を有し、
前記装入孔枠の前記内周面は、前記円弧状部の前記外周面の曲率と実質的に同一の曲率で窪んでいることを特徴とするコークス炉装入口。
【請求項2】
請求項1に記載のコークス炉装入口において、
前記装入孔蓋の前記外周面が連続して形成されている高さ範囲は、前記装入孔枠の前記内周面が連続して形成されている高さ範囲よりも狭いことを特徴とするコークス炉装入口。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の炭化室に石炭を装入するコークス炉装入口に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉炭化室の天井には装入孔があり、ここからコークス原料の石炭を炭化室に装入する。石炭装入後は、装入孔枠に装入孔蓋を嵌合させ、ガス及び粉じんの噴出防止を目的として、装入孔枠と装入孔蓋の間にシール材を流し込んで炭化室を密閉する。なお、本明細書では、「装入孔」とはコークス炉炭化室天井の穴そのものをいい、「コークス炉装入口」とは少なくとも装入孔枠と装入孔蓋とを有する、部材の組み合わせをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62-157944
【特許文献2】実開昭60-156155
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、コークス炉の装炭蓋からのガス及び粉じんの噴出防止装置として、内周面(嵌合面)が(逆)円錐状の装炭口(装入孔枠)と、自重により装炭口内周面に圧着される、外周面(嵌合面)が球面座の内蓋(装入孔蓋)とを開示する。しかし、装炭口内周面は(逆)円錐面であるのに対し、内蓋の外周面は球体であるため、装炭口と内蓋の嵌合が点(線)接触となり、石炭等の異物の挟み込みや嵌合面の摩耗等により、隙間が生じやすい。また、装炭蓋が二重構造のため、内蓋から漏れていた場合も外蓋からの漏れを一時的に防ぐことができるものの、内蓋からの漏れ認識できないため、外蓋を開けたときにガスや粉じんが放出されてしまうことがある。さらに、構造が複雑で重い。
【0005】
特許文献2は、タールやカーボンの付着を抑制するために、装入蓋(装入孔蓋)と装入口本体(装入孔枠)の接触部分にセラミック溶射層を設けた装入口本体において、外周面(嵌合面)が凸状の球体の装入蓋と、内周面(嵌合面)が内周方向に凸状(即ち、ラッパ開口部の朝顔形状)の装入口本体とを開示する(第1図)。この装入蓋と装入口本体の嵌合も点(線)接触であり、隙間が生じやすい。隙間が大きい場合はシール材を流し込んでも塞ぎきれないことがある。また、装入蓋は自動で開閉されるが、閉める際は水平に設置されないことが多く、隙間が大きくなることもある。
【0006】
本発明は上記実状を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、装入孔蓋と装入孔枠の間に隙間が生じにくく、装入孔蓋が水平に設置されない場合であっても隙間が大きくなることがないコークス炉装入口を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一の態様は、
円形の装入孔蓋と、前記装入孔蓋が嵌合される装入孔枠とを有し、
前記装入孔蓋は、前記装入孔枠との嵌合側に、円周方向に連続する円弧状部を有し、
前記装入孔蓋の前記円弧状部は、球体の下半球の一部の外周面で形成され、
前記外周面は、前記球体の直径と平行な、前記円周方向に連続する面であり、
前記装入孔枠は、前記装入孔蓋の前記円弧状部が嵌合される、円周状の内周面を有し、
前記装入孔枠の前記内周面(曲率:1/R)は、前記円弧状部の前記外周面の曲率(1/r)と実質的に同一の曲率(1/R=1/r)で窪んでいることを特徴とするコークス炉装入口に関する。
【0008】
装入孔蓋は、装入孔枠との嵌合側に、円周方向に連続する円弧状部を有し、装入孔蓋の円弧状部は、球体の下半球の一部の外周面で形成され、外周面は、球体の直径と平行な、円周方向に連続する面である。装入孔枠は、装入孔蓋の円弧状部が嵌合される、円周状の内周面を有する。装入孔枠の内周面(曲率:1/R)は、円弧状部の外周面の曲率(1/r)と実質的に同一の曲率(1/R=1/r)で窪んでいるため、装入孔蓋と装入孔枠との嵌合は面接触となり、隙間が生じることがなく、密閉性が確保される。また、装入孔蓋が水平に設置されない場合であっても、装入孔蓋の、装入孔枠との嵌合面は、装入孔蓋が水平に設置される場合と同様に密接に保たれ、隙間が大きくなることはない。
【0009】
本開示の一の態様では、
前記装入孔蓋の前記外周面が連続して形成されている高さ範囲は、前記装入孔枠の前記内周面が連続して形成されている高さ範囲よりも狭いことが好ましい。
【0010】
装入孔蓋の外周面が連続して形成されている高さ範囲を、装入孔枠の内周面が連続して形成されている高さ範囲よりも狭くすることにより、装入孔蓋の厚さを抑え、装入孔蓋の重量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】コークス炉装入口の装入孔枠及び装入孔蓋の断面を示す。
【
図2】装入孔枠の内周面が円弧状部の外周面の曲率と実質的に同一の曲率の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが本開示の解決手段として必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、コークス炉装入口10の装入孔蓋11及び装入孔枠12の断面を示す。円形の装入孔蓋11は装入孔枠12に嵌合される。装入孔蓋11は、装入孔枠12との嵌合側に、円周方向に連続する円弧状部13を有する。装入孔蓋11の円弧状部13は、球体14(曲率:1/r)の下半球の一部の外周面で形成され、外周面は、球体14の直径と平行な、円周方向に連続する面である。装入孔枠12は、装入孔蓋11の円弧状部13が嵌合される、円周状の内周面を有する。装入孔枠12の内周面は、球面15(曲率:1/R)の下半球の一部で形成される。
【0014】
図2は、本実施形態のコークス炉装入口10の装入孔蓋11及び装入孔枠12の断面を示す。装入孔枠12の内周面は、円弧状部13の外周面の曲率(1/r)と実質的に同一の曲率で窪んでいる(即ち、1/R=1/r)。装入孔蓋11と装入孔枠12との嵌合は面接触となり、隙間が生じることがなく、密閉性が確保される。また、嵌合面の一部が摩耗した場合、面接触だと他の接触面でカバーされるため、耐用期間が延びると考えられる。さらに、装入孔蓋11が水平に設置されない場合であっても、
図3に示すように、装入孔蓋11の、装入孔枠12との嵌合面は、装入孔蓋11が水平に設置される場合と同様に密接に保たれ、隙間が大きくなることはない。隙間が生じた場合も、自動供給されるシール材が円弧状部13の隙間を流れ落ちる間に乾燥固化するため、円弧状部13に沿って長い距離で隙間が塞がれ、密閉性が確保される。なお、装入孔蓋11の、円弧状部13の外周面を含む球体14の半径(r)は、装入孔蓋11の半径より小さくなることはない。
【0015】
図2に示すように、装入孔蓋11の外周面が連続して形成されている高さ範囲(H2)は、装入孔枠12の内周面が連続して形成されている高さ範囲(H1)よりも狭いこと(即ち、H2<H1)が好ましい。これにより、装入孔蓋11の厚さを抑え、装入孔蓋11の重量を低減することができる。
【0016】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれる。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語とともに記載された用語は、明細書のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、本実施形態の構成も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0017】
10 コークス炉装入口、11 装入孔蓋、12 装入孔枠、13 円弧状部、14 装入孔蓋の嵌合面を含む球体、15 装入孔枠の嵌合面を含む球面