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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161531
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】脱水システム及び脱水方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/121 20190101AFI20221014BHJP
   C02F 11/14 20190101ALI20221014BHJP
   B01D 29/17 20060101ALI20221014BHJP
   B01D 33/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C02F11/121
C02F11/14
B01D29/30 501
B01D33/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066426
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆介
【テーマコード(参考)】
4D059
4D116
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059AA06
4D059AA30
4D059BE07
4D059BE26
4D059BE47
4D059BE55
4D059BE56
4D059BE57
4D059BE58
4D059BE59
4D059BE60
4D059DA13
4D059DA16
4D059DA22
4D059DA23
4D059DA24
4D059DB23
4D059DB24
4D059DB25
4D059DB26
4D059DB28
4D059DB31
4D059EA20
4D059EB02
4D059EB03
4D116AA26
4D116BB01
4D116BB25
4D116BC06
4D116BC07
4D116BC25
4D116BC27
4D116BC45
4D116BC48
4D116FF12B
4D116GG02
4D116KK02
4D116KK04
4D116QA24C
4D116QA24D
4D116QA51A
4D116QA51G
4D116QA55C
4D116QA55F
4D116QA57A
4D116QA57G
4D116QB50
4D116QC08A
4D116QC32A
4D116QC38A
4D116QC52A
4D116VV09
4D116VV12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】脱水処理における作業効率を向上させた脱水システム及び脱水方法を提供する。
【解決手段】発生源(各種水処理場や各種工場等)から送られてくる原水を固液分離する固液分離槽1と、固液分離槽1から供給される固体分を含んだ被処理水Wに対する脱水処理を行い、固体分から水分を分離除去して、濃縮した固体分を回収する脱水機2を備え、固液分離槽1から脱水機2へ被処理水Wを送る供給部3と、脱水機2内の被処理水Wの水位を測定する測定部4と、測定部4からの測定結果に基づいて供給部3の制御を行う制御部5を備えており、さらに、供給部3は、固液分離槽1から脱水機2へ被処理水Wを供給する配管である供給ラインL1上に設る構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体分を含む被処理水に対し脱水処理を行う脱水システムであって、
ケーシングと脱水部を備える脱水機を有し、
前記脱水部が、前記被処理水に浸漬しており、
前記ケーシング内の前記被処理水の水位が一定となるように、前記脱水機への前記被処理水の供給量を制御することを特徴とする、脱水システム。
【請求項2】
凝集剤を添加する凝集剤添加部を有し、
前記凝集剤添加部は、前記被処理水に対し、一定の添加量で前記凝集剤を添加することを特徴とする、請求項1に記載の脱水システム。
【請求項3】
前記被処理水の流量を可変とする供給部を備え、
前記供給部により、前記脱水機への前記被処理水の供給量の制御を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の脱水システム。
【請求項4】
前記脱水機は、スクリュープレス脱水機、又は、多重円盤型脱水機であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の脱水システム。
【請求項5】
固体分を含む被処理水に対し脱水処理を行う脱水方法であって、
ケーシングと脱水部を備え、前記脱水部が、前記被処理水に浸漬している脱水機に対して、
前記ケーシング内の前記被処理水の水位が一定となるように、前記脱水機への前記被処理水の供給量を制御する制御工程を備えることを特徴とする、脱水方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体分を含む被処理水の脱水処理に係る脱水システム及び脱水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥等、固体分を含む被処理水(以下、単に「被処理水」とも呼ぶ。)に対する処理の一つとして、固体分から水分を分離除去し、固体分を濃縮して回収する脱水処理が広く行われている。また、脱水処理を行う装置として、様々な種類の脱水機が知られており、併せて脱水処理の効率向上等のために、脱水処理対象となる被処理水に、薬剤(凝集剤)を添加することも広く行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、脱水機として、重力脱水濾過部を有するベルトプレス型脱水機を用い、汚泥等の固体分を含む被処理水の脱水処理において、重力脱水濾過部における濃縮汚泥の水位が、望ましい濃縮脱水効率が得られる目標水位となるように、凝集剤の添加量を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-254000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、固体分を含む被処理水の脱水処理において、望ましい濃縮脱水効率を得られるように凝集剤の添加量を調整することは知られている。しかし、被処理水に対する凝集剤の添加量が常に最適となるように制御することは困難であり、安定した脱水処理のためには、凝集剤の不足が起こらないよう、凝集剤の添加量を増やすことになる。このため、結果としてコスト高になるという問題に加えて、凝集剤の添加量が過剰となり過ぎると、被処理水の濾過効率が低下するという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に記載されたベルトプレス型脱水機のように、被処理水の自重による濾過処理を伴う脱水機においては、凝集剤の添加量により被処理水中の固体分の凝集状態を調整し、速やかに濾過処理(固体分と水分の分離)が進行するようにすることで、濃縮脱水効率向上を図ることが知られている。
一方、スクリュープレス脱水機や多重円盤型脱水機のように、脱水部が被処理水に浸漬した状態で脱水処理を行う脱水機では、特許文献1に記載されたような濾布を用いたベルトプレス型脱水機と異なり、脱水部が被処理水による押し込み圧を受けることで、脱水効率が高まる。したがって、このような脱水機において、安定した脱水処理を行い、かつ脱水効率を高めるためには、特許文献1に記載された手段とは異なる手段が必要である。
【0007】
さらに、固体分を含む被処理水が、固液分離槽等による固液分離処理を経て脱水機へ供給される場合、一般に、供給当初は被処理水中の固体分の濃度が高いものの、脱水機へ供給されていくに従い、固液分離槽内にある被処理水中の固体分濃度が減少していく。このため、脱水機へ供給される被処理水中の固体分の量は減少していく。この結果、脱水機から排出される固体分の量が減少していくことになるため、脱水処理を経て濃縮された固体分の回収量が低下し、脱水処理における作業効率が悪化してしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、固体分を含む被処理水に対する脱水処理において、脱水部が被処理水に浸漬した脱水機を用い、脱水処理を安定して継続させるとともに、脱水処理対象となる被処理水中の固体分濃度が変動しても、脱水後の固体分の排出量を一定とすることで、脱水処理における作業効率を向上させた脱水システム及び脱水方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、脱水部が被処理水に浸漬した脱水機に対し、固体分を含む被処理水の水位が一定となるように被処理水の供給量を制御することにより、脱水機における水頭圧(脱水部に対する押し込み圧)を一定に維持し、かつ一定量の固体分を脱水機へ継続して供給し続けることができ、脱水処理に係る作業効率向上が可能となることを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の脱水システム及び脱水方法である。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の脱水システムは、固体分を含む被処理水に対し脱水処理を行う脱水システムであって、ケーシングと脱水部を備える脱水機を有し、脱水部が、被処理水に浸漬しており、ケーシング内の被処理水の水位が一定となるように、脱水機への被処理水の供給量を制御することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の脱水システムによれば、ケーシングと脱水部を備え、脱水部が被処理水に浸漬している脱水機へ供給される被処理水の供給量を、ケーシング内の被処理水の水位が一定となるように制御することにより、脱水機における水頭圧(脱水部に対する押し込み圧)を一定に維持することができ、脱水効率を高め、脱水処理を安定して継続させることが可能となる。
また、本発明の脱水システムによれば、脱水処理対象となる被処理水中の固体分濃度が変動しても、脱水機に供給される被処理水に含まれる固体分の量を一定に制御することができる。これにより、脱水機においては一定量の固体分に対して継続して脱水処理することができるため、脱水後の固体分の排出量を一定とし、脱水処理を経て濃縮された固体分の回収量低下を抑制することが可能となり、脱水処理に係る作業効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0012】
また、本発明の脱水システムの一実施態様としては、凝集剤を添加する凝集剤添加部を有し、凝集剤添加部は、被処理水に一定の添加量で凝集剤を添加することを特徴とするものである。
本発明の脱水システムによれば、被処理水に一定の添加量で凝集剤を添加することで、凝集剤の過剰な添加を抑制することができる。これにより、凝集剤にかかるコストを抑え、かつ、固体分と凝集剤の添加比率を略一定にすることができるため、固体分の凝集状態を適切に制御し、固体分の脱水効率及び回収量を向上させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の脱水システムの一実施態様としては、被処理水の流量を可変とする供給部を備え、供給部により、脱水機への被処理水の供給量の制御を行うことを特徴とするものである。
本発明の脱水システムによれば、被処理水の流量を可変とする供給部を設け、脱水機のケーシング内の被処理水の水位が一定となるように、供給部による被処理水の流量制御を行うことで、脱水機への被処理水の供給量の制御において、被処理水中の固体分濃度を特に把握する必要がなくなる。これにより、脱水機への被処理水の供給量制御について、被処理水中の固体分濃度を把握するための汚泥濃度計等の計測機器を用いる必要がなく、簡便な構成で行うことができる。
また、本発明の脱水システムによれば、被処理水の流量を可変とした供給量制御をすることで、脱水機への被処理水の供給を停止することなく、連続した脱水処理が可能となる。特に、脱水処理を必要とする被処理水が発生する発生源から、常に被処理水の供給が続くような系において、顕著な効果を奏するものである。
【0014】
また、本発明の脱水システムの一実施態様としては、脱水機は、スクリュープレス脱水機、又は、多重円盤型脱水機であることを特徴とするものである。
スクリュープレス脱水機、又は、多重円盤型脱水機は、いずれもケーシングと脱水部を備え、脱水部が被処理水に浸漬している脱水機であり、脱水部における被処理水による押し込み圧が脱水性能に影響を及ぼすものとして知られているものである。このため、本発明の脱水システムにおける脱水機として好適に用いることができる。
そして、本発明の脱水システムによれば、既知・既設のスクリュープレス脱水機、又は、多重円盤型脱水機に係る構成を活用して、脱水機における水頭圧(脱水部に対する押し込み圧)を一定に維持するとともに、脱水処理対象となる被処理水中の固体分濃度が変動しても、脱水機に供給される被処理水に含まれる固体分の量を一定に制御することができる。これにより、脱水処理を安定して継続させるとともに、脱水処理対象となる被処理水中の固体分濃度が変動しても、脱水後の固体分の排出量を一定とすることで、脱水処理に係る作業効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0015】
上記課題を解決するための本発明の脱水方法は、固体分を含む被処理水に対し脱水処理を行う脱水方法であって、ケーシングと脱水部を備え、脱水部が、被処理水に浸漬している脱水機に対して、ケーシング内の被処理水の水位が一定となるように、脱水機への被処理水の供給量を制御する制御工程を備えることを特徴とするものである。
本発明の脱水方法によれば、ケーシングと脱水部を備え、脱水部が被処理水に浸漬している脱水機において、ケーシング内の被処理水の水位が一定となるように、供給される被処理水の供給量を制御する制御工程を備えることにより、脱水機における水頭圧(脱水部に対する押し込み圧)を一定に維持することができ、脱水効率を高め、脱水処理を安定して継続させることが可能となる。
また、本発明の脱水方法によれば、脱水処理対象となる被処理水中の固体分濃度が変動しても、脱水機に供給される被処理水に含まれる固体分の量を一定に制御することができる。これにより、脱水機では一定量の固体分を継続して脱水処理することができるため、脱水後の固体分の排出量を一定とし、脱水処理を経て濃縮された固体分の回収量低下を抑制することが可能となり、脱水処理に係る作業効率を大幅に向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、固体分を含む被処理水に対する脱水処理において、脱水部が被処理水に浸漬した脱水機を用い、脱水処理を安定して継続させるとともに、脱水処理対象となる被処理水中の固体分濃度が変動しても、脱水後の固体分の排出量を一定とすることで、脱水処理における作業効率を向上させた脱水システム及び脱水方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施態様の脱水システムを示す概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様における脱水機の一例であるスクリュープレス脱水機を示す概略説明図である。
図3】本発明の第1の実施態様における脱水機の一例である多重円盤型脱水機を示す概略説明図である。
図4】本発明の第2の実施態様の脱水システムを示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の脱水システムは、固体分を含む被処理水に対し脱水処理を行うものであって、より具体的には、脱水機へ供給される被処理水において、固体分から水分を分離除去し、固体分を濃縮して回収するために用いられる。
【0019】
本発明の脱水システムによる脱水処理対象となる被処理水とは、液体中に粒子状の固体が分散した状態のものである。具体的には、下水処理場や排水処理場等で発生する汚泥、製紙工場の製紙スラッジ、食品工場やメッキ工場等の工場廃水、顔料廃水等が挙げられる。
また、本発明の脱水システムにおいては、脱水処理対象となる被処理水は、発生源となる各種水処理場や各種工場から排出されたものに対し、固液分離処理等の前処理を行うものとしてもよい。より具体的には、発生源から排出された被処理水に対し、沈殿槽や凝集沈殿槽等の固液分離槽を用いた固液分離処理を行い、固液分離槽内で沈降した沈降成分であり、固体分を多く含む状態の分散液を、本発明の脱水システムに供給する被処理水とすることが挙げられる。
なお、本発明の実施態様においては、脱水システムに供給する被処理水としては、各種処理場や各種工場等で発生した固体分を含む溶液に対し、前処理として固液分離処理を行い、沈降した沈降成分を被処理水として用いたものについて説明しているが、これに限定されるものではない。
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る脱水システム及び脱水方法の実施態様を詳細に説明する。なお、本発明の脱水方法については、以下の脱水システムの構成及び作動、脱水機の構造の説明に置き換えるものとする。また、実施態様に記載する脱水システムの構成及び作動、脱水機の構造については、本発明に係る脱水システムを説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0021】
[第1の実施態様]
図1は、本発明の第1の実施態様の脱水システムの構成を示す概略説明図である。
本実施態様に係る脱水システム100は、図1に示すように、発生源(各種水処理場や各種工場等)から送られてくる原水を固液分離する固液分離槽1と、固液分離槽1から供給される固体分を含んだ被処理水W(以下、単に「被処理水W」と呼ぶこともある。)に対する脱水処理を行い、固体分から水分を分離除去して、濃縮した固体分を回収する脱水機2を備えている。また、固液分離槽1から脱水機2へ被処理水Wを送る供給部3と、脱水機2内の被処理水Wの水位を測定する測定部4と、測定部4からの測定結果に基づいて供給部3の制御を行う制御部5を備えている。さらに、供給部3は、固液分離槽1から脱水機2へ被処理水Wを供給する配管である供給ラインL1上に設けられている。
なお、図1において、一点鎖線の矢印は、入出力及び制御可能に接続されていることを示すものである。
【0022】
また、本実施態様における処理対象である被処理水Wに対しては、脱水機2による脱水効率を高めるため、脱水機2に供給される前に、被処理水W中の固体分同士を凝集させフロック化させる前処理を行うことが好ましい。
このような前処理としては、被処理水Wに対して凝集剤Gを添加することが挙げられる。
例えば、図1に示すように、本実施態様における脱水システム100は、凝集剤Gを貯留する凝集剤貯留槽6、及び、凝集剤貯留槽6に貯留された凝集剤Gを被処理水Wへ添加する凝集剤添加部7と、凝集剤貯留槽6から凝集剤Gを凝集剤添加部7へ送る配管である添加ラインL2を備えるものとすることが挙げられる。
【0023】
まず、本実施態様における脱水システム100における前処理として機能する固液分離槽1及び凝集剤G添加に係る構成(凝集剤貯留槽6及び凝集剤添加部7)について説明する。
【0024】
〔固液分離槽〕
固液分離槽1は、各種処理場や各種工場等で発生した原水(固体分を含む溶液)に対し、前処理として固液分離処理を行うためものである。また、固液分離槽1は、固体分を多く含む状態の分散液を被処理水Wとして脱水機2へ供給するためのものである。
固液分離槽1は、原水を固体分と液体分とに分離することができれば、どのような構造や大きさであってもよい。例えば、原水を貯留し固体分が自然沈降することにより、固体分と液体分とに分離するものであってもよく、また、固液分離槽1に対し、後述する凝集剤Gを添加する凝集剤添加手段や、原水を撹拌する撹拌羽根11を備え、固液分離槽1内でフロックを形成することで固体分と液体分とに分離するものであってもよい。
【0025】
固液分離槽1としては、分離した液体分を処理水として槽上部側から槽外に排出する処理水排出部12や、沈降した固体分を含む沈降成分を槽底部側から槽外に抜き出す沈降成分排出部13などを設けることが挙げられる。
【0026】
また、固液分離槽1から脱水機2に供給する被処理水Wは、固液分離槽1の底部に沈降した沈降成分であり、固体分を多く含む状態の分散液からなるものである。これにより、脱水機2において、固体分の脱水処理及び回収処理を効率的に行うことが可能となる。
そして、固液分離槽1の底部あるいは下部側に設けられた沈降成分排出部から抜き出される被処理水Wは、抜き出し開始時には含有する固体分の濃度が高く、抜き出されていくに従って、含有する固体分の濃度が低くなっていくという傾向を示す。
【0027】
〔凝集剤貯留槽及び凝集剤添加部〕
凝集剤貯留槽6は、凝集剤Gを貯留しておくための貯留槽である。
凝集剤貯留槽6は、凝集剤Gを貯留しておくことができればよく、どのような大きさや構造、材質であってもよい。また、貯留しておく凝集剤Gの種類についても特に限定されない。さらに、凝集剤貯留槽6は、使用する凝集剤Gに応じて、複数槽設けることとしてもよい。
【0028】
被処理水Wに添加する凝集剤Gとしては、固体分を凝集させる作用を示すものであれば特に限定されず、どのようなものであってもよい。例えば、無機凝集剤、高分子凝集剤が挙げられ、処理条件に応じて適宜選択される。
【0029】
無機凝集剤としては、例えば、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ポリシリカ鉄、ポリ塩化アルミニウム等が挙げられる。高分子凝集剤としては、カチオン系のポリアミノアルキルメタクリレート、ポリエチレンイミン、ハロゲン化ポリジアリルアンモニウム、キトサン、尿素-ホルマリン樹脂等が挙げられる。また、他の高分子凝集剤として、ノニオン系のポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等のほか、アニオン系のポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解物、部分スルホメチル化ポリアクリルアミド、ポリ(2-アクリルアミド)-2-メチルプロパン硫酸塩等や、両性系のアクリルアミドとアミノアルキルメタクリレートとアクリル酸ナトリウムの共重合体等が挙げられる。
なお、これらの凝集剤Gは、処理条件によって、1種又は複数を混合したものを用いることができる。
【0030】
凝集剤添加部7は、脱水機2において脱水処理を行う前処理として、被処理水W中の固体分をフロック化するために、凝集剤Gを被処理水Wに添加するものである。
凝集剤添加部7により添加する凝集剤Gの添加量は特に制限はないが、被処理水Wの固形分の濃度変動に関わらず、一定の量の凝集剤Gを添加することが好ましい。後述するように、本実施態様における脱水システム100では、脱水機2に供給される固体分濃度(固体量)は略一定となる。したがって、一定量の凝集剤添加を行うことで、固体分に対する凝集剤添加比率を一定にすることができ、安定したフロック形成を行うことが可能となり。これにより、被処理水Wの固形分の濃度に対して、凝集剤Gを過剰供給することがなくなるため、凝集剤Gの使用コストを抑え、かつ、固体分の脱水効率及び回収量を向上させることが可能となる。
【0031】
また、凝集剤添加部7は、脱水機2より前の段階で、被処理水Wに凝集剤Gを添加することができれば、どのような構造であってもよく、また、どのような場所に設置されていてもよい。
例えば、図1に示すように、本実施態様における凝集剤添加部7の設置箇所として、供給部3と脱水機2の間の供給ラインL1上とすることが挙げられる。これにより、脱水機2の水位Hに応じ、供給部3による流量制御が行われた被処理水Wに対して、凝集剤Gを添加することができる。したがって、凝集剤Gの過剰供給をより確実に抑制し、安定したフロック形成が可能となる。
【0032】
以下、本実施態様の脱水システム100における主な構成について説明する。
〔脱水機〕
脱水機2は、固体分を含む被処理水Wに対し、脱水処理を行うことで、固体分から水分を分離除去し、含水率を低減させて濃縮した固体分(以下、「脱水ケーキD」と呼ぶ)を回収するためのものである。
【0033】
本実施態様における脱水機2は、被処理水Wが供給され、滞留するケーシング21と、ケーシング21内に配設され、固体分から水分を分離除去する脱水部22を備えるものである。ここで、脱水部22は、供給された被処理水Wに浸漬した状態となっている。また、ケーシング21は、被処理水Wが供給ラインL1を介して被処理水Wが供給される被処理水供給部23と、脱水部22により形成された脱水ケーキDを排出する脱水ケーキ排出部24とを備えている。
【0034】
本実施態様における脱水機2は、脱水部22が被処理水Wに浸漬した状態となっている。このため、本実施態様の脱水機2による脱水処理においては、脱水部22にかかる押し込み圧が脱水処理効率に影響する。また、この押し込み圧は、ケーシング21内に滞留(貯留)した被処理水Wの水頭圧に影響を受けるものである。
本実施態様における脱水システム100は、このような脱水機2において、ケーシング21内の被処理水Wの水位Hが一定となるようにすることで、ケーシング21内における被処理水Wの水頭圧(脱水部22にかかる押し込み圧)を一定とし、安定した脱水処理を可能とするものである。
【0035】
本実施態様における脱水機2としては、ケーシング21及び脱水部22を備え、脱水部22が被処理水Wに浸漬する状態となる構造を有するものであればよい。固体分
本実施態様における脱水機2の一例としては、例えば、スクリュープレス脱水機や多重円盤型脱水機と呼ばれる脱水機が挙げられる。
【0036】
(スクリュープレス脱水機)
図2には、本実施態様における脱水機の一例として、スクリュープレス脱水機を示した概略説明図である。
以下、図2に基づき、本実施態様における脱水機2の一例であるスクリュープレス脱水機2Aについて説明する。
【0037】
図2に示されるスクリュープレス脱水機2A(以下、「脱水機2A」という。)は、ケーシング21及び脱水部22として、被処理水滞留部211A及び脱水部配設領域212Aを備えるケーシング21Aと、スクリュー221A及びスクリーン222Aが設けられた脱水部22Aとを備えるものであり、スクリュー221Aの回転駆動により、被処理水Wを圧縮回転・搬送することで固体分から水分を分離除去し、連続的に脱水処理を行う脱水機である。
また、本実施態様における脱水機2Aは、ケーシング21A及び脱水部22Aに加え、被処理水供給部23Aと、脱水ケーキ排出部24Aと、濾液排出部25Aを備えている。
【0038】
ケーシング21Aにおける被処理水滞留部211Aは、脱水部配設領域212Aよりも上方に設けられた領域であり、被処理水供給部23Aにより供給された被処理水Wが滞留(貯留)し、後述する測定部4により被処理水Wの水位を測定する箇所である。
一方、ケーシング21Aにおける脱水部配設領域212Aは、脱水部22Aを配設する空間を形成する領域であり、スクリュー221A及びスクリーン222Aが収容されている。
【0039】
脱水部22Aにおけるスクリュー221Aは、円錐状の回転体に対し、螺旋状に羽根が設けられており、駆動機構(不図示)により回転駆動する。このとき、円錐状の回転体としては、被処理水Wの搬送方向(被処理水供給部23Aから離れる方向)に向かうほど、直径を大きくすることで、被処理水Wを搬送する空間が小さくなるように構成することが挙げられる。これにより、スクリュー221Aが回転することで、固体分を含む被処理水Wを脱水ケーキ排出部24Aの方向に搬送することができ、かつ被処理水供給部23Aから離れるほど(脱水ケーキ排出部24Aに近づくほど)、被処理水Wに対して大きな圧力を負荷することが可能となり、脱水効率を高めることができる。
なお、スクリュー221Aの構造は、スクリュープレス脱水機に用いられる公知の構造であればよく、特に限定されない。また、スクリュー221Aにおける羽根の枚数、形状及び大きさについても特に限定されるものではない。
【0040】
脱水部22Aにおけるスクリーン222Aは、スクリュー221Aの周囲に設けられ、スクリュー221Aにより搬送される被処理水Wは、スクリーン222Aを介して固体分と水分に分離され、水分はスクリーン222Aを介して濾液排出部25Aへ排出され、スクリーン222Aを透過しなかった固体分は、脱水ケーキ排出部24A側に向かって搬送されていく。スクリーン222Aは、被処理水W中の粒度の大きい固体分と水分とを分離することができれば、どのような形状、材質であってもよい。例えば金属メッシュやパンチングメタル等で形成されるものが挙げられる。この場合、強度が高く頑丈なため、メンテナンスにおける作業コストを低減させることが可能となる。
【0041】
被処理水供給部23Aは、供給ラインL1を介し、脱水機2Aへ被処理水Wを供給するためのものである。
被処理水供給部23Aは、ケーシング21Aに対し被処理水Wを供給することができれば、どのような場所に設けられていてもよい。例えば、図2に示すように、被処理水滞留部211Aと接続するように設けることが挙げられる。
【0042】
脱水ケーキ排出部24Aは、脱水ケーキDを脱水機2Aの外部へ排出するためのものである。脱水ケーキ排出部24Aは、脱水部22Aにより十分に脱水された脱水ケーキDを、ケーシング21Aの外部に排出することができれば、どのような場所に設けられていてもよい。例えば、図2に示すように、脱水部22Aにおける被処理水Wの搬送方向の終端部かつケーシング21Aの下部に設けることが挙げられる。
【0043】
濾液排出部25Aは、脱水部22Aにおいて被処理水Wの固体分から分離した水分(濾液)を脱水機2Aの外部に排出するものである。なお、濾液排出部25Aの形状は特に限定されない。例えば、図2に示すように、濾液排出部25Aとして、傾斜板からなるガイドを設けることで、脱水部22Aのスクリーン222Aを介して落下する水分を効率よく脱水機2A外に排出することができる。
【0044】
次に、脱水機2Aの動作について説明する。
まず、固液分離槽1で沈降した沈降成分を被処理水Wとし、この被処理水Wが被処理水供給部23Aから、ケーシング21A内の被処理水滞留部211Aに供給される。このとき、被処理水W中に含まれる固体分の濃度が低い場合、被処理水Wに含まれている水分の多くは、スクリーン222Aを介し、固体分から容易に分離され、濾液排出部25Aを通じて脱水機2Aの外に速やかに排出される。このため、被処理水滞留部211Aには、被処理水Wとしての滞留がほとんど起こらず、水位Hは低いままとなる。一方、被処理水W中に含まれる固体分の濃度が一定以上存在する場合や、ケーシング21A内に被処理水Wを連続して供給することにより、被処理水滞留部211A内の固体分の濃度が一定以上となると、固体分の保水力上昇や固体分の分散性低下等により、固体分から水分の分離が進行しにくくなる。これにより、被処理水滞留部211A及び脱水部配設領域212A内には、一定の固体分濃度を有する被処理水Wが存在することになり、脱水部22Aは被処理水Wに浸漬した状態となる。
【0045】
次に、脱水部22Aにおけるスクリュー221Aを回転駆動することで、脱水部配設領域212A(脱水部22A)内に存在する被処理水Wは、脱水ケーキ排出部24Aに向かって搬送される。ここで、スクリュー221Aは脱水ケーキ排出部24Aに近いほど円錐状の回転体の直径が大きくなっていく構造とすることで、被処理水Wが圧縮されて固形分と液体分に分離される。このとき、被処理水Wから分離した水分は、スクリーン222Aから濾液排出部25Aを介して脱水機2Aの外に排出される。
そして、水分が分離除去されることで、固体分は凝集して脱水ケーキDとなって脱水ケーキ排出部24Aから脱水機2Aの外に排出される。これらの動作を連続的に行うことで、脱水機2Aによる被処理水Wの脱水処理が進行する。
【0046】
なお、本実施態様における脱水機2としての脱水機2Aは、図2に示した構造に限定されるものではない。脱水機2Aとして公知の構造及び公知の付加機構を備えるものを用いることができる。例えば、脱水部22Aのスクリュー221Aに対向するように背圧装置を設けるものや、スクリーン222Aを可動板及び固定板を組み合わせた多重板構造とした多重板型スクリュープレス脱水機を用いることなどが挙げられる。
【0047】
(多重円盤型脱水機)
また、本実施態様における脱水機2の他の例としては、多重円盤型脱水機が挙げられる。
図3は、本実施態様における脱水機の一例として、多重円盤型脱水機を示した概略説明図である。
以下、図3に基づき、本実施態様における脱水機2の一例である多重円盤型脱水機2Bについて説明する。
【0048】
図3に示される多重円盤型脱水機2B(以下、「脱水機2B」という。)は、ケーシング21及び脱水部22として、被処理水滞留部211B及び脱水部配設領域212Bを備えるケーシング21Bと、複数の円盤(円板)221Bが上下2段に多数積層されることで形成された脱水部22Bとを備えるものであり、複数の円盤221B間を固体分を含む被処理水Wが通過することで固体分から水分を分離除去し、連続的に脱水処理を行う脱水機である。
また、本実施態様における脱水機2Bは、ケーシング21B及び脱水部22Bに加え、被処理水供給部23Bと、脱水ケーキ排出部24Bと、濾液排出部25Bを備えている。
ここで、脱水機2Bにおける被処理水供給部23B、脱水ケーキ排出部24B、濾液排出部25Bは、上述した脱水機2Aにおける被処理水供給部23A、脱水ケーキ排出部24A、濾液排出部25Aと構成もしくは機能が同じであるため、説明を省略する。
【0049】
ケーシング21Bにおける被処理水滞留部211Bは、被処理水供給部23A側に設けられた領域であり、後述する測定部4により被処理水Wの水位を測定する箇所である。
一方、ケーシング21Bにおける脱水部配設領域212Bは、脱水部22Bを配設する空間を形成する領域であり、複数の円盤221Bが上下方向に収容されている。
【0050】
脱水部22Bにおける複数の円盤221Bは、金属からなる円形の板を組み合わせたものであり、これを濾過体としてケーシング21B内の上下方向に配置したものである。また、複数の円盤221B(濾過体)を回転させる駆動機構(不図示)を設け、複数の円盤221Bを回転させることで被処理水Wの搬送を行うとともに、複数の円盤221B同士の隙間から水分の分離除去を行うものである。このとき、被処理水Wの搬送方向(被処理水供給部23Bから離れる方向)に向かうほど、複数の円盤221Bの上下方向における配置間隔を小さくすることで、被処理水Wを搬送する空間が小さくなるように構成することが挙げられる。こにより、複数の円盤221Bが回転することで、固体分を含む被処理水Wを脱水ケーキ排出部24Bの方向に搬送することができ、かつ被処理水供給部23Bから離れるほど(脱水ケーキ排出部24Bに近づくほど)、被処理水Wに対して大きな圧力を負荷することが可能となり、脱水効率を高めることができる。
なお、複数の円盤221Bの構造は、多重円盤型脱水機に用いられる公知の構造であればよく、特に限定されない。また、複数の円盤221Bは、全て可動円盤(回転体)からなるものであってもよく、可動円盤と固定円盤との組み合わせによるものとしてもよく、脱水部22Bを形成する複数の円盤221Bの個数、形状及び大きさについても特に限定されるものではない。
【0051】
次に、脱水機2Bの動作について説明する。
まず、固液分離槽1で沈降した沈降成分を被処理水Wとし、この被処理水Wが被処理水供給部23Bから、ケーシング21B内の被処理水滞留部211Bに供給される。このとき、被処理水W中に含まれる固体分の濃度が低い場合、被処理水Wに含まれている水分の多くは、複数の円盤221Bの隙間を介し、固体分から容易に分離され、濾液排出部25Bを通じて脱水機2Bの外に速やかに排出される。一方、被処理水W中に含まれる固体分の濃度が一定以上存在する場合や、ケーシング21B内に被処理水Wを連続して供給することにより、被処理水滞留部211B内の固体分の濃度が一定以上となると、固体分の保水力上昇や固体分の分散性低下等により、固体分から液体分の分離が進行しにくくなる。これにより、被処理水滞留部211B及び脱水部配設領域212B内には、一定の固体分濃度を有する被処理水Wが存在することになり、脱水部22Bは被処理水Wに浸漬した状態となる。
【0052】
次に、脱水部22Bにおける複数の円盤221Bを回転駆動することで、脱水部配設領域212B(脱水部22B)内に存在する被処理水Wは、脱水ケーキ排出部24Bに向かって搬送される。ここで、上下方向に配置された複数の円盤221Bの間隔は、被処理水Wの搬送方向に向かって次第に狭くなるような構造とすることで、被処理水Wが圧縮され、固形分と水分に分離される。このとき、被処理水Wから分離した水分は、濾液排出部25Bを介して脱水機2Bの外に排出される。
そして、水分が分離除去されることで、固体分は凝集して脱水ケーキDとなって脱水ケーキ排出部24Bから脱水機2Bの外に排出される。これらの動作を連続的に行うことで、脱水機2Bによる被処理水Wの脱水処理が進行する。
【0053】
〔供給部〕
供給部3は、固液分離槽1から被処理水Wを脱水機2へ供給するものである。また、供給部3は、後述する制御部5からの指示に基づき、脱水機2に供給する被処理水Wの供給量を調整するものである。
供給部3は、制御部5からの指示に基づき、供給ラインL1を介して固液分離槽1から被処理水Wを脱水機2へ供給できれば、どのようなものであってもよい。
例えば、図1に示すように、供給部3としては、供給ラインL1上にポンプP及び流量可変機構を設け、制御部5の指示に基づき、被処理水Wの流量を変化させるものが挙げられる。また、供給部3には、制御部5からの指示を受け取るための受信部、ポンプPを駆動するエンジンやモーター等の駆動部を備えるものとしてもよい。
被処理水Wの流量を可変とする供給部3を設け、脱水機2のケーシング21内の被処理水Wの水位Hが一定となるように、供給部3による被処理水Wの流量制御を行うことで、水位Hが一定に維持される範囲では、脱水機2における水頭圧が一定となり、脱水機2に滞留している固体分濃度が一定となる状態を維持することが可能となる。これにより、脱水機2における脱水処理効率が高まるとともに、安定した脱水処理を継続することが可能となる。さらに、固体分濃度が脱水機2Aへの被処理水Wの供給量の制御において、被処理水W中の固体分濃度を特に把握する必要がなくなる。これにより、脱水機2Aへの被処理水の供給量制御について、被処理水W中の固体分濃度を把握するための汚泥濃度計等の計測機器を用いる必要がなく、簡便な構成で行うことができる。
【0054】
また、本実施態様における供給部3により、被処理水Wの流量を可変とした被処理水W供給量制御をすることで、脱水機2への被処理水Wの供給を停止することなく、連続した脱水処理が可能となる。特に、脱水処理を必要とする被処理水Wが発生する発生源から、常に被処理水Wの供給が続くような系において、顕著な効果を奏するものである。なお、このような発生源としては、例えば、下水処理場や排水処理場等が挙げられる。
【0055】
本実施態様における供給部3として、ポンプP及び流量可変機構の具体的な組み合わせについては特に限定されない。例えば、流量可変機構としてポンプPの運転周波数を制御する機構を設けることや、流量調整弁と流量計の組み合わせからなる機構などが挙げられる。
【0056】
〔測定部〕
本実施態様における測定部4は、脱水機2内(ケーシング21内)の被処理水Wの水位Hを測定するものである。
測定部4は、脱水機2内(ケーシング21内)における被処理水Wの水位Hを測定することができれば、どのような構造であってもよい。例えば、ケーシング21内に、光・音の反射や透過を利用した液位センサを設けることや、ケーシング21内の被処理水Wの液面にフロート式の液面計などを設けることが挙げられる。また、測定部4としては、計測機器を用いるものに限定されるものではない。例えば、ケーシング21に目盛り付きの棒・板を設けることで作業者が目視で水位Hを読み取るものとすることが挙げられる。
なお、測定部4としては、液位センサ等、水位Hに関するデータをリアルタイムで連続して取得できるものとすることが好ましい。これにより、水位Hの変動(脱水機2中の被処理水Wの状態)を速やかに把握し、制御部5による制御について、迅速かつ的確な対応を行うことが可能となる。
【0057】
ここで、水位Hは、ケーシング21内における被処理水滞留部211A、211Bにおける水位を測定することが挙げられる。
被処理水滞留部211A、211Bの水位Hは、ケーシング21内に満たされた被処理水W中の固体分の濃度の影響を受け、増減するものである。例えば、水位Hが上昇した場合は、ケーシング21内の固体分濃度が高くなったことを示し、水位Hが下降した場合は、ケーシング21内の固体分濃度が低くなったことを示すものである。これにより、汚泥濃度計等を用いて、被処理水W中の固体分濃度を測定することなく、脱水機2内の被処理水Wの状態(固体分濃度)を把握することが可能となる。
【0058】
測定部4で測定した水位Hに係るデータは、後述する制御部5に入力される。なお、データの入力手段としては、測定部4と制御部5が通信手段あるいは配線により入力可能に接続され、測定部4で測定したデータを電気的に送受信することが好ましいが、これに限定されるものではない。入力手段の他の例としては、例えば、測定部4で作業者の目視により得られた水位Hに係るデータを、作業者が制御部5に手動で直接入力することなどが挙げられる。
【0059】
〔制御部〕
制御部5は、測定部4により測定された水位Hに係るデータに基づき、供給部3の制御を行い、脱水機2に供給する被処理水Wの供給量を制御するためのものである。
制御部5は、図1に示すように、供給部3及び測定部4に対し、入出力及び制御可能となるように接続されている。また、制御部5は、測定部4で取得した水位Hデータと、予め設定した標準水位との比較演算を行う演算部(不図示)を設けることが好ましい。
これにより、測定部4で取得した水位Hに係るデータを制御部5に入力し、制御部5では、この水位Hに係るデータと、標準水位との比較演算結果を基に、測定部4で取得した水位Hに係るデータが、標準水位を満たす状態となるように、被処理水Wの供給量を制御するよう、供給部3に指示を行うことが可能となる。
【0060】
制御部5による制御の一例について説明する。
本実施態様における制御部5は、脱水機2におけるケーシング21内の被処理水Wの水位Hが一定となるように、供給部3から供給する被処理水Wの供給量(流量)を制御することで、脱水機2における水頭圧(脱水部22における押し込み圧)を一定に維持し、脱水効率を高め、脱水処理を安定して継続させることが可能となる。
また、脱水機2における水頭圧を一定に維持することは、脱水機2に滞留している固体分濃度が一定に維持されることに等しくなる。したがって、脱水機2におけるケーシング21内の被処理水Wの水位Hが一定となるように、供給部3から供給する被処理水Wの供給量(流量)を制御することで、被処理水W中の固体分濃度が変動しても、脱水機における被処理水W中の固体分の量が一定となるように制御することが可能となる。これにより、脱水機2においては一定量の固体分に対して継続して脱水処理を行うことができるため、脱水後の固体分の排出量を一定とし、脱水処理を経て濃縮された固体分(脱水ケーキD)の回収量低下を抑制することが可能となり、脱水処理に係る作業効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0061】
より具体的には、脱水機2において安定した脱水処理を行うことができる水頭圧が得られる水位Hを基準水位として予め設定し、測定部4で測定した水位Hが基準水位を超えた場合、制御部5は、脱水機2へ供給される被処理水Wの供給量(流量)を減らすよう供給部3に指示を送り、供給部3は脱水機2に供給する被処理水Wの供給量(流量)を低減させるように、ポンプP及び流量可変機構を駆動させる。また、水位Hが基準水位に満たない場合は、被処理水Wの供給量(流量)を増加させる指示を供給部3に送り、水位Hが基準水位と同じである場合は、被処理水Wの供給量(流量)を一定に保つようにという指示を供給部3に送ることが挙げられる。
【0062】
本実施態様における脱水システム100は、固液分離槽1等により固液分離処理を経た沈降成分を被処理水Wとして脱水機2に供給する場合において、特に好適に用いられる。
上述したように、固液分離槽1から排出される沈降成分を被処理水Wとして脱水機2に供給する場合、脱水機2に供給される被処理水W中の固体分の量(固体分濃度)としては徐々に減少していく。
一方、本実施態様における脱水システム100においては、水位Hが基準水位となるように被処理水Wの供給量を制御するため、被処理水W中の固体分の量が徐々に少なくなっていく場合においても、脱水機2においては常に適切な水頭圧を維持できる、すなわち脱水処理を安定して継続するための固体分濃度が適切に保たれる状態となる。
また、本実施態様における脱水システム100では、被処理水W中の固体分濃度の変動があっても、供給部3により脱水処理効率を低下させないための適切な制御が可能となる。したがって、従来の脱水システムにおいて、固体分濃度の変動を平準化するために設けられていた貯留槽(汚泥貯留槽)を設ける必要がなくなる。これにより、システムとしての設置コストや設置スペースの大幅な削減が可能となるという効果も奏する。
【0063】
なお、上述した供給部3、測定部4、制御部5に係る操作は、制御プログラムなどにより全て自動で実行するものであってもよく、作業者による手動操作を含むものであってもよい。なお、作業者の作業負担を低減するという観点から、測定部4及び制御部5の操作を自動制御することがより好ましい。これにより、脱水システム100の維持管理に係るコストを低減することが可能となる。
【0064】
[第2の実施態様]
図4は、本発明の第2の実施態様における脱水システム200の構成を示す概略説明図である。
本実施態様における脱水システム200は、第1の実施態様における脱水システム100における凝集剤添加部7に代えて、凝集剤混合槽8を設け、凝集剤混合槽8において被処理水Wに凝集剤Gを添加・混合することを特徴とするものである。
これにより、脱水機2における脱水処理の前処理として、凝集剤Gによる固体分のフロック化をより効率よく行うことが可能となる。
【0065】
以下、第2の実施態様の脱水システム200について説明する。
なお、本実施態様の脱水システム200の構成のうち、第1の実施態様における脱水システム100の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0066】
図4に示すように、脱水システム200は、固液分離槽1と、脱水機2、供給部3、測定部4、制御部5、凝集剤貯留槽6、凝集剤混合槽8、供給ラインL1、添加ラインL2を備えている。
【0067】
〔凝集剤混合槽〕
本実施態様における凝集剤混合槽8は、供給ラインL1及び添加ラインL2に接続して設置されており、供給部3より脱水機2へ供給される被処理水Wを貯留し、ここに凝集剤Gを添加し撹拌することで、脱水機2による脱水処理における前処理として固体分のフロック化を行うものである。
【0068】
凝集剤混合槽8は、被処理水Wと凝集剤Gを撹拌し混合することができればよく、どのような構造や大きさであってもよい。例えば、電気モーター等の動力により回転する撹拌羽根により被処理水Wと凝集剤Gを混合するものとしてもよい。この場合、より均一に被処理水Wと凝集剤Gとを混合することができる。
【0069】
また、本実施態様における脱水システム200では、凝集剤混合槽8は、少なくとも1槽設けるものとすればよく、被処理水Wに添加する凝集剤Gの種類や性質によっては、複数槽を設けるものとしてもよい。これにより、被処理水Wに対して複数の凝集剤Gを組み合わせて添加することが可能となることから、より安定したフロック形成を行い、脱水処理効率向上を図ることが可能となる。
【0070】
なお、上述した実施態様は脱水システム及び脱水方法の一例を示すものである。本発明に係る脱水システム及び脱水方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る脱水システム及び脱水方法を変形してもよい。
【0071】
例えば、複数の脱水機を連結して脱水処理を行うことにしてもよい。具体的には、スクリュープレス脱水機を用いて脱水した被処理水を、さらに多重円盤型脱水機に供給して脱水処理を行ってもよい。これにより、被処理水に対する脱水効率をさらに高め、含水量をより低減させた脱水ケーキを回収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の脱水システム及び脱水方法は、固体を含有する被処理水の脱水処理に利用することができる。例えば、下水処理場や排水処理場等の水処理場、食品工場、メッキ工場、製紙工場、浚渫作業現場、建設作業現場等で発生する種々の被処理水の脱水処理において利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
100,200…脱水システム、1…固液分離槽、11…撹拌羽根、12…処理水排出部、13…沈降成分排出部、2,2A,2B…脱水機、21,21A,21B…ケーシング、211A,211B…被処理水滞留部、212A,212B…脱水部配設領域、22,22A,22B…脱水部、221A…スクリュー、221B…複数の円盤,222A…スクリーン、23,23A,23B…被処理水供給部、24,24A,24B…脱水ケーキ排出部、25A,25B…濾液排出部、3…供給部、4…測定部、5…制御部、6…凝集剤貯留槽、7…凝集剤添加部、8…凝集剤混合槽、L1…供給ライン、L2…添加ライン、D…脱水ケーキ、H…水位、W…被処理水


図1
図2
図3
図4