(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161566
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】経年劣化による限界時期予測表示システム、限界時期予測表示方法及び限界時期予測表示プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20120101AFI20221014BHJP
G01N 17/00 20060101ALI20221014BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20221014BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
G06Q50/16 300
G01N17/00
G05B23/02 301X
G09B29/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066479
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕二郎
【テーマコード(参考)】
2C032
2G050
3C223
5L049
【Fターム(参考)】
2C032HB05
2C032HC22
2C032HC27
2G050AA07
2G050BA05
2G050BA20
2G050EA10
2G050EB10
2G050EC01
3C223AA01
3C223BA03
3C223BB02
3C223BB08
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB02
3C223FF05
3C223FF46
3C223GG01
3C223GG02
3C223HH04
3C223HH08
5L049CC29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象物が経年劣化によって限界に達する限界時期を容易かつ確実に直接的に把握することができる経年劣化による限界時期予測表示システムを提供する。
【解決手段】経年劣化による限界時期予測表示システムにおいて、サーバ制御部2は、外部から予測表示開始の指示が入力された場合、メモリ3から取得した各機器の劣化経過データに基づいて各機器の限界時期を予測する。次に、各機器を限界時期に応じて複数のグループに分類し、プラントマップに表示されている各機器を、所属するグループに応じて区別してモニタ5に表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配置エリアに配置された複数の検査対象を対象として、各検査対象の経年劣化を2回以上継続的に検査する経年劣化による限界時期予測表示システムであって、
各検査対象の経年劣化の検査結果を毎回、記憶する記憶手段、
前記記憶手段が記憶する検査結果に基づいて、各検査対象が経年劣化によって限界に達する限界時期を予測する予測手段、
複数の検査対象が配置された前記配置エリアの画像を表示する表示手段、
前記予測手段が予測した限界時期を直接的に前記表示手段に表示する制御手段、
を備えたことを特徴とする経年劣化による限界時期予測表示システム。
【請求項2】
請求項1に係る経年劣化による限界時期予測表示システムにおいて、
前記表示手段は、配置エリアに複数の検査対象をアイコンマークとして表示し、
前記制御手段は、検査対象のアイコンマークを異なる表示形式で表示することによって前記予測手段が予測した限界時期を直接的に前記表示手段に表示する、
ことを特徴とする経年劣化による限界時期予測表示システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る経年劣化による限界時期予測表示システムにおいて、
前記制御手段は、各検査対象を予測した限界時期に従ってグループ分けし、当該グループ分けを前記表示手段に表示することによって、限界時期を直接的に前記表示手段に表示する、
ことを特徴とする経年劣化による限界時期予測表示システム。
【請求項4】
所定の配置エリアに配置された複数の検査対象を対象として、各検査対象の経年劣化を2回以上継続的に検査する経年劣化による限界時期予測表示方法であって、
記憶手段が、各検査対象の経年劣化の検査結果を毎回、記憶し、
予測手段が、前記記憶手段が記憶する検査結果に基づいて、各検査対象が経年劣化によって限界に達する限界時期を予測し、
表示手段が、複数の検査対象が配置された前記配置エリアの画像を表示し、
制御手段が、前記予測手段が予測した限界時期を直接的に前記表示手段に表示する、
ことを特徴とする経年劣化による限界時期予測表示方法。
【請求項5】
所定の配置エリアに配置された複数の検査対象を対象として、各検査対象の経年劣化を2回以上継続的に検査する経年劣化による限界時期予測表示プログラムであって、
各検査対象の経年劣化の検査結果を毎回、記憶する記憶機能、
前記記憶手段が記憶する検査結果に基づいて、各検査対象が経年劣化によって限界に達する限界時期を予測する予測機能、
複数の検査対象が配置された前記配置エリアの画像を表示する表示機能、
前記予測手段が予測した限界時期を直接的に前記表示手段に表示する制御機能、
をコンピュータに実行させることを特徴とする経年劣化による限界時期予測表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る経年劣化による限界時期予測表示システム、限界時期予測表示方法及び限界時期予測表示プログラムは、検査対象が経年劣化によって限界に達する限界時期を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
経年劣化する対象物の検査を実施して検査結果を表示する技術としては、後記特許文献1に開示されている地図情報を利用しためっき構造物の経年劣化管理システムがある。この技術は亜鉛めっき送電鉄塔等の経年劣化管理において、地図情報システムを活用し、地形条件、周辺環境、劣化診断結果等を地図上に表示するものである。これによって、地域特性を考慮した経年劣化の進行予測を短期間に行う。
【0003】
すなわちこのシステムは、送電鉄塔の画像診断システム1と地図情報システム2を利用し、各地に建設されている送電鉄塔の所在地と劣化診断結果とを、地図上に色分けしたマーカーによって表示する。
【0004】
そして、地図情報による鉄塔の建設地の地形条件・周辺環境又は鉄塔の気候データ・環境測定データを用いて腐食環境がほぼ同一とみなせる鉄塔を選定し、選定した鉄塔の劣化診断結果と経過年数から選定地域の腐食速度を統計処理により算出する。
【0005】
この各選定地域の腐食速度を用いて、腐食環境に応じて地域が色分けされた腐食マップを作成する。また、腐食マップの精度を向上させるために、腐食速度の大きさを色分けして地図上にマーカーで表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述の特許文献1に開示された技術は、単に腐食環境に応じて地域を色分けして地図上に表示し、あるいは腐食速度の大きさを色分けして地図上に表示するのみである。このため、対象物が経年劣化によって限界に達する限界時期が間接的に示されるのみであり、限界時期を容易かつ確実に直接的に把握することができない。特に対象物が多数ある場合、対象物の限界時期を一見して把握することが難しい。
【0008】
そこで本願に係る経年劣化による限界時期予測表示システム、限界時期予測表示方法及び限界時期予測表示プログラムは、これらの問題を解決するため、対象物が経年劣化によって限界に達する限界時期を容易かつ確実に直接的に把握することができる経年劣化による限界時期予測表示システム、限界時期予測表示方法及び限界時期予測表示プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に係る経年劣化による限界時期予測表示システムは、
所定の配置エリアに配置された複数の検査対象を対象として、各検査対象の経年劣化を2回以上継続的に検査する経年劣化による限界時期予測表示システムであって、
各検査対象の経年劣化の検査結果を毎回、記憶する記憶手段、
前記記憶手段が記憶する検査結果に基づいて、各検査対象が経年劣化によって限界に達する限界時期を予測する予測手段、
複数の検査対象が配置された前記配置エリアの画像を表示する表示手段、
前記予測手段が予測した限界時期を直接的に前記表示手段に表示する制御手段、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本願に係る経年劣化による限界時期予測表示方法は、
所定の配置エリアに配置された複数の検査対象を対象として、各検査対象の経年劣化を2回以上継続的に検査する経年劣化による限界時期予測表示方法であって、
記憶手段が、各検査対象の経年劣化の検査結果を毎回、記憶し、
予測手段が、前記記憶手段が記憶する検査結果に基づいて、各検査対象が経年劣化によって限界に達する限界時期を予測し、
表示手段が、複数の検査対象が配置された前記配置エリアの画像を表示し、
制御手段が、前記予測手段が予測した限界時期を直接的に前記表示手段に表示する、
ことを特徴とする。
【0011】
また、本願に係る経年劣化による限界時期予測表示プログラムは、
所定の配置エリアに配置された複数の検査対象を対象として、各検査対象の経年劣化を2回以上継続的に検査する経年劣化による限界時期予測表示プログラムであって、
各検査対象の経年劣化の検査結果を毎回、記憶する記憶機能、
前記記憶手段が記憶する検査結果に基づいて、各検査対象が経年劣化によって限界に達する限界時期を予測する予測機能、
複数の検査対象が配置された前記配置エリアの画像を表示する表示機能、
前記予測手段が予測した限界時期を直接的に前記表示手段に表示する制御機能、
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願に係る経年劣化による限界時期予測表示システム、限界時期予測表示方法及び限界時期予測表示プログラムにおいては、各検査対象が経年劣化によって限界に達する限界時期を予測し、予測した限界時期を直接的に表示手段に表示する。
【0013】
このため、対象物の具体的な限界時期を一見して把握することができる。したがって、対象物が経年劣化によって限界に達する限界時期を容易かつ確実に直接的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本願に係る経年劣化による限界時期予測表示システム、限界時期予測表示方法及び限界時期予測表示プログラムの第1の実施形態を示すハードウエア構成図である。
【
図2】
図1に示すサーバ制御部2が実行する限界時期の予測表示処理のプログラムのフローチャートである。
【
図3】
図1に示すモニタ5に表示される各機器の限界時期の予測表示を示すプラントマップである。
【
図4】
図1に示す携帯端末10の表示部15の表示例である。
【
図5】特定の機器の検査部位に関する劣化経過データを示す表である。
【
図6】
図5の劣化経過データに係る特定の機器の限界時期を予測するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る経年劣化による限界時期予測表示システム、限界時期予測表示方法及び限界時期予測表示プログラムの下記の要素に対応している。
【0016】
サーバ制御部2・・・制御手段、制御機能、予測手段、予測機能
メモリ3・・・記憶手段、記憶機能
モニタ5・・・表示手段、表示機能
アイコンマーク21・・・検査対象のアイコンマーク
エリア20・・・配置エリア
限界値aに達する時期・・・限界時期
機器・・・検査対象
【0017】
[第1の実施形態]
本願に係る経年劣化による限界時期予測表示システム、限界時期予測表示方法及び限界時期予測表示プログ12ラムの第1の実施形態を説明する。本実施形態においては、産業プラントに配置されている各種機器の経年劣化による限界時期の予測表示を例示する。経年劣化としては機器の腐食等がある。
【0018】
産業プラントの所定のエリアには多数の機器が配置されている。そして、これらの機器を1名又は2名以上の検査作業員がそれぞれ携帯端末を持参し、機器の腐食等を検査する。検査作業員は検査結果を携帯端末から入力し、この検査データはシステムを集中的に管理しているサーバに無線で送信される。
【0019】
(検査システムのハードウエア構成の説明)
本実施形態における検査システムのハードウエア構成を
図1に基づいて説明する。サーバ1は、サーバ制御部2、メモリ3及び通信部4を備えており、サーバ制御部2にはモニタ5が接続されている。また、携帯端末10は、携帯制御部11、入力部12、撮影部13、メモリ14、表示部15及び通信部16を備えており、携帯制御部11には腐食検査装置18が接続されている。サーバ1と携帯端末10とは、それぞれ通信部4及び通信部16を介して無線通信を行い、データを送受信する。
【0020】
携帯端末10の表示部15には、検査を行う際、検査対象とする機器に対応した図面等の画面表示が行われ、検査作業員は入力部12を通じて各種指令や文字を入力し、カメラである撮影部13を用いて検査対象の画像を撮影して表示部15に表示させる。また、腐食検査装置18を用いて機器の腐食を検出し、検出データを携帯端末10に取り込む。これらの入力データはメモリ14に記憶されるとともにサーバ1に向けて送信される。
【0021】
そして、サーバ1は携帯端末10から送信された入力データをメモリ3に記憶して蓄積する。サーバ制御部2はモニタ5にプラントマップ等の表示を行い、この表示内容を制御する。またサーバ制御部2は、各機器の経年劣化による限界時期の予測表示処理の所定のプログラムに従って実行する。
【0022】
(各機器の経年劣化の検査)
前述のように検査作業員は携帯端末10を持参し、産業プラントの所定のエリアに配置された多数の機器の腐食等を検査する。検査は機器ごとに行われ、検査作業員は検査を行う直前に、携帯端末10の入力部12から検査対象とする機器の識別番号を入力し、特定の機器を指定する。
【0023】
なおこの場合、携帯端末10の表示部15に機器の配置図を表示し、特定の機器のアイコンマークをタップして対象機器の指定を入力するように構成してもよい。また、機器に直接付されたバーコードやQRコード(登録商標)を読取装置で読み取り、機器の指定を入力することもできる。
【0024】
識別番号等の入力による機器の指定はサーバ1に向けて送信され、サーバ制御部2は検査対象となる特定の機器を認識し、この機器に関する検査用のデータを携帯端末10に送信する。
図4は携帯端末10の表示部15の表示例であり、サーバ制御部2から送信された検査用のデータに基づいて生成される画面表示70である。
【0025】
画面表示70には、中央部に対象機器の図面79が表示され、上部にタイトル枠78が表示される。タイトル枠78には、機器名、機器の識別番号及び検査日時が表示される。そして、画面表示70には、対象機器の特定の検査部位と関連付けられた入力ウインドウ71、72、73、74、75が表示される。検査部位と各入力ウインドウ71、72、73、74、75は、画面上、ライン90で結ばれることによって関連付けが表示される。これらの検査部位は、検査対象となる特定の機器に関して、必ず検査すべき部位として予め登録され、サーバ1のメモリ3に記憶されている。
【0026】
たとえば入力ウインドウ71は、検査部位名称表示部71a、画像入力部71b及びコメント入力部71cを備えている。検査部位名称表示部71aにはこの検査部位の名称が初めから表示されるが、画像入力部71b及びコメント入力部71cは空欄である。なお、入力ウインドウ72、73、74、75についても、入力ウインドウ71と同様、検査部位名称表示部、画像入力部及びコメント入力部が表示される。
【0027】
検査作業員は携帯端末10の表示部15に表示された画面表示70を参照しながら、各検査部位の腐食の進展度合い等を検査する。検査は検査作業員による目視による確認や腐食検査装置18を用いて行われる。また、検査作業員は検査部位を携帯端末10の撮影部13で撮影し、各入力ウインドウ71、72、73、74、75の画像入力部に入力して表示させ、さらにコメント入力部にコメントを入力して表示させる。本実施形態においては、コメント入力部に腐食の進展度合いを表す「深さ、近傍肉厚、残肉厚」が表示される。
【0028】
たとえば、入力ウインドウ71の画像入力部71bに画像を入力する場合、検査作業員は画像入力部71b をタップした後、対象となる検査部位を撮影部13で撮影する。これによって、画像入力部71b には撮影した画像が表示される。また、腐食検査装置18を用いて検査部位の腐食の進展度合いを検出する。腐食の深さ等のデータは、携帯端末10の携帯制御部11に取り込まれ、自動的にコメント入力部71cの「深さ、近傍肉厚、残肉厚」の欄に表示される。なお、入力ウインドウ71のコメント入力部71cをタップすれば、入力部12を通じてコメントの文字を入力することができる。
【0029】
以上のような検査が、産業プラントの所定のエリアに配置された多数の機器に対して個別に行われ、検査データはすべてサーバ1のサーバ制御部2に取り込まれてメモリ3に記録される。各機器の腐食等は時間の経過に従って発生し、その後徐々に進展する経年劣化であるため、各機器に対する検査はたとえば1年に1回継続的に繰り返して実施される。そして、検査対象となったすべての機器の毎回の検査データのうち、腐食に関するデータが含まれる経過データが劣化経過データとしてメモリ3に蓄積される。
【0030】
(機器の経年劣化による限界時期の予測表示処理)
次にサーバ制御部2が実行する、機器の経年劣化による限界時期の予測表示処理のプログラムを、
図2のフローチャートに従って説明する。サーバ1に外部から予測表示開始の指示が入力された場合(ステップS2)、サーバ制御部2は各機器の劣化経過データをメモリ3から取り出し、この劣化経過データに基づいて各機器の限界時期を予測する(ステップS4)。
【0031】
限界時期とは、機器が経年劣化によって正常な状態を維持することができなくなり、修理や交換等の対処が必要になると考えられる時期である。たとえば、機器の金属面に腐食が生じて進展し、機器の交換や修理が必要となる時期がこの機器についての限界時期である。
【0032】
図4の画面表示70に示された機器の場合、入力ウインドウ71によって示された検査部位に腐食のデータが記録されている。
図5は、この検査部位に関する劣化経過データを示した表である。この例では3回の検査データが記録されており、2回目の検査で腐食が確認され、3回目の検査で腐食の進展が認められている。
【0033】
表中の「近傍肉厚」の欄の数値が腐食のないときの検査部位の厚みであり、腐食が進展して「深さ」が大きくなることに対応して「残肉厚」が小さくなる。すなわち、「残肉厚」の欄の数値が小さくなるに従って腐食が進んでいることになる。
【0034】
この
図5に示す劣化経過データから画面表示70の入力ウインドウ71よって示された検査部位の限界時期を予測する。具体的には、
図6に示すように残肉厚の数値と経過年数との関係をグラフ化してその近似線L1を求め、近似線L1の傾きを劣化率(劣化速度)として算出する。
【0035】
そして、各機器のそれぞれの検査部位には既定の限界値aが予め設定されており、限界値aと近似線L1の傾きに基づいて限界時期が算出される。すなわち
図6のグラフにおいて、近似線L1と限界値aが示す限界基準線L2との交点が限界時期である。
図6の例では、2022年3月が限界時期であり、2021年1月を現在とした場合、1年2ヵ月後に限界時期が到来することが予測される。本実施形態において限界値aは、検査対象の検査部位ごとに予め設定されサーバ1のメモリ3に登録されているが、すべての検査対象及び検査部位について共通の限界値aを設定してもよい。
【0036】
なお、特定の機器について劣化経過データが記録されている検査部位が複数ある場合、その検査部位ごとに限界時期を予測する。そして、本実施形態においては、最も早く限界時期が到来する検査部位を取り上げ、その時期を当該機器の限界時期として把握する。なお、特定の検査部位を指定してその限界時期を当該機器の限界時期として把握することもできる。
【0037】
こうして、検査対象であるすべての機器ごとに限界時期を決定する。なお、腐食に関する劣化経過データがまったく記録されていない機器については、限界時期を「0」として把握する。
【0038】
次にサーバ制御部2は、ステップS6に進み、各機器を限界時期に応じて複数のグループに分類する。本実施形態では、「腐食なし」グループ、「1年後」グループ、「5年後」グループ、「10年後」グループ、「20年後」グループの5つのグループを設定する。「腐食なし」グループは、劣化経過データが記録されておらず限界時期が「0」の機器が分類されるグループである。
【0039】
そして、「1年後」グループは限界時期が現在から1年未満及び1年以上5年未満の機器、「5年後」グループは限界時期が現在から5年以上10年未満の機器、「10年後」グループは限界時期が現在から10年以上20年未満の機器、「20年後」グループは限界時期が現在から20年以上の機器がそれぞれ分類されるグループである。
図4の画面表示70に示された機器の場合、限界時期は現在から1年2ヵ月後であるため(
図6)、「1年後」グループに分類される。
【0040】
続いてサーバ制御部2は、プラントマップに表示されている各機器を、所属するグループに応じて区別してモニタ5に表示する(ステップS8)。
図3がモニタ5に表示されるプラントマップの一例であり、エリア20に配置された多数の機器をアイコンマーク21等で表している。本実施形態では、アイコンマーク21をグループに応じて異なる模様で表示している。
【0041】
モニタ5に表示されるプラントマップには、
図3に示すようにグループ参照枠25が設けられ、このグループ参照枠25には各グループのアイコンマークの模様、該当数、グループの年数が示されている。
図3の例では、たとえば「1年後」グループに分類されている機器の数は「6」であることが表示されており、エリア20内に「1年後」グループであるアイコンマーク21の設置場所が、アイコンマーク21の模様によって示されている。なお、検査データのない機器については、グループ参照枠25において「該当データなし」として表示され、アイコンマーク21は無模様で表される。
【0042】
このようなグループごとに区別した表示によって、エリア20内に配置されている各機器の具体的な限界時期を一見して把握することができる。したがって、各機器が経年劣化によって限界に達する限界時期を容易かつ確実に直接的に把握することができ、さらに限界時期に達する機器のエリア20内における配置を容易に把握することが可能になる。そして、サーバ1に外部から予測表示終了の指示が入力された場合、サーバ制御部2は機器の経年劣化による限界時期の予測表示処理を終了する(ステップS10)。
【0043】
本実施形態では、機器のアイコンマーク21をグループに応じて異なる模様で表示したが、たとえばアイコンマーク21をグループに応じて異なる色彩で表示することによって、グループの区別を表示することもできる。
【0044】
また本実施形態では、区別された複数のグループをすべて表示したが、たとえば任意に選択した1つ又は2つ以上の一部のグループのみが区別されて表示されるようにしてもよい。たとえば
図3に示す表示において、グループ参照枠25内の「1年後」グループを画面上のポインタ等で選択した場合、エリア20に「1年後」グループに属する6つのアイコンマーク21のみが模様や色彩付きで表示される。さらに「1年後」グループ及び「5年後」グループを選択した場合、エリア20には「1年後」グループに加え、「5年後」グループに属する2つのアイコンマーク21が模様や色彩付きで表示される。この場合、「1年後」グループのアイコンマーク21と「5年後」グループのアイコンマーク21とは異なる模様や色彩で表示され、両グループが区別される。
【0045】
また、グループ参照枠25にスライダーバーの表示を設け、このスライダーバーを任意にスライドさせることによってグループを選択し、選択されたグループのアイコンマーク21のみが模様や色彩付きで区別されて表示されるように構成することもできる。
【0046】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、経年劣化による限界時期予測表示の例として産業プラントに配置されている各種機器の経年劣化による限界時期の表示を例示したが、これに限定されるものではなく、検査対象の経年劣化を2回以上継続的に検査するものであれば本願に係る経年劣化による限界時期予測表示システム、限界時期予測表示方法及び限界時期予測表示プログラムを適用することができる。
【0047】
また、前述の実施形態においては経年劣化の例として腐食を掲げたが、これに限定されるものではなく、時間の経過に従って進展する劣化であれば、他の経年劣化を対象とすることができる。
【0048】
さらに、前述の実施形態において示した
図3の画面表示はモニタ5(表示手段)への配置エリアの画像の一例であり、画像における機器21のアイコンマークの配置やデザイン等はこれらに限定されるものではなく、他の配置やデザイン等を採用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
2:サーバ制御部 3:メモリ 5:モニタ 20:エリア
21:アイコンマーク a:限界値