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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161567
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】除電装置
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/02 20060101AFI20221014BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H05F3/02 R
G03G21/00 530
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066480
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗田 知一
(72)【発明者】
【氏名】田中 勝己
(72)【発明者】
【氏名】浜端 直人
(72)【発明者】
【氏名】金山 清俊
(72)【発明者】
【氏名】三井 太郎
【テーマコード(参考)】
2H270
5G067
【Fターム(参考)】
2H270KA53
2H270MC00
2H270MC78
2H270MD12
2H270MD29
2H270SA18
2H270SB21
2H270SB30
2H270SC14
5G067AA23
5G067AA26
5G067DA02
5G067EA10
(57)【要約】
【課題】2本の除電ロールにより構成されたロール対の間に記録媒体を通過させて除電を行う際に、記録媒体が一方の除電ロールに巻き付いてしまうことを防ぐ。
【解決手段】除電ロールユニット54は、2本の除電ロール61、62と、剥離部材63とを備えている。この2本の除電ロール61、62は、それぞれ異なる電位の電圧が印加され、用紙が通過することによりその用紙の帯電量を減少させて除電を行うように構成されている。剥離部材63は、2本の除電ロール61、62のうちの一方の除電ロール61の表面に当接して設けられ、除電ロール61の回転に伴って除電ロール61に付着した用紙を剥離するよう構成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる電位の電圧が印加され、記録媒体が通過することにより当該記録媒体の帯電量を減少させて除電する2本の除電ロールと、
前記2本の除電ロールのうちの一方の除電ロールの表面に当接して設けられ、当該除電ロールの回転に伴って当該除電ロールに付着した記録媒体を剥離する剥離部材と、
を備えた除電装置。
【請求項2】
前記2本の除電ロールが、それぞれ鉛直方向の上下に配置され、前記剥離部材が、少なくとも、鉛直方向の下側に配置された除電ロールに対して当接して設けられている請求項1記載の除電装置。
【請求項3】
前記2本の除電ロールのうちの一方の除電ロールに給電が行われ、前記剥離部材が、少なくとも、非給電側の除電ロールに対して当接して設けられている請求項1記載の除電装置。
【請求項4】
前記剥離部材の先端が、前記除電ロールの正転方向の下流側の面との間の角度が鋭角となるように当接して設けられている請求項1から3のいずれか1項に記載の除電装置。
【請求項5】
前記剥離部材が、前記除電ロールの表面に付着した記録媒体を当該除電ロールの回転に伴って剥離するような位置に配置されている請求項1から3のいずれか1項に記載の除電装置。
【請求項6】
前記剥離部材が、記録媒体を搬送する搬送経路の幅方向に複数設けられている請求項1から5のいずれか1項に記載の除電装置。
【請求項7】
前記剥離部材が、弾性部材により前記除電ロールの表面方向に付勢されることにより当該除電ロールの表面に当接するよう構成されている請求項1から6のいずれか1項に記載の除電装置。
【請求項8】
前記2本の除電ロールの回転を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、記録媒体が前記2本の除電ロールの間を通過して後段に搬送される正転方向に前記2本の除電ロールを回転させる正転動作を行う前に、前記剥離部材が設けられた除電ロールを正転方向とは逆回転の逆転方向に回転させる逆転動作を行う請求項1記載の除電装置。
【請求項9】
前記制御部は、記録媒体に対する印刷処理の開始時に加えて、1つの印刷指示に基づいて記録媒体に対する印刷処理が完了した後にも前記除電ロールの逆転動作を行うよう制御する請求項8記載の除電装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記除電ロールの逆転動作を行った後に、前記除電ロールの動作を停止してから、前記除電ロールの正転動作を行うよう制御する請求項8又は9記載の除電装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記除電ロールの逆転動作を行った後に正転動作を行う際に、正転動作時における前記除電ロールの回転速度を定常回転となるまで徐々に増加させるよう制御する請求項8又は9記載の除電装置。
【請求項12】
前記2本の除電ロール及び前記剥離部材が、除電装置本体からの挿抜が可能に構成された除電ロールユニットに配設されている請求項1から11のいずれか1項に記載の除電装置。
【請求項13】
前記除電ロールユニットを前記除電装置本体に挿入する際に、前記除電ロールユニットの挿入位置を案内するための案内板をさらに備えた請求項12記載の除電装置。
【請求項14】
前記前記2本の除電ロールにより構成される除電ロール対が複数設けられている請求項1から13のいずれか1項に記載の除電装置。
【請求項15】
それぞれ異なる電位の電圧が印加され、記録媒体が通過することにより当該記録媒体の帯電量を減少させて除電する除電ロール及び除電ベルトと、
前記除電ロール及び前記除電ベルトのうちの一方の表面に当接して設けられ、当該除電ロールの回転又は当該除電ベルトの回動に伴って当該除電ロール又は当該除電ベルトに付着した記録媒体を剥離する剥離部材と、
を備えた除電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高抵抗の被帯電媒体を除電する除電手段として、搬送される被帯電媒体に接触する除電部材を有し、被帯電媒体に帯電した電荷の過半量を除電する第1の接触型除電手段と、第1の接触型除電手段よりも被帯電媒体の搬送方向下流側に設けられ、第1の接触型除電手段にて除電された後の被帯電媒体の残電荷を非接触な状態で除電する第2の非接触型除電手段と、を有する除電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-167169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、2本の除電ロールにより構成されたロール対の間に記録媒体を通過させて除電を行う際に、記録媒体が一方の除電ロールに巻き付いてしまうことを防ぐことが可能な除電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1態様の除電装置は、それぞれ異なる電位の電圧が印加され、記録媒体が通過することにより当該記録媒体の帯電量を減少させて除電する2本の除電ロールと、
前記2本の除電ロールのうちの一方の除電ロールの表面に当接して設けられ、当該除電ロールの回転に伴って当該除電ロールに付着した記録媒体を剥離する剥離部材とを備えている。
【0006】
本発明の第2態様の除電装置は、第1態様の除電装置において、前記2本の除電ロールが、それぞれ鉛直方向の上下に配置され、前記剥離部材が、少なくとも、鉛直方向の下側に配置された除電ロールに対して当接して設けられている。
【0007】
本発明の第3態様の除電装置は、第1態様の除電装置において、前記2本の除電ロールのうちの一方の除電ロールに給電が行われ、前記剥離部材が、少なくとも、非給電側の除電ロールに対して当接して設けられている。
【0008】
本発明の第4態様の除電装置は、第1態様から第3態様までのいずれか1つの態様の除電装置において、前記剥離部材の先端が、前記除電ロールの正転方向の下流側の面との間の角度が鋭角となるように当接して設けられている。
【0009】
本発明の第5態様の除電装置は、第1態様から第3態様までのいずれか1つの態様の除電装置において、前記剥離部材が、前記除電ロールの表面に付着した記録媒体を当該除電ロールの回転に伴って剥離するような位置に配置されている。
【0010】
本発明の第6態様の除電装置は、第1態様から第5態様までのいずれか1つの態様の除電装置において、前記剥離部材が、記録媒体を搬送する搬送経路の幅方向に複数設けられている。
【0011】
本発明の第7態様の除電装置は、第1態様から第6態様までのいずれか1つの態様の除電装置において、前記剥離部材が、弾性部材により前記除電ロールの表面方向に付勢されることにより当該除電ロールの表面に当接するよう構成されている。
【0012】
本発明の第8態様の除電装置は、第1態様の除電装置において、前記2本の除電ロールの回転を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、記録媒体が前記2本の除電ロールの間を通過して後段に搬送される正転方向に前記2本の除電ロールを回転させる正転動作を行う前に、前記剥離部材が設けられた除電ロールを正転方向とは逆回転の逆転方向に回転させる逆転動作を行う。
【0013】
本発明の第9態様の除電装置は、第8態様の除電装置において、前記制御部が、記録媒体に対する印刷処理の開始時に加えて、1つの印刷指示に基づいて記録媒体に対する印刷処理が完了した後にも前記除電ロールの逆転動作を行うよう制御する。
【0014】
本発明の第10態様の除電装置は、第8態様又は第9態様の除電装置において、前記制御部が、前記除電ロールの逆転動作を行った後に、前記除電ロールの動作を停止してから、前記除電ロールの正転動作を行うよう制御する。
【0015】
本発明の第11態様の除電装置は、第8態様又は第9態様の除電装置において、前記制御部が、前記除電ロールの逆転動作を行った後に正転動作を行う際に、正転動作時における前記除電ロールの回転速度を定常回転となるまで徐々に増加させるよう制御する。
【0016】
本発明の第12態様の除電装置は、第1態様から第11態様までのいずれか1つの態様の除電装置において、前記2本の除電ロール及び前記剥離部材が、除電装置本体からの挿抜が可能に構成された除電ロールユニットに配設されている。
【0017】
本発明の第13態様の除電装置は、第12態様の除電装置において、前記除電ロールユニットを前記除電装置本体に挿入する際に、前記除電ロールユニットの挿入位置を案内するための案内板をさらに備えている。
【0018】
本発明の第14態様の除電装置は、第1態様から第13態様までのいずれか1つの態様の除電装置において、前記前記2本の除電ロールにより構成される除電ロール対が複数設けられている。
【0019】
本発明の第15態様の除電装置は、それぞれ異なる電位の電圧が印加され、記録媒体が通過することにより当該記録媒体の帯電量を減少させて除電する除電ロール及び除電ベルトと、
前記除電ロール及び前記除電ベルトのうちの一方の表面に当接して設けられ、当該除電ロールの回転又は当該除電ベルトの回動に伴って当該除電ロール又は当該除電ベルトに付着した記録媒体を剥離する剥離部材とを備えている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1態様の除電装置によれば、2本の除電ロールにより構成されたロール対の間に記録媒体を通過させて除電を行う際に、記録媒体が一方の除電ロールに巻き付いてしまうことを防ぐことができる。
【0021】
本発明の第2態様の除電装置によれば、記録媒体が巻き付く可能性が高い方の除電ロールに記録媒体が巻き付いてしまうことを防ぐことができる。
【0022】
本発明の第3態様の除電装置によれば、記録媒体が巻き付く可能性が高い方の除電ロールに記録媒体が巻き付いてしまうことを防ぐことができる。
【0023】
本発明の第4態様の除電装置によれば、除電ロールの回転に伴って除電ロールに付着した記録媒体を剥離させることができる。
【0024】
本発明の第5態様の除電装置によれば、除電ロールの回転に伴って除電ロールに付着した記録媒体を剥離させることができる。
【0025】
本発明の第6態様の除電装置によれば、異なる幅の記録媒体を除電する場合でも、除電ロールに付着した記録媒体を剥離することができる。
【0026】
本発明の第7態様の除電装置によれば、隙間を設けることなく剥離部材を除電ロールの表面に当接させることができる。
【0027】
本発明の第8態様の除電装置によれば、剥離部材の先端が除電ロール表面に結着した場合でも、剥離部材の先端が折れ曲がってしまい、除電ロールに付着した記録媒体が正常に剥離されなくなるような事態の発生を防ぐことができる。
【0028】
本発明の第9態様の除電装置によれば、コロナ放電により発生する放電生成物の影響により、剥離部材の先端が除電ロール表面に結着する可能性を低減することができる。
【0029】
本発明の第10態様の除電装置によれば、除電ロールを回転させるための機構の負荷を低減することができる。
【0030】
本発明の第11態様の除電装置によれば、剥離部材の先端が折れ曲がる可能性を低減することができる。
【0031】
本発明の第12態様の除電装置によれば、容易に除電ロールの交換を行うことが可能となる。
【0032】
本発明の第13態様の除電装置によれば、除電ロールユニットを除電装置本体に挿入する際のユーザの手間を削減することができる。
【0033】
本発明の第14態様の除電装置によれば、複数の除電ロール対により記録媒体の除電を実行することができる。
【0034】
本発明の第15態様の除電装置によれば、除電ロール及び除電ベルトにより構成された除電手段の間に記録媒体を通過させて除電を行う際に、記録媒体が除電ロール又は除電ベルトに巻き付いてしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態の画像形成システム10の構成を示す図である。
図2図1に示した除電装置50の外観を説明するための斜視図である。
図3図2に示した除電装置50の構造を説明するための図である。
図4】除電ロールユニット54の斜視図である。
図5】除電ロールユニット54を除電装置50の本体から脱着する際の様子を示す図である。
図6図4に示した除電ロールユニット54の断面図である。
図7】剥離部材63の周辺を拡大した斜視図である。
図8図3に示した除電ロールユニット54により用紙の除電が行われる際の詳細を説明するための図である。
図9】除電ロールユニット54に剥離部材63が設けられていない場合に用紙の除電ロール61への巻き付きが発生する様子を示す図である。
図10】剥離部材63により用紙の除電ロール61への巻き付きを防止する様子を説明するための図面である。
図11】剥離部材63により用紙の除電ロール61への巻き付きを防止する様子を説明するための図面である。
図12】除電ロール61、62が停止状態からいきな正転方向への回転を行った場合の様子を説明するための図である。
図13】制御部56が、除電ロール61、62を停止状態から回転状態に移行させる際の回転制御を説明するための図である。
図14】1枚のプレート状の剥離部材64を用いた除電ロールユニット54aの斜視図である。
図15図14に示した除電ロールユニット54aの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0037】
図1は本発明の一実施形態の画像形成システム10のシステム構成を示す図である。
【0038】
本発明の一実施形態の画像形成システム10は、図1に示されるように、画像形成装置20と、後処理装置30と、インターポーザ40と、除電装置50と、検査装置60と、スタッカ70と、後処理装置80とから構成されている。
【0039】
画像形成装置20は、印刷用紙等の記録媒体を収納して、収納した印刷用紙上に画像を形成する処理を実行する機能を備えている。なお、記録媒体には、印刷用紙だけでなく画像を印刷することが可能なフィルム等も含まれる。ただし、以下においては記録媒体として印刷用紙(以下、用紙と省略する。)を用いる場合について説明する。
【0040】
後処理装置30は、画像形成装置20により画像が形成された用紙に対して、冷却、カール補正、合紙挿入又は穿孔等の後処理を行って後段のインターポーザ40に搬送する。
【0041】
インターポーザ40は、セットされた合紙を搬送経路途中に挿入する合紙挿入装置である。
【0042】
除電装置50は、帯電した用紙の帯電量を減少させる除電を行う。除電装置50により用紙の帯電を除電する具体的な構造については後述する。
【0043】
検査装置60は、画像形成装置20から画像が印刷された後の用紙を前段から受け取り、この用紙上に印刷された画像の検査、つまり用紙上に印刷された画像に異常が有るか否かの判定を実行している。具体的には、検査装置60は、画像形成装置20から用紙上に印刷した画像の画像データを受信し、画像形成装置20から搬送されてきた用紙の画像を読み取って、受信した画像データの画像と、読み取った画像との照合を行い、搬送されてきた用紙上に印刷された画像が正常であるのか異常であるのかを判定している。
【0044】
スタッカ70は、画像形成装置20により画像が印刷された用紙が搬送されてくると、その用紙を内部に収容する。
【0045】
後処理装置80は、画像形成装置20により画像が形成された用紙に対する後処理を行う。具体的には、後処理装置80は、画像形成装置20により画像が形成された用紙に対する折り機能、裁断機能、製本機能、綴じ機能、積載機能、揃え機能、穿孔機能および排紙機能のうちの少なくともいずれか1つまたは複数の機能を有する。ここで、折り機能は、用紙に対して折り処理を実行する機能である。また、裁断機能とは、冊子として形成された用紙の天地や小口を裁断する機能である。また、製本機能とは、ブックレット機能とも呼ばれ、複数の用紙を束ねて冊子を生成する機能である。綴じ機能は、ステープル機能とも呼ばれ、複数枚の用紙に対してステープルを用いて綴じる機能である。積載機能は、搬送されてきた用紙を順次トレイ上に積載する機能である。揃え機能とは、タンパー/ジョガーフェンス機能とも呼ばれ、用紙の幅方向等を揃える機能である。穿孔機能とは、パンチ機能とも呼ばれ、用紙の所定箇所にパンチ穴を形成する機能である。
【0046】
本実施形態の画像形成システム10は上記のような構成となっていることにより、画像形成装置20において画像が印刷された用紙は、後処理装置30、インターポーザ40、除電装置50、検査装置60、スタッカ70、後処理装置80という順序で搬送され各種処理が実行される。
【0047】
ここで、画像形成装置20では、帯電した感光体にレーザ光等を照射して静電潜像を形成し、形成した静電潜像をトナー等の色材により現像し、現像した画像を用紙に転写した後に定着処理を実行することにより印刷が行われる。そのため、画像形成装置20において画像が形成された後の用紙等は帯電されていることが多い。特に、樹脂フィルムのような高抵抗の誘電体を記録媒体として使用した場合、記録媒体に帯電する電荷量は多くなる可能性が高い。そして、このように記録媒体の表面が例えば負極性のマイナス電荷で帯電されたとすると、誘電分極により記録媒体の裏面には正極性のプラス電荷が誘起されることになる。その結果、記録媒体どうしが静電引力により吸着してしまい、記録媒体を帯電したままの状態で後処理装置80において後処理しようとした場合、排紙トレイ上で記録媒体が重なり合うことで記録媒体どうしが帯電付着してしまう事態や、人体との放電現象が発生してしまうような事態が発生する。
【0048】
さらに、帯電したままの用紙等の記録媒体が検査装置60を通過する場合には、検査の際にノイズが発生して、検査結果が誤ったものとなってしまうような事態が発生する可能性もある。
【0049】
そのため、本実施形態の画像形成システム10では、記録媒体に帯電した電荷を減少させる除電を行うための除電装置50が、画像形成装置20の後段に設けられている。
【0050】
次に、図1に示した除電装置50の外観について図2の斜視図を参照して説明する。除電装置50は、図2に示されるように、前段や後段の他の装置と接続可能に構成され、前段の装置から搬送されてきた用紙を受け取り、除電処理を行った後に後段の装置に搬送するような構造となっている。本実施形態の画像形成システム10は、図1に示したような構成となっていることにより、除電装置50は、前段のインターポーザ40から搬送されてきた用紙を受け取り、除電処理を行った後に、後段の検査装置60に対して除電後の用紙を搬送するようになっている。
【0051】
次に、図2に示した除電装置50の構造について図3を参照して説明する。図3は、図2に示された除電装置50を正面から見て内部を透視した場合の図となっている。
【0052】
除電装置50は、図3に示されるように、搬送ロール対51~53と、除電ロールユニット54と、非接触式除電ユニット55と、制御部56とを備えている。
【0053】
除電装置50では、搬送ロール対51~53により前段の装置から搬送されてきた用紙を後段の装置に搬送するような構成となっている。そして、搬送ロール対51と搬送ロール対52との間には、除電ロールユニット54が配置され、搬送ロール対52と搬送ロール対53との間には、非接触式除電ユニット55が配置されている。
【0054】
除電ロールユニット54は、2本の除電ロール61、62を内部に有し、接触式除電器として機能して、用紙に対して直接接触して電荷を付与することにより、ある程度大きな除電量が得られる反面、除電後の用紙の表面電位のばらつき量が大きく、除電が不均一になり易い傾向がある。
【0055】
そして、非接触式除電ユニット55は、例えば、コロトロン方式またはスコロトロン方式の除電器であり、例えば交流電圧を用いてコロナ放電を行って発生したイオンを用紙に供給することにより用紙に接触せずに電荷を除電する機能を備えている。この非接触式除電ユニット55によれば、大きな除電量を確保することはできないが、除電後の表面電位のばらつき量が小さく、均一に除電することが可能である。
【0056】
本実施形態の除電装置50では、このように特性が異なる2つの除電器である除電ロールユニット54と、非接触式除電ユニット55により前段の装置から搬送されてきた用紙に対する除電を行って、後段の装置に搬送している。
【0057】
そして、制御部56は、搬送ロール対51~53、除電ロールユニット54、非接触式除電ユニット55の動作を制御して、用紙に対する除電処理を実行する。
【0058】
なお、除電ロールユニット54には、上述したように2本の除電ロール61、62が設けられており、制御部56は、この2本の除電ロール61、62の回転を制御している。
【0059】
この2本の除電ロール61、62により用紙を挟持して搬送して除電を行う。なお、除電ロールユニット54は、除電装置50の本体に対して脱着可能に構成されている。
【0060】
この除電ロールユニット54の斜視図を図4に示す。除電ロールユニット54は、図4に示されるように、2本の除電ロール61、62が、それぞれ鉛直方向の上下に配置され、複数の剥離部材63が、少なくとも、鉛直方向の下側に配置された除電ロール61に対して当接して設けられている。
【0061】
そして、複数の剥離部材63は、それぞれ、用紙を搬送する搬送経路の幅方向に並べられた状態で設けられている。
【0062】
このように、2本の除電ロール61、62及び複数の剥離部材63が、除電装置50の本体からの挿抜が可能に構成された除電ロールユニットに配設されている。
【0063】
この除電ロールユニット54を除電装置50の本体から脱着する際の様子を図5に示す。図5に示されるように、除電装置50には、除電ロールユニット54を除電装置50の本体に挿入する際に、除電ロールユニット54の挿入位置を案内するための案内板57が設けられている。この案内板57は、除電ロールユニット54を装着するための装着口より一部が突出するように構成されている。そのため、ユーザは、除電ロールユニット54を除電装置50に挿入する際には、この案内板57に除電ロールユニット54の下部を載せることにより、容易に除電ロールユニット54を除電装置50の本体に装着させることができる。
【0064】
次に、図4に示した除電ロールユニット54の断面図を図6に示す。
【0065】
除電ロールユニット54は、2本の除電ロール61、62と、剥離部材63とを備えている。この2本の除電ロール61、62は、それぞれ異なる電位の電圧が印加され、用紙が通過することによりその用紙の帯電量を減少させて除電を行うように構成されている。
【0066】
そして、剥離部材63は、2本の除電ロール61、62のうちの一方の除電ロール61の表面に当接して設けられ、除電ロール61の回転に伴って除電ロール61に付着した用紙を剥離するよう構成されている。
【0067】
剥離部材63は、可動部71と、支持部72と、弾性体であるバネ73とにより構成されている。
【0068】
支持部72は、除電ロールユニット54の筐体に固定され、可動部71を可動可能なように支持する。可動部71は、支持部72により可動可能に支持され、バネ73により除電ロール61の表面方向に付勢されている。そして、可動部71は、バネ73により除電ロール61の表面方向に付勢されることにより除電ロール61の表面に当接するよう構成されている。
【0069】
なお、剥離部材63の先端である可動部71の先端部は、除電ロール61の正転方向の下流側の面との間の角度が鋭角となるように当接して設けられている。そして、剥離部材63は、除電ロール61の表面に付着した用紙をこの除電ロール61の回転に伴って剥離するような位置に配置されている。
【0070】
剥離部材63は、上記のような構成となっていることにより、除電ロール61の回転に伴って除電ロール61に付着した用紙を剥離するように機能する。
【0071】
剥離部材63の周辺を拡大した斜視図を図7に示す。図7を参照すると、支持部72に回転可能に取り付けられた可動部71が、バネ73により付勢される様子が示されているのが分かる。
【0072】
次に、図3に示した除電ロールユニット54により用紙の除電が行われる際の詳細について図8を参照して説明する。なお、図8においては、剥離部材63のうち、可動部71のみを模式的に表して説明し、剥離部材63全体の図示を省略する。
【0073】
図8に示されるように配置された対構成の除電ロール61、62は、一方の除電ロール62には駆動モータからの駆動力が伝達されるとともに、他方の除電ロール61を除電ロール62と接触させることで従動するように構成されている。
【0074】
そして、除電ロール62には除電用電源が接続され、この除電用電源からは例えば除電バイアスVaが印加されている。本実施形態では、正極性の直流電圧が除電バイアスVaとして使用されている。また、他方の除電ロール61は、接地されている。
【0075】
除電ロールユニット54では、一方の除電ロール62に除電バイアスVaを印加することにより、除電ロールユニット54は、帯電した用紙の表面に正極性の電荷を用紙の通過に伴って付与する。その結果、用紙に付与された電荷量分だけ用紙の表面上の不極性のマイナス電荷が除電されることになる。そして、用紙表面の電荷が減少することに伴って、用紙の裏面では誘電分極した正極性のプラス電荷も減少する。
【0076】
本実施形態の除電ロールユニット54では、図8に示されるように、2本の除電ロール61、62のうちの一方の除電ロール62に給電が行われ、複数の剥離部材63が、少なくとも、非給電側の除電ロール61に対して当接して設けられている。ここで、除電ロール62には除電バイアスVaが印加されていることにより、除電ロール62は給電側の除電ロールである。また、除電ロール61には除電バイアスVaが印加されておらず接地されていることにより、除電ロール61は非給電側の除電ロールである。
【0077】
そして、剥離部材63の一部を構成する可動部71の先端が、除電ロール61の表面に当接するよう配置されている。この剥離部材63は、除電ロール61に付着した用紙を除電ロール61の回転に伴って剥離するように機能する。
【0078】
剥離部材63は、除電を行った後の用紙が接地側の除電ロール61に巻き付いてしまい、用紙詰まりが発生することを防止するために設けられている。除電ロールユニット54に剥離部材63が設けられていない場合に用紙の除電ロール61への巻き付きが発生する様子を図9に示す。
【0079】
図9では、用紙Sに対する除電を行った際に、除電バイアスVaが印加されているプラス電位の除電ロール62から用紙にプラス電荷が付与されたことにより用紙Sが帯電してしまい、対抗電極となる接地側の除電ロール61との間の電位差が大きくなったことにより、用紙Sが除電ロール61に巻き付いてしまう様子が示されている。なお、このような除電ロール61への巻き付きは、いわゆる腰の弱い用紙、例えば薄紙等に対して除電を行った際に発生し易い。
【0080】
そして、このような除電ロール61への用紙Sの巻き付きが発生すると、除電後の用紙Sが搬送ロール対52に届かずに用紙詰まりが発生してしまうことになる。
【0081】
次に、剥離部材63により用紙の除電ロール61への巻き付きを防止する様子を図10図11を参照して説明する。
【0082】
図10に示すように剥離部材63が設けられている場合、剥離部材63の可動部71の先端部分が除電ロール61の表面に直接接触している。そして、可動部71の先端部分は、除電ロール61の下流側の表面との間でなす角度が鋭角となるように配置されている。そのため、図10に示すように、2つの除電ロール61、62の間を通過した後の用紙Sが除電ロール61に付着したとしても、この用紙Sの先端は可動部71により除電ロール61の表面から隔離されることになる。
【0083】
その結果、用紙Sは、図11に示すように、搬送ロール対52まで正常に到達し、紙詰まりを発生させることなく後段の装置に搬送されることになる。
【0084】
次に、除電ロール61、62に対する回転制御について説明する。上述したように、除電装置50では、図3に示した制御部56により除電ロール61、62に対する回転制御が行われる。
【0085】
そして、制御部56は、用紙が2本の除電ロール61、62の間を通過して後段に搬送される正転方向に2本の除電ロール61、62を回転させる正転動作を行う前に、剥離部材63が設けられた除電ロール61を正転方向とは逆回転の逆転方向に回転させる逆転動作を行う。
【0086】
なお、制御部56は、用紙に対する印刷処理の開始時に加えて、印刷指示である1つの印刷ジョブに基づいて用紙に対する印刷処理が完了した後にも除電ロール61の逆転動作を行うよう制御する。
【0087】
その際に、制御部56は、除電ロール61の逆転動作を行った後に、除電ロール61の動作を一旦停止してから、除電ロール61の正転動作を行うよう制御する。
【0088】
さらに、制御部56は、除電ロール61の逆転動作を行った後に正転動作を行う際に、正転動作時における除電ロール61の回転速度を定常回転となるまで徐々に増加させるよう制御する。
【0089】
このように制御部56が用紙に対する除電を行う際に、2本の除電ロール61、62が停止した状態から正転動作を行わないようにしている理由について図12を参照して説明する。
【0090】
図12では、除電ロール61、62が停止状態からいきな正転方向への回転を行った場合の様子が示されている。
【0091】
本実施形態における除電装置50では、剥離部材63を構成する可動部71の先端は除電ロール61の表面方向に付勢された状態で当接している。そのため、画像形成システム10において長期間印刷が行われない場合、可動部71の先端と除電ロール61の表面とは接触し続けることになる。そして、除電装置50では、コロナ放電に起因する窒素酸化物等の放電生成物が発生する場合がある。
【0092】
そして、このような放電生成物がある状態で除電ロール61の表面に可動部71の先端が長時間接触し続けると、放電生成物の影響により剥離部材63の一部である可動部71の先端が除電ロール61の表面に結着(又は固着)してしまう場合がある。
【0093】
このように可動部71の先端が除電ロール61の表面に結着してしまう様子を図12(A)に示す。図12(A)を参照すると、バネ73により付勢された可動部71の先端が除電ロール61の表面に決着しまっている様子が分かる。なお、図12では、説明を分かり易くするために、可動部71が結着した除電ロール61の表面における位置に印を設けている。
【0094】
そして、このような状態で除電ロール61、62を正転方向に回転させた場合の様子を図12(B)に示す。図12(B)では、可動部71の先端部分が除電ロール61の表面に決着したままの状態で除電ロール61が正転方向に回転したことにより、可動部71の先端部分が折れ曲がってしまっているのが分かる。このように可動部71の先端部分が折れ曲がったままの状態で除電処理が行われると、剥離部材63が正常に機能せずに用紙詰まりが発生してしまうことにもなる。
【0095】
そこで、本実施形態の除電装置50では、制御部56は、除電ロール61、62を停止状態から回転状態に移行させる際に、図13に示すような方法により回転制御を行う。
【0096】
先ず、制御部56は、図13(A)に示すような停止状態にある2本の除電ロール61、62を回転しようとする場合、図13(B)に示すように、正転方向とは反対の逆転方向に回転させる。すると、可動部71と除電ロール61の表面との結着が解除される。その後、制御部56は、本来回転させたかった正転方向に除電ロール61、62を回転させる。すると、図13(C)に示されるように、可動部71の先端が折り曲がることなく除電ロール61の表面との間で正常に当接した状態が維持されることになる。
【0097】
このように、制御部56は、2本の除電ロール61、62を正転方向に回転させる前に、正転方向とは逆回転の逆転方向に回転させる逆転動作を行った後に、正転方向に回転させるような制御を行っている。
【0098】
ここで、上記で説明した除電ロールユニット54では、可動部71と支持部72とから構成された複数の剥離部材63が設けられた構成であったが、他の構成を用いて剥離部材を構成することもできる。
【0099】
例えば、1枚のプレート状の剥離部材64を用いた除電ロールユニット54aを図14に示す。図14に示された剥離部材64は、例えば、マイラーフィルム等により構成され、剥離部材63と同様に除電ロール61の表面と先端部分が当接するように配置されている。
【0100】
図14に示した除電ロールユニット54aの断面図を図15に示す。図15を参照すると、プレート状の剥離部材64が、搬送されてくる用紙を剥がすような角度で除電ロール61に対して配置されているのが分かる。このようなプレート状の剥離部材64によっても、上記で説明した剥離部材63と同様に、除電ロール61の表面に付着した用紙が剥離される。
【0101】
なお、本実施形態の除電装置50では、2本の除電ロール61、62により構成される除電ロール対が1つの場合を用いて説明したが、除電装置50内にこのような除電ロール対が複数設けられていてもよい。
【0102】
また、本実施形態の除電装置50では、2本の除電ロール61、62により構成される除電ロール対により用紙の除電を行う構成について説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。例えば、それぞれ異なる電位の電圧が印加され、用紙が通過することによりその用紙の帯電量を減少させて除電する除電ロール及び除電ベルトを有する除電装置に対しても本発明は同様に適用可能である。この場合には、剥離部材を、除電ロール及び除電ベルトのうちの一方の表面に当接して設けるようにし、除電ロールの回転又は除電ベルトの回動に伴って除電ロール又は除電ベルトに付着した用紙を剥離するような構成とすればよい。
【符号の説明】
【0103】
10 画像形成システム
20 画像形成装置
30 後処理装置
40 インターポーザ
50 除電装置
51~53 搬送ロール対
54、54a 除電ロールユニット
55 非接触式除電ユニット
56 制御部
57 案内板
60 検査装置
61、62 除電ロール
63 剥離部材
64 剥離部材
70 スタッカ
71 可動部
72 支持部
73 バネ
80 後処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15