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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161575
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】位置指示器
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20221014BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20221014BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
G06F3/03 400Z
G06F3/041 512
G06F3/044 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066494
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(72)【発明者】
【氏名】神谷 宙
(72)【発明者】
【氏名】牧園 勝美
(72)【発明者】
【氏名】金子 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】進藤 容
(57)【要約】
【課題】受信と送出とを同じ電極で行うことにより、受信位置と送出位置との位置ずれを抑制し、優れた操作性を有する位置指示器を提供する。
【解決手段】位置指示器1は、静電容量の変化に基づいて位置検出が行われる位置検出センサ9に対して使用され、位置検出センサ9への出力信号V2を生成する信号処理回路5と、位置検出センサ9から交流信号V1を受信すると共に、位置検出センサ9へ出力信号V2を送出する電極3と、を有する。また、信号処理回路5は、交流信号V1に対して所定の信号処理を行い、出力信号V2を生成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量の変化に基づいて位置検出が行われる位置検出センサに対して使用される位置指示器であって、
前記位置検出センサへの出力信号を生成する信号処理回路と、
前記位置検出センサから交流信号を受信すると共に、前記位置検出センサへ前記出力信号を送出する電極と、を有することを特徴とする位置指示器。
【請求項2】
前記信号処理回路は、前記交流信号に対して所定の信号処理を行い、前記出力信号を生成する請求項1に記載の位置指示器。
【請求項3】
前記信号処理回路は、前記交流信号と前記出力信号とを重畳させて重畳信号を得る重畳部を有し、
前記出力信号は、前記重畳信号として前記位置検出センサへ送出される請求項1または2に記載の位置指示器。
【請求項4】
前記信号処理回路は、前記重畳信号と前記出力信号とを比較する比較回路を有する請求項3に記載の位置指示器。
【請求項5】
前記信号処理回路は、前記重畳信号と前記出力信号とが入力される差動回路を有する請求項3に記載の位置指示器。
【請求項6】
前記信号処理回路は、前記比較回路または前記差動回路から出力される信号を位相反転する反転回路を有する請求項4または5に記載の位置指示器。
【請求項7】
前記信号処理回路は、前記差動回路または前記比較回路から出力される信号を増幅する増幅回路を有する請求項4ないし6のいずれか1項に記載の位置指示器。
【請求項8】
前記信号処理回路は、前記電極での前記交流信号の受信を検出し、前記検出の結果に基づいて前記出力信号を出力する請求項1に記載の位置指示器。
【請求項9】
前記出力信号は、前記交流信号のDuty比と異なるDuty比を有する請求項8に記載の位置指示器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置指示器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、静電容量の変化を検出することにより位置検出が行われる位置検出センサと共に使用される位置指示器が記載されている。この位置指示器は、位置検出センサからの交流信号を受信するための第1電極と、第1電極を介して受信された交流信号に対して所定の信号増強処理を行うための信号増強処理回路と、信号増強処理回路から出力された信号が供給される第2電極と、を備えている。そして、位置指示器は、第1電極を介して受信された位置検出センサからの交流信号と所定の相関性を有する信号増強された信号を形成すると同時に、信号増強された信号を第2電極から位置検出センサに送出することにより位置を指示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-128556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成の位置指示器では、位置検出センサからの交流信号を第1電極で受信し、信号増強処理回路で信号増強処理された信号を第2電極から位置検出センサに送出するよう構成されている。第1電極および第2電極は、導通を避けるために互いに離間して配置しなければならない。そのため、信号の受信と送出とを互いに異なる電極で行う構成では、位置検出センサから交流信号を受信した位置と位置検出センサに信号増強処理回路で信号増強処理された信号を送出する位置とがずれ、位置指示器で指示する位置と位置検出センサが検出する位置とにずれが生じてしまう。したがって、特許文献1の位置指示器では、優れた操作性を発揮することができない。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、受信と送出とを同じ電極で行うことにより、受信位置と送出位置との位置ずれを抑制し、優れた操作性を有する位置指示器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、以下の(1)~(9)の本発明により達成される。
【0007】
(1) 静電容量の変化に基づいて位置検出が行われる位置検出センサに対して使用される位置指示器であって、
前記位置検出センサへの出力信号を生成する信号処理回路と、
前記位置検出センサから交流信号を受信すると共に、前記位置検出センサへ前記出力信号を送出する電極と、を有することを特徴とする位置指示器。
【0008】
(2) 前記信号処理回路は、前記交流信号に対して所定の信号処理を行い、前記出力信号を生成する上記(1)に記載の位置指示器。
【0009】
(3) 前記信号処理回路は、前記交流信号と前記出力信号とを重畳させて重畳信号を得る重畳部を有し、
前記出力信号は、前記重畳信号として前記位置検出センサへ送出される上記(1)または(2)に記載の位置指示器。
【0010】
(4) 前記信号処理回路は、前記重畳信号と前記出力信号とを比較する比較回路を有する上記(3)に記載の位置指示器。
【0011】
(5) 前記信号処理回路は、前記重畳信号と前記出力信号とが入力される差動回路を有する上記(3)に記載の位置指示器。
【0012】
(6) 前記信号処理回路は、前記比較回路または前記差動回路から出力される信号を位相反転する反転回路を有する上記(4)または(5)に記載の位置指示器。
【0013】
(7) 前記信号処理回路は、前記差動回路または前記比較回路から出力される信号を増幅する増幅回路を有する上記(4)ないし(6)のいずれかに記載の位置指示器。
【0014】
(8) 前記信号処理回路は、前記電極での前記交流信号の受信を検出し、前記検出の結果に基づいて前記出力信号を出力する上記(1)に記載の位置指示器。
【0015】
(9) 前記出力信号は、前記交流信号のDuty比と異なるDuty比を有する上記(8)に記載の位置指示器。
【発明の効果】
【0016】
本発明の位置指示器では、1つの電極で、位置検出センサからの交流信号を受信すると共に位置検出センサへ送出信号を送出する。このように、受信と送出とを同じ電極で行うことにより、受信位置と送出位置との位置ずれが抑制され、優れた操作性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る位置指示器および位置検出センサを示す全体構成図である。
図2】位置検出センサの構成を示すブロック図である。
図3】位置検出センサの構成を示す断面図である。
図4】位置指示器の断面図である。
図5】位置指示器の平面図である。
図6】位置指示器の回路構成を示す回路図である。
図7】交流信号、出力信号および重畳信号を示す波形図である。
図8】第2実施形態に係る位置指示器の回路構成を示す回路図である。
図9】第3実施形態に係る位置指示器の回路構成を示す回路図である。
図10】交流信号、出力信号および重畳信号を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の位置指示器を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る位置指示器および位置検出センサを示す全体構成図である。図2は、位置検出センサの構成を示すブロック図である。図3は、位置検出センサの構成を示す断面図である。図4は、位置指示器の断面図である。図5は、位置指示器の平面図である。図6は、位置指示器の回路構成を示す回路図である。図7は、交流信号、出力信号および重畳信号を示す波形図である。
【0020】
図1に示す位置指示器1は、位置検出センサ9と組み合わせて使用される。位置指示器1は、位置検出センサ9の入力画面に接触すると、位置検出センサ9からの交流信号V1と所定の相関性を有する信号増強された出力信号V2を位置検出センサ9に送出することにより位置検出センサ9に対して位置を指示する。一方、位置検出センサ9は、位置指示器1から送出された出力信号V2に基づいて入力画面上での位置指示器1の接触位置を検出する。まずは、位置指示器1の説明に先立って、位置検出センサ9について簡単に説明する。
【0021】
≪位置検出センサ9≫
位置検出センサ9は、結合容量の変化に基づいて、位置指示器1が接触したタッチポイントの位置を検出する相互容量方式の位置検出センサである。
【0022】
図2に示すように、位置検出センサ9は、センサ部90と、送信部91と、受信部92と、を有する。なお、以下では、説明の便宜上、指示入力面の横方向をX軸方向とし、縦方向をY軸方向する。センサ部90は、指示入力面のX軸方向に延伸し、Y軸方向に等間隔に並んで配置された複数(図2では64個)の送信導体9Y、9Y、…、9Y64と、指示入力面のY軸方向に延伸し、X軸方向に等間隔に並んで配置された複数(図2では64個)の受信導体9X、9X、…、9X64と、を有する。また、送信導体9Y~9Y64には送信部91が接続されており、受信導体9X~9X64には受信部92が接続されている。
【0023】
なお、本明細書中において、64本の送信導体9Y~9Y64のいずれであるかを区別する必要のないときには、単に「送信導体9Y」とも言い、同様に、64本の受信導体9X~9X64のいずれであるかを区別する必要のないときには、単に「受信導体9X」とも言う。
【0024】
送信導体9Y~9Y64と受信導体9X~9X64とは、例えば、基板の上面と下面とに分かれて形成されており、平面視で、互いに直交して重なり合って配置されている。送信導体9Y~9Y64と受信導体9X~9X64とが重なり合う部分にはクロスポイントCPが形成されており、図3に示すように、各クロスポイントCPでは、送信導体9Yと受信導体9Xとが静電容量C1を介して結合している。
【0025】
図2に示すように、送信部91は、各送信導体9Yに交流信号V1を供給する。交流信号V1の波形は、特に限定されず、矩形波信号、正弦波信号等どのような波形であってもよい。また、送信部91は、同一の交流信号を複数の送信導体9Y~9Y64に対して1本ずつ順番に供給してもよいし、互いに異なる複数の交流信号を複数の送信導体9Y~9Y64に同時に供給してもよい。また、複数の送信導体9Y~9Y64を複数個のグループに分け、グループ毎に異なる交流信号を供給してもよい。
【0026】
一方、受信部92は、各受信導体9Xに供給された交流信号V1を、静電容量C1を介して検出する。送信導体9Yと受信導体9Xとの間の結合静電容量が全クロスポイントCPにおいて等しいとすれば、位置指示器1がセンサ部90上に存在していないときは、受信部92において全ての受信導体9Xから同レベルの受信信号が検出される。これに対して、位置指示器1がセンサ部90に接触すると、接触箇所に新たな結合静電容量が形成され、接触位置にあるクロスポイントCPでは静電容量C1が変化し、それに応じて、受信導体9Xから得られる受信信号レベルが変化する。
【0027】
位置検出センサ9は、交流信号を供給している送信導体9Yと、受信信号レベルの変化があった受信導体9Xと、を検出することにより、位置指示器1が接触しているクロスポイントCPを検出する。これにより、位置指示器1が接触したタッチポイントを検出することができる。
【0028】
≪位置指示器1≫
位置指示器1は、スタイラス形状であり、図4に示すように、棒状の筐体2と、筐体2の先端部に設けられた電極3と、筐体2の内部に収容された配線基板4と、配線基板4上に形成された信号処理回路5と、電源としてのバッテリー7と、を有する。
【0029】
筐体2は、略円筒形状の絶縁体部21と、絶縁体部21の外側に配置され、絶縁体部21を覆っている導電体部22と、を有する。絶縁体部21は、例えば、各種樹脂材料、各種セラミック材料から構成されており、十分な絶縁性を有する。導電体部22は、例えば、各種金属材料から構成されており、十分な導電性を有する。導電体部22は、配線基板4のアース導体に電気的に接続されており、さらには、操作者が位置指示器1を把持した際に操作者と接触するように構成されている。
【0030】
また、筐体2の先端部は、徐々に先細りするテーパ部23である。そして、テーパ部23からさらに先端側に突出するように電極3が設けられている。電極3と導電体部22とは、これらの間に介在した絶縁体部21により絶縁されている。
【0031】
電極3は、筐体2と同軸的に配置された棒状の電極本体31と、電極本体31の先端部を覆う弾性保護導体32と、を有する。電極本体31は、筐体2に固定されており、信号処理回路5と電気的に接続されている。一方、弾性保護導体32は、位置指示器1を位置検出センサ9に接触させたときに位置検出センサ9の指示入力面を傷付けないようにすると共に指示入力面との接触面積を大きくするための部材である。弾性保護導体32は、例えば、導電性の弾性ゴムで構成されている。なお、電極3の構成としては、特に限定されず、例えば、弾性保護導体32を省略してもよい。この場合、電極本体31を、例えば導電性の弾性部材で構成することにより、本実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0032】
また、筐体2には、バッテリー7が収容されている。バッテリー7は、信号処理回路5に電源電圧を供給する。また、筐体2の基端面にはバッテリー7と電気的に接続された充電用のレセプタクル24が設けられている。レセプタクル24に充電用ケーブルを接続することにより、バッテリー7の充電が可能となる。なお、本実施形態のレセプタクル24は、USB Type-Cである。これにより、レセプタクル24が小型となり、位置指示器1の小型化を図ることができる。ただし、レセプタクル24としては、これに限定されない。また、充電式のバッテリー7に替えて、例えば、電池を信号処理回路5用の電源として用いてもよい。
【0033】
また、図5に示すように、筐体2には、電源スイッチ素子25および発光素子26が設けられている。電源スイッチ素子25は、筐体2の外に露出し、筐体2に対してスライド可能な操作子251を有する。使用者により操作子251がスライド操作されることにより電源のON/OFFが切り替わる。電源ONとなれば、バッテリー7から信号処理回路5に電源電圧が印加されて信号処理回路5が駆動する。反対に、電源OFFとなれば、バッテリー7から信号処理回路5への電源電圧の印加が停止されて信号処理回路5の駆動が停止する。
【0034】
また、電源ONとなると発光素子26が点灯し、電源OFFとなると発光素子26が消灯する。筐体2には窓部27が設けられており、この窓部27を介して発光素子26からの光が筐体2外に出射される。このように、電源ON/OFFに呼応させて発光素子26を点灯/消灯することにより、電源ON/OFFを使用者により確実にかつ容易に報知することができる。なお、発光素子26としては、特に限定されないが、例えば、LED(Light Emitting Diode)を用いることができる。ただし、電源ON/OFFの方法や、その報知方法としては、特に限定されない。
【0035】
次に、信号処理回路5について説明する。図6に示すように、信号処理回路5は、電源回路部51と、信号処理部52と、を有する。電源回路部51は、DC/DCコンバータ511を備えており、バッテリー7の電圧から電源電圧Vccを生成して信号処理部52に供給する。電源回路部51では、DC/DCコンバータ511とバッテリー7との間に電源スイッチ素子25が設けられている。また、電源スイッチ素子25とDC/DCコンバータ511との間に、抵抗512および発光素子26の直列回路が接続されている。
【0036】
このような電源回路部51では、電源スイッチ素子25が操作されて電源ONとなると、DC/DCコンバータ511にバッテリー7の電圧が供給されて電源電圧Vccが発生すると同時に発光素子26が点灯して電源ONが使用者に報知される。反対に、電源スイッチ素子25が操作されて電源OFFとなると、DC/DCコンバータ511へのバッテリー7の電圧の供給が停止されて電源電圧Vccの発生が停止すると同時に発光素子26が消灯して、電源OFFが使用者に報知される。ただし、電源回路部51の構成は、特に限定されない。
【0037】
信号処理部52は、信号増強処理回路を構成するものであり、位置検出センサ9からの交流信号V1を反転増幅させて出力信号V2を生成し、出力信号V2を位置検出センサ9へ送出する。このような信号処理部52は、端子53と、比較回路521と、増幅回路522と、位相調整回路523と、インピーダンス調整抵抗524a、524bと、バッファ回路525a、525bと、位相調整回路526a、526bと、オフセット電圧回路527と、減算回路528と、を有する。
【0038】
端子53は、電極3を接続する配線の途中に設けられている。位置指示器1が位置検出センサ9の位置指示面上にあるとき、位置指示器1は、静電容量C2を介して位置検出センサ9と結合する。そのため、位置検出センサ9を流れる交流信号V1が静電容量C2および電極3を介して電流信号として端子53に供給される。また、端子53には比較回路521の出力が増幅回路522と位相調整回路523とインピーダンス調整抵抗524aとを挟んで接続されている。なお、以下では、比較回路521から端子53へ配給される信号を「出力信号V2」とも言う。したがって、端子53で交流信号V1と出力信号V2とが重畳され、電極3および静電容量C2を介して位置検出センサ9に送出される。なお、以下では、交流信号V1と出力信号V2とを重畳した信号を「重畳信号V3」とも言う。
【0039】
増幅回路522は、出力信号V2をタッチパネルが反応するのに必要な振幅レベルに増幅する。位相調整回路523は、出力信号V2の位相を交流信号V1に対して180度位相反転させる。インピーダンス調整抵抗524aは、電極3から見た位相調整回路523の出力インピーダンスを大きくする為の抵抗である。インピーダンス調整抵抗524aが無い場合、電極3から位相調整回路523の出力インピーダンスが直接見えるため、静電容量C2と位相調整回路523の出力インピーダンスでカットオフ周波数が高い高周波等価フィルタが形成され、交流信号V1の振幅レベルが大きく減少してしまう。また、位相調整回路523の出力から電極3をみると低周波等価フィルタになる為、カットオフ周波数が交流信号V1の周波数付近になるようにインピーダンス調整抵抗524aが設定されている。
【0040】
比較回路521は、重畳信号V3から出力信号V2の成分を除去して交流信号V1成分のみを出力する。比較回路521の反転入力端子には端子53がバッファ回路525aと位相調整回路526aとを挟んで接続されている。バッファ回路525aは、電極3からみた位相調整回路526aの入力インピーダンスを大きく見せる為のインピーダンス変換の為に存在する。位相調整回路526aは、比較回路521の反転入力端子と非反転入力端子に入力される信号の位相を同相状態に調整するために存在している。このように比較回路521の反転入力端子には重畳信号V3が位相調整された信号が入力されている。
【0041】
位相調整回路523の出力はインピーダンス調整抵抗524bを間に挟んでバッファ回路525bに接続されている。インピーダンス調整抵抗524bは、インピーダンス調整抵抗524aと同じ定数値に設定し、バッファ回路525bは、バッファ回路525aと同じ特性のオペアンプを使用する。以下、このバッファ回路525bの入力信号を「入力信号V2’」とも言う。
【0042】
入力信号V2’は、出力信号V2と振幅レベルと位相がほぼ等しく、交流信号V1を含まない信号である。バッファ回路525bの出力は、位相調整回路526bの入力に接続され、位相調整回路526bの出力は、減算回路528の入力に接続されている。位相調整回路526bは、入力信号V2’位相を調整して、比較回路521の反転入力端子と非反転入力端子に入力される信号の位相を同相状態に調整する。減算回路528は、入力信号V2’にオフセット電圧回路527で設定した電圧をオフセットとして加える。このオフセット電圧は、交流信号V1が回路に入力されていない時に、比較回路521の非反転入力端子と反転入力端子への入力信号の大小関係を固定させることで比較回路521の出力を安定化させるための電圧である。なお、オフセット電圧を生成する方法は特に限定されない。このように比較回路521の非反転入力端子には入力信号V2’に対して位相調整とオフセット電圧が加わった信号が入力されている。
【0043】
比較回路521の反転入力端子には交流信号V1成分を含み、非反転入力は交流信号V1成分を含まない信号が入力されるため、両入力信号を比較出力することで重畳信号V3から出力信号V2の成分を除去して交流信号V1成分のみを出力することが可能になる。また、この出力された交流信号V1成分は、前記したように増幅回路522と位相調整回路523により反転増幅され出力信号V2となる。また、比較回路521の反転入力端子と非反転入力端子に対する入力信号成分の関係は入れ替わってもよく、特に限定されない。
【0044】
このようにして交流信号V1を反転増幅させて得られた出力信号V2は、端子53に供給される。そのため、出力信号V2は、端子53において交流信号V1と重畳し、重畳信号V3として電極3および静電容量C2を介して位置検出センサ9に送出(帰還)される。なお、図7に示すように、互いに逆位相の交流信号V1と出力信号V2とが重畳されるため、重畳信号V3は、出力信号V2に対して信号レベルが小さくなるが、それでも、タッチポイントを検出するのに十分な信号レベルを維持している。言い換えると、重畳信号V3が十分な信号レベルを有するように出力信号V2の信号レベルを調整する。
【0045】
このように、交流信号V1の受信と出力信号V2の送信とを同じ電極3を介して行うことにより、位置検出センサ9から交流信号V1を受信した位置と位置検出センサ9に出力信号V2を送出する位置とが実質的に同じとなり、これらの位置ずれを効果的に抑制することができる。そのため、位置指示器1で指示する位置と位置検出センサ9が検出する位置とが実質的に同じとなり、優れた操作性が発揮される。
【0046】
以上、位置指示器1の構成について説明した。次に、位置指示器1の使用方法について説明する。位置指示器1が電源ONとなると、電源回路部51から信号処理部52に電源電圧Vccが供給され、信号処理部52が駆動する。この状態で、位置指示器1を位置検出センサ9の位置指示面に接触させると、電極3と位置検出センサ9とが静電容量C2を介して結合し、位置検出センサ9を流れる交流信号V1が静電容量C2および電極3を介して端子53に供給される。端子53に供給された交流信号V1は、出力信号V2と重畳して重畳信号V3となり、比較回路521で交流信号V1成分が取り出された後、増幅回路522と位相調整回路523により反転増幅されて出力信号V2となり、端子53に入力される。端子53に入力された出力信号V2は、交流信号V1と重畳して重畳信号V3となり、電極3および静電容量C2を介して位置検出センサ9に送出(帰還)される。つまり、出力信号V2は、重畳信号V3として位置検出センサ9に送出される。
【0047】
前述したように、位置検出センサ9に送出される重畳信号V3は、送信導体9Yに供給される交流信号V1とは逆相の増強された信号である。そのため、位置指示器1は、受信導体9Xから得られる受信信号レベルの変化をより増大させるように機能する。したがって、位置検出センサ9は、位置指示器1の接触位置を高感度で検出することができる。特に、位置指示器1では、筐体2が操作者に触れることにより、配線基板4のアース導体がグランドに接続されるため、位置検出センサ9での検出動作がより一層安定する。
【0048】
また、前述したように、信号処理回路5は、交流信号V1に対して所定の信号処理を行い、出力信号V2を生成する。このように、交流信号V1から出力信号V2を生成することにより、出力信号V2の生成が容易となる。
【0049】
また、前述したように、信号処理回路5は、交流信号V1と出力信号V2とを重畳させて重畳信号V3を得る重畳部としての端子53を有し、出力信号V2は、重畳信号V3として位置検出センサ9へ送出される。このような構成とすることにより、信号の受信と送出とを1つの電極3で容易に行うことができる。
【0050】
また、前述したように、信号処理回路5は、重畳信号V3と出力信号V2とが位相調整され同相となった状態で入力される比較回路521を有する。これにより、重畳信号V3から出力信号V2の成分が除去された信号すなわち交流信号V1成分が出力されるため、出力信号V2の生成が容易となる。
【0051】
また、前述したように、信号処理回路5は、比較回路521から出力される交流信号V1成分を位相反転する反転回路としての位相調整回路523を有する。これにより、出力信号V2の生成が容易となる。さらに、信号処理回路5は、比較回路521から出力される交流信号V1成分を増幅する増幅回路522を有する。これにより、出力信号V2の生成が容易となる。
【0052】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態に係る位置指示器の回路構成を示す回路図である。
【0053】
本実施形態の位置指示器1は、信号処理回路5の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の位置指示器1と同様である。そのため、以下の説明では、本実施形態に関して、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関しては、その説明を省略する。また、図8において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0054】
図8に示すように、本実施形態の位置指示器1が備える信号処理部52では、前述した第1実施形態の比較回路521に替えて差動回路520が設けられている。前述した比較回路521と同様に、差動回路520の反転入力端子には交流信号V1成分を含み、非反転入力は交流信号V1成分を含まない信号が入力されるため、両入力信号を比較出力することで重畳信号V3から出力信号V2の成分を除去して交流信号V1成分のみを出力することが可能になる。このように、比較回路521に替えて差動回路520を用いることによっても、出力信号V2を容易に生成することができる。
【0055】
以上のような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0056】
<第3実施形態>
図9は、第3実施形態に係る位置指示器の回路構成を示す回路図である。図10は、交流信号、出力信号および重畳信号を示す波形図である。
【0057】
本実施形態の位置指示器1は、信号処理回路5の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の位置指示器1と同様である。そのため、以下の説明では、本実施形態に関して、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関しては、その説明を省略する。また、図9において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0058】
図9に示すように、本実施形態の位置指示器1が備える信号処理部52は、制御回路58と、信号出力部582から出力された信号を反転させて出力信号V2を出力する反転増幅回路50と、端子53と制御回路58との間に位置し、重畳信号V3を増幅する増幅回路59と、を有する。また、制御回路58は、電極3での交流信号V1の受信を検出する受信検出部581と、受信検出部581の検出結果に基づいて信号を出力する信号出力部582と、を有する。また、電極3からみた反転増幅回路50のインピーダンスを大きくするためのインピーダンス調整抵抗D1を有する。
【0059】
図10に示すように、交流信号V1および出力信号V2は、周期が同じ矩形波信号であるが、Duty比が互いに異なっている。また、信号出力部582は、交流信号V1の立ち上がり時刻T1uおよび立ち下がり時刻T1dと出力信号V2のLow時とが重ならないように、出力信号V2のLow時が時刻T1u、T1dの間に位置するタイミングで信号を出力する。つまり、信号出力部582は、出力信号V2の立ち下がり時刻T2dが時刻T1uよりも遅く、出力信号V2の立ち上がり時刻T2uが時刻T1dよりも早くなるように信号を出力する。
【0060】
このようなタイミングで出力信号V2を出力すると、図10に示すような波形の重畳信号V3となる。重畳信号V3は、交流信号V1に起因する立ち上がりV1uおよび立ち下がりV1dと、出力信号V2に起因する立ち上がりV2uおよび立ち下がりV2dと、を有する。このような重畳信号V3は、増幅回路59で増幅された後、受信検出部581に入力される。制御回路58は、受信検出部581が重畳信号V3の入力を検出すると、信号出力部582から出力信号V2の基となる信号を出力する。信号出力部582から出力された信号は、反転増幅回路50によって位相反転増幅され、出力信号V2として出力され、端子53に供給される。
【0061】
ここで、受信検出部581は、交流信号V1の受信をより精度よく検出するために、出力信号V2がLowの時間帯すなわち時刻T2dから時刻T2uまでの間、検出を停止する。本実施形態では、前後のマージンを取って、時刻T1u、T2dの間の時刻Tsから時刻T2u、T1dの間の時刻Teまでの時間帯ΔTについて重畳信号V3の検出を停止する。これにより、出力信号V2に起因する立ち上がりV2uおよび立ち下がりV2dが検出されず、交流信号V1に起因する立ち上がりV1uおよび立ち下がりV1dのみを検出することができる。そのため、電極3での交流信号V1の受信をより精度よく検出することができる。ただし、電極3での交流信号V1の受信を検出する方法は、特に限定されない。
【0062】
以上のように、本実施形態の位置指示器1では、信号処理回路5は、電極3での交流信号V1の受信を検出し、検出の結果に基づいて出力信号V2を出力する。このような構成によれば、交流信号V1の受信に対応させて出力信号V2を位置検出センサ9に送出することができる。また、出力信号V2は、交流信号V1のDuty比と異なるDuty比を有する。これにより、交流信号V1と出力信号V2とで、立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングを異ならせることができる。そのため、受信検出部581において、電極3での交流信号V1の受信をより精度よく検出することができる。
【0063】
以上のような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0064】
以上、本発明の位置指示器を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…位置指示器 2…筐体 21…絶縁体部 22…導電体部 23…テーパ部 24…レセプタクル 25…電源スイッチ素子 251…操作子 26…発光素子 27…窓部 3…電極 31…電極本体 32…弾性保護導体 4…配線基板 5…信号処理回路 50…反転増幅回路 51…電源回路部 511…DC/DCコンバータ 512…抵抗 52…信号処理部 520…差動回路 521…比較回路 522…増幅回路 523…位相調整回路 524a…インピーダンス調整抵抗 524b…インピーダンス調整抵抗 525a…バッファ回路 525b…バッファ回路 526a…位相調整回路 526b…位相調整回路 527…オフセット電圧回路 528…減算回路 53…端子 58…制御回路 581…受信検出部 582…信号出力部 59…増幅回路 7…バッテリー 9…位置検出センサ 9X、9X~9X64…受信導体 9Y、9Y~9Y64…送信導体 90…センサ部 91…送信部 92…受信部 C1…静電容量 C2…静電容量 CP…クロスポイント D1…インピーダンス調整抵抗 T1u、T2u…立ち上がり時刻 T1d、T2d…立ち下がり時刻 V1…交流信号 V2…出力信号 V2’…入力信号 V3…重畳信号 Vcc…電源電圧 V1u、V2u…立ち上がり V1d、V2d…立ち下がり Te、Ts…時刻 ΔT…時間帯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10