(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161589
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】薬液を収容するためのプラスチック容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/10 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
A61J1/10 331C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066521
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】513141418
【氏名又は名称】エイワイファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】望月 奨太
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA11
4C047BB12
4C047BB17
4C047BB30
4C047CC04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薬液の吸着を防ぐことができ、耐久性に優れたプラスチック容器を提供する。
【解決手段】薬液に接するように構成され、環状ポリオレフィンを主成分とする内層と、内層の外側に設けられ、ポリプロピレンを主成分とする外層と、内層と外層との間に設けられた中間層とを含み、中間層は、ポリプロピレンと、50質量%以上の熱可塑性エラストマーとを含む、プラスチック容器。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を収容するためのプラスチック容器であって、
前記薬液に接するように構成され、環状ポリオレフィンを主成分とする内層と、
前記内層の外側に設けられ、ポリプロピレンを主成分とする外層と、
前記内層と前記外層との間に設けられた中間層と、
を含み、
前記中間層は、ポリプロピレンと、50質量%以上の熱可塑性エラストマーとを含む、
プラスチック容器。
【請求項2】
前記薬液が、エダラボン(3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン)またはその薬学的に許容される塩を含有する水溶液である、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記エダラボン又はその薬学的に許容される塩の濃度が、15~45mg/100mLである、請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記内層における環状ポリオレフィンの含有量が99質量%以上である、請求項1~3のいずれかに記載の容器。
【請求項5】
前記中間層が、70以下のデュロメータ硬度(タイプA)を有している、請求項1~4のいずれかに記載の容器。
【請求項6】
請求項1~5に記載された容器と、
前記容器に収容された薬液と、
を含む、液体製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を収容するためのプラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
点滴等に使用される薬液は、可撓性を有するプラスチック容器に収容され、保存される場合がある。
【0003】
そのような薬液を収容するためのプラスチック容器に関して、例えば、特許文献1(特開2016-022092号公報)には、エダラボン(3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン)またはその薬学的に許容され得る塩を含有する水溶液を収容してなる、外層にポリプロピレン層、中間層にポリプロピレン層、および内層に環状ポリオレフィン層を備えたプラスチック容器、が記載されている。特許文献1の記載によれば、このような構成により、十分な安定性を示す代替的なエダラボンを含有するバッグ製剤を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者も、特許文献1に記載されたプラスチック容器と同様に、内層に環状ポリオレフィンを使用し、外層にポリプロピレンを使用したプラスチック容器について検討を行っている。
【0006】
ポリプロピレンは、柔軟性に優れている。外層にポリプロピレンを使用すれば、外部から衝撃が加わった場合にも、衝撃が吸収され、容器の耐久性が向上する。
一方で、ポリプロピレンは、薬液と相互作用を生じる場合がある。例えば、薬液がエダラボン水溶液である場合、ポリプロピレンの層が薬液と接していると、エダラボンがポリプロピレンに吸着され、薬液中のエダラボン濃度が低下してしまう場合がある。
そこで、内層に、環状ポリオレフィン層が用いられる。環状ポリオレフィンは、ポリプロピレンに比べると、薬液を吸着しにくい。よって、薬液に接する内層として環状ポリオレフィン層を用いると、薬液の吸着を防ぐことができる。
しかしながら、環状ポリオレフィン層は、柔軟性に欠け、流通時等に加わる衝撃によって、破断してしまいやすい。結果的に、薬液が外層のポリプロピレン層に接し、吸着されてしまう場合がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、耐久性に優れ、薬液の吸着を防ぐことができるプラスチック容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、特定の構成を採用することにより、上記課題が解決されることを見出した。すなわち、本発明は、以下の事項を含むものである。
[1]薬液を収容するためのプラスチック容器であって、前記薬液に接するように構成され、環状ポリオレフィンを主成分とする内層と、前記内層の外側に設けられ、ポリプロピレンを主成分とする、外層と、前記内層と前記外層との間に設けられた中間層と、
を含み、前記中間層は、ポリプロピレンと、50質量%以上の熱可塑性エラストマーとを含む、プラスチック容器。
[2]前記薬液が、エダラボン(3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン)またはその薬学的に許容される塩を含有する水溶液である、[1]に記載の容器。
[3]前記エダラボン又はその薬学的に許容される塩の濃度が、15~45mg/100mLである、[2]に記載の容器。
[4]前記内層における環状ポリオレフィンの含有量が99質量%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の容器。
[5]前記中間層が、70以下のデュロメータ硬度(タイプA)を有している、[1]~[4]のいずれかに記載の容器。
[6][1]~[5]に記載された容器と、前記容器に収容された薬液と、を含む、液体製剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐久性に優れ、薬液の吸着を防ぐことができるプラスチック容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、プラスチック容器の製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係るプラスチック容器は、薬液を収容するためのプラスチック容器である。このプラスチック容器は、内層、中間層、及び外層を備えている。内層は、薬液に接する層である。内層は、環状ポリオレフィンを含んでいる。外層は、内層の外側に設けられており、ポリプロピレンを含んでいる。中間層は、内層と外層との間に設けられている。内層及び外層は、中間層に接着している。
【0012】
ここで、本実施形態では、中間層として、ポリプロピレンと、50質量%以上の熱可塑性エラストマーとを含む層が用いられている。中間層としてこのような層を用いることにより、環状ポリオレフィンを含む内層を、強固に中間層に接着させることができる。すなわち、内層と中間層との層間接着強度を高めることができる。層間接着強度が高まると、内層が破断し難くなる。従って、薬液を吸着しにくい環状ポリオレフィンを内層に使用しつつも、耐久性に優れたプラスチック溶液を得ることができる。
【0013】
以下に、本実施形態の各構成について詳述する。
【0014】
(薬液)
プラスチック溶液に収容される薬液は、特に限定されるものではない。但し、有効成分がポリプロピレンに吸着しやすい性質を有する薬液であると、本実施形態の効果が発揮されやすく、好ましい。そのような薬液として、たとえば、エダラボン(3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン)又はその薬学的に許容される塩を含む水溶液が挙げられる。水溶液中のエダラボン又はその薬学的に許容される塩の濃度は、例えば、15~45mg/100mLである。
薬学的に許容される塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、水和物塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及びカルシウム塩などが挙げられる。
【0015】
(プラスチック容器の形態)
プラスチック容器の形態は、特に限定されないが、例えば、プラスチックバッグの形態とすることができる。プラスチックバッグとは、可撓性を有するフィルムを袋状とした形態である。
内層、中間層、及び外層の総厚は、プラスチック容器が可撓性を有するような厚みであればよい。
【0016】
(内層)
続いて、内層について説明する。既述のように、内層は、薬液に接する層であり、環状ポリオレフィンを主成分として含んでいる。尚、主成分として含むとは、50質量%以上の量で含まれることを意味する。環状ポリオレフィンを内層に用いることにより、薬液の吸着を防ぐことができる。
内層には、種々の目的により、環状ポリオレフィン以外の成分が含まれていてもよい。しかしながら、薬液の吸着を防ぐ観点から、内層における環状ポリオレフィンの含有量は、99質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、内層は、環状ポリオレフィン以外の成分を実質的に含まない。
一般に、内層における環状ポリオレフィンの含有量を高めると、内層の破断も起こりやすくなる。しかしながら、本実施形態によれば、上述のように中間層の組成が工夫されているため、内層の破断が起こりにくくなっている。従って、内層における環状ポリオレフィンの含有量を、上記のように高めても問題は生じない。
【0017】
内層に用いられる環状ポリオレフィンは、一般に高価である。従って、材料費の点からは、内層の厚みを減らすことが望ましい。但し、内層の厚みを減らすと、内層の強度が低下し、上述の破断が起こりやすくなる。しかしながら、本実施形態によれば、中間層の組成の工夫により内層の破断が起こりにくくなっているため、内層の厚みを減らしても所望の耐久性を得ることができる。
【0018】
(中間層)
続いて、中間層について説明する。中間層は、内層と外層とを接着する機能を果たしている。既述のように、中間層は、ポリプロピレンと、50質量%以上の熱可塑性エラストマーとを含んでいる。すなわち、中間層は、ポリプロピレンと、熱可塑性エラストマーとを含む混合物により形成され、その主成分は、熱可塑性エラストマーである。
中間層が熱可塑性エラストマーを主成分として含んでいると、中間層が柔軟になり、その結果、内層と中間層との接着性が向上する。
中間層は、70以下のデュロメータ硬度(タイプA)を有していることが好ましい。このような硬度を有していれば、内層をより強固に中間層に接着させやすい。より好ましくは、中間層は、30~65のデュロメータ硬度(タイプA)を有している。
デュロメータ硬度(タイプA)は、JIS K7215(プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法)に基づき、測定することができる。
【0019】
(外層)
続いて、外層について説明する。既述のように、外層は、ポリプロピレンを含んでいる。ポリプロピレンは、強度と柔軟性のバランスに優れている。外層としてポリプロピレンを含む層を用いることにより、外部から加わる衝撃が吸収しやすくなり、容器の耐久性が向上する。
なお、外層には、ポリプロピレン以外の成分が含まれていてもよい。例えば、外層にも熱可塑性エラストマーなどが含まれていてもよい。
しかし、優れた耐久性を得る観点から、外層におけるポリプロピレンの含有量は、50質量%以上であることが好ましい。
【0020】
(プラスチック容器の製造方法)
本実施形態に係るプラスチック容器の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、以下の方法により製造することができる。
まず、押出成形(例えば多層インフレーション成形)により、内層、中間層、及び外層が積層された筒状の積層シートを準備し、プラスチック容器の周縁部になる予定の領域をシールする。続いて、周縁部をカットし、袋状とし、一部に設けた開口部にポート部材を差込みシールする。これにより、本実施形態に係るプラスチック容器を得ることができる。
本実施形態に係るプラスチック容器には、その後、薬液が収容され、液体製剤として保存され、使用される。
【実施例0021】
以下、本発明をより詳細に説明するため、実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるべきものではない。
(実施例)
図1(a)に示されるように、インフレーション成形により、内層、中間層及び外層が積層された筒状の多層インフレーションフィルムを用意した。次いで、最終的にプラスチック容器の周縁部になる部分を、上下から金型でプレスし、熱シールした。次いで、
図1(b)に示されるように、熱シールした部分を切り抜き、一部で開口する袋状の積層体を得た。次いで、
図1(c)に示されるように、開口部分にポート部材を差し込み、ポート部材と積層体と一体化させ、プラスチック容器を得た。
なお、内層としては、環状ポリオレフィンを主成分とする層を用いた。
外層としては、ポリプロピレンを主成分とする層を用いた。
中間層としては、ポリプロピレンと、50質量%以上の熱可塑性エラストマーとを含む層を用いた。また、中間層としては、デュロメータ硬度(タイプA)が60である層を用いた。
得られたプラスチック容器について、JIS Z0238(ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法)に基づいて、ヒートシール強さを測定した。内層と中間層の接着強度が低いと、ヒートシール強さが低くなる。従って、ヒートシール強さは、内層と中間層の接着強度の高さを示しているといる。
なお、熱シール時の温度を190℃、200℃、210℃、220℃、230℃及び240℃とし、それぞれの場合について3回ずつ、ヒートシール強さを測定した。結果を表1に示す。
【0022】
(比較例)
実施例と同様の方法により、プラスチック容器を得た。但し、中間層における熱可塑性エラストマーの含有量を、50質量%未満とした。中間層のデュロメータ硬度(タイプA)は、80あった。得られたプラスチック容器について、実施例と同様に、ヒートシール強さを測定した。結果を表2に示す。
【0023】
【0024】
【0025】
表1及び表2に示されるように、実施例におけるヒートシール強さは、比較例のそれよりも大きかった。従って、中間層として、ポリプロピレンと、50質量%以上の熱可塑性エラストマーとを含む層を用いることにより、内層と中間層の接着強度が改善することが理解できる。