(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161597
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】アニオン処理剤、アニオン処理剤の製造方法、アニオン処理剤の再生方法
(51)【国際特許分類】
B01J 47/018 20170101AFI20221014BHJP
B01J 41/10 20060101ALI20221014BHJP
B01J 49/07 20170101ALI20221014BHJP
【FI】
B01J47/018
B01J41/10
B01J49/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066534
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】591205673
【氏名又は名称】株式会社トーケミ
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】長續 雄太
(72)【発明者】
【氏名】細谷 卓也
(57)【要約】
【課題】層状複水酸化物を原料としたアニオン処理剤の欠点を除去し、アニオン交換能を向上させつつ、在庫管理上も好適なアニオン処理剤を提供する。
【解決手段】アニオン処理剤Aは、アニオン交換能を有する層状複水酸化物1と、乾燥することで水中でも形状を保持する長石粘土2を混合して転動造粒し、乾燥させた後に分級して製造した物である。層状複水酸化物1は、層内に含むアニオン種によって塩素型や炭酸型などが存在しており、イオン性のフッ素、窒素、リン化合物のアニオン処理を目的とする場合には、アニオン交換選択性に優れる塩素型の層状複水酸化物を原料に用いることが望ましい。長石粘土2は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などのアルミノケイ酸塩を主成分とする三次元構造のテクトケイ酸塩の一種である長石をすりつぶし、5μm以下の粉状としたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン交換能を有する層状複水酸化物と、乾燥することで水中でも形状を保持する長石粘土とを混合して転動造粒して乾燥させたことを特徴とするアニオン処理剤。
【請求項2】
アニオン交換能を有する層状複水酸化物と、乾燥することで水中でも形状を保持する長石粘土とを混合して転動造粒して成形し、乾燥させた後に分級してアニオン処理剤を製造することを特徴とするアニオン処理剤の製造方法。
【請求項3】
アニオン交換能を有する層状複水酸化物と、乾燥することで水中でも形状を保持する長石粘土とを混合して転動造粒して成形し、分級した後に乾燥させてアニオン処理剤を製造すると共に、成形および分級選別から外れた原料を再利用することを特徴とするアニオン処理剤の製造方法。
【請求項4】
アニオン交換能を有する層状複水酸化物と、乾燥することで水中でも形状を保持する長石粘土とを混合して転動造粒し、乾燥させた後に分級して製造したアニオン処理剤に、塩化物イオンを含む再生剤を添加することによってアニオン処理剤を再生させることを特徴とするアニオン処理剤の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水・湖沼水などの地表水、井戸水および生活排水・工場廃水に含まれるフッ素、窒素、リン化合物などのアニオンを除去するために用いるアニオン処理剤、アニオン処理剤の製造方法、アニオン処理後の再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アニオン処理剤として、例えば、層状複水酸化物であるハイドロタルサイト粉末とバインダーであるポリアクリルアミドのアミノ化物等の高分子化合物の混合物に有機溶剤を添加して混錬した後、造粒機で形成した成形体を乾燥、硬化させて得たハイドロタルサイト造粒物や、そのハイドロタルサイト粉末とバインダーの混錬物を、ゼオライト粒子で成る芯材の表面に粉末層として被装して乾燥、硬化させた構造のものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、アニオン処理剤のアニオン交換能は、含有する層状複水酸化物の量に比例するため、前述の特許文献1のアニオン処理剤は、いずれも層状複水酸化物粉末とバインダーの混合物をゼオライト粒子で成る芯材の表面に乾燥硬化させて製造するため、ゼオライト粒子で成る芯材が造粒体の主を成すことになり、アニオン交換能に限界があるという問題があった。
【0005】
また、前述の特許文献1のアニオン処理剤では、バインダーとしてポリアクリルアミドなどの高分子化合物を用いるため、高分子化合物自体もしくは高分子化合物をバインダーとして所定濃度まで有機溶剤で希釈する必要があるが、その希釈に使用する有機溶剤がアニオン処理剤中に透過液として溶出する場合がある。この場合、アニオン処理剤で処理した水を例えば水道用として利用すると、関連する水道水質基準におけるTOC(全有機炭素)や水道用資機材の適合基準で問題視される揮発性有機化合物、アクリル酸などの有害有機物に該当する恐れが高く、高分子化合物およびその希釈に使用する有機溶剤を利用することは避けるべきである。
【0006】
そこで、本発明は、このような課題に着目してなされたもので、高分子化合物やその希釈に使用する有機溶剤を利用せずにアニオン交換能を向上させて層状複水酸化物を原料としたアニオン処理剤の前記欠点を除去することができるアニオン処理剤、そのようなアニオン処理剤の製造方法、アニオン処理後の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るアニオン処理剤は、アニオン交換能を有する層状複水酸化物と、乾燥することで水中でも形状を保持する長石粘土とを混合して転動造粒して乾燥させたことを特徴とする。
また、本発明に係るアニオン処理剤の製造方法は、アニオン交換能を有する層状複水酸化物と、乾燥することで水中でも形状を保持する長石粘土とを混合して転動造粒して成形し、乾燥させた後に分級してアニオン処理剤を製造することを特徴とする。
また、本発明に係るアニオン処理剤の製造方法は、アニオン交換能を有する層状複水酸化物と、乾燥することで水中でも形状を保持する長石粘土とを混合して転動造粒して成形し、分級した後に乾燥させてアニオン処理剤を製造すると共に、成形および分級選別から外れた原料を再利用することも特徴とする。
また、本発明に係るアニオン処理剤の再生方法は、アニオン交換能を有する層状複水酸化物と、乾燥することで水中でも形状を保持する長石粘土とを混合して転動造粒し、乾燥させた後に分級して製造したアニオン処理剤に、塩化物イオンを含む再生剤を添加することによってアニオン処理剤を再生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るアニオン処理剤は、アニオン交換能を有する層状複水酸化物と、乾燥することで水中でも形状を保持する長石粘土とを混合して転動造粒して成形し、乾燥して製造しているため、従来のようにゼオライト粒子等で構成した芯材を使用しない。そのため、造粒体における層状複水酸化物の割合を高くとることが可能となり、アニオン交換能を向上させることができる。
また、ゼオライト粒子等で構成した芯材を使用しないため、層状複水酸化物のバインダーとしてポリアクリルアミドなどの高分子化合物およびその高分子化合物を希釈するための有機溶剤が不要となり、有機溶剤が地下水等に溶け出して環境に悪影響を与えることを確実に防止することができる。
その結果、層状複水酸化物を原料としたアニオン処理剤の欠点である、アニオン交換能の限界と、芯材の生成に必要な高分子化合物およびその希釈に使用する有機溶剤の利用とを除去することができる。
また、本発明に係るアニオン処理剤では、層状複水酸化物の粉状から粒状に加工することで、容易に再生が行うことができる利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態のアニオン処理剤の外観の例を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る実施形態のアニオン処理剤を構成する長石粘土の組成の例を表で示す図である。
【
図3】本発明に係る実施形態のアニオン処理剤の造粒体の例を写真で示す図である。
【
図4】本発明に係る実施形態のアニオン処理剤と、層状複水酸化物の粉末とバインダーの混合物を芯材の表面に乾燥硬化させた従来の造粒体によるアニオン処理剤とで所定の条件で原水を通水させて充填剤体積当たりのフッ素処理量と処理水のフッ素濃度を測定した際の結果をグラフで示す図である
【
図5】本発明に係る実施形態のアニオン処理剤と、層状複水酸化物の粉末とバインダーの混合物を芯材の表面に乾燥硬化させた従来の造粒体によるアニオン処理剤とで所定の条件で原水を通水させて測定した充填剤体積当たりのフッ素処理量の増加率を表で示す図である。
【
図6】再生無しのアニオン処理剤と、再生時の通水速度SVを3段階で変化させて本発明に係る実施形態のアニオン処理剤の再生方法によってアニオン交換能を再生したアニオン処理剤の再生前と再生後の通水倍量と処理水のフッ素濃度を測定した際の結果をグラフで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るアニオン処理剤、アニオン処理剤の製造方法、アニオン処理剤の再生方法の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aを拡大して示す図である。
図1に示すように、アニオン処理剤Aは、アニオン交換能を有する層状複水酸化物1の粒子と、長石粘土2との混錬物を造粒した粒状体であって、層状複水酸化物1と長石粘土2の混錬物を造粒し、乾燥・分級操作を行って製品としたものである。
【0012】
(層状複水酸化物1)
層状複水酸化物1は、層内に含むアニオン種によって塩素型や炭酸型などが存在しており、本発明に係る実施の形態で提案するイオン性のフッ素、窒素、リン化合物のアニオン処理を目的とする場合には、アニオン交換選択性に優れる塩素型の層状複水酸化物を原料に用いることが望ましい。
【0013】
(長石粘土2)
本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aでは、粒状成形を達成するために、乾燥することで水中でも形状を保持できる長石粘土2を使用する。長石粘土2は、例えば、
図2に示すような組成であり、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などのアルミノケイ酸塩を主成分とする三次元構造のテクトケイ酸塩の一種である長石をすりつぶし、5μm以下の粉状としたものである。尚、
図2に示す組成では、割合が多い順に10種記載している。
【0014】
<層状複水酸化物1と長石粘土2の製造方法>
次に、本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aを製造する際の層状複水酸化物1と長石粘土2の製造方法について説明する。
【0015】
(層状複水酸化物1と長石粘土2の混錬時の割合)
まず、本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aにおいて、層状複水酸化物1と長石粘土2の混錬時の割合としては、重量比で10%:90%乃至90%:10%として混錬物を成すこととする。
【0016】
造粒については、混錬物をそのまま粒体とすることで原料をすべて使用できる利点がある転動造粒にて行う。造粒時には原料を100%とした場合に重量比で10%乃至40%の水を加えて原料が粒の形状を保持できるようにする。
【0017】
転動造粒にて得られた造粒体は、0.1mm乃至2.0mmの間の異なる開き目を持つ2種のふるいで分級され、2つのふるいの間に残った造粒体は乾燥工程へ移る。
【0018】
分級工程で発生する小さい開き目のふるい下分、および大きい開き目のふるいの残留分は乾燥させずにすりつぶし、5μm以下の粉状とすることで、次回製造時の原料とすることができる。
【0019】
長石粘土2を使用した造粒体製造時に発生する製品外部分は、乾燥工程を経ることで成形性がなくなり、再度の成形が不可能となるが、この方法では乾燥工程を経ていないため、再度の成型を可能とできる利点がある。
【0020】
0.1mm乃至2.0mmの異なる開き目を持つ2種のふるいで分級され、2つのふるいの間に残った造粒体は、乾燥工程にて300℃乃至600℃で乾燥され、本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aの製造が完了する。乾燥により粒体の強度が高まり、水に溶解しているアニオン処理を目的とした使用時に、水中でもアニオン処理剤の粒の形状を保持できるようになる。
【0021】
<アニオン処理剤Aのアニオン交換能についての試験>
本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aによる利点の一つに、アニオン交換能の向上がある。造粒体であるアニオン処理剤Aのアニオン交換能について調査した。塩素型の層状複水酸化物1と長石粘土2を重量比でそれぞれ50%ずつとして転動造粒し、0.3mmおよび1.0mmのふるいで分級し、500℃で乾燥させたアニオン処理剤Aの造粒体は、例えば、
図3に示す写真のようになる。
【0022】
このような本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aと、層状複水酸化物1の粉末とバインダーの混合物を芯材の表面に乾燥硬化させた従来の造粒体によるアニオン処理剤とで、次に示すような条件で試験を行ってアニオン交換能を比較すると、本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aのアニオン交換能の向上を確認した。
【0023】
(試験条件)
試験条件は、カラムに本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aと、層状複水酸化物1の粉末とバインダーの混合物を芯材の表面に乾燥硬化させた従来の造粒体によるアニオン処理剤とをそれぞれ充填し、アニオンを溶解させた原水を一定のろ過速度、流量で通水させ、処理水のアニオンを分析することで、本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aと従来の造粒体によるアニオン処理剤のアニオン交換能を確認した。
【0024】
・処理アニオン:フッ化物イオン
・原水:精製水にフッ化ナトリウムを加えて、フッ化物イオンとして9.0~9.5mg/Lに調整
・ろ層厚:300mm
・ろ過速度:SV(空間速度)10h
-1
・終点:処理水のフッ化物イオンが原水と同濃度を示すまで。
・上記条件で原水を通水させた際の、充填剤体積当たりのフッ素処理量と処理水フッ素濃度を
図4にグラフとして示すと共に、終点に達した際の充填剤体積当たりのフッ素処理能および従来品と、本実施形態のアニオン処理剤Aのフッ素処理量(mg/mL)の増加率を
図5に表として示す。
【0025】
図4および
図5に示すように、バインダーの混合物を芯材の表面に乾燥硬化させた従来の造粒体である従来品の場合、フッ素樹脂量が約5.2mg/mLで止まるのに対し、本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aでは、フッ素樹脂量が約9.4mg/mLであり、本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aは、従来品と比較して180%のフッ化物イオンを処理していることになり、アニオン交換能の向上を証明できた。
【0026】
<本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aの効果>
以上説明したように、本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aによれば、従来のアニオン処理剤よりフッ素やリンなどのアニオン交換能が優れた処理剤を提供でき、殊に層状複水酸化物1と長石粘土2との混錬物の造粒体であって、ゼオライト粒子等で構成した芯材を使用していないことから有機溶剤の透過液への流出の懸念を払拭することができる。
【0027】
また、本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aは、ゼオライト粒子等で構成した芯材を使用しないため、造粒体における層状複水酸化物1の割合を高くとることが可能となり、アニオン交換能を向上させることができる。
【0028】
また、層状複水酸化物1の粉状から粒状に加工することで、容易に再生が行うことができる利点も有する。
【0029】
さらに、後述するように製造時に発生する製品外部分については再度原料として利用できるため、経済的かつ廃棄物が発生しないクリーンな造粒体製造方法である。アニオン交換後に再生操作を行うことで、繰り返しアニオン交換能を有することができる。
【0030】
<アニオン処理剤の再生操作>
次に、本発明に係る実施形態のアニオン処理剤の再生操作について説明する。
【0031】
層状複水酸化物1はその構造から相関にアニオンを有し、アニオン交換能を有していることが一般的に知られている。アニオンは種類によって交換されやすさ、いわゆる選択性が異なる。層状複水酸化物1に対して最も低い選択性を示すアニオンは塩化物イオンである。そのため、アニオン交換を目的として使用される場合は、いわゆる「塩素型層状複水酸化物」として使用されている。交換対象のアニオンと塩化物イオンが交換され、塩化物イオンは水中へ放出され、交換対象のアニオンは層状複水酸化物1の相関に取り込まれ、あたかも除去された状態となる。
【0032】
交換が進行すると、層状複水酸化物1中の塩化物イオンがなくなり、交換対象のアニオンで相関が満たされる。その状態となると、アニオン交換能がなくなってしまう。
【0033】
そこで再度アニオン交換能を有するように塩素型層状複水酸化物1に戻す操作、いわゆる再生操作が必要となる。
【0034】
しかし、層状複水酸化物1は粉体であり、処理後および再生後の回収が困難なことや、これまでは塩化物イオン型に再生する経済的な方法が無いため、使用後は廃棄せざるを得ない状況であった。回収に関しては粒状とすることで容易となった。
【0035】
安価な再生方法として、塩化物イオンを含む物質を利用した経済的な方法の検討を行った。
【0036】
検討概要は次の通りである。
つまり、塩化物イオンより選択性が高いアニオン(フッ化物イオン、硫酸イオン、イオン状シリカ、リン酸イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン)を含んだ水を、塩素型層状複水酸化物1と長石粘土2から成る本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aの造粒体を充填したカラムに通水させ、アニオンと塩化物イオンを交換し、アニオンがこれ以上交換できない状態とする。
【0037】
その状態で塩化物イオンを含む再生液を通水させ、再生操作を行う。アニオン交換が終了した実施形態のアニオン処理剤Aの再生操作は、次の(1)~(3)の3工程、つまり、
(1)処理水による洗浄工程
(2)再生液による再生工程
(3)処理水による押出洗浄工程
で行う。
【0038】
(1)処理水による洗浄工程
処理水による洗浄工程は、アニオン交換処理水もしくは精製水を通水させる。通水方向は処理時の正方向、逆方向どちらでもよい。通水速度は線速度LVとして2~50m/hもしくは空間速度SVとして2~50h-1とする。特に線速度LV5~30m/hが適している。通水時間は5~60分とし、10~30分が適している。
【0039】
(2)再生液による再生工程
再生工程は、次の再生液を通水させる。再生液の濃度は10g/L~飽和濃度とし、特に20g/L以上が適している。通水方向は処理時の正方向、逆方向どちらでもよいが、逆方向が適している。通水速度は空間速度SVとして2~50h-1とし、特に2.5~20h-1が適している。通水時間は0.5h~10hとし、1~4hが適している。
【0040】
(3)押出工程
押出工程は、アニオン交換処理水もしくは精製水を通水させる。通水方向は処理時の正方向、逆方向どちらでもよい。通水速度は空間速度SVとして2~50h-1とし、特に5~20h-1が適している。通水時間は5~60分とし、10~30分が適している。
【0041】
押出工程の終了後、処理原水を流して再度アニオン交換工程へと移る。
【0042】
以下の要領で試験を行い、アニオン交換能の再生を確認した。再生無しの条件と、再生時の通水速度SVを3条件とした計4条件にて実施した。
【0043】
尚、共通の条件は、次の通りである。
・通水カラム内径:13mm
・造粒体層厚:300mm
・充填造粒体量:40mL
【0044】
(1)アニオン交換工程の条件
・原水:精製水にフッ化ナトリウムを溶解させた水
・原水濃度:フッ素として10mg/L
・流量:400mL/h
・通水速度:SV 10h-1
・終点:処理水のフッ素が原水と同等以上となった点。
【0045】
(2)洗浄工程の条件
・洗浄水:精製水
・流量:2,000mL/h
・通水速度:LV 15m/h(SV 50h-1)
・洗浄工程時間:15分
【0046】
(3)再生工程の条件(再生無し)
・再生液:精製水に塩化ナトリウムを溶解させた水
・再生液濃度:塩化物イオンとして180g/L(塩化ナトリウムとして300g/L)
・流量:400mL/h
・通水速度:Run-1 SV10h-1、Run-2 SV5h-1、Run-3 SV2.5h-1
・再生工程時間:Run-1 1h、Run-2 2h、Run-3 4h
【0047】
(4)押出洗浄工程の条件
・押出液:精製水
・流量:400mL/h
・通水速度:SV 10h-1
・押出工程時間:30分
【0048】
(5)アニオン交換能の再生の確認工程の条件
・原水:精製水にフッ化ナトリウムを溶解させた水
・原水濃度:フッ素として10mg/L
・流量:400mL/h
・通水速度:SV 10h-1
・終点:処理水のフッ素が原水と同等以上となった点。
【0049】
図6に再生無しのアニオン処理剤と、再生時の通水速度SVを3段階で変化させて本発明に係る実施形態のアニオン処理剤Aの再生方法によってアニオン交換能を再生したアニオン処理剤Aの再生前と再生後の通水倍量と処理水のフッ素濃度を測定した際の結果をグラフで示す。
【0050】
図6において丸は再生無し、三角はRun-1 SV10、四角はRun-2 SV5、ひし形はRun-3SV2.5で、再生前のプロットは塗り潰し、再生後のプロットは白抜きで示している。
【0051】
丸で示す再生無しの条件では、再生工程後の処理水のフッ素濃度が高い値を示しているのに対し、再生を実施した三角や四角、ひし形で示す3条件(Run-1 SV10、Run-2 SV5およびRun-3SV2.5)では、再生後のフッ素処理の挙動が再生前のそれと同様となっている。このことから、アニオン処理能が再生したものと言える。
【符号の説明】
【0052】
A アニオン処理剤
1 層状複水酸化物
2 長石粘土