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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161606
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】ポリウレタンウレア樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/75 20060101AFI20221014BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20221014BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20221014BHJP
   C08G 18/61 20060101ALI20221014BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20221014BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20221014BHJP
   C09D 175/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C08G18/75 080
C08G18/44
C08G18/10
C08G18/61
C08G18/50 021
C08G18/32 025
C09D175/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066546
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】521153283
【氏名又は名称】三和レジン化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 覚
(72)【発明者】
【氏名】新村 龍吾
(72)【発明者】
【氏名】西野 英雄
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA02
4J034CA03
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA13
4J034CA14
4J034CA15
4J034CA16
4J034CA17
4J034CB01
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CB07
4J034CB08
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC12
4J034CC23
4J034CC26
4J034CC34
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC53
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034CC67
4J034CD04
4J034DA01
4J034DA03
4J034DB03
4J034DF02
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG06
4J034DG23
4J034DM01
4J034DM06
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB07
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC53
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA30
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC08
4J034KC16
4J034KC17
4J034KC18
4J034KC23
4J034KC35
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD11
4J034KD12
4J034KD15
4J034KE02
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB08
4J034QB14
4J034QB17
4J034QC05
4J034RA07
4J034RA10
4J034RA12
4J034RA14
4J034RA15
4J038DG061
4J038DG121
4J038DG261
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA03
4J038NA15
4J038PB05
4J038PB07
(57)【要約】
【課題】自己消火性を有し、耐光性及び透明性に優れ、高弾性高伸度のポリウレタンウレア樹脂を提供する。
【解決手段】トランス,トランス-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)とイソソルバイドを基本骨格とするポリカーボネートジオールとの反応により得られる両末端イソシアネートプレポリマー(A)と、活性水素化合物成分(B)との反応により得られたポリウレタンウレア樹脂であって、(I)前記プレポリマー(A)の数平均分子量が8000~25000であり、前記活性水素化合物成分(B)が、数平均分子量400以上のポリアミン成分(B1)を含むか、又は(II)前記プレポリマー(A)の数平均分子量が6000以上8000未満であり且つ前記活性水素化合物成分(B)が数平均分子量400以上のポリアミン成分(B1)と分子量400未満のポリアミン成分(B2)とを含む、ポリウレタンウレア樹脂。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス,トランス-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)とイソソルバイドを基本骨格とするポリカーボネートジオールとの反応により得られる両末端イソシアネートプレポリマー(A)と、活性水素化合物成分(B)との反応により得られたポリウレタンウレア樹脂であって、
(I)前記プレポリマー(A)の数平均分子量が8000~25000であり、前記活性水素化合物成分(B)が、数平均分子量400以上のポリアミン成分(B1)を含むか、又は
(II)前記プレポリマー(A)の数平均分子量が6000以上8000未満であり且つ前記活性水素化合物成分(B)が数平均分子量400以上のポリアミン成分(B1)と分子量400未満のポリアミン成分(B2)とを含む、
ポリウレタンウレア樹脂。
【請求項2】
前記トランス,トランス-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)として、トランス,トランス-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を20~100モル%含む4,4’メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を用いる、請求項1に記載のポリウレタンウレア樹脂。
【請求項3】
前記活性水素化合物成分(B)が、平均官能基数2以上6以下であり、水酸基価が6~1645mgKOH/gである脂肪族又は脂環式ポリオール成分(B3)を更に含む、請求項1又は2に記載のポリウレタンウレア樹脂。
【請求項4】
前記活性水素化合物成分(B)が、平均官能基数が2を超過している化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア樹脂。
【請求項5】
塗料として用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア樹脂。
【請求項6】
成形材料として用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア樹脂。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア樹脂を含有する塗料。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア樹脂を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンウレア樹脂、並びに当該ポリウレタンウレア樹脂を使用した塗料及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、一般的にポリイソシアネート成分のイソシアネート基とポリオール成分のヒドロキシル基が反応することで、ウレタン結合を形成し、生成される樹脂の総称である。ポリウレタン樹脂は、その種類の多様性と優れた物性から様々な分野で利用されている。例えば、塗料、コーキング、接着剤、人工皮革、弾性繊維(スパンデックス)、エラストマー、ウレタンフォーム、RIM成形品など、あらゆる産業分野の技術発展に寄与している。
【0003】
従来、ポリウレタン樹脂の原料であるイソシアネート成分として、芳香族環を有するジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)やトルエンジイソシアネート(TDI)が、広範囲に使用されてきた。MDIやTDI含有ポリウレタンは、優れた物性にも関わらず、太陽光等により経年劣化し、白化や黄色変化を引き起こす。塗料や成形物等に白化、黄色変化が生じると、被塗装物や成形物の意匠性を損ねるばかりでなく、ひび割れ等を生じ、物性低下にもつながる。
【0004】
一方で、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族系イソシアネートを用いたポリウレタン樹脂は、耐光性、耐黄変性に加えて、高い透明性に優れている。しかしながら、脂肪族イソシアネート化合物を用いたポリウレタン樹脂は、一般的に芳香族系イソシアネート化合物を用いたポリウレタン樹脂に比べて、弾性率が低いものが多い。
【0005】
大きな負荷がかかる用途で、変形量を弾性変形で留めるためには、高い弾性率が要求物性として求められる。例えば、近年、コンクリートの老朽化に伴うコンクリート構造物の事故が起きており、その際、コンクリート構造物の剥落防止策が検討されている。この場合、滑落コンクリート片を落下させず保持するためには、高弾性なコーティング組成物が必要不可欠である。
【0006】
道路トンネル等の定期点検は、コンクリート表面のひび割れなどを近接目視による状態把握が実施されているが、時間と労力への負荷が大きく作業の効率化が求められている。物性に優れた無色透明性コーティング組成物があれば、施工表面からコンクリート表面を直接目視ができ、従来の不透明なコーティング材とは異なり、ひび割れなどが目視可能であり、建築物、土木構造物等の目視点検を行う際の時間と労力の低減に大いに効果がある。
【0007】
そこで、上記の優れた物性を保持しながら無色透明性を維持するために、様々な構造を有するポリウレタン樹脂が提案されている。例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)とポリエステルポリオールとを用いて合成したポリウレタン樹脂に関して、H6XDIのトランス異性体の含有率を増やすことにより、各用途の要求物性に応じた機械物性と耐黄変性に優れたポリウレタン樹脂が提案されている(特許文献1)。
【0008】
また、非特許文献1では、異性体混合物の4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)と1,4-ブタンジオールをハードセグメントとし、ポリエステルポリオールとを用いて合成したポリウレタン樹脂が記載されているが、MDIやトランス-1,4-H6XDIを用いた場合と比較して強度が劣ると報告されている。H12MDIは、シス,シス-H12MDI、シス,トランス-H12MDI、トランス,トランス-H12MDIの三種類の幾何異性体が存在することが知られており、市販品は、これら三種類の幾何異性体の混合物として上市されている。
【0009】
一方、H12MDIと1,3-プロパンジオールをハードセグメントとして用いたポリウレタン樹脂において、結晶性のトランス,トランス-H12MDIの含有率を増加させることで、弾性率などの力学物性を向上させたポリウレタン樹脂が報告されている。しかし、使用するソフトセグメントによりハードセグメントの配列、ソフトセグメントの配列や相分離が十分でなくなり、ポリウレタン樹脂の弾性率を低下させる場合があり、必ずしも、高含有率のトランス,トランス-H12MDIが機能するとは限らない(非特許文献2)。また、結晶性が増加すれば不透明となる場合があり、無色透明性は損なわれる。
【0010】
また、トランス,トランス-H12MDIの含有率が増加するほど、相分離を引き起こし、有機溶媒への溶解性は、乏しくなり、DMFなど広範には使用できない溶媒を使用せざるを得なくなる(非特許文献3)。塗料などの屋外使用では、人体への安全性も考慮し、汎用的な有機溶媒への転換が必須である。
【0011】
最近、生物由来イソソルバイドを有するポリカーボネートジオールと、異性体混合物のH12MDIを使用し、鎖延長剤としてイソホロンジアミン(IPDA)との反応で得られるポリウレタン樹脂の高弾性化が報告されている(非特許文献4)。しかしながら、このポリウレタン樹脂は、弾性率が高いものの、破断伸度は比較的劣る。この場合、低分子ジアミン化合物を加えると、硬化速度が極端に速くなり、塗工や加工の取り扱いが困難になるという問題がある。
【0012】
さらに、ポリウレタン樹脂は、建築材やトンネル施工用途、自動車用途等では難燃性が要求される。そのような場合には、ポリウレタン樹脂に難燃剤を配合して、難燃性を向上することが知られている。しかし、難燃剤の使用は、組成物に使用する溶媒を制限し、硬化後の透明性を損ない、着色等をもたらす等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許5401320号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Nihon Reoroji Gakkai、2017年、第45巻、p. 261-268
【非特許文献2】Polymer Bulletin、2013年、第70巻、p. 2193-2210
【非特許文献3】Colloid&Polymer Science、1992年、第270巻、p.543-548.
【非特許文献4】BENEBiOL Polycarbonatediol Technical data sheet, [online], Mar 10, 2015, インターネット<https://evessio.s3.amazonaws.com/customer/b8ca999f-7ffb-4698-90b7-9628f7143875/event/fce9bdb4-ebf0-4b88-91a9-f60760252362/responses/4e2493af-09d2-4b6e-89bd-32f22560d922/Marubeni_-_Mitsubishi_BENEBiOL_2018_PCD_Performance_Data.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記の従来技術、例えば特許文献1に記載のポリウレタン樹脂は、破断伸度が大きいものの、弾性率が不十分であった。また、非特許文献4に記載のポリウレタン樹脂は弾性率が高いものの、破断伸度が不十分であり、さらに低分子ポリアミン化合物を用いると硬化速度が極端に速くなり、取り扱いが困難になるという問題があった。非特許文献2に記載のポリウレタン樹脂は、ソフトセグメントに一部結晶性を有するグリコールを用いると、トランス,トランス-異性体純度が高くなるにつれてポリウレタン樹脂の弾性率が低下する場合がある。
【0016】
本発明は、自己消火性を有し、耐光性及び無色透明性に優れ、高弾性高伸度のポリウレタンウレア樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、トランス,トランス-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(H12MDI)とイソソルバイドを基本骨格とするポリカーボネートジオールとを必須成分とし、数平均分子量を制御した両末端イソシアネートプレポリマー(A)と、数平均分子量が一定以上の活性水素化合物成分(B)との反応により得られるポリウレタンウレア樹脂が、自己消火性を有し、耐光性と無色透明性に優れた高弾性高伸度を示すという知見を得た。さらには、当該ポリウレタンウレア樹脂は、汎用的な有機溶媒を使用して調製することが可能という特徴も有している。
【0018】
非特許文献2に記載された問題を克服するため、トランス,トランス-H12MDIと透明性と自己消火性が期待できるイソソルバイド骨格を有するポリカーボネートジオールを必須成分とするプレポリマー(A)を合成し、ソフトセグメントにポリエチレングリコールを使用したポリウレタン樹脂を作製した。その結果、イソシアネート成分にトランス,トランス-H12MDIの含有率が100モル%のH12MDIを使用した方が、トランス,トランス-H12MDIの含有率が20モル%のH12MDIを使用した条件よりも、より高弾性率となった(後述する参考試験例を参照)。以上の結果より、本明細書記載のプレポリマー(A)は、非特許文献2の報告と異なり、トランス,トランス-H12MDIの含有率の増加に応じて高弾性率を発現させることができることを見出した。
【0019】
加えて、イソソルバイド含有ポリカーボネートジオールを使用することで、脂肪族系化合物であるため高い耐光性且つ無色透明性を維持することができ、ポリカーボネート樹脂による自己消火性を有することができる。高含有トランス,トランス-H12MDIとのプレポリマーをハードセグメントとして利用することで、高弾性率が実現されたポリウレタンウレア樹脂を提供できる。
【0020】
さらにポリイソシアネートとポリオールの反応に加えて、第三成分として分子量の比較的大きいポリアミンを使用することで、硬化速度を極端に速めることなく、ウレア結合の高い凝集エネルギーに由来する力学物性や熱安定性の向上を達成できることを見出した。
【0021】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次のポリウレタンウレア樹脂等を提供するものである。
【0022】
項1.トランス,トランス-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)とイソソルバイドを基本骨格とするポリカーボネートジオールとの反応により得られる両末端イソシアネートプレポリマー(A)と、活性水素化合物成分(B)との反応により得られたポリウレタンウレア樹脂であって、
(I)前記プレポリマー(A)の数平均分子量が8000~25000であり、前記活性水素化合物成分(B)が、数平均分子量400以上のポリアミン成分(B1)を含むか、又は
(II)前記プレポリマー(A)の数平均分子量が6000以上8000未満であり且つ前記活性水素化合物成分(B)が数平均分子量400以上のポリアミン成分(B1)と分子量400未満のポリアミン成分(B2)とを含む、
ポリウレタンウレア樹脂。
項2.前記トランス,トランス-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネートとして、トランス,トランス-4,4’ -メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネートを20~100モル%含む4,4’メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネートを用いる、項1に記載のポリウレタンウレア樹脂。
項3.前記活性水素化合物成分(B)が、平均官能基数2以上6以下であり、水酸基価が6~1645mgKOH/gである脂肪族又は脂環式ポリオール成分(B3)を更に含む、項1又は2に記載のポリウレタンウレア樹脂。
項4.前記活性水素化合物成分(B)が、平均官能基数が2を超過している化合物を含む、項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア樹脂。
項5.塗料として用いられる、項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア樹脂。
項6.成形材料として用いられる、項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア樹脂。
項7.項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア樹脂を含有する塗料。
項8.項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア樹脂を成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0023】
本発明のポリウレタンウレア樹脂は、自己消火性を有し、耐光性及び透明性に優れる上、高弾性高伸度という優れた特性を有する。さらに、当該ポリウレタンウレア樹脂は、汎用的な有機溶媒を用いて調製することが可能であるという優れた特性も有している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】含有率100モル%のトランス,トランス-H12MDIとイソソルバイド含有ポリカーボネートジオールを用いたプレポリマーにより得られるポリウレタンウレア樹脂の応力ひずみ曲線を示すグラフである。
図2】三種異性体混合物H12MDIとイソソルバイド含有ポリカーボネートジオールを用いたプレポリマーにより得られるポリウレタンウレア樹脂の応力ひずみ曲線を示すグラフである。
図3】トランス,トランス-H12MDIの含有率が異なるH12MDIとイソソルバイド含有ポリカーボネートジオールを用いたプレポリマーにより得られるポリウレタンウレア樹脂による応力ひずみ曲線を示すグラフである。
図4】トランス,トランス-H12MDIの含有率(純度)が異なるH12MDIとイソソルバイド含有ポリカーボネートジオールを用いたプレポリマーにより得られるポリウレタン樹脂による応力ひずみ曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
なお、本明細書において「含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。
【0027】
本発明のポリウレタンウレア樹脂は、トランス,トランス-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)とイソソルバイドを基本骨格とするポリカーボネートジオールとの反応により得られる両末端イソシアネートプレポリマー(A)と、活性水素化合物成分(B)との反応により得られるものであって、
(I)前記プレポリマー(A)の数平均分子量が8000~25000であり、前記活性水素化合物成分(B)が、数平均分子量400以上のポリアミン成分(B1)を含むか、又は
(II)前記プレポリマー(A)の数平均分子量が6000以上8000未満であり且つ前記活性水素化合物成分(B)が数平均分子量400以上のポリアミン成分(B1)と分子量400未満のポリアミン成分(B2)とを含むことを特徴とする。
【0028】
<両末端イソシアネートプレポリマー(A)>
本発明における両末端イソシアネートプレポリマー(A)は、トランス,トランス-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(t,t-H12MDI)とイソソルバイドを基本骨格とするポリカーボネートジオール(ISB-PCD)との反応により得られるものである。
【0029】
4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)には、シス,シス-H12MDI、シス,トランス-H12MDI、及びトランス,トランス-H12MDIの三種類の幾何異性体が存在する。本発明では、これらの中でもt,t-H12MDIを必須の成分とすることを特徴としており、t,t-H12MDIが含まれている限り、異性体の混合物を使用することができる。本発明で使用するH12MDIは、好ましくはt,t-H12MDIを20~100モル%、より好ましくは40~100モル%、更に好ましくは60~100モル%含む。このように、t,t-H12MDIの含有率が高くなることで、ポリウレタンウレア樹脂の弾性率を向上させることできる。このようなt,t-H12MDIの含有率を有するH12MDIは、例えば、非特許文献3に記載の方法により作製することができる。
【0030】
プレポリマー(A)の製造には、本発明のポリウレタンウレア樹脂の特性、効果を損なわない範囲において、H12MDI以外の他の脂環式ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートなどのジイソシアネート成分を使用することができる。
【0031】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、2,5-又は2,6-ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)及びその混合物等が挙げられる。
【0032】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート等が挙げられる。
【0033】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート及びその混合物、1,3-又は1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート及びその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン等が挙げられる。
【0034】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート及びこれらトリレンジイソシアネートの異性体混合物、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート及びこれらジフェニルメタンジイソシアネートの異性体混合物、トルイレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
これらのジイソシアネート化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
H12MDIを含む上記のジイソシアネート化合物としては、多量体(ダイマー、トリマーなど)、イソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、カルボジイミド変性体、ウレトジオン変性体などを使用することもできる。
【0037】
本発明のポリウレタンウレア樹脂において、イソソルバイドを基本骨格とするポリカーボネートジオール(ISB-PCD)を使用することで、高い耐光性且つ無色透明性を維持することができる上、自己消火性を付与することができる。イソソルバイドを基本骨格とするポリカーボネートジオールとしては、イソソルバイドを基本骨格として含む構造を有するポリカーボネートジオールであれば特に限定されず、例えば、下記式(1)で表される構造単位(構造単位(1))と下記式(2)で表される構造単位(構造単位(2))とを含むことが好ましい。
【0038】
【化1】
【0039】
【化2】
(式中、Rは脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数3~20の脂肪族炭化水素基)を表し、mは3~50の整数を表し、nは1~30の整数を表す。)
【0040】
式(1)中のRの具体例として、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオールなどの直鎖炭化水素の末端ジオール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのエーテル基を有する鎖状のジオール類;ビスヒドロキシエチルチオエーテルなどのチオエーテルジオール類;2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ペンチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-ペンチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2,9,9-テトラメチル-1,10-デカンジオールなどの分岐鎖を有するジオール類;1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4,4-ジシクロヘキシルジメチルメタンジオール、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、4,4’-イソプロピリデンジシクロヘキサノール、4,4’-イソプロピリデンビス(2,2’-ヒドロキシエトキシシクロヘキサン)、ノルボルナン-2,3-ジメタノールなどの脂環式構造を有するジオール類;2,5-ビス(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(cas番号:1455-42-1)、2-(5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン-2-イル)-2-メチルプロパン-1-オール(cas番号:59802-10-7)などのジオールから2つの水素が脱離した基が挙げられる。
【0041】
式(1)中のRとしては、好ましくは炭素数3~20の非環式脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは炭素数3~15の直鎖又は分岐状アルキレン基である。中でも、ノルマルブチレン基、ノルマルへキシレン基などが好ましい。また、mは、好ましくは3~40の整数、より好ましくは5~30の整数である。
【0042】
構造単位(2)は、イソソルバイド基に由来する構造を有するものである。構造単位(2)にはイソソルバイド基に由来する構造単位の他に、異性体のイソマンニド基、イソイディッド基等に由来する構造単位も含まれていてもよい。また、nは、好ましくは、2~25の整数、より好ましくは3~20の整数である。
【0043】
ISB-PCDには、構造単位(1)が1種単独で含まれていてもよく、又は2種以上が含まれていてもよい。また、構造単位(2)が1種単独で含まれていてもよく、又は2種以上が含まれていてもよい。
【0044】
ISB-PCDに含まれる構造単位(1)と構造単位(2)との比率は、モル比で好ましくは85/15~15/85、より好ましくは80/20~20/80、更に好ましくは75/25~25/75である。
【0045】
ISB-PCDの水酸基価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは130mgKOH/g以上である。また、好ましくは300mgKOH/g以下、より好ましくは200mgKOH/g以下、更に好ましくは150mgKOH/g以下である。なお、水酸基価はJIS K1557-1に準拠して測定した値である。
【0046】
ISB-PCDの数平均分子量(Mn)は、好ましくは250以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上である。また、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下である。ここでの数平均分子量(Mn)は、特に水酸基価から求めた数平均分子量である。
【0047】
ISB-PCDは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
プレポリマー(A)の製造には、本発明のポリウレタンウレア樹脂の特性、効果を損なわない範囲において、ISB-PCD以外にもその他のポリオール、例えば、他のポリカーボネートジオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アルカンジオールなどを使用することができる。
【0049】
両末端イソシアネートプレポリマー(A)の数平均分子量(Mn)は、8000以上、好ましくは9000以上である。また、30000以下、好ましくは25000以下である。他の実施形態において、両末端イソシアネートプレポリマー(A)の数平均分子量(Mn)は、6000以上8000未満である。ここでの数平均分子量(Mn)は、GPC測定によるポリスチレン換算の数平均分子量である。数平均分子量を6000以上とすることで、弾性率を向上させることができる。また、30000以下とすることでポリウレタンウレア樹脂に無色透明性を付与することができる。
【0050】
両末端イソシアネートプレポリマー(A)の当量比(H12MDI/ISB-PCD)は、好ましくは100/90~100/70、より好ましくは100/80~100/70である。ここでの当量比は、各官能基の当量比を意味する。当量比をこのような範囲とすることにより、上記のような数平均分子量の両末端イソシアネートプレポリマー(A)を調製することができる。
【0051】
<活性水素化合物成分(B)>
活性水素化合物成分(B)は、前記プレポリマー(A)の数平均分子量が8000~25000である場合、数平均分子量400以上のポリアミン成分(B1)を含む。また、活性水素化合物成分(B)は、前記プレポリマー(A)の数平均分子量が6000以上8000未満である場合、数平均分子量400以上のポリアミン成分(B1)と分子量400未満のポリアミン成分(B2)とを含む。ポリアミン成分(B1)が、このような範囲の数平均分子量を有することで、高い破断伸度と高い破断強度を両立させることができる。また、数平均分子量400以上のポリアミン成分(B1)を使用することで、反応時の急激な増粘を抑制し、加工性を向上させることができる。
【0052】
ポリアミン成分(B1)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、更に好ましくは1500以上である。また、好ましくは6000以下、より好ましくは5000以下、更に好ましくは4000以下である。ここでの数平均分子量(Mn)は、特にアミン価から求めた数平均分子量である。なお、アミン価はJIS K7237-1995に準拠して求めた値である。
【0053】
ポリアミン成分(B1)の平均官能基数は、好ましくは2以上5未満であり、より好ましくは2~3である。
【0054】
ポリアミン成分(B1)としては、特に限定されず、例えば、α,ω-ビス(2-アミノプロピルエ-テル)ポリ(プロピレングリコール)、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリ(オキシテトラメチレン)、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ジアミン、メトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)-2-プロピルアミン、トリエチレングリコールジアミン、トリメチロールプロパンポリ(オキシプロピレン)トリアミン、グリセリルポリ(オキシプロピレン)トリアミン等のポリエーテルポリアミン;ポリジメチルシロキサンジアミン、ポリジフェニルシロキサンジアミン、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンジアミン、ポリフェニルメチルシロキサンジアミン、ポリジエチルシロキサンジアミン、ポリジビニルシロキサンジアミン、ポリビニルメチルシロキサンジアミン、ポリ(5-ヘキセニル)メチルシロキサンジアミン等の変性シロキサン系のシリコ-ンジアミン類などが挙げられる。
【0055】
ポリアミン成分(B1)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
ポリアミン成分(B2)の分子量は、好ましくは350以下、より好ましくは300以下である。また、好ましくは50以上、より好ましくは100以上である。
【0057】
ポリアミン成分(B2)としては、特に限定されず、例えば、1,2-ジアミノエタン(エチレンジアミン)、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン(1,4-テトラメチレンジアミン)、1,5-ジアミノペンタン(1,5-ペンタメチレンジアミン)、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,6-ジアミノヘキサン(1,6-ヘキサメチレンジアミン)、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレングリコールアミン、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエチルアミン、テトラメチレンジアミン、1,2,3-トリアミノプロパン、トリアミノノナン、トリアミノドデカン、1,8-ジアミノ-4-アミノメチルオクタン、1,3,6-トリアミノヘキサン、1,6,11-トリアミノウンデカン、3-アミノメチル-1,6-ジアミノヘキサン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;ジアミノシクロブタン、イソホロンジアミン(3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン)、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、メチル-2,4-シクロヘキサンジアミン、メチル-2,6-シクロヘキサンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、トリアミノシクロヘキサン等の脂環式ポリアミンなどが挙げられる。
【0058】
ポリアミン成分(B2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
活性水素化合物成分(B)は、平均官能基数2以上6以下であり、水酸基価が6~1645mgKOH/gである脂肪族又は脂環式ポリオール成分(B3)を更に含んでいてもよい。
【0060】
ポリオール成分(B3)の平均官能基数は、好ましくは2~3である。
【0061】
ポリオール成分(B3)の水酸基価は、好ましくは40mgKOH/g以上、より好ましくは50mgKOH/g以上である。また、好ましくは1000mgKOH/g以下、より好ましくは800mgKOH/g以下である。なお、水酸基価はJIS K1557-1に準拠して測定した値である。
【0062】
ポリオール成分(B3)の具体例としては、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖ジオール類;2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ヘプタンジオール、1,4-ジメチロールヘキサン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ダイマージオール等の分岐鎖を有するジオール類;ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のエーテル基を有するジオール類;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン等の脂環式構造を有するジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンソルビトールエーテル等のポリオール類などが挙げられる。
【0063】
ポリオール成分(B3)としては、特に、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールなどが望ましい。
【0064】
ポリオール成分(B3)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
本発明のポリウレタンウレア樹脂の製造には、本発明のポリウレタンウレア樹脂の特性、効果を損なわない範囲において、ポリオール成分(B3)以外の他の脂環式ポリオール、脂肪族ポリオール、芳香族ポリオールなどのポリオール成分を使用することができる。
【0066】
芳香族ポリオールとしては、例えば、キシリレングリコール、1,4-ジヒドロキシエチルベンゼン、4,4’-メチレンビス(ヒドロキシエチルベンゼン)等の芳香族炭化水素基を有するジオール類などが挙げられる。
【0067】
活性水素化合物成分(B)として、平均官能基数が2を超過する化合物を使用することで本発明のポリウレタンウレア樹脂を熱硬化性樹脂とし、高弾性化、高強度化、耐溶剤性向上などの効果を得ることができる。このような平均官能基数が2を超過する化合物は、ポリアミン成分(B1)、ポリアミン成分(B2)、ポリオール成分(B3)のいずれかであってもよい。
【0068】
平均官能基数が2を超過する活性水素化合物成分(B)としては、例えば、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、トリメチロールプロパンポリ(オキシプロピレン)トリアミン、グリセリルポリ(オキシプロピレン)トリアミン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
<鎖停止剤>
本発明のポリウレタンウレア樹脂を製造する際には、得られるポリウレタンウレア樹脂の分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を使用することができる。
【0070】
これらの鎖停止剤としては、1個の水酸基を有するメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族モノオール類、1個のアミノ基を有するジエチルアミン、ジブチルアミン、n-ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モルフォリン等の脂肪族モノアミン類などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
<触媒>
本発明のポリウレタンウレア樹脂では、プレポリマー化反応や最終生成物を得る反応において、ウレタン化触媒を使用することができる。
【0072】
ウレタン化触媒としては、金属触媒、アミン触媒等が挙げられる。金属触媒としては、錫系触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジメチルチンジラウレート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチルチンマレエート等)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛等)、ビスマス系触媒(ビスマスと炭素数1~12のモノカルボン酸との塩、ビスマスアルコキシド、ビスマスとアセチルアセトン等のβ-ジケトンとのキレート化合物等)、チタン系触媒(イソプロポキシトリN-エチルアミノエチルアミナートチタン、テトラブチルチタネート、テトライソプロポキシビスジオクチルホスファイトチタン等)、鉄系触媒(鉄のカルボキシレート化合物(乳酸鉄、リシノール酸鉄等)、フェロセン系化合物(フェロセン、アセチルフェロセン等)、フタロシアニン鉄等)、及びその他の金属触媒(ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩、フェニル水銀プロピオン酸塩等)が挙げられる。
【0073】
アミン触媒としては、トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジアザビシクロアルケン(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU(サンアプロ株式会社製、登録商標))等)、ジアルキル(炭素数1~3)アミノアルキル(炭素数2~4)アミン(ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン等)、複素環式アミノアルキル(炭素数2~6)アミン(2-(1-アジリジニル)エチルアミン、4-(1-ピペリジニル)-2-ヘキシルアミン等)、N-メチル及びN-エチルモルホリン等が挙げられる。
【0074】
ウレタン化触媒の使用量は、プレポリマー(A)の質量、又は活性水素化合物成分(B)とプレポリマー(A)の合計質量に基づいて、好ましくは0.005~2質量%、更に好ましくは0.01~1質量%である。ウレタン化触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
<溶媒>
本発明のポリウレタンウレア樹脂のプレポリマー(A)の重合反応時と活性水素化合物成分(B)を使用する際には、有機溶媒を使用してもよい。
【0076】
有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。
【0077】
これらの中で好ましい有機溶媒は、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等である。汎用的な有機溶媒であるという点からは、テトラヒドロフラン、トルエン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等が望ましい。本発明のポリウレタンウレア樹脂の製造には、このような汎用的な有機溶媒を使用可能である。
【0078】
<添加剤>
本発明のポリウレタンウレア樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲でさらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、充填剤、顔料、光安定剤、表面調整剤、消泡剤、防汚剤、増粘剤、耐擦り傷性向上剤、ツヤ調整剤等の添加剤を含有することができる。添加剤は、プレポリマー(A)と活性水素化合物成分(B)のいずれに添加してもよい。
【0079】
酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、ヒンダードフェノール化合物(トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等)、亜リン酸エステル化合物(トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニレン-ジ-ホスホナイト等)などが挙げられる。これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。酸化防止剤の使用量は、ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物の質量に基づいて、酸化防止効果の観点から好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.05~1質量%である。
【0080】
紫外線吸収剤としては、特に限定されず、例えば、サリチル酸誘導体(サリチル酸フェニル、サリチル酸-P-オクチルフェニル、サリチル酸-P-第三ブチルフェニル等)、ベンゾフェノン化合物(2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン・トリヒドレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン、ビス(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニル)メタン等)、ベンゾトリアゾール化合物(2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-n-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等)、シアノアクリレート化合物(2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート等)などが挙げられる。紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。紫外線吸収剤の使用量は、ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物の質量に基づいて、紫外線吸収効果の観点から好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.1~1質量%である。
【0081】
可塑剤としては、特に限定されず、例えば、炭化水素(プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリイソプレン、流動パラフィン、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、エチレンとα-オレフィン(炭素数3~20)の共重合(質量比99.9/0.1~0.1/99.9)オリゴマー(重量平均分子量5000~100000)、プロピレンとエチレンを除くα-オレフィン(炭素数4~20)の共重合(質量比99.9/0.1~0.1/99.9)オリゴマー(重量平均分子量5000~100000));塩素化パラフィン;エステル(フタル酸エステル(ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジステアリルフタレート、ジイソノニルフタレート等)、アジピン酸エステル(ジ(2-エチルヘキシル)アジペート(DOA)、ジオクチルアジペート等)、セバチン酸エステル(ジオクチルセバケート等)等);動植物油脂(リノール酸、リノレン酸等);これらの内の水素添加可能な不飽和二重結合を有するものの水素添加物;脂肪酸エステル(ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、べへニン酸モノグリセライド、2-エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸コレステリル、ヤシ脂肪酸メチル、ラウリン酸メチル、オレイン酸メチル、ステアリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソトリデシル、2-エチルヘキサン酸トリグリセライド、ラウリン酸ブチル、オレイン酸オクチル等)などが挙げられる。可塑剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。可塑剤の使用量は、ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物の質量に基づいて、破断強度の観点から好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0082】
充填剤としては、特に限定されず、例えば、炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、硫酸塩(硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等)、亜硫酸塩(亜硫酸カルシウム等)、二硫化モリブデン、ケイ酸塩(ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム等)、珪藻土、珪石粉、タルク、シリカ、ゼオライトなどが挙げられる。上記充填剤は、体積平均粒径が好ましくは0.01~5μm程度の微粒子であり、1種を単独で用いてもよい、2種以上を併用してもよい。充填剤の使用量は、ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物の質量に基づいて、粘度の観点から好ましくは250質量%以下、更に好ましくは0.5~100質量%である。
【0083】
顔料としては、特に限定されず、例えば、無機顔料(アルミナホワイト、グラファイト、酸化チタン、超微粒子酸化チタン、亜鉛華、黒色酸化鉄、雲母状酸化鉄、鉛白、ホワイトカーボン、モリブデンホワイト、カーボンブラック、リサージ、リトポン、バライト、カドミウム赤、カドミウム水銀赤、ベンガラ、モリブデン赤、鉛丹、黄鉛、カドミウム黄、バリウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、チタンブラック、酸化クロム緑、酸化コバルト、コバルト緑、コバルト・クロム緑、群青、紺青、コバルト青、セルリアン青、マンガン紫、コバルト紫等)、及び有機顔料(シェラック、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、フタロシアニンブルー、染色レーキ等)が挙げられる。上記顔料は、体積平均粒径が好ましくは0.01~5μm程度の微粒子であり、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。顔料の使用量は、ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物の質量に基づいて、粘度の観点から好ましくは250質量%以下、更に好ましくは0.1~50質量%である。
【0084】
<製造方法>
本発明のポリウレタンウレア樹脂は、一般的に実験又は工業的に用いられる方法により製造することができる。そのような製造方法としては、まず、トランス,トランス-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)とイソソルバイドを基本骨格とするポリカーボネートジオールとを反応させて両末端イソシアネートプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと活性水素化合物成分(B)を反応させるプレポリマー化法などが挙げられる。
【0085】
プレポリマー化反応により、ポリカーボネートジオールをあらかじめ1当量以上のポリイソシアネートと反応させることにより、末端イソシアネート基を含むセグメント部を形成することができる。プレポリマーを一旦調製した後に鎖延長剤やソフトセグメント部などと反応させることでセグメントの分子量を調整できる。プレポリマー化反応は、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離を確実に行う必要がある場合には有用である。
【0086】
プレポリマー化反応は条件により無溶媒でも溶媒共存下でも実施することができる。
【0087】
プレポリマー化反応によるポリウレタンウレア樹脂の製造は、以下に記載の(1)~(3)のいずれかの方法によって行うことができる。
(1) 溶媒を使用せず、まず直接ポリイソシアネートとポリオール類とを反応させてプレポリマーを合成し、そのまま鎖延長反応に使用する。
(2) (1)の方法でプレポリマーを合成し、その後溶媒に溶解し、以降の鎖延長反応に使用する。
(3) 初めから溶媒を使用し、ポリイソシアネートとポリオール類とを反応させ、その後鎖延長反応を行う。
【0088】
プレポリマー化法におけるポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、例えば、前述する当量比の範囲内とすることができる。
【0089】
プレポリマー化反応は、例えば、50~100℃、好ましくは60~90℃で、例えば、3~8時間、好ましくは4~6時間反応させる。
【0090】
ポリウレタンウレア樹脂の製造には、前記プレポリマー化反応により得られた両末端イソシアネート基を有するプレポリマーに対して、更に活性水素化合物成分(B)とのウレア化反応を行う。ウレア化反応は、ウレタンプレポリマー及び活性水素化合物成分の固形分を適切に設定したうえで行うことが好ましい。ウレア化反応工程は反応が進むにつれて粘度が大きく変化するので、均一な反応液とすることが好ましく、比較的速い撹拌速度を設定することが好ましい。なお、当該反応は0~80℃の温度範囲で行うことが好ましく、反応時間は好ましくは0.5~8.0時間である。
【0091】
活性水素化合物成分(B)の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるイソシアネート基の数1当量に対して、下限が好ましくは0.1当量、より好ましくは0.5当量、さらに好ましくは0.8当量であり、上限が好ましくは5.0当量、より好ましくは3.0当量、さらに好ましくは2.0当量の範囲である。ここでの当量比は、各官能基の当量比を意味する。
【0092】
ウレア化反応工程では、前述する有機溶媒を使用することができる。有機溶媒としては、末端イソシアネート基と反応しないものが好ましい。また、反応生成物であるポリウレタンウレア樹脂が可溶な溶媒が好ましく、ポリウレタンウレア樹脂の溶解性が低い場合、その後に適切な溶媒を追加してもよい。
【0093】
また、ウレア化反応には必要に応じて前述する触媒や安定剤等を添加することもできる。安定剤としては、例えば、2,6-ジブチル-4-メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ-ト、N,N’-ジ-2-ナフチル-1,4-フェニレンジアミン、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト等の化合物が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
ウレア化反応は、通常0℃~250℃で反応させるが、この温度は溶媒の量、使用原料の反応性、反応設備等によって異なり、特に制限は無い。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低いために作製時間が長くなることがあり、また、高すぎると副反応や、得られるポリウレタンの分解が起こることがある。ウレア化反応は減圧下で脱泡しながら行ってもよい。
【0095】
本発明のウレタンウレア樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは30000以上、より好ましくは40000以上である。ここでの数平均分子量(Mn)は、GPC測定によるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0096】
本発明のウレタンウレア樹脂は、実施例に示される引張試験で測定される初期弾性率が、好ましくは0.1GPa以上、より好ましくは0.3GPa以上、更に好ましくは0.5GPa以上である。また、破断伸度が、好ましくは100%以上、より好ましくは200%以上、更に好ましくは300%以上である。
【0097】
本発明のウレタンウレア樹脂は、特に限定されず、例えば、塗料(ライニング材、コーティング材などを含む)、成形材料、エラストマー、レンズ、人工又は合成皮革、接着剤、シーリング材、フォームなどとして使用することができる。
【0098】
塗料として使用する場合、スプレー塗装、エアスプレー塗装、はけ塗り、浸漬法、ロールコーター、フローコーターなどの塗装方法により塗装することができる。被塗装物としては、例えば、コンクリート、自然石、ガラス、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、プラスチック、ゴム、木材などが挙げられる。塗装する具体的な物としては、例えば、自動車、電車、航空機などの輸送用機器、高速道路、橋梁部材などの土木部材、タンク、パイプなどの産業機材、ビル外装、ドアなどの建築部材、ガードレール、防音壁などの道路部材、電子部材などが挙げられる。
【0099】
また、成形材料として使用する場合、本発明のポリウレタンウレア樹脂を成形してなる成形品としては、例えば、自動車などの輸送機器の部材、店舗やオフィスなどの建築内装部材、家具などが挙げられる。
【実施例0100】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0101】
なお、イソシアネート、ポリオール、ポリアミンのmol%は、各官能基の当量比を表している。
【0102】
本実施例における物性評価方法は以下の通りである。
【0103】
<含水分量測定>
使用溶媒の水分量(単位:ppm)は、カールフィッシャー法の電量水分測定装置(株式会社三菱ケミカルアナリテック製の「CA-200型」)を用いて測定した。
【0104】
<イソシアネート基含有率の測定>
プレポリマー合成時に、イソシアネート基の含有率を自動滴定装置(株式会社三菱ケミカルアナリテック製の「GT-200型」)を用いて測定した。
【0105】
分取したプレポリマーを秤量後、トルエンもしくはDMFで溶解させ、1mol/Lのn-ジブチルアミンのトルエン溶液を10mL添加し、5~10分静置した。2-プロパノールを加え、電極を浸漬し、0.5mol/L塩酸標準液で滴定を行った。以下の式からイソシアネート含有率を算出した。
イソシアネート含有率(%)=((BL-A1)×M×f×Fw)/(S×1000)×100
BL:ブランク値
A1:終点の滴定量
M:モル濃度
f:ファクタ
Fw:式量
S:サンプル重量
【0106】
<数平均分子量の測定>
下記の数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量であり、GPCの測定条件は以下のとおりである。
装置名:昭和電工株式会社製「GPC-101」
カラム:昭和電工株式会社製「LF-804」
移動相:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI(装置GPC-101内臓)
【0107】
<トランス,トランス-H12MDIの含有率測定>
トランス,トランス-H12MDIの含有率は、以下の条件でガスクロマトグラフィー(Shimadzu GC-2014)を用いて測定した。
GC装置:Shimadzu GC-2014
オートサンプラー:AOC 20i
試料注入量:1μL
カラム:InertCap17MS(30m×0.25mm,0.25μm)
昇温条件:150℃(0min)-150℃(10min)-300℃(25min)-300℃(35min)
カラムオーブン初期温度:150℃
気化室温度:250℃
検出器温度:300℃
制御モード:線速度
入口圧:99.9kPa
全流量:40.3mL/min
カラム流量:1.00mL/min
線速度:29.3cm/min
パージ流量:3.0mL/min
スプリット比:30.0
【0108】
<トランス,トランス-H12MDIの構造同定>
トランス,トランス-H12MDIの構造同定は、試料をchloroform-dに溶かし、Bruker社製500MHzのNMR(AVANCEIII HD)を用いて行った。
【0109】
<フィルムの作製>
100mm×200mmのガラス板の四方にスコッチ透明梱包用テープ313(スリーエム ジャパン株式会社)を各10~15枚重ね貼りした。作製した型枠にポリウレタンウレア樹脂を流し入れ、ガラス棒で表面を平面にならした。その後、強制対流式オーブン内にて、40~80℃で2時間、120℃で2時間、静置乾燥させ、フィルムを作製した。
【0110】
<引張試験>
上記のフィルムをJIS K 6251(2017)に準拠し、6号形ダンベル状とした試験片を切り出し、引張試験機(インストロンジャパン社製「万能材料試験機5582型」)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度10mm/minで温度23℃、相対湿度50%で引張試験を実施し、JIS K 7161-1に従い初期弾性率、破断強度及び破断伸度を測定した。
【0111】
<燃焼試験>
NEXCO試験法738の延焼性試験を参考に、トーチ用ガスバーナー(スタイル株式会社)を用いて、コンクリートに塗布した樹脂層を上部から熱した。評価基準は、以下の4段階とした。
◎ 火元を離してもと、燃焼せず燃え広がらない
○ 火元を離しても燃焼し、徐々に消火する
△ 火元を離しても燃焼し続け、徐々に燃え広がる
× 火元を離しても激しく燃焼し続け、直ちに燃え広がる
【0112】
<ポットライフ>
プレポリマー(A)と活性水素化合物成分(B)を混合攪拌して得られるポリウレタンウレア樹脂のポットライフを評価した。混合攪拌後に得られたポリウレタンウレア樹脂を室温で、ねじ付き試験管内に静置させ、流動性の保持時間を確認した。ねじ付き試験管を反転させ、溶液が流れなくなる(ゲル化する)までの時間を測定した。
【0113】
実施例1
<t,t-H12MDI//BENEBiOL(HS0830B)/D-2000 = 100//90/10>
(プレポリマーの合成)
空の100mL四ツ口フラスコに、あらかじめ温風乾燥機により100℃に加温したイソソルバイド含有ポリカーボネートジオール(BENEBiOL(HS0830B)、147.1mgKOH/g、三菱ケミカル株式会社)13.1g(0.0343eq.)を入れ、ジムロート冷却管等を取り付け、100℃のオイルバスに浸漬させ、メカニカルスターラーで攪拌しながら減圧と窒素ガス流入を繰り返し、乾燥させた。2時間後、系内に窒素ガスを流し、常圧に戻した後に超脱水トルエン(富士フイルム和光純薬株式会社)20.0gを加えて、窒素ガス流入下、オイルバス温度100℃でトルエン共沸を行った。1時間後、系内水分量50ppm未満になったことを確認し、超脱水DMF(富士フイルム和光純薬株式会社)90.0gを添加した。12時間後、系内水分量が50ppm未満であることを確認した後に、H12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%、住化コベストロウレタン株式会社)5.00g(0.0381eq.)を加え、90℃に昇温した後に、ジブチルスズジラウレート(富士フイルム和光純薬株式会社)12mgを添加した。
【0114】
(ポリウレタンウレア樹脂の合成(ソフトセグメント成分))
重合を開始して6時間後に系内のイソシアネート含有率を測定し、NCO基が理論量消費されたことを確認した。その後、ポリオキシプロピレンジアミン(D-2000、数平均分子量2000、ハンツマン(HUNTSMAN))を3.90g(0.00377eq.)添加し、混合攪拌を続け、ポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0115】
実施例2
イソソルバイド含有ポリカーボネートジオールの添加量を12.8g(0.0336eq.)、H12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%)の添加量を5.50g(0.0419eq.)、ポリオキシプロピレンジアミンの添加量を8.60g(0.00837eq.)とした以外は、実施例1と同じ方法でポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0116】
実施例3
イソソルバイド含有ポリカーボネートジオールの添加量を12.0g(0.0315eq.)、H12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%)の添加量を5.90g(0.0450eq.)、ポリオキシプロピレンジアミンの添加量を13.9g(0.0135eq.)とした以外は、実施例1と同じ方法でポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0117】
実施例4
H12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%)5.00g(0.0381eq.)に代えて市販のH12MDI(三種異性体混合物、t,t-H12MDI含有率20mol%)5.00g(0.0381eq.)を使用した以外は、実施例1と同じ方法でポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0118】
実施例5
H12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%)5.50g(0.0419eq.)に代えて市販のH12MDI(三種異性体混合物、t,t-H12MDI含有率20mol%)5.50g(0.0419eq.)を使用した以外は、実施例2と同じ方法でポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0119】
比較例1
H12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%)5.90g(0.0450eq.)に代えて市販のH12MDI(三種異性体混合物、t,t-H12MDI含有率20mol%)5.90g(0.0450eq.)を使用した以外は、実施例3と同じ方法でポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0120】
比較例2
イソソルバイド含有ポリカーボネートジオールの添加量を11.3g(0.0297eq.)、H12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%)の添加量を6.50g(0.0496eq.)、ポリオキシプロピレンジアミンの添加量を20.2g(0.0197eq.)とした以外は、実施例1と同じ方法でポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0121】
比較例3
H12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%)6.50g(0.0496eq.)に代えて市販のH12MDI(三種異性体混合物、t,t-H12MDI含有率20mol%)6.50g(0.0496eq.)を使用した以外は、比較例2と同じ方法でポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0122】
実施例6
<純度80%t,t-H12MDI//BENEBiOL(HS0830B)/D-2000=100//90/10>
(プレポリマーの合成)
空の100mL四ツ口フラスコに、あらかじめ温風乾燥機により100℃に加温したイソソルバイド含有ポリカーボネートジオール(BENEBiOL(HS0830B)、142.6mgKOH/g、三菱ケミカル株式会社)14.5g(0.0368eq.)を入れ、ジムロート冷却管等を取り付け、100℃のオイルバスに浸漬させ、メカニカルスターラーで攪拌しながら減圧と窒素ガス流入を繰り返し、乾燥させた。2時間後、系内に窒素ガスを流し、常圧に戻した後に超脱水トルエン(富士フイルム和光純薬株式会社)20.0gを加えて、窒素ガス流入下、オイルバス温度100℃でトルエン共沸を行った。1時間後、系内水分量50ppm未満になったことを確認し、超脱水DMF(富士フイルム和光純薬株式会社)95.0gを添加した。12時間後、系内水分量が50ppm未満になったことを確認した後に、H12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%、住化コベストロウレタン株式会社)4.00g(0.0305eq.)と市販のH12MDI(三種異性体混合物、t,t-H12MDI含有率20mol%、住化コベストロウレタン株式会社)1.36g(0.0104eq.)を加え、90℃に昇温した後に、ジブチルスズジラウレート(富士フイルム和光純薬株式会社)12mgを添加した。
【0123】
(ポリウレタンウレア樹脂の合成(ソフトセグメント成分))
重合を開始して6時間後に系内のイソシアネート含有率を測定し、NCO基が理論量消費されたことを確認した。その後、ポリオキシプロピレンジアミン(D-2000、数平均分子量2000、ハンツマン)を4.20g(0.0409eq.)添加し、混合攪拌を続け、ポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0124】
実施例7
イソソルバイド含有ポリカーボネートジオールの添加量を13.7g(0.0347eq.)、H12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%)とH12MDI(三種異性体混合物)の添加量をそれぞれ2.50g(0.0191eq.)と2.56g(0.0195eq.)、ポリオキシプロピレンジアミンの添加量を4.00g(0.00386eq.)とした以外は、実施例6と同じ方法でポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0125】
実施例8
イソソルバイド含有ポリカーボネートジオールの添加量を13.5g(0.0342eq.)、t,t-H12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%)とH12MDI(三種異性体混合物)の添加量をそれぞれ1.20g(0.00915eq.)と3.79g(0.0289eq.)、ポリオキシプロピレンジアミンの添加量を3.90g(0.00380eq.)とした以外は、実施例6と同じ方法でポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0126】
実施例9~11、比較例4
(プレポリマーの合成)
空の100mL四ツ口フラスコに、あらかじめ温風乾燥機により100℃に加温したイソソルバイド含有ポリカーボネートジオール(BENEBiOL(HS0830B)、142.6mgKOH/g、三菱ケミカル株式会社)16.8g(0.0427eq.)を入れ、ジムロート冷却管等を取り付け、100℃のオイルバスに浸漬させ、メカニカルスターラーで攪拌しながら減圧と窒素ガス流入を繰り返し、乾燥させた。2時間後、系内に窒素ガスを流し、常圧に戻した後に超脱水トルエン(富士フイルム和光純薬株式会社)20gを加えて、窒素ガス流入下、オイルバス温度100℃でトルエン共沸を行った。1時間後、系内水分量50ppm未満になったことを確認し、超脱水DMF(富士フイルム和光純薬株式会社)120gを添加した。12時間後、系内水分量が50ppm未満であることを確認した後に、市販のH12MDI(三種異性体混合物、t,t-H12MDI含有率20mol%、住化コベストロウレタン株式会社)7.0g(0.0534eq.)を加え、90℃に昇温した後に、ジブチルスズジラウレート(富士フイルム和光純薬株式会社)15mgを添加した。
【0127】
(ポリウレタンウレア樹脂の合成(IPDAとソフトセグメント、架橋基の導入))
重合を開始して6時間後に系内のイソシアネート含有率を測定し、NCO残存率は、20%であった。その後、系内反応溶液を35gずつ4個に分取し、それぞれに、IPDAのみを0.21g(0.0025eq.)を添加したもの(比較例4)、ポリオキシプロピレンジアミン(D-2000、数平均分子量2000、ハンツマン)を1.9g(0.0019eq.)とグリセリルポリ(オキシプロピレン)トリアミン(T-5000、数平均分子量5000、ハンツマン)を1.2g(0.0006eq.)添加したもの(実施例9)、IPDAを0.11g(0.0013eq.)とポリオキシプロピレンジアミン(D-2000、数平均分子量2000、ハンツマン)を1.3g(0.0013eq.)添加したもの(実施例10)、IPDAを0.11g(0.0013eq.)とポリオキシプロピレンジアミン(D-2000、数平均分子量2000、ハンツマン)を0.6g(0.0006eq.)とグリセリルポリ(オキシプロピレン)トリアミン(T-5000、数平均分子量5000、ハンツマン)を1.2g(0.0006eq.)添加したもの(実施例11)を作製し、混合攪拌をし、ポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0128】
実施例12、13
(プレポリマーの合成)
空の100mL四ツ口フラスコに、あらかじめ温風乾燥機により100℃に加温したイソソルバイド含有ポリカーボネートジオール(BENEBiOL(HS0830B)、142.6mgKOH/g、三菱ケミカル株式会社)12.6g(0.0320eq.)を入れ、ジムロート冷却管等を取り付け、100℃のオイルバスに浸漬させ、メカニカルスターラーで攪拌しながら減圧と窒素ガス流入を繰り返し、乾燥させた。2時間後、系内に窒素ガスを流し、常圧に戻した後に超脱水トルエン(富士フイルム和光純薬株式会社)20gを加えて、窒素ガス流入下、オイルバス温度100℃でトルエン共沸を行った。1時間後、系内水分量50ppm未満になったことを確認し、超脱水DMF(富士フイルム和光純薬株式会社)95.0gを添加した。12時間後、系内水分量が50ppm未満であることを確認した後に、H12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%、住化コベストロウレタン株式会社)6.00g(0.0457eq.)を加え、90℃に昇温した後に、ジブチルスズジラウレート(富士フイルム和光純薬株式会社)12mgを添加した。
【0129】
(ポリウレタンウレア樹脂の合成(ソフトセグメント、架橋基の導入))
重合を開始して5時間後に系内のイソシアネート含有率を測定し、NCO残存率は、30%であった。その後、系内反応溶液を35gずつ2個に分取し、それぞれに、ポリオキシプロピレンジアミン(D-2000、数平均分子量2000、ハンツマン)を3.1g(0.00304eq.)とポリオキシプロピレントリオール(サンニックスGP-250、数平均分子量250、三洋化成工業株式会社)を0.1g(0.00101eq.)添加したもの(実施例12)、ポリオキシプロピレンジアミン(D-2000、数平均分子量2000、ハンツマン)を3.1g(0.00304eq.)とポリオキシプロピレントリオール(サンニックスGP-600、数平均分子量600、三洋化成工業株式会社)を0.2g(0.00101eq.)添加したもの(実施例13)を作製し、混合攪拌をし、ポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0130】
実施例14、比較例5
(プレポリマーの合成)
空の500mL四ツ口フラスコに、あらかじめ温風乾燥機により100℃に加温したイソソルバイド含有ポリカーボネートジオール(BENEBiOL(HS0830B)、142.6mgKOH/g、三菱ケミカル株式会社)27.3g(0.0694eq.)を入れ、ジムロート冷却管等を取り付け、100℃のオイルバスに浸漬させ、メカニカルスターラーで攪拌しながら減圧と窒素ガス流入を繰り返し、乾燥させた。2時間後、系内に窒素ガスを流し、常圧に戻した後に超脱水トルエン(富士フイルム和光純薬株式会社)40gを加えて、窒素ガス流入下、オイルバス温度100℃でトルエン共沸を行った。1時間後、系内水分量50ppm未満になったことを確認し、超脱水DMF(富士フイルム和光純薬株式会社)195gを添加した。12時間後、系内水分量が50ppm未満であることを確認した後に、市販のH12MDI(三種異性体混合物、t,t-H12MDI含有率20mol%、住化コベストロウレタン株式会社)13.0g(0.0991eq.)を加え、90℃に昇温した後に、ジブチルスズジラウレート(富士フイルム和光純薬株式会社)25mgを添加した。
【0131】
(ポリウレタンウレア樹脂の合成(IPDAとソフトセグメント、架橋基の導入))
重合を開始して6時間後に系内のイソシアネート含有率を測定し、NCO基が理論量消費されたことを確認した。その後、系内反応溶液を50gずつ2個に分取し、それぞれに、IPDAのみを0.52g(0.0061eq.)添加したもの(比較例5)、IPDAを0.34g(0.0040eq.)とポリオキシプロピレンジアミン(D-2000、数平均分子量2000、ハンツマン)を2.1g(0.0020eq.)添加したもの(実施例14)を作製し、混合攪拌をし、ポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0132】
実施例15、16
(プレポリマーの合成)
空の100mL四ツ口フラスコに、あらかじめ温風乾燥機により100℃に加温したイソソルバイド含有ポリカーボネートジオール(BENEBiOL(HS0830B)、142.6mgKOH/g、三菱ケミカル株式会社)19.2g(0.0488eq.)を入れ、ジムロート冷却管等を取り付け、100℃のオイルバスに浸漬させ、メカニカルスターラーで攪拌しながら減圧と窒素ガス流入を繰り返し、乾燥させた。2時間後、系内に窒素ガスを流し、常圧に戻した後に超脱水トルエン(富士フイルム和光純薬株式会社)15.0gを加えて、窒素ガス流入下、オイルバス温度100℃でトルエン共沸を行った。1時間後、系内水分量50ppm未満になったことを確認し、テトラヒドロフラン80.0gを添加した。12時間後、系内水分量が50ppm未満であることを確認した後に、市販のH12MDI(三種異性体混合物、t,t-H12MDI含有率20mol%、住化コベストロウレタン株式会社)8.00g(0.0610eq.)を加え、60℃に昇温した後に、ジブチルスズジラウレート(富士フイルム和光純薬株式会社)11mgを添加した。
【0133】
(ポリウレタンウレア樹脂の合成(ソフトセグメント成分))
重合を開始して6時間後に系内のイソシアネート含有率を測定し、NCO基が理論量消費されたことを確認した。その後、系内反応溶液を40gずつ2個に分取し、それぞれに、IPDAを0.70g(0.00217eq.)とポリオキシプロピレンジアミン(D-2000、数平均分子量2000、ハンツマン)を2.2g(0.00217eq.)添加したもの(実施例15)、IPDAを0.70g(0.00217eq.)とポリオキシプロピレンジアミン(D-2000、数平均分子量2000、ハンツマン)を1.1g(0.00109eq.)とグリセリルポリ(オキシプロピレン)トリアミン(T-5000、数平均分子量5000、ハンツマン)を2.1g(0.00109eq.)添加したもの(実施例16)を作製し、混合攪拌をし、ポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0134】
実施例17
(プレポリマーの合成)
イソソルバイド含有ポリカーボネートジオールの添加量を17.8g(0.0454eq.)、H12MDI(三種異性体混合物、t,t-H12MDI含有率20mol%)の添加量を8.50g(0.0648eq.)とした以外は、実施例15、16と同じ方法でプレポリマーを得た。
【0135】
(ポリウレタンウレア樹脂の合成(ソフトセグメント成分))
重合を開始して6時間後に系内のイソシアネート含有率を測定し、NCO基が理論量消費されたことを確認した。その後、系内反応溶液に、IPDAを4.40g(0.0130eq.)とポリオキシプロピレンジアミン(D-2000、数平均分子量2000、ハンツマン)を6.7g(0.00648eq.)添加したものを作製し、混合攪拌をし、ポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0136】
比較例6
(プレポリマーの合成)
イソソルバイド含有ポリカーボネートジオールの添加量を12.6g(0.0320eq.)、H12MDI(三種異性体混合物、t,t-H12MDI含有率20mol%)の添加量を7.00g(0.0534eq.)とした以外は、実施例15、16と同じ方法でプレポリマーを得た。
【0137】
(ポリウレタンウレア樹脂の合成(ソフトセグメント成分))
重合を開始して6時間後に系内のイソシアネート含有率を測定し、NCO基が理論量消費されたことを確認した。その後、系内反応溶液に、IPDAを1.37g(0.0161eq.)とポリオキシプロピレンジアミン(D-2000、数平均分子量2000、ハンツマン)を5.5g(0.0054eq.)添加したものを作製し、混合攪拌をし、ポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0138】
比較例7
市販のH12MDI(三種異性体混合物、t,t-H12MDI含有率20mol%)7.00g(0.0534eq.)に代えてH12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%7.00g(0.0534eq.)を使用した以外は、比較例6と同じ方法でポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0139】
実施例18
(プレポリマーの合成)
空の100mL四ツ口フラスコに、あらかじめ温風乾燥機により100℃に加温したイソソルバイド含有ポリカーボネートジオール(BENEBiOL(HS0830B)、142.6mgKOH/g、三菱ケミカル株式会社)13.4g(0.0342eq.)を入れ、ジムロート冷却管等を取り付け、100℃のオイルバスに浸漬させ、メカニカルスターラーで攪拌しながら減圧と窒素ガス流入を繰り返し、乾燥させた。2時間後、系内に窒素ガスを流し、常圧に戻した後に超脱水トルエン(富士フイルム和光純薬株式会社)20.0gを加えて、窒素ガス流入下、オイルバス温度100℃でトルエン共沸を行った。1時間後、系内水分量50ppm未満になったことを確認し、テトラヒドロフラン70.0gを添加した。12時間後、系内水分量が50ppm未満であることを確認した後に、H12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%、住化コベストロウレタン株式会社)5.60g(0.0427eq.)を加え、60℃に昇温した後に、ジブチルスズジラウレート(富士フイルム和光純薬株式会社)10mgを添加した。
【0140】
(ポリウレタンウレア樹脂の合成(ソフトセグメント成分))
重合を開始して6時間後に系内のイソシアネート含有率を測定し、NCO基が理論量消費されたことを確認した。その後、ポリオキシプロピレンジアミン(D-2000、数平均分子量2000、ハンツマン)を6.6g(0.00640eq.)、グリセリルポリ(オキシプロピレン)トリアミン(T-5000、数平均分子量5000、ハンツマン)を4.1g(0.00213eq.)添加し、混合攪拌を続け、ポリウレタンウレア樹脂を得た。
【0141】
比較例8
芳香族ポリイソシアネートと芳香族ポリアミンからなるポリウレタンウレア樹脂(RF-50、アーマライニングス株式会社」を使用した。
【0142】
実施例1~18、比較例1~8のポリウレタンウレア樹脂を用いて評価を行った結果を以下の表1~5及び図1~3に示す。
【0143】
【表1】
【0144】
それぞれのプレポリマーの組成比を制御し、弾性率、伸度の差異を評価した。図1に示すように、100mol%トランス,トランス-H12MDI含有のプレポリマーを使用すると、H12MDI//HS0830Bの当量比が100//90~100//70において初期弾性率が1.0×10-1GPa及び破断伸度が100%を超え、高弾性高伸度を両立した物性となる。また、図2に示すように、20mol%トランス,トランス-H12MDI含有のプレポリマーを使用しても、H12MDI(三種異性体混合物)//HS0830Bの当量比が100//90~100//80において初期弾性率が1.0×10-1GPa及び破断伸度が100%を超え、高弾性高伸度を両立した物性となる。
【0145】
【表2】
【0146】
トランス,トランス-H12MDIの含有率(純度)を制御し、弾性率、強度、伸度の差異を評価した。図3に示すように、トランス,トランス-H12MDIの含有率が増加するほど、初期弾性率が上昇する。
【0147】
【表3】
【0148】
比較例4と5から、非特許文献4を参考にし、IPDAなどの低分子ジアミン化合物を使用すると高弾性が示されるが、伸度は乏しいことが分かる。また、実施例9よりプレポリマーの分子鎖長を制御し、高分子ジアミンを加えることにより、初期弾性率を向上させ、伸度と両立させることができることが分かり、最終生成物において架橋基の導入により耐溶剤性への寄与も期待できる。
【0149】
実施例10と11よりIPDAなどの低分子を一部含有させることで、伸度は低下するもの、初期弾性率の向上が望めることが分かる。実施例12と13より架橋剤としてポリオールを添加することで、架橋されていない状態のポリウレタンウレア樹脂よりも初期弾性率を向上させ、伸度と両立させることができることが分かる。また、最終生成物において架橋基の導入により耐溶剤性への寄与も期待できる。実施例14より、比較例1のプレポリマーと低分子ジアミンを組み合わせることで、初期弾性率を大幅に向上させ、かつ伸度も両立させることが可能となることが分かる。
【0150】
【表4】
【0151】
屋外使用可能な汎用溶剤として、テトラヒドロフラン溶媒を用いて得られたポリウレタンウレア樹脂のポットライフ及び無色透明性を評価した。無色透明性は全ての結果で良好であったものの、比較例6と7に示されるように、H12MDI//HS0830B=100//60で得られるプレポリマーは、活性水素化合物成分を添加、混合攪拌後、30秒以内に硬化し、樹脂内に多量の気泡が残存する結果となった。結果として、塗料での作業性や成形品の加工性を考慮する場合、実施例15~17に示されるようなプレポリマーの組成比すなわち数平均分子量の範囲で使用することが好ましいことが分かる。
【0152】
【表5】
【0153】
実施例18とアーマライニングス株式会社製のポリウレア樹脂を用いて自己消火性についての評価をおこなった。表5から、本発明のポリウレタンウレア樹脂が自己消火性を有することが分かる。
【0154】
参考試験例
参考例1
<t,t-H12MDI//BENEBiOL(HS0830B)/PEG-2000 = 100//90/10>
(プレポリマーの合成)
空の100mL四ツ口フラスコに、あらかじめ温風乾燥機により100℃に加温したイソソルバイド含有ポリカーボネートジオール(BENEBiOL(HS0830B)、147.1mgKOH/g、三菱ケミカル株式会社)13.0g(0.0341eq.)を入れ、ジムロート冷却管等を取り付け、100℃のオイルバスに浸漬させ、メカニカルスターラーで攪拌しながら減圧と窒素ガス流入を繰り返し、乾燥させた。2時間後、系内に窒素ガスを流し、常圧に戻した後に超脱水トルエン(富士フイルム和光純薬株式会社)20.0gを加えて、窒素ガス流入下、オイルバス温度100℃でトルエン共沸を行った。1時間後、系内水分量50ppm未満になったことを確認し、超脱水DMF(富士フイルム和光純薬株式会社)90.0gを添加した。12時間後、系内水分量が50ppm未満であることを確認した後に、H12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%、住化コベストロウレタン株式会社)5.00g(0.0381eq.)を加え、90℃に昇温した後に、ジブチルスズジラウレート(富士フイルム和光純薬株式会社)12mgを添加した。
【0155】
(ポリウレタン樹脂の合成(ソフトセグメント成分))
重合を開始して6時間後に系内のイソシアネート含有率を測定し、NCO基が理論量消費されたことを確認した。その後、真空下で加熱乾燥させたポリエチレングリコール(PEG-2000、数平均分子量2000、ナカライテスク株式会社)を4.00g(0.00378eq.)添加し、3時間攪拌を続け、ポリウレタン樹脂を得た。
【0156】
参考例2
H12MDI(t,t-H12MDI含有率100mol%)5.00g(0.0381eq.)に代えて市販のH12MDI(三種異性体混合物、t,t-H12MDI含有率20mol%)5.00g(0.0381eq.)を使用した以外は、参考例1と同じ方法でポリウレタン樹脂を得た。
【0157】
参考例1及び2のポリウレタン樹脂を用いて評価を行った結果を以下の表6及び図4に示す。
【0158】
【表6】
【0159】
ジアミンをジオールに代えてポリエチレングリコールをソフトセグメントにもつポリウレタン樹脂を評価した。その結果、ジイソシアネート成分に100mol%トランス,トランス-H12MDIを使用した方が、三種異性体混合物のH12MDI(20mol%トランス,トランス-H12MDI)を使用した条件よりも、より高弾性率となった。
図1
図2
図3
図4