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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161608
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20221014BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H04N1/00 567Q
H04N1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066548
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】南波 護
(72)【発明者】
【氏名】近本 忠信
(72)【発明者】
【氏名】星野 元季
(72)【発明者】
【氏名】塩見 大史
(72)【発明者】
【氏名】大濱 貴志
【テーマコード(参考)】
5C062
5C072
【Fターム(参考)】
5C062AA05
5C062AB02
5C062AB17
5C062AB30
5C062AB32
5C062AD02
5C062AD06
5C072AA01
5C072BA20
5C072DA25
5C072EA07
5C072LA02
5C072LA08
5C072MA01
5C072NA01
5C072WA02
5C072XA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】原稿カバーに設けられる読取センサのメンテナンス作業が容易な読取装置を提供する。
【解決手段】複合機において、スキャナ部は、原稿が載置されるプラテンガラスと、閉位置においてプラテンガラスを覆う原稿カバーと、原稿カバーに設けられ搬送路に沿って原稿を搬送する搬送機構と、原稿カバーに設けられ原稿を読み取る第2読取センサと、読取面120と対向する第1位置と読取面120から離れた第2位置とに移動可能な原稿支持部材97と、原稿カバーの下面に取り付けられた第3位置と、下面から取り外された第4位置とに移動可能な押圧板82と、押圧板82の第3位置から第4位置への移動に連動して、原稿支持部材97を第1位置から第2位置へ移動させる連動機構と、を具備する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が載置されるプラテンガラスと、
上記プラテンガラスに対して開位置と閉位置とに移動可能であり、当該閉位置において上記プラテンガラスを覆う原稿カバーと、
上記原稿カバーに設けられており、搬送路に沿って原稿を搬送する搬送機構と、
上記原稿カバーに設けられており、上記搬送路を搬送される原稿を光学的に読み取る読取センサと、
上記搬送路を挟んで上記読取センサの読取面と対向する位置にあり、上記読取面と対向する第1位置と上記読取面から離れた第2位置とに移動可能な原稿支持部材と、
上記原稿カバーの下面に位置しており、上記閉位置において上記読取センサの下方に位置して上記プラテンガラスと当接し、上記原稿カバーの下面に取り付けられた第3位置と、当該下面から取り外された第4位置とに移動可能な押圧板と、
上記押圧板の上記第3位置から上記第4位置への移動に連動して、上記原稿支持部材を上記第1位置から上記第2位置へ移動させる連動機構と、を具備する読取装置。
【請求項2】
上記プラテンガラスの下方に位置しており、上記搬送路の読取位置に移動して、上記搬送路を搬送される原稿を光学的に読み取る移動読取センサをさらに備えており、
上記押圧板は、上記読取位置より左右方向の右方に位置しており、左右方向と直交する前後方向に沿った回動軸周りの回動により上記第3位置及び上記第4位置に移動可能であり、
上記原稿支持部材は、上記前後方向に沿った回動軸周りの回動により上記第1位置及び上記第2位置に移動可能であり、
上記原稿支持部材の回動軸は、上記押圧板の回動軸よりも左右方向の左方に配置される請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
上記連動機構は、上記原稿支持部材の回動先端側と上記押圧板とを繋ぐ接続部材を有する請求項2に記載の読取装置。
【請求項4】
上記原稿支持部材を上記第1位置へ向かって付勢する弾性部材をさらに具備する請求項1から3のいずれかに記載の読取装置。
【請求項5】
原稿が載置されるプラテンガラスと、
上記プラテンガラスに対して開位置と閉位置とに移動可能であり、当該閉位置において上記プラテンガラスを覆う原稿カバーと、
上記原稿カバーに設けられており、搬送路に沿って原稿を搬送する搬送機構と、
上記原稿カバーに設けられており、上記搬送路を搬送される原稿を光学的に読み取る読取センサと、
上記搬送路を挟んで上記読取センサの読取面と対向する位置にあり、上記読取面と対向する第1位置と上記読取面から離れた第2位置とに移動可能な原稿支持部材と、
上記原稿カバーの下面に位置しており、上記閉位置において上記読取センサの下方に位置して上記プラテンガラスと当接する押圧板と、を具備し、
上記押圧板は、
上記原稿カバーの下面に固定された第1部分と、
上記原稿カバーの下面に取り付けられた第3位置と、当該下面から取り外された第4位置とに移動可能な第2部分と、を有し、
上記原稿支持部材は、上記第2部分に設けられており、上記第2部分が上記第3位置にあるとき上記第1位置にあり、且つ、上記第2部分が上記第4位置にあるとき上記第2位置にある読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持台のプラテンガラスを覆う原稿カバーが、搬送路を搬送する原稿を読み取る読取センサを有する読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラテンガラスを覆う原稿カバーに読取センサが配置された読取装置が公知である。特許文献1では、原稿カバーに自動原稿搬送装置50が配置されている。自動原稿搬送装置50は、第2画像読取部67を有する。自動原稿搬送装置50において、開放ユニット70が回動されると、第2画像読取部67の読取面67aが外部に露出される。ユーザは、メンテナンス空間Bにおいて、第2画像読取部67の読取面67aの清掃などのメンテナンス作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-171130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原稿カバーの下面には、プラテンガラスを覆う押圧板が配置されている。押圧板が、第2画像読取部67の下方にあると、メンテナンス作業において、原稿カバーから押圧板を取り外してから、開放ユニット70を回動することとなり、作業が煩わしいという問題があった。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、原稿カバーに設けられた読取センサのメンテナンス作業が容易な読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る読取装置は、原稿が載置されるプラテンガラスと、上記プラテンガラスに対して開位置と閉位置とに移動可能であり、当該閉位置において上記プラテンガラスを覆う原稿カバーと、上記原稿カバーに設けられており、搬送路に沿って原稿を搬送する搬送機構と、上記原稿カバーに設けられており、上記搬送路を搬送される原稿を光学的に読み取る読取センサと、上記搬送路を挟んで上記読取センサの読取面と対向する位置にあり、上記読取面と対向する第1位置と上記読取面から離れた第2位置とに移動可能な原稿支持部材と、上記原稿カバーの下面に位置しており、上記閉位置において上記読取センサの下方に位置して上記プラテンガラスと当接し、上記原稿カバーの下面に取り付けられた第3位置と、当該下面から取り外された第4位置とに移動可能な押圧板と、上記押圧板の上記第3位置から上記第4位置への移動に連動して、上記原稿支持部材を上記第1位置から上記第2位置へ移動させる連動機構と、を具備する。
【0007】
本構成によれば、押圧板を原稿カバーの下面から取り外すと、原稿支持部材が第2位置へ移動するので、読取センサの読取面の清掃など、読取センサのメンテナンスを行うときの作業が容易である。
【0008】
(2)好ましくは、読取装置は、上記プラテンガラスの下方に位置しており、上記搬送路の読取位置に移動して、上記搬送路を搬送される原稿を光学的に読み取る移動読取センサをさらに備える。上記押圧板は、上記読取位置より左右方向の右方に位置しており、左右方向と直交する前後方向に沿った回動軸周りの回動により上記第3位置及び上記第4位置に移動可能であり、上記原稿支持部材は、上記前後方向に沿った回動軸周りの回動により上記第1位置及び上記第2位置に移動可能であり、上記原稿支持部材の回動軸は、上記押圧板の回動軸よりも左右方向の左方に配置される。
【0009】
本構成によれば、押圧板の回動に対して、原稿支持部材が押圧板よりも大きな角度で回動するので、読取センサのメンテナンス作業が容易である。
【0010】
(3)好ましくは、読取装置は、上記連動機構が、上記原稿支持部材の回動先端側と上記押圧板とを繋ぐ接続部材を有する。
【0011】
(4)好ましくは、読取装置は、上記原稿支持部材を上記第1位置へ向かって付勢する弾性部材をさらに具備する。
【0012】
本構成によれば、第1位置において、原稿支持部材が読取センサの読取面に対して精度よく位置決めできる。
【0013】
(5)好ましくは、読取装置は、原稿が載置されるプラテンガラスと、上記プラテンガラスに対して開位置と閉位置とに移動可能であり、当該閉位置において上記プラテンガラスを覆う原稿カバーと、上記原稿カバーに設けられており、搬送路に沿って原稿を搬送する搬送機構と、上記原稿カバーに設けられており、上記搬送路を搬送される原稿を光学的に読み取る読取センサと、上記搬送路を挟んで上記読取センサの読取面と対向する位置にあり、上記読取面と対向する第1位置と上記読取面から離れた第2位置とに移動可能な原稿支持部材と、上記原稿カバーの下面に位置しており、上記閉位置において上記読取センサの下方に位置して上記プラテンガラスと当接する押圧板と、を具備する。上記押圧板は、上記原稿カバーの下面に固定された第1部分と、上記原稿カバーの下面に取り付けられた第3位置と、当該下面から取り外された第4位置とに移動可能な第2部分と、を有し、上記原稿支持部材は、上記第2部分に設けられており、上記第2部分が上記第3位置にあるとき上記第1位置にあり、且つ、上記第2部分が上記第4位置にあるとき上記第2位置にある。
【0014】
本構成によれば、第2部分のみを回動すれば読取センサのメンテナンス作業ができるので、押圧板の回動操作に大きな力を要しない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原稿カバーに設けられる読取センサのメンテナンス作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態の一例である複合機1の外観斜視図である。
図2図2は、スキャナ部3の外観構成を示す斜視図である。
図3図3は、プラテンガラス80より下方位置におけるスキャナ部3の主要構成を示す平面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るADF5の内部構成を示す断面図である。
図5図5は、原稿カバー30の下側部分38を示す斜視図である。
図6図6は、原稿カバー30の下側部分38を示す斜視図であって、押圧板82が原稿カバー30の下面から取り外された状態について示す斜視図である。
図7図7は、原稿支持部材97の周辺の拡大断面図である。
図8図8は、原稿支持部材97が第2位置S2にあり、押圧板82が第4位置S4にある状態について示す原稿支持部材97の周辺拡大断面図である
図9図9は、変形例に係るスキャナ部の下側部分38Aを示す斜視図である。
図10図10は、原稿支持部材97Aの周辺の拡大断面図である。
図11図11は、原稿支持部材97Aが第2位置S2にあり、押圧板82Aが第4位置S4にある状態について示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。換言すれば、向きは方向の一成分である。さらに、複合機1が使用可能に水平面に設置された姿勢を基準として上下方向7が定義され、複合機1の開口4が設けられている面を前面として前後方向8が定義され、複合機1を前面から見て左右方向9が定義される。本実施形態では、使用姿勢において、上下方向7が鉛直方向に相当し、前後方向8及び左右方向9が水平方向に相当し、前後方向8及び左右方向9は直交している。
【0018】
[複合機1の全体構造]
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るADF(Auto Document Feeder)5が搭載された複合機1の外観構成を示す外観斜視図である。
【0019】
複合機1は、図1に示されるように、下部に設けられたインクジェット記録方式のプリンタ部2と、その上部に設けられたスキャナ部3(読取装置の一例)とを一体的に備えた多機能装置(MFD;Multi Function Device)であり、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能などを有する。なお、本発明は、ADF5を具備するスキャナ部3のみを備えていれば足りる。すなわち、スキャン機能を除く他の機能は任意であって、スキャン機能を唯一の機能とするスキャナとして本発明が実施されていてもよい。
【0020】
コピー機能においては、スキャナ部3により読み取られた画像データがプリンタ部2において記録用紙に記録される。ファクシミリ機能においては、スキャナ部3により読み取られた画像データが電話回線などを通じてファクシミリ送信される。また、受信されたファクシミリデータは、プリンタ部2により記録用紙に記録される。
【0021】
スキャン機能においては、スキャナ部3により読み取られた原稿12の画像データが装置と有線或いは無線で接続されたコンピュータに転送される。また、読み取られた画像データをメモリカードやUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の各種記憶媒体に転送して記憶させることもできる。
【0022】
[スキャナ部3の構成]
スキャナ部3は、図1図4に示されるように、ADF原稿トレイ33と、ADF排出トレイ34と、搬送路151と、搬送機構16と、第1読取センサ85と、第2読取センサ95とを具備する。
【0023】
図1に示されるように、複合機1の外観は、高さより横幅及び奥行きが大きい幅広で薄型の直方体に概ね形成されている。複合機1の下部のプリンタ部2は、プリンタ部2のフレームを構成する筐体10を有する。筐体10の前面を構成する前面パネル11に開口4が形成されている。開口4の内部には、給紙トレイ20及び排紙トレイ21が上下2段に設けられている。開口4の上側に、各種コネクタが配置されたコネクタパネル13が設けられている。コネクタパネル13の右端部にスロット部18が配置されている。スロット部18は、各種のメモリカードの装填を可能にして、複合機1のコントローラとメモリカードとを電気的に接続するものである。メモリカードとは、記憶媒体としてフラッシュメモリが内蔵されたカード型の記憶装置のことである。スロット部18には、異なるタイプのメモリカードの装填を可能とするために、スロットタイプの異なる第1カードスロット19および第2カードスロット22が横並びに設けられている。前面パネル11の幅方向右端部には、インクカートリッジが収容されている。
【0024】
複合機1の前面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を動作させるための操作パネル6が設けられている。操作パネル6は、各種操作ボタン35や液晶ディスプレイ36が適宜設けられ構成されている。複合機1は、操作パネル6において入力された指示に基づいて動作する。複合機1が外部のコンピュータに接続されている場合には、コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機1は動作する。
【0025】
以下、図2から図4を参照してスキャナ部3の概略構成について説明する。
【0026】
スキャナ部3は、FBS(Flatbed Scanner)として機能する原稿読取台15に対して、原稿カバー30が、背面側の蝶番を介して図2の矢印P1方向に開閉可能に取り付けられている。原稿カバー30は、プラテンガラス80(図4参照)に対して開位置と閉位置とに移動可能である。原稿カバー30は、閉位置においてプラテンガラス80を覆う。原稿カバー30は、ADF5を一体に備えており、原稿カバー30の開閉に伴ってADF5も移動する。ADF原稿トレイ33、ADF排出トレイ34、搬送路151、搬送機構16、及び第2読取センサ95は、原稿カバー30に位置しており、第1読取センサ85は、原稿読取台15に位置している。
【0027】
原稿読取台15の上面には、プラテンガラス80が設けられている。原稿読取台15に対して原稿カバー30が閉じられると、プラテンガラス80は原稿カバー30に覆われる。原稿カバー30の下面、すなわち、プラテンガラス80と対向する面には押圧板82が設けられている。
【0028】
押圧板82は、原稿カバー30が閉位置にあるとき、第2読取センサ95の下方に位置し、プラテンガラス80に当接する。押圧板82は、プラテンガラス80上に載置された原稿12を押さえて固定する。押圧板82の各構成については後述する。
【0029】
プラテンガラス80は、例えば透明なガラス板やアクリル板である。プラテンガラス80の左端部には、ADF5を使用して原稿12の画像を読み取る場合の読取領域80A(読取位置の一例)と、スキャナ部3をFBSとして使用する場合の読取領域80Bとを区画する位置決め部材83が設けられている。位置決め部材83は、プラテンガラス80上に原稿12を載置する場合の位置決め基準である。位置決め部材83は、ADF5が用いられる場合には、読取領域80A上を通過する原稿12をADF5内に設けられた搬送路151へ戻すように案内するガイドとして機能する。
【0030】
原稿読取台15の内部には、第1画像読取ユニット32が内蔵されている。スキャナ部3がFBSとして使用される場合には、原稿カバー30が開かれて、プラテンガラス80上に原稿12が載置される。そして、原稿カバー30が閉じられて、原稿12がプラテンガラス80上に固定される。第1画像読取ユニット32がプラテンガラス80の下方を移動しつつプラテンガラス80に載置された原稿12の画像を読み取る。
【0031】
第1画像読取ユニット32は、第1コンタクトイメージセンサ(移動読取センサの一例であり、Contact Image Sensor、以下「第1CIS」と称する。)85と、細長長方体状のCISキャリッジ86とを有する。第1CIS85は、プラテンガラス80の下方に位置しており、プラテンガラス80の下面に対向している。第1CIS85は、搬送路151における湾曲部分54より搬送向き17の上流に位置している。第1CIS85は、搬送路151の下方から原稿12の画像を光学的に読み取る。第1CIS85は、LEDなどの光源を発光させて原稿12に光を照射し、原稿12からの反射光をレンズにより光電変換素子に導き、光電変換素子が反射光強度に応じた電気信号を出力するいわゆる密着型のラインイメージセンサである。第1CIS85は、CISキャリッジ86に搭載されて、プラテンガラス80の下方を往復動される。
【0032】
図3に示されるように、ケーシング84の左右方向9に渡ってガイドシャフト87が架設されている。第1画像読取ユニット32は、CISキャリッジ86がガイドシャフト87に嵌め合わされることにより、プラテンガラス80の下方をCISキャリッジ86の長手方向に直交する方向(左右方向9)に円滑に移動可能に支持される。ガイドシャフト87に沿ってCISキャリッジ駆動機構88が設けられている。CISキャリッジ駆動機構88は、プーリ間にタイミングベルト89が架設されたものである。CISキャリッジ86は、CISキャリッジ駆動機構88のタイミングベルト89に固定されており、タイミングベルト89の周運動によって往復動される。これにより、スキャナ部3がFBSとして使用される場合に、CISキャリッジ86をプラテンガラス80の下面に平行に移動させることができ、その際に、CISキャリッジ86に搭載された第1CIS85にプラテンガラス80上に載置された原稿12の画像を読み取らせることができる。
【0033】
原稿カバー30には、図1及び図2に示されるように、ADF原稿トレイ33及びADF排出トレイ34が上下二段に構成されている。ADF原稿トレイ33には、複合機1の前後方向8に隔てられて一対のADF原稿ガイド93が、前後方向8へスライド移動可能に設けられている。ADF原稿ガイド93は、ADF原稿トレイ33から起立して、ADF原稿トレイ33に載置される原稿12の幅方向の位置を規制する。
【0034】
ADF原稿ガイド93は、ラック・ピニオンなどの周知の連動機構により、いずれか一方のADF原稿ガイド93をスライド移動させると、他方のADF原稿ガイド93も連動して相反する方向へスライド移動される。
【0035】
一対のADF原稿ガイド93には、ADF原稿トレイ33の上方向に隔てられてADF排出トレイ34が一体的に形成されている。ADF排出トレイ34は、ADF原稿ガイド93の頂部から内側に向けて迫り出すように延設された庇状の平板として構成される。ADF排出トレイ34は、後述する排出シュート部158の下側排出ガイドを構成する上段トレイ179(図4参照)の上面よりも下側に設けられている。
【0036】
ADF5から排紙された原稿12は、その両側をADF排出トレイ34に担持されて、ADF原稿トレイ33上の原稿と分離した状態で保持される。ADF排出トレイ34は、排紙方向の長さが原稿12の長さより短いので、原稿12の排紙方向先端側は、ADF排出トレイ34から垂れ下がるようにして、ADF原稿トレイ33上に保持される。
【0037】
図4に示されるように、ADF5の筐体は、原稿カバー30と一体に成形されたADF本体152と、ADF本体152に対して回動可能に設けられたADFカバー153とによって構成される。このADFカバー153は、主にADF5の筐体の上面を形成している。ADFカバー153は、ADF本体152に対してADF本体152の側方(図4の左側)に設けられた回動軸を中心として図中の矢印P2方向に回動される。これにより、ADF5の内部の一部が露出される。
【0038】
ADFカバー153は、ADF本体152に対して回動されることにより、閉姿勢と、開姿勢とに姿勢変化する。ADF5を使用する際には、ADFカバー153は閉姿勢である。ADFカバー153は、閉姿勢においてADF本体152に係止される。
【0039】
ADF5の内部には、搬送路151に沿って、ADF原稿トレイ33からADF排出トレイ34へと向かう搬送向き17に原稿12を搬送する搬送機構16が設けられている。搬送機構16は、吸入ローラ164、分離ローラ166、(以下、第1ローラ164、166とも称する)、第2搬送ローラ168、第2ピンチローラ169(以下、第2ローラ168、169とも称する)と、第3搬送ローラ171、第3ピンチローラ172(以下、第3ローラ171、172とも称する)とを有する。
【0040】
搬送路151は、断面視で横向き略U字形状に形成されており、下側搬送路159、湾曲路157及び上側搬送路160に区分される。搬送路151は、ADF本体152やADFカバー153によって構成される。
【0041】
ADF原稿トレイ33から搬送路151に連続するようにして、吸入シュート部154が形成されている。ADF5の吸入シュート部154は、ADF原稿トレイ33上の空間と連続するように形成されている。吸入シュート部154は、上面を原稿12のガイド面とし、上下方向7に所定幅の通路として構成されている。ADF原稿トレイ33に載置された原稿12において下方を向く面を第1面51とし、上方を向く面を第2面52とすると、画像が読み取られる原稿12は、第1面51を下向きにした状態で、給紙方向の先端を吸入シュート部154に挿入するようにして、ADF原稿トレイ33上に載置される。
【0042】
吸入シュート部154には、複数のローラ体等で構成されるシート供給機構が設けられている。シート供給機構は、吸入ローラ164及びこれに圧接される吸入ニップ片165と、分離ローラ166及びこれに圧接される分離ニップ片167とを有する。なお、各ローラやニップ片の構成はシート供給機構の単なる一例であり、ローラの数や配置を変更したり、各ニップ片に代えてピンチローラを用いたりする等、その他の公知のシート供給機構に変更できることは勿論である。
【0043】
第1ローラ164、166は、LF搬送モータからの駆動力が伝達されて回転駆動される。
【0044】
吸入ニップ片165は、吸入ローラ164の対向位置に、吸入ローラ164と接離する方向へ上下動可能に設けられている。吸入ニップ片165は、不図示のバネ部材により下方へ付勢されており、原稿12をニップしない状態で吸入ローラ164に接触されている。
【0045】
分離ニップ片167は、分離ローラ166の対向位置に、分離ローラ166と接離する方向へ上下動可能に設けられている。分離ニップ片167は、不図示のバネ部材により下方へ付勢されており、原稿12をニップしない状態で分離ローラ166のローラ面に圧接されている。
【0046】
搬送路151の下側搬送路159は、吸入シュート部154の出口付近から読取領域80Aの出口付近までの所定幅の通路として緩やかに傾斜されて連続的に形成されている。
【0047】
下側搬送路159には、搬送向き17の上流から下流に向かって、第2搬送ローラ168、第2ピンチローラ169、原稿センサ116、第2画像読取ユニット94、位置決め部材83、第1原稿ガイド173、第1画像読取ユニット32が配置されている。
【0048】
第2ピンチローラ169は、下側搬送路159の幅方向(前後方向8)に軸方向を一致させて設けられている。第2ピンチローラ169は、ローラ面の一部を下側搬送路159に露出するようにして、回転可能に設けられている。
【0049】
下側搬送路159を挟んで第2ピンチローラ169に対向する位置に第2搬送ローラ168が設けられている。第2ピンチローラ169は図示しないコイルバネなどによって第2搬送ローラ168側へ付勢された状態で支持されており、下側搬送路159において、第2ピンチローラ169のローラ面が第2搬送ローラ168のローラ面に圧接されている。第2搬送ローラ168は、図示しない駆動伝達機構を介してLF搬送モータと連結されており、LF搬送モータからの駆動力が伝達されて回転駆動される。
【0050】
下側搬送路159において、第2ローラ168、169の下流には原稿センサ116が配置される。原稿センサ116は、第2ローラ168、169によって送られた原稿12の先端及び後端を検知する。
【0051】
下側搬送路159において、原稿センサ116の下流に第2画像読取ユニット94が配置される。第2画像読取ユニット94は、第2コンタクトイメージセンサ(第2読取センサの一例であり、Contact Image Sensor、以下「第2CIS」と称する。)95と、第2プラテン96と、原稿支持部材97とを有する。第2画像読取ユニット94は、原稿12の第2面52を読取る。第2CIS95は、第1CIS85と同様の方式で搬送路151を搬送される原稿12を光学的に読み取る。
【0052】
第2CIS95は、第2プラテン96の上面に対向して配置されている。第2CIS95は、搬送路151における第1CIS85よりも搬送向き17の上流に位置している。第2CIS95は、直方体形状であり、第2プラテン96の上面に載置されている。第2CIS95は、読取面120と、上流端121と、下流端122とを有する。
【0053】
上流端121は、第2CIS95の搬送向き17における上流側の端である。また、下流端122は、第2CIS95の搬送向き17における下流側の端である。上流端121は、搬送向き17において下流端122よりも上方に位置している。
【0054】
第2プラテン96は、下側搬送路159の上方に配置される。第2プラテン96は所定の厚みを有する板状である。第2プラテン96の下面は、下側搬送路159を搬送される原稿12に対して平行である。
【0055】
読取面120は、搬送向き17に沿う。読取面120は、下側搬送路159を搬送される原稿12に対して平行である。
【0056】
原稿支持部材97は、図4に示されるように、搬送路151を挟んで第2CIS95の読取面120と対向する位置に配置されている。原稿支持部材97については、後述する。
【0057】
下側搬送路159においては、第2画像読取ユニット94の搬送向き17の下流に位置決め部材83が配置されている。位置決め部材83の左端部(搬送向き17の下流端部)は、搬送向き17へ向かって下方に傾斜する傾斜面であり、第2画像読取ユニット94を通過した原稿12を、プラテンガラス80と第1原稿ガイド173との間へ案内する。
【0058】
下側搬送路159において、位置決め部材83の搬送向き17の下流に第1画像読取ユニット32が配置される。第1画像読取ユニット32は、原稿12の第1面51を読み取る。
【0059】
第1原稿ガイド173は、原稿カバー30の第1画像読取ユニット32に対向する位置に設けられている。第1原稿ガイド173は、読取領域80Aに対向する水平部分と、水平部分の両端から上流側及び下流側の上方に延びる傾斜部分とを有する。第1原稿ガイド173は、ADF本体152に固定されたバネ部材によって読取領域80Aへ付勢されている。前後方向8における第1原稿ガイド173の水平部分の両端部には凸部が形成されている。凸部が読取領域80Aに当接することにより、第1原稿ガイド173の水平部分と読取領域80Aとの上下方向7の間に原稿12が通過可能な隙間が形成される。
【0060】
搬送路151の湾曲路157は、読取領域80Aの出口付近から始まり、上方へ向かって延びつつ図4の左方向から右方向に大きく反っている。湾曲路157の搬送向き17の下流端は、上側搬送路160と連続する。湾曲路157は、第3搬送ローラ171を内側の搬送ガイド面とし、ADF本体152及びADFカバー153を外側搬送ガイド面として形成されている。
【0061】
湾曲路157には、第3ローラ171、172が設けられている。第3搬送ローラ171は湾曲路157の湾曲内側に位置しており、第3ピンチローラ172は湾曲路157の湾曲外側に位置している。第3搬送ローラ171及び第3ピンチローラ172は、ローラ面の一部が湾曲路157に露出している。
【0062】
第3ピンチローラ172は、図示しないコイルバネなどによって第3搬送ローラ171側へ付勢されている。これにより、湾曲路157において、第3ピンチローラ172のローラ面が第3搬送ローラ171のローラ面に圧接されている。第3搬送ローラ171は、図示しない駆動伝達機構を介してLF搬送モータと連結されており、LF搬送モータからの駆動力が伝達されて回転駆動される。
【0063】
上側搬送路160の搬送向き17の上流部分には、排出シュート部158が形成されている。排出シュート部158は、ADFカバー153の裏面によって上側ガイド面が構成される。排出シュート部158は、上段トレイ179及び上段トレイ179から左方に連続形成される傾斜部180によって下側ガイド面が構成される。排出シュート部158は、これらの各ガイド面によって上下方向に所定幅だけ隔てられた通路として構成されている。排出シュート部158に原稿12が排出されると、排出シュート部158のガイド面によって原稿12がADF排出トレイ34に案内される。上段トレイ179は、第3ローラ171、172のニップ位置よりも上側に設定されており、傾斜部180の傾斜面の上端は、第3ローラ171、172のニップ位置よりも上方に配置される。
【0064】
排出シュート部158にはバネ片190が設けられている。バネ片190は、排出シュート部158に排出された原稿12の後端を支持する。バネ片190は、断面視で略L字形状に屈曲形成されており、第3ローラ171、172のニップ位置よりも搬送向き17の直下流に配置される。バネ片190は、厚さ0.2mm~1.0mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)等の腰の強い合成樹脂製の弾性板材で構成される。バネ片190は、加えられた荷重に応じて断面視で上下に姿勢変化する。
【0065】
図5は、原稿カバー30の下側部分38を示す斜視図であり、押圧板82が原稿カバー30の下面に取り付けられた状態について示す図である。図6は、原稿カバー30の下側部分38を示す斜視図であり、押圧板82が原稿カバー30の下面から取り外された状態について示す図である。
【0066】
押圧板82は、図5及び図6に示されるように、原稿カバー30の下面に取り付けられた第3位置S3と、下面から取り外された第4位置S4とに移動可能である。押圧板82は、板部74と、スポンジ部75と、突片76と、係止アーム70と、押圧板回動軸77(回動軸の一例)とを有する。
【0067】
板部74は、矩形状の平板部材である。板部74は、原稿カバー30の下方を覆う。板部74の下面にはスポンジ部75が設けられている。
【0068】
スポンジ部75は、スポンジなどの多孔質材料で成形されている。スポンジ部75は、板部74の下面に沿うように密着して設けられている。スポンジ部75は、原稿カバー30を閉じた際の衝撃を緩和するため、及び、プラテンガラス80と原稿12との密着性を向上させるため所定の厚みを有している。スポンジ部75の下面には、原稿12から安定した反射光を得るために、全面に白色の反射部78が設けられている。
【0069】
突片76は、板部74の左方の前端部及び後端部に一対設けられている。一対の突片76、76は、それぞれ板部74から上方に突出するように設けられている。一対の突片76、76にはそれぞれ、押圧板82の長手方向(第3位置S3にあるときの押圧板82の左右方向9)に長い矩形状の貫通穴79が設けられている。
【0070】
係止アーム70は、一対の突片76、76の右方(第3位置S3にあるときの押圧板82の右方)にそれぞれ設けられている。一対の係止アーム70、70は、それぞれ板部74から上方に突出するように設けられている。一対の係止アーム70、70には、それぞれ爪部71、71が設けられており、原稿カバー30に設けられた係止部(不図示)に係止される。一対の係止アーム70、70が、係止部に係止された状態において、押圧板82は、第3位置S3に配置される。
【0071】
押圧板回動軸77は、図5及び図6において破線で示されるように、板部74の右方の端部に設けられている。押圧板回動軸77は、板部74の前端及び後端において、それぞれ前後方向8の外側に突出するように設けられている。押圧板82の板部74は、押圧板回動軸77によって原稿カバー30に対して回動可能に支持される。つまり、前後方向8(左右方向9と直交する方向)に沿った押圧板回動軸77周りの回動によって、押圧板82が第3位置S3と第4位置S4とに移動可能に支持されている。
【0072】
図7は、第2CIS95の読取面120に対向して配置される原稿支持部材97の周辺を拡大して示す断面図であり、原稿支持部材97が第1位置S1にあり、押圧板82が第3位置S3にある状態を示す図である。図8は、第2CIS95の読取面120に対向して配置される原稿支持部材97の周辺を拡大して示す断面図であり、原稿支持部材97が第2位置S2にあり、押圧板82が第4位置S4にある状態を示す図である。
【0073】
原稿支持部材97は、原稿支持本体部130と、原稿支持部材回動軸131(回動軸の一例)と、コイルバネ132(弾性部材の一例)と、第2原稿ガイド133と、接続軸136と、を有する。
【0074】
原稿支持本体部130は、前後方向8において第2画像読取ユニット94の第2プラテン96と同程度の長さであり、左右方向9において第2画像読取りユニット94の第2プラテン96よりも長い。原稿支持本体部130は、右方の前後部分においてそれぞれ原稿支持部材回動軸131、131を有する。
【0075】
原稿支持部材回動軸131は、原稿支持本体部130から前後方向8の外側に向けてそれぞれ突出して設けられている。前後方向8に沿った回転軸を有する原稿支持部材回動軸131によって、原稿支持本体部130は回動する。
【0076】
コイルバネ132は、原稿支持部材回動軸131に巻き回されており、一端側が原稿支持本体部130に固定され、他端側が原稿カバー30に固定される。コイルバネ132は、原稿支持本体部130を第1位置S1へ向かって付勢する。
【0077】
第2原稿ガイド133は、原稿支持本体部130に設けられている。第2原稿ガイド133は、第2画像読取ユニット94に対向する位置に配置された平板形状の部材である。第2原稿ガイド133は、読取面120に対向するガイド水平部134と、搬送路151の上流側から搬送される原稿12をガイド水平部134に案内する上流側傾斜部135とを有する。
【0078】
図6に示されるように、接続軸136は、原稿支持部材97を押圧板82の左方端部分に接続する部材である。接続軸136は、原稿支持本体部130の左方に設けられている。接続軸136は、原稿支持本体部130から前後方向8に突出する軸として設けられている。接続軸136は、突片76の貫通穴79に挿通されている。
【0079】
本実施形態では、スキャナ部3は、連動機構として、原稿支持部材97の回動先端側と押圧板82とを繋ぐ接続部材68を有する。接続部材68は、例えば、突片76と、接続軸136とで構成される。接続軸136は、押圧板回動軸77よりも左右方向9の左方に配置され、原稿支持部材97の原稿支持部材回動軸131は、押圧板82の貫通穴79にスライド移動可能な状態で保持されている。
【0080】
[ADF12による原稿12の画像読取り]
上述のように構成されたスキャナ部3では、コントローラによって、搬送機構16、第1読取センサ85、及び第2読取センサ95の制御が実行される。以下、図4を参照しつつ説明する。
【0081】
原稿12の画像を読み取る際、ユーザは、原稿12の第1面51を下方へ向けた状態で、複数枚の原稿12をADF原稿トレイ33に載置する。ユーザは、操作パネル6を操作し、原稿12の画像読取り開始のコマンドを入力する。
【0082】
コントローラは、画像読取り開始のコマンドを受信したことに応じて、CRモータ及びLFモータを駆動する。LFモータが駆動され、吸入ローラ164、分離ローラ166、及び第2搬送ローラ168が駆動すると、複数枚の原稿12のうちの最下位置の原稿12がADF原稿トレイ33から搬送される。CRモータが駆動すると、第1CIS85が読取領域80Aに移動する。
【0083】
原稿センサ116は、ADF原稿トレイ33から搬送された原稿12の前端を検知する。コントローラは、原稿センサ116の検知信号に基づいて、原稿12を所定距離だけ搬送した後、第2CIS95及び第1CIS85による画像読取りを開始する。
【0084】
下側搬送路159を搬送される原稿12は、第1面51を下方に向け第2面52を上方に向けた状態である。原稿12は、第2画像読取ユニット94の第2CISによって第2面52の画像が読み取られる。
【0085】
第2画像読取ユニット94によって画像が読み取られた原稿12は、更に、位置決め部材83に案内されて第1画像読取ユニット32に至ると、第1CISによって第1面51の画像が読み取られる。画像が読み取られた後、原稿12は、先端部分が上方へ案内されて、ADF5の湾曲路157に搬送される。
【0086】
湾曲路157に搬送された原稿12は、第3搬送ローラ171の外周面上を左方向から右方向に大きく反るように搬送される。第3ピンチローラ172は、第3搬送ローラ171に従動して回転する。第3ピンチローラ172によって第3搬送ローラ171に原稿12が圧接されて、原稿12に第3搬送ローラ171の回転力が伝達される。これにより、原稿12が湾曲路157を搬送されて、下流の上側搬送路160へ搬送される。
【0087】
湾曲路157を通って搬送された原稿12が第3搬送ローラ171及び第3ピンチローラ172によって狭持されつつ搬送向き17の下流へ搬送されると、原稿12の先端が搬送向き17の下流へ傾斜するバネ片190の傾斜面に乗り上げる。このとき、バネ片190が下方へ姿勢変化する。これにより、原稿12はバネ片190上で弾性的に支持されつつ、排出シュート部158内を搬送向き17の下流へ案内される。
【0088】
原稿12が搬送される過程において、原稿センサ116は、原稿12の後端を検知する。コントローラは、原稿センサ116の検知信号に基づいて、原稿12を所定距離だけ搬送した後、第2CIS95及び第1CIS85による画像読取りを終了する。さらに、コントローラは、画像読取りを終えた原稿12を所定距離だけ搬送してADF排出トレイ34に排出する。
【0089】
第3搬送ローラ171及び第3ピンチローラ172によるニップ位置から原稿12の後端が抜け出ると、バネ片190には原稿12の後端部の自重のみが加えられる。原稿12の後端がニップ位置から抜け出ると、原稿12の後端部は、バネ片190の付勢力によって上方へ持ち上げられる。上段トレイ179に案内された原稿12は、その搬送向き17の下流に設けられたADF排出トレイ34に導かれる。
【0090】
ADF原稿トレイ33に載置された複数枚の原稿12のうち最下位置の原稿12は、吸入ローラ164及び分離ローラ166により搬送された後、第2搬送ローラ168により搬送される。分離ローラ166及び第2搬送ローラ168による原稿12の搬送速度は、吸入ローラ164による原稿12の搬送速度より速い。したがって、原稿12が分離ローラ166及び第2搬送ローラ168により搬送されると、吸入ローラ164が連れ回って、ローラ軸のキーと吸入ローラ164のキー溝とが離れる。原稿12の後端が吸入ローラ164を通過すると、回転するローラ軸のキーと吸入ローラ164のキー溝とが当接するまで吸入ローラ164の回転が停止する。これにより、先行の原稿12の後端と後続の原稿12の先端とが所定距離だけ離れるので、複数枚の原稿12から1枚ずつ所定距離をおいて原稿12がADF原稿トレイ33から給送される。1枚ずつ給送された原稿12は、前述と同様にして、第1CIS85及び第2CIS95により第1面51及び第2面52の画像読取りが行われて、ADF排出トレイ34に順次排出される。
【0091】
[第2CIS95のメンテナンス]
ユーザは、第2CIS95のメンテナンスを行う際以下の手順で行う。ユーザは、原稿カバー30をP1方向(図2参照)に開き、原稿カバー30を開位置に移動することで押圧板82を露出させる。ユーザは、露出した押圧板82の左端部を手前に引き出し、押圧板82を第3位置S3から第4位置S4に移動する(図5図6参照)。つまり、ユーザは、押圧板82を右端部分に設けられた押圧板回動軸77を支点として原稿カバー30から離れる方向に回動する。このとき、原稿支持部材97が、押圧板82の動きに連動して第1位置S1から第2位置S2に移動する。
【0092】
押圧板82の突片76が原稿カバー30の下面から離れる方向に移動するのに連動して、突片76の貫通穴79に挿通された接続軸136も連動して貫通穴79の右方にスライド移動する。接続軸136が移動することで、第2CIS95の読取面120と対向する位置に配置されている原稿支持部材97は、第1位置S1から第2位置S2に移動する。原稿支持部材97が第1位置S1から第2位置S2に移動する際、原稿支持部材97は、コイルバネ132によって第1位置S1へ向かって付勢されるため、ユーザは、押圧板82の左端部をコイルバネ132の付勢力に抗して開く方向に支持して第4位置S4に保持する。
【0093】
押圧板82が第4位置S4に位置するとき、原稿支持部材97が第2位置S2に位置するため、原稿支持部材97と第2CIS95の読取面120との間に、ユーザの手が入る程度の空間が形成される(図8参照)。ユーザは、原稿支持部材97と第2CIS95の読取面120との間の空間を利用して、例えば布等で第2CIS95の読取面120及び第2原稿ガイド133を拭いたりして、読取面120及び第2原稿ガイド133に付着した汚れを除去するなどのメンテナンス作業を行うことができる。
【0094】
ユーザは、読取面120及び第2原稿ガイド133に付着した汚れを除去した後、押圧板82を押し戻し、押圧板82を第4位置S4から第3位置S3に移動する。つまり、ユーザは、押圧板82を、押圧板回動軸77を支点として回動し原稿カバー30の下面に取り付ける。押圧板82が原稿カバー30の下面に取り付けられることで、原稿支持部材97が連動して移動し第2位置S2から第1位置S1に移動する(図5図6参照)。
【0095】
押圧板82の突片76が原稿カバー30の下面に近づく方向に移動するのに連動して、突片76の貫通穴79に挿通された接続軸136も連動して貫通穴79の左方にスライド移動する。原稿支持部材97は、コイルバネ132の付勢力によって第2位置S2から第1位置S1に移動する(図7参照)。第1位置S1に移動した原稿支持部材97は、読取面120の対向する位置に配置される。
【0096】
ユーザによって、押圧板82が原稿カバー30の下面に取り付けられ、原稿カバー30が閉位置に戻され、第2CIS95が原稿12の第2面52を読み取り可能な状態となる。
【0097】
[実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、原稿カバー30の閉位置においてプラテンガラス80に当接する押圧板82を、原稿カバー30の下面から取り外すと、第2読取センサ95の読取面120に対向する原稿支持部材97が第2位置S2へ移動する。このため、第2読取センサ95の読取面120の清掃など、第2読取センサ95のメンテナンスを行うとき作業が容易である。
【0098】
また、本実施形態によれば、押圧板82は、読取領域80Aより右方に設けられた押圧板回動軸77周りに回動し、原稿支持部材回動軸131は、押圧板回動軸77よりも左方に配置される。このため、押圧板82の回動に対して、原稿支持部材97が押圧板82よりも大きな角度で回動するので第2読取センサ95のメンテナンス作業が容易である。
【0099】
また、本実施形態によれば、原稿支持部材97を第1位置S1において、第2読取センサ95の読取面120に対して精度よく位置決めできる。
【0100】
[変形例]
前述の実施形態においては、原稿支持部材97を第1位置S1から第2位置S2へ移動させる機構として、押圧板82の突片76と、接続軸136とで構成される接続部材68を例に挙げて説明したが、これに限られない。原稿支持部材97が第1位置S1から第2位置S2への移動するものとしては、例えば、以下に説明するものであってもよい。
【0101】
図9は、原稿カバーの下側部分38Aを示す斜視図である。図10は、原稿支持部材97の周辺の拡大断面図である。変形例に係るスキャナ部は、プラテンガラスと当接する押圧板82Aを具備し、押圧板82Aは、原稿カバーの下面に位置して原稿カバーの閉位置において第2CIS95の下方に位置する。押圧板82Aは、第1部分138と、第2部分139とを有する。第1部分138及び第2部分139の下面には、第1部分138及び第2部分139を連結するスポンジ部140が設けられている。スポンジ部140は、第1スポンジ部141と、第2スポンジ部142とを有する。スポンジ部140の下面には反射部78Aが設けられている。
【0102】
第1部分138は、原稿カバーの下面に固定されている平板状の部材である。第1部分138は、係止アーム70Aで原稿カバーに係止する。第1部分138は、原稿カバーの下側部分38Aの右方領域を下方から覆う。第1部分138は、第1板部143と、第1スポンジ部141とを有する。第1板部143は、左右方向9に長い矩形状である。第1スポンジ部141は、第1板部143の下面に沿うように密着して設けられる。
【0103】
第2部分139は、原稿カバーの下面に取り付けられた第3位置S3と、原稿カバーの下面から取り外された第4位置S4とに移動可能な平板状の部材である。第2部分139は、第3位置S3にあるとき、係止アーム(不図示)で原稿カバーに係止する。第2部分139は、第3位置S3にあるとき、原稿カバーの下側部分38Aの左方領域を下方から覆う。第2部分139は、第2板部144と、第2スポンジ部142と、突片76Aとを有する。
【0104】
第2板部144は、前後方向8に長い矩形状の板部材である。第2板部144は、第1板部143と前後方向8において同じ長さである。第2スポンジ部142は、第2板部144の下面に沿うように密着して設けられる。
【0105】
突片76Aは、第2板部144の前端部及び後端部に一対設けられている。一対の突片76A、76Aは、それぞれ第2板部144から上方に突出するように設けられている。一対の突片76A、76Aにはそれぞれ、矩形状の貫通穴79Aが設けられている。
【0106】
スポンジ部140は、可撓性を有する。スポンジ部140は、第2部分139が第3位置S3から第4位置S4への移動するのにともない、第1スポンジ部141と第2スポンジ部142の境界部分で折曲がる。
【0107】
変形例に係る複合機1の原稿支持部材97Aは、図10に示されるように、第2部分139に設けられている。原稿支持部材97Aは、原稿支持本体部130と、原稿支持部材回動軸131と、コイルバネ132と、第2原稿ガイド133とを有する。原稿支持部材97Aは、左方に接続軸136を有している。接続軸136は、第2部分139の突片76Aの貫通穴79Aに挿通されている。接続軸136は、第1部分を回動可能に支持する。原稿支持部材97Aの他の構成は、上述の実施形態と同様である。
【0108】
図11は、原稿支持部材97Aが第2位置S2にあり、押圧板82Aが第4位置S4にある状態について示す拡大断面図である。
【0109】
原稿支持部材97Aは、図10及び図11に示されるように、読取面120と対向する第1位置S1と、読取面120から離れた第2位置S2とに移動可能である。原稿支持部材97Aは、原稿支持部材回動軸131周りに回動可能である。原稿支持部材97Aは、第2部分139の第2板部144上に固定されており、第2部分139とともに回動する。
【0110】
[変形例に係る第2CIS95のメンテナンス]
変形例に係る複合機において、ユーザは、第2CIS95のメンテナンスを行う際、以下の手順で行う。ユーザは、原稿カバーをP1方向(図2参照)に開き、原稿カバーを開位置に移動することで押圧板82Aを露出させる。ユーザは、露出した押圧板82Aの第2部分139の左端部を手前に引き出し、第1部分を第3位置S3から第4位置S4に移動する(図9参照)。つまり、ユーザは、第2部分139を原稿支持部材97Aの右端部分に設けられた原稿支持部材回動軸131を支点として原稿カバーから離れる方向に回動する。このとき、原稿支持部材97が、第2部分139の回動とともに第1位置S1から第2位置S2に移動する。
【0111】
押圧板82Aの第2部分139が原稿カバーの下面から離れる方向に移動すると、第2部分139に固定された原稿支持部材97Aも第1位置S1から第2位置S2に移動する。原稿支持部材97Aが第1位置S1から第2位置S2に移動する際、原稿支持部材97Aは、コイルバネ132によって第1位置S1へ向かって付勢されるため、ユーザは、押圧板82の左端部をコイルバネ132の付勢力に抗して開く方向に支持し第4位置S4に保持する。
【0112】
第2部分139が第4位置S4に位置するとき、原稿支持部材97Aが第2位置S2に位置するため、原稿支持部材97Aと第2CIS95の読取面120との間に、ユーザの手が入る程度の空間が形成される(図11参照)。ユーザは、第2部分139を第4位置S4で支持したままの状態で、例えば布等で第2CIS95の読取面120及び第2原稿ガイド133を拭き、読取面120及び第2原稿ガイド133に付着した汚れを除去することにより、第2CIS95のメンテナンス作業を行うことができる。
【0113】
ユーザは、読取面120及び第2原稿ガイド133に付着した汚れを除去した後、第2部分139を押し戻し、第2部分139を第4位置S4から第3位置S3に移動する。つまり、ユーザは、第2部分139を、原稿支持部材回動軸131を支点として回動し原稿カバーの下面に取り付ける。第2部分139が原稿カバーの下面に取り付けられることで、原稿支持部材97も第2位置S2から第1位置S1に移動する。
【0114】
押圧板82Aの第2部分139が原稿カバーの下面に近づく方向に移動すると、第2部分139に固定された原稿支持部材97Aも第2位置S2から第1位置S1に移動する(図10参照)。原稿支持部材97Aは、コイルバネ132の付勢力によって第2位置S2から第1位置S1に移動する。第1位置S1に移動した原稿支持部材97Aは、読取面120の対向する位置に配置される。
【0115】
ユーザによって、第2部分139が原稿カバーの下面に取り付けられ、原稿カバーが閉位置に戻され、第2CIS95が原稿12の第2面52を読み取り可能な状態となる。
【0116】
[変形例の作用効果]
押圧板82は、第3位置S3と第4位置S4とに移動可能な第2部分139を有し、第2部分139が第3位置S3にあるとき原稿支持部材97は第1位置S1になり、第2部分139が第4位置S4にあるとき原稿支持部材97は第2位置S2になる。このため、第2部分139のみを回動するだけで原稿支持部材97を第2位置S2に移動することができる。その結果、押圧板82の回動操作に大きな力を必要とせず、第2読取センサ95のメンテナンス作業ができる。
【0117】
なお、搬送機構16は、吸入ローラ164、吸入ニップ片165、分離ローラ166、分離ニップ片167、第2搬送ローラ168、第2ピンチローラ169と、第3搬送ローラ171、第3ピンチローラ172とを有する場合を例に挙げて説明したが、搬送機構16は、他の構成によるものであってもよい。
【0118】
また、ADF5は、原稿カバー30において下段に配置されたADF原稿トレイ33から上段に配置されたADF排出トレイ34へと向かう搬送向き17に原稿12を搬送する所謂下給紙の形式を採用しているが、ADF5は、これとは逆向きに原稿12を搬送する所謂上給紙の形式を採用するものであってもよい。
【0119】
また、ADF5における搬送機構16としての各種ローラの数や配置は一例であり、適宜変更されてもよいことは言うまでもない。
【0120】
また、原稿支持部材97は、コイルバネ132を有しており、コイルバネ132によって原稿支持本体部130を第1位置S1に向かって付勢しているが、原稿支持部材97は、必ずしもコイルバネ132を有する必要はなく、コイルバネ132を有しないものであってもよい。すなわち、原稿支持部材97は、原稿支持本体部130を第1位置S1に向かって付勢しないものであってもよい。
【0121】
また、貫通穴79は、押圧板82の長手方向に長い矩形状に形成されている場合を例に挙げて説明したが、原稿支持部材97の接続軸136が、板部74の長手方向に沿ってスライド移動するものであればよく、矩形状に限られない。例えば、押圧板82の長手方向に沿って長い溝であってもよい。また、接続軸136は、貫通穴79から取り外し可能な構成であってもよい。
【符号の説明】
【0122】
3・・・読取装置(スキャナ部)
16・・・搬送機構
30・・・原稿カバー
68・・・接続部材
77・・・押圧板回動軸(回動軸)
82、82A・・・押圧板
80・・・プラテンガラス
80A・・・読取領域(読取位置)
85・・・第1CIS(移動読取センサ)
95・・・第2CIS(読取センサ)
97、97A・・・原稿支持部材
131・・・原稿支持部材回動軸(回動軸)
132・・・コイルバネ(弾性部材)
151・・・搬送路
120・・・読取面
138・・・第1部分
139・・・第2部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11