(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161612
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】搬送装置、および読取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 29/14 20060101AFI20221014BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20221014BHJP
B65H 31/24 20060101ALI20221014BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B65H29/14 A
H04N1/00 567K
B65H31/24
G03G15/00 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066552
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】星野 元季
(72)【発明者】
【氏名】近本 忠信
(72)【発明者】
【氏名】南波 護
(72)【発明者】
【氏名】塩見 大史
(72)【発明者】
【氏名】大濱 貴志
【テーマコード(参考)】
2H076
3F049
3F054
5C062
【Fターム(参考)】
2H076AA06
2H076BA01
2H076BA11
2H076BA15
2H076BA24
2H076BA30
2H076BA35
2H076BA36
2H076BA55
2H076BA95
3F049AA01
3F049DA12
3F049DB02
3F049LA11
3F049LB02
3F054AA02
3F054AC00
3F054BA07
3F054BA14
3F054BB14
3F054BD02
3F054BD10
3F054CA06
3F054DA16
5C062AA02
5C062AA05
5C062AB02
5C062AB17
5C062AB20
5C062AB23
5C062AB31
5C062AB32
5C062AB33
5C062AB35
5C062AC02
5C062AC09
5C062AC15
5C062AC68
5C062AE15
(57)【要約】
【課題】原稿12の先端を搬送済の原稿12の下方に潜り込ませるときに、原稿12の先端に加わる搬送済の原稿12の重量を低減すること。
【解決手段】スキャナ部3は、枚数閾値Nthを超える枚数の原稿12をADF原稿トレイ33からADF排出トレイ34へと連続的に搬送する場合に、枚数閾値Nthまでの原稿12を、第1部材34A,第2部材34BおよびADF原稿トレイ33の各上面で支持する。一方、スキャナ部3は、枚数閾値Nth+1以降の原稿12を、隙間G1および第2部材34Bの下方を通過させるため、第2部材34Bを用いずに第1部材34AおよびADF原稿トレイ33の各上面で支持する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿トレイと、
第1部材及び第2部材を有する排出トレイと、
上記原稿トレイから上記排出トレイに向けて連続する搬送路と、
上記搬送路に沿って原稿を搬送向きへ搬送する搬送機構と、を具備しており、
上記第1部材は、原稿を支持する第1面を有しており、
上記第2部材は、原稿を支持する第2面を有しており、当該第2面が上記第1部材の第1面と共に原稿を支持する第1位置と、原稿が通過可能な隙間が上記第1面と上記第2面との間にある第2位置と、に移動可能であり、
上記第1面、及び上記第1位置における上記第2部材の第2面は、上記搬送向きに沿った寸法の合計が、原稿の上記搬送向きに沿った寸法よりも短く、
上記搬送機構は、
上記排出トレイの上記搬送向きの上流端よりも原稿の後端が上記搬送向きの上流に位置するまで原稿を搬送し、上記排出トレイに支持された先の原稿の後端の下方へ次の原稿の先端が潜り込むように次の原稿を搬送し、
上記第2部材が上記第2位置であるときに、上記第1面と上記第2面との隙間に原稿が通過するように原稿を搬送する搬送装置。
【請求項2】
上記第2部材は、上記第1部材より上記搬送向きの下流に位置しており、上記第1位置から上記搬送向きに移動することにより上記第2位置となって、上記搬送向きの上流端と、上記第1部材の上記搬送向きの下流端と、の間に上記隙間が形成される請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
上記原稿トレイは、上記排出トレイの下方に位置しており、
上記第2部材は、軸周りの回動によって上記搬送向きの下流端が上方へ移動する請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
上記第2部材は、上記第1部材より上記搬送向きの下流に位置しており、軸周りの回動により上記搬送向きの上流端が、上記第1部材の上記搬送向きの下流端よりも上方へ移動することにより上記第2位置となって、上記搬送向きの上流端と、上記第1部材の上記搬送向きの下流端と、の間に上記隙間が形成される請求項1に記載の搬送装置。
【請求項5】
上記第2部材の上記搬送向きの上流端は、原稿の先端を下方へ案内する湾曲面を有する請求項2から4のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
上記第2部材は、上記第1部材より上記搬送向きの上流に位置しており、軸周りの回動により上記搬送向きの下流端が、上記第1部材の上記搬送向きの上流端よりも下方へ移動することにより上記第2位置となって、上記搬送向きの下流端と、上記第1部材の上記搬送向きの上流端と、の間に上記隙間が形成される請求項1に記載の搬送装置。
【請求項7】
上記第1部材の上記搬送向きの上流端は、原稿の先端を下方へ案内する湾曲面を有する請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
コントローラをさらに具備しており、
上記コントローラは、
上記搬送機構により連続して搬送する原稿の枚数であるカウント値をカウントし、
上記カウント値が閾値に到達したことに応じて、上記第2部材を上記第1位置から上記第2位置に移動する請求項1から7のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の搬送装置と、
上記搬送路において原稿を読み取る読取センサと、を具備する読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在搬送されている原稿を、先に搬送された原稿の下方に潜り込ませて排出する搬送装置、およびこれを備えた読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿トレイから搬送路を通じて排出トレイへ原稿を搬送する搬送装置が知られている。原稿の読取面を上方へ向け、所謂フェイスアップで原稿が排出トレイに排出される搬送装置では、搬送された複数枚の原稿が、ページ順で排出トレイに積載されることが好ましい。特許文献1に記載されたシート搬送装置は、仕切り板19に排出される原稿の後端が、支持部材33により上方に持ち上げられる。したがって、その後に搬送される原稿の先端が、支持部材33により支持された先の原稿の後端の下方へ潜り込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたシート搬送装置において、連続して搬送される原稿の枚数が増えると、原稿の下方へ潜り込ませる原稿に加わる荷重が大きくなる。その結果、現在搬送されている原稿が既に搬送された原稿の下方へ潜り込んで搬送向きに搬送されるときに、原稿が座屈するおそれがあるという課題があった。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、連続して搬送される原稿の枚数が増えても、先に搬送された原稿の下方に潜り込む原稿が座屈し難い技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る搬送装置は、原稿トレイと、第1部材及び第2部材を有する排出トレイと、上記原稿トレイから上記排出トレイに向けて連続する搬送路と、上記搬送路に沿って原稿を搬送向きへ搬送する搬送機構と、を具備している。上記第1部材は、原稿を支持する第1面を有している。上記第2部材は、原稿を支持する第2面を有しており、当該第2面が上記第1部材の第1面と共に原稿を支持する第1位置と、原稿が通過可能な隙間が上記第1面と上記第2面との間にある第2位置と、に移動可能である。上記第1面、及び上記第1位置における上記第2部材の第2面は、上記搬送向きに沿った寸法の合計が、原稿の上記搬送向きに沿った寸法よりも短い。上記搬送機構は、上記排出トレイの上記搬送向きの上流端よりも原稿の後端が上記搬送向きの上流に位置するまで原稿を搬送し、上記排出トレイに支持された先の原稿の後端の下方へ次の原稿の先端が潜り込むように次の原稿を搬送し、上記第2部材が上記第2位置であるときに、上記第1面と上記第2面との隙間に原稿が通過するように原稿を搬送する。
【0007】
第2部材が第1位置であるときに、排出トレイに排出された原稿は、第1面及び第2面に支持される。第2部材が第2位置であるときに、排出トレイに排出された原稿は、第1面に支持されている先の原稿の下方に潜り込んで、第1面と第2面との隙間を通過する。第1面と第2面との隙間を通過した原稿の先端側は、先の原稿の先端側とは別の部材に支持される。これにより、原稿の先端を潜り込ませるときに、原稿の先端に加わる先の原稿の重量を低減できる。
【0008】
(2) 上記第2部材は、上記第1部材より上記搬送向きの下流に位置しており、上記第1位置から上記搬送向きに移動することにより上記第2位置となって、上記搬送向きの上流端と、上記第1部材の上記搬送向きの下流端と、の間に上記隙間が形成される。
【0009】
第2部材が第1位置であるときに、排出トレイに排出された原稿は、第1面及び第2面に支持される。第2部材が第2位置であるときに、排出トレイに排出された原稿は、第1部材の下流端と第2部材の上流端との間の隙間を通過して、第2部材の下方へ排出される。第1面と第2面との隙間を通過した原稿の先端側は、先の原稿の先端側を支持する第2部材とは別の部材に支持される。これにより、原稿の先端を潜り込ませるときに、原稿の先端に加わる先の原稿の重量を低減できる。
【0010】
(3) 上記原稿トレイは、上記排出トレイの下方に位置している。上記第2部材は、軸周りの回動によって上記搬送向きの下流端が上方へ移動する。
【0011】
第2部材が回動されることにより、原稿トレイへアクセスし易い。
【0012】
(4) 上記第2部材は、上記第1部材より上記搬送向きの下流に位置しており、軸周りの回動により上記搬送向きの上流端が、上記第1部材の上記搬送向きの下流端よりも上方へ移動することにより上記第2位置となって、上記搬送向きの上流端と、上記第1部材の上記搬送向きの下流端と、の間に上記隙間が形成される。
【0013】
第2部材が第1位置であるときに、排出トレイに排出された原稿は、第1面及び第2面に支持される。第2部材が第2位置であるときに、排出トレイに排出された原稿は、第1部材の下流端と第2部材の上流端との間の隙間を通過して、第2部材の下方へ排出される。第1面と第2面との隙間を通過した原稿の先端側は、先の原稿の先端側を支持する第2部材とは別の部材に支持される。これにより、原稿の先端を潜り込ませるときに、原稿の先端に加わる先の原稿の重量を低減できる。
【0014】
(5) 上記第2部材の上記搬送向きの上流端は、原稿の先端を下方へ案内する湾曲面を有する。
【0015】
(6) 上記第2部材は、上記第1部材より上記搬送向きの上流に位置しており、軸周りの回動により上記搬送向きの下流端が、上記第1部材の上記搬送向きの上流端よりも下方へ移動することにより上記第2位置となって、上記搬送向きの下流端と、上記第1部材の上記搬送向きの上流端と、の間に上記隙間が形成される請求項1に記載の搬送装置。
【0016】
第2部材が第1位置であるときに、排出トレイに排出された原稿は、第1面及び第2面に支持される。第2部材が第2位置であるときに、排出トレイに排出された原稿は、第1部材の上流端と第2部材の下流端との間の隙間を通過して、第1部材の下方へ排出される。第1面と第2面との隙間を通過した原稿の先端側は、先の原稿の先端側を支持する第1部材とは別の部材に支持される。これにより、原稿の先端を潜り込ませるときに、原稿の先端に加わる先の原稿の重量を低減できる。
【0017】
(7) 上記第1部材の上記搬送向きの上流端は、原稿の先端を下方へ案内する湾曲面を有する。
【0018】
(8) コントローラをさらに具備しており、上記コントローラは、上記搬送機構により連続して搬送する原稿の枚数であるカウント値をカウントし、上記カウント値が閾値に到達したことに応じて、上記第2部材を上記第1位置から上記第2位置に移動する。
【0019】
(9) 本発明の読取装置は、上記搬送装置と、上記搬送路において原稿を読み取る読取センサと、を具備する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、連続して搬送される原稿の枚数が増えても、先に搬送された原稿の下方に潜り込む原稿が座屈し難い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るADF(Auto Document Feeder)5が搭載された複合機1の外観構成を示す外観斜視図。
【
図2】(A)は、スキャナ部3の主要構成を示す平面図、(B)は、
図1の一点鎖線II-IIに沿うスキャナ部3の縦断面を右方から見たときの模式図。
【
図3】本発明の実施形態に係るADF5の内部構成を示す断面図。
【
図5】(A),(B)は、実施形態における駆動伝達機構182の構成例を示す模式図、(C)は、第2変形例における駆動伝達機構182の構成例を示す模式図。
【
図6】第1位置P51の第2部材34Bを示す模式図。
【
図7】第2位置P52にある第2部材34Bを示す模式図。
【
図9】第1変形例に係る第2部材34Bを示す模式図。
【
図10】第2変形例に係る第2部材34Bを示す模式図。
【
図11】第3変形例に係る第2部材34Bを示す模式図。
【
図12】(A),(B)は、第3変形例に係る第2部材34Bのスライダ201の模式図、(C)は、第3変形例に係る第2部材34Bの偏心カム182Lを示す模式図。
【
図13】第3変形例における駆動伝達機構181の構成例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に説明される各実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、以下の説明では、複合機1が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口4が設けられている面を前面として前後方向8が定義され、複合機1を前方から視て左右方向9が定義される。上下方向7、前後方向8、および左右方向9は互いに直交している。上下方向7は、鉛直方向でもある。また、水平方向は、鉛直方向に直交する方向である。
【0023】
[複合機1の全体構造]
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0024】
複合機1は、
図1に示されるように、下部に設けられたインクジェット記録方式のプリンタ部2と、その上部に設けられたスキャナ部3(読取装置の一例)とを一体的に備えた多機能装置(MFD;Multi Function Device)であり、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能などを有する。本発明は、ADF5を具備するスキャナ部3のみを備えていれば足りる。すなわち、スキャン機能を除く他の機能は任意であって、スキャン機能を唯一の機能とするスキャナとして本発明が実施されていてもよい。
【0025】
コピー機能においては、スキャナ部3により読み取られた画像データがプリンタ部2において記録用紙に記録される。ファクシミリ機能においては、スキャナ部3により読み取られた画像データが電話回線などを通じてファクシミリ送信される。また、受信されたファクシミリデータは、プリンタ部2により記録用紙に記録される。
【0026】
スキャン機能においては、スキャナ部3により読み取られた原稿12の画像データが当該装置と有線或いは無線で接続されたコンピュータに転送される。また、読み取られた画像データをメモリカードやUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の各種記憶媒体に転送して記憶させることもできる。
【0027】
[スキャナ部3の構成]
図1において、スキャナ部3は、ADF原稿トレイ33(原稿トレイと一例)、およびADF排出トレイ34(排出トレイの一例)を備える。
図3において、スキャナ部3は、大略的に、搬送路151、原稿12を搬送する搬送機構16、第1コンタクトイメージセンサ(読取センサの一例。以下「第1CIS」と称する。)85、および、第2コンタクトイメージセンサ(以下「第2CIS」とも称する。)95を備える。
【0028】
図1において、複合機1の外観は、高さより横幅および奥行きが大きい幅広で薄型の直方体に概ね形成されている。複合機1の下部のプリンタ部2は、プリンタ部2のフレームを構成する筐体10を有する。筐体10の前面を構成する前面パネル11に開口4が形成されている。開口4の内部には、給紙トレイ20および排紙トレイ21が上下2段に設けられている。前面パネル11は、開口4の上側に、各種コネクタが配置されたコネクタパネル13を含む。コネクタパネル13の右端部にスロット部18が配置されている。スロット部18は、各種のメモリカードの装填を可能にして、複合機1のコントローラ100(
図4参照)とメモリカードとを電気的に接続するものである。メモリカードとは、記憶媒体としてフラッシュメモリが内蔵されたカード型の記憶装置のことである。スロット部18には、異なるタイプのメモリカードの装填を可能とするために、スロットタイプの異なる第1カードスロット19および第2カードスロット22が横並びに設けられている。前面パネル11の右端付近には、インクカートリッジが収容されている。
【0029】
複合機1の前面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を動作させるための操作パネル6が設けられている。操作パネル6は、各種操作ボタン35や液晶ディスプレイ36が適宜設けられ構成されている。複合機1は、操作パネル6において入力された指示に基づいて動作する。複合機1が外部のコンピュータに接続されている場合には、コンピュータからプリンタドライバまたはスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機1は動作する。
【0030】
図1において、スキャナ部3は、FBS(Flatbed Scanner)として機能する支持台15に対して、原稿カバー30が、背面側の蝶番を介して矢印P1方向に開閉自在に取り付けられている。原稿カバー30は、プラテンガラス80(
図3参照)を有する支持台15に対して開位置と閉位置とに移動可能である。原稿カバー30は、閉位置においてプラテンガラス80を覆う。原稿カバー30は、ADF5(搬送装置の一例)を一体に備えており、原稿カバー30の開閉に伴ってADF5も移動する。ADF原稿トレイ33、ADF排出トレイ34、搬送路151(
図3参照)、搬送機構16、および第2CIS95は、原稿カバー30に位置しており、第1CIS85は、支持台15に位置している。
【0031】
図3において、支持台15の上面には、プラテンガラス80が設けられている。支持台15に対して原稿カバー30が閉じられると、プラテンガラス80は原稿カバー30に覆われる。原稿カバー30の下面、すなわち、プラテンガラス80と対向する面には弾性板82が設けられている。
【0032】
弾性板82は、原稿カバー30が閉位置にあるときプラテンガラス80に当接する。弾性板82は、プラテンガラス80上に載置された原稿12を押さえて固定する。弾性板82は、板部材74と、スポンジ部材75とを備える。板部材74は、原稿12から安定した反射光を得るために、全域に渡って白色などの単一色とされている。板部材74は、スポンジ部材75を介して原稿カバー30に取り付けられている。弾性板82は、閉位置にあるとき原稿カバー30の最も下部分に位置する。すなわち、スポンジ部材75を備える弾性板82は、原稿カバー30が閉位置にあるとき、第2CIS95よりも下方に位置する。
【0033】
プラテンガラス80は、例えば透明なガラス板やアクリル板である。プラテンガラス80の左端部には、ADF5を使用して原稿12の画像を読み取る場合の読取領域80Aと、スキャナ部3をFBSとして使用する場合の読取領域80Bとを区画する位置決め部材83が設けられている。位置決め部材83は、プラテンガラス80上に原稿12を載置する場合の位置決め基準である。位置決め部材83の上面には、A4サイズやB5サイズなどの原稿12のサイズに合わせて、載置位置を示す印が付されている。位置決め部材83は、ADF5が用いられる場合には、読取領域80A上を通過する原稿12をADF5内に設けられた搬送路151へ戻すように案内するガイドとして機能する。
【0034】
図3に示されるように、支持台15の内部には、第1画像読取ユニット32が内蔵されている。スキャナ部3がFBSとして使用される場合には、原稿カバー30が開かれて、プラテンガラス80上に原稿12が載置される。そして、原稿カバー30が閉じられて、原稿12がプラテンガラス80上に固定される。第1画像読取ユニット32がプラテンガラス80の下方を移動しつつプラテンガラス80に載置された原稿12の画像を読み取る。
【0035】
第1画像読取ユニット32は、第1CIS85と、細長長方体状のCISキャリッジ86とを有している。CISキャリッジ86は、その上側に担持するようにして第1CIS85を搭載している。これにより、第1CIS85がプラテンガラス80の下面に対向される。第1CIS85は、搬送路151における湾曲路157より搬送向き17の上流に位置している。第1CIS85は、搬送路151の下方から原稿12の画像を光学的に読み取る。第1CIS85は、LEDなどの光源を発光させて原稿12に光を照射し、原稿12からの反射光をレンズにより光電変換素子に導き、光電変換素子が反射光強度に応じた電気信号を出力するいわゆる密着型のラインイメージセンサである。第1CIS85は、CISキャリッジ86に搭載されて、プラテンガラス80の下方を往復動される。
【0036】
図2(A)において、筐体10の上端部の左右方向9に渡ってガイドシャフト87が架設されている。第1画像読取ユニット32は、CISキャリッジ86がガイドシャフト87に嵌め合わされることにより、プラテンガラス80の下方をCISキャリッジ86の長手方向に直交する方向(左右方向9)に円滑に移動可能に支持される。ガイドシャフト87に沿ってCISキャリッジ駆動機構88が設けられている。CISキャリッジ駆動機構88は、プーリ間にタイミングベルト89が架設されたものである。CISキャリッジ86は、CISキャリッジ駆動機構88のタイミングベルト89に固定されており、タイミングベルト89の周運動によって往復動される。これにより、スキャナ部3がFBSとして使用される場合に、CISキャリッジ86をプラテンガラス80の下面に平行に移動させることができ、その際に、CISキャリッジ86に搭載された第1CIS85にプラテンガラス80上に載置された原稿12の画像を読み取らせることができる。
【0037】
図2(B)において、スキャナ部3の上部の原稿カバー30には、ADF原稿トレイ33およびADF排出トレイ34が上下二段に構成されている。
【0038】
図2(B)において、ADF原稿トレイ33は、読取処理前で未搬送の原稿12を上面で支持する。
図1において、詳細には、ADF原稿トレイ33は、原稿カバー30の上面においてADFカバー153より右側の略全域を占める。ADF原稿トレイ33の上面は、左下がりの緩やかな傾斜面になっている。
【0039】
図2(B)において、ADF原稿トレイ33には、二個一対のADF原稿ガイド93が設けられている。各ADF原稿ガイド93は、前後方向8に互いに離間しており、前後にスライド可能である。ADF原稿ガイド93は、ADF原稿トレイ33から上方へと突出して、ADF原稿トレイ33に載置される原稿12の前後位置を規制する。ADF原稿ガイド93は、ラック・ピニオンなどの周知の連動機構により、いずれか一方のADF原稿ガイド93をスライド移動させると、他方のADF原稿ガイド93も連動して相反する方向へスライド移動する。
【0040】
図1において、ADF排出トレイ34は、二個一対の第1部材34A、および第2部材34Bを有している。
【0041】
図2(B)において、二個の第1部材34Aは、庇状の平板であって、二個のADF原稿ガイド93と一体であり、矢印P31,P32で示すように、二個のADF原稿ガイド93とともに前後に移動する。二個の第1部材34Aは、二個のADF原稿ガイド93の上端から、スキャナ部3の前後中央に向けて延出する。各第1部材34Aの上面は、互いに同じ上下位置で略水平に拡がっている。
図2(B),
図3に示すように、各第1部材34Aの上面は、上下方向7において下側排出シュート部178の上面より下方に位置する。各第1部材34Aの上面は、下側排出シュート部178の上面と同じ上下位置でもよい。
【0042】
両第1部材34Aは、排出路160を通じてADF5から排出された原稿12を支持する。原稿12は、両第1部材34Aの上面によりガイドされつつ、搬送ローラ171から与えられる搬送力により右方へと搬送される。
【0043】
図1において、第2部材34Bは、左右方向9において二個の第1部材34Aの右隣りに位置する。第2部材34Bの前端および後端は、ADF原稿トレイ33の前端および後端と概ね同じ前後位置にある。第2部材34Bは、各第1部材34Aの上面と同じ上下位置で略水平に拡がる上面を有する。ここで、第1部材34Aの左右寸法および第2部材34Bの左右寸法の合計は、原稿12の搬送向き17における寸法より短い。
【0044】
第2部材34Bは、駆動伝達機構182(
図4参照)から伝達される駆動力により、第1位置P51(
図6参照)から第2位置P52(
図7参照)へと、矢印P4に示すように右方に移動する。なお、第2部材34Bは、ユーザ操作により、第2位置P52から第1位置P51へと移動可能である。
【0045】
駆動伝達機構182は、
図5(A),
図5(B)に示すように、第1入力ギヤ182Aおよび第2入力ギヤ182Bと、第1太陽ギヤ182Cおよび第2太陽ギヤ182Dと、第1遊星ギヤ182Eおよび第2遊星ギヤ182Fと、第1出力ギヤ182Gおよび第2出力ギヤ182Hと、ラックギヤ182Iと、を備える。
【0046】
第1入力ギヤ182Aおよび第2入力ギヤ182Bは、LFモータ110の出力軸に設けられたギヤと噛合する。第1太陽ギヤ182Cには、第1入力ギヤ182Aから伝達ギヤ182Jを介して駆動力が伝達される。第1遊星ギヤ182Eは、第1太陽ギヤ182Cと噛合している。第1遊星ギヤ182Eの回転軸は、第1太陽ギヤ182Cの回転軸と第1リンク部材182Kにより接続されている。第1遊星ギヤ182Eは、第1太陽ギヤ182Cおよび第1出力ギヤ182Gの双方と噛み合う第1噛合位置P41(
図5(A)の位置)と、第1出力ギヤ182Gから離間する第1離間位置P42(
図5(B)の位置)との間を移動可能である。第1出力ギヤ182Gは、分離ローラ166の回転軸に設けられている。
【0047】
第2太陽ギヤ182Dは、第2入力ギヤ182Bと噛合する。第2遊星ギヤ182Fは、第2太陽ギヤ182Dと噛合している。第2遊星ギヤ182Fの回転軸は、第2太陽ギヤ182Dの回転軸と第2リンク部材182Mにより接続されている。第2遊星ギヤ182Fは、第2太陽ギヤ182Dおよび伝達ギヤ182Nの双方と噛み合う第2噛合位置P43(
図5(B)の位置)と、伝達ギヤ182Nから離間する第2離間位置P44(
図5(A)の位置)との間を移動可能である。伝達ギヤ182Nは、第2出力ギヤ182Hと噛合する。
【0048】
ラックギヤ182Iは、第2部材34Bに形成されており、第2出力ギヤ182Hと噛合している。ラックギヤ182Iは、第2出力ギヤ182Hの回転による駆動力を、第1位置P51から第2位置P52への向きの力(即ち、右向きの力)に変換して、第2部材34Bに伝達する(
図5(B)参照)。
【0049】
LFモータ110は、コントローラ100の制御により正転または逆転する。
図5(A)において矢印A1で示すように、LFモータ110の正転向きは、時計回りの向きであり、
図5(B)において矢印A2で示すように、LFモータ110の逆転向きは、反時計回りの向きである。
【0050】
第1遊星ギヤ182Eは、LFモータ110の正転時、第1太陽ギヤ182Cおよび第1出力ギヤ182Gの双方と噛み合う第1噛合位置P41(
図5(A)の位置)で回転し、第1太陽ギヤ182Cからの駆動力を第1出力ギヤ182Gへと伝達する。この駆動力により、第1出力ギヤ182Gは、搬送路151における搬送向き17への搬送力を原稿12に与えるように、分離ローラ166を回転させる。なお、他の出力ギヤ(図示せず)により、吸入ローラ164、レジストローラ168および搬送ローラ171は、分離ローラ166とともに回転可能であってもよい。第1遊星ギヤ182Eは、LFモータ110の逆転時、第1出力ギヤ182Gから離間する第1離間位置P42(
図5(B)の位置)で回転し、第1太陽ギヤ182Cからの駆動力を第1出力ギヤ182Gへと伝達しない。
【0051】
第2遊星ギヤ182Fは、LFモータ110の逆転時、第2太陽ギヤ182Dおよび伝達ギヤ182Nの双方と噛み合う第2噛合位置P43(
図5(B)の位置)で回転し、第2太陽ギヤ182Dからの駆動力を、伝達ギヤ182Nを介して第2出力ギヤ182Hへと伝達する。この駆動力により、第2出力ギヤ182Hは、回転する。第2遊星ギヤ182Fは、LFモータ110の正転時、伝達ギヤ182Nから離間する第2離間位置P44(
図5(A)の位置)で回転する。
【0052】
図6に示すように、第1位置P51において、第2部材34Bの左端は、各第1部材34Aの右端に当接または近接する。第1位置P51の第2部材34Bは、第1部材34Aの方から搬送されてきた原稿12を支持する。原稿12は、第1位置P51の第2部材34Bの上面によりガイドされつつ、搬送ローラ171の搬送力により右方へと搬送される。搬送ローラ171のニップN1と、第1位置P51の第2部材34Bの右端との左右距離は、原稿12の搬送向き17における寸法より十分に短い。原稿12の先端は、第2部材34Bの右端を通り過ぎると、第2部材34Bの下方にあるADF原稿トレイ33に向かって湾曲する。ADF排出トレイ34上の原稿12の先端寄りの部分(即ち、右端寄りの部分)は、ADF排出トレイ34から垂れ下がるようにして、ADF原稿トレイ33により支持される。
【0053】
図7に示すように、第2位置P52において、第2部材34Bの左端は、各第1部材34Aの右端から右方に離間する。これにより、第1部材34Aと、第2部材34Bとの間には、原稿12が通過可能な隙間G1が形成される。隙間G1は、第1部材34Aから搬送向き17へと送られる原稿12の先端が第2部材34Bより下方まで垂れ下がり、第2部材34B上に到達しないような間隔である。第1部材34Aの方から搬送されてきた原稿12の先端は、隙間G1に到達すると、第2部材34Bの下方にあるADF原稿トレイ33に向かって湾曲する。第1部材34Aから隙間G1を介してADF原稿トレイ33へと原稿12をスムーズに搬送するため、第2部材34Bの上面の左端と、その下面の左端とは、正面視で右斜め上へと凹む湾曲面34Cにより連続している。なお、湾曲面34Cに代えて、正面視で右下がりの傾斜面で、第2部材34Bの上面と下面の左端とが連続していてもよい。
【0054】
図1において、ADF5の筐体は、原稿カバー30と一体に成形されたADF本体152と、ADF本体に対して回動可能に設けられたADFカバー153とによって構成される。ADFカバー153は、主にADF5の筐体の上面を形成している。ADFカバー153は、ADF本体152に対してADF本体152の側方(
図1の左側)に設けられた不図示の回動軸を中心として図中の矢印P2方向に回動される。これにより、ADF5の内部の一部が露出される。
【0055】
図3に示すように、ADF5の内部には、搬送路151において、ADF原稿トレイ33からADF排出トレイ34へと向かう搬送向き17に原稿12を搬送する搬送機構16が設けられている。搬送機構16は、吸入ローラ164および吸入ニップ片165、分離ローラ166および分離ニップ片167、レジストローラ(以下、「Rローラ」とも称す)168およびピンチローラ169、ならびに搬送ローラ171およびピンチローラ172(ニップ部材の一例)を有する。
【0056】
搬送路151は、断面視で横向き略U字形状に形成されており、傾斜路159、湾曲路157、および排出路160に区分される。搬送路151は、搬送機構16の他、各種ガイド部材により形成される。
【0057】
ADF原稿トレイ33から搬送路151に連続するようにして、吸入シュート部154が形成されている。ADF5の吸入シュート部154は、ADF原稿トレイ33上の空間と連続するように形成されている。吸入シュート部154は、上面を原稿12のガイド面とし、上下方向7に所定幅の通路として構成されている。ADF原稿トレイ33に載置された原稿12において下方を向く面を第1面51とし、上方を向く面を第2面52とすると、画像が読み取られる原稿12は、第1面51を下向きにした状態で、搬送向き17における先端を吸入シュート部154に挿入するようにして、ADF原稿トレイ33上に載置される。
【0058】
吸入シュート部154には、複数のローラ体等で構成されるシート供給機構が設けられている。シート供給機構は、吸入ローラ164およびこれに圧接される吸入ニップ片165と、分離ローラ166およびこれに圧接される分離ニップ片167とを有する。なお、各ローラやニップ片の構成はシート供給機構の単なる一例であり、ローラの数や配置を変更したり、各ニップ片に代えてピンチローラを用いたりする等、その他の公知のシート供給機構に変更できることは勿論である。
【0059】
吸入ローラ164は、ADF原稿トレイ33の前後中央付近に沿って回転可能に設けられている。図示はされていないが、吸入ローラ164は、ローラ軸のキーに嵌合するキー溝を有するが、このキー溝の周方向の幅がキーの幅に対して充分に長い。したがって、吸入ローラ164は、ローラ軸に対して約1周程度の空転が可能である。
【0060】
分離ローラ166は、吸入ローラ164から原稿12の搬送向き17の下流へ隔てられた位置に回転可能に設けられている。吸入ローラ164および分離ローラ166は、LFモータ110(
図4参照)からの駆動力が伝達されて回転駆動される。
【0061】
吸入ニップ片165は、吸入ローラ164の対向位置に、吸入ローラ164と接離する方向へ上下動可能に設けられている。吸入ニップ片165は、不図示のバネ部材により下方へ付勢されており、原稿12をニップしない状態で吸入ローラ164に接触されている。
【0062】
分離ニップ片167は、分離ローラ166の対向位置に、分離ローラ166と接離する方向へ上下動可能に設けられている。分離ニップ片167は、不図示のバネ部材により下方へ付勢されており、原稿12をニップしない状態で分離ローラ166のローラ面に圧接されている。
【0063】
搬送路151の傾斜路159は、左右方向9において、分離ローラ166から読取領域80Aの出口付近までの範囲内で概ね左斜め下方に緩やかに傾斜する。ADF原稿トレイ33から送り出された原稿12は強く湾曲されることなく傾斜路159を円滑に案内される。
【0064】
傾斜路159には、搬送向き17の上流から下流に向かって、Rローラ168およびピンチローラ169、原稿センサ116、位置決め部材83、第2画像読取ユニット94、原稿ガイド173、ならびに第1画像読取ユニット32が配置されている。
【0065】
ピンチローラ169は、傾斜路159の幅方向(前後方向8)に軸方向を一致させて設けられている。ピンチローラ169は、ローラ面の一部を傾斜路159に露出するようにして、回転可能に設けられている。
【0066】
傾斜路159を挟んでピンチローラ169に対向する位置にRローラ168が設けられている。Rローラ168は、傾斜路159の幅方向(前後方向8)に軸方向を一致させて設けられている。Rローラ168はADF本体152に回転可能に支持されており、そのローラ面の一部が傾斜路159に露出されている。
【0067】
ピンチローラ169は不図示のコイルバネなどの弾性部材によってRローラ168側へ付勢された状態で支持されており、傾斜路159において、ピンチローラ169のローラ面がRローラ168のローラ面に圧接されている。Rローラ168は、駆動伝達機構182(
図5(A),
図5(B)を参照)を介してLFモータ110(
図4参照)と連結されており、LFモータ110からの駆動力が伝達されて回転駆動される。Rローラ168の外径は、ピンチローラ169の外径よりも十分に大きい。
【0068】
傾斜路159において、Rローラ168およびピンチローラ169の下流には原稿センサ116が位置する。原稿センサ116は、Rローラ168およびピンチローラ169によって送られた原稿12の先端および後端を示す検知信号を出力する。
【0069】
傾斜路159において、原稿センサ116の下流に第2画像読取ユニット94が位置する。第2画像読取ユニット94は、第2CIS95と、プラテン96と、原稿支持部材97とを有している。第2画像読取ユニット94は、原稿12の第2面52を読み取る。
【0070】
第2CIS95は、プラテン96の上面に対向して配置されている。第2CIS95は、搬送路151における第1CIS85よりも搬送向き17の上流に位置している。第2CIS95は、原稿12の画像を搬送路151の上方から光学的に読み取る。第2CIS95は、直方体形状であり、プラテン96の上面に載置されている。
【0071】
プラテン96は、傾斜路159よりも上方に位置する。プラテン96は所定の厚みを有する板状である。プラテン96の下面は、傾斜路159を搬送される原稿12に対して平行になる。プラテン96は、読取面120と、上流端121と、下流端122とを有している。
【0072】
読取面120は、搬送向き17に沿う。読取面120は、傾斜路159を搬送される原稿12の第2面52に対して平行である。
【0073】
上流端121は、第2CIS95の搬送向き17における上流側の端である。また、下流端122は、第2CIS95の搬送向き17における下流側の端である。上流端121は、搬送向き17において下流端122よりも上方に位置している。
【0074】
原稿支持部材97は、搬送向き17の上流側の端部を軸(前後方向8に沿っている。)にして回動可能に支持されている。原稿支持部材97は、プラテン96と接離する方向へ回動可能に設けられている。原稿支持部材97は、不図示のバネ部材により読取面120に向かって付勢されている。外力が付与されていない状態において、原稿支持部材97は、搬送路151を挟んで第2CIS95の読取面120と対向する位置にある。
【0075】
傾斜路159においては、第2画像読取ユニット94の搬送向き17の下流に位置決め部材83が位置する。位置決め部材83の左端部(搬送向き17の下流端部)は、搬送向き17へ向かって下方に傾斜する傾斜面である。位置決め部材83は、第2画像読取ユニット94を通過した原稿12を、プラテンガラス80と原稿ガイド173との間へ案内する。
【0076】
傾斜路159において、位置決め部材83の搬送向き17の下流に第1画像読取ユニット32が位置する。第1画像読取ユニット32は、原稿12の第1面51を読み取る。なお、第1画像読取ユニット32は、ADF5による画像読取りにおいて、位置決め部材83の搬送向き17の下流に位置していればよい。
【0077】
原稿ガイド173は、原稿カバー30(
図1参照)の第1画像読取ユニット32に対向する位置に設けられている。原稿ガイド173は、読取領域80Aに対向する水平部分と、当該水平部分の両端から上流側および下流側の上方に延びる傾斜部分とを有している。原稿ガイド173は、ADF本体152に固定されたバネ部材によって読取領域80Aへ付勢されている。前後方向8における原稿ガイド173の水平部分の両端部には凸部が形成されている。凸部が読取領域80Aに当接することにより、原稿ガイド173の水平部分と読取領域80Aとの上下方向7の間に原稿12が通過可能な隙間が形成される。
【0078】
搬送路151の湾曲路157は、読取領域80Aの出口付近から始まり、上方へ向かって延びつつ
図3の左方向から右方向に大きく反っている。湾曲路157の搬送向き17の下流端は、排出路160と連続する。湾曲路157は、搬送ローラ171を内側の搬送ガイド面とし、ADF本体152およびADFカバー153を外側搬送ガイド面として形成されている。
【0079】
湾曲路157には、搬送ローラ171とピンチローラ172とが設けられている。搬送ローラ171は湾曲路157の湾曲内側に位置しており、ピンチローラ172は湾曲路157の湾曲外側に位置している。搬送ローラ171およびピンチローラ172は、ローラ面の一部が湾曲路157に露出している。
【0080】
ピンチローラ172は、不図示のコイルバネなどの弾性部材によって搬送ローラ171側へ付勢されている。これにより、湾曲路157において、ピンチローラ172のローラ面が搬送ローラ171のローラ面に圧接され、搬送ローラ171およびピンチローラ172の当接部分に、原稿12を挟むためのニップN1が形成される。搬送ローラ171は、不図示の駆動伝達機構を介してLFモータ110(
図4参照)と連結されており、LFモータ110からの駆動力が伝達されて回転駆動される。
【0081】
図3において、スキャナ部3は、上側排出シュート部158、下側排出シュート部178、およびバネ片190を備える。
図3では、1つのバネ片190だけが示されている。
【0082】
図3において、上側排出シュート部158は、ADF本体152と一体であり、ADF本体152の前壁152Aおよび後壁152B(
図1参照)の間で左右に延びるガイド部材である。上側排出シュート部158の下端は、湾曲路157の下流端および排出路160の各上側を形成する。上側排出シュート部158の下端は、左右方向9において、ピンチローラ172の直ぐ下流において、バネ片190の上り傾斜面に向けて下向きに突出する第1突出部材158A(
図6参照)をなしている。上側排出シュート部158の下端は、第1突出部材158Aの右端から、上側排出シュート部158の右端までの範囲内では、概ね真直ぐに右方へと延びている。
【0083】
下側排出シュート部178は、ADF本体152の前壁152Aおよび後壁152Bの間で左右に延びるガイド部材である。下側排出シュート部178は、上下方向7において上側排出シュート部158より下方に位置する。この位置で、下側排出シュート部178の上端は、左右方向9において搬送ローラ171の右端からADF排出トレイ34の右端の間の範囲内で、概ね水平に拡がっている。下側排出シュート部178は、上端により排出路160の下側を形成する。
【0084】
各バネ片190は、可撓性を有するシート材で作製される。シート材の材料としては、厚さ0.2mm~1.0mm程度の合成樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)がある。バネ片190は、正面視でギリシャ文字のΛのような形状であり、ニップN1の出口から第1突出部材158Aに向かって右斜め上方に延びる上り傾斜面を有する。各バネ片190は、第1突出部材158Aより右方の位置で下方へと屈曲して下側排出シュート部178に至る。
【0085】
[スキャナ部3の駆動制御]
図4は、複合機1のコントローラ100およびその周辺デバイスの構成を示している。コントローラ100は、スキャナ部3のみでなくプリンタ部2も含む複合機1の全体動作を統括して制御するものであるが、本実施形態の説明においては、
図4では、プリンタ部2の構成要素は省略されている。コントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)104を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス105を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)106に接続されている。
【0086】
ROM102には、複合機1の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。EEPROM104には、上記プログラムに従った処理に用いられる各種データが格納されている。RAM103は、CPU101が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域またはデータやプログラムの展開領域として使用される。
【0087】
CPU101は、コントローラ100を構成する周辺デバイス、或いはコントローラ100により制御される被制御機器を統括的に制御するものである。CPU101によって、ROM102に格納されたプログラムや、RAM103またはEEPROM104に格納されたデータが読み出され、上記プログラムに従った演算が行われる。
【0088】
ASIC106は、CPU101からの指令に従い、スキャナ部3のキャリッジモータ(「CRモータ」とも称す)108およびADF5のLF搬送モータ(「LFモータ」とも称す)110それぞれに通電する相励磁信号等を生成して、信号をCRモータ108のCR駆動回路107およびLFモータ110のR駆動回路109に付与する。CR駆動回路107およびR駆動回路109を介して駆動信号がCRモータ108およびLFモータ110に通電されることにより、CRモータ108およびLFモータ110の回転制御が行われる。
【0089】
CR駆動回路107は、スキャナ部3のCISキャリッジ86に接続されたCRモータ108を駆動させるものである。CR駆動回路107は、ASIC106からの出力信号を受けて、CRモータ108を回転するための電気信号を生成する。電気信号を受けたCRモータ108が回転し、CRモータ108の回転力がCISキャリッジ駆動機構88を介して、CISキャリッジ86へ伝達されることによりCISキャリッジ86が移動される。
【0090】
R駆動回路109は、ADF5の吸入ローラ164、分離ローラ166、Rローラ168および搬送ローラ171に接続されたLFモータ110を駆動させるものである。R駆動回路109は、ASIC106からの出力信号を受けて、LFモータ110を回転するための電気信号を生成する。電気信号を受けたLFモータ110が回転し、LFモータ110の回転力がギヤや駆動軸等で構成される周知の駆動機構を介して、吸入ローラ164、分離ローラ166、Rローラ168および搬送ローラ171へ伝達される。
【0091】
LFモータ110の正転は、駆動伝達機構182を介して、分離ローラ166を回転させる。LFモータ110の逆転は、駆動伝達機構182を介して、第2部材34Bを第1位置P51から第2位置P52へと移動させるために伝達される。
【0092】
ASIC106には、スキャナ部3において原稿12の画像読取りを行う第1CIS85および第2CIS95が接続されている。ASIC106は、CPU101の指令に基づいて、光源から光を照射するための電気信号や光電変換素子から画像データを出力するためのタイミング信号を第1CIS85に付与する。第1CIS85および第2CIS95は、これら信号を受けて、所定のタイミングで原稿12に光を照射し、光電変換素子により変換された画像データを出力する。
【0093】
ASIC106には、複合機1に所望の指令を入力する操作ボタン35を制御するパネルゲートアレイ(パネルG/A)111が接続されている。パネルゲートアレイ111は、操作パネル6の操作ボタン35の押下を検出して、所定のコード信号を出力する。このキーコードは、複数の操作ボタン35に対応して割り当てられている。CPU101は、パネルゲートアレイ111から所定のキーコードを受信すると、所定のキー処理テーブルに従って、実行すべき制御処理を行う。キー処理テーブルは、キーコードと制御処理とを対応させてテーブル化したものであり、例えば、ROM102に記憶されている。
【0094】
ASIC106には、液晶ディスプレイ(LCD)36の画面表示を制御するLCDコントローラ112が接続されている。LCDコントローラ112は、CPU101の指令に基づいて、液晶ディスプレイ36にプリンタ部2またはスキャナ部3の動作に関する情報を画面に表示させる。
【0095】
ASIC106には、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部18、コンピュータとパラレルケーブルまたはUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース113およびUSBコネクタ14が接続されている。
【0096】
ASIC106には、ADF5内の搬送路151(
図3参照)において原稿12の先端および後端を検出するための原稿センサ116が接続されている。
【0097】
ASIC106には、位置センサ183が接続されている。位置センサ183は、フォトインタラプタや接触センサ等であり、第2部材34Bが第1位置P51に位置しているか否かにより振幅値が異なる検知信号を出力する。位置センサ183は、
図6,
図7に示されるように、左右方向9において第2部材34Bの左端付近で、ADF本体152の前壁152Aまたは後壁152B(
図1参照)に取り付けられている。
【0098】
[スキャナ部3による片面読取処理]
以下、
図8を参照して、スキャナ部3による片面読取処理について説明する。
【0099】
ユーザは、複数枚の原稿12をADF原稿トレイ33に載置する。複数枚は、後述の枚数閾値Nthを超える枚数である。各原稿12には、片面にのみ画像が記録されているとする。ADF原稿トレイ33に、各原稿12は、画像の記録面が第1面51となるように載置される。次に、ユーザは、片面読取処理を開始させるために、操作パネル6を操作する。このユーザ操作に応じて、スキャナ部3は、
図8の片面読取処理を開始する。
【0100】
図8のS101で、コントローラ100は、CRモータ108を駆動して、CISキャリッジ駆動機構88により第1画像読取ユニット32を読取領域80A(
図3参照)に移動させる。S101で、コントローラ100はさらに、内部に有する枚数カウンタを初期化する。枚数カウンタは、原稿センサ116を通過した原稿12の枚数を示す枚数カウント値をカウントする。
【0101】
S102で、コントローラ100(
図4参照)は、位置センサ183の検知信号により、第2部材34Bが第1位置P51(
図6参照)に位置しているか否かを判定する。コントローラ100は、第2部材34Bが第1位置P51に位置していないと判定したことに応じて、第2部材34Bを第1位置P51に移動させるようユーザに報知するための報知メッセージを液晶ディスプレイ36に表示させて、ユーザが第2部材34Bを第1位置P51に移動させることを待機する。コントローラ100は、第2部材34Bが第1位置P51に位置していると判定したことに応じて、S103を実行する。
【0102】
S103で、コントローラ100は、LFモータ110が正転するように(
図5(A)参照)、LFモータ110を駆動して、原稿12の搬送を開始させる。即ち、コントローラ100は、吸入ローラ164、分離ローラ166、Rローラ168および搬送ローラ171を、これらが原稿12に搬送力を与えるように回転させ始める。吸入ローラ164は、ADF原稿トレイ33により支持される原稿12を、吸入ニップ片165とともにニップし、傾斜路159の下流へと送る。分離ローラ166は、吸入ローラ164から送り込まれた原稿12を分離ニップ片167とともにニップし、ニップした原稿12のうち最下層の一枚を傾斜路159の下流へと送る。Rローラ168は、ピンチローラ169とともに原稿12をニップし、傾斜路159の下流へと送る。これにより、吸入ローラ164、分離ローラ166およびRローラ168は、ADF原稿トレイ33において最も下の原稿12から1枚ずつ順に傾斜路159で搬送させる。
【0103】
S104で、コントローラ100は、原稿センサ116から検知信号を周期的に取得することを開始する。
【0104】
S105で、コントローラ100は、検知信号に基づいて、傾斜路159で搬送される原稿12における搬送向き17の先端を検出する。S105で、コントローラ100はさらに、先頭検出から第1時間経過後に、第1画像読取ユニット32に読取処理を開始させて、第1画像読取ユニット32から画像データを取得し始める。
【0105】
S106で、コントローラ100は、検知信号に基づいて傾斜路159で搬送される原稿12における搬送向き17の後端を検出する。S106で、コントローラ100はさらに、枚数カウント値を1だけ増加させる。S106で、コントローラ100はさらに、後端検出から第1時間経過後に、第1画像読取ユニット32に読取処理を一時停止させる。これにより、コントローラ100は、1枚の原稿12の下面に記録された画像を示す画像データをRAM等に記憶する。
【0106】
S107で、コントローラ100は、片面読取処理を終了するか否かを判定する。コントローラ100は、ADF原稿トレイ33に設けられた原稿センサ(図示せず)の出力信号に基づき、ADF原稿トレイ33に原稿12が残っているか否かを判定する。コントローラ100は、原稿12が残っていない場合、S107でYesと判定し、片面読取処理を終了する。コントローラ100は、原稿12が残っている場合にはS107でNoと判定し、S108を実行する。
【0107】
S108で、コントローラ100は、枚数カウント値が枚数閾値Nth以上か否かを判定する。枚数閾値Nthは、例えば20枚程度に定められる。コントローラ100は、枚数閾値Nth以上でないと判定したことに応じて(S108でNo)、S105を実行する。コントローラ100は、枚数閾値Nth以上であると判定したことに応じて(S108でYes)、S109を実行する。
【0108】
S109で、コントローラ100は、LFモータ110が逆転するように(
図5(B)参照)、LFモータ110を駆動して、駆動伝達機構182により第2部材34Bを第2位置P52(
図7参照)に移動させる。
【0109】
[片面読取処理における原稿12の搬送]
以下、最初に読取処理の対象となる原稿12を、単に「1枚目」とも称する。2回目以降に読取処理の対象となる原稿12を、単に「2枚目」以降とも称する。
【0110】
上記読取処理より、1枚目は、搬送向き17における先頭から読取領域80Aを通過した後、湾曲路157内で搬送される。その後、1枚目は先頭から搬送ローラ171とピンチローラ172との間に送り込まれる。搬送ローラ171は、ピンチローラ172とともに1枚目をニップして湾曲路157の下流へと送る。これにより、1枚目の先頭は、
図6に示すように、ニップN1から右斜め上方に送り出された後、第1突出部材158Aに当接する。その結果、1枚目の先頭の向きは、右斜め下方へと向きを変える。その後、1枚目の先頭は、ニップN1から延びる各バネ片190の上り傾斜面に当接し、上り傾斜面に沿って湾曲路157内で搬送される。この時、各バネ片190は、1枚目から受ける荷重により弾性変形し、下方へ姿勢変化するとともに、1枚目を下方から支持している。1枚目の先頭は、排出路160内で下側排出シュート部178の上面に沿ってガイドされつつ、右方へと搬送される。第2部材34Bは第1位置P51にあるので、1枚目は、排出路160から排出された後、第1部材34Aおよび第2部材34Bの上面上でこれらに沿って案内されつつ右方に搬送される。
【0111】
読取領域80Aを通過した1枚目の後端は、湾曲路157内で搬送された後、ニップN1から送り出される。1枚目の後端は、ニップN1から抜け出て直ぐに、各バネ片190上で停止する。各バネ片190には、1枚目の後端付近の自重による荷重だけが加わる。1枚目の後端付近には、
図6に示されるように、第1突出部材158Aの下端が上方から当接し、第1突出部材158Aより搬送向き17の下流の位置で各バネ片190の上端が下方から当接する。この時、各バネ片190は、原稿12から受ける荷重により下方へと弾性変形する。その結果、原稿12の後端は、バネ片190の上り傾斜面から若干上方に離間する。この点については、2枚目からNth枚目に関しても同様である。
【0112】
2枚目からNth枚目までの各先頭がニップN1から送り出される時、下側排出シュート部178には1枚以上の原稿12が支持されている。また、下側排出シュート部178上の原稿12の後端は、バネ片190の上り傾斜面から離間する。したがって、2枚目からNth枚目の各々が各バネ片190の上り傾斜面に沿って搬送されると、各々の先頭は、下側排出シュート部178により既に支持されている原稿12の後端よりも下方に潜り込む。2枚目からNth枚目の各々は、排出路160内で下側排出シュート部178の上面に沿ってガイドされつつ、右方へと搬送される。第2部材34Bは第1位置P51にあるので、1枚目は、排出路160から排出された後、第1部材34Aおよび第2部材34Bの上面上でこれらに沿って案内されつつ右方に搬送される。この間、下側排出シュート部178により既に支持されている原稿12は、2枚目からNth枚目の各々から右方への力を受けるため、右方に位置ずれしていく。2枚目からNth枚目の各後端は、湾曲路157内で搬送された後、ニップN1から送り出され、その直後に、各バネ片190上で停止する。
【0113】
S108でYesと判定したことに応じて、第2部材34Bは、第1位置P51から第2位置P52へと移動する。この移動により、第1部材34Aの右端と、第2部材34Bの左端との間には、隙間G1が形成される。隙間G1の形成後、Nth枚目までは、原稿12の腰や隙間G1の左右寸法等により、隙間G1から下方に落ち込むことなく、第1部材34Aと、第2部材34Bとにより支持される。
【0114】
Nth+1枚目は、第1部材34Aの右端に到達するまでの間、Nth枚目までと同様に搬送路151内で搬送される。しかし、第2部材34Bが第2位置P52に位置して隙間G1が形成されているため、Nth+1枚目の先端部分は、自重により下方に湾曲し始める。そして、Nth+1枚目は、第2部材34Bの湾曲面34Cにより下方へと誘導されて、ADF原稿トレイ33により支持されつつADF原稿トレイ33上を右方へと搬送される。Nth+2枚目から最後までも、Nth+1枚目と同様に搬送される。
【0115】
上記の通り、Nth+1枚目以降の原稿12において、第1部材34Aの右端よりも搬送向き17の下流の部分(以下、単に「下流部分」とも称す)は、Nth枚目以前の原稿12における下流部分より下方に離間するため、Nth枚目以前の原稿12における同じ部分から荷重を実質的に受けない。
【0116】
実施形態では、各原稿12は、ニップN1よりも搬送向き17の下流では、搬送ローラ171およびピンチローラ172による搬送力によってのみ搬送される。そのため、搬送向き17においてニップN1から遠い下流部分に荷重がかかり過ぎると、その原稿12において下流部分よりもニップN1に近い上流部分で座屈し易くなってしまう。しかし、実施形態のように、Nth+1枚目以降の下流部分に係る荷重が減るため、それら原稿12は座屈し難くなる。
【0117】
ADF排出トレイ34の第1部材34A上には、複数の搬送済の原稿12は、上から順番に、所謂フェイスアップで読取処理順に積載される。フェイスアップは、原稿12における画像の記録面が上向きになることである。片面読取処理の終了後、ユーザは、搬送済の原稿12において第1部材34A上の部分を持ち上げて、搬送済みの原稿12を引き抜く。
【0118】
[両面読取処理]
ADF原稿トレイ33に、両面に画像が記録された複数の原稿12が載置される場合、ユーザは、原稿12の両面を対象とする両面読取処理を開始させるために、操作パネル6を操作する。このユーザ操作に応じて、スキャナ部3は、両面読取処理を開始する。この場合、コントローラ100は、S105でさらに、原稿12の先端を検出した後、第1時間より短い第2時間経過後に、第2画像読取ユニット94にも読取処理を開始させて、第2画像読取ユニット94から画像データを取得し始める。コントローラ100は、S106で、原稿12の後端を検出した後、第2時間経過後に、第2画像読取ユニット94による読取処理を終了させる。
【0119】
[画像データ等の用途]
S106でRAM等に記憶された画像データは、前述の通り、様々な用途(FAX送信等)に用いることができる。
【0120】
[実施形態の作用・効果]
実施形態によれば、スキャナ部3は、枚数閾値Nthを超える枚数の原稿12をADF原稿トレイ33からADF排出トレイ34へと連続的に搬送する場合に、枚数閾値Nthまでの原稿12を、第1部材34A,第2部材34BおよびADF原稿トレイ33の各上面で支持する。一方、スキャナ部3は、枚数閾値Nth+1以降の原稿12を、隙間G1および第2部材34Bの下方を通過させるため、第2部材34Bを用いずに第1部材34AおよびADF原稿トレイ33の各上面で支持する。これにより、原稿12の先端を搬送済の原稿12の下方に潜り込ませるときに、原稿12の先端に加わる搬送済の原稿12の重量を低減できる。
【0121】
[変形例]
以下、実施形態の変形例を説明する。以下の変形例では、実施形態との共通部分の説明を省略または簡素化し、相違点を中心に説明する。
[第1変形例]
実施形態では、ADF原稿トレイ33は、左斜め下方に向けて緩やかに傾斜しており、水平に拡がる第2部材34Bが左右に移動可能であった。しかし、これに加えて、第2部材34Bは、
図9に示すように、搬送向き17の上流端付近で前後方向8に平行な回転軸A24周りに第2部材34Bの搬送向き17における下流端が、ユーザ操作により上方に移動するように構成されてもよい。ユーザは、必要に応じて、第2部材34Bの下流端を上方に移動させた後に、ADF原稿トレイ33に原稿12を載置する。この場合、ADF原稿トレイ33と、第2部材34Bの左端との上下間隔が拡がるため、ユーザは、ADF原稿トレイ33にアクセスし易い。ユーザは、原稿12を載置した後、第2部材34Bの下流端を元の上下位置に戻す。
【0122】
[第2変形例]
実施形態では、第2部材34Bは、左右に移動することで隙間G1を形成していた。しかし、これに限らず、第2部材34Bは、
図10に示すように構成されてもよい。詳細には、第2部材34Bは、第1部材34Aから右方且つ上方に離れた位置に、前後方向8に平行な回転軸A25を有している。回転軸A25の両端は、第2部材34Bが回転軸A25の周方向に回転可能に、ADF本体152の前壁152Aおよび後壁152B(
図1参照)の間で支持される。第2部材34Bは、駆動伝達機構182から伝達される駆動力により、回転軸A25の周方向における第1位置P61および第2位置P62に位置する。
【0123】
第2変形例では、駆動伝達機構182は、
図5(C)に示すように、偏心カム182Lを有しており、LFモータ110等からの駆動力により偏心カム182Lを回転軸A25と平行な回転軸の周方向に回転させることで、第2部材34Bを、第1位置P61および第2位置P62の間で、回転軸A25の周方向に移動させることが可能である。
【0124】
第2部材34Bが第1位置P61にあるとき、第2部材34Bは、回転軸A25から第1部材34Aの右端に向かって延びる。第2部材34Bの上面の左端の上下位置は、各第1部材34Aの上面の右端の上下位置と概ね同じである。第2部材34Bは、第1位置P61にあるとき、第1部材34Aの方から搬送されてきた原稿12を支持する。原稿12は、第1位置P61の第2部材34Bの上面によりガイドされつつ、搬送ローラ171の搬送力により右方へと搬送される。
【0125】
第2部材34Bが第2位置P62にあるとき、第2部材34Bは、回転軸A25から左方に真直ぐに延びる。第2部材34Bの上面の左端は、各第1部材34Aの上面の右端から上方に離間する。これにより、第1部材34Aと右端と、第2部材34Bの左端との間には隙間G2が形成される。ここで、片面読取処理や両面読取処理が可能な原稿12の最大枚数をNmaxとする。隙間G2の上下寸法は、Nmax-Nth枚の原稿12に相当する厚さを超える寸法である。隙間G2の形成後、Nth枚目までの上流部分は、第1部材34Aにより支持される。Nth枚目までの原稿12は、第1部材34Aおよび第2部材34Bの境界付近で上方へと屈曲し、それらの下流部分は第2部材34Bにより支持される。
【0126】
第2部材34Bが第2位置P62にあるとき、第1部材34Aの方から搬送されてきた原稿12は、隙間G2を通過した後、ADF原稿トレイ33により支持されつつADF原稿トレイ33上を右方へと搬送される。
【0127】
上記の構成により、Nth+1枚目以降の原稿12における下流部分は、Nth枚目以前の原稿12における下流部分より下方に離間するため、Nth枚目以前の原稿12における同じ部分から荷重を実質的に受けない。そのため、実施形態と同様に、原稿12の座屈を抑制できる。
【0128】
[第3変形例]
実施形態では、第2部材34Bは、第1部材34Aの右隣り、即ち、搬送向き17の下流に位置していた。しかし、これに限らず、第2部材34Bは、第1部材34Aよりも搬送向き17の上流(即ち、左方)に位置することも可能である。詳細には、
図11に示すように、第2部材34Bは、左右方向9において下側排出シュート部178の右端と、第1部材34Aの左端との間に位置する。
【0129】
第2部材34Bは、下側排出シュート部178の右端に沿って前後方向8に延びる回転軸A26を有している。回転軸A26の両端は、第2部材34Bが回転軸A26の周方向に回転可能に、ADF本体152の前壁152Aおよび後壁152Bの間で支持される。第2部材34Bは、駆動伝達機構182から伝達される駆動力により、回転軸A26の周方向における第1位置P71および第2位置P72に位置する。
【0130】
第2部材34Bが第1位置P71にあるとき、第2部材34Bは、回転軸A26から第1部材34Aの左端に向かって真直ぐに延びる。第2部材34Bの上面の右端の上下位置は、各第1部材34Aの上面の左端の上下位置と概ね同じである。第2部材34Bは、第1位置P71にあるとき、下側排出シュート部178上を搬送向き17へと搬送されてきた原稿12を支持する。原稿12は、第1位置P71の第2部材34Bの上面によりガイドされつつ、搬送ローラ171の搬送力により右方へと第1部材34Aの上面に向かって搬送される。
【0131】
第2部材34Bが第2位置P72にあるとき、第2部材34Bは、回転軸A26からADF原稿トレイ33の上面に向かって右斜め下方へと真直ぐに延びる。この時、第2部材34Bの上面の右端は、各第1部材34Aの上面の左端から下方に離間する。これにより、第2部材34Bと右端と、第1部材34Aの左端との間には隙間G3が形成される。隙間G3の上下寸法は、隙間G2の上下寸法と同様、Nmax-Nth枚の原稿12に相当する厚さを超える寸法である。隙間G3の形成後、Nth枚目までにおいて第1部材34Aおよび第2部材34Bの境界よりも搬送向き17の若干上流側の部分で上方へと屈曲して、第2部材34Bへと乗り上げるような姿勢となる。Nth枚目までにおいて第1部材34Aおよび第2部材34Bの境界よりも搬送向き17の下流側の部分は、第2部材34Bにより支持される。
【0132】
第2部材34Bが第2位置P72にあるとき、下側排出シュート部178上を搬送向き17へと搬送されてきた原稿12は、第2部材34Bにより案内され、隙間G3を通過した後、ADF原稿トレイ33により支持されつつADF原稿トレイ33上を右方へと搬送される。
【0133】
上記の構成により、Nth+1枚目以降の原稿12における下流部分は、Nth枚目以前の原稿12における下流部分より下方に離間するため、Nth枚目以前の原稿12における同じ部分から荷重を実質的に受けない。そのため、実施形態と同様に、原稿12の座屈を抑制できる。
【0134】
第2部材34Bから隙間G3を介してADF原稿トレイ33へと原稿12をスムーズに搬送するため、第1部材34Aの上面の左端と、その下面の左端とは、正面視で右斜め上へと凹む湾曲面34Dにより連続している。なお、湾曲面34Dに代えて、正面視で右下がりの傾斜面で、第1部材34Aの上面の左端と、下面の左端とは連続していてもよい。
【0135】
第3変形例の場合、片面読取処理や両面読取処理の終了後、ユーザは、ADF原稿トレイ33やADF排出トレイ34上における搬送済みの原稿12の先端部分を掴んで引き抜く。
【0136】
第3変形例の第2部材34Bを第1位置P71および第2位置P72の間における揺動に関しては、
図12に示すような様々な機構により実現可能である。
図12(A)では、下側排出シュート部178の下面に沿って左右に移動可能なスライダ201が、
図13に示す駆動伝達機構181により伝達される駆動力により下側排出シュート部178の右端から右方に突出させることで、第2部材34Bが第1位置P71に位置する。一方、
図12(B)では、スライダ201が下側排出シュート部178の右端から左方に控えることで、第2部材34Bが第2位置P72に位置する。
【0137】
図13において、駆動伝達機構181は、入力ギヤ(太陽ギヤ)181A、遊星ギヤ181B、出力ギヤ181Cを有する。入力ギヤ181Aは、遊星ギヤ181Bと噛み合う。また、入力ギヤ181Aおよび遊星ギヤ181Bの回転軸はリンク部材181Dにより繋がっている。出力ギヤ181Cは、遊星ギヤ181Bと噛み合っている。出力ギヤ181Cにおいて回転軸から径方向に離れた部分と、スライダ201とは、リンク部材181Eにより繋がっている。また、スライダ201は、ADF本体152(
図1等を参照)に対し固定されているガイド部材181Fにより、左右にのみ移動し、前後上下に移動しないように規制されている。これにより、LFモータ110が回転することにより、スライダ201は、駆動伝達機構181により左右に移動する。
【0138】
第3変形例の第2部材34Bは、
図12(C)に示すように、偏心カム182Lによっても第1位置P71および第2位置P72の間で、回転軸A26の周方向に移動させることも可能である。
【0139】
なお、第2部材34Bが第1位置P71および第2位置P72のいずれに位置するかに関しては、位置センサ183により検出される。
【0140】
[その他の変形例]
実施形態では、搬送路151はUターンパスであった。しかし、これに限らず、搬送路151はストレートパスであってもよい。
【0141】
実施形態では、
図5(A),
図5(B)に示すように、第2部材34Bの動力源は、吸入ローラ164、分離ローラ166、レジストローラ168および搬送ローラ171の動力源と共通のLFモータ110であった。しかし、これに限らず、第2部材34Bの動力源と、吸入ローラ164、分離ローラ166、レジストローラ168および搬送ローラ171の動力源とは、互いに異なるモータであってもよい。
【符号の説明】
【0142】
1・・・複合機
3・・・スキャナ部
16・・・搬送機構
33・・・ADF原稿トレイ
34・・・ADF排出トレイ
34A・・・第1部材
34B・・・第2部材
85・・・第1CIS
95・・・第2CIS
151・・・搬送路