(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161628
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】表面処理組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/14 20060101AFI20221014BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20221014BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221014BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20221014BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20221014BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20221014BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D7/61
C09D7/63
A61K8/81
A61K8/73
A61K8/20
A61Q5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066576
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 益太郎
(72)【発明者】
【氏名】境原 由次
(72)【発明者】
【氏名】丹治 範文
(72)【発明者】
【氏名】久米 希美
【テーマコード(参考)】
4C083
4J038
【Fターム(参考)】
4C083AB052
4C083AB331
4C083AB332
4C083AD131
4C083AD132
4C083BB53
4C083CC31
4C083CC33
4C083DD27
4C083EE07
4C083FF01
4J038CG131
4J038CH211
4J038CJ131
4J038GA13
4J038HA236
4J038JA35
4J038KA12
4J038MA08
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA06
4J038NA12
4J038PA18
4J038PB01
(57)【要約】
【課題】高い親水化効果を有し、さらに毛髪への適用においては毛髪のシュリンクを抑制することができる表面処理組成物、該表面処理組成物を含有する毛髪処理剤、及び該表面処理組成物を用いる表面処理方法を提供する。
【解決手段】次の成分(A)及び成分(B):(A)少なくともベタイン基とアニオン性基とを含むポリマー、(B)カチオン性ポリマーを含有する、表面処理組成物、該表面処理組成物を含有する毛髪処理剤、及び、該表面処理組成物を固体表面へ適用する工程Iを含む表面処理方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び成分(B):
(A)少なくともベタイン基とアニオン性基とを含むポリマー
(B)カチオン性ポリマー
を含有する、表面処理組成物。
【請求項2】
成分(A)が、下記式(1)で表されるベタイン基を有する構成単位(a1)と、アニオン性基を有する構成単位(a2)とを少なくとも含むポリマーであり、該構成単位(a2)がカルボキシ基含有重合性不飽和モノマー及びスルホン酸基含有重合性不飽和モノマーから選ばれる少なくとも1種由来の構成単位である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【化1】
〔式(1)中、
R
1~R
3は、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1もしくは2のアルキル基を示し、
R
4は、炭素数1以上4以下のアルキレン基、又は-Y
1-OPO
3
--Y
2-を示し、Y
1及びY
2は、同一又は異なって、炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、
R
5及びR
6は、同一又は異なって、炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、
X
1は、酸素原子又はNR
7基を示し、R
7は、水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、
X
2は、R
4が炭素数1以上4以下のアルキレン基のとき、R
17SO
3
-、又はR
17COO
-を示し、R
17は水酸基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、X
2は、R
4が-Y
1-OPO
3
--Y
2-のとき、水素原子、又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示す。〕
【請求項3】
成分(A)の全構成単位中の構成単位(a1)の含有量が70mol%以上である、請求項2に記載の表面処理組成物。
【請求項4】
下記式(I)で表される成分(A)のアニオン量に対する下記式(II)で表される成分(B)のカチオン量の当量比〔(成分(B)のカチオン量)/(成分(A)のアニオン量)〕が0.1以上10以下である、請求項1~3のいずれかに記載の表面処理組成物。
成分(A)のアニオン量=〔成分(A)のアニオン電荷密度(meq/g)〕×〔表面処理組成物中の成分(A)の含有量又は配合量(g)〕 (I)
成分(B)のカチオン量=〔成分(B)のカチオン電荷密度(meq/g)〕×〔表面処理組成物中の成分(B)の含有量又は配合量(g)〕 (II)
【請求項5】
成分(C)として電解質を更に含有する、請求項1~4のいずれかに記載の表面処理組成物。
【請求項6】
成分(C)の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である、請求項5に記載の表面処理組成物。
【請求項7】
成分(B)の重量平均分子量が、1,000以上3,000,000以下である、請求項1~6のいずれかに記載の表面処理組成物。
【請求項8】
成分(A)及び成分(B)の合計含有量が、0.1質量%以上30質量%以下である、請求項1~7のいずれかに記載の表面処理組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の表面処理組成物を含有する、毛髪処理剤。
【請求項10】
毛髪シュリンク抑制剤である、請求項9に記載の毛髪処理剤。
【請求項11】
請求項1~8のいずれかに記載の表面処理組成物を固体表面へ適用する工程Iを含む、表面処理方法。
【請求項12】
工程Iにより固体表面に適用された表面処理組成物を希釈する工程IIを含む、請求項11に記載の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理組成物、該表面処理組成物を含有する毛髪処理剤、該表面処理組成物を用いる表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体表面の処理方法としては、親水化処理、撥水化処理といった固体表面の濡れを制御する方法が知られている。中でも、固体表面の親水化処理は、固体表面の水に対する接触角を低下させ、固体表面を水に対して濡れ易くすることにより、該処理後の固体表面に汚れが付着した際には、汚れが洗浄時に落ち易くなる効果や汚れの再付着を防止する効果が期待できる他、ガラス、鏡等の防曇、帯電防止、熱交換器のアルミニウムフィンの着霜防止、浴槽及びトイレ表面等の防汚性付与等の効果が期待できるため、様々な産業分野で用いられ、固体表面の処理及び方法の検討が進められてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、優れた親水化能力を長期間発揮する親水化処理剤を含有する親水化処理組成物の提供を目的として、ベタイン基を含む構成単位と芳香族基を有する構成単位とを含む共重合体、アニオン性界面活性剤及び水を含有する親水化処理剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、毛髪化粧料の分野においては、毛髪の収縮(シュリンク)により、毛髪がまとまり難くなるといった毛髪の扱い難さが問題となることがある。
特に洗髪直後の濡れた髪の状態では望ましいヘアスタイルが保たれている場合であっても、毛髪の乾燥に伴い毛髪の長さ方向におけるシュリンクが発生し、理想とする長さやボリューム等のヘアスタイルに仕上がらないことがある。
本発明者らの研究によれば、毛髪が濡れた状態では毛髪間に存在する水により毛髪同士を引きつけるメニスカス力が発生し、このメニスカス力によりシュリンクが抑制されているが、毛髪の乾燥により毛髪間のメニスカス力が小さくなることによりシュリンクが発生することが判明した。毛髪間のメニスカス力は、毛髪表面の水に対する接触角を低下させることにより増大させることができる。そのため、毛髪等の固体表面に高い親水性を付与することができる表面処理組成物が求められている。特に、毛髪表面は疎水性が強いキューティクル片が積層した構造を有する一方で、キューティクル片のエッジ付近は親水性であるため、毛髪表面には疎水的な部位と親水的な部位とが混在し、これらの部位を共に親水化することが求められる。
しかしながら、特許文献1の技術では、種々の固体表面に親水性を付与することができるものの、特に毛髪への適用においては、親水化効果が未だ十分でなく、表面処理組成物の親水化効果の更なる向上が求められている。
本発明は、高い親水化効果を有し、さらに毛髪への適用においては毛髪のシュリンクを抑制することができる表面処理組成物、該表面処理組成物を含有する毛髪処理剤、及び該表面処理組成物を用いる表面処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、少なくともベタイン基とアニオン性基とを含むポリマー、及びカチオン性ポリマーを含有する表面処理組成物により、前記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記[1]~[3]を提供する。
[1]次の成分(A)及び成分(B):
(A)少なくともベタイン基とアニオン性基とを含むポリマー
(B)カチオン性ポリマー
を含有する、表面処理組成物。
[2]前記[1]に記載の表面処理組成物を含有する、毛髪処理剤。
[3]前記[1]に記載の表面処理組成物を固体表面へ適用する工程Iを含む、表面処理方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い親水化効果を有し、さらに毛髪への適用においては毛髪のシュリンクを抑制することができる表面処理組成物、該表面処理組成物を含有する毛髪処理剤、及び該表面処理組成物を用いる表面処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】シュリンク率の測定におけるシュリンク係数(Shrink Coefficient)の算出方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[表面処理組成物]
本発明の表面処理組成物は、次の成分(A)及び成分(B):
(A)少なくともベタイン基とアニオン性基とを含むポリマー
(B)カチオン性ポリマー
を含有する。
【0010】
本発明によれば、高い親水化効果を有し、さらに毛髪への適用においては毛髪のシュリンクを抑制することができる。このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明の表面処理組成物を処理対象物に適用することにより、成分(A)のアニオン性基と成分(B)のカチオン性基の作用により形成されたポリイオンコンプレックスを処理対象物の表面に効果的に吸着させることができ、成分(A)の親水的なベタイン基により処理対象物に高い親水性を付与することができると考えられる。
そして、本発明の表面処理組成物の毛髪への適用においては、上記のとおりポリイオンコンプレックスが処理対象物である毛髪の表面に効果的に吸着し、成分(A)の親水的なベタイン基により毛髪表面に高い親水性を付与することができ、これにより毛髪間のメニスカス力が増大し、毛髪のシュリンクを抑制することができると考えられる。
【0011】
<成分(A)>
成分(A)は、少なくともベタイン基とアニオン性基とを含むポリマーである。
本発明において「ベタイン基」とは、カチオン部位とアニオン部位とを有する官能基であって、該官能基全体としては電荷をもたない官能基を意味する。
ベタイン基のカチオン部位とは、正電荷を帯びた原子団であり、好ましくはカチオン性基である。
本発明において「カチオン性基」とは、カチオン基、又は、イオン化されてカチオン基になり得る基をいう。カチオン性基としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第四級アンモニウム基が挙げられる。これらの中でも、ベタイン基のカチオン部位は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは第四級アンモニウム基である。
【0012】
ベタイン基のアニオン部位とは、負電荷を帯びた原子団であり、好ましくはアニオン性基である。
本発明において「アニオン性基」とは、アニオン基、又は、イオン化されてアニオン基になり得る基をいう。
アニオン性基としては、カルボキシ基(-COOM)、スルホン酸基(-SO3M)、リン酸基(-OPO3M2)等が挙げられる。前記化学式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。
【0013】
ベタイン基は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくはスルホベタイン基、ホスホベタイン基、又はカルボベタイン基であり、より好ましくはスルホベタイン基又はホスホベタイン基であり、更に好ましくはスルホベタイン基であって、これらのベタイン基のカチオン部位は好ましくは第四級アンモニウム基である。
ベタイン基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0014】
成分(A)は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくはベタイン基を側鎖に有するアニオン性ポリマーであり、より好ましくは下記式(1)で表されるベタイン基を有する構成単位(a1)とアニオン性基を有する構成単位(a2)とを少なくとも含むポリマーである。
【0015】
【化1】
〔式(1)中、
R
1~R
3は、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1もしくは2のアルキル基を示し、
R
4は、炭素数1以上4以下のアルキレン基、又は-Y
1-OPO
3
--Y
2-を示し、Y
1及びY
2は、同一又は異なって、炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、
R
5及びR
6は、同一又は異なって、炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、
X
1は、酸素原子又はNR
7基を示し、R
7は、水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、
X
2は、R
4が炭素数1以上4以下のアルキレン基のとき、R
17SO
3
-、又はR
17COO
-を示し、R
17は水酸基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、X
2は、R
4が-Y
1-OPO
3
--Y
2-のとき、水素原子、又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示す。〕
【0016】
〔構成単位(a1)〕
構成単位(a1)は、好ましくは、スルホベタイン基、ホスホベタイン基、又はカルボベタイン基を有する構成単位である。
構成単位(a1)は、1種であってもよく、2種以上の異なる構成単位であってもよい。
構成単位(a1)は、例えば、下記式(1’)で表されるモノマー(a1’)由来の構成単位である。
【0017】
【化2】
〔式(1’)中、R
1~R
6、X
1、X
2は前記と同じである。〕
【0018】
式(1)及び(1’)中、R1~R6、X1、X2の具体例又は好ましい態様は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、以下のとおりである。
R1及びR2は、好ましくは水素原子である。
R3は、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X1は、好ましくは酸素原子である。
R4は、好ましくは炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、更に好ましくは炭素数2のアルキレン基である。
R5及びR6は、好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X2は、R4が炭素数1以上4以下のアルキレン基のとき、R17SO3
-、又はR17COO-を示し、好ましくはR17SO3
-である。R17は水酸基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキレン基又は炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、更に好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、より更に好ましくは炭素数3のアルキレン基である。
X2は、R4が-Y1-OPO3
--Y2-のとき、水素原子、又は炭素数1以上4以下の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1以上4以下の炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。
【0019】
構成単位(a1)は、好ましくは、N-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、N-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン等のスルホベタイン基を有するモノマー;2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等のホスホベタイン基を有するモノマー;N-カルボキシメチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、N-カルボキシメチル-N-(メタ)アクリロイルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン等のカルボベタイン基を有するモノマーから選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、より好ましくはスルホベタイン基を有するモノマー及びホスホベタイン基を有するモノマーから選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、更に好ましくはスルホベタイン基を有するモノマー由来の構成単位であり、より更に好ましくはN-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、及びN-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムベタインから選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、より更に好ましくはN-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン由来の構成単位である。
【0020】
成分(A)の全構成単位中の構成単位(a1)の含有量は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは55mol%以上、より好ましくは60mol%以上、更に好ましくは65mol%以上、より更に好ましくは70mol%以上、より更に好ましくは75mol%以上、より更に好ましくは80mol%以上、より更に好ましくは85mol%以上、より更に好ましくは90mol%以上、より更に好ましくは93mol%以上であり、そして、好ましくは99mol%以下、より好ましくは98mol%以下、更に好ましくは97mol%以下である。
なお、成分(A)の全構成単位中の各構成単位の含有量はNMR等の分析により測定することができる。また、成分(A)の製造時の各モノマーの仕込み比より算出することもできる。
【0021】
〔構成単位(a2)〕
構成単位(a2)は、アニオン性基を有する構成単位であり、好ましくはアニオン性基含有重合性不飽和モノマー由来の構成単位である。
アニオン性基含有重合性不飽和モノマーとしては、カルボキシ基含有重合性不飽和モノマー、スルホン酸基含有重合性不飽和モノマー、リン酸基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。
構成単位(a2)は、1種であってもよく、2種以上の異なる構成単位であってもよい。
【0022】
カルボキシ基含有重合性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
スルホン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-スルホプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
リン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0023】
これらの中でも、構成単位(a2)は、効率的にポリイオンコンプレックスを形成して、親水化効果を高める観点及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは、カルボキシ基含有重合性不飽和モノマー、スルホン酸基含有重合性不飽和モノマー、及びリン酸基含有重合性不飽和モノマーから選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、より好ましくはカルボキシ基含有重合性不飽和モノマー及びスルホン酸基含有重合性不飽和モノマーから選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、更に好ましくはカルボキシ基含有重合性不飽和モノマー由来の構成単位であり、より更に好ましくは(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、及び2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、より更に好ましくは(メタ)アクリル酸由来の構成単位である。
【0024】
成分(A)の全構成単位中の構成単位(a2)の含有量は、効率的にポリイオンコンプレックスを形成して、親水化効果を高める観点及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点、並びに配合安定性及び吸着性の観点から、好ましくは1mol%以上、より好ましくは2mol%以上、更に好ましくは3mol%以上であり、そして、好ましくは45mol%以下、より好ましくは40mol%以下、更に好ましくは35mol%以下、より更に好ましくは30mol%以下、より更に好ましくは25mol%以下、より更に好ましくは20mol%以下、より更に好ましくは15mol%以下、より更に好ましくは10mol%以下である。
【0025】
成分(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(a1)及び構成単位(a2)以外の他の構成単位を含有してもよい。他の構成単位としては、(メタ)アクリル酸エステル、アルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、スチレン系モノマー等のノニオン性のモノマー;カチオン性基を有するモノマーなどの他のモノマー由来の構成単位が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル等の炭素数1以上30以下の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル(アルキレンオキシドの平均付加モル数は好ましくは2以上30以下である。);メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル(アルキレンオキシドの平均付加モル数は好ましくは2以上30以下である。);フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレート等のフェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル(アルキレンオキシドの平均付加モル数は好ましくは2以上30以下である。)などが挙げられる。
【0027】
アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等の炭素数1以上22以下のアルキル基を有するN―アルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン等が挙げられる。
【0028】
カチオン性基を有するモノマーとしては、例えば、後述の成分(B)で例示する式(2’)で表されるモノマーが挙げられ、好ましくは,N,N-(ジアルキルアミノ)アルキル(メタ)アクリル酸又はその四級化物であり、より好ましくはN,N-(ジアルキルアミノ)アルキル(メタ)アクリル酸の四級化物であり、更に好ましくは、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルの四級化物、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチルの四級化物、及び(メタ)アクリル酸3-(ジメチルアミノ)プロピルの四級化物から選ばれる少なくとも1種、より更に好ましくは(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルのジエチル硫酸塩である。
【0029】
成分(A)の全構成単位中の構成単位(a1)及び構成単位(a2)以外の他の構成単位の含有量は、好ましくは30mol%以下、より好ましくは20mol%以下、更に好ましくは10mol%以下、より更に好ましくは5mol%以下、より更に好ましくは3mol%以下、より更に好ましくは1mol%以下であり、他の構成単位の含有量は0mol%であってもよい。
成分(A)は、他の構成単位として、芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル、スチレン系モノマー、フェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル等の芳香族基含有モノマー由来の構成単位を含むものであってもよいが、成分(A)の全構成単位中の芳香族基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、親水化効果の観点から、好ましくは1mol%以下、より好ましくは0.5mol%以下、更に好ましくは0.1mol%以下、より更に好ましくは0.05mol%以下であり、より更に好ましくは、成分(A)は芳香族基含有モノマー由来の構成単位を含まないことが好ましい。
【0030】
成分(A)の全構成単位中の構成単位(a1)及び構成単位(a2)の合計含有量は、好ましくは70mol%以上、より好ましくは80mol%以上、更に好ましくは90mol%以上、より更に好ましくは95mol%以上、より更に好ましくは97mol%以上、より更に好ましくは99mol%以上であり、成分(A)の全構成単位中の構成単位(a1)及び構成単位(a2)の合計含有量は、100mol%であってもよい。
【0031】
成分(A)の全構成単位中の構成単位(a1)と構成単位(a2)とのmol比〔構成単位(a1)/構成単位(a2)〕は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上、より更に好ましくは4以上、より更に好ましくは5以上、より更に好ましくは7以上、より更に好ましくは9以上、より更に好ましくは10以上、より更に好ましくは15以上であり、そして、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、より更に好ましくは25以下である。
【0032】
(成分(A)の製造)
成分(A)の製造方法は特に制限はなく、例えば、下記の(x)、(y)の方法が挙げられる。
(x)前記式(1’)で表されるモノマー(a1’)及び前記アニオン性基含有重合性不飽和モノマーを含む原料モノマーを共重合する方法
(y)下記式(1’-1)で表されるモノマー及び前記アニオン性基含有重合性不飽和モノマーを含む原料モノマーを共重合した後、ベタイン化剤によってベタイン化する方法
これらの中でも、モノマーの入手性及び製造の容易性の観点から、(y)の方法が好ましい。
【0033】
【化3】
〔式(1’-1)中、R
1~R
6、X
1は式(1)と同じであり、好ましい態様も式(1)と同じである。〕
【0034】
(y)の方法を用いる場合であって、例えば構成単位(a1)がスルホベタイン基を有するモノマー由来の構成単位である場合は、前記式(1’-1)で表されるモノマーを含む原料モノマーを重合した後、ベタイン化剤として下記式(1’-2)で表される化合物又は下記式(1’-3)で表される化合物を反応させてベタイン化することができ、中でも、下記式(1’-2)で表される化合物が好ましい。
【0035】
【化4】
〔式(1’-2)中、nは1又は2であり、好ましくは1である。〕
【0036】
Z-R17-SO3M (1’-3)
〔式(1’-3)中、ZはCl又はBr、好ましくはClであり、R17は水酸基を有してもよい炭素数2以上4以下のアルキレン基、好ましくは2-ヒドロキシプロピレン基、MはNa又はKを示す。〕
【0037】
成分(A)の重量平均分子量は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは10,000以上であり、そして、配合安定性及び吸着性の観点から、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、更に好ましくは300,000以下、より更に好ましくは200,000以下である。成分(A)の重量平均分子量は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0038】
成分(A)は、全体としてアニオン性を示すことが好ましい。成分(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で該ポリマー中にベタイン基に含まれるカチオン性基以外のカチオン性基を有するものであってもよい。
成分(A)のアニオン電荷密度は、好ましくは-5meq/g以上、より好ましくは-3meq/g以上、更に好ましくは-2meq/g以上、より更に好ましくは-1meq/g以上、より更に好ましくは-0.5meq/g以上、より更に好ましくは-0.3meq/g以上であり、そして、好ましくは-0.05meq/g以下、より好ましくは-0.1meq/g以下、更に好ましくは-0.15meq/g以下である。
本発明において、成分(A)のアニオン電荷密度は、成分(A)中のアニオン性基のmol数/g×1000(アニオン電荷密度;meq/g)から成分(A)中のカチオン性基のmol数/g×1000(カチオン電荷密度;meq/g)を差し引いた値をいう。
成分(A)のアニオン電荷密度(meq/g)は、ポリマーを構成する構成単位の種類及びモル比率から算出することができる。
なお、ポリマーを構成する構成単位の種類及びモル比率はNMR等の分析により測定することができる。
また、成分(A)は、全体としてアニオン性を示すポリマーを2種以上用いてもよい。この場合のアニオン電荷密度は、それぞれのポリマーのアニオン電荷密度と配合量から加重平均して算出することにより求めることができる。
【0039】
<成分(B)>
本発明の表面処理組成物は、成分(B)としてカチオン性ポリマーを含有する。
本発明において「カチオン性ポリマー」とは、カチオン性基を有するものであり、かつ、全体としてカチオン性を示すポリマーである。
成分(B)は、好ましくはカチオン性基を有する合成ポリマー又は天然由来ポリマー、及びこれらの塩から選ばれる1種以上である。
【0040】
カチオン性基を有する合成ポリマーとしては、具体的には、ポリ〔メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩〕、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩/ビニルピロリドン共重合体、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体等の第四級化ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸塩重合体;ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸/アクリルアミド共重合体等のジアリル第四級化アンモニウム塩重合体;ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体;ビニルピロリドン/アルキルアミノ(メタ)アクリレート共重合体;ビニルピロリドン/アルキルアミノ(メタ)アクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体;ビニルピロリドン/(メタ)アクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体;アルキルアクリルアミド/(メタ)アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体;ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン/アジピン酸共重合体;カチオン化ポリビニルアルコール、並びに特開昭53-139734号公報及び特開昭60-36407号公報に記載されているカチオン性ポリマー等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0041】
中でも、前記合成ポリマーは、好ましくは下記式(2)で表されるカチオン性基を有する構成単位(b1)を含むポリマーである。
【0042】
【化5】
〔式(2)中、
R
8~R
10は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基を示し、
X
3は、酸素原子又はNR
18基を示し、R
18は、水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、
R
11は、炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、
X
4は、N
+R
12R
13R
14X
5又はNR
15R
16を示し、R
12~R
16は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、X
5は陰イオンを示す。〕
【0043】
構成単位(b1)は、例えば、下記式(2’)で表されるモノマー(b1’)由来の構成単位である。
【0044】
【化6】
〔式(2’)中、R
8~R
11、X
3、X
4は前記と同じである。〕
【0045】
式(2)及び(2’)中、R8~R11、X3、X4の具体例又は好ましい態様は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、以下のとおりである。
R8及びR9は、好ましくは水素原子である。
R10は、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X3は、好ましくは酸素原子である。
R11は、好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2のアルキレン基である。
X4は、N+R12R13R14X5が好ましく、R12、R13、R14は、前記と同様の観点から、好ましくはそれぞれメチル基又はエチル基であり、より好ましくはR12、R13、及びR14のいずれか一つはエチル基である。
R15及びR16は、親水化効果を高める観点及び4級化反応の容易性の観点から、好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X5は、好ましくはハロゲンイオン又はC2H5SO4
-であり、より好ましくはC2H5SO4
-である。
【0046】
構成単位(b1)としては、効率的にポリイオンコンプレックスを形成して、親水化効果を高める観点及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくはN,N-(ジアルキルアミノ)アルキル(メタ)アクリル酸又はその四級化物に由来する構成単位であり、より好ましくはN,N-(ジアルキルアミノ)アルキル(メタ)アクリル酸の四級化物に由来する構成単位であり、更に好ましくは、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルの四級化物、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチルの四級化物、及び(メタ)アクリル酸3-(ジメチルアミノ)プロピルの四級化物から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、より更に好ましくは(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルのジエチル硫酸塩由来の構成単位である。
【0047】
成分(B)は、構成単位(b1)のみからなる単独重合体又は構成単位(b1)と構成単位(b1)以外の他の構成単位とを含有する共重合体である。成分(B)が共重合体である場合、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれでもよい。
他の構成単位としては、前述の成分(A)で例示した(メタ)アクリル酸エステル、アルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、スチレン系モノマー等のノニオン性のモノマー;アニオン性基含有重合性不飽和モノマーなどの他のモノマー由来の構成単位が挙げられる。
【0048】
成分(B)の全構成単位中の構成単位(b1)の含有量は、効率的にポリイオンコンプレックスを形成して、親水化効果を高める観点及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点、並びに配合安定性及び吸着性の観点から、好ましくは60mol%以上、より好ましくは70mol%以上、更に好ましくは80mol%以上、より更に好ましくは90mol%以上、より更に好ましくは95mol%以上、より更に好ましくは97mol%以上であり、そして、好ましくは100mol%以下、より更に好ましくは100mol%である。
なお、成分(B)の全構成単位中の各構成単位の含有量はNMR等の分析により測定することができる。また、成分(B)の製造時の各モノマーの仕込み比より算出することもできる。
【0049】
カチオン性基を有する天然由来ポリマーは、天然物から抽出、精製等の操作により得られるポリマー及び該ポリマーを化学的に修飾したものであり、ポリマー骨格にグルコース残基を有するものが挙げられる。具体的には、カチオン化グアガム;カチオン化タラガム;カチオン化ローカストビーンガム;カチオン化セルロース;カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース等のカチオン化ヒドロキシアルキルセルロース;カチオン性澱粉などが挙げられる。
【0050】
成分(B)の市販のカチオン性ポリマーとしては、例えば下記が挙げられる。
(メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩/ビニルピロリドン共重合体)
ポリクオタニウム-11:例えばガフカット734(アイエスピー・ジャパン社)、ガフカット755N(アイエスピー・ジャパン社)等
(メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体)
ポリクオタニウム-52:例えばソフケア KG-101W-E:カチオン電荷密度(文献値)0.8meq/g(花王株式会社)等
(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド)
ポリクオタニウム-6:例えばMERQUAT100:カチオン電荷密度(文献値)6.2meq/g(Lubrizol Advanced Materials社)等
(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体)
ポリクオタニウム-22:例えばMERQUAT280:カチオン電荷密度2.2meq/g、MERQUAT295:カチオン電荷密度:5.7meq/g(以上、Lubrizol Advanced Materials社)等
(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体)
ポリクオタニウム-7:例えばMERQUAT550:カチオン電荷密度(文献値)3.1meq/g(Lubrizol Advanced Materials社)等
(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸/アクリルアミド共重合体)
ポリクオタニウム-39:例えばMERQUAT3331PR:カチオン電荷密度0.42meq/g(Lubrizol Advanced Materials社)等
(カチオン化ポリビニルアルコール)
ゴーセネックスK-434(日本合成化学工業(株)製)、CM318:カチオン電荷密度0.35meq/g((株)クラレ)等
(カチオン化グアガム)
Jaguar Excel:カチオン電荷密度1.1meq/g(Solvay(Novecare)社製)等
(カチオン化タラガム)
カチナール CTR-100:カチオン電荷密度1.3meq/g(東邦化学工業(株)製)等
(カチオン化ローカストビーンガム)
カチナール CLB-100(東邦化学工業(株)製)等
(カチオン化ヒドロキシエチルセルロース)
ポリクオタニウム-10(塩化o-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース):例えばユーケアポリマーJR-400:カチオン電荷密度1.3meq/g(ダウケミカル社)、ポイズC-60H:カチオン電荷密度1.1~1.8meq/g(花王(株)製)、ポイズC-150L:カチオン電荷密度0.7~1.1meq/g(花王(株)製)、ポイズC-80M:カチオン電荷密度0.9~1.2meq/g(花王(株)製)
(カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース)
ソフケア C-HP2:カチオン電荷密度0.5meq/g(花王株式会社)等
【0051】
成分(B)の重量平均分子量は、親水化効果を高める観点、処理対象物への吸着性の観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは5,000以上、より更に10,000以上、より更に好ましくは30,000以上であり、そして、表面処理組成物の配合安定性の観点から、好ましくは3,000,000以下である。成分(B)の重量平均分子量は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0052】
成分(B)のカチオン電荷密度は、好ましくは0.1meq/g以上、より好ましくは0.5meq/g以上、更に好ましくは1.0meq/g以上、より更に好ましくは2.0meq/g以上、より更に好ましくは3.0meq/g以上であり、そして、好ましくは6.0meq/g以下、より好ましくは5.0meq/g以下、更に好ましくは4.0meq/g以下である。
本発明において、成分(B)のカチオン電荷密度は、成分(B)中のカチオン性基のmol数/g×1000(カチオン電荷密度;meq/g)から成分(B)中のアニオン性基のmol数/g×1000(アニオン電荷密度;meq/g)を差し引いた値をいう。
成分(B)のカチオン電荷密度は、ポリマーを構成する構成単位の種類及びモル比率から算出することができる。
なお、ポリマーを構成する構成単位の種類及びモル比率はNMR等の分析により測定することができる。
成分(B)は、全体としてカチオン性を示すポリマーであるが、本発明の効果を損なわない範囲で該ポリマー中にアニオン性基を有するものであってもよい。
また、成分(B)は、全体としてカチオン性を示すポリマーを2種以上用いてもよい。この場合のカチオン電荷密度は、それぞれのポリマーのカチオン電荷密度と配合量から加重平均して算出することにより求めることができる。
【0053】
<成分(C)>
本発明の表面処理組成物は、好ましくは成分(C)として電解質を更に含有する。成分(C)を更に含有することにより、成分(A)と成分(B)とが成分(C)により系中に溶解した状態とすることができるため、表面処理組成物中の成分の析出が抑制され、配合安定性を向上させることができると考えられる。また、本発明の表面処理組成物を処理対象物に適用し、水等の洗浄により希釈され、系中の成分(C)の濃度が低下することにより、成分(A)のアニオン性基と成分(B)のカチオン性基の作用により形成されたポリイオンコンプレックスが析出し、該ポリイオンコンプレックスを処理対象物の表面により効果的に吸着させることができ、表面処理組成物の吸着性が更に向上し、親水的なベタイン基により処理対象物に対する親水化効果を更に向上させることができると考えられる。
そして、本発明の表面処理組成物の毛髪への適用においては、上記のとおりポリイオンコンプレックスが処理対象物である毛髪の表面により効果的に吸着し、親水的なベタイン基により毛髪表面に対する親水化効果を更に向上させることができ、これにより毛髪間のメニスカス力が増大し、毛髪のシュリンク抑制効果を更に向上させることができると考えられる。
【0054】
本発明において「電解質」とは、水中でイオン解離する化合物を意味する。
成分(C)としては、成分(A)と成分(B)とが成分(C)により系中に溶解した状態とし、表面処理組成物中の成分の析出を抑制して、配合安定性を向上させる観点から、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基、及びこれらの塩が挙げられる。
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸;ポリグルタミン酸等のポリカルボン酸;グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;メタンスルホン酸、N-メチルタウリン、スルファミン酸、キシレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のスルホン酸;ラウリル硫酸等の硫酸エステル;メチルリン酸、エチルリン酸等の有機リン酸エステルなどが挙げられる。
無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、炭酸、チオシアン酸、リン酸等が挙げられる。
有機塩基としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。
無機塩基としては、カリウム、ナトリウム、リチウムといったアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。また、無機塩基としてアンモニアを用いてもよい。
塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム、塩化アンモニウム、炭酸ナトリウム、リン酸二カリウム、硫酸モノエタノールアミン等が挙げられる。
これらは、それぞれ1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
成分(C)は、表面処理組成物の製造の際には、上記の有機酸又は無機酸と有機塩基又は無機塩基とを配合して、表面処理組成物中にて塩を形成するようにしてもよい。
【0055】
これらの中でも、成分(C)は、配合安定性の観点から、好ましくは塩であり、より好ましくは水溶性無機塩である。水溶性無機塩の20℃における水100gに対する溶解度は、好ましくは10g以上、より好ましくは20g以上、更に好ましくは30g以上である。
成分(C)が、水溶性無機塩であれば、表面処理組成物を処理対象物に適用した後に水洗により系中の成分(C)の濃度を低下させ、該処理対象物の表面に前述のポリイオンコンプレックスを効果的に吸着し、固体表面に高い親水性を付与することができ、特に毛髪表面の適用においては毛髪のシュリンク抑制効果を向上させることができる。当該観点から、成分(C)は、更に好ましくはアルカリ金属塩及び第2族元素の金属塩から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化マグネシウムから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは塩化ナトリウム及び塩化カリウムから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは塩化ナトリウムである。
【0056】
<水性媒体>
本発明の表面処理組成物は、好ましくは水性媒体を含有する。水性媒体としては、水;エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素数6以下の低分子ジオール及びトリオールが挙げられる。中でも、水が好ましい。
【0057】
<他の成分>
本発明の表面処理組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)~(C)以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、両性界面活性剤、酸化防止剤、シリコーン、芳香族アルコール、成分(A)及び(B)以外のポリマー、油剤、ビタミン剤、殺菌剤、抗炎症剤、抗フケ剤、防腐剤、キレート剤、保湿剤、パール剤、セラミド類、香料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0058】
本発明の表面処理組成物の製造は、例えば、成分(A)及び(B)、並びに必要に応じて成分(C)及び他の成分を配合し、公知の撹拌装置等を用いて混合することにより製造できる。本発明の表面処理組成物中の各成分の含有量又は配合量は以下のとおりである。
【0059】
本発明の表面処理組成物中の成分(A)の含有量又は配合量は、親水化効果を高める観点、配合安定性及び吸着性の観点、並びに毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、より更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.7質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下である。
【0060】
本発明の表面処理組成物中の成分(B)の含有量又は配合量は、親水化効果を高める観点、配合安定性及び吸着性の観点、並びに毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、より更に好ましくは0.01質量%以上、より更に好ましくは0.03質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.3質量%以下、より更に好ましくは0.2質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0061】
本発明の表面処理組成物中の成分(A)及び成分(B)の合計含有量又は合計配合量は、親水化効果を高める観点、吸着性の観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは0.0105質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.7質量%以上であり、そして、表面処理組成物の配合安定性及びハンドリング性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1.5質量%以下である。
【0062】
本発明の表面処理組成物中の成分(C)の含有量又は配合量は、配合安定性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、より更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.7質量%以上であり、そして、親水化効果を高める観点、吸着性の観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1.5質量%以下である。
【0063】
本発明の表面処理組成物中の水性媒体の含有量又は配合量は、水性媒体として水を用いる場合には、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下である。
【0064】
下記式(I)で表される成分(A)のアニオン量に対する下記式(II)で表される成分(B)のカチオン量の当量比〔(成分(B)のカチオン量)/(成分(A)のアニオン量)〕は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、より更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは7以下、より更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1.3以下、より更に好ましくは1.1以下である。
成分(A)のアニオン量=〔成分(A)のアニオン電荷密度(meq/g)〕×〔表面処理組成物中の成分(A)の含有量又は配合量(g)〕 (I)
成分(B)のカチオン量=〔成分(B)のカチオン電荷密度(meq/g)〕×〔表面処理組成物中の成分(B)の含有量又は配合量(g)〕 (II)
【0065】
[表面処理方法]
本発明の表面処理方法は、処理対象物として固体表面に前記表面処理組成物を適用することが好ましい。すなわち、本発明の表面処理方法は、前記表面処理組成物を固体表面へ適用する工程Iを含むことが好ましい。
本発明において「固体表面」とは、固体と大気との界面を意味する。
前記固体としては、特に制限はなく、ガラス、陶器、磁器、琺瑯、タイル、セラミックス、木材;アルミニウム、ステンレス、真鍮等の金属;ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、FRP等の合成樹脂;木綿、絹、羊毛等の天然繊維;ポリエステル、ナイロン、レーヨン等の合成繊維;毛髪、爪、歯などが挙げられる。前記固体表面の形状は、特に制限はない。
これらの中でも、前記固体表面は、好ましくは疎水性硬質表面又は毛髪表面である。
本発明において「疎水性硬質表面」とは、接触角が70°以上であることを意味し、「親水性硬質表面」とは70°未満であることを意味する。なお接触角は、実施例に記載の方法で測定することができる。
前記疎水性硬質表面としては、好ましくはセラミックス、金属、及び合成樹脂から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、前記固体表面が毛髪表面である場合には、毛髪のシュリンク抑制効果を向上させることができる。
【0066】
工程Iにおける前記表面処理組成物の固体表面への適用方法は特に制限はないが、例えば、下記の(i)~(iii)の方法が挙げられる。
(i)表面処理組成物に固体を浸漬させる方法
(ii)表面処理組成物を固体表面に噴霧又は塗布する方法
(iii)表面処理組成物を用いて常法に従い固体表面を洗浄する方法
前記表面処理組成物を固体表面に適用する際の周辺環境温度は、親水化効果を高める観点、及び作業容易性の観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
前記(i)の方法における浸漬する時間は、親水化効果を高める観点及び経済性の観点から、好ましくは0.1分以上、より好ましくは0.3分以上、更に好ましくは0.5分以上、より更に好ましくは1分以上であり、そして、好ましくは60分以下、より好ましくは50分以下である。
前記(ii)の方法における噴霧又は塗布する方法は、固体表面の広さ(面積)等に応じて適宜選択できる。また、噴霧した後、スポンジ等を用いて薄く塗りのばしてもよい。
本発明の表面処理組成物の固体表面への適用量は、例えば、疎水性硬質表面の場合、1m2あたり20mL以上1,000mL以下である。
【0067】
本発明の表面処理方法は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、工程Iにより固体表面に適用された表面処理組成物を希釈する工程IIを含むことが好ましい。工程IIにおける希釈は水性媒体を用いて行うことが好ましい。希釈方法としては、例えば、表面処理組成物が適用された固体表面を水性媒体で洗浄する方法が挙げられる。これにより、表面処理組成物が成分(C)を含有する場合には、固体表面に付着した表面処理組成物中に含まれる成分(C)の濃度が低下し、ポリイオンコンプレックスが形成されて析出して固体表面に効果的に吸着し、成分(A)に含まれるベタイン基により固体表面に高い親水性を付与することができる。洗浄に用いる水性媒体は、例えば水が好ましい。該水性媒体として用いる水は、特に限定されず、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を用いることができる。
【0068】
[毛髪処理剤]
本発明の毛髪処理剤は、前記表面処理組成物を含有する。前記表面処理組成物は、毛髪のシュリンク抑制効果に優れるため、前記処理剤を毛髪シュリンク抑制剤として用いることができる。
前記処理剤としては、シャンプー等の毛髪洗浄剤、コンディショナー、トリートメント、染毛剤などの毛髪化粧料が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果を得る観点、及び日常のヘアケア行動により簡単に毛髪のシュリンクを抑制できる観点からはコンディショナーが好ましい。毛髪処理剤の剤型には特に制限はなく、例えば液体状、泡状、ペースト状、クリーム状等の任意の剤型とすることができる。これらの剤型の中でも、前記毛髪処理剤は液体状であることが好ましい。
【0069】
毛髪の表面処理方法は、前記処理剤を毛髪へ適用する工程を含むことが好ましい。前記処理剤の付与方法としては、該処理剤を毛髪に塗布、噴霧又は流延する方法、該処理剤に毛髪を浸漬させる方法等が挙げられる。
前記処理剤を適用する際の毛髪は乾燥状態でも湿潤状態でもよい。
前記処理剤の適用する際の周辺環境温度は、効率よく表面処理を行う観点から、好ましくは5~50℃、より好ましくは15~45℃である。
前記処理剤の適用時間は、好ましくは5秒~60分間、より好ましくは5秒~20分間である。前記処理剤の適用時間とは、前記処理剤を毛髪に塗布、噴霧又は流延する時間、あるいは前記処理剤に毛髪を浸漬させる時間を意味する。
【0070】
毛髪の表面処理方法は、前記処理剤を毛髪へ付与した後、更に該処理剤が適用された毛髪を水性媒体で洗浄する工程を含むことが好ましい。これにより、前記処理剤が成分(C)を含有する場合には、該処理剤中に含まれる成分(C)の濃度が低下し、ポリマーイオンコンプレックスが形成されて析出して毛髪表面に吸着し、成分(A)に含まれるベタイン基により毛髪表面に高い親水性を付与することができる。その結果、毛髪間のメニスカス力が増大し、毛髪のシュリンク抑制効果を高めることができる。前記処理剤が適用された毛髪の洗浄方法は特に制限はなく、例えば水を用いて公知の方法により毛髪を濯ぐことにより行うことができる。
【0071】
本発明の毛髪処理剤の毛髪への具体的な適用方法としては、例えば、毛髪処理剤がシャンプー等の毛髪洗浄剤である場合は、該毛髪洗浄剤を毛髪に塗布し、泡立てて毛髪を洗浄した後、水で洗い流す方法;毛髪処理剤がコンディショナー、トリートメント、染毛剤等の毛髪化粧料である場合は、該毛髪化粧料を毛髪に塗布し、必要に応じて短時間(0.1~5分程度)放置した後に水で洗い流す方法が挙げられる。以上のような工程を日常的に繰り返すことにより、容易に、かつ短期間で毛髪のシュリンクを抑制することができる。
【実施例0072】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、各種測定は、以下の方法により行った。
【0073】
(成分(A)の重量平均分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィー法を用いて下記の測定条件により測定した。
〔測定条件〕
カラム:「TSKgel G4000PWXL」+「TSKgel G2500PWXL」(東ソー(株))
カラム温度:40℃
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1(体積比)
流速:1.0mL/min
検出器:示差屈折率検出器
サンプルサイズ:5mg/mL
標準物質:プルラン
【0074】
(成分(B)の重量平均分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィー法を用いて下記の測定条件により測定した。
〔測定条件〕
カラム:「TSKgel α-M」(東ソー(株)製)を2本直列に連結
カラム温度:40℃
溶離液:0.15mol/LNa2SO4/1質量%CH3COOH水溶液
流速:1.0mL/min
検出器:示差屈折率検出器
サンプルサイズ:5mg/mL
標準物質:プルラン
【0075】
製造例1(ポリマーA1の製造)
(工程1)
内容量500mLの四つ口フラスコにエタノール(富士フイルム和光純薬(株)製)155.38g、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(富士フイルム和光純薬(株)製)77.76g、及びメタクリル酸(富士フイルム和光純薬(株)製)2.24gを入れ、65℃に昇温して還流させた。そこに、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬(株)製)1.29g及びエタノール30.00gを混合させた溶液を添加し、6時間熟成させた後に冷却し、ポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液をヘキサン(富士フイルム和光純薬(株)製)を用いて再沈殿してポリマーを回収した。50℃/20kPaで12時間減圧加熱することで溶媒を留去し、乾燥したポリマーを得た。
(工程2)
内容量200mLの四つ口フラスコに、工程1で得られた乾燥したポリマー20.00g、炭酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)1.59g、エタノール(富士フイム和光純薬(株)製)40.00g、及び水40.00gを添加し、50℃に昇温した。そこに1,3-プロパンスルトン(関東化学(株)製)16.61gを40分かけて滴下して反応を行った。滴下終了後、50℃で5時間熟成させた後に冷却し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をアセトン(富士フイルム和光純薬(株)製)を用いて再沈殿してポリマーを回収し、50℃/20kPaで12時間減圧加熱することで溶媒を留去し、乾燥したポリマーA1(N-(3-スルホプロピル)-N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン/メタクリル酸共重合体)を得た。ポリマーA1の構成単位(a1)の含有量及び構成単位(a2)の含有量、重量平均分子量及び電荷密度は、表1及び表2に示す。
【0076】
製造例2(ポリマーA2の製造)
製造例1において、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(富士フイルム和光純薬(株)製)を75.41g、メタクリル酸(富士フイルム和光純薬(株)製)を4.59g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬(株)製)を1.32g、炭酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)2.13g、及び1,3-プロパンスルトンを16.11gに変更し、ポリマーA2(N-(3-スルホプロピル)-N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン/メタクリル酸共重合体)を得た。ポリマーA2の構成単位(a1)の含有量及び構成単位(a2)の含有量、重量平均分子量及び電荷密度は、表1及び表2に示す。
【0077】
製造例3(ポリマーA3の製造)
製造例1において、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(富士フイルム和光純薬(株)製)を58.60g、メタクリル酸(富士フイルム和光純薬(株)製)を21.40g、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(富士フイルム和光純薬(株)製)を1.54g、炭酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)9.00g、及び1,3-プロパンスルトンを12.52gに変更し、ポリマーA3(N-(3-スルホプロピル)-N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン/メタクリル酸共重合体)を得た。ポリマーA3の構成単位(a1)の含有量及び構成単位(a2)の含有量、重量平均分子量及び電荷密度は、表1及び表2に示す。
【0078】
製造例4(ポリマーB1の製造)
内容量300mLの四つ口フラスコにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩の90%水溶液33.33g及びエタノール(富士フイルム和光純薬(株)製)229.3gを入れ、70℃に昇温して溶液を加熱した。そこに、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬(株)製)0.10g及びエタノール10.00gを混合させた溶液を添加し、3時間反応を行った。その後、78℃に昇温して還流し、2時間熟成を行った。熟成後、溶液を冷却し、アセトン(富士フイルム和光純薬(株)製)を用いて再沈殿してポリマーを回収し、80℃/20kPaで12時間減圧加熱することで溶媒を留去し、乾燥したポリマーB1(ポリ〔メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩〕)を得た。ポリマーB1の重量平均分子量及び電荷密度は、表1及び表2に示す。
なお、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩の90%水溶液は、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(富士フイルム和光純薬(株)製)と硫酸ジエチル(富士フイルム和光純薬(株)製)とをmol比(1:1)で混合して得た。
【0079】
〔表面処理組成物の調製〕
実施例1~13、比較例1~4
表1及び表2に示す配合組成に従って、成分(A)として製造例1~3で得られたポリマーA1~A3、成分(B)として製造例4で得られたポリマーB1又はカチオン性ポリマーB2(カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、花王(株)社製「ポイズ C-80M」)、成分(C)として塩化ナトリウム、及び水を混合して、各表面処理組成物を調製し、以下の評価を実施した。比較例4においては、カチオン性ポリマーに代えてカチオン性界面活性剤(ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、花王(株)製「コータミン24P」、有効成分量27質量%)を用いた。結果を表1及び表2に示す。
なお、表中の各成分の配合量は、いずれも有効成分量(質量%)である。
【0080】
(親水化効果の評価)
以下の方法により、表面処理組成物により表面処理をした基板の接触角を測定し、親水化効果を評価した。
(1)測定用基板の準備
内容量200mLのビーカーに、調製した表面処理組成物10mLを添加し、基板(縦15mm×横25mm×厚さ1mmのポリプロピレン板)を1分浸漬した後、イオン交換水190mLを添加して希釈した。希釈後、基板を液から取り出し、イオン交換水を用いて20秒間洗浄した。その後、乾燥させずに超純水に浸し、水中接触角の測定用基板として下記(2)の測定に用いた。
(2)水中接触角の測定
前記(1)で準備した測定用基板を三態系用の試料台に貼りつけ、超純水を入れた三態系用のセルに入れた。測定用基板をセットしたセルを全自動接触角測定計(協和界面科学(株)製「DM-701」)のステージに配置し、1μLの空気を付着させて0.2秒後の水中接触角の値を接線法により求めた。
接触角の値は、得られた水中接触角の値を180°から差し引いた値を用いる。接触角の値が小さいほど、親水化効果が高い。
【0081】
(配合安定性の評価)
調製した表面処理組成物10mLの調製直後の表面処理組成物の状態を目視観察し、下記の評価基準に従い、配合安定性を評価した。下記の評価基準で3であれば配合安定性に優れる。下記の評価基準で3であれば実用上特に好適であり、下記の評価基準で2であれば実用上好適である。
〔評価基準〕
3:析出物が認められず、均一で透明な状態である。
2:析出物が認められるが、微細で全体に均一に分散し、白濁した状態である。
1:析出物が認められ、局所的に凝集(分離)又は沈殿している。
【0082】
(吸着性の評価)
調製した表面処理組成物10mLにイオン交換水190mLを添加して希釈した。希釈後の表面処理組成物の状態を目視観察し、下記の評価基準に従い、吸着性を評価した。下記の評価基準で3であれば吸着性に優れる。下記の評価基準で3であれば実用上特に好適であり、下記の評価基準で2であれば実用上好適である。
〔評価基準〕
3:微細で全体に均一に分散した析出物が認められ、白濁した状態である。
2:析出物が認められず、均一で透明な状態である。
1:粗大な凝集物又は沈殿が認められる。
ここで、本発明の表面処理組成物を用いて処理対象物を処理する際、希釈時にポリイオンコンプレックスが形成されて析出することにより、該ポリイオンコンプレックスが処理対象物に吸着することで親水化処理の効果が高まると考えられる。そのため、希釈時に析出物が微細で全体に均一に分散し、白濁した状態であるものをスコア3とした。また、ポリイオンコンプレックスの析出により凝集物又は沈殿が認められるものは、処理対象物の表面を均一に処理することができないと推察されるため、スコア1とした。
【0083】
(ハンドリング性の評価)
調製した表面処理剤組成物50mLをスクリュー管(株式会社マルエム製 No.7)に入れ、5回上下に振とうし、その直後から目視により消泡するまでの時間を測定し、下記の評価基準により評価した。消泡までの時間が短い程、表面処理組成物の粘度が低く、ハンドリング性に優れる傾向にある。そのため、下記の評価基準でAであれば、処理対象物に表面処理を行う際のハンドリング性に優れる。
〔評価基準〕
A:消泡までの時間が600秒未満
B:消泡までの時間が600秒以上
なお、評価Bである実施例12の表面処理組成物の粘度を、B型粘度計(東機産業(株)社製「TVB-10形」)を用いて測定したところ、50mPa・sであった。測定条件は、サンプル量:50mL、SPINDLE No.:M2、回転数:30rpmで行った。
【0084】
【0085】
【0086】
表1及び表2より、実施例の表面処理組成物は、配合安定性及び吸着性に優れ、比較例のものと比べて接触角が小さく、親水化効果が高いことがわかる。
【0087】
本発明の表面処理組成物を毛髪へ適用した際のシュリンク抑制効果について、以下に示す方法によりシュリンク率を測定し、評価した。
(毛髪のシュリンク抑制効果の評価)
実施例2及び比較例1で調製した各処理液10mLを、1gのアフリカ系アメリカ人の毛髪トレスに塗布し、1分間静置後、水道水で20回指を通しながら濯ぐことにより、評価用トレスを得た。得られたトレスを、水道水を入れたポリカップに30秒間浸漬した後、一気に引き上げ、大気中で30分間静置した。30分経過後のトレスの
図1に示す最大長(Lmax)及び最大幅(Wmax)を測定し、シュリンク係数(Shrink Coefficient)(=Wmax/Lmax)を算出した。
ここで、以下に示す組成のプレーンシャンプーで洗ったトレスを水道水を入れたポリカップに浸漬し、引き揚げた直後のシュリンク係数を「シュリンク率」が0であるとし、前記プレーンシャンプーで洗った後、市販のコンディショナー(花王(株)製「エッセンシャルヘアコンディショナー」)で処理したトレスを水道水を入れたポリカップに浸漬し、引き揚げてから30分経過後のシュリンク係数を「シュリンク率」が100であるとして、それらの値から、シュリンク係数を規格化したものを、シュリンク率とした。結果を表3に示す。
<プレーンシャンプーの組成>
(プレーンシャンプー) (質量%)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム
(エマールE-27C(有効成分27質量%)、花王(株)製) 42
ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド
(アミノーン C-11S、花王(株)製) 3
クエン酸 0.2
メチルパラベン 0.3
精製水 残 余
計 100
【0088】
【0089】
表3より、接触角が低いほどシュリンク率の値が低いことがわかる。このことから、毛髪表面に高い親水性を付与することができ、その結果シュリンク抑制効果を向上させることができることがわかる。