(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161634
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】固体表面親水化方法
(51)【国際特許分類】
B05D 5/00 20060101AFI20221014BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20221014BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20221014BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221014BHJP
C08F 22/22 20060101ALI20221014BHJP
C08J 7/056 20200101ALI20221014BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20221014BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20221014BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B05D5/00 Z
C09K3/00 R
B05D7/00 K
B05D7/24 303A
C08F22/22
C08J7/056 CER
C08J7/056 CEZ
A61Q5/00
A61K8/81
A61K8/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066584
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 益太郎
(72)【発明者】
【氏名】境原 由次
(72)【発明者】
【氏名】丹治 範文
(72)【発明者】
【氏名】久米 希美
【テーマコード(参考)】
4C083
4D075
4F006
4J100
【Fターム(参考)】
4C083AB331
4C083AC711
4C083CC31
4C083EE21
4D075AB01
4D075BB16X
4D075BB65Z
4D075BB69Z
4D075BB79Z
4D075CA13
4D075CA37
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB36
4D075DB42
4D075DB43
4D075DC16
4D075DC24
4D075DC38
4D075EA06
4D075EB20
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4D075EB51
4D075EB52
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4D075EC01
4D075EC30
4D075EC51
4F006AA12
4F006AB24
4F006AB73
4F006BA10
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100BA32P
4J100BA32Q
4J100BA58Q
(57)【要約】
【課題】高い親水化効果を有する固体表面親水化方法を提供する。
【解決手段】表面処理組成物が適用された固体表面に水性媒体を接触させる工程1を含む、固体表面親水化方法であり、該表面処理組成物が、次の成分(A)~成分(C):(A)ベタイン基を有する構成単位(a1)、及び、イオン性基を有する構成単位(a2)を少なくとも含むベタインポリマー、(B)前記構成単位(a2)のイオン性基の電荷と反対電荷のイオン性基を有する構成単位(b1)を少なくとも含むポリマー、(C)電解質を含有し、該表面処理組成物中の、構成単位(a1)のベタイン基、構成単位(a2)のイオン性基、及び構成単位(b1)のイオン性基の当量が、下記の条件1を満たす、固体表面親水化方法である。
条件1:{〔構成単位(a1)のベタイン基の当量〕+〔構成単位(a2)のイオン性基の当量〕}/〔構成単位(b1)のイオン性基の当量〕>0.10
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理組成物が適用された固体表面に水性媒体を接触させる工程1を含む、固体表面親水化方法であり、
該表面処理組成物が、次の成分(A)~成分(C):
(A)ベタイン基を有する構成単位(a1)、及び、イオン性基を有する構成単位(a2)を少なくとも含むベタインポリマー
(B)前記構成単位(a2)のイオン性基の電荷と反対電荷のイオン性基を有する構成単位(b1)を少なくとも含むポリマー
(C)電解質
を含有し、
該表面処理組成物中の、構成単位(a1)のベタイン基、構成単位(a2)のイオン性基、及び構成単位(b1)のイオン性基の当量が、下記の条件1を満たす、固体表面親水化方法。
条件1:{〔構成単位(a1)のベタイン基の当量〕+〔構成単位(a2)のイオン性基の当量〕}/〔構成単位(b1)のイオン性基の当量〕>0.10
【請求項2】
さらに下記条件2を満たす、請求項1に記載の方法。
条件2:〔構成単位(a1)のベタイン基の当量〕/〔構成単位(a2)のイオン性基の当量〕>1
【請求項3】
さらに下記条件3を満たす、請求項1又は2に記載の方法。
条件3:〔構成単位(a2)のイオン性基の当量〕/〔構成単位(b1)のイオン性基の当量〕の値が0.01以上50以下である。
【請求項4】
前記工程1の前に、前記表面処理組成物を固体表面に適用する工程1-1を更に含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記工程1が、前記表面処理組成物が適用された固体表面に水性媒体を接触させて、該固体表面上の表面処理組成物を水性媒体により希釈する工程である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記工程1における希釈倍率が1.5倍以上である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
成分(A)の全構成単位中のベタイン基を有する構成単位(a1)の含有量が50mol%以上である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
成分(A)が、ベタイン基を有する構成単位(a1)と、イオン性基を有する構成単位(a2)としてカチオン性基を有する構成単位(a2-I)と、を少なくとも含むカチオン性ベタインポリマーAIであり、
成分(B)が、イオン性基を有する構成単位(b1)としてアニオン性基を有する構成単位(b1-I)を少なくとも含むアニオン性ポリマーBIである、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
成分(A)が、ベタイン基を有する構成単位(a1)と、イオン性基を有する構成単位(a2)としてアニオン性基を有する構成単位(a2-II)と、を少なくとも含むアニオン性ベタインポリマーAIIであり、
成分(B)が、イオン性基を有する構成単位(b1)としてカチオン性基を有する構成単位(b2-II)を少なくとも含むカチオン性ポリマーBIIである、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ベタイン基を有する構成単位(a1)が、下記式(1)で表される構成単位である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【化1】
〔式(1)中、
R
1~R
3は、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1もしくは2のアルキル基を示し、
R
4は、炭素数1以上4以下のアルキレン基、又は-Y
1-OPO
3
--Y
2-を示し、Y
1及びY
2は、同一又は異なって、炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、
R
5及びR
6は、同一又は異なって、炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、
X
1は、酸素原子又はNR
7基を示し、R
7は、水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、
X
2は、R
4が炭素数1以上4以下のアルキレン基のとき、R
17SO
3
-、又はR
17COO
-を示し、R
17は水酸基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、X
2は、R
4が-Y
1-OPO
3
--Y
2-のとき、水素原子、又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示す。〕
【請求項11】
前記表面処理組成物中の成分(C)の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
成分(B)の重量平均分子量が、1,000以上3,000,000以下である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記表面処理組成物中の成分(A)及び成分(B)の合計含有量が、0.1質量%以上30質量%以下である、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体表面親水化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体表面の処理方法としては、親水化処理、撥水化処理といった固体表面の濡れを制御する方法が知られている。中でも、固体表面の親水化処理は、固体表面の水に対する接触角を低下させ、固体表面を水に対して濡れ易くすることにより、該処理後の固体表面に汚れが付着した際には、汚れが洗浄時に落ち易くなる効果や汚れの再付着を防止する効果が期待できる他、ガラス、鏡等の防曇、帯電防止、熱交換器のアルミニウムフィンの着霜防止、浴槽及びトイレ表面等の防汚性付与等の効果が期待できるため、様々な産業分野で用いられ、固体表面の処理及び方法の検討が進められてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、優れた親水化能力を長期間発揮する親水化処理剤を含有する親水化処理組成物の提供を目的として、ベタイン基を含む構成単位と芳香族基を有する構成単位とを含む共重合体、アニオン性界面活性剤及び水を含有する親水化処理剤組成物、及び該親水化処理剤組成物を固体表面へ塗布する親水化処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、種々の固体表面に親水性を付与することができるものの、親水化効果が未だ十分でなく、表面処理組成物の親水化効果の更なる向上が求められている。
本発明は、高い親水化効果を有する固体表面親水化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、表面処理組成物が適用された固体表面に水性媒体を接触させる工程を含み、該表面処理組成物が、ベタイン基を有する構成単位、及び、イオン性基を有する構成単位を少なくとも含む第1のポリマー、該イオン性基を有する構成単位のイオン性基の電荷と反対電荷のイオン性基を有する構成単位を少なくとも含む第2のポリマー、並びに電解質を含有し、該ベタイン基を有する構成単位のベタイン基、第1のポリマーのイオン性基を有する構成単位のイオン性基、及び第2のポリマーのイオン性基を有する構成単位のイオン性基の当量が、所定の条件を満たすことにより、前記課題を解決できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、表面処理組成物が適用された固体表面に水性媒体を接触させる工程1を含む、固体表面親水化方法であり、
該表面処理組成物が、次の成分(A)~成分(C):
(A)ベタイン基を有する構成単位(a1)、及び、イオン性基を有する構成単位(a2)を少なくとも含むベタインポリマー
(B)前記構成単位(a2)のイオン性基の電荷と反対電荷のイオン性基を有する構成単位(b1)を少なくとも含むポリマー
(C)電解質
を含有し、
該表面処理組成物中の、構成単位(a1)のベタイン基、構成単位(a2)のイオン性基、及び構成単位(b1)のイオン性基の当量が、下記の条件1を満たす、固体表面親水化方法を提供する。
条件1:{〔構成単位(a1)のベタイン基の当量〕+〔構成単位(a2)のイオン性基の当量〕}/〔構成単位(b1)のイオン性基の当量〕>0.10
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い親水化効果を有する固体表面親水化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】シュリンク率の測定におけるシュリンク係数(Shrink Coefficient)の算出方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[固体表面親水化方法]
本発明の固体表面親水化方法(以下、「親水化方法」ともいう)は、表面処理組成物が適用された固体表面に水性媒体を接触させる工程1を含み、
該表面処理組成物が、次の成分(A)~成分(C):
(A)ベタイン基を有する構成単位(a1)、及び、イオン性基を有する構成単位(a2)を少なくとも含むベタインポリマー
(B)前記構成単位(a2)のイオン性基の電荷と反対電荷のイオン性基を有する構成単位(b1)を少なくとも含むポリマー
(C)電解質
を含有し、
該表面処理組成物中の、構成単位(a1)のベタイン基、構成単位(a2)のイオン性基、及び構成単位(b1)のイオン性基の当量が、下記の条件1を満たす。
条件1:{〔構成単位(a1)のベタイン基の当量〕+〔構成単位(a2)のイオン性基の当量〕}/〔構成単位(b1)のイオン性基の当量〕>0.10
【0011】
本発明によれば、高い親水化効果を発現することができる。このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
成分(A)は、ベタイン基を有する構成単位、及び、イオン性基を有する構成単位を少なくとも含むベタインポリマーであり、成分(B)は、該成分(A)に含まれるイオン性基を有する構成単位のイオン性基の電荷と反対電荷のイオン性を有する構成単位を含むポリマーであり、該ベタイン基を有する構成単位のベタイン基、成分(A)のイオン性基を有する構成単位のイオン性基、及び成分(B)のイオン性基を有する構成単位のイオン性基の当量が、所定の条件を満たす。そのため、前記表面処理組成物が適用された固体表面に水性媒体を接触させることにより、固体表面における成分(C)の濃度が低下し、成分(A)のイオン性基と成分(B)のイオン性基の作用によりポリイオンコンプレックスが形成され、該ポリイオンコンプレックスを固体表面に効果的に吸着させることができると考えられる。そして、成分(A)の親水的なベタイン基により固体表面に対する親水性効果を向上させることができると考えられる。
【0012】
工程1は、表面処理組成物が適用された固体表面に水性媒体を接触させる工程である。
【0013】
<固体表面>
本発明において「固体表面」とは、固体と大気との界面を意味する。
前記固体としては、特に制限はなく、ガラス、陶器、磁器、琺瑯、タイル、セラミックス、木材;アルミニウム、ステンレス、真鍮等の金属;ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、FRP等の合成樹脂;木綿、絹、羊毛等の天然繊維;ポリエステル、ナイロン、レーヨン等の合成繊維;毛髪、爪、歯などが挙げられる。前記固体表面の形状は、特に制限はない。
これらの中でも、前記固体表面は、好ましくは疎水性硬質表面又は毛髪表面である。
【0014】
本発明において「疎水性硬質表面」とは、接触角が70°以上であることを意味し、「親水性硬質表面」とは70°未満であることを意味する。なお、接触角は、実施例に記載の方法で測定することができる。
前記疎水性硬質表面としては、好ましくはセラミックス、金属、及び合成樹脂から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0015】
また、前記固体表面が毛髪表面である場合には、毛髪表面に高い親水性を付与することができる。
ここで、毛髪化粧料の分野においては、毛髪の乾燥に伴い毛髪の長さ方向における毛髪の収縮(シュリンク)により、毛髪がまとまり難くなるといった毛髪の扱い難さが問題となることがある。
特に洗髪直後の濡れた髪の状態では望ましいヘアスタイルが保たれている場合であっても、毛髪の乾燥に伴い毛髪の長さ方向におけるシュリンクが発生し、理想とする長さやボリューム等のヘアスタイルに仕上がらないことがある。
本発明者らの研究によれば、毛髪が濡れた状態では毛髪間に存在する水により毛髪同士を引きつけるメニスカス力が発生し、このメニスカス力によりシュリンクが抑制されているが、毛髪の乾燥により毛髪間のメニスカス力が小さくなることによりシュリンクが発生することが判明した。毛髪間のメニスカス力は、毛髪表面の水に対する接触角を低下させて毛髪表面に親水性を付与することにより増大させることができる。毛髪表面に親水性を付与するためには、毛髪表面は疎水性が強いキューティクル片が積層した構造を有する一方で、キューティクル片のエッジ付近は親水性であるため、毛髪表面には疎水的な部位と親水的な部位とが混在し、これらの部位を共に親水化することが求められる。
本発明において、前記固体表面が毛髪である場合には、前述のとおりポリイオンコンプレックスが毛髪の表面に効果的に吸着し、成分(A)の親水的なベタイン基により毛髪表面に高い親水性を付与することができ、これにより毛髪間のメニスカス力が増大し、毛髪のシュリンクを抑制する効果を発現させることができると考えられる。当該観点から、本発明の親水化方法は、前記固体表面が毛髪表面である、毛髪処理方法であることが好ましい。
【0016】
<表面処理組成物>
本発明に係る表面処理組成物は、前記成分(A)~成分(C)を含有する。
前記表面処理組成物は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、下記の条件1を満たし、好ましくはさらに下記の条件2又は条件3を満たし、より好ましくは下記の条件1~条件3を全て満たす。
なお、本発明において、前記表面処理組成物中の、構成単位(a1)のベタイン基、構成単位(a2)のイオン性基、及び構成単位(b1)のイオン性基の当量は、成分(A)の全構成単位中の構成単位(a1)及び構成単位(a2)の含有量、成分(B)の全構成単位中の構成単位(b1)の含有量、並びに該表面処理組成物中の成分(A)及び成分(B)の含有量又は配合量より算出することができる。
【0017】
〔条件1〕
前記表面処理組成物中の、構成単位(a1)のベタイン基、構成単位(a2)のイオン性基、及び構成単位(b1)のイオン性基の当量は、下記の条件1を満たす。
条件1:{〔構成単位(a1)のベタイン基の当量〕+〔構成単位(a2)のイオン性基の当量〕}/〔構成単位(b1)のイオン性基の当量〕>0.10
【0018】
{〔構成単位(a1)のベタイン基の当量〕+〔構成単位(a2)のイオン性基の当量〕}/〔構成単位(b1)のイオン性基の当量〕の値が条件1を満たすことにより、成分(A)のイオン性基と成分(B)のイオン性基の作用によりポリイオンコンプレックスが形成され、該ポリイオンコンプレックスが固体表面に効果的に吸着させることができ、成分(A)の親水的なベタイン基により固体表面に高い親水性を付与することができる。当該観点から、条件1における{〔構成単位(a1)のベタイン基の当量〕+〔構成単位(a2)のイオン性基の当量〕}/〔構成単位(b1)のイオン性基の当量〕の値は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは100以下、より更に好ましくは70以下、より更に好ましくは50以下、より更に好ましくは30以下である。
【0019】
〔条件2〕
前記表面処理組成物中の、構成単位(a1)のベタイン基及び構成単位(a2)のイオン性基の当量は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくはさらに下記の条件2を満たす。
条件2:〔構成単位(a1)のベタイン基の当量〕/〔構成単位(a2)のイオン性基の当量〕>1
【0020】
〔構成単位(a1)のベタイン基の当量〕/〔構成単位(a2)のイオン性基の当量〕の値が条件2を満たすことにより、成分(A)の親水的なベタイン基量が十分なものとなり、該ベタイン基による固体表面への親水性の付与効果を向上させることができる。当該観点から、条件2における〔構成単位(a1)のベタイン基の当量〕/〔構成単位(a2)のイオン性基の当量〕の値は、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは7以上、より更に好ましくは9以上、より更に好ましくは10以上、より更に好ましくは15以上であり、そして、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、より更に好ましくは20以下である。
【0021】
〔条件3〕
本発明に係る表面処理組成物中の、構成単位(a2)のイオン性基及び構成単位(b1)のイオン性基の当量は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくはさらに下記条件3を満たす。
条件3:〔構成単位(a2)のイオン性基の当量〕/〔構成単位(b1)のイオン性基の当量〕の値が0.01以上50以下である。
【0022】
〔構成単位(a2)のイオン性基の当量〕/〔構成単位(b1)のイオン性基の当量〕の値が条件3を満たすことにより、成分(A)のイオン性基と成分(B)のイオン性基の作用によりポリイオンコンプレックスが良好に形成され、該ポリイオンコンプレックスを固体表面に効果的に吸着させることができ、成分(A)の親水的なベタイン基による固体表面への親水性の付与効果を向上させることができる。当該観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは7以下、より更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1.3以下、より更に好ましくは1.1以下である。
【0023】
〔成分(A)〕
成分(A)は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、ベタイン基を有する構成単位(a1)、及び、イオン性基を有する構成単位(a2)を少なくとも含むベタインポリマーであり、好ましくはベタイン基を有する構成単位(a1)と、イオン性基を有する構成単位(a2)としてカチオン性基を有する構成単位(a2-I)(以下、「構成単位(a2-I)」ともいう)と、を少なくとも含むカチオン性ベタインポリマーAI(以下、「カチオン性ベタインポリマーAI」ともいう)、又は、ベタイン基を有する構成単位(a1)と、イオン性基を有する構成単位(a2)としてアニオン性基を有する構成単位(a2-II)(以下、「構成単位(a2-II)」ともいう)と、を少なくとも含むアニオン性ベタインポリマーAII(以下、「アニオン性ベタインポリマーAII」ともいう)である。
本発明において「アニオン性ポリマー」とは、アニオン性基を有するものであり、かつ、全体としてアニオン性を示すポリマーである。
本発明において「カチオン性ポリマー」とは、カチオン性基を有するものであり、かつ、全体としてカチオン性を示すポリマーである。
【0024】
〔構成単位(a1)〕
成分(A)は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、ベタイン基を有する構成単位(a1)を含む。
本発明において「ベタイン基」とは、カチオン部位とアニオン部位とを有する官能基であって、該官能基全体としては電荷をもたない官能基を意味する。
ベタイン基のカチオン部位とは、正電荷を帯びた原子団であり、好ましくはカチオン性基である。
本発明において「カチオン性基」とは、カチオン基、又は、イオン化されてカチオン基になり得る基をいう。カチオン性基としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第四級アンモニウム基が挙げられる。これらの中でも、ベタイン基のカチオン部位は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは第四級アンモニウム基である。
ベタイン基のアニオン部位とは、負電荷を帯びた原子団であり、好ましくはアニオン性基である。
本発明において「アニオン性基」とは、アニオン基、又は、イオン化されてアニオン基になり得る基をいう。
アニオン性基としては、カルボキシ基(-COOM)、スルホン酸基(-SO3M)、リン酸基(-OPO3M2)等が挙げられる。前記化学式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。
【0025】
構成単位(a1)のベタイン基は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくはスルホベタイン基、ホスホベタイン基、又はカルボベタイン基であり、より好ましくはスルホベタイン基又はホスホベタイン基であり、更に好ましくはスルホベタイン基であって、これらのベタイン基のカチオン部位は好ましくは第四級アンモニウム基である。
ベタイン基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0026】
構成単位(a1)は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは下記式(1)で表される構成単位である。
【0027】
【化1】
〔式(1)中、
R
1~R
3は、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1もしくは2のアルキル基を示し、
R
4は、炭素数1以上4以下のアルキレン基、又は-Y
1-OPO
3
--Y
2-を示し、Y
1及びY
2は、同一又は異なって、炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、
R
5及びR
6は、同一又は異なって、炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、
X
1は、酸素原子又はNR
7基を示し、R
7は、水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、
X
2は、R
4が炭素数1以上4以下のアルキレン基のとき、R
17SO
3
-、又はR
17COO
-を示し、R
17は水酸基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、X
2は、R
4が-Y
1-OPO
3
--Y
2-のとき、水素原子、又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示す。〕
【0028】
構成単位(a1)は、好ましくは、スルホベタイン基、ホスホベタイン基、又はカルボベタイン基を有する構成単位である。
構成単位(a1)は、1種であってもよく、2種以上の異なる構成単位であってもよい。
構成単位(a1)は、例えば、下記式(1’)で表されるモノマー(a1’)由来の構成単位である。
【0029】
【化2】
〔式(1’)中、R
1~R
6、X
1、X
2は前記と同じである。〕
【0030】
式(1)及び(1’)中、R1~R6、X1、X2の具体例又は好ましい態様は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、以下のとおりである。
R1及びR2は、好ましくは水素原子である。
R3は、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X1は、好ましくは酸素原子である。
R4は、好ましくは炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、更に好ましくは炭素数2のアルキレン基である。
R5及びR6は、好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X2は、R4が炭素数1以上4以下のアルキレン基のとき、R17SO3
-、又はR17COO-を示し、好ましくはR17SO3
-である。R17は水酸基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキレン基又は炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、更に好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、より更に好ましくは炭素数3のアルキレン基である。
X2は、R4が-Y1-OPO3
--Y2-のとき、水素原子、又は炭素数1以上4以下の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1以上4以下の炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。
【0031】
構成単位(a1)は、好ましくは、N-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、N-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン等のスルホベタイン基を有するモノマー;2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等のホスホベタイン基を有するモノマー;N-カルボキシメチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、N-カルボキシメチル-N-(メタ)アクリロイルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン等のカルボベタイン基を有するモノマーから選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、より好ましくはスルホベタイン基を有するモノマー及びホスホベタイン基を有するモノマーから選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、更に好ましくはスルホベタイン基を有するモノマー由来の構成単位であり、より更に好ましくはN-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、及びN-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムベタインから選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、より更に好ましくはN-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン由来の構成単位である。
【0032】
成分(A)の全構成単位中の構成単位(a1)の含有量は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは50mol%以上、より好ましくは55mol%以上、更に好ましくは60mol%以上、より更に好ましくは70mol%以上、より更に好ましくは85mol%以上、より更に好ましくは90mol%以上、より更に好ましくは93mol%以上であり、そして、好ましくは99mol%以下、より好ましくは98mol%以下、更に好ましくは97mol%以下である。
なお、成分(A)の全構成単位中の各構成単位の含有量はNMR等の分析により測定することができる。また、成分(A)の製造時の各モノマーの仕込み比より算出することもできる。
【0033】
〔構成単位(a2)〕
構成単位(a2)は、好ましくはカチオン性基を有する構成単位(a2-I)又はアニオン性基を有する構成単位(a2-II)である。カチオン性基及びアニオン性基は、前述のとおりである。
【0034】
(構成単位(a2-I))
成分(A)が、カチオン性基を有する構成単位(a2-I)を含むカチオン性ベタインポリマーAIである場合、該構成単位(a2-I)は、好ましくはカチオン性基含有重合性不飽和モノマー由来の構成単位であり、より好ましくは下記式(2)で表されるカチオン性基を有する構成単位である。
構成単位(a2-I)は、1種であってもよく、2種以上の異なる構成単位であってもよい。
【化3】
〔式(2)中、
R
8~R
10は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基を示し、
X
3は、酸素原子又はNR
18基を示し、R
18は、水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、
R
11は、炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、
X
4は、N
+R
12R
13R
14X
5又はNR
15R
16を示し、R
12~R
16は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、X
5は陰イオンを示す。〕
【0035】
構成単位(a2-I)は、例えば、下記式(2’)で表されるモノマー(a2-I’)由来の構成単位である。
【0036】
【化4】
〔式(2’)中、R
8~R
11、X
3、X
4は前記と同じである。〕
【0037】
式(2)及び(2’)中、R8~R11、X3、X4の具体例又は好ましい態様は、効率的にポリイオンコンプレックスを形成して、親水化効果を高める観点及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、以下のとおりである。
R8及びR9は、好ましくは水素原子である。
R10は、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X3は、好ましくは酸素原子である。
R11は、好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2のアルキレン基である。
X4は、N+R12R13R14X5が好ましく、R12、R13、R14は、前記と同様の観点から、好ましくはそれぞれメチル基又はエチル基であり、より好ましくはR12、R13、及びR14のいずれか一つはエチル基である。
R15及びR16は、親水化効果を高める観点及び4級化反応の容易性の観点から、好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X5は、好ましくはハロゲンイオン又はC2H5SO4
-であり、より好ましくはC2H5SO4
-である。
【0038】
構成単位(a2-I)は、好ましくは,N,N-(ジアルキルアミノ)アルキル(メタ)アクリル酸又はその四級化物由来の構成単位であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸2-(ジアルキルアミノ)アルキルの四級化物由来の構成単位であり、更に好ましくは、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルの四級化物、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチルの四級化物、及び(メタ)アクリル酸3-(ジメチルアミノ)プロピルの四級化物から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、より更に好ましくは(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルのジエチル硫酸塩由来の構成単位である。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0039】
成分(A)がカチオン性ベタインポリマーAIである場合、該成分(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(a1)及び構成単位(a2-I)以外の他の構成単位を含有してもよい。他の構成単位としては、(メタ)アクリル酸エステル、アルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、スチレン系モノマー等のノニオン性のモノマー;アニオン性含有重合性不飽和モノマーなどの他のモノマー由来の構成単位が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル等の炭素数1以上30以下の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル(アルキレンオキシドの平均付加モル数は好ましくは2以上30以下である。);メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル(アルキレンオキシドの平均付加モル数は好ましくは2以上30以下である。);フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレート等のフェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル(アルキレンオキシドの平均付加モル数は好ましくは2以上30以下である。)などが挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0041】
アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等の炭素数1以上22以下のアルキル基を有するN―アルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン等が挙げられる。
アニオン性基含有重合性不飽和モノマーとしては、構成単位(a2-II)で例示するカルボキシ基含有重合性不飽和モノマー、スルホン酸基含有重合性不飽和モノマー、リン酸基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。
【0042】
(構成単位(a2-II))
成分(A)が、アニオン性基を有する構成単位(a2-II)を含むアニオン性ベタインポリマーAIIである場合、該構成単位(a2-II)は、好ましくはアニオン性基含有重合性不飽和モノマー由来の構成単位である。
アニオン性基含有重合性不飽和モノマーとしては、カルボキシ基含有重合性不飽和モノマー、スルホン酸基含有重合性不飽和モノマー、リン酸基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。
構成単位(a2-II)は、1種であってもよく、2種以上の異なる構成単位であってもよい。
【0043】
カルボキシ基含有重合性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
スルホン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-スルホプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
リン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
【0044】
これらの中でも、構成単位(a2-II)は、効率的にポリイオンコンプレックスを形成して、親水化効果を高める観点及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは、カルボキシ基含有重合性不飽和モノマー、スルホン酸基含有重合性不飽和モノマー、及びリン酸基含有重合性不飽和モノマーから選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、より好ましくはカルボキシ基含有重合性不飽和モノマー及びスルホン酸基含有重合性不飽和モノマーから選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、更に好ましくはカルボキシ基含有重合性不飽和モノマー由来の構成単位であり、より更に好ましくは(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、及び2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、より更に好ましくは(メタ)アクリル酸由来の構成単位である。
【0045】
成分(A)がアニオン性ベタインポリマーAIIである場合、該成分(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(a1)及び構成単位(a2-II)以外の他の構成単位を含有してもよい。他の構成単位としては、前述の(メタ)アクリル酸エステル、アルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、スチレン系モノマー等のノニオン性のモノマー;カチオン性基含有重合性不飽和モノマーなどの他のモノマー由来の構成単位が挙げられる。
カチオン性基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、前述の構成単位(a2-I)で例示する式(2’)で表されるモノマーが挙げられる。
【0046】
成分(A)の全構成単位中の構成単位(a2)の含有量は、効率的にポリイオンコンプレックスを形成して、親水化効果を高める観点及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点、並びに表面処理組成物の配合安定性及び吸着性の観点から、好ましくは1mol%以上、より好ましくは2mol%以上、更に好ましくは3mol%以上であり、そして、好ましくは50mol%以下、より好ましくは45mol%以下、更に好ましくは40mol%以下、より更に好ましくは30mol%以下、より更に好ましくは15mol%以下、より更に好ましくは10mol%以下、より更に好ましくは7mol%以下である。
【0047】
成分(A)の全構成単位中の構成単位(a1)及び構成単位(a2)以外の他の構成単位の含有量は、好ましくは30mol%以下、より好ましくは20mol%以下、更に好ましくは10mol%以下、より更に好ましくは5mol%以下、より更に好ましくは3mol%以下、より更に好ましくは1mol%以下であり、他の構成単位の含有量は0mol%であってもよい。
成分(A)は、構成単位(a1)及び構成単位(a2)以外の他の構成単位として、芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル、スチレン系モノマー、フェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル等の芳香族基含有モノマー由来の構成単位を含むものであってもよいが、成分(A)の全構成単位中の芳香族基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、親水化効果の観点から、好ましくは1mol%以下、より好ましくは0.5mol%以下、更に好ましくは0.1mol%以下、より更に好ましくは0.05mol%以下であり、より更に好ましくは、成分(A)は芳香族基含有モノマー由来の構成単位を含まないことが好ましい。
【0048】
成分(A)の全構成単位中の構成単位(a1)及び構成単位(a2)の合計含有量は、好ましくは70mol%以上、より好ましくは80mol%以上、更に好ましくは90mol%以上、より更に好ましくは95mol%以上、より更に好ましくは97mol%以上、より更に好ましくは99mol%以上であり、成分(A)の全構成単位中の構成単位(a1)及び構成単位(a2)の合計含有量は、100mol%であってもよい。
【0049】
(成分(A)の製造)
成分(A)の製造方法は特に制限はなく、例えば、下記の(x1)、(y1)の方法が挙げられる。
(x1)前記式(1’)で表されるモノマー(a1’)及び前記カチオン性基含有重合性不飽和モノマー又は前記アニオン性基含有重合性不飽和モノマーを含む原料モノマーを共重合する方法
(y1)下記式(1’-1)で表されるモノマー及び前記カチオン性基含有重合性不飽和モノマー又は前記アニオン性基含有重合性不飽和モノマーを含む原料モノマーを共重合した後、ベタイン化剤によってベタイン化する方法
これらの中でも、モノマーの入手性及び製造の容易性の観点から、(y1)の方法が好ましい。
【0050】
【化5】
〔式(1’-1)中、R
1~R
6、X
1は式(1)と同じであり、好ましい態様も式(1)と同じである。〕
【0051】
(y1)の方法を用いる場合であって、例えば構成単位(a1)がスルホベタイン基を有するモノマー由来の構成単位である場合は、前記式(1’-1)で表されるモノマーを含む原料モノマーを重合した後、ベタイン化剤として下記式(1’-2)で表される化合物又は下記式(1’-3)で表される化合物を反応させてベタイン化することができ、中でも、下記式(1’-2)で表される化合物が好ましい。
【0052】
【化6】
〔式(1’-2)中、nは1又は2であり、好ましくは1である。〕
【0053】
Z-R17-SO3M (1’-3)
〔式(1’-3)中、ZはCl又はBr、好ましくはClであり、R17は水酸基を有してもよい炭素数2以上4以下のアルキレン基、好ましくは2-ヒドロキシプロピレン基、MはNa又はKを示す。〕
【0054】
成分(A)の重量平均分子量は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは10,000以上であり、そして、表面処理組成物の配合安定性及び吸着性の観点から、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、更に好ましくは300,000以下、より更に好ましくは200,000以下である。成分(A)の重量平均分子量は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0055】
成分(A)がカチオン性ベタインポリマーAIである場合、該成分(A)のカチオン電荷密度は、好ましくは0.01meq/g以上、より好ましくは0.05meq/g以上、更に好ましくは0.1meq/g以上、より更に好ましくは0.15meq/g以上であり、そして、好ましくは1.0meq/g以下、より好ましくは0.8meq/g以下、更に好ましくは0.6meq/g以下、より更に好ましくは0.4meq/g以下、より更に好ましくは0.2meq/g以下である。
この場合、成分(A)のカチオン電荷密度は、成分(A)中のカチオン性基のmol数/g×1000(カチオン電荷密度;meq/g)から成分(A)中のアニオン性基のmol数/g×1000(アニオン電荷密度;meq/g)を差し引いた値をいう。
成分(A)のカチオン電荷密度は、ポリマーを構成する構成単位の種類及びモル比率から算出することができる。なお、ポリマーを構成する構成単位の種類及びモル比率はNMR等の分析により測定することができる。
成分(A)がカチオン性ベタインポリマーAIである場合、該成分(A)は、全体としてカチオン性を示すポリマーであるが、成分(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で該ポリマー中にベタイン基に含まれるアニオン性基以外のアニオン性基を有するものであってもよい。
また、成分(A)は、全体としてカチオン性を示すポリマーを2種以上用いてもよい。この場合のカチオン電荷密度は、それぞれのポリマーのカチオン電荷密度と配合量から加重平均して算出することにより求めることができる。
【0056】
成分(A)がアニオン性ベタインポリマーAIIである場合、該成分(A)のアニオン電荷密度は、好ましくは-5meq/g以上、より好ましくは-3meq/g以上、更に好ましくは-2meq/g以上、より更に好ましくは-1meq/g以上、より更に好ましくは-0.5meq/g以上、より更に好ましくは-0.3meq/g以上であり、そして、好ましくは-0.05meq/g以下、より好ましくは-0.1meq/g以下、更に好ましくは-0.15meq/g以下である。
この場合、成分(A)のアニオン電荷密度は、成分(A)中のアニオン性基のmol数/g×1000(アニオン電荷密度;meq/g)から成分(A)中のカチオン性基のmol数/g×1000(カチオン電荷密度;meq/g)を差し引いた値をいう。
成分(A)のアニオン電荷密度は、ポリマーを構成する構成単位の種類及びモル比率から算出することができる。なお、ポリマーを構成する構成単位の種類及びモル比率はNMR等の分析により測定することができる。
成分(A)がアニオン性ベタインポリマーAIIである場合、該成分(A)は、全体としてアニオン性を示すポリマーであるが、本発明の効果を損なわない範囲で該ポリマー中にベタイン基に含まれるカチオン性基以外のカチオン性基を有するものであってもよい。
また、成分(A)は、全体としてアニオン性を示すポリマーを2種以上用いてもよい。この場合のアニオン電荷密度は、それぞれのポリマーのアニオン電荷密度と配合量から加重平均して算出することにより求めることができる。
【0057】
〔成分(B)〕
成分(B)は、構成単位(a2)のイオン性基の電荷と反対電荷のイオン性基を有する構成単位(b1)を少なくとも含むポリマーである。
【0058】
〔構成単位(b1)〕
(構成単位(b1-I))
構成単位(a2)のイオン性基がカチオン性基である場合、成分(B)は、構成単位(b1)としてアニオン性基を有する構成単位(b1-I)(以下、「構成単に(b1-I)」ともいう)を少なくとも含むアニオン性ポリマーBI(以下、「アニオン性ポリマーBI」ともいう)である。
ここで、「アニオン性基」とは、前述のとおり、アニオン基、又は、イオン化されてアニオン基になり得る基をいう。
アニオン性ポリマーBIは、好ましくはアニオン性基を有する合成ポリマー又は天然由来ポリマー、及びこれらの塩から選ばれる1種以上である。
【0059】
アニオン性基を有する合成ポリマーとしては、カルボキシ基を有するポリマー、スルホン酸基を有するポリマー、リン酸基を有するポリマーが挙げられる。
カルボキシ基を有するポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸/マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/イタコン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/フマル酸共重合体、(メタ)アクリル酸/酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸/2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、マレイン酸/ジイソブチレン共重合体、マレイン酸/スチレン共重合体、安息香酸ホルムアルデヒド縮合物、安息香酸/フェノール/ホルムアルデヒド縮合物及びこれらの塩等が挙げられる。
スルホン酸基を有するポリマーとしては、ポリスチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸/スチレン共重合体、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸/(メタ)アクリル酸共重合体、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸/(メタ)アクリル酸/アクリルアミド共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ジメチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリ〔2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート硫酸エステル〕、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート硫酸エステル共重合体、ポリ〔2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート〕の硫酸エステル化物及びこれらの塩等が挙げられる。
リン酸基を有するポリマーとしては、ポリ〔(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸〕、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸/2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、ナフタレンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリ〔2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートリン酸エステル〕、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートリン酸エステル共重合体、ポリ〔2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート〕のリン酸エステル化物及びこれらの塩等が挙げられる。
【0060】
前記合成ポリマーのポリマー骨格としては、ビニル系ポリマーが好ましい。
前記ビニル系ポリマーは、好ましくはアニオン性基含有重合性不飽和モノマー由来の構成単位を含むものである。
アニオン性基含有重合性不飽和モノマーとしては、前述で例示したカルボキシ基含有重合性不飽和モノマー、スルホン酸基含有重合性不飽和モノマー、リン酸基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはカルボキシ基含有重合性不飽和モノマーであり、より好ましくは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及び2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸から選ばれる1種以上であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0061】
前記ビニル系ポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲において、アニオン性基含有重合性不飽和モノマー以外の他のモノマー由来の構成単位を含有する共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、前述の成分(A)で例示した(メタ)アクリル酸エステル、アルキル(メタ)アクリルアミド、芳香族基含有モノマーの他、(メタ)アクリルアミド;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;酢酸ビニル;N-ビニル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
前述のモノマーは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
前記ビニル系ポリマーは、好ましくはカルボキシ基を有するビニル系ポリマーであり、より好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸/マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/イタコン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/フマル酸共重合体、(メタ)アクリル酸/酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸/2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、マレイン酸/ジイソブチレン共重合体、マレイン酸/スチレン共重合体、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはポリ(メタ)アクリル酸、及びポリ(メタ)アクリル酸塩から選ばれる少なくとも1種である。
【0063】
アニオン性基を有する天然由来ポリマーは、天然物から抽出、精製等の操作により得られるポリマー及び該ポリマーを化学的に修飾したものである。
前記天然由来ポリマーとしては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース等のセルロース誘導体又はその塩;ヒアルロン酸塩;コロミン酸塩;デキストラン硫酸塩;ヘパリン誘導体の塩等が挙げられる。
これらの中でも、好ましくはセルロース誘導体及びその塩から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはカルボキシメチルセルロース又はその塩である。
【0064】
以上のとおり、成分(B)がアニオン性ポリマーBIである場合は、該成分(B)は、親水化効果を高める観点、表面処理組成物の配合安定性及び吸着性の観点、並びに毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくはカルボキシ基を有するポリマー、スルホン酸基を有するポリマー、及びリン酸基を有するポリマーから選ばれる1種以上であり、より好ましくはカルボキシ基を有するポリマーであり、更に好ましくはカルボキシ基を有するビニル系ポリマー、セルロース誘導体、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種であり、より更に好ましくはポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸/マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/イタコン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/フマル酸共重合体、(メタ)アクリル酸/酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸/2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、マレイン酸/ジイソブチレン共重合体、マレイン酸/スチレン共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種であり、より更に好ましくはポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種であり、より更に好ましくはポリ(メタ)アクリル酸、及びポリ(メタ)アクリル酸塩から選ばれる少なくとも1種である。
【0065】
(構成単位(b1-II))
構成単位(a2)のイオン性基がアニオン性基である場合、成分(B)は、好ましくは構成単位(b1)としてカチオン性基を有する構成単位(b1-II)(以下、「構成単位(b1-II)」ともいう)を少なくとも含むカチオン性ポリマーBII(以下、「カチオン性ポリマーBII」ともいう)である。
ここで、「カチオン性基」とは、前述のとおり、カチオン基、又は、イオン化されてカチオン基になり得る基をいう。
カチオン性ポリマーBIIは、好ましくはカチオン性基を有する合成ポリマー又は天然由来ポリマー、及びこれらの塩から選ばれる1種以上である。
【0066】
カチオン性基を有する合成ポリマーとしては、具体的には、ポリ〔メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩〕、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩/ビニルピロリドン共重合体、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体等の第四級化ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸塩重合体;ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸/アクリルアミド共重合体等のジアリル第四級化アンモニウム塩重合体;ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体;ビニルピロリドン/アルキルアミノ(メタ)アクリレート共重合体;ビニルピロリドン/アルキルアミノ(メタ)アクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体;ビニルピロリドン/(メタ)アクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体;アルキルアクリルアミド/(メタ)アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体;ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン/アジピン酸共重合体;カチオン化ポリビニルアルコール、並びに特開昭53-139734号公報及び特開昭60-36407号公報に記載されているカチオン性ポリマー等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0067】
中でも、前記合成ポリマーとして、構成単位(b1-II)は、好ましくはカチオン性含有重合性不飽和モノマー由来の構成単位であり、より好ましくは下記式(2)で表されるカチオン性基を有する構成単位である。
【0068】
【化7】
〔式(2)中、R
8~R
11、X
3、X
4は、前記と同じである。〕
【0069】
構成単位(b1-II)は、例えば、下記式(2’)で表されるモノマー(b1-II’)由来の構成単位である。
【0070】
【化8】
〔式(2’)中、R
8~R
11、X
3、X
4は前記と同じである。〕
【0071】
式(2)及び(2’)中、R8~R11、X3、X4の具体例又は好ましい態様は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、以下のとおりである。
R8及びR9は、好ましくは水素原子である。
R10は、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X3は、好ましくは酸素原子である。
R11は、好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2のアルキレン基である。
X4は、N+R12R13R14X5が好ましく、R12、R13、R14は、前記と同様の観点から、好ましくはそれぞれメチル基又はエチル基であり、より好ましくはR12、R13、及びR14のいずれか一つはエチル基である。
R15、R16は、親水化効果を高める観点及び4級化反応の容易性の観点から、好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X5は、好ましくはハロゲンイオン又はC2H5SO4
-であり、より好ましくはC2H5SO4
-である。
【0072】
構成単位(b1-II)としては、効率的にポリイオンコンプレックスを形成して、親水化効果を高める観点及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくはN,N-(ジアルキルアミノ)アルキル(メタ)アクリル酸又はその四級化物由来の構成単位であり、より好ましくはN,N-(ジアルキルアミノ)アルキル(メタ)アクリル酸の四級化物由来の構成単位であり、更に好ましくは、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルの四級化物、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチルの四級化物、及び(メタ)アクリル酸3-(ジメチルアミノ)プロピルの四級化物から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、より更に好ましくは(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルのジエチル硫酸塩由来の構成単位である。
【0073】
成分(B)は、好ましくは構成単位(b1-II)のみからなる単独重合体又は構成単位(b1-II)以外の他のモノマー由来の構成単位を含有する共重合体である。成分(B)が構成単位(b1-II)を含む共重合体である場合、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれでもよい。他のモノマーとしては、前述の成分(A)で例示した(メタ)アクリル酸エステル、アルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、スチレン系モノマー等のノニオン性のモノマー;アニオン性基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げられる。
【0074】
カチオン性基を有する天然由来ポリマーは、天然物から抽出、精製等の操作により得られるポリマー及び該ポリマーを化学的に修飾したものであり、ポリマー骨格にグルコース残基を有するものが挙げられる。具体的には、カチオン化グアガム;カチオン化タラガム;カチオン化ローカストビーンガム;カチオン化セルロース;カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース等のカチオン化ヒドロキシアルキルセルロース;カチオン性澱粉などが挙げられる。
【0075】
〔構成単位(b2)〕
成分(B)は、前記構成単位(a2)のイオン性基の電荷と反対電荷のイオン性基を有する構成単位(b1)、及び、ベタイン基を有する構成単位(b2)を少なくとも含むベタインポリマーであってもよい。
すなわち、成分(B)がベタインポリマーである場合、アニオン性ポリマーBIは、好ましくは、アニオン性基を有する構成単位(b1-I)、及びベタイン基を有する構成単位(b2)を少なくとも含むアニオン性のベタインポリマーであり、カチオン性ポリマーBIIは、好ましくは、カチオン性基を有する構成単位(b1-II)、及びベタイン基を有する構成単位(b2)を少なくとも含むカチオン性のベタインポリマーである。
構成単位(b2)のベタイン基のカチオン部位は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは第四級アンモニウム基である。
構成単位(b2)のベタイン基は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくはスルホベタイン基、ホスホベタイン基、又はカルボベタイン基であり、より好ましくはスルホベタイン基又はホスホベタイン基であり、更に好ましくはスルホベタイン基であって、これらのベタイン基のカチオン部位は好ましくは第四級アンモニウム基である。
ベタイン基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0076】
構成単位(b2)は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは下記式(1)で表される構成単位である。
【0077】
【化9】
〔式(1)中、R
1~R
6、X
1、X
2は前記と同じである。〕
【0078】
構成単位(b2)は、好ましくは、スルホベタイン基、ホスホベタイン基、又はカルボベタイン基を有する構成単位である。
構成単位(b2)は、1種であってもよく、2種以上の異なる構成単位であってもよい。
構成単位(b2)は、例えば、下記式(1’)で表されるモノマー(b2’)由来の構成単位である。
【0079】
【化10】
〔式(1’)中、R
1~R
6、X
1、X
2は前記と同じである。〕
【0080】
式(1)及び(1’)中、R1~R6、X1、X2の具体例又は好ましい態様は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、以下のとおりである。
R1及びR2は、好ましくは水素原子である。
R3は、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X1は、好ましくは酸素原子である。
R4は、好ましくは炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、更に好ましくは炭素数2のアルキレン基である。
R5及びR6は、好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X2は、R4が炭素数1以上4以下のアルキレン基のとき、R17SO3
-、又はR17COO-を示し、好ましくはR17SO3
-である。R17は水酸基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキレン基又は炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、更に好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、より更に好ましくは炭素数3のアルキレン基である。
X2は、R4が-Y1-OPO3
--Y2-のとき、水素原子、又は炭素数1以上4以下の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1以上4以下の炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。
【0081】
構成単位(b2)は、好ましくは、N-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、N-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン等のスルホベタイン基を有するモノマー;2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等のホスホベタイン基を有するモノマー;N-カルボキシメチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、N-カルボキシメチル-N-(メタ)アクリロイルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン等のカルボベタイン基を有するモノマーから選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、より好ましくはスルホベタイン基を有するモノマー及びホスホベタイン基を有するモノマーから選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、更に好ましくはスルホベタイン基を有するモノマー由来の構成単位であり、より更に好ましくはN-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、及びN-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムベタインから選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、より更に好ましくはN-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン由来の構成単位である。
【0082】
成分(B)は、構成単位(b1)及びベタイン基を有する構成単位(b2)を少なくとも含むベタインポリマーである場合、成分(B)の全構成単位中の構成単位(b1)の含有量は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは1mol%以上、より好ましくは2mol%以上、更に好ましくは3mol%以上であり、そして、好ましくは50mol%以下、より好ましくは45mol%以下、更に好ましくは40mol%以下、より更に好ましくは30mol%以下、より更に好ましくは15mol%以下、より更に好ましくは10mol%以下、より更に好ましくは7mol%以下である。
成分(B)は、構成単位(b1)及びベタイン基を有する構成単位(b2)を少なくとも含むベタインポリマーである場合、成分(B)の全構成単位中の構成単位(b2)の含有量は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは50mol%以上、より好ましくは55mol%以上、更に好ましくは60mol%以上、より更に好ましくは70mol%以上、より更に好ましくは85mol%以上、より更に好ましくは90mol%以上、より更に好ましくは93mol%以上であり、そして、好ましくは99mol%以下、より好ましくは98mol%以下、更に好ましくは97mol%以下である。
なお、成分(B)の全構成単位中の各構成単位の含有量はNMR等の分析により測定することができる。また、成分(B)の製造時の各モノマーの仕込み比より算出することもできる。
【0083】
〔構成単位(b2)のベタイン基の当量〕/〔構成単位(b1)のイオン性基の当量〕の値は、好ましくは1超、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、より更に好ましくは7以上、より更に好ましくは9以上、より更に好ましくは10以上、より更に好ましくは15以上であり、そして、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、より更に好ましくは20以下である。
【0084】
(成分(B)の製造)
成分(B)が、構成単位(b1)とベタイン基を含む構成単位(b2)とを少なくとも含むベタインポリマーである場合、成分(B)の製造方法は特に制限はなく、例えば、下記の(x2)、(y2)の方法が挙げられる。
(x2)前記式(1’)で表されるモノマー(b2’)及び前記アニオン性基含有重合性不飽和モノマー又は前記カチオン性含有重合性不飽和モノマーを含む原料モノマーを共重合する方法
(y2)前記式(1’-1)で表されるモノマー及び前記アニオン性基含有重合性不飽和モノマー又は前記カチオン性基含有重合性不飽和モノマーを含む原料モノマーを共重合した後、ベタイン化剤によってベタイン化する方法
これらの中でも、モノマーの入手性及び製造の容易性の観点から、(y2)の方法が好ましい。
【0085】
(y2)の方法を用いる場合であって、例えば構成単位(b2)がスルホベタイン基を有するモノマー由来の構成単位である場合は、前記式(1’-1)で表されるモノマーを含む原料モノマーを重合した後、ベタイン化剤として前記式(1’-2)で表される化合物又は前記式(1’-3)で表される化合物を反応させてベタイン化することができ、中でも、前記式(1’-2)で表される化合物が好ましい。
【0086】
成分(B)の市販のカチオン性ポリマーとしては、例えば下記が挙げられる。
(メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩/ビニルピロリドン共重合体)
ポリクオタニウム-11:例えばガフカット734(アイエスピー・ジャパン社)、ガフカット755N(アイエスピー・ジャパン社)等
(メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体)
ポリクオタニウム-52:例えばソフケア KG-101W-E:カチオン電荷密度(文献値)0.8meq/g(花王株式会社)等
(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド)
ポリクオタニウム-6:例えばMERQUAT100:カチオン電荷密度(文献値)6.2meq/g(Lubrizol Advanced Materials社)等
(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体)
ポリクオタニウム-22:例えばMERQUAT280:カチオン電荷密度2.2meq/g、MERQUAT295:カチオン電荷密度:5.7meq/g(以上、Lubrizol Advanced Materials社)等
(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体)
ポリクオタニウム-7:例えばMERQUAT550:カチオン電荷密度(文献値)3.1meq/g(Lubrizol Advanced Materials社)等
(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸/アクリルアミド共重合体)
ポリクオタニウム-39:例えばMERQUAT3331PR:カチオン電荷密度0.42meq/g(Lubrizol Advanced Materials社)等
(カチオン化ポリビニルアルコール)
ゴーセネックスK-434(日本合成化学工業(株)製)、CM318:カチオン電荷密度0.35meq/g((株)クラレ)等
(カチオン化グアガム)
Jaguar Excel:カチオン電荷密度1.1meq/g(Solvay(Novecare)社製)等
(カチオン化タラガム)
カチナール CTR-100:カチオン電荷密度1.3meq/g(東邦化学工業(株)製)等
(カチオン化ローカストビーンガム)
カチナール CLB-100(東邦化学工業(株)製)等
(カチオン化ヒドロキシエチルセルロース)
ポリクオタニウム-10(塩化o-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース):例えばユーケアポリマーJR-400:カチオン電荷密度1.3meq/g(ダウケミカル社)、ポイズC-60H:カチオン電荷密度1.1~1.8meq/g(花王(株)製)、ポイズC-150L:カチオン電荷密度0.7~1.1meq/g(花王(株)製)、ポイズC-80M:カチオン電荷密度0.9~1.2meq/g(花王(株)製)
(カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース)
ソフケア C-HP2:カチオン電荷密度0.5meq/g(花王株式会社)等
【0087】
成分(B)の重量平均分子量は、親水化効果を高める観点、表面処理組成物の吸着性の観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは5,000以上、より更に10,000以上であり、そして、表面処理組成物の配合安定性の観点から、好ましくは3,000,000以下、より好ましくは2,000,000以下である。成分(B)の重量平均分子量は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0088】
成分(B)がアニオン性ポリマーBIであって、該アニオン性ポリマーBIがアニオン性のベタインポリマー以外のアニオン性ポリマーである場合、該成分(B)のアニオン電荷密度は、好ましくは-15meq/g以上、より好ましくは-14meq/g以上、更に好ましくは-13meq/g以上であり、そして、好ましくは-1meq/g以下、より好ましくは-3meq/g以下、更に好ましくは-5meq/g以下、より更に好ましくは-7meq/g以下、より更に好ましくは-10meq/g以下である。
アニオン性ポリマーBIがアニオン性のベタインポリマーである場合、成分(B)のアニオン電荷密度は、好ましくは-5meq/g以上、より好ましくは-3meq/g以上、更に好ましくは-2meq/g以上、より更に好ましくは-1meq/g以上、より更に好ましくは-0.5meq/g以上、より更に好ましくは-0.3meq/g以上であり、そして、好ましくは-0.05meq/g以下、より好ましくは-0.1meq/g以下、更に好ましくは-0.15meq/g以下である。
この場合、成分(B)のアニオン電荷密度は、成分(B)中のアニオン性基のmol数/g×1000(アニオン電荷密度;meq/g)から成分(B)中のカチオン性基のmol数/g×1000(カチオン電荷密度;meq/g)を差し引いた値をいう。
成分(B)のアニオン電荷密度(meq/g)は、ポリマー中のアニオン性基を有するモノマー由来の構成単位の種類及びモル比率から算出することができる。なお、ポリマー構成する構成単位の種類及びモル比率はNMR等の分析により測定することができる。
成分(B)がアニオン性ポリマーBIである場合、該成分(B)は、全体としてアニオン性を示すポリマーであるが、本発明の効果を損なわない範囲で該ポリマー中にカチオン性基を有するものであってもよい。
また、成分(B)は、全体としてアニオン性を示すポリマーを2種以上用いてもよい。この場合のアニオン電荷密度は、それぞれのポリマーのアニオン電荷密度と配合量から加重平均して算出することにより求めることができる。
【0089】
成分(B)がカチオン性ポリマーBIIであって、該カチオン性ポリマーBIIがカチオン性のベタインポリマー以外のカチオン性ポリマーである場合、該成分(B)のカチオン電荷密度は、好ましくは0.1meq/g以上、より好ましくは0.5meq/g以上、更に好ましくは1.0meq/g以上、より更に好ましくは2.0meq/g以上、より更に好ましくは3.0meq/g以上であり、そして、好ましくは6.0meq/g以下、より好ましくは5.0meq/g以下、更に好ましくは4.0meq/g以下である。
カチオン性ポリマーBIIがカチオン性のベタインポリマーである場合、成分(B)のカチオン電荷密度は、好ましくは0.01meq/g以上、より好ましくは0.05meq/g以上、更に好ましくは0.1meq/g以上、より更に好ましくは0.15meq/g以上であり、そして、好ましくは1.0meq/g以下、より好ましくは0.8meq/g以下、更に好ましくは0.6meq/g以下、より更に好ましくは0.4meq/g以下、より更に好ましくは0.2meq/g以下である。
この場合、成分(B)のカチオン電荷密度は、成分(B)中のカチオン性基のmol数/g×1000(カチオン電荷密度;meq/g)から成分(B)中のアニオン性基のmol数/g×1000(アニオン電荷密度;meq/g)を差し引いた値をいう。
成分(B)のカチオン電荷密度は、ポリマーを構成する構成単位の種類及びモル比率から算出することができる。
なお、ポリマーを構成する構成単位の種類及びモル比率はNMR等の分析により測定することができる。
成分(B)がカチオン性ポリマーBIIである場合、該成分(B)は、全体としてカチオン性を示すポリマーであるが、本発明の効果を損なわない範囲で該ポリマー中にアニオン性基を有するものであってもよい。
また、成分(B)は、全体としてカチオン性を示すポリマーを2種以上用いてもよい。この場合のカチオン電荷密度は、それぞれのポリマーのカチオン電荷密度と配合量から加重平均して算出することにより求めることができる。
【0090】
〔成分(C)〕
本発明に係る表面処理組成物は、成分(C)として電解質を含有する。前記表面処理組成物中で成分(A)と成分(B)とが成分(C)により溶解した状態で該表面処理組成物を固体表面に適用することができ、該表面処理組成物中の成分の析出が抑制されているため、固体表面を均一に処理することができ、親水化効果を向上させることができる。また、工程1により固体表面上の表面処理組成物中の成分(C)の濃度が低下することにより、成分(A)のイオン性基と成分(B)のイオン性基の作用により形成されたポリイオンコンプレックスが析出し、該ポリイオンコンプレックスを固体表面に効果的に吸着させることができ、表面処理組成物の吸着性が更に向上し、親水的なベタイン基により固体表面に対する親水化効果を向上させることができると考えられる。
そして、処理する固体表面が毛髪表面である場合においては、上記のとおりポリイオンコンプレックスが毛髪表面により効果的に吸着し、親水的なベタイン基により毛髪表面に対する親水化効果を向上させることができ、これにより毛髪間のメニスカス力が増大し、毛髪のシュリンク抑制効果を更に向上させることができると考えられる。
【0091】
本発明において「電解質」とは、水中でイオン解離する化合物を意味する。
成分(C)としては、成分(A)と成分(B)とが成分(C)により系中に溶解した状態とし、表面処理組成物中の成分の析出を抑制して、配合安定性を向上させる観点から、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基、及びこれらの塩が挙げられる。
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸;ポリグルタミン酸等のポリカルボン酸;グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;メタンスルホン酸、N-メチルタウリン、スルファミン酸、キシレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のスルホン酸;ラウリル硫酸等の硫酸エステル;メチルリン酸、エチルリン酸等の有機リン酸エステルなどが挙げられる。
無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、炭酸、チオシアン酸、リン酸等が挙げられる。
有機塩基としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。
無機塩基としては、カリウム、ナトリウム、リチウムといったアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。また、無機塩基としてアンモニアを用いてもよい。
塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム、塩化アンモニウム、炭酸ナトリウム、リン酸二カリウム、硫酸モノエタノールアミン等が挙げられる。
これらは、それぞれ1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
成分(C)は、表面処理組成物の製造の際には、上記の有機酸又は無機酸と有機塩基又は無機塩基とを配合して、表面処理組成物中にて塩を形成するようにしてもよい。
【0092】
これらの中でも、成分(C)は、表面処理組成物の配合安定性の観点から、好ましくは塩であり、より好ましくは水溶性無機塩である。水溶性無機塩の20℃における水100gに対する溶解度は、好ましくは10g以上、より好ましくは20g以上、更に好ましくは30g以上である。
成分(C)が、水溶性無機塩であれば、表面処理組成物を固体表面に適用した後に水洗により系中の成分(C)の濃度を低下させ、固体表面に前述のポリイオンコンプレックスを効果的に吸着し、固体表面に高い親水性を付与することができ、特に毛髪表面の適用においては毛髪のシュリンク抑制効果を向上させることができる。当該観点から、成分(C)は、更に好ましくはアルカリ金属塩及び第2族元素の金属塩から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化マグネシウムから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは塩化ナトリウム及び塩化カリウムから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは塩化ナトリウムである。
【0093】
〔水性媒体〕
本発明に係る表面処理組成物は、好ましくは水性媒体を含有する。水性媒体としては、水;エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素数6以下の低分子ジオール及びトリオールが挙げられる。中でも、前記表面処理組成物は水を含むことが好ましい。
【0094】
〔他の成分〕
本発明に係る表面処理組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)~(C)以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、両性界面活性剤、酸化防止剤、シリコーン、芳香族アルコール、成分(A)及び(B)以外のポリマー、油剤、ビタミン剤、殺菌剤、抗炎症剤、抗フケ剤、防腐剤、キレート剤、保湿剤、パール剤、セラミド類、香料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0095】
本発明に係る表面処理組成物の製造は、例えば、成分(A)~成分(C)及び必要に応じて他の成分を配合し、公知の撹拌装置等を用いて混合することにより製造できる。
【0096】
前記表面処理組成物中の成分(A)の含有量又は配合量は、親水化効果を高める観点、表面処理組成物の配合安定性及び吸着性の観点、並びに毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、より更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.7質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1.5質量%以下である。
【0097】
前記表面処理組成物中の成分(B)の含有量又は配合量は、親水化効果を高める観点、表面処理組成物の配合安定性及び吸着性の観点、並びに毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、より更に好ましくは0.01質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下である。
【0098】
前記表面処理組成物中の成分(A)及び成分(B)の合計含有量又は合計配合量は、親水化効果を高める観点、表面処理組成物の吸着性の観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは0.0105質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.7質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上であり、そして、表面処理組成物の配合安定性及びハンドリング性の観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下である。
【0099】
前記表面処理組成物中の成分(C)の含有量又は配合量は、配合安定性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、より更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.7質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上であり、そして、親水化効果を高める観点、表面処理組成物の吸着性の観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
【0100】
前記表面処理組成物中の水性媒体の含有量又は配合量は、水性媒体として水を用いる場合には、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下である。
【0101】
成分(A)がカチオン性ベタインポリマーAIであり、かつ、成分(B)がアニオン性ポリマーBIである場合、下記式(I-I)で表される成分(A)のカチオン量と下記式(II-I)で表される成分(B)のアニオン量の当量比〔(成分(A)のカチオン量)/(成分(B)のアニオン量)〕は、親水化効果を高める観点、表面処理組成物の配合安定性及び吸着性の観点、並びに毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、より更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは7以下、より更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1.3以下、より更に好ましくは1.1以下である。
成分(A)のカチオン量=〔成分(A)のカチオン電荷密度(meq/g)〕×〔表面処理組成物中の成分(A)の含有量又は配合量(g)〕 (I-I)
成分(B)のアニオン量=〔成分(B)のアニオン電荷密度(meq/g)〕×〔表面処理組成物中の成分(B)の含有量又は配合量(g)〕 (II-I)
【0102】
成分(A)がアニオン性ベタインポリマーAIIであり、かつ、成分(B)がカチオン性ポリマーBIIである場合、下記式(I-II)で表される成分(A)のアニオン量に対する下記式(II-II)で表される成分(B)のカチオン量の当量比〔(成分(B)のカチオン量)/(成分(A)のアニオン量)〕は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、より更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは7以下、より更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1.3以下、より更に好ましくは1.1以下である。
成分(A)のアニオン量=〔成分(A)のアニオン電荷密度(meq/g)〕×〔表面処理組成物中の成分(A)の含有量又は配合量(g)〕 (I-II)
成分(B)のカチオン量=〔成分(B)のカチオン電荷密度(meq/g)〕×〔表面処理組成物中の成分(B)の含有量又は配合量(g)〕 (II-II)
【0103】
<工程1>
工程1は、前記表面処理組成物が適用された固体表面に水性媒体を接触させる工程である。
【0104】
〔工程1-1〕
工程1の前に、前記表面処理組成物を固体表面に適用する工程1-1を更に含むことが好ましい。
工程1-1における前記表面処理組成物の固体表面への適用方法は特に制限はないが、例えば、下記の(i-1)~(iii-1)の方法が挙げられる。
(i-1)表面処理組成物に固体を浸漬させる方法
(ii-1)表面処理組成物を固体表面に噴霧又は塗布する方法
(iii-1)表面処理組成物を用いて常法に従い固体表面を洗浄する方法
前記表面処理組成物を固体表面に適用する際の周辺環境温度は、親水化効果を高める観点、及び作業容易性の観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
前記(i-1)の方法における浸漬する時間は、親水化効果を高める観点及び経済性の観点から、好ましくは0.1分以上、より好ましくは0.3分以上、更に好ましくは0.5分以上、より更に好ましくは1分以上であり、そして、好ましくは60分以下、より好ましくは50分以下である。
前記(ii-1)の方法における噴霧又は塗布する方法は、固体表面の広さ(面積)等に応じて適宜選択できる。また、噴霧した後、スポンジ等を用いて薄く塗りのばしてもよい。
前記表面処理組成物の固体表面への適用量は、例えば、疎水性硬質表面の場合、1m2あたり20mL以上1,000mL以下である。
【0105】
工程1において、表面処理組成物が適用された固体表面への水性媒体の接触は、固体表面上の表面処理組成物を水性媒体により希釈するように行うことが好ましい。すなわち、工程1は、前記表面処理組成物が適用された固体表面に水性媒体を接触させて、該固体表面上の表面処理組成物を水性媒体により希釈する工程であることが好ましい。
希釈により固体表面に付着した表面処理組成物中に含まれる成分(C)の濃度が低下し、ポリイオンコンプレックスが形成されて析出して固体表面に効果的に吸着し、成分(A)に含まれるベタイン基により固体表面に高い親水性を付与することができる。
工程1における希釈倍率は、親水化効果を高める観点、及び毛髪のシュリンク抑制効果を高める観点から、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、更に好ましくは5倍以上、より更に好ましくは10倍以上、より更に好ましくは15倍以上であり、そして、好ましくは100倍以下、より好ましくは70倍以下、更に好ましくは50倍以下、より更に好ましくは30倍以下である。
本発明において「希釈倍率」とは、工程1-1で固体表面に適用される表面処理組成物の容量αに対する工程1-1で固体表面に適用される表面処理組成物の容量α及び工程1で希釈に用いる水性媒体の容量βの合計量の比〔(α+β)/α〕である。
【0106】
工程1において、表面処理組成物が適用された固体表面への水性媒体の接触方法は特に制限はないが、例えば、下記の(i)~(iii)の方法が挙げられる。
(i)表面処理組成物が適用された固体を水性媒体に浸漬させる方法
(ii)表面処理組成物が適用された固体表面に水性媒体を噴霧又は塗布する方法
(iii)表面処理組成物が適用された固体表面を常法に従い水性媒体で洗浄する方法
【0107】
工程1で用いる水性媒体としては、水;エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素数6以下の低分子ジオール及びトリオールが挙げられる。中でも、水を含むことが好ましい。
工程1で水性媒体として用いる水は、特に限定されず、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を用いることができる。
工程1で用いる水性媒体中の水の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上であり、そして、上限は100質量%である。
【0108】
[毛髪処理方法]
本発明の親水化方法は、前述のとおり、毛髪表面に高い親水性を付与し、毛髪のシュリンクを抑制する観点から、前記固体表面が毛髪表面である、毛髪処理方法として用いることができる。
前記毛髪処理方法は、好ましくは工程1-1として前記表面処理組成物を毛髪表面に適用する工程と、工程1として表面処理組成物が適用された毛髪表面に水性媒体を接触させる工程とを含む。
【0109】
工程1-1における前記表面処理組成物は、該表面処理組成物を毛髪処理剤に含有させて用いることが好ましい。この場合、前記表面処理組成物は毛髪のシュリンク抑制効果に優れるため、前記毛髪処理剤を毛髪シュリンク抑制剤として用いることができる。
前記毛髪処理剤としては、シャンプー等の毛髪洗浄剤、コンディショナー、トリートメント、染毛剤などの毛髪化粧料が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果を得る観点、及び日常のヘアケア行動により簡単に毛髪のシュリンクを抑制できる観点からはコンディショナーが好ましい。毛髪処理剤の剤型には特に制限はなく、例えば液体状、泡状、ペースト状、クリーム状等の任意の剤型とすることができる。これらの剤型の中でも、前記毛髪処理剤は液体状であることが好ましい。
工程1-1における前記毛髪処理剤の毛髪表面への適用方法としては、該毛髪処理剤を毛髪に塗布、噴霧又は流延する方法、該毛髪処理剤に毛髪を浸漬させる方法等が挙げられる。
前記毛髪処理剤を適用する際の毛髪は乾燥状態でも湿潤状態でもよい。
前記毛髪処理剤を適用する際の周辺環境温度は、効率よく表面処理を行う観点から、好ましくは5~50℃、より好ましくは15~45℃である。
前記毛髪処理剤の適用時間は、好ましくは5秒~60分間、より好ましくは5秒~20分間である。前記毛髪処理剤の適用時間とは、前記毛髪処理剤を毛髪に塗布、噴霧又は流延する時間、あるいは前記毛髪処理剤に毛髪を浸漬させる時間を意味する。
【0110】
工程1における水性媒体の接触方法としては、工程1-1により前記表面処理組成物を毛髪表面へ適用した後、該表面処理組成物が適用された毛髪表面を水で洗浄する方法が好ましい。これにより、毛髪表面上の前記表面処理組成物が水により希釈される。そして、前記表面処理組成物は成分(C)を含有するため、該表面処理組成物中に含まれる成分(C)の濃度が低下し、ポリイオンコンプレックスが形成されて析出して毛髪表面に吸着し、成分(A)に含まれるベタイン基により毛髪表面に高い親水性を付与することができる。その結果、毛髪間のメニスカス力が増大し、毛髪のシュリンク抑制効果を高めることができる。
工程1における毛髪の洗浄方法は特に制限はなく、例えば水を用いて公知の方法により毛髪を濯ぐことにより行うことができる。
【0111】
前記毛髪処理方法の具体的な方法としては、例えば、毛髪処理剤がシャンプー等の毛髪洗浄剤である場合は、該毛髪洗浄剤を毛髪に塗布し、泡立てて毛髪を洗浄した後、水で洗い流す方法;毛髪処理剤がコンディショナー、トリートメント、染毛剤等の毛髪化粧料である場合は、該毛髪化粧料を毛髪に塗布し、必要に応じて短時間(0.1~5分程度)放置した後に水で洗い流す方法が挙げられる。以上のような工程を日常的に繰り返すことにより、容易に、かつ短期間で毛髪のシュリンクを抑制することができる。
【実施例0112】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、各種測定は、以下の方法により行った。
【0113】
(カチオン性ベタインポリマーAI及びカチオン性ポリマーBIIの重量平均分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィー法を用いて下記の測定条件により測定した。
〔測定条件〕
カラム:「TSKgel α-M」(東ソー(株)製)を2本直列に連結
カラム温度:40℃
溶離液:0.15mol/LNa2SO4/1質量%CH3COOH水溶液
流速:1.0mL/min
検出器:示差屈折率検出器
サンプルサイズ:5mg/mL
標準物質:プルラン
【0114】
(アニオン性ポリマーBI及びアニオン性ベタインポリマーAIIの重量平均分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィー法を用いて下記の測定条件により測定した。
〔測定条件〕
カラム:「TSKgel G4000PWXL」+「TSKgel G2500PWXL」(東ソー(株))
カラム温度:40℃
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1(体積比)
流速:1.0mL/min
検出器:示差屈折率検出器
サンプルサイズ:5mg/mL
標準物質:プルラン
【0115】
製造例1(カチオン性ベタインポリマー1の製造)
(工程1)
内容量1000mLの四つ口フラスコにエタノール(富士フイルム和光純薬(株)製)を126.30g入れ、78℃に昇温して還流させた。そこにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(富士フイルム和光純薬(株)製)181.12g、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩の90%水溶液23.60g、及びエタノール53.20gを混合させた溶液と、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(富士フイルム和光純薬(株)製)5.83g及びエタノール10.00gを混合させた溶液とをそれぞれ2時間かけて滴下して反応を行った。滴下終了後、78℃で4時間熟成させた後に冷却し、ポリマー溶液を得た。
なお、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩の90%水溶液は、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(富士フイルム和光純薬(株)製)と硫酸ジエチル(富士フイルム和光純薬(株)製)とをmol比(1:1)で混合して得た。
(工程2)
内容量1000mLの四つ口フラスコに、工程1で得られたポリマー溶液94.70g、炭酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)3.15g、及び水を150.00g添加し、50℃に昇温した。そこに1,3-プロパンスルトン(東京化成工業(株)製)38.70gを1時間かけて滴下して反応を行った。滴下終了後、50℃で3時間熟成させた後に、90℃/20kPaで2時間減圧加熱することによりエタノールを留去し、カチオン性ベタインポリマー1(N-(3-スルホプロピル)-N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン/メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩共重合体)(N-(3-スルホプロピル)-N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン由来の構成単位の含有量:95mol%、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩由来の構成単位の含有量:5mol%)を含有する水溶液を得た。ポリマー1の重量平均分子量及び電荷密度は、表1及び表2に示す。
【0116】
製造例2(カチオン性ベタインポリマー2の製造)
製造例1において、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(富士フイルム和光純薬(株)製)を133.76g、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩の90%水溶液を73.60g、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(富士フイルム和光純薬(株)製)を2.04g、炭酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)を7.15g、及び1,3-プロパンスルトン(東京化成工業(株)製)を111.2gに変更し、カチオン性ベタインポリマー2(N-(3-スルホプロピル)-N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン/メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩共重合体)(N-(3-スルホプロピル)-N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン由来の構成単位の含有量:80mol%、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩由来の構成単位の含有量:20mol%)を含有する水溶液を得た。ポリマー2の含有量、重量平均分子量及び電荷密度は、表1及び表2に示す。
【0117】
製造例3(アニオン性ベタインポリマー3の製造)
(工程1)
内容量500mLの四つ口フラスコにエタノール(富士フイルム和光純薬(株)製)155.38g、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(富士フイルム和光純薬(株)製)77.76g、及びメタクリル酸(富士フイルム和光純薬(株)製)2.24gを入れ、65℃に昇温して還流させた。そこに、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬(株)製)1.29g及びエタノール30.00gを混合させた溶液を添加し、6時間熟成させた後に冷却し、ポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液をヘキサン(富士フイルム和光純薬(株)製)を用いて再沈殿してポリマーを回収した。50℃/20kPaで12時間減圧加熱することで溶媒を留去し、乾燥したポリマーを得た。
(工程2)
内容量200mLの四つ口フラスコに、工程1で得られた乾燥したポリマー20.00g、炭酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)1.59g、エタノール(富士フイム和光純薬(株)製)40.00g、及び水40.00gを添加し、50℃に昇温した。そこに1,3-プロパンスルトン(関東化学(株)製)16.61gを40分かけて滴下して反応を行った。滴下終了後、50℃で5時間熟成させた後に冷却し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をアセトン(富士フイルム和光純薬(株)製)を用いて再沈殿してポリマーを回収し、50℃/20kPaで12時間減圧加熱することで溶媒を留去し、乾燥したアニオン性ベタインポリマー3(N-(3-スルホプロピル)-N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン/メタクリル酸共重合体)(N-(3-スルホプロピル)-N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン由来の構成単位の含有量:95mol%、メタクリル酸由来の構成単位の含有量:5mol%)を得た。ポリマー3の重量平均分子量及び電荷密度は、表1及び表2に示す。
【0118】
(表面処理組成物の調製)
調製例1~17、比較調製例1~5
表1及び表2に示す配合組成に従って、成分(A)、成分(B)、成分(C)として塩化ナトリウム、及び水を混合して、各表面処理組成物を調製した。
なお、表中の各成分の配合量は、いずれも有効成分量(質量%)である。
【0119】
(固体表面の親水化処理)
実施例1~3,7~17及び比較例1~3,5
調製した表面処理組成物を用いて、以下の方法により固体表面の親水化処理を行った。
(工程1-1)
内容量200mLのビーカーに、調製した表面処理組成物10mLを添加し、基板(縦15mm×横25mm×厚さ1mmのポリプロピレン板)を1分浸漬し、表面処理組成物を基板表面に適用した。
(工程1)
次いで、イオン交換水190mLを添加し、表面処理組成物が適用された基板表面に水性媒体を接触させて希釈した(希釈倍率:20倍)。次いで、基板を液から取り出し、イオン交換水を用いて20秒間洗浄した。その後、乾燥させずに超純水に浸し、親水化処理された基板を得た。
【0120】
実施例4~6
実施例1において、工程1の添加するイオン交換水の量を変更して希釈倍率を表1に示すとおり変更した以外は同様にして、親水化処理された基板を得た。
【0121】
比較例4
実施例1において、工程1を行わずに、工程1-1で表面に表面処理組成物を適用された基板を評価に用いた。
【0122】
(親水化効果の評価)
実施例及び比較例で処理された各基板を三態系用の試料台に貼りつけ、超純水を入れた三態系用のセルに入れた。測定用基板をセットしたセルを全自動接触角測定計(協和界面科学(株)製「DM-701」)のステージに配置し、1μLの空気を付着させて0.2秒後の水中接触角の値を接線法により求めた。
接触角の値は、得られた水中接触角の値を180°から差し引いた値を用いる。接触角の値が小さいほど、親水化効果が高い。
【0123】
(配合安定性の評価)
調製した表面処理組成物10mLの調製直後の表面処理組成物の状態を目視観察し、下記の評価基準に従い、表面処理組成物の性状として配合安定性を評価した。下記の評価基準で3であれば配合安定性に優れる。下記の評価基準で3であれば実用上特に好適であり、下記の評価基準で2であれば実用上好適である。
〔評価基準〕
3:析出物が認められず、均一で透明な状態である。
2:析出物が認められるが、微細で全体に均一に分散し、白濁した状態である。
1:析出物が認められ、局所的に凝集(分離)又は沈殿している。
【0124】
(吸着性の評価)
調製した表面処理組成物10mLにイオン交換水190mLを添加して希釈した。希釈後の表面処理組成物の状態を目視観察し、下記の評価基準に従い、吸着性を評価した。下記の評価基準で3であれば表面処理組成物の吸着性に優れるため、固体表面へ高い親水化効果を付与する処理を行うことができる。下記の評価基準で3であれば実用上特に好適であり、下記の評価基準で2であれば実用上好適である。
〔評価基準〕
3:微細で全体に均一に分散した析出物が認められ、白濁した状態である。
2:析出物が認められず、均一で透明な状態である。
1:粗大な凝集物又は沈殿が認められる。
ここで、本発明においては、表面処理組成物が適用された固体表面に水性媒体を接触させた際にポリイオンコンプレックスが形成されて析出することにより、該ポリイオンコンプレックスが固体表面に吸着することで親水化効果が高まると考えられる。そのため、上記において希釈時に析出物が微細で全体に均一に分散し、白濁した状態であるものをスコア3とした。また、ポリイオンコンプレックスの析出により凝集物又は沈殿が認められるものは、固体表面を均一に処理することができないと推察されるため、スコア1とした。
【0125】
(ハンドリング性の評価)
調製した表面処理剤組成物50mLをスクリュー管(株式会社マルエム製 No.7)に入れ、5回上下に振とう、その直後から目視により消泡するまでの時間を測定し、下記の評価基準により評価した。消泡までの時間が短い程、表面処理組成物の粘度が低く、ハンドリング性に優れる傾向にある。そのため、下記の評価基準でAであれば、固体表面の親水化処理を行う際のハンドリング性に優れることを意味する。
〔評価基準〕
A:消泡までの時間が600秒未満
B:消泡までの時間が600秒以上
なお、評価Bである実施例14で用いた表面処理組成物の粘度を、B型粘度計(東機産業(株)社製「TVB-10形」)を用いて測定したところ、68mPa・sであった。測定条件は、サンプル量:50mL、SPINDLE No.:M2、回転数:30rpmで行った。
【0126】
【0127】
【0128】
表1及び表2中の各成分を以下に示す。
ポリマー4:ポリアクリル酸部分中和物(The Dow Chemical Company製「ACUSOL 445G Polymer」、分子量:4,500(カタログ値))
ポリマー5:カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業(株)製「セロゲン F-5A」)
ポリマー6:ポリアクリル酸(東亞合成(株)製「ジュリマー AC-10LHPK」)
ポリマー7:カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(花王(株)社製「ポイズ C-80M」)
【0129】
表1及び表2より、実施例の方法は、比較例と比べて接触角が小さく、親水化効果が高いことがわかる。
【0130】
本発明の方法を毛髪処理方法として用いる際のシュリンク抑制効果について、以下に示す方法によりシュリンク率を測定し、評価した。
(毛髪のシュリンク抑制効果の評価)
実施例1,17、及び比較例1で調製した各処理液10mLを、1gのアフリカ系アメリカ人の毛髪トレスに塗布し、1分間静置後、水道水で20回指を通しながら濯ぐことにより、評価用トレスを得た。得られたトレスを、水道水を入れたポリカップに30秒間浸漬した後、一気に引き上げ、大気中で30分間静置した。30分経過後のトレスの
図1に示す最大長(Lmax)及び最大幅(Wmax)を測定し、シュリンク係数(Shrink Coefficient)(=Wmax/Lmax)を算出した。
ここで、以下に示す組成のプレーンシャンプーで洗ったトレスを水道水を入れたポリカップに浸漬し、引き揚げた直後のシュリンク係数を「シュリンク率」が0であるとし、前記プレーンシャンプーで洗った後、市販のコンディショナー(花王(株)製「エッセンシャルヘアコンディショナー」)で処理したトレスを水道水を入れたポリカップに浸漬し、引き揚げてから30分経過後のシュリンク係数を「シュリンク率」が100であるとして、それらの値から、シュリンク係数を規格化したものを、シュリンク率とした。結果を表3に示す。
<プレーンシャンプーの組成>
(プレーンシャンプー) (質量%)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム
(エマールE-27C(有効成分27質量%)、花王(株)製) 42
ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド
(アミノーン C-11S、花王(株)製) 3
クエン酸 0.2
メチルパラベン 0.3
精製水 残 余
計 100
【0131】
【0132】
表3より、接触角が低いほどシュリンク率の値が低いことがわかる。このことから、本発明の方法は、毛髪表面に高い親水性を付与することができ、その結果、シュリンク抑制効果を向上させることができることがわかる。