(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161635
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20221014BHJP
A61Q 5/04 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066586
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹治 範文
(72)【発明者】
【氏名】久米 希美
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD131
4C083AD132
4C083CC31
4C083CC34
4C083EE06
4C083EE25
(57)【要約】
【課題】洗浄後の乾燥における毛髪のシュリンクを抑制し、かつ、乾燥後の毛髪表面に毛髪化粧料由来の目立った付着物が析出することを抑制でき、特に、縮れ毛の効率的な整髪に適した毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】下記成分(A)及び(B)を含有し、前記成分(B)のアニオン電荷量に対する前記成分(A)のカチオン電荷量の比が0.30以上8.00以下である、毛髪化粧料。
(A)N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコールの共重合体
(B)架橋型ポリアクリル酸
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)及び(B)を含有し、前記成分(B)のアニオン電荷量に対する前記成分(A)のカチオン電荷量の比が0.30以上8.00以下である、毛髪化粧料。
(A)N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコールの共重合体
(B)架橋型ポリアクリル酸
【請求項2】
前記成分(B)がカルボマーである、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
前記成分(A)の含有量が、0.05質量%以上5.00質量%以下である、請求項1又は2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
前記成分(B)の含有量が、0.001質量%以上0.100質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
シュリンク抑制剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の毛髪化粧料を毛髪に適用する工程と、前記毛髪化粧料を適用した毛髪を水洗する工程とを有する、毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪洗浄剤やヘアコンディショナー等の毛髪化粧料、及び、洗顔料等の洗浄剤において、洗浄後の毛髪のきしみや肌のつっぱり感の改善を目的として、カチオン性基含有共重合体を配合することが知られており、このような配合成分の一つとして、ポリクオタニウム-52が挙げられる。ポリクオタニウム-52とは、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコールの共重合体である。
【0003】
また、上記のような毛髪化粧料や洗浄剤には、増粘剤として作用するアクリル酸/メタクリル酸アルキル共重合体、いわゆるアルキル変性カルボキシビニルポリマーが配合されることも一般的である。
【0004】
例えば、特許文献1及び2には、ポリクオタニウム-52(商品名「ソフケア(登録商標;以下、表記省略。)KG-301W」、花王株式会社製)及びアクリル酸/メタクリル酸アルキル共重合体を配合成分とする洗顔料の実施例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-282659号公報
【特許文献2】特開2005-206804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、毛髪化粧料の中には、くせ毛を緩和又は矯正したり、毛髪の広がりを抑制し、セットしやすくする等の目的で使用される種類のものもある。しかしながら、アフリカ系アメリカ人等の強い縮れ毛を有する髪質の多くの人は、整髪に多量の毛髪化粧料や時間、手間を要する等の苦労をしている。特に、洗髪後の乾燥において、毛髪全体の幅が膨らみながら長さが縮む、いわゆるシュリンクが生じ、また、乾燥後の毛髪表面に毛髪化粧料の含有成分の析出による付着物が目立つ状態となる場合もあった。
【0007】
上記特許文献1及び2に記載されている洗顔料の含有成分に対応する毛髪化粧料、すなわち、ポリクオタニウム-52及びアクリル酸/メタクリル酸アルキル共重合体を含有する毛髪化粧料では、このようなシュリンクを抑制し、かつ、乾燥後の毛髪表面に毛髪化粧料由来の目立った付着物が析出することを抑制する効果が十分に得られなかった。
【0008】
本発明は、洗浄後の乾燥における毛髪のシュリンクを抑制し、かつ、乾燥後の毛髪表面に毛髪化粧料由来の目立った付着物が析出することを抑制でき、特に、縮れ毛の効率的な整髪に適した毛髪化粧料に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、所定のカチオン性ポリマー及び架橋型ポリアクリル酸を所定の比率で含有する毛髪化粧料が、毛髪のシュリンクを抑制し、かつ、目立った付着物の析出の抑制に有効であることを見出したことに基づく。
【0010】
すなわち、本発明は、下記[1]及び[2]に関する。
[1] 下記成分(A)及び(B)を含有し、前記成分(B)のアニオン電荷量に対する前記成分(A)のカチオン電荷量の比が0.30以上8.00以下である、毛髪化粧料。
(A)N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコールの共重合体
(B)架橋型ポリアクリル酸
[2] [1]に記載の毛髪化粧料を毛髪に適用する工程と、前記毛髪化粧料を適用した毛髪を水洗する工程とを有する、毛髪処理方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の毛髪化粧料は、洗浄後の乾燥における毛髪のシュリンクを抑制し、かつ、乾燥後の毛髪表面に毛髪化粧料由来の目立った付着物が析出することを抑制でき、特に、縮れ毛の効率的な整髪に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例における評価用毛束のシュリンク抑制評価を説明するための図であり、毛束を吊るした状態の正面から見た写真を図示したものである。(a)は未処理の評価用毛束の自然乾燥開始時点、(b)は未処理の評価用毛束の自然乾燥開始から30分経過時点、(c)は処理後の毛束の自然乾燥開始から30分経過時点を、それぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[毛髪化粧料]
本発明の毛髪化粧料は、下記成分(A)及び(B)を含有し、成分(B)のアニオン電荷量に対する成分(A)のカチオン電荷量の比が0.30以上8.00以下である。
(A)N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコールの共重合体
(B)架橋型ポリアクリル酸
なお、本発明において、「成分Xを含有している」とは、「成分Xが配合されてなる」ことと同義とみなすものとする。
【0014】
本発明の毛髪化粧料は、洗浄後の乾燥における毛髪のシュリンクを抑制し、かつ、乾燥後の毛髪表面に毛髪化粧料由来の目立った付着物が析出することを抑制できる。このため、特に、縮れ毛の整髪において、要する時間や手間を削減することができ、好適に適用することができる。
【0015】
本発明の毛髪化粧料の態様としては、例えば、ヘアシャンプー等の毛髪洗浄剤、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパック、ヘアスタイリング剤等が挙げられる。これらのうち、本発明の効果をより発揮させる観点から、洗髪後に使用されるものが好ましく、毛髪に馴染ませた後、濯いで使用される態様のものがより好ましい。このような観点から、本発明の毛髪化粧料としては、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパック又はヘアスタイリング剤が好ましい。
本発明の毛髪化粧料の剤型は、例えば、液体状、泡状、ペースト状、クリーム状等の任意の剤型とすることができる。これらのうち、使用しやすさ等の観点から、液体状、ペースト状又はクリーム状であることが好ましく、液体状であることがより好ましい。
【0016】
本発明の毛髪化粧料による作用機構は明らかではないが、以下のように推測される。
カチオン性を有する成分(A)とアニオン性を有する成分(B)とは、相互作用によって複合体ゲルを形成することが可能である。成分(B)が架橋構造を有していることにより、保水性の高い複合体ゲルを形成できる。該複合体ゲルは微粘着性を有するため、本発明の毛髪化粧料を毛髪に適用すると、該複合体ゲルが毛髪に付着し、該複合体ゲルが付着した毛髪同士が相互に微接着する。
したがって、本発明の毛髪化粧料は、毛髪の保水性を向上させるとともに、濡れた状態の毛髪の形状を乾燥後にも維持しやすくなり、毛髪の乾燥におけるシュリンクを抑制できると考えられる。
このため、本発明の毛髪化粧料は、シュリンク抑制剤として好適に用いることができる。
【0017】
ここで、成分(B)のアニオン電荷量に対する成分(A)のカチオン電荷量の比(以下、「カチオン/アニオン電荷量比」とも言う。)が8.00以下であることにより、複合体ゲルによる毛髪の適度な接着性及び保水性が得られ、毛髪が乾燥した後も、濡れた状態の毛髪の形状、特に、長さを維持させやすくなり、シュリンク抑制を効果的に発現できる。
また、複合体ゲルは、カチオン/アニオン電荷量比が低くなると、析出して白化し、毛髪表面で目立つようになるが、カチオン/アニオン電荷量比が0.30以上であることにより、毛髪のシュリンク抑制効果を発現しつつ、析出物の発生を抑制できるものと考えられる。
【0018】
<成分(A)>
本発明の毛髪化粧料は、成分(A)として、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコールの共重合体を含む。前記共重合体は、化粧品成分の国際的表示名称(INCI名)で言うポリクオタニウム-52である。
成分(A)は、N,N-ジメチルアミノエチル基を含む第四級アンモニウム基をカチオン性基として有するポリマーであり、アニオン性を有する成分(B)との相互作用によって複合体ゲルを形成する。毛髪に付着した該複合体ゲルが、毛髪の保水性を向上させるとともに、毛髪同士を微接着させることにより、乾燥後も毛髪の形状を維持しやすくなり、シュリンク抑制効果が発現されると考えられる。
【0019】
ポリクオタニウム-52の市販品としては、例えば、ソフケアKG-101W-E、ソフケアKG-301W(以上、花王株式会社製)が挙げられる。成分(A)は、これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0020】
<成分(B)>
本発明の毛髪化粧料は、成分(B)として、架橋型ポリアクリル酸を含む。架橋型ポリアクリル酸としては、カルボキシビニルポリマー、すなわち、INCI名で言うカルボマーが好ましい。カルボマーとは、ペンタエリスチルアリルエーテル、スクロースアリルエーテル又はプロピレンアリルエーテルで架橋したアクリル酸の重合体である。
成分(B)は、アニオン性基としてカルボキシ基を有するポリマーであり、カチオン性を有する成分(A)との相互作用によって複合体ゲルを形成する。該複合体ゲルによる毛髪の保水性向上効果及び毛髪同士を微接着させる効果により、乾燥後も毛髪の形状を維持しやすくなり、シュリンク抑制効果が発現されると考えられる。
【0021】
成分(B)のアニオン性基を有するポリマーは、アクリル酸の重合体であり、メタクリル酸アルキルを構成モノマーとして含まない。このため、アクリル酸よりも親水性に劣るメタクリル酸アルキルをモノマー構成単位として含むポリマーよりも、水性媒体中で、成分(A)との相互作用により、毛髪に付着しやすい複合体ゲルを形成しやすい。
また、成分(B)のポリマーは、架橋型である。成分(B)が架橋型のポリマーであることによって、毛髪の保水性向上効果が高く、毛髪同士を微接着させることができる複合体ゲルを形成できる。
【0022】
カルボマーの市販品としては、例えば、カーボポール(登録商標;以下、表記省略。)980、カーボポール981(以上、ルーブリゾール社製)等が挙げられる。成分(B)は、これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0023】
<成分(B)のアニオン電荷量に対する成分(A)のカチオン電荷量の比(カチオン/アニオン電荷量比)>
本発明の毛髪化粧料は、カチオン/アニオン電荷量比が0.30以上8.00以下である。
カチオン/アニオン電荷量比は、目立った付着物の析出の抑制の観点から、0.30以上であり、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.80以上であり、そして、毛髪のシュリンク抑制の観点から、8.00以下であり、好ましくは6.00以下、より好ましくは4.00以下である。これらの観点を総合すると、カチオン/アニオン電荷量比は、好ましくは0.60以上6.00以下、より好ましくは0.80以上4.00以下である。
【0024】
毛髪化粧料中の成分(A)のカチオン電荷量は、成分(A)のカチオン電荷密度と毛髪化粧料中の成分(A)の含有量の積として求められる。成分(A)のカチオン電荷密度とは、成分(A)の単位質量当たりのカチオン性基(第四級アンモニウム基)の当量数であり、通常、1g当たりのミリ当量(単位:meq/g)で表される。成分(A)のカチオン電荷密度は、成分(A)の分子量と、成分(A)を構成するモノマー構成単位中のカチオン性基を含有するモノマー構成単位のモル比とから算出することができる。
なお、成分(A)を2種以上用いる場合の毛髪化粧料中の成分(A)のカチオン電荷量は、各々のカチオン電荷量の合計として求められる。
【0025】
成分(A)のカチオン電荷密度は、好ましくは0.3meq/g以上、より好ましくは0.6meq/g以上、更に好ましくは0.9meq/g以上であり、そして、好ましくは3.0meq/g以下、より好ましくは2.7meq/g以下、更に好ましくは2.5meq/g以下である。これらの観点を総合すると、成分(A)のカチオン電荷密度は、好ましくは0.3meq/g以上3.0meq/g以下、より好ましくは0.6meq/g以上2.7meq/g以下、更に好ましくは0.9meq/g以上2.5meq/g以下である。
【0026】
毛髪化粧料中の成分(B)のアニオン電荷量は、成分(B)のアニオン電荷密度と毛髪化粧料中の成分(B)の含有量の積として求められる。成分(B)のアニオン電荷密度とは、成分(B)の単位質量当たりのアニオン性基(カルボキシ基)の当量数であり、通常、1g当たりのミリ当量(単位:meq/g)で表される。成分(B)のアニオン電荷密度は、成分(B)がアクリル酸のホモポリマーの架橋体であるため、アクリル酸の分子量72.1から算出した値である約13.9(=1/72.1)meq/gを用いて、アニオン電荷量を求めることができる。なお、架橋成分は微量であり、考慮不要であるものとみなす。
【0027】
<各成分の含有量>
本発明の毛髪化粧料中の成分(A)の含有量は、毛髪のシュリンク抑制及び目立った付着物の析出抑制の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上であり、そして、好ましくは5.00質量%以下、より好ましくは2.00質量%以下、更に好ましくは1.00質量%以下である。これらの観点を総合すると、毛髪化粧料中の成分(A)の含有量は、好ましくは0.05質量%以上5.00質量%以下、より好ましくは0.10質量%以上2.00質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上1.00質量%以下である。
【0028】
本発明の毛髪化粧料中の成分(B)の含有量は、毛髪のシュリンク抑制及び目立った付着物の析出抑制の観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.010質量%以上であり、そして、好ましくは0.100質量%以下、より好ましくは0.090質量%以下、更に好ましくは0.080質量%以下である。これらの観点を総合すると、毛髪化粧料中の成分(B)の含有量は、好ましくは0.001質量%以上0.100質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上0.090質量%以下、更に好ましくは0.010質量%以上0.080質量%以下である。
【0029】
本発明の毛髪化粧料中の成分(A)及び(B)の合計含有量は、毛髪のシュリンク抑制及び目立った付着物の析出抑制の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上であり、そして、好ましくは5.00質量%以下、より好ましくは2.00質量%以下、更に好ましくは1.00質量%以下である。これらの観点を総合すると、毛髪化粧料中の成分(A)及び(B)の合計含有量は、好ましくは0.05質量%以上5.00質量%以下、より好ましくは0.10質量%以上2.00質量%以下、より好ましくは0.20質量%以上1.00質量%以下である。
【0030】
<他の成分>
本発明の毛髪化粧料には、その態様や剤型等に応じて、ハンドリング性及び成分(A)及び(B)の作用効果を発揮させやすいようにする等の観点から、水性媒体を含有させることができる。
水性媒体としては、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の炭素数6以下の低分子ジオール及びトリオール等が挙げられる。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
また、本発明の毛髪化粧料には、例えば、pH調整剤、芳香族アルコール、界面活性剤、酸化防止剤、油剤、ビタミン剤、殺菌剤、抗炎症剤、抗フケ剤、防腐剤、キレート剤、保湿剤、パール剤、セラミド類、香料、紫外線吸収剤等の他の成分を更に含有させることもできる。
【0032】
<製造方法>
本発明の毛髪化粧料は、常法により製造することができる。例えば、成分(A)及び(B)、並びに必要に応じて他の成分を配合し、公知の撹拌装置等を用いて混合することにより製造できる。
【0033】
[毛髪処理方法]
本発明の毛髪処理方法は、上記の本発明の毛髪化粧料を毛髪に適用する工程を有する。
毛髪化粧料を毛髪に適用する方法としては、例えば、毛髪に、塗布、噴霧又は流延したり、毛髪を毛髪化粧料に浸漬させる等の方法が挙げられる。適用する毛髪は、乾いていても、湿っていてもよく、好ましくは、ブラシや櫛等で毛髪をとかした後、洗髪して濡れた状態である。毛髪化粧料の適用は、手で塗りつけたり、揉み込んだりしてもよく、また、ブラシや櫛等を用いて行ってもよい。また、毛髪化粧料を適用する毛髪は、頭髪の全部であってもよく、その一部であってもよい。
毛髪に対する毛髪化粧料の適用量は、適用する毛髪の質量に対する浴比(毛髪化粧料の質量/適用する毛髪の質量)で、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは12以下である。
【0034】
前記工程の後、毛髪化粧料を適用した毛髪を水洗する工程を経ることが好ましい。この場合、毛髪に毛髪化粧料を十分に馴染ませるために、毛髪化粧料を適用後、水洗までに、放置時間を設定することが好ましい。放置時間は、好ましくは15秒間以上、より好ましくは30秒間以上、更に好ましくは1分間以上であり、そして、好ましくは60分間以下、より好ましくは30分間以下、更に好ましくは20分間以下である。放置中は、水分の蒸発を抑制するために、毛髪化粧料を適用した毛髪を、プラスチックフィルムやキャップ等で覆うようにすることも好ましい。
水洗は、毛髪表面の過剰な毛髪化粧料を除去できればよく、濯ぎ洗いが好ましい。水洗時間は、好ましくは5秒間以上3分間以下である。水の温度は、身体に負担が掛からない程度でよく、好ましくは15℃以上50℃以下、より好ましくは25℃以上45℃以下である。
【0035】
水洗後の毛髪は、タオルドライ等による自然乾燥、又は、ドライヤー等を用いた強制乾燥によって乾燥させる。
本発明の毛髪化粧料を用いて、毛髪、特に、縮れ毛を、上記のように処理することにより、シュリンクが抑制され、かつ、毛髪表面に毛髪化粧料由来の目立った付着物が析出することを抑制できる。
【0036】
以下、上述した実施形態に関し、本発明の毛髪化粧料の好ましい態様を更に開示する。
【0037】
<1> 下記成分(A)及び(B)を含有し、前記成分(B)のアニオン電荷量に対する前記成分(A)のカチオン電荷量の比が0.30以上8.00以下である、毛髪化粧料。
(A) N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコールの共重合体
(B)架橋型ポリアクリル酸
【0038】
<2> 成分(B)が、好ましくはカルボマーである、<1>に記載の毛髪化粧料。
<3> 成分(A)の含有量が、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上であり、好ましくは5.00質量%以下、より好ましくは2.00質量%以下、更に好ましくは1.00質量%以下である、<1>又は<2>に記載の毛髪化粧料。
<4> 成分(B)の含有量が、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.010質量%以上であり、好ましくは0.100質量%以下、より好ましくは0.090質量%以下、更に好ましくは0.080質量%以下である、<1>~<3>のいずれか1に記載の毛髪化粧料。
<5> 成分(A)及び(B)の合計含有量が、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上であり、好ましくは5.00質量%以下、より好ましくは2.00質量%以下、更に好ましくは1.00質量%以下である、<1>~<4>のいずれか1に記載の毛髪化粧料。
<6> 成分(B)のアニオン電荷量に対する成分(A)のカチオン電荷量の比が、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.80以上であり、好ましくは6.00以下、より好ましくは4.00以下である、<1>~<5>のいずれか1に記載の毛髪化粧料。
<7> 成分(A)のカチオン電荷密度が、好ましくは0.3meq/g以上、より好ましくは0.6meq/g以上、更に好ましくは0.9meq/g以上であり、好ましくは3.0meq/g以下、より好ましくは2.7meq/g以下、更に好ましくは2.5meq/g以下である、<1>~<6>のいずれか1に記載の毛髪化粧料。
<8> 好ましくは、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパック又はヘアスタイリング剤であり、より好ましくは、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパック又はヘアスタイリング剤である、<1>~<7>のいずれか1に記載の毛髪化粧料。
<9> 好ましくは、シュリンク抑制剤である、<1>~<8>のいずれか1に記載の毛髪化粧料。
<10> <1>~<9>のいずれか1に記載の毛髪化粧料のシュリンク抑制のための使用。
<11> <1>~<9>のいずれか1に記載の毛髪化粧料を適用する、毛髪のシュリンク抑制方法。
<12> <1>~<9>のいずれか1に記載の毛髪化粧料を毛髪に適用する工程と、前記毛髪化粧料を適用した毛髪を水洗する工程とを有する、毛髪処理方法。
【実施例0039】
[実施例1~4、比較例1~5]
下記表1に示す各実施例及び各比較例の組成の毛髪化粧料を調製し、評価用毛束を用いて、これらの毛髪化粧料による毛髪のシュリンク抑制及び付着物の析出抑制の効果の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0040】
<評価用毛束>
カール径約7mm、約1gの毛束の根元部分を幅約3cmのプラスチックプレートに接着剤で固定した。毛束を固定した該プラスチックプレートの部分を幅約3cmのダブルクリップで挟んで、下記に示す組成からなるプレーンシャンプーで洗浄し、水道水で十分に濯いだ。この濯ぎ後の湿潤状態の毛束を評価用毛束とした。
【0041】
(プレーンシャンプーの組成)
[単位:質量%]
ポリオキシエチレン(2.5)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 15.5
ラウリン酸ジエタノールアミド 2.3
エデト酸二ナトリウム 0.15
安息香酸ナトリウム 0.5
塩化ナトリウム 0.8
リン酸 適量(pH調整)
香料 微量(0.5未満)
メチルパラベン 微量(0.5未満)
水 バランス
(pH7.0) 合計 100
【0042】
<毛束の処理>
上記の湿潤状態の評価用毛束を、各実施例及び各比較例に示す組成の毛髪化粧料10gとともに、プラスチックラップフィルムで包み込み、毛髪化粧料を毛束に1分間揉み込んだ後、水道水で20秒間濯いだ。
【0043】
<シュリンク抑制評価>
未処理の評価用毛束及び処理後の毛束のそれぞれについて、容器に入れた約500gの水道水に浸漬させて、ダブルクリップのつまみ部分に棒を通して支持し、該容器を引き下げて毛束を取り出した。毛束を、吊り下げた状態で引っ張ることなく、温度20℃、相対湿度40%で、自然乾燥させた。
図1(a)に、未処理の評価用毛束の自然乾燥開始時点の写真を示す。自然乾燥開始から30分経過時点で再度写真撮影し、画像上で毛束の長さを測定した(
図1(b)及び(c)参照)。未処理の評価用毛束の自然乾燥開始から30分経過時点での長さ(L
0)に対する処理後の毛束の自然乾燥開始から30分経過時点での長さ(L
1)の比(L
1/L
0)を算出し、この値をシュリンク改善比とした。各毛髪化粧料につき3点の毛束について測定を行い、シュリンク改善比の平均値を表1に示した。
シュリンク改善比が、1よりも大きければ、シュリンクが抑制されていると言え、数値が大きいほど、シュリンク抑制効果に優れることを示している。シュリンク改善比は、好ましくは1.03以上、より好ましくは1.05以上、更に好ましくは1.06以上である。
【0044】
<付着物の析出抑制評価>
処理後の自然乾燥開始から30分経過時点における毛束について、付着物の有無を目視にて観察し、下記の評価基準に基づいて段階評価した。
評価A又はBであれば、目立った付着物の析出は抑制されていると言える。
(評価基準)
A:目立った付着物は確認できなかった。
B:毛先の一部にわずかに白色の付着物が生じていた。
C:全体的に白色の付着物が生じていた。
【0045】
【0046】
表1中の*1~4の注釈を以下に示す。なお、表1中の質量%は、有効成分量である。
*1 花王株式会社製、有効成分2.4質量%、カチオン電荷密度0.9meq/g
*2 花王株式会社製、有効成分4質量%、カチオン電荷密度2.5meq/g
*3 カルボマー、ルーブリゾール社製、アニオン電荷密度13.9meq/g
*4 アクリル酸/メタクリル酸アルキル共重合体、ルーブリゾール社製、アニオン電荷密度13.9meq/g
【0047】
表1の評価結果から分かるように、本実施例の毛髪化粧料によれば、洗浄後の乾燥における毛髪のシュリンクが抑制され、かつ、毛髪化粧料由来の目立った付着物の析出を抑制できることが認められた。