(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161645
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】熱収縮性多層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 7/028 20190101AFI20221014BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221014BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B32B7/028
B32B27/00 A
B32B27/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066610
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】木林 達也
(72)【発明者】
【氏名】高市 隼
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 信弘
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK00A
4F100AK00B
4F100AK00C
4F100AK00D
4F100AK00E
4F100AK02A
4F100AK02B
4F100AK02C
4F100AK02D
4F100AK02E
4F100AK03C
4F100AK05B
4F100AK05E
4F100AK07C
4F100AK63B
4F100AK63E
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4F100AL05C
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4F100BA06
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4F100BA10A
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4F100YY00A
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】ブロッキング抑制機能が向上した熱収縮性多層フィルムを提供する。
【解決手段】熱収縮性多層フィルムは、基材と、表面層とを備える。基材は、第1面及び第2面を有し、熱可塑性樹脂を含有する。表面層は、基材の第1面及び第2面の少なくとも一方側に積層され、熱可塑性樹脂と、当該熱可塑性樹脂に保持される微粒子とを含有する。微粒子の最頻粒子径は、表面層が含有する熱可塑性樹脂の厚みの1.2倍以上、10倍以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有し、熱可塑性樹脂を含有する基材と、
前記基材の第1面及び第2面の少なくとも一方側に積層され、熱可塑性樹脂と、当該熱可塑性樹脂に保持される微粒子とを含有する表面層と、
を備え、
前記微粒子の最頻粒子径は、前記表面層が含有する熱可塑性樹脂の厚みの1.2倍以上、10倍以下である、
熱収縮性多層フィルム。
【請求項2】
前記微粒子の最頻粒子径は、前記表面層が含有する熱可塑性樹脂の厚みの2倍以上、8倍以下である、
請求項1に記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項3】
前記微粒子の最頻粒子径は、6μm以下である、
請求項1または2に記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項4】
前記表面層が含有する熱可塑性樹脂には、環状オレフィン系樹脂が含まれる、請求項1から3のいずれかに記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項5】
前記基材の第1面及び第2面の少なくとも一方に積層され、熱可塑性樹脂を含有する中間層、
をさらに備え、
前記表面層は、前記中間層に積層される、
請求項1から4のいずれかに記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項6】
前記基材の第1面及び第2面に前記中間層がそれぞれ積層され、前記各中間層に、前記表面層がそれぞれ積層されている、
請求項5に記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項7】
前記中間層に含有される熱可塑性樹脂には、環状オレフィン系樹脂が含まれる、
請求項5または6に記載の熱収縮性多層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱収縮性多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、環状オレフィン系樹脂及び有機系微粒子を含有する表裏層と、中間層とが積層されてなる熱収縮性多層フィルムを開示する。特許文献1によれば、表裏層は、平均粒子径が0.1μm以上、20μm以下の有機系微粒子を0.01重量%以上、0.3重量%以下含有する。これにより、熱収縮性多層フィルムのブロッキングが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、好ましい有機系微粒子の含有量及び平均粒子径が規定されているが、表裏層の樹脂と有機系微粒子との寸法的関係が考慮されていない。このため、表裏層が上述したような微粒子を含有する熱収縮性多層フィルムであっても、微粒子によるブロッキング防止効果が充分に発揮されず、依然としてブロッキングが生じることがある。
【0005】
本開示は、ブロッキング抑制機能が向上した熱収縮性多層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点に係る熱収縮性多層フィルムは、基材と、表面層とを備える。基材は、第1面及び第2面を有し、熱可塑性樹脂を含有する。表面層は、基材の第1面及び第2面の少なくとも一方側に積層され、熱可塑性樹脂と、当該熱可塑性樹脂に保持される微粒子とを含有する。微粒子の最頻粒子径は、表面層が含有する熱可塑性樹脂の厚みの1.2倍以上、10倍以下である。
【0007】
第2観点に係る熱収縮性多層フィルムは、第1観点に係る熱収縮性多層フィルムであって、微粒子の最頻粒子径は、表面層が含有する熱可塑性樹脂の厚みの2倍以上、8倍以下である。
【0008】
第3観点に係る熱収縮性多層フィルムは、第1観点または第2観点に係る熱収縮性多層フィルムであって、微粒子の最頻粒子径は、6μm以下である。
【0009】
第4観点に係る熱収縮性多層フィルムは、第1観点から第3観点のいずれかに係る熱収縮性多層フィルムであって、表面層が含有する熱可塑性樹脂には、環状オレフィン系樹脂が含まれる。
【0010】
第5観点に係る熱収縮性多層フィルムは、第1観点から第4観点のいずれかに係る熱収縮性多層フィルムであって、基材の第1面及び第2面の少なくとも一方に積層され、熱可塑性樹脂を含有する中間層をさらに備える。表面層は、中間層に積層される。
【0011】
第6観点に係る熱収縮性多層フィルムは、第5観点に係る熱収縮性多層フィルムであって、基材の第1面及び第2面に中間層がそれぞれ積層され、各中間層に、表面層がそれぞれ積層されている。
【0012】
第7観点に係る熱収縮性多層フィルムは、第5観点または第6観点に係る熱収縮性多層フィルムであって、中間層に含有される熱可塑性樹脂には、環状オレフィン系樹脂が含まれる。
【発明の効果】
【0013】
上記観点によれば、ブロッキング抑制機能が向上した熱収縮性多層フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る熱収縮性多層フィルムの一例を示す断面図。
【
図2】一実施形態に係る熱収縮性多層フィルムの一例を示す断面図。
【
図3】一実施形態に係る熱収縮性多層フィルムの一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示に係る熱収縮性多層フィルムの一実施形態について説明する。熱収縮性多層フィルム100は、第1面及び第2面を有するシート状の基材1と、基材1の第1面及び第2面の少なくとも一方に積層される中間層2と、中間層2に積層される表面層3とを備える。したがって、熱収縮性多層フィルム100は、
図1に示すように、基材1の両面側に中間層2が積層され、各中間層2にそれぞれ表面層3が積層される態様と、
図2に示すように、基材1の一方の面に中間層2が積層され、この中間層2に表面層3が積層される態様と、を取り得る。以下、各部材について詳細に説明する。また、各材料を製膜したものをフィルムと称することがある。
【0016】
<1.基材>
基材1は、熱可塑性樹脂を含有しており、例えば、プロピレン系樹脂、石油樹脂、及びオレフィン系エラストマーを含有する。以下、説明する。
【0017】
<1-1.プロピレン系樹脂>
プロピレン系樹脂としては、熱収縮性を発現する観点から、プロピレンを主成分として、α-オレフィンを共重合成分とする二元、又は、三元ランダム共重合体が好ましい。α-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等からなるものが好ましく、2種類以上のα-オレフィンを含んでいても良い。共重合成分であるα-オレフィンの比率は1~10モル%であるのが好ましい。また、プロピレン系樹脂としては、異なるプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体の混合物であってもよい。
【0018】
上述したようなプロピレン系樹脂の市販品としては、例えばAdsyl(Basell社製)、ノバテック(日本ポリプロ社製)等が挙げられる。
【0019】
プロピレン系樹脂の荷重たわみ温度(0.45MPa)は、110℃以下であることが好ましく、90℃以下であることが好ましい。このプロピレン系樹脂が、荷重たわみ温度の異なる2種以上のプロピレン系樹脂を含有する混合樹脂である場合、上記プロピレン系樹脂の荷重たわみ温度は、各プロピレン系樹脂の荷重たわみ温度と配合割合(重量比)との積を合計して算出した見掛けの荷重たわみ温度を意味する。
【0020】
基材1を構成する樹脂成分100質量%に対する上記プロピレン系樹脂の含有量は、50質量%以上、75質量%以下であることが好ましく、55質量%以上、65質量%以下であることがより好ましい。
【0021】
<1-2.石油樹脂>
石油樹脂は、ナフサを熱分解してエチレン、プロピレン、ブタジエン等を取得した後の残りのC4~C5留分、あるいはC5~C9留分を混合状態のまま重合して得られた樹脂である。このような樹脂としては、例えば、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族炭化水素樹脂系石油樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂系石油樹脂、及び上記した石油樹脂の共重合体、並びにこれら石油樹脂の水素添加物が挙げられる。これらの中でも、フィルムの100℃以下における軟化を抑制したり、透明性を向上させる観点からは、脂環式石油樹脂が好ましい。脂環式石油樹脂の例としては、脂環族飽和炭化水素樹脂系石油樹脂や芳香族系石油樹脂の水素添加物が挙げられる。
【0022】
上述したような石油樹脂の市販品としては、例えばアイマーブ(出光興産社製)、アルコン(荒川化学工業社製)等が挙げられる。
【0023】
石油樹脂の軟化点は、80℃以上170℃以下であることが好ましく、110℃以上155℃以下であることがより好ましい。軟化点が80℃未満の場合、フィルムの耐熱性が低下し、高温雰囲気下で石油樹脂成分が表面にブリードアウトしやすくなるおそれがある。一方、軟化点が170℃を超える場合、押出製膜性や延伸加工性などの成形加工性が悪くなるおそれがある。石油樹脂の軟化点が110℃以上であればフィルムの自然収縮を抑制でき好ましい。石油樹脂の軟化点が155℃以下であればフィルムの熱収縮性を付与する延伸工程で均一に延伸できるため好ましい。また、特に軟化点が120℃以上140℃以下であると、良好な熱収縮性を発現することができる。石油樹脂の軟化点は、JIS K2207:2006に準拠した方法によって測定することが可能である。
【0024】
石油樹脂の数平均分子量は、700以上1300以下であることが好ましい。石油樹脂の数平均分子量が700未満の場合、フィルムの耐熱性が低下し、高温雰囲気下で石油樹脂成分が表面にブリードアウトしやすくなるおそれがある。一方、石油樹脂の数平均分子量が1300を超える場合、延伸加工性などの成形加工性が悪くなるおそれがある。なお、石油樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により確認できる。
【0025】
基材1は、基材1を構成する樹脂成分100質量%に対し、上記石油樹脂を10質量%以上、35質量%以下含有することが好ましく、15質量%以上、30質量%以下含有することがより好ましい。含有量がこの範囲であることにより、熱収縮性多層フィルムに高い収縮性と、高い剛性とを付与することができる。また、石油樹脂の含有量が上記上限以下であることにより、低温下における伸度低下、および層間での剥離を抑制することができる。
【0026】
<1-3.オレフィン系エラストマー>
オレフィン系エラストマーとしては、プロピレン/α-オレフィンランダム共重合体エラストマーを用いることが好ましい。その他のオレフィン系エラストマーの例としては、エチレン/α-オレフィンランダム共重合体エラストマーが挙げられる。上記α-オレフィンランダム共重合体エラストマーとは、炭素数3以上のα-オレフィンの共重合成分が15モル%以上のエラストマーである。ここでα-オレフィンとしては、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチルペンテン-1等が例示できる。
【0027】
上述したようなオレフィン系エラストマーの市販品としては、例えばタフマー(三井化学社製)等が挙げられる。
【0028】
オレフィン系エラストマーのビカット軟化温度は、50℃以上、75℃以下であることが好ましい。
【0029】
基材1は、基材1を構成する樹脂成分100質量%に対し、上記オレフィン系エラストマーを、15質量%以下含有することが好ましい。
【0030】
<1-4.基材の厚み>
基材1の厚みは、例えば、15μm以上、40μm以下であることが好ましく、20μm以上、35μm以下であることがさらに好ましい。
【0031】
<2.中間層>
中間層2は、熱可塑性樹脂を含有する。中間層2は、熱可塑性樹脂として環状オレフィン系樹脂を主に含有することができ、その他にエチレン系樹脂、及び石油樹脂をさらに含有することができる。以下、説明する。
【0032】
<2-1.環状オレフィン系樹脂>
環状オレフィン系樹脂は、熱可塑性樹脂の結晶性を低下させ、中間層2の熱収縮率を高めるとともに、フィルム製膜時の延伸性も向上させる。また、後述する表面層3も環状オレフィン系樹脂を含有する。これにより、中間層2と表面層3との層間接着強度が向上する。
【0033】
環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンコポリマー(COC)が好ましい。環状オレフィンコポリマーは、例えばα―オレフィンと環状オレフィンとを共重合させることにより得られる。
【0034】
環状オレフィンとしては特に限定されず、例えば、ノルボルネン、6-メチルノルボルネン、6-エチルノルボルネン、5-プロピルノルボルネン、6-nーブチルノルボルネン、1-メチルノルボルネン、7-メチルノルボルネン、5,6-ジメチルノルボルネン、5-フェニルノルボルネン、5-ベンジルノルボルネン等、ノルボルネン及びその誘導体が挙げられる。また、テトラシクロドデセン、8-メチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-エチルテトラシクロ-3-ドデセン、5,10-ジメチルテトラシクロ-3-ドデセン等、テトラシクロドデセン及びその誘導体が挙げられる。
【0035】
上述したような環状オレフィン系樹脂の市販品としては、アペル(三井化学社製)、TOPAS COC(ポリプラスチックス社製)、ZEONOR(日本ゼオン社製)等が挙げられる。
【0036】
環状オレフィン系樹脂のGPC法により測定される数平均分子量は1000以上であることが好ましく、100万以下であることが好ましい。上記範囲内とすることで、フィルムの製膜が容易になる。
【0037】
環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は20℃以上、130℃以下であることが好ましく、50℃以上、100℃以下であることがより好ましい。上記ガラス転移温度が20℃以上であると、フィルム表面の耐熱性を良好なものとして、装着ライン上で容器同士のブロッキングの発生を抑制することができるとともに、自然収縮率を良好な範囲とすることができる。上記ガラス転移温度が130℃以下であると、横方向の熱収縮率を充分に大きくすることができる。
【0038】
環状オレフィン系樹脂の密度は1000kg/m3以上、1050kg/m3以下であることが好ましく、1010kg/m3以上、1040kg/m3以下であることがより好ましい。
【0039】
中間層2は、中間層2を構成する樹脂成分100質量%に対し、上記環状オレフィン系樹脂を55質量%以上、85質量%以下含有することが好ましく、60質量%以上、80質量%以下含有することがより好ましく、65質量%以上、75質量%以下含有することがさらに好ましい。環状オレフィン系樹脂の含有率が上記範囲であると、熱収縮性多層フィルム100の剛性、熱収縮性及び透明性を良好なものとすることができる。
【0040】
<2-2.エチレン系樹脂>
エチレン系樹脂としては、分岐状低密度ポリエチレン樹脂や直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、またはこれらの混合物が挙げられる。また、エチレンとα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。α-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。上記共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。特に、中間層2は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含有することが好ましい。
【0041】
上述したような直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の市販品としては、エボリュー(プライムポリマー社製)、ユメリット(宇部丸善ポリエチレン社製)、ノバテック(日本ポリエチレン社製)等が挙げられる。また、低密度ポリエチレン樹脂の市販品としては、スミカセン(住友化学社製)、及びノバテック(日本ポリエチレン社製)等が挙げられる。
【0042】
エチレン系樹脂の密度は、880kg/m3以上、950kg/m3以下であることが好ましい。
【0043】
中間層2は、中間層2を構成する樹脂成分100質量%に対し、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を5質量%以上、25質量%以下含有することが好ましく、10質量%以上、20質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0044】
<2-3.石油樹脂>
中間層2は、基材1の説明で既に述べたような石油樹脂を含有することができる。中間層2は、基材1と同じ石油樹脂を含有してもよく、基材1と異なった石油樹脂を含有してもよい。
【0045】
中間層2は、中間層2を構成する樹脂成分100質量%に対し、石油樹脂を15質量%以上、35質量%以下含有することが好ましく、20質量%以上、30質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0046】
<2-4.厚み>
中間層2の厚みは、2μm以上、5.5μm以下であることが好ましく、3μm以上、4.5μm以下であることがさらに好ましい。
また、中間層を設ける場合の基材1と中間層2の厚みの比率は、基材/中間層が9:1~5:1の範囲、より好ましくは8:1~6:1の範囲となることが好ましい。上記範囲にすることで、熱収縮性多層フィルムとして優れた収縮仕上り性を実現することができる。
【0047】
<3.表面層>
表面層3は、熱可塑性樹脂及びこれに保持される微粒子4を含有する。熱可塑性樹脂としては、環状オレフィン系樹脂が好ましく、環状オレフィンコポリマー(COC)がより好ましい。表面層3の熱可塑性樹脂の厚みは、0.2μm以上、5μm以下であることが好ましく、0.4μm以上、1μm以下であることがより好ましい。特に、熱可塑性樹脂として環状オレフィンコポリマーを用いる場合、光沢性及び透明性を維持し、皮脂に触れた際の皮脂白化を生じにくくするためには、表面層3の熱可塑性樹脂の厚みは1μm以下であることが好ましい。
【0048】
<3-1.環状オレフィン系樹脂>
環状オレフィンコポリマーとしては、中間層2の説明で既に述べたような環状オレフィンコポリマーを用いることができる。表面層3は、中間層2と同じ環状オレフィンコポリマーを含有してもよく、中間層2と異なった環状オレフィンコポリマーを含有してもよい。
【0049】
<3-2.微粒子>
表面層3の熱可塑性樹脂に保持される微粒子4は、熱収縮性多層フィルム100同士が融着し、剥離が困難となるブロッキングを防止する機能を主として有する。このような微粒子4としては、有機系微粒子または無機系微粒子のいずれも用いることができる。有機系微粒子としては、アクリル系樹脂微粒子、スチレン系樹脂微粒子、スチレン―アクリル系樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、シリコーン系樹脂微粒子等の有機系微粒子を用いることができる。これらは架橋されていても架橋されてなくてもよいが、微粒子4の耐熱性を高めるために架橋されていることが望ましい。微粒子4は、特に上記環状オレフィン系樹脂との相溶性の観点、及び外観の透明性の向上の観点からアクリル系樹脂微粒子であることが好ましく、ポリメタクリル酸メチル系架橋微粒子であることがさらに好ましい。
【0050】
上述したような有機系微粒子の市販品としては、例えば、テクポリマー(積水化成品工業社製)、ファインスフェア(日本ペイント社製)、ガンツパール(アイカ工業社製)、アートパール(根上工業社製)等が挙げられる。
【0051】
無機系微粒子としては、例えば、シリカ、ゼオライト、アルミナ等を用いることができる。
【0052】
微粒子4の最頻粒子径は、表面層3の熱可塑性樹脂の厚みの1.2倍以上、10倍以下であることが好ましく、1.2倍以上、8倍以下であることがより好ましい。すなわち、
図1及び2に示すように、微粒子4は主として表面層3の熱可塑性樹脂に保持されるが、その一部が表面層3の熱可塑性樹脂の外側に出ていてもよく、また中間層2に入り込んでいてもよい。表面層3の熱可塑性樹脂の厚みと、微粒子の最頻粒子径との関係をこのようなものとすることで、熱収縮性多層フィルム100のブロッキング抑制機能を好適に高めることができる。微粒子4の最頻粒子径が表面層3の熱可塑性樹脂の厚みの10倍を超えると、微粒子4の脱落が生じやすくなり、印刷時の印刷不良が生じやすくなる。微粒子4の最頻粒子径が表面層3の熱可塑性樹脂の厚みの8倍以下であると、このような問題が生じにくいという点で好ましい。なお、
図1及び2は説明のための概略図であり、必ずしも基材1、中間層2、表面層3及び微粒子4の実際の寸法や微粒子4の分布を反映したものではない。
【0053】
微粒子4の最頻粒子径は、6μm以下であることが好ましく、5.5μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。また、微粒子4の最頻粒子径は、1.0μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましい。最頻粒子径が6μmを超えると、透明性が低下するとともに、表面層3の熱可塑性樹脂から脱落しやすくなる。なお、最頻粒子径は、公知のレーザー回折・散乱法等により測定することができる。また、熱収縮性多層フィルム100の透明性を維持する観点からは、微粒子の屈折率は、表面層3を構成する熱可塑性樹脂の屈折率に近いことが好ましい。
【0054】
微粒子4の含有量は、表面層3を構成する樹脂成分100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。また、微粒子4の含有量は、0.5質量部以下であることが好ましく、0.4質量部以下であることがより好ましい。上記含有量が上記下限以上であると、熱収縮性多層フィルム100の表面に凹凸が形成され、熱収縮性多層フィルム100のブロッキング抑制機能を向上させることができる。一方、上記含有量が上記上限以下であると、外観の透明性を十分に維持することができる。
【0055】
<4.熱収縮性多層フィルムの厚み>
微粒子4を除く熱収縮性多層フィルム100全体の厚みは、例えば、20μm以上、60μm以下であることが好ましく、25μm以上、45μm以下であることがより好ましい。特に、厚みの上限は30μm以下であることがさらに好ましい。熱収縮性多層フィルム100全体の厚みが上記範囲内であると、優れた熱収縮性が得られる。
【0056】
<5.熱収縮性多層フィルムのブロッキング抑制機能>
熱収縮性多層フィルムのブロッキングの強度は、熱収縮性多層フィルムから切り出したサンプルを2枚重ね合わせて圧力を加えた後、これを180°に引っ張り、2枚のサンプルが剥離する剥離接着強度で評価することができる。この剥離接着強度が低いほどブロッキング抑制機能が高いことを示し、剥離接着強度が高いほど熱収縮性多層フィルム同士が溶着し易く、ブロッキングが生じやすいことを示す。熱収縮性多層フィルム100の剥離接着強度は、1300g/cm以下であることが好ましく、1100g/cm以下であることがより好ましく、1000g/cm以下であることがさらに好ましい。
【0057】
<6.その他の成分>
上記基材1、中間層2、及び表面層3には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0058】
<7.熱収縮性多層フィルムの熱収縮性能>
熱収縮性多層フィルム100を100℃の温水中に10秒間浸漬した後、20℃の水に10秒間浸漬し、取り出したときの主収縮方向(TD方向)の熱収縮率は、64%以上であることが好ましく、76%以下であることが好ましい。また、熱収縮性多層フィルム100を100℃の温水中に10秒間浸漬した後、20℃の水に10秒間浸漬したときの主収縮方向に直交する方向(MD方向)の熱収縮率は、5%以上であることが好ましく、20%以下であることが好ましい。熱収縮率が上述した範囲内であると、収縮不良等の問題を起こすことがなく、特に容器に装着するための熱収縮性多層フィルムとして好適に使用することができる。
【0059】
<8.熱収縮性多層フィルムの製造方法>
熱収縮性多層フィルム100を製造する方法は特に限定されないが、共押出法により各層を同時に成形する方法が好ましい。共押出法がTダイによる共押出である場合、積層の方法は、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、又は、これらを併用した方法のいずれであってもよい。
【0060】
熱収縮性多層フィルム100を製造する方法としては、具体的には、例えば、上述した基材、隣接層、及び表面層を構成する原料をそれぞれ押出機に投入し、ダイスによりシート状に押出し、引き取りロールにて冷却固化した後、1軸又は2軸に延伸する方法が挙げられる。延伸の方法としては、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法又はこれらの組み合わせを用いることができる。延伸温度は、熱収縮性多層フィルム100を構成する樹脂の軟化温度、熱収縮性多層フィルム100に要求される収縮特性等に応じて変更されるが、65℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、120℃以下であることが好ましく、115℃以下であることがより好ましい。
【0061】
主収縮方向の延伸倍率は、熱収縮性多層フィルム100を構成する樹脂、延伸手段、延伸温度等に応じて変更されるが、3倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましく、7倍以下が好ましく、6倍以下がより好ましい。
【0062】
<9.熱収縮性多層フィルムの他の態様>
上記の説明では、基材1、中間層2、及び表面層3により、熱収縮性多層フィルム100を構成している。しかし、
図3に示す熱収縮性多層フィルム101のように、上記表面層3を省略し、上記中間層2と同様の構成で基材1の第1面及び第2面の少なくとも一方に積層される表面層3Aを構成することもできる。この場合、表面層3Aに微粒子4が添加されてよい。なお、基材1の一方の面にのみ表面層3Aを形成することもできる。
【0063】
表面層3Aの厚みは、例えば、1~10μmとすることができる。このような場合、熱収縮性多層フィルム101の断面写真では3層として観察される。
【0064】
<10.特徴>
熱収縮性多層フィルム100及び101によれば、ブロッキングが生じにくい熱収縮性多層フィルムが提供される。さらに、表面層3の熱可塑性樹脂を環状オレフィンコポリマーとし、厚さを1μm以下とすると、表面光沢性及び透明性が高く、皮脂白化しにくい熱収縮性多層フィルムが提供される。これにより、熱収縮性多層フィルムへの印刷の品質が向上する。熱収縮性多層フィルム100及び101は、これに限定されないが、特に金属缶やプラスチック容器等に装着される包装フィルム及びシュリンクラベルのベースフィルムとして好適に用いることができる。
【実施例0065】
以下、本開示の実施例について詳細に説明する。但し、本開示は、これらの実施例に限定されない。
【0066】
<1.実施例及び比較例の準備>
以下の通り、実施例1~8及び比較例1及び2に係る熱収縮性多層フィルムを作製した。実施例1~7及び比較例1及び2は、
図1に示す5層構造とした。また、実施例8は、
図3に示す3層構造とした。
【0067】
基材、中間層及び表面層を構成する原料として表1に示す成分を用い、これらを表1に示す割合で混合することで、実施例1~7及び比較例1及び2に係る基材、中間層、及び表面層を構成する原料組成物を得た。表面層及び中間層の環状オレフィン系樹脂としては、アペル APL6509T(三井化学社製)を用いた。中間層の直鎖状低密度エチレン系樹脂(LLDPE)としては、エボリュー SP1020(プライムポリマー社製)を用い、石油樹脂としてはアルコン P125(荒川化学工業社製)を用いた。基材のオレフィン系エラストマーとしては、タフマー A4070S(三井化学社製)を用い、プロピレン系樹脂としてはノバテック FW3GT(日本ポリプロ社製)を用い、石油樹脂としてはアルコン P125(荒川化学工業社製)を用いた。微粒子としては、実施例1~5並びに比較例1及び2ではアートパール J-4PY(根上工業社製)を用い、実施例6及び7ではアートパールJ-6PF(根上工業社製)を用いた。参考までに、環状オレフィン系樹脂の屈折率は1.54であり、微粒子の屈折率は1.5であった。
【0068】
実施例8では、表面層に他の実施例及び比較例と同様の環状オレフィン系樹脂、直鎖状低密度エチレン系樹脂及び石油樹脂を用い、さらに低密度エチレン系樹脂(LDPE)としてノバテック(日本ポリエチレン社製)も用いた。実施例8では、基材にオレフィン系エラストマーを用いなかった。また、微粒子としては、アートパールSE-006Tを用いた。
【0069】
続いて、上記基材、中間層、及び表面層を構成する原料組成物を、別の押出機を用いて、基材はバレル温度180℃、中間層はバレル温度210℃、表面層はバレル温度210℃で溶融させ、Tダイから押出し、30℃に冷却したロールで冷却固化し、未延伸シートを作製した。これを温度90℃のテンター式延伸機でTD方向に5倍延伸し、熱収縮性多層フィルムを作製した。各層の厚み(μm)、微粒子の添加量(質量部)及び添加された微粒子の最頻粒子径(μm)を表2に示す。なお、層の厚みは、当該層を構成する熱可塑性樹脂の厚みである。
【0070】
【表1】
表面層、中間層、及び基材を構成する各材料の単位は、質量%である。
【0071】
【0072】
<2.評価>
上記実施例1~8及び比較例1、2について、以下の評価を行った。
【0073】
<2-1.ヘイズ>
実施例1~8及び比較例1、2に係る熱収縮性多層フィルムから、同じ大きさのサンプルを切り出し、JIS K7136に基づいてヘイズ(%)を測定した。評価は、ヘイズが4%以下であれば外観が良好である「1」、4%超であれば外観に問題がある「0」と判断した。
【0074】
<2-2.ブロッキング>
実施例1~8及び比較例1、2に係る熱収縮性多層フィルムのそれぞれの任意の箇所から、縦100mm×横30mm(フィルムのTD方向を縦方向、MD向を横方向とする)の大きさの測定用サンプルを2枚ずつ切り出した。次に、2枚の測定用サンプルを、同一面同士が縦40mm×横30mmの面積で重なり合うようにした。続いて、この重なり合った測定用サンプルを2枚のガラス板で挟み、その上から、サンプルが重なり合っている部分に5kgのおもりを載せた。このようにセットされたサンプルを40℃の恒温槽の中に入れ、48時間放置した。その後、恒温槽より取り出したサンプルを、剥離試験器(Peeling TESTER HEIDON-17 新東科学株式会社製)にセットし、引張り速度200mm/minで180°に引っ張り、2枚のサンプルが剥離する剥離接着強度をブロッキングの強度とした。
【0075】
ブロッキングの強度の評価は、1300g/cm以下であればブロッキング抑制機能が許容範囲の「1」、1100g/cm以下であれば良好な範囲の「2」、1000g/cm以下であればさらに良好な範囲の「3」とした。1300g/cm超であれば問題となる程度のブロッキングが生じやすい「0」とした。
【0076】
<3.評価結果>
評価結果は以下の通りである。
【表3】
【0077】
以上の結果によると、実施例1~8のブロッキング強度はいずれも1100g/cm以下となっており、良好なブロッキング抑制機能が発揮されていた(評価「2」)。特に、実施例1~4及び6~8ではさらに良好なブロッキング抑制機能が発揮されていた(評価「3」)。一方、比較例1及び2ではブロッキング抑制機能が発揮されなかった(評価「0」)。これにより、表面層の熱可塑性樹脂の厚さに対する微粒子の最頻粒子径を1.2倍から10倍とすることで、ブロッキング抑制機能が向上することが確認された。
【0078】
なお、実施例1~7ではヘイズも低く抑えられる結果となった(評価「1」)。一方、実施例8ではヘイズが高くなったが(評価「0」)、これは比較例2と同様、表面層の熱可塑性樹脂の厚みが比較的大きいためであると考えられる。