(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161648
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
F01N 1/02 20060101AFI20221014BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
F01N1/02 F
E02F9/00 D
F01N1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066620
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】佐野 典央
【テーマコード(参考)】
2D015
3G004
【Fターム(参考)】
2D015CA03
3G004AA03
3G004BA09
3G004CA01
3G004DA01
3G004DA09
(57)【要約】
【課題】マフラー及び消音器が占めるスペースが大きくなることなく、消音器によってエンジンでの騒音が適切に低減される建設機械を提供すること。
【解決手段】建設機械では、下部走行体に対して旋回可能に上部旋回体が連結され、上部旋回体に、エンジン、及び、エンジンからの排気ガスを後処理する後処理装置が搭載される。マフラーは、後処理装置に接続され、後処理装置によって後処理された排気ガスを排気口から排気する。マフラーの内部に配置される共鳴型消音器は、第1の延設端に開口が形成され、かつ、第1の延設端とは反対側の第2の延設端が閉口される筒状であり、後処理装置が位置する側に向かって開口において開口する。共鳴型消音器では、屈曲位置及び折返し位置のいずれかが、第1の延設端と第2の延設端との間に1箇所以上形成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に対して旋回可能に前記下部走行体の鉛直上側に連結される上部旋回体と、
前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、
前記上部旋回体に搭載され、前記エンジンからの排気ガスを後処理する後処理装置と、
一端が前記後処理装置に接続され、前記後処理装置に接続される側とは反対側の端に排気口が形成され、前記後処理装置によって後処理された前記排気ガスを前記排気口から排気するマフラーと、
第1の延設端に開口が形成され、かつ、第1の延設端とは反対側の第2の延設端が閉口される筒状に形成され、前記マフラーの内部に配置される共鳴型消音器であって、前記後処理装置が位置する側に向かって前記開口において開口し、前記共鳴型消音器が屈曲する屈曲位置及び前記共鳴型消音器が折返される折返し位置のいずれかが、前記第1の延設端と前記第2の延設端との間に1箇所以上形成される共鳴型消音器と、
を具備する、建設機械。
【請求項2】
前記共鳴型消音器では、前記第1の延設端と前記第2の延設端との間に前記折返し位置が形成され、
前記マフラーの前記内部では、前記共鳴型消音器は、前記第1の延設端から前記折返し位置まで前記排気口が位置する側へ向かって延設され、前記折返し位置から前記第2の延設端まで前記後処理装置が位置する側へ向かって延設される、
請求項1の建設機械。
【請求項3】
前記第1の延設端から前記第2の延設端まで前記共鳴型消音器の延設長は、基準周波数の音波の波長の4分の1になる、請求項1又は2の建設機械。
【請求項4】
前記マフラーでは、前記マフラーが屈曲する屈曲部分が、前記後処理装置への接続位置と前記排気口との間に形成され、
前記第1の延設端から前記第2の延設端までの前記共鳴型消音器の延設長は、前記後処理装置への前記接続位置から前記屈曲部分までの前記マフラーの延設長に比べて、長い、請求項1乃至3のいずれか1項の建設機械。
【請求項5】
前記第1の延設端から前記第2の延設端までの前記共鳴型消音器の延設長は、前記後処理装置への接続位置から前記排気口までの前記マフラーの延設長に比べて、長い、請求項1乃至4のいずれか1項の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建設機械として油圧ショベルが開示されている。この油圧ショベルでは、上部旋回体のエンジンルームに、エンジン及び後処理装置が搭載される。後処理装置は、エンジンからの排気ガスを無害化処理等して後処理する。後処理装置には、マフラーが接続され、マフラーでは、後処理装置に接続される側とは反対側の端に排気口が形成される。後処理装置によって後処理された排気ガスは、マフラーの排気口から、エンジンルームの外部に、すなわち、大気に排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1のような建設機械では、マフラーの排気口に到達する前にエンジンでの騒音が適切に低減又は消音等され、エンジンでの騒音が適切に低減されることが、求められている。また、マフラー及び消音器が占めるスペースが大きくなることなく、消音器によってエンジンでの騒音が適切に低減されることが、求められている。
【0005】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、マフラー及び消音器が占めるスペースが大きくなることなく、消音器によってエンジンでの騒音が適切に低減される建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明のある態様の建設機械は、下部走行体と、前記下部走行体に対して旋回可能に前記下部走行体の鉛直上側に連結される上部旋回体と、前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、前記上部旋回体に搭載され、前記エンジンからの排気ガスを後処理する後処理装置と、一端が前記後処理装置に接続され、前記後処理装置に接続される側とは反対側の端に排気口が形成され、前記後処理装置によって後処理された前記排気ガスを前記排気口から排気するマフラーと、第1の延設端に開口が形成され、かつ、第1の延設端とは反対側の第2の延設端が閉口される筒状に形成され、前記マフラーの内部に配置される共鳴型消音器であって、前記後処理装置が位置する側に向かって前記開口において開口し、前記共鳴型消音器が屈曲する屈曲位置及び前記共鳴型消音器が折返される折返し位置のいずれかが、前記第1の延設端と前記第2の延設端との間に1箇所以上形成される共鳴型消音器と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マフラー及び消音器が占めるスペースが大きくなることなく、消音器によってエンジンでの騒音が適切に低減される建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る油圧ショベルを、上部旋回体を幅方向の一方側から視た状態で示す概略図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る油圧ショベルを、カバーの扉が閉じられ、かつ、上部旋回体を後方側から視た状態で示す概略図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る油圧ショベルを、カバーの扉が開かれ、かつ、上部旋回体を後方側から視た状態で示す概略図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る油圧ショベルにおいて、マフラー及びマフラーの内部の構成を示す概略図である。
【
図5】
図5は、第1の変形例に係る油圧ショベルにおいて、マフラー及びマフラーの内部の構成を示す概略図である。
【
図6】
図6は、第2の変形例に係る油圧ショベルにおいて、マフラー及びマフラーの内部の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1乃至
図3は、第1の実施形態に係る建設機械である油圧ショベル1を示す。
図1乃至
図3に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2及び上部旋回体3を備える。上部旋回体3は、下部走行体2の鉛直上側(矢印Z1側)に連結される。上部旋回体3は、鉛直方向(矢印Z1及び矢印Z2に示す方向)に平行又は略平行な旋回軸Rを中心として、下部走行体2に対して旋回可能である。
【0011】
上部旋回体3では、鉛直方向に交差する(直交又は略直交する)前後方向(矢印X1及び矢印X2で示す方向)、及び、鉛直方向及び前後方向の両方に交差する(直交又は略直交する)幅方向(矢印Y1及び矢印Y2で示す方向)が規定される。また、下部走行体2でも、鉛直方向に対して交差する(直交又は略直交する)前後方向、及び、鉛直方向及び前後方向の両方に対して交差する(直交又は略直交する)幅方向が規定される。
【0012】
図1は、上部旋回体3を幅方向の一方側から視た状態を示し、左方側(矢印Y1側)から視た状態を示す。そして、
図2及び
図3は、上部旋回体3を後方側(矢印X2側)から視た状態を示す。また、
図1乃至
図3は、上部旋回体3の前方側(矢印X1側)が下部走行体2の前方側と一致又は略一致する状態を示す。このため、
図1では、下部走行体2は、幅方向の一方側、すなわち、左方側から視た状態で示される。そして、
図2及び
図3では、下部走行体2は、後方側から視た状態で示される。
【0013】
上部旋回体3には、作業装置5が連結される。作業装置5は、上部旋回体3と一緒に、下部走行体2に対して旋回する。作業装置5は、ブーム6、アーム7及びバケット8を備える。ブーム6の基端部は、上部旋回体3に回動可能に取付けられる。ブーム6が上部旋回体3に対して回動することにより、ブーム6は、上部旋回体3に対して起状動作又は伏状動作する。アーム7の基端部は、ブーム6の先端部に回動可能に取付けられる。アーム7がブーム6に対して回動することにより、アーム7は、ブーム6に対して起状動作又は伏状動作する。バケット8は、作業アタッチメントの1種であり、アーム7の先端部に回動可能に取付けられる。油圧ショベル1では、作業装置5を駆動することにより、バケット8によって土砂等が掘削される。
【0014】
上部旋回体3は、旋回テーブル11及びキャブ(運転室)12を備える。旋回テーブル11は、鉛直方向について、上部旋回体3の下方端部に設けられる。また、旋回テーブル11は、上部旋回体3の前方端部から後方端部に渡って形成される。そして、旋回テーブル11は、幅方向について上部旋回体3の一端部から他端部に渡って、すなわち、上部旋回体3の左方端部から右方端部に渡って、形成される。キャブ12は、上部旋回体3において、旋回テーブル11上に設置される。キャブ12の内部では、作業者等によって、油圧ショベル1の操作等が行われる。キャブ12は、ブーム6に対して、上部旋回体3の幅方向の一方側に並んで配置される。本実施形態では、キャブ12は、ブーム6に対して、上部旋回体3の左方側に並んで配置される。
【0015】
上部旋回体3では、キャブ12に対して後方側に、エンジンルーム13が形成される。エンジンルーム13には、エンジン15が搭載され、エンジンルーム13では、旋回テーブル11上にエンジン15が設置される。上部旋回体3では、カバー16等によって、エンジンルーム13が規定される。本実施形態では、カバー16は、3つの扉21,22,23を備え、扉21~23のそれぞれは、開閉可能である。
図2では、扉21~23のそれぞれが閉じた状態を示し、
図3では、扉21~23のそれぞれが開いた状態を示す。扉21~23が閉じた状態では、カバー16は、鉛直上側、後方側及び幅方向の両側(左方側及び右方側)から、エンジンルーム13を覆う。したがって、扉21~23が閉じた状態では、カバー16は、鉛直上側、後方側及び幅方向の両側から、エンジンルーム13に隣接する。
【0016】
また、上部旋回体3の旋回テーブル11上には、カウンタウエイト25を設置可能である。カウンタウエイト25は、油圧ショベル1のバランスを保つ重りである。カウンタウエイト25が旋回テーブル11上に設置された状態では、カウンタウエイト25は、エンジン15に対して、上部旋回体3の後方側に配置される。そして、カウンタウエイト25は、エンジンルーム13に対して、上部旋回体3の後方側から隣接する。扉21が閉じた状態では、カウンタウエイト25は、カバー16の扉21に対して、鉛直下側に隣接する。
図2では、旋回テーブル11上にカウンタウエイト25が設置された状態を示し、
図3では、旋回テーブル11上にカウンタウエイト25が設置されていない状態を示す。
【0017】
また、カバー16の内部のエンジンルーム13には、エンジン15に加えて、後処理装置26が搭載される。エンジンルーム13では、後処理装置26は、上部旋回体3の幅方向について、エンジン15から離れて配置され、本実施形態では、後処理装置26は、エンジン15に対して、上部旋回体3の右方側に離れて配置される。後処理装置26は、接続管27を間に介して、エンジン15に接続される。また、上部旋回体3には、マフラー31が設けられ、エンジンルーム13では、マフラー31の一端が、後処理装置26に接続される。マフラー31は、後処理装置26からエンジンルーム13の外部(カバー16の外部)まで、延設される。マフラー31では、後処理装置26に接続される側とは反対側の端に、排気口32が形成される。排気口32は、エンジンルーム13の外部に位置する。
【0018】
エンジン15からの排気ガスは、接続管27の内部を通して、後処理装置26に排出される。後処理装置26は、エンジン15からの排気ガスを無害化処理等して後処理する。例えば、後処理装置26は、排気ガスに含まれる窒素酸化物及び粒子状物質等に対して処理を行う。そして、後処理装置26によって後処理された排気ガスは、マフラー31の内部を通して、大気に排気される。すなわち、後処理装置26によって後処理された排気ガスは、マフラー31の排気口32から、エンジンルーム13の外部に排気される。したがって、エンジン15から排気口32まで、接続管27の内部、後処理装置26及びマフラー31の内部を順に通って、排気ガスの排気経路が形成される。
【0019】
図4は、マフラー31及びマフラー31の内部の構成を示す。
図4に示すように、マフラー31には、マフラー31が屈曲する屈曲部分33が形成される。マフラー31では、屈曲部分33は、後処理装置26への接続位置と排気口32との間に、形成される。また、本実施形態では、屈曲部分33は、エンジンルーム13の外部に位置する。マフラー31の内部には、共鳴型消音器35が配置される。共鳴型消音器35は、溶接等によってマフラー31の内周面に接合され、マフラー31の内部には、共鳴型消音器35とマフラー31の内周面との接合部分36が形成される。
【0020】
共鳴型消音器35は、延設端E1,E2を有し、延設端(第1の延設端)E1から延設端(第2の延設端)E2まで延設される。また、共鳴型消音器35は、筒状に形成され、内部空洞37を有する。共鳴型消音器35では、内部空洞37は、延設端E1から延設端E2まで、延設される。共鳴型消音器35では、延設端E1に開口38が形成され、内部空洞37は、開口38において、共鳴型消音器35の外部に対して開口する。また、延設端E1とは反対側の延設端E2では、内部空洞37は、閉口される。マフラー31の内部では、共鳴型消音器35の内部空洞37は、後処理装置26が位置する側に向かって、開口38において開口する。すなわち、共鳴型消音器35の内部空洞37は、延設端E1において、排気経路の上流側に向かって、開口する。
【0021】
本実施形態では、共鳴型消音器35において延設端E1,E2の間に、2つの屈曲部分41A,41Bが形成される。屈曲部分41A,41Bのそれぞれでは、共鳴型消音器35が屈曲し、共鳴型消音器35の延設方向が変化する。延設端E1と屈曲部分41Aとの間では、共鳴型消音器35は、排気経路の上流側から下流側へ向かって、排気経路に沿って延設される。そして、屈曲部分41Aにおいて、共鳴型消音器35は、排気経路の延設方向に対して交差する(直交又は略直交する)方向へ屈曲し、屈曲部分41A,41Bの間では、共鳴型消音器35は、排気経路の延設方向に対して交差する(直交又は略直交する)方向に沿って延設される。そして、屈曲部分41Bにおいて、共鳴型消音器35は、排気経路の上流側へ向かって屈曲し、屈曲部分41Bと延設端E2との間では、共鳴型消音器35は、排気経路の下流側から上流側へ向かって延設される。なお、本実施形態では、屈曲部分41A,41Bの間での共鳴型消音器35の延設長は、延設端E1と屈曲部分41Aとの間での共鳴型消音器35の延設長、及び、屈曲部分41Bと延設端E2との間での共鳴型消音器35の延設長のそれぞれに比べて、遥かに小さい。
【0022】
共鳴型消音器35が前述のような構成であるため、本実施形態の共鳴型消音器35では、屈曲部分41A,41Bによって、共鳴型消音器35が折返される折返し位置E3が形成される。
図4等の一例では、屈曲部分41A,41Bの間の領域が、折返し位置(折返し領域)E3となる。マフラー31の内部では、共鳴型消音器35は、延設端E1(開口38)から折返し位置E3まで、排気口が位置する側へ向かって延設される。すなわち、共鳴型消音器35は、延設端E1から折返し位置E3まで、排気経路の上流側から下流側へ向かって延設される。そして、マフラー31の内部では、共鳴型消音器35は、折返し位置E3から延設端E2まで、後処理装置26が位置する側へ向かって延設される。すなわち、共鳴型消音器35は、折返し位置E3から延設端E2まで、排気経路の下流側から上流側へ向かって延設される。
【0023】
また、共鳴型消音器35では、延設端(第1の延設端)E1から延設端(第2の延設端)E2までの延設長は、基準周波数の音波の波長の4分の1又は略4分の1となる。ここで、マフラー31の内部に配置される共鳴型消音器35では、エンジン15で発生した騒音等が、消音対象となる。基準周波数は、消音対象となる音(騒音)に起因する音波の周波数である。延設端E1から延設端E2までの延設長を基準周波数の音波の波長の4分の1又は略4分の1にすることにより、開口38から延設端E2へ向かって進行する基準周波数の音波と固定端である延設端E2で反射した基準周波数の音波とが、干渉によって打消し合う。これにより、基準周波数の音波に対応する音(騒音)が、適切に低減又は消音される。なお、共鳴型消音器35では、延設端E1から延設端E2までの延設長が基準周波数の音波の波長の(2n-1)/4(n=1,2,3,…)であれば、基準周波数の音波に対応する音が、適切に低減又は消音される。ただし、延設端E1,E2の間での共鳴型消音器35の延設長を短くする観点から、延設端E1から延設端E2までの共鳴型消音器35の延設長は、基準周波数の音波の波長の4分の1又は略4分の1になる。
【0024】
また、エンジン15の騒音に起因する音波、すなわち、マフラー31において消音対象となる音に起因する音波は、エンジン15の回転数等に対応した周波数となるため、比較的低い周波数となる。したがって、前述の基準周波数は、比較的低い周波数となる。ある一例では、基準周波数は、130Hz~140Hzのいずれかの周波数である。なお、音波では、周波数が低くなるほど、波長が長くなる。このため、共鳴型消音器35では、消音対象となる音に起因する音波の周波数が低くなるほど、すなわち、基準周波数が低くなるほど、延設端E1から延設端E2までの延設長を長くする必要がある。
【0025】
本実施形態では、マフラー31において消音対象となる音に起因する音波の周波数が前述のように比較的低いため、延設端E1から延設端E2までの共鳴型消音器35の延設長は、ある程度長くなる。実際に、延設端(第1の延設端)E1から延設端(第2の延設端)E2までの共鳴型消音器35の延設長は、後処理装置26への接続位置から屈曲部分33までのマフラー31の延設長に比べて、長い。また、マフラー31の種類等によっては、基準周波数が130Hz~140Hzのいずれかの周波数である場合、延設端E1から延設端E2までの共鳴型消音器35の延設長は、後処理装置26への接続位置から排気口32までのマフラー31の延設長に比べて、長くなる。なお、
図4等の一例では、共鳴型消音器35の折返し位置E3は、マフラー31の屈曲部分33に対して、排気経路の上流側に僅かにずれて位置する。
【0026】
前述のような構成の油圧ショベル1では、エンジン15での騒音が、後処理装置26を通して、マフラー31の内部に伝達される。エンジン15での騒音に起因する音波は、マフラー31の内部において、共鳴型消音器35の内部空洞37に、開口38を通して伝達される。そして、音波は、内部空洞37において延設端E1から延設端E2に向かって進行するとともに、延設端E2において反射される。そして、延設端E2において反射された音波は、延設端E1(開口38)に向かって進行する。前述のように共鳴型消音器35の内部空洞37を音波が伝達されることにより、内部空洞37では、延設端E2へ向かう音波と延設端E1へ向かう音波とが、干渉によって打ち消し合う。これにより、エンジン15での騒音が、共鳴型消音器35の内部空洞37において、適切に消音又は低減される。したがって、本実施形態では、マフラー31の排気口32に到達する前にエンジン15での騒音が適切に低減又は消音等され、エンジン15での騒音が適切に低減される。
【0027】
また、本実施形態では、共鳴型消音器35は、マフラー31の内部の排気経路に配置される。このため、マフラー31の排気経路から消音器が分岐する構成等に比べて、マフラー31及び共鳴型消音器35が占めるスペースが、小さい。したがって、マフラー31及び共鳴型消音器35が占めるスペースが大きくなることなく、共鳴型消音器35によって、エンジン15での騒音が適切に低減される。
【0028】
また、本実施形態では、共鳴型消音器35において延設端E1,E2の間に、共鳴型消音器35が折返される折返し位置E3が形成される。ここで、エンジン15の騒音が消音対象である場合等は、前述のように、騒音に起因する音波の周波数が比較的低いため、延設端E1から延設端E2までの共鳴型消音器35の延設長は長くなる。本実施形態では、共鳴型消音器35に折返し位置E3が形成されるため、延設端E1から延設端E2までの共鳴型消音器35の延設長が長くなっても、マフラー31を大型化することなく、マフラー31の内部に共鳴型消音器35を収納可能となる。
【0029】
また、本実施形態では、マフラー31の内部に配置される共鳴型消音器35は、延設端E1の開口38において、後処理装置26が位置する側に向かって開口する。このため、マフラー31の内部に伝達されたエンジン15の騒音は、共鳴型消音器35の内部空洞37に、開口38を通して伝達され易くなる。これにより、エンジン15での騒音が、共鳴型消音器35の内部空洞37において、さらに適切に消音又は低減され、マフラー31の排気口32に到達する前に、エンジン15での騒音が、さらに適切に低減又は消音等される。
【0030】
また、本実施形態では、マフラー31の内部において、共鳴型消音器35は、延設端E1から折返し位置E3まで、排気口32が位置する側へ向かって延設される。そして、マフラー31の内部では、共鳴型消音器35は、折返し位置E3から延設端E2まで、後処理装置26が位置する側へ向かって延設される。このため、マフラー31の内部に形成される排気経路では、排気経路の延設方向に直交又は略直交する断面において共鳴型消音器35が占める面積を小さくすることが、可能になる。これにより、排気経路に共鳴型消音器35が配置されても、排気ガスの上流側から下流側への流れが、共鳴型消音器35によって阻害され難くなる。したがって、マフラー31の内部に共鳴型消音器35が配置されても、排気経路において共鳴型消音器35が配置される領域を排気ガスが適切に通過し、マフラー31の排気口32からエンジンルーム13の外部に排気ガスが適切に排気される。
【0031】
(変形例)
なお、
図5に示す第1の変形例でも、マフラー31の内部に共鳴型消音器35が配置される。ただし、本変形例では、延設端E1,E2の間に折返し位置が形成されず、代わりに、共鳴型消音器35が屈曲する屈曲位置E4が、延設端E1,E2の間に形成される。本変形例では、共鳴型消音器35の屈曲位置E4は、マフラー31の屈曲部分33に対して、排気経路の上流側及び下流側のいずれにもずれていない、又は、ほとんどずれていない。また、後処理装置26への接続位置から屈曲部分33までのマフラー31の延設方向は、延設端(第1の延設端)E1から屈曲位置E4までの共鳴型消音器35(内部空洞37)の延設方向と一致又は略一致する。そして、屈曲部分33から排気口32までのマフラー31の延設方向は、屈曲位置E4から延設端(第2の延設端)E2までの共鳴型消音器35(内部空洞37)の延設方向と一致又は略一致する。このため、共鳴型消音器35の屈曲位置E4と延設端E2との間の部位は、マフラー31の屈曲部分33と排気口32との間の部位が屈曲部分33において屈曲する側へ、屈曲位置E4において屈曲する。
【0032】
本変形例でも、共鳴型消音器35において、延設端(第1の延設端)E1から延設端(第2の延設端)E2までの延設長は、基準周波数の音波の波長の4分の1又は略4分の1となる。また、マフラー31において消音対象となる音に起因する音波の周波数である基準周波数は、前述のように比較的低い。このため、本変形例でも、延設端E1から延設端E2までの共鳴型消音器35の延設長は、ある程度長くなる。実際に、本変形例でも、延設端(第1の延設端)E1から延設端(第2の延設端)E2までの共鳴型消音器35の延設長は、後処理装置26への接続位置から屈曲部分33までのマフラー31の延設長に比べて、長い。なお、本変形例でも、延設端E1において、内部空洞37の開口38は、後処理装置26が位置する側に向かって、すなわち、排気経路の上流側に向かって開口する。本変形例でも、前述の実施形態等と同様の作用及び効果を奏する。したがって、マフラー31及び共鳴型消音器35が占めるスペースが大きくなることなく、共鳴型消音器35によって、エンジン15での騒音が適切に低減される。
【0033】
また、
図6に示す第2の変形例でも、第1の実施形態等と同様に、マフラー31の内部に共鳴型消音器35が配置されるとともに、共鳴型消音器35が折返される折返し位置E5が、延設端E1,E2の間に形成される。ただし、本変形例では、屈曲部分41A,41B等と同様の屈曲部分が、共鳴型消音器35の折返し位置E5に形成されない。そして、折返し位置E5では、共鳴型消音器35は円弧状又は略円弧状に延設される。したがって、共鳴型消音器35は、延設端E1,E2の間において、U字状又は略U字状に延設される。
【0034】
本変形例でも、共鳴型消音器35において、延設端(第1の延設端)E1から延設端(第2の延設端)E2までの延設長は、基準周波数の音波の波長の4分の1又は略4分の1となる。また、マフラー31において消音対象となる音に起因する音波の周波数である基準周波数は、前述のように比較的低い。このため、本変形例でも、延設端E1から延設端E2までの共鳴型消音器35の延設長は、ある程度長くなる。実際に、本変形例でも、延設端(第1の延設端)E1から延設端(第2の延設端)E2までの共鳴型消音器35の延設長は、後処理装置26への接続位置から屈曲部分33までのマフラー31の延設長に比べて、長い。なお、本変形例でも、延設端E1において、内部空洞37の開口38は、後処理装置26が位置する側に向かって、すなわち、排気経路の上流側に向かって開口する。本変形例でも、前述の実施形態等と同様の作用及び効果を奏する。したがって、マフラー31及び共鳴型消音器35が占めるスペースが大きくなることなく、共鳴型消音器35によって、エンジン15での騒音が適切に低減される。
【0035】
なお、マフラー31の内部に配置される共鳴型消音器35では、共鳴型消音器35が屈曲する屈曲位置、及び、共鳴型消音器35が折返される折返し位置のいずれかが、延設端E1,E2の間に1箇所以上形成されていればよい。そして、共鳴型消音器35は、延設端(第1の延設端)E1に開口38が形成され、かつ、延設端E1とは反対側の延設端(第2の延設端)E2が閉口される筒状に形成されていればよい。そして、共鳴型消音器は、後処理装置26が位置する側に向かって、開口38において開口していればよい。このような構成であることにより、前述の実施形態等と同様に、マフラー31及び共鳴型消音器35が占めるスペースが大きくなることなく、共鳴型消音器35によって、エンジン15での騒音が適切に低減される。
【0036】
また、前述の実施形態等では、建設機械として油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、前述したマフラー31及び共鳴型消音器35の構成は、油圧ショベル1以外の建設機械にも適用可能である。
【0037】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
【符号の説明】
【0038】
1…油圧ショベル、2…下部走行体、3…上部旋回体、13…エンジンルーム、15…エンジン、16…カバー、26…後処理装置、27…接続管、31…マフラー、32…排気口、33…屈曲部分、35…共鳴型消音器、37…内部空洞、38…開口、E1…延設端(第1の延設端)、E2…延設端(第2の延設端)、E3,E5…折返し位置、E4…屈曲位置。