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特開2022-161654エンコーダ、サーボモータ、サーボシステム、エンコーダ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161654
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】エンコーダ、サーボモータ、サーボシステム、エンコーダ制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
G01D5/244 E
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066627
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】特許業務法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井ノ上 涼
(72)【発明者】
【氏名】室北 幾磨
(72)【発明者】
【氏名】貞包 健一
(72)【発明者】
【氏名】原田 正信
(72)【発明者】
【氏名】有永 雄司
(72)【発明者】
【氏名】松谷 泰裕
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA24
2F077CC02
2F077CC09
2F077CC10
2F077NN02
2F077NN17
2F077NN28
2F077PP13
2F077PP14
2F077PP19
2F077QQ05
2F077QQ15
2F077QQ17
2F077TT87
(57)【要約】
【課題】耐久性を向上できるエンコーダ、サーボモータ、サーボシステム、及びエンコーダ制御方法を提供する。
【解決手段】エンコーダ7は、回転するディスク19の1回転以内の角度位置を表す角度位置情報を検出する光学モジュール17と、ディスク19の回転数を表す多回転情報を検出する磁気検出部21と、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合に、磁気検出部21に電力を供給する電池29と、光学モジュール17及び磁気検出部21の少なくとも一方が接続された基板13に対して、電池29の接続端子34L,34Rを、該接続端子に接触したはんだを介して接続する接続部36L,36Rと、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するディスクの1回転以内の角度位置を表す角度位置情報を検出する角度位置情報検出部と、
前記ディスクの回転数を表す多回転情報を検出する多回転情報検出部と、
エンコーダに外部電力が供給されない場合に、前記多回転情報検出部に電力を供給する電池と、
前記角度位置情報検出部及び前記多回転情報検出部の少なくとも一方が接続された基板に対して、前記電池の接続端子を、該接続端子に接触したはんだを介して接続する接続部と、
を有する、エンコーダ。
【請求項2】
前記接続部は、前記はんだにより、前記電池の接続端子を前記基板に対して直接接続する、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記電池は、
充電を行うことにより繰り返し使用することが可能な二次電池である、
請求項1又は2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記電池は、
固体電解質を有する全固体電池である、
請求項3に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記外部電力が供給される場合に前記全固体電池を充電し、前記外部電力が供給されない場合に前記全固体電池への充電を停止する充電モジュールをさらに有する、
請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記充電モジュールと前記全固体電池との間に電気的に接続され、電流の向きを前記充電モジュールから前記全固体電池への向きに規制する整流素子をさらに有する、
請求項5に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記外部電力が供給される場合に、前記角度位置情報及び前記多回転情報の少なくとも一方に基づいて前記ディスクの位置データを生成する処理モジュールをさらに有し、
前記充電モジュールと前記処理モジュールは、
前記外部電力の電力供給ラインに対して電気的に並列に接続されている、
請求項5または6に記載のエンコーダ。
【請求項8】
前記多回転情報検出部に対して、前記電池からの電力の供給又は停止の切り替えを制御する処理モジュールと、をさらに有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項9】
前記電池は、
前記外部電力の供給が停止した場合に、前記処理モジュールを介して前記多回転情報検出部に対して電力を供給する、
請求項8に記載のエンコーダ。
【請求項10】
前記処理モジュールは、
前記外部電力の供給が停止した場合に、前記電池からの電力によりスリープする、
請求項8又は9に記載のエンコーダ。
【請求項11】
前記ディスクの回転によって電気信号を発生する電気信号発生部をさらに有し、
前記処理モジュールは、
前記電気信号を受けて、スリープから復帰し、
前記多回転情報検出部への電力の供給を開始する、
請求項10に記載のエンコーダ。
【請求項12】
前記処理モジュールは、
前記多回転情報検出部により検出された前記多回転情報に基づいて、所定の演算処理を実行する、
請求項8~11のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項13】
前記処理モジュールは、
前記多回転情報検出部からの前記多回転情報の取得後で、且つ、前記所定の演算処理の開始前に、前記電池から前記多回転情報検出部への電力の供給を停止する、
請求項12に記載のエンコーダ。
【請求項14】
データの読み書きが可能で、且つ、非通電時にも記録内容を保持可能な不揮発性メモリをさらに有し、
前記処理モジュールは、
前記所定の演算処理の結果を、前記不揮発性メモリに記録する、
請求項12または13に記載のエンコーダ。
【請求項15】
前記処理モジュールは、
前記外部電力が供給されない状態から供給される状態に復帰した場合に、前記電池に関する異常を検出する処理を実行する、
請求項8~14のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項16】
前記処理モジュールは、
前記基板に搭載され、
前記外部電力が供給される場合の、前記角度位置情報及び前記多回転情報の少なくとも一方に基づいた、前記ディスクの第1位置データの生成と、
前記外部電力が供給されない場合の、前記電池から供給される電力を用いて前記多回転情報検出部により検出される前記多回転情報に基づいた、前記ディスクの第2位置データの生成と、
を実行する、
請求項8~15のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項17】
回転するディスクの1回転以内の角度位置情報を検出する角度位置情報検出部と、
前記ディスクの回転数を表す多回転情報を検出する多回転情報検出部と、
エンコーダに外部電力が供給されない場合に、前記多回転情報検出部に電力を供給する、固体電解質を有する全固体電池と、
を有する、エンコーダ。
【請求項18】
回転子が固定子に対して回転するモータと、
前記回転子の位置、速度、加速度の少なくとも1つを検出する、請求項1~17のいずれか1項に記載のエンコーダと、
を有する、サーボモータ。
【請求項19】
回転子が固定子に対して回転するモータと、
前記回転子の位置、速度、加速度の少なくとも1つを検出する、請求項1~17のいずれか1項に記載のエンコーダと、
前記エンコーダの検出結果に基づいて前記モータを制御する制御装置と、
を有する、サーボシステム。
【請求項20】
ディスクの回転数を表す多回転情報を検出する多回転情報検出部と、
外部電力が供給されない場合に、前記多回転情報検出部に電力を供給する電池と、を有するエンコーダの制御方法であって、
前記外部電力の供給が停止した場合に、処理モジュールを前記電池からの電力によりスリープすることと、
前記処理モジュールがスリープした場合に、前記多回転情報検出部への前記電池の電力の供給を停止することと、
前記ディスクの回転によって発生する電気信号を受けて、前記処理モジュールをスリープから復帰することと、
前記処理モジュールがスリープから復帰した場合に、前記多回転情報検出部への電力の供給を開始することと、
を有する、エンコーダの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、エンコーダ、サーボモータ、サーボシステム、及びエンコーダ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動部の位置情報を検出する検出部を含む位置検出系と、移動部の移動によって電気信号が発生する電気信号発生部と、電気信号発生部で発生する電気信号に応じて、位置検出系で消費される電力の少なくとも一部を供給するバッテリーと、を備えるエンコーダ装置が記載されている。バッテリーは電池ケースに収容され、電極及び配線を介して回路基板に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/126338号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、エンコーダ装置に衝撃や振動が生じた場合に不具合が生じる可能性があり、より高い耐久性が求められていた。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、耐久性を向上できるエンコーダ、サーボモータ、サーボシステム、及びエンコーダ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、回転するディスクの1回転以内の角度位置を表す角度位置情報を検出する角度位置情報検出部と、前記ディスクの回転数を表す多回転情報を検出する多回転情報検出部と、エンコーダに外部電力が供給されない場合に、前記多回転情報検出部に電力を供給する電池と、前記角度位置情報検出部及び前記多回転情報検出部の少なくとも一方が接続された基板に対して、前記電池の接続端子を、該接続端子に接触したはんだを介して接続する接続部と、を有する、エンコーダが適用される。
【0007】
また、本発明の別の観点によれば、回転するディスクの1回転以内の角度位置情報を検出する角度位置情報検出部と、前記ディスクの回転数を表す多回転情報を検出する多回転情報検出部と、エンコーダに外部電力が供給されない場合に、前記多回転情報検出部に電力を供給する、固体電解質を有する全固体電池と、を有する、エンコーダが適用される。
【0008】
また、本発明の別の観点によれば、回転子が固定子に対して回転するモータと、前記回転子の位置、速度、加速度の少なくとも1つを検出する、上記エンコーダと、を有する、サーボモータが適用される。
【0009】
また、本発明の別の観点によれば、回転子が固定子に対して回転するモータと、前記回転子の位置、速度、加速度の少なくとも1つを検出する、上記エンコーダと、前記エンコーダの検出結果に基づいて前記モータを制御する制御装置と、を有する、サーボシステムが適用される。
【0010】
また、本発明の別の観点によれば、ディスクの回転数を表す多回転情報を検出する多回転情報検出部と、外部電力が供給されない場合に、前記多回転情報検出部に電力を供給する電池と、を有するエンコーダの制御方法であって、前記外部電力の供給が停止した場合に、処理モジュールを前記電池からの電力によりスリープすることと、前記処理モジュールがスリープした場合に、前記多回転情報検出部への前記電池の電力の供給を停止することと、前記ディスクの回転によって発生する電気信号を受けて、前記処理モジュールをスリープから復帰することと、前記処理モジュールがスリープから復帰した場合に、前記多回転情報検出部への電力の供給を開始することと、を有する、エンコーダの制御方法が適用される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエンコーダ等によれば、耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】サーボシステムの全体構成の一例を表す説明図である。
図2】エンコーダの装置構成の一例を一部を断面にして表す側面図である。
図3】エンコーダの装置構成の一例を基板側から見た上面図である。
図4】全固体電池と基板とを接続する接続部の構成の一例を表す断面図である。
図5】処理モジュールの機能構成の一例を表すブロック図である。
図6】基板の回路構成の一例を表すブロック図である。
図7】トリガ信号と、処理モジュールが実行する各処理と、磁気検出部の電源オンのタイミングの一例を表すタイミングチャートである。
図8】エンコーダに外部電力が供給される場合に処理モジュールにより実行される処理手順の一例を表すフローチャートである。
図9】角度位置信号、A相多回転信号、及びB相多回転信号の波形の一例を表す説明図である。
図10】エンコーダに外部電力が供給されない場合に処理モジュールにより実行される処理手順の一例を表すフローチャートである。
図11】外部電力の復帰時に全固体電池の異常検出を行う変形例における、処理モジュールにより実行される処理手順の一例を表すフローチャートである。
図12】磁気検出部への電力供給をスイッチで切り替える変形例における、基板の回路構成の一例を表すブロック図である。
図13】外部電力の供給停止時に処理モジュールをオフにする変形例における、基板の回路構成の一例を表すブロック図である。
図14】記録部を処理モジュールの外部に設けた変形例における、処理モジュールの機能構成の一例を表すブロック図である。
図15】処理モジュールのハードウェア構成例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ実施形態について説明する。
【0014】
<1.サーボシステムの全体構成>
図1を参照しつつ、実施形態に係るサーボシステムの全体構成の一例について説明する。図1は、サーボシステムの全体構成の一例を表す説明図である。
【0015】
図1に示すように、サーボシステム1は、サーボモータ3と、制御装置5とを有する。サーボモータ3は、エンコーダ7と、モータ9とを有する。
【0016】
モータ9は、例えば回転子(図示省略)が固定子(図示省略)に対して回転する回転型のモータである。モータ9は、回転子に固定されたシャフト11を回転軸心Ax周りに回転させる。モータ9単体をサーボモータという場合もあるが、実施形態ではモータ9とエンコーダ7を含む構成をサーボモータ3という。
【0017】
エンコーダ7は、例えばモータ9の負荷側(回転力を出力する側。図1中左側)とは反対側の反負荷側(図1中右側)に連結される。但し、エンコーダ7はモータ9の負荷側に連結されてもよい。エンコーダ7は、モータ9のシャフト11(回転子)の1回転以内の角度位置を表す角度位置情報、及び、回転数を表す多回転情報の少なくとも一方を検出し、それらの情報に基づく位置データを出力する。エンコーダ7は、シャフト11の角度位置に加えて又は代えて、回転速度又は回転加速度の少なくとも一方を検出してもよい。
【0018】
制御装置5は、エンコーダ7から出力される位置データに基づいてモータ9に印加する電流又は電圧等を制御し、モータ9の回転を制御する。制御装置5は、上位制御装置から出力される上位制御信号に表された位置、速度、トルク等を実現するようにモータ9を制御する。
【0019】
<2.エンコーダの装置構成>
図2及び図3を参照しつつ、エンコーダ7の装置構成の一例について説明する。図2は、エンコーダ7の装置構成の一例を一部を断面にして表す側面図である。図3は、エンコーダ7の装置構成の一例を基板側から見た上面図である。
【0020】
図2に示すように、サーボモータ3は、エンコーダ7とモータ9とを有する。図2及び図3に示すように、エンコーダ7は、基板13と、基板支持部材15と、光学モジュール17と、ディスク19と、磁気検出部21と、マグネット23と、トリガ信号発生器25と、複数のマグネット27と、電池29と、処理モジュール31とを有する。
【0021】
基板13は、絶縁体で構成される板にプリント配線(図示省略)や複数の回路部品が実装されたプリント回路板である。基板13は略円板状である。基板13は、回転軸心Axに沿った軸方向において、ディスク19に対してモータ9とは反対側に配置されている。基板13は、基板支持部材15によりディスク19と略平行に支持されている。基板13は単一の基板に限らず、複数の基板で構成されてもよい。
【0022】
基板支持部材15は、例えば円筒状の部材であり、基板13をモータ9の筐体の反負荷側の端部9aに固定する。基板支持部材15は、例えば複数の円柱状の部材でもよい。
【0023】
光学モジュール17(角度位置情報検出部の一例)は、回転するディスク19の1回転以内の角度位置を表す角度位置情報を検出する。光学モジュール17は、基板13のディスク19と対向する面上に実装されている。エンコーダ7に外部電力が供給される場合には光学モジュール17へも電力が供給され、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合には光学モジュール17への電力供給も停止する。光学モジュール17の構成は、角度位置情報を光学的に検出可能であれば特に限定されるものではない。例えば後述の図5に示すように、光学モジュール17はディスク19と対向する面上に光源33と受光アレイPA,PIとを有してもよい。受光アレイPAは、ディスク19のスリット列SAで反射された光を受光してアブソリュート信号(角度位置情報の一例)を出力する。受光アレイPIは、ディスク19のスリット列SIで反射された光を受光してインクリメンタル信号(角度位置情報の一例)を出力する。光学モジュール17は、光源33と受光アレイPA,PIとがディスク19に対して同じ側に配置された、いわゆる反射型の光学モジュールである。
【0024】
ディスク19は、例えば円板状の部材である。ディスク19は、モータ9のシャフト11に連結され、シャフト11と共に回転する。ディスク19は、光学モジュール17と対向する面上に2つのスリット列SA,SIを有する。スリット列SA,SIはそれぞれ、回転軸心Ax上のディスク中心周りの周方向にリング状に配置された複数のスリット(図示省略)を有する。スリットは、ディスク19の表面に形成され、光源33から出射された光に対し反射等の作用を与える領域である。ディスク19の絶対位置を検出可能であれば、ディスク19に形成されるスリット列の数は単数又は3つ以上でもよい。
【0025】
磁気検出部21(多回転情報検出部の一例)は、ディスク19の回転数を表す多回転情報を検出する。磁気検出部21は、例えば基板13のディスク19と対向する面上に実装されている。磁気検出部21は、例えばマグネット23と対向する位置に配置されている。エンコーダ7に外部電力が供給される場合には、磁気検出部21へも電力が供給され、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合には、磁気検出部21への電力供給は処理モジュール31により制御される。磁気検出部21の構成は、ディスク19の多回転情報を磁気的に検出可能であれば特に限定されるものではない。例えば磁気検出部21として、MR素子、GMR素子、TMR素子等の磁気抵抗素子を使用してもよい。
【0026】
マグネット23は、例えばディスク19の磁気検出部21と対向する面上に配置されている。マグネット23は、例えば回転軸心Ax上に位置する。マグネット23の構成は、磁気検出部21により検出される磁束の向きが、ディスク19が略180度回転する毎に反転する構成であれば特に限定されるものではない。例えば図3に示すように、マグネット23をディスク19の直径方向にN極とS極が形成されるように着磁した構成としてもよい。図3では、マグネット23のN極を23N、S極を23Sとして図示している。マグネット23の形状は、例えば円板状でもよいしリング状でもよい。磁気検出部21はマグネット23の磁束の向きを検出し、ディスク19が1回転すると1周期変化する信号を、互いに位相が90度異なる2つのA相信号及びB相信号(多回転情報の一例)として出力する。
【0027】
トリガ信号発生器25(電気信号発生部の一例)は、ディスク19の回転によってトリガ信号(電気信号の一例)を発生する。トリガ信号発生器25は、例えば基板13のディスク19とは反対側の面上に実装されている。トリガ信号発生器25の構成は、ディスク19の回転によって周期的にトリガ信号を発生することが可能であれば特に限定されるものではない。例えばトリガ信号発生器25は、大バルクハウゼン効果を生じる磁性素子(図示省略)とコイル(図示省略)とを有する構成としてもよい。この場合、トリガ信号発生器25は、磁性素子の磁化方向が外部磁界により急激に反転する大バルクハウゼン効果により、コイルから例えばパルス信号であるトリガ信号を出力する。トリガ信号発生器25は、回転軸心Axの軸方向から見て、マグネット27の回転軌跡上に位置するように配置されている。
【0028】
マグネット27は、例えばディスク19の基板13とは反対側の面上に配置されている。マグネット27の構成は、トリガ信号発生器25の磁性素子に付与される磁界がディスク19の回転によって周期的に反転する構成であれば特に限定されるものではない。例えば図3に示すように、4つのマグネット27を基板13側の磁極が交互に異なるように周方向に略90度間隔で配置した構成としてもよい。図3では、基板13側の磁極がN極、S極であるマグネット27をそれぞれ27N,27Sとして図示している。トリガ信号発生器25は、4つのマグネット27によってディスク19が1回転する毎に4回のトリガ信号を発生する。
【0029】
電池29は、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合に、磁気検出部21に電力を供給する。電池29は、磁気検出部21に対して直接電力を供給するのではなく、処理モジュール31を介して電力を供給する。つまり電池29は、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合に磁気検出部21に電力を供給するための供給源である。電池29は、充電を行うことにより繰り返し使用することが可能な二次電池としてもよい。電池29は、例えば固体電解質を有する全固体電池としてもよい。実施形態では、電池29が全固体電池である場合について説明する。全固体電池29は、例えば基板13のディスク19とは反対側の面に実装されている。全固体電池29は基板13に対してはんだにより電気的に接続及び機械的に固定されている。
【0030】
処理モジュール31は、エンコーダ7に外部電力が供給される場合に、角度位置情報及び多回転情報に基づいてディスク19の位置データを生成する。処理モジュール31は、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合に、磁気検出部21に対して、全固体電池29からの電力の供給又は停止の切り替えを制御する。処理モジュール31は、例えば基板13のディスク19とは反対側の面に実装されている。処理モジュール31の構成は特に限定されるものではないが、例えばCPUやメモリ等の複数の回路素子を有するプロセッサとして構成されてもよい。
【0031】
<3.全固体電池と基板との接続部の構成>
図4を参照しつつ、全固体電池29と基板13とを接続する接続部の構成の一例について説明する。図4は、全固体電池29と基板13とを接続する接続部の構成の一例を表す断面図である。図4では全固体電池29の内部構造の図示を省略している。
【0032】
図4に示すように、全固体電池29は基板13に平行な方向の両端に接続端子34L,34Rを有する。基板13の全固体電池29が実装される面には、接続端子34L,34Rにそれぞれ対応するランド35L,35Rが形成されている。ランド35L,35Rは例えば銅箔で形成された端子である。接続部36Lは、全固体電池29の接続端子34Lを、該接続端子34Lに接触したはんだを介してランド35Lに接続する。接続部36Rは、全固体電池29の接続端子34Rを、該接続端子34Rに接触したはんだを介してランド35Rに接続する。「はんだを介して」とは、接続端子34L,34Rと基板13とが、それらの間にはんだが介在して接続される構成を含むことを意味する。したがって、例えば、接続端子34L,34Rが子基板等にはんだで固定され、その子基板等が何らかの手段(例えばコネクタ等)で基板13に接続される場合等も含まれる。なお、図4には、接続部36L,36Rが、はんだにより、全固体電池29の接続端子34L,34Rを基板13に対して直接接続する構成を一例として図示している。接続部36L,36Rにより、全固体電池29は基板13の配線に対して電気的に接続されるとともに、基板13に対して機械的に固定されている。
【0033】
<4.処理モジュールの機能構成>
図5を参照しつつ、処理モジュール31の機能構成の一例について説明する。図5は、処理モジュール31の機能構成の一例を表すブロック図である。
【0034】
処理モジュール31は、エンコーダ7に外部電力が供給される場合の、角度位置情報及び多回転情報の両方に基づいたディスク19の位置データの生成と、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合の、全固体電池29から供給される電力を用いて磁気検出部21により検出される多回転情報に基づいた、ディスク19の多回転量の生成とを実行する。処理モジュール31のこのような機能を実現するための機能構成の一例について説明する。
【0035】
図5に示すように、処理モジュール31は、角度位置信号生成部37と、A相多回転信号生成部39と、B相多回転信号生成部41と、カウンタ43と、位置データ生成部45と、記録部47とを有する。
【0036】
角度位置信号生成部37は、受光アレイPAの出力に基づいてディスク19の1回転以内の絶対位置を特定する。絶対位置の特定手法は特に限定されるものではない。例えば、受光アレイPAが有する複数の受光素子が、アブソリュートパターンを有するスリット列SAの検出の有無に基づいて1つ1つの受光又は非受光をビットとして扱い、複数ビットのアブソリュート信号を出力してもよい。この場合、角度位置信号生成部37は、アブソリュート信号に基づいてシリアルなビットパターンに暗号化(コード化)されていた絶対位置を復号し、絶対位置を特定する。
【0037】
角度位置信号生成部37は、受光アレイPIの出力に基づいてディスク19の1回転以内の相対位置を特定する。例えば、受光アレイPIが有する複数の受光素子が、インクリメンタルパターンを有するスリット列SIの検出結果に基づいて、インクリメンタル信号を出力してもよい。この場合、角度位置信号生成部37は、インクリメンタル信号に基づいてインクリメンタルパターンの1ピッチ内の位置を特定する。
【0038】
角度位置信号生成部37は、アブソリュート信号に基づいて特定した絶対位置に、インクリメンタル信号に基づいて特定した1ピッチ内の位置を重畳することにより、ディスク19の1回転以内の高精度な角度位置を表す角度位置信号Ap(後述の図9参照)を生成する。
【0039】
A相多回転信号生成部39は、磁気検出部21からのA相信号を矩形波状の信号に変換してA相多回転信号Ma(後述の図9参照)を生成する。前述のように、マグネット23は磁束の向きが略180度の回転角度範囲毎に反転するので、A相多回転信号Maはデューティ比50%、ディスク19の1回転毎に1パルスの信号となる。
【0040】
B相多回転信号生成部41は、磁気検出部21からのB相信号を矩形波状の信号に変換してB相多回転信号Mb(後述の図9参照)を生成する。B相多回転信号Mbは、A相多回転信号Maと同様にデューティ比50%、ディスク19の1回転毎に1パルスの信号となる。B相多回転信号MbはA相多回転信号Maと位相が90度異なる。
【0041】
カウンタ43は、A相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbに基づいてディスク19の回転数を表す多回転量をカウントするカウント演算処理(所定の演算処理の一例)を実行し、多回転信号Rnを生成する。カウンタ43による具体的なカウント方法は後述する(後述の図8及び図9参照)。カウンタ43は、カウント演算処理の結果である多回転信号Rnを位置データ生成部45に出力する。
【0042】
処理モジュール31は、エンコーダ7に外部電力が供給される場合には、アクティブモードとなる。外部電力によるアクティブモードでは、処理モジュール31は磁気検出部21に電力を供給する。位置データ生成部45は、角度位置信号Apと多回転信号Rnとを合成して位置データ(第1位置データの一例)を生成し、制御装置5に出力する。処理モジュール31は、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合には、スリープモードに切り替わる。スリープモードでは、処理モジュール31は磁気検出部21への電力供給を停止する。スリープモードでは、処理モジュール31は位置データの生成を含む各種の演算処理を停止するが、完全な停止状態とはならずに、全固体電池29から供給される電力により起動状態が維持される。
【0043】
前述のように、トリガ信号発生器25はディスク19の回転によってトリガ信号を発生する。処理モジュール31は、スリープモードにおいてトリガ信号発生器25からトリガ信号を受信した場合、全固体電池29から供給される電力によりスリープモードから復帰してアクティブモードとなる。全固体電池29によるアクティブモードでは、処理モジュール31は磁気検出部21へ電力を供給し、磁気検出部21からA相信号及びB相信号を取得する。カウンタ43は、A相多回転信号生成部39からのA相多回転信号Ma及びB相多回転信号生成部41からのB相多回転信号Mbを受けて、カウント演算処理を実行する。カウンタ43は、カウント演算処理の結果である多回転信号Rn(第2位置データの一例)を記録部47に記録する。処理モジュール31は、磁気検出部21からのA相信号及びB相信号の取得後に、全固体電池29から磁気検出部21への電力の供給を停止する。例えば、カウント演算処理の開始前に、磁気検出部21への電力の供給を停止してもよい。
【0044】
記録部47(不揮発性メモリの一例)は、カウンタ43からの多回転信号Rnを記録する。記録部47は、データの読み書きが可能で、且つ、非通電時にも記録内容を保持可能な不揮発性メモリであれば、特に限定されるものではない。例えば記録部47としてFRAM(登録商標)(強誘電体メモリ)等を使用してもよい。記録部47は、処理モジュール31に内蔵されている。但し、記録部47は処理モジュール31の外部に設置されてもよい(後述の図14参照)。
【0045】
エンコーダ7に外部電力が供給されない状態から外部電力が供給される状態に復帰した場合には、位置データ生成部45は、記録部47に記録された多回転信号Rnを読み出し、角度位置信号生成部37から出力された角度位置信号Apと合成して位置データの初期値を生成する。その後処理モジュール31は、エンコーダ7に外部電力が供給される場合の通常の位置データ生成処理を実行する。
【0046】
上述した角度位置信号生成部37、A相多回転信号生成部39、B相多回転信号生成部41、カウンタ43、位置データ生成部45、記録部47等における処理等は、これらの処理の分担の例に限定されるものではない。例えば、更に少ない数の処理部(例えば1つの処理部)で処理されてもよく、更に細分化された処理部により処理されてもよい。処理モジュール31は、磁気検出部21に電力を供給する部分のみ実際の装置により実装され、その他の上記各処理部による機能は後述するCPU901(図15参照)が実行するプログラムにより実装されてもよい。各処理部による機能の一部又は全部がASICやFPGA、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。
【0047】
<5.基板の回路構成>
図6を参照しつつ、基板13の回路構成の一例について説明する。図6は、基板13の回路構成の一例を表すブロック図である。図6において、実線の矢印は外部電力又は全固体電池29による電力供給ライン、破線の矢印はトリガ信号の信号ラインを示している。
【0048】
図6に示すように、エンコーダ7は、基板13に実装された回路構成として、DC/DCコンバータ49と、充電モジュール51と、全固体電池29と、レギュレータ53と、トリガ信号発生器25と、整流器55と、処理モジュール31と、磁気検出部21と、複数の整流素子57,59,61とを有する。図6では、光学モジュール17を含む光学検出系の回路構成の図示を省略している。
【0049】
DC/DCコンバータ49は、例えば直流電源である外部電力の電圧を所定の電圧に変換し、充電モジュール51及びレギュレータ53に出力する。
【0050】
充電モジュール51は、二次電池である全固体電池29に対する充電を制御する。充電モジュール51は、エンコーダ7に外部電力が供給される場合に全固体電池29を充電し、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合に全固体電池29への充電を停止する。全固体電池29の充電の仕方は特に限定されるものではない。充電モジュール51は、外部電力の電力供給ラインEL1に対して、処理モジュール31と電気的に並列となるように接続されている。
【0051】
充電モジュール51と全固体電池29との間の電力供給ラインEL2には、整流素子57が電気的に接続されている。整流素子57は、電流の向きを充電モジュール51から全固体電池29への向きに規制する。DC/DCコンバータ49とレギュレータ53との間の電力供給ラインEL3には、整流素子59が電気的に接続されている。整流素子59は、電流の向きをDC/DCコンバータ49からレギュレータ53への向きに規制する。全固体電池29とレギュレータ53との間の電力供給ラインEL4には、整流素子61が電気的に接続されている。整流素子61は、電流の向きを全固体電池29からレギュレータ53への向きに規制する。整流素子57,59,61は、電流の向きを規制可能であれば特に限定されるものではない。例えば整流素子57,59,61としてトランジスタやダイオード等を使用してもよい。
【0052】
全固体電池29は、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合に、電力供給ラインEL4を介してレギュレータ53に電力を出力する。
【0053】
レギュレータ53は、DC/DCコンバータ49又は全固体電池29から出力される電力の電圧及び電流を一定に保つように制御し、処理モジュール31に出力する。
【0054】
処理モジュール31は、磁気検出部21への電力供給を制御する。処理モジュール31は、エンコーダ7に外部電力が供給される場合には、磁気検出部21へ電力を供給する。処理モジュール31は、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合には、磁気検出部21への電力供給を停止する。この場合、前述のように処理モジュール31は、全固体電池29から供給される電力によりスリープモードに切り替わる。
【0055】
トリガ信号発生器25は、ディスク19の回転によってトリガ信号を発生する。整流器55は、トリガ信号の電流を整流すると共に、トリガ信号の電流及び電圧が所定の値以下となるように制限する。整流器55は、整流及び制限したトリガ信号を処理モジュール31に出力する。
【0056】
前述のように、処理モジュール31は、スリープモードにおいてトリガ信号を受信した場合、磁気検出部21に対して全固体電池29を供給源とする電力を供給する。処理モジュール31は、磁気検出部21からのA相信号及びB相信号の取得後に、磁気検出部21への電力の供給を停止する。処理モジュール31は、A相信号及びB相信号に基づいてカウント演算処理を実行し、演算処理の終了後にスリープモードに切り替わる。処理モジュール31は、スリープモードにおいてトリガ信号を受信する度に同様の処理を繰り返す。
【0057】
<6.トリガ信号、処理モジュールの処理、磁気検出部の電源オンのタイミング>
図7を参照しつつ、トリガ信号と、処理モジュールが実行する各処理と、磁気検出部の電源オンのタイミングの一例について説明する。図7は、トリガ信号と、処理モジュールが実行する各処理と、磁気検出部の電源オンのタイミングの一例を表すタイミングチャートである。
【0058】
図7に示すように、トリガ信号発生器25がトリガ信号を発生すると、処理モジュール31はスリープモードからアクティブモードに切り替わる。トリガ信号の発生からアクティブモードに切り替わるまでに要する時間Tdは、処理モジュール31をスリープモードではなく停止させる場合(後述の図13参照)に比べて、処理モジュール31の起動処理が不要となるので短時間で済む。処理モジュール31は、アクティブモードに切り替わると略同時に磁気検出部21への電力供給を開始し、磁気検出部21の電源をオンとする。
【0059】
処理モジュール31は、トリガ信号によりアクティブモードに切り替わると複数の処理を実行する。例えば処理モジュール31は、時間t1の間にクロック信号を取得する処理を実行し、時間t2の間に磁気検出部21等と通信を行うためのポートを確認する処理を実行する。磁気検出部21は、時間t1と時間t2を合わせた時間と略同じ時間tsの間に、A相信号及びB相信号の出力を安定化させる。処理モジュール31は、磁気検出部21において信号が安定化した後の時間t3の間に、磁気検出部21からA相信号及びB相信号を取得する処理を実行する。処理モジュール31は、時間t3の経過後、すなわち磁気検出部21からのA相信号及びB相信号の取得を完了した後に、磁気検出部21への電力供給を停止し、磁気検出部21の電源をオフとする。
【0060】
処理モジュール31は、磁気検出部21への電力供給を停止した後に、所定の演算処理を実行する。例えば処理モジュール31は、時間t4の間に、記録部47に記録されたディスク19の多回転量(多回転信号Rn)を読み込む処理を実行する。処理モジュール31は、時間t5の間に、磁気検出部21から取得したA相信号及びB相信号に基づいてディスク19の多回転量をカウントするカウント演算処理を実行する。処理モジュール31は、時間t6の間に、カウント演算処理の結果に基づいて記録部47から読み込んだ多回転量を更新する処理を実行する。これらの処理は、所定の演算処理の一例である。所定の演算処理を終了すると、処理モジュール31はアクティブモードからスリープモードに切り替わる。
【0061】
図7に示す例では、処理モジュール31は、時間t3と時間t4の間、すなわち磁気検出部21からのA相信号及びB相信号の取得後で、且つ、所定の演算処理の開始前に、磁気検出部21への電力供給を停止したが、電力供給を停止するタイミングは上記に限定されるものではない。例えば処理モジュール31は、時間t4と時間t5の間、時間t5と時間t6の間、時間t4,t5,t6のいずれかの最中等、所定の演算処理の実行中に磁気検出部21への電力供給を停止してもよい。例えば処理モジュール31は、アクティブモードからスリープモードに切り替わるのと略同時に磁気検出部21への電力供給を停止してもよい。
【0062】
<7.処理モジュールによる処理手順>
図8図10を参照しつつ、処理モジュール31により実行される処理手順の一例について説明する。図8は、エンコーダ7に外部電力が供給される場合に処理モジュール31により実行される処理手順の一例を表すフローチャートである。図9は、角度位置信号Ap、A相多回転信号Ma、及びB相多回転信号Mbの波形の一例を表す説明図である。図10は、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合に処理モジュール31により実行される処理手順の一例を表すフローチャートである。
【0063】
処理モジュール31は、エンコーダ7に外部電力が供給される場合に図8に示すフローチャートを実行する。図8に示すように、ステップS5では、処理モジュール31は、位置データ生成部45により、角度位置信号生成部37から出力された角度位置信号Apと、カウンタ43から出力された多回転信号Rnとに基づいて、位置データを生成する。図9に示すように、ディスク19が正転方向に回転する場合には、角度位置信号Apは回転角度が0度から360度に近づくにつれて最小値Minから比例して増加し、360度(0度)に到達すると最大値Maxから最小値Minにリセットされる。ディスク19が逆転方向に回転する場合には、角度位置信号Apは回転角度が360度から0度に近づくにつれて最大値Maxから比例して減少し、0度(360度)に到達すると最小値Minから最大値Maxにリセットされる。多回転信号Rnは、前述のようにA相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbに基づいてカウントされるディスク19の多回転量を表す信号である。
【0064】
ステップS10では、処理モジュール31は、充電モジュール51により全固体電池29の充電を行う。
【0065】
ステップS15では、処理モジュール31は、カウンタ43によりA相多回転信号Maのエッジが変化したか否かを判定する。図9に示すように、例えばA相多回転信号Maは、ディスク19の回転角度が0度から180度の範囲でハイ(Hi)となり、180度から360度(0度)の範囲でロウ(Lo)となる。例えばB相多回転信号Mbは、ディスク19の回転角度が90度から270度の範囲でハイ(Hi)となり、270度から90度の範囲でロウ(Lo)となる。A相多回転信号Maのエッジが変化する角度位置は、0度(360度)又は180度のいずれかとなる。A相多回転信号Maのエッジが変化していない場合には(ステップS15:NO)、ステップS5に戻る。A相多回転信号Maのエッジが変化した場合には(ステップS15:YES)、ステップS20に移る。
【0066】
ステップS20では、処理モジュール31は、カウンタ43によりB相多回転信号Mbがロウ(Lo)であるか否かを判定する。図9に示すように、A相多回転信号Maのエッジが変化し、且つ、B相多回転信号Mbがロウ(Lo)である角度位置は、0度(360度)となる。A相多回転信号Maのエッジが変化し、且つ、B相多回転信号Mbがハイ(Hi)である角度位置は、180度となる。B相多回転信号Mbがハイ(Hi)である場合には(ステップS20:NO)、後述のステップS40に移る。B相多回転信号Mbがロウ(Lo)である場合には(ステップS20:YES)、ステップS25に移る。
【0067】
ステップS25では、処理モジュール31は、カウンタ43により記録部47に記録されたA相多回転信号Maを参照し、A相多回転信号Maがロウ(Lo)からハイ(Hi)になったか否かを判定する。図9に示すように、角度位置が0度(360度)においてA相多回転信号Maがロウ(Lo)からハイ(Hi)になった場合には、ディスク19が正転方向に回転して1回転したことになる。A相多回転信号Maがロウ(Lo)からハイ(Hi)になった場合には(ステップS25:YES)、ステップS30に移る。
【0068】
ステップS30では、処理モジュール31は、カウンタ43により記録部47に記録された多回転量を読み出してカウントアップする。
【0069】
上記ステップS25において、A相多回転信号Maがロウ(Lo)からハイ(Hi)になっていない場合、つまり、A相多回転信号Maがハイ(Hi)からロウ(Lo)になった場合には(ステップS25:NO)、ステップS35に移る。図9に示すように、角度位置が0度(360度)においてA相多回転信号Maがハイ(Hi)からロウ(Lo)になった場合には、ディスク19が逆転方向に回転して1回転したことになる。
【0070】
ステップS35では、処理モジュール31は、カウンタ43により記録部47に記録された多回転量を読み出してカウントダウンする。
【0071】
ステップS40では、処理モジュール31は、カウンタ43により、上記ステップS30又はステップS35でカウントアップ又はカウントダウンした多回転量(多回転信号Rn)を位置データ生成部45に出力する。カウンタ43は、カウントを行った際のA相多回転信号Maがロウ(Lo)又はハイ(Hi)のいずれであるかを記録部47に記録する。カウンタ43は多回転信号Rnを記録部47に記録してもよい。
【0072】
ステップS45では、処理モジュール31は、エンコーダ7に外部電力が供給されなくなったか否かを判定する。エンコーダ7に外部電力が供給されている場合には(ステップS45:NO)、先のステップS5に戻り、同様の手順を繰り返す。例えば停電等の発生によりエンコーダ7に外部電力が供給されなくなった場合には(ステップS45:YES)、本フローチャートを終了する。
【0073】
上述した処理手順は一例であって、上記手順の少なくとも一部を削除又は変更してもよいし、上記以外の手順を追加してもよい。上記手順の少なくとも一部の順番を変更してもよいし、複数の手順が単一の手順にまとめられてもよい。例えば、ステップS5とステップS10は上記の順番である必要はなく、反対の順番でもよいし、同時並行して行われてもよい。
【0074】
処理モジュール31は、例えば停電等によりエンコーダ7に外部電力が供給されなくなった場合に図10に示すフローチャートを実行する。図10に示すように、ステップS101では、全固体電池29からの電力供給に切り替わる。ステップS105では、処理モジュール31は、外部電力によるアクティブモードからスリープモードに切り替わる。
【0075】
ステップS110では、処理モジュール31は、磁気検出部21への電力供給を停止する。
【0076】
ステップS115では、処理モジュール31は、ディスク19の回転によりトリガ信号発生器25が発生したトリガ信号を整流器55を介して受信したか否かを判定する。トリガ信号を受信していない場合には(ステップS115:NO)、後述のステップS150に移る。トリガ信号を受信した場合には(ステップS115:YES)、ステップS120に移る。
【0077】
ステップS120では、処理モジュール31は、スリープモードからアクティブモードに切り替わる。
【0078】
ステップS125では、処理モジュール31は、磁気検出部21への電力供給を開始する。
【0079】
ステップS130では、処理モジュール31は、A相多回転信号生成部39及びB相多回転信号生成部41により、磁気検出部21からA相信号及びB相信号を取得する。
【0080】
ステップS135では、処理モジュール31は、磁気検出部21への電力供給を停止する。
【0081】
ステップS140では、処理モジュール31は、A相多回転信号生成部39及びB相多回転信号生成部41により、上記ステップS130で磁気検出部21から取得したA相信号及びB相信号に基づいてA相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbを生成する。処理モジュール31は、カウンタ43によりA相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbに基づいてカウント演算処理を実行し、演算結果である多回転信号Rnを記録部47に記録する。
【0082】
ステップS145では、処理モジュール31は、アクティブモードからスリープモードに切り替わる。
【0083】
ステップS150では、処理モジュール31は、エンコーダ7に外部電力が供給されるようになったか否かを判定する。エンコーダ7に外部電力が供給されていない場合には(ステップS150:NO)、先のステップS115に戻り、同様の手順を繰り返す。例えば停電の復帰等によりエンコーダ7に外部電力が供給されるようになった場合には(ステップS150:YES)、本フローチャートを終了する。
【0084】
上述した処理手順は一例であって、上記手順の少なくとも一部を削除又は変更してもよいし、上記以外の手順を追加してもよい。上記手順の少なくとも一部の順番を変更してもよいし、複数の手順が単一の手順にまとめられてもよい。
【0085】
<8.実施形態の効果>
以上説明したように、実施形態のエンコーダ7は、回転するディスク19の1回転以内の角度位置を表す角度位置情報を検出する光学モジュール17と、ディスク19の回転数を表す多回転情報を検出する磁気検出部21と、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合に、磁気検出部21に電力を供給する電池29と、光学モジュール17及び磁気検出部21の少なくとも一方が接続された基板13に対して、電池29の接続端子34L,34Rを、該接続端子34L,34Rに接触したはんだを介して接続する接続部36L,36Rと、を有する。
【0086】
電池29を基板13に対して電気的な接続を行うはんだにより、電気的な接続が行われるだけでなく、電池29が基板13に堅固に固定される。つまり、接続端子34L,34Rのはんだによる接続は、電気的接続に加えて、電池29の固定も兼ねる。これにより、例えばエンコーダ7に衝撃や振動が生じた場合でも、基板13の配線(ランド35L,35R)との接続不良や、電池29の基板13からの脱落を抑制でき、耐久性を向上できる。
【0087】
実施形態において、接続部36L,36Rは、はんだにより、電池29の接続端子34L,34Rを基板13に対して直接接続してもよい。この場合、電池29の接続端子34L,34Rのみを介して電気的接続と固定が行われるので、電池29を収容するケースやリード線等が不要となり、エンコーダ7を小型化できると共に、部品点数を低減できる。したがって、製造の容易性や低コスト化において更に有利である。
【0088】
実施形態において、電池29を、充電を行うことにより繰り返し使用することが可能な二次電池としてもよい。
【0089】
電池29として仮に一次電池を搭載する場合、電池容量を使い切ると電池29からの電力供給が不可能となる。そして、電池29を基板13にはんだで固定する場合には電池29の交換もできないため、エンコーダ7の交換や廃棄が必要となる可能性がある。実施形態では二次電池を搭載することで、充電を行って繰り返し使用することが可能となる。したがって、電池29を基板13にはんだで固定する場合であっても、エンコーダ7を交換や廃棄することなく長く使用することが可能となる。
【0090】
実施形態において、電池29を、固体電解質を有する全固体電池としてもよい。
【0091】
仮に、二次電池としてリチウムイオン電池を搭載した場合、高温環境下での動作が不安定となる可能性があることに加えて、発熱や発火の恐れもあるため、サーミスタを併用した保護回路を設けることが好ましい。これに対し、全固体電池は、高温条件下での使用が可能となると共に、固体電解質のため発熱量が少なく発火の危険性が少ない、自己放電が少なく長寿命且つ性能劣化が遅い、等の性質を有する。このため、全固体電池を搭載することで、高温環境下でも安全に使用できるとともに、保護回路が不要で、且つ、消費電力の低減及び長寿命化が可能なエンコーダ7を実現できる。
【0092】
実施形態において、エンコーダ7は、外部電力が供給される場合に全固体電池29を充電し、外部電力が供給されない場合に全固体電池29への充電を停止する充電モジュール51を有してもよい。
【0093】
この場合、外部電力が供給される場合に全固体電池29を充電しておくことができるので、例えば停電等により外部電力が供給されない場合にはいつでも全固体電池29からの電力供給が可能なように備えておくことができる。
【0094】
実施形態において、エンコーダ7は、充電モジュール51と全固体電池29との間に電気的に接続され、電流の向きを充電モジュール51から全固体電池29への向きに規制する整流素子57を有してもよい。この場合、全固体電池29が処理モジュール31を介して磁気検出部21に電力を供給する際に、充電モジュール51への電流の逆流を防止できる。
【0095】
実施形態において、エンコーダ7は、外部電力が供給される場合に、角度位置情報及び多回転情報の少なくとも一方に基づいてディスク19の位置データを生成する処理モジュール31を有してもよく、その場合、充電モジュール51と処理モジュール31は、外部電力の電力供給ラインEL1に対して電気的に並列に接続されてもよい。
【0096】
この場合、例えば停電からの復帰等により外部電力が供給された際に、電力供給ラインEL1に充電モジュール51と処理モジュール31とが直列に接続されている場合に比べて、充電モジュール51と処理モジュール31の双方に対して速やかに電力を供給して直ちに起動又は処理を実行させることができる。
【0097】
実施形態において、エンコーダ7は、磁気検出部21に対して、全固体電池29からの電力の供給又は停止の切り替えを制御する処理モジュール31を有してもよい。
【0098】
この場合、単に外部電力の供給の有無等に応じて全固体電池29から磁気検出部21へ電力を供給又は停止するのではなく、処理モジュール31により全固体電池29から磁気検出部21への電力供給を制御することができる。これにより、例えば処理モジュール31による所定の演算処理の結果に基づいて電力供給を制御することが可能となり、消費電力の抑制等が可能となる。
【0099】
実施形態において、全固体電池29は、エンコーダ7への外部電力の供給が停止した場合に、処理モジュール31を介して磁気検出部21に対して電力を供給してもよい。
【0100】
この場合、外部電力の供給が停止した場合に、全固体電池29から磁気検出部21へ直接に電力を供給するのではなく、全固体電池29から処理モジュール31を介して磁気検出部21への電力を供給することができる。これにより、例えば多回転情報の取得の間だけ磁気検出部21への電力を供給する等、処理モジュール31により電力供給を制御することが可能となるので、消費電力のさらなる抑制等が可能となる。
【0101】
実施形態において、処理モジュール31は、エンコーダ7への外部電力の供給が停止した場合に、全固体電池29からの電力によりスリープしてもよい。
【0102】
この場合、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合でも、処理モジュール31は起動状態が維持されるため、必要に応じて直ちにアクティブ化し所定の処理を実行することが可能となる。これにより、処理モジュール31の起動に必要な時間を省略でき、処理を開始するまでの時間を短縮できるとともに、起動に必要な消費電力を低減できる。また、外部電力が復帰した際に所定の処理(例えば全固体電池29に関する異常検出処理等)を実行する場合には、それらの処理を迅速に実行できる。
【0103】
実施形態において、エンコーダ7は、ディスク19の回転によってトリガ信号を発生するトリガ信号発生器25を有してもよく、その場合、処理モジュール31は、トリガ信号を受けてスリープから復帰し、磁気検出部21への電力の供給を開始してもよい。
【0104】
この場合、外部電力が供給されない場合には全固体電池29から磁気検出部21への電力供給を停止しておき、ディスク19に回転が生じた場合にのみ磁気検出部21に電力を供給して多回転情報を検出することができる。これにより、全固体電池29の消費電力を抑制でき、電池寿命を延ばすことができる。
【0105】
実施形態において、処理モジュール31は、磁気検出部21により検出された多回転情報に基づいて、所定の演算処理を実行してもよい。
【0106】
この場合、処理モジュール31は磁気検出部21からの多回転情報を単に蓄積しておくだけでなく、多回転情報に基づく演算処理を行うことができる。したがって、処理モジュール31の記憶領域を節約できると共に、多回転量に関する演算(例えばカウント演算処理等)を多回転情報の検出時点で実行できるため、信頼性を向上することができる。特に、電池29が全固体電池である場合は、全固体電池の健全性チェックなどの処理を実行させることも可能であるため、エンコーダ全体としての信頼性を向上することができる。加えて、スリープされている状態から起動する場合は、これらの処理を迅速に実行でき、全固体電池29の消費電力を抑制でき、電池寿命を延ばすことができる。
【0107】
実施形態において、処理モジュール31は、磁気検出部21からの多回転情報の取得後で、且つ、所定の演算処理の開始前に、全固体電池29から磁気検出部21への電力の供給を停止してもよい。
【0108】
この場合、外部電力の供給停止時に、ディスク19に回転が生じた場合にのみ磁気検出部21に電力を供給して多回転情報を取得し、その後、取得した多回転情報に基づいて必要な演算処理を開始する前に磁気検出部21への電力供給を停止することができる。このように、処理モジュール31が演算処理と電力供給の停止とを別々に制御することにより、仮に演算処理に時間を要する場合でも、それより先に電力供給を停止することが可能となるので、全固体電池29の消費電力のさらなる抑制が可能となる。
【0109】
実施形態において、エンコーダ7は、データの読み書きが可能で、且つ、非通電時にも記録内容を保持可能な不揮発性メモリである記録部47を有してもよく、その場合、処理モジュール31は、所定の演算処理の結果を記録部47に記録してもよい。
【0110】
この場合、外部電力の供給停止時に、磁気検出部21により検出した多回転情報に基づく所定の演算処理の結果を、磁気検出部21への電力供給を停止した後も保持できる。また、処理モジュール31が記録部47を内部に有する場合には、高速なデータ書き込みが可能となるので、電池の消費電力のさらなる抑制が可能となる。
【0111】
実施形態において、処理モジュール31は、基板13に搭載され、外部電力が供給される場合の、角度位置情報及び多回転情報の少なくとも一方に基づいた、ディスク19の位置データの生成と、外部電力が供給されない場合の、全固体電池29から供給される電力を用いて磁気検出部21により検出される多回転情報に基づいた、ディスク19の多回転量を表す多回転信号Rnの生成と、を実行してもよい。
【0112】
この場合、処理モジュール31を基板13に実装された共通の実装部品として構成することができる。これにより、外部電力のオン/オフ時の制御の切り替えを迅速に行うことが可能となる。例えば瞬時停電が生じた場合等においても、速やかに制御の切り替えを実行して外部電力オフ時の処理から外部電力オン時の処理に復帰することができる。また、外部電力が復帰した際に所定の演算処理を実行する場合には、それらの処理についても迅速に実行できる。
【0113】
実施形態のエンコーダ7は、回転するディスク19の1回転以内の角度位置を表す角度位置情報を検出する光学モジュール17と、ディスク19の回転数を表す多回転情報を検出する磁気検出部21と、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合に、磁気検出部21に電力を供給する、固体電解質を有する全固体電池29と、を有する。
【0114】
エンコーダ7が全固体電池29を備えることにより、外部電力の供給停止時に電池から供給される電力によって多回転情報を保持するエンコーダにおいて、高温環境下でも安全に使用できるとともに、保護回路が不要で、且つ、消費電力の低減及び長寿命化が可能なエンコーダを実現できる。
【0115】
<9.変形例>
なお、開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0116】
(9-1.外部電力の復帰時に全固体電池の異常検出を行う場合)
エンコーダ7に外部電力が供給されない状態から供給される状態に復帰した場合に、全固体電池29に関する異常を検出する処理を実行してもよい。図11を参照しつつ、本変形例において処理モジュール31により実行される処理手順の一例について説明する。
【0117】
図11において、ステップS105~ステップS140は前述の図10と同様であるので説明を省略する。
【0118】
ステップS143では、処理モジュール31は、全固体電池29に関する異常を検出する処理を実行する。全固体電池29の異常の検出手法は特に限定されるものではない。例えば、全固体電池29の電圧を検出し、電圧値が所定の範囲内であれば正常と判定し、電圧値が所定の範囲内でなければ異常と判定してもよい。処理モジュール31は、異常検出処理の結果を記録部47に記録する。処理モジュール31は、ステップS143の処理を、例えば前述の図7に示すタイムチャートの時間t5の間にカウント演算処理と共に実行してもよい。
【0119】
ステップS145及びステップS150は前述の図10と同様である。但し、ステップS150においてエンコーダ7に外部電力が供給されるようになった場合には(ステップS150:YES)、ステップS155に移る。
【0120】
ステップS155では、処理モジュール31は、全固体電池29に関する異常を検出する処理を実行する。例えば上記ステップS143と同様に、全固体電池29の電圧を検出し、電圧値が所定の範囲内であれば正常と判定し、電圧値が所定の範囲内でなければ異常と判定してもよい。例えば処理モジュール31は、外部電力の供給停止時に上記ステップS143において記録部47に記録された情報を参照し、異常を検出したことを表す情報(例えばアラームコード等)がない場合に正常と判定し、異常を検出したことを表す情報がある場合に異常と判定してもよい。処理モジュール31は、異常検出処理の結果を例えば制御装置5等に出力してもよい。その後、本フローチャートを終了する。
【0121】
上記ステップS155において、全固体電池29の電圧値で正常又は異常を判定する場合には、上記ステップS143の処理を省略してもよい。上記ステップS143の処理を実行する場合には、上記ステップS155において記録部47に記録された情報に基づく判定のみを行い、全固体電池29の電圧値を判定する処理を省略してもよい。
【0122】
以上説明した変形例によれば、外部電力が供給停止となった後復帰した際に、全固体電池29に関する異常をチェックでき、電池の健全性を診断及び確認することができる。
【0123】
(9-2.磁気検出部への電力供給をスイッチで切り替える場合)
実施形態では、処理モジュール31自身が磁気検出部21に対して電力を供給又は停止する構成としたが、磁気検出部21への電力供給をスイッチで切り替える構成としてもよい。図12を参照しつつ、本変形例における基板13の回路構成の一例について説明する。図12において、前述の図6と同様の構成には同符号を付し説明を省略する。
【0124】
図12に示すように、エンコーダ7は、基板13に実装された回路構成として、前述の図6に示す構成に加えて、スイッチ63を有する。スイッチ63は、ロードスイッチやトランジスタなど、回路を切り替える機能を持つものであれば良い。スイッチ63は、レギュレータ53と磁気検出部21との間の電力供給ラインEL5に電気的に接続されている。スイッチ63の切り替えは処理モジュール31により制御される。レギュレータ53は、DC/DCコンバータ49又は全固体電池29から出力される電力を処理モジュール31及びスイッチ63に出力する。
【0125】
処理モジュール31は、エンコーダ7に外部電力が供給される場合には、スイッチ63をオンにする。これにより、レギュレータ53から出力される電力が磁気検出部21に供給される。処理モジュール31は、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合にはスリープモードとなり、スイッチ63をオフにする。これにより、全固体電池29から磁気検出部21への電力の供給は停止される。
【0126】
処理モジュール31は、スリープモードにおいてトリガ信号発生器25から整流器55を介してトリガ信号を受信した場合にはアクティブモードとなり、スイッチ63をオンにする。これにより、全固体電池29から磁気検出部21へ電力が供給される。処理モジュール31は、磁気検出部21からのA相信号及びB相信号の取得後に、スイッチ63をオフにする。これにより、全固体電池29から磁気検出部21への電力の供給は停止される。
【0127】
処理モジュール31が実行するカウント演算処理等の各処理の内容は前述の実施形態と同様である。本変形例によれば、磁気検出部21への電圧供給機能を有しない処理モジュールを適用することが可能となり、処理モジュールの汎用性を向上できる。
【0128】
(9-3.外部電力の供給停止時に処理モジュールをオフにする場合)
実施形態では、外部電力の供給停止時に処理モジュール31をスリープさせるようにしたが、処理モジュール31の電源をオフにしてもよい。図13を参照しつつ、本変形例における基板13の回路構成の一例について説明する。図13において、前述の図6と同様の構成には同符号を付し説明を省略する。
【0129】
図13に示すように、エンコーダ7は、基板13に実装された回路構成として、前述の図6に示す構成に加えて、スイッチ65を有する。スイッチ65は、ロードスイッチやトランジスタなど、回路を切り替える機能を持つものであれば良い。スイッチ65は、レギュレータ53と処理モジュール31との間の電力供給ラインEL6に電気的に接続されている。スイッチ65の切り替えはトリガ信号発生器25から整流器55を介して入力されるトリガ信号により行われる。レギュレータ53は、DC/DCコンバータ49又は全固体電池29から出力される電力をスイッチ65に出力する。
【0130】
スイッチ65は、エンコーダ7に外部電力が供給される場合にはオンとなる。これにより、レギュレータ53から出力される電力が処理モジュール31に供給される。スイッチ65は、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合にはオフとなる。これにより、全固体電池29から処理モジュール31への電力の供給は停止され、処理モジュール31は停止した状態となる。
【0131】
スイッチ65は、外部電力の供給停止時においてトリガ信号発生器25から整流器55を介してトリガ信号を受信した場合にはオンとなる。これにより、全固体電池29から処理モジュール31へ電力が供給され、処理モジュール31が起動する。スイッチ65は、トリガ信号の受信後所定の時間が経過するとオフとなる。これにより、全固体電池29から処理モジュール31への電力の供給は停止される。所定の時間は、例えばトリガ信号の発生から処理モジュール31が起動するまでに要する時間Tdと、処理モジュール31が各処理を実行する時間t1~t6との合計時間以上となるように設定される。本変形例における時間Tdは、前述の実施形態における時間Td(図7参照)よりも処理モジュール31を起動する処理が加わる分だけ長い時間となる。
【0132】
処理モジュール31が実行するカウント演算処理等の各処理の内容は前述の実施形態と同様である。本変形例によれば、スリープモードの機能を有しない処理モジュールを適用することが可能となり、処理モジュールの汎用性を向上できる。
【0133】
(9-4.その他)
実施形態では、処理モジュール31が記録部47を内部に有する場合について説明したが、記録部47を有しない処理モジュールとすることも可能である。図14に示すように、記録部47を処理モジュール31の外部に設置してもよい。例えば記録部47は基板13上に実装されてもよい。この場合、不揮発性メモリを有しない処理モジュールを適用することが可能となり、処理モジュールの汎用性を向上できる。
【0134】
実施形態では、光学モジュール17が反射型の光学モジュールである場合について説明したが、光学モジュール17を透過型の光学モジュールとしてもよい。この場合、例えば光源33と受光アレイPA,PIとをディスク19を挟んで反対側に配置し、ディスク19においてスリット列SA,SIの各スリットを透過スリット(例えば孔)として形成してもよい。
【0135】
実施形態では、ディスク19に1種類のインクリメンタルパターンを設ける場合について説明したが、ディスク19にピッチの異なる複数種類のインクリメンタルパターンを設けてもよい。この場合、分解能の異なる複数のインクリメンタル信号に基づいてさらに高分解能な角度位置信号を生成することが可能となる。
【0136】
実施形態が解決しようとする課題や実施形態の効果は、前記した内容に限定されるものではない。すなわち、実施形態によって、上述されていない課題を解決したり、上述されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0137】
<10.処理モジュールのハードウェア構成例>
図15を参照しつつ、処理モジュール31のハードウェア構成例について説明する。図15では、磁気検出部21に電力を供給する機能に係る構成については図示を省略している。
【0138】
図15に示すように、処理モジュール31は、例えば、CPU901と、ROM903と、RAM905と、ASIC又はFPGA等の特定の用途向けに構築された専用集積回路907と、記録装置917と、接続ポート921とを有する。これらの構成は、バス909や入出力インターフェース911を介し相互に信号を伝達可能に接続されている。
【0139】
プログラムは、例えば、ROM903やRAM905、前述の記録部47を含む記録装置917等に記録しておくことができる。
【0140】
接続ポート921は、外部接続機器927との信号の送受信、電力の入出力に使用される。例えば、整流器55からのトリガ信号の受信、レギュレータ53からの電力の入力、磁気検出部21への電力の出力は、接続ポート921を介して行われてもよい。
【0141】
CPU901がプログラムに従い各種の処理を実行するか、又は専用集積回路907等により、上記の角度位置信号生成部37、A相多回転信号生成部39、B相多回転信号生成部41、カウンタ43、位置データ生成部45等による処理が実現される。この際、CPU901は、例えば、上記記録装置917からプログラムを直接読み出して実行してもよいし、RAM905に一旦ロードした上で実行してもよい。
【0142】
そして、CPU901は、上記の処理を実行した結果を、例えば接続ポート921を介して外部接続機器927に送信してもよく、上記記録装置917等に記録させてもよい。
【0143】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0144】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさ、形状、位置等が「同一」「同じ」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「同じ」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に同じ」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0145】
但し、例えばしきい値(図8図10のフローチャート参照)や基準値等、所定の判定基準となる値あるいは区切りとなる値の記載がある場合は、それらに対しての「同一」「等しい」「異なる」等は、上記とは異なり、厳密な意味である。
【0146】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0147】
1 サーボシステム
3 サーボモータ
5 制御装置
7 エンコーダ
9 モータ
13 基板
17 光学モジュール(角度位置情報検出部)
19 ディスク
21 磁気検出部(多回転情報検出部)
25 トリガ信号発生器(電気信号発生部)
29 全固体電池(電池、二次電池)
31 処理モジュール
34L,34R 接続端子
36L,36R 接続部
47 記録部(不揮発性メモリ)
51 充電モジュール
57 整流素子
EL1 外部電力の電力供給ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15