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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161673
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】再生樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20221014BHJP
   C08J 11/06 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
C08J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066671
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】村上 真奈美
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA08
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA15
4F401AC11
4F401AD01
4F401AD07
4F401CA02
4F401CA03
4F401CA48
4F401CA58
4F401CB01
4F401EA46
4F401EA79
(57)【要約】
【課題】再生用樹脂と共存する揮発性成分を低減する再生樹脂の製造方法;包装容器の製造方法;並びに揮発性成分の除去方法を提供すること。
【解決手段】揮発性成分及び再生用樹脂を含む再生用原料を、界面活性剤を含む洗浄液で洗浄する洗浄工程を有する、再生樹脂の製造方法;前記製造方法により製造した再生樹脂を原料とする、包装容器の製造方法;並びに揮発性成分及び再生用樹脂を含む再生用原料を、界面活性剤を含む洗浄液で洗浄する洗浄工程を有する、揮発性成分の除去方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性成分及び再生用樹脂を含む再生用原料を、界面活性剤を含む洗浄液で洗浄する洗浄工程を有する、再生樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記再生用原料を水で洗浄する前洗浄工程を更に有し、得られた再生用原料を用いて前記洗浄工程を行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記前洗浄工程における水の使用量が、再生用原料1g当たり5mL以上300mL以下である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記再生用原料が界面活性剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記再生用樹脂がポリオレフィンを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ポリオレフィンがポリエチレンを含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記再生用原料が、揮発性成分を含有する組成物に使用された包装容器を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記包装容器が単層フィルム又は積層フィルムを有する、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記洗浄工程で得られた洗浄後の再生用原料を溶融混練する溶融混練工程を更に有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記再生用原料が再生樹脂を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の製造方法により製造した再生樹脂を原料とする、包装容器の製造方法。
【請求項12】
揮発性成分及び再生用樹脂を含む再生用原料を、界面活性剤を含む洗浄液で洗浄する洗浄工程を有する、揮発性成分の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シャンプーや飲料等の液体成分や食品等の固体成分の包装容器の材料として、多層フィルムが用いられてきた(特許文献1)。このようなフィルムの材質としてはポリオレフィンを含むものが多く、リサイクルの対象となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-123642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、衣料用洗剤等に使用された容器の樹脂を再生してリサイクルすると、再生用樹脂と共存する揮発性成分により、再生樹脂を熱処理する際などに悪臭が発生する場合があり、作業環境に悪影響を及ぼすことを見出した。
【0005】
本発明は、再生用樹脂と共存する揮発性成分を低減する、再生樹脂の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記〔1〕~〔3〕に関する。
〔1〕 揮発性成分及び再生用樹脂を含む再生用原料を、界面活性剤を含む洗浄液で洗浄する洗浄工程を有する、再生樹脂の製造方法。
〔2〕 前記〔1〕に記載の製造方法により製造した再生樹脂を原料とする、包装容器の製造方法。
〔3〕 揮発性成分及び再生用樹脂を含む再生用原料を、界面活性剤を含む洗浄液で洗浄する洗浄工程を有する、揮発性成分の除去方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、再生用樹脂と共存する揮発性成分を低減する、再生樹脂の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らが上記課題について鋭意検討したところ、衣料用洗剤等に使用された容器等の再生用原料をリサイクルする際、例えば、再生用樹脂を熱処理する際に、再生用樹脂と共存する揮発性成分により悪臭が発生する場合があり、作業環境に悪影響を及ぼすことを見出した。衣料用洗剤には揮発性成分、例えば界面活性剤が含まれていることから、かかる揮発性成分が樹脂に入り込んでしまうと推定し、リサイクル前に、樹脂から揮発性成分を除去すれば、作業環境の改善が実現できるのではないかと考えた。そこで、様々な洗浄方法を考慮した結果、意外にも、界面活性剤を含む洗浄液で再生用原料を洗浄したところ、効果的に揮発性成分を除去できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の再生樹脂の製造方法は、揮発性成分及び再生用樹脂を含む再生用原料を、界面活性剤を含む洗浄液で洗浄する洗浄工程を有する。
【0010】
本発明における再生用原料は、揮発性成分及び再生用樹脂を含む。再生用原料としては、例えば、揮発性成分を含有する組成物に使用された包装容器を含むものが挙げられる。包装容器の内容物が界面活性剤を含む場合、本発明における再生用原料は界面活性剤を含む場合がある。このような包装容器としては、例えば、単層フィルム又は積層フィルムを有するものが挙げられ、より具体的には、上記の再生用樹脂から構成される単層フィルム又は再生用樹脂を含む積層フィルムを袋状に加工して製造された容器、再生用樹脂から構成される単層フィルム又は再生用樹脂を含む積層フィルムで構成され、フィルム間に空気等の気体層を設けて自立性を持たせた容器などが挙げられる。
【0011】
再生用原料は、洗浄に使用する洗浄槽の容量により、細断して洗浄槽に投入してもよく、細断せずにそのまま洗浄槽に投入してもよい。
【0012】
本発明における揮発性成分は、後述の実施例に記載の方法で検出される成分である。揮発性成分としては、例えば、前記再生用樹脂に含まれる、可塑剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、相溶化剤、ガスバリア剤、帯電防止剤等や、包装容器の内容物に含まれる、界面活性剤や香料等が挙げられる。
【0013】
本発明における再生用樹脂原料としては、衣料用洗剤や衣料用柔軟剤等の容器が挙げられる。再生用樹脂としては、例えば、ポリオレフィンを含むものが好適に挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含むものが挙げられ、再生樹脂のリサイクル性の観点から、好ましくはポリエチレンを含む。また、同様の観点から、ポリオレフィンはポリエチレンであってもよい。ポリエチレンとしては、市販されているもの、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等、特に限定なく本発明の適用対象である。
【0014】
再生用原料中の再生用樹脂の含有量は、リサイクル性の観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、100質量%以下である。
【0015】
再生用原料は、再生樹脂の他に、リサイクルの妨げにならない範囲で、前記揮発性成分、界面活性剤、可塑剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、相溶化剤、ガスバリア剤、帯電防止剤など、再生用樹脂以外の成分を含んでいてもよい。再生用樹脂以外の成分はリサイクル性の観点から少ないことが好ましい。具体的には、再生用原料中の再生用樹脂以外の成分の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、0質量%以上である。
【0016】
本発明の洗浄液は界面活性剤を含む。
【0017】
前記界面活性剤がアルキル基を有する場合、アルキル基の炭素数が、揮発性成分の除去性の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは8以上であり、同様の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。ここで、アルキル基の炭素数とは、前記界面活性剤が一分子中に複数のアルキル基を有する場合は、最も炭素数の多いアルキル基の炭素数である。前記界面活性剤の有するアルキル基の数は、揮発性成分除去の観点から、好ましくは1以上2以下である。
【0018】
洗浄液に含まれる界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種を特に限定なく挙げることができ、揮発性成分の除去性の観点から、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0019】
前記アニオン界面活性剤としては、揮発性成分の除去性の観点から、好ましくはアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩である。これらの塩としては、入手性の観点から、好ましくはアルカリ金属塩、より好ましくはナトリウム塩である。また、アルキル基の炭素数の好ましい態様は前述の通りである。好適な態様として、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウムが挙げられる。具体的には、1-プロパンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、1-ブタンスルホン酸ナトリウム、1-ヘキサンスルホン酸ナトリウム、1-オクタンスルホン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム、1-テトラデカンスルホン酸ナトリウム、1-ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられ、好ましくは、アリルスルホン酸ナトリウム、1-ブタンスルホン酸ナトリウム、1-ヘキサンスルホン酸ナトリウム、1-オクタンスルホン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム、1-テトラデカンスルホン酸ナトリウム、1-ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられ、より好ましくは、1-オクタンスルホン酸ナトリウム、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム、1-ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0020】
揮発性成分除去の観点から、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩のオキシアルキレンのモル数は平均で、好ましくは1モル以上5モル以下、より好ましくは1モル以上3モル以下である。同様の観点から、前記ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムのオキシエチレンのモル数は平均で、好ましくは1モル以上5モル以下、より好ましくは1モル以上3モル以下である。
【0021】
前記ノニオン界面活性剤としては、揮発性成分の除去性の観点から、好ましくはアルキルグリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルである。また、アルキル基の炭素数の好ましい態様は前述の通りである。具体的には、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル(C12-14)エーテルが挙げられる。
【0022】
揮発性成分除去の観点から、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのオキシアルキレンのモル数は平均で、好ましくは3モル以上25モル以下、より好ましくは5モル以上20モル以下である。同様の観点から、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル(C12-14)エーテルのオキシエチレンおよびオキシプロピレンの合計モル数は平均で、好ましくは3モル以上25モル以下、より好ましくは5モル以上20モル以下である。
【0023】
洗浄液中の界面活性剤の含有量としては、揮発性成分の除去性の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。一方、費用対効果及び環境への影響の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0024】
洗浄液には、界面活性剤の他に、媒体としての水が含まれることが好ましい。洗浄液に含まれ得る成分(以下、成分Xともいう)としては、エタノール等の有機溶媒、防臭剤、漂白剤、殺菌剤、抗菌剤、除菌剤、分散剤、酸化剤、pH調整剤、キレート剤、アルカリ剤、粘度調整剤、安定化剤、消泡剤等が挙げられる。
【0025】
洗浄水中の水の含有量は、前記界面活性剤の含有量の残部であってよい。また、洗浄液が成分Xを含む場合、水の含有量は、界面活性剤及び成分Xの合計含有量の残部であってよい。
【0026】
本発明における洗浄工程は、前記再生用原料を、前記洗浄液で洗浄する工程である。
【0027】
洗浄工程における洗浄条件としては、例えば、洗浄処理の時間は、揮発性成分の除去性の観点から、好ましくは30分間以上、より好ましくは1時間以上であり、上限は特に限定されないが、操作性の観点から、好ましくは2時間以下である。
【0028】
洗浄工程に使用する洗浄液の温度としては、除去性の観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは45℃以上であり、費用対効果及び作業時の安全性の観点から、好ましくは95℃以下、より好ましくは75℃以下、更に好ましくは55℃以下である。
【0029】
洗浄工程における処理の際、洗浄液に機械力を付加することが好ましい。例えば、洗浄液を再生用原料と一緒に撹拌したり、振盪してもよい。また、再生用原料に洗浄液を噴射するなどして掛け流してもよく、洗浄液の流れ(水流)が循環する洗浄槽に再生用原料を浸してもよいが、操作性の観点から振盪することがより好ましい。
【0030】
前記再生用原料は、洗浄に使用する洗浄槽の容量や操作性により、切断して洗浄槽に投入してもよく、切断せずにそのまま洗浄槽に投入してもよい。
【0031】
再生用原料を切断する場合、揮発性成分の除去性の観点から、切断された再生用原料を含有する組成を検知して、その組成に応じて分別し、それぞれ、異なる洗浄工程に供するが好ましい。異なる洗浄工程は、1つの洗浄槽を用いて行ってもよいし、複数の洗浄槽を用いて並行して行ってもよい。分別せずに洗浄工程に供してもよい。
【0032】
本発明の洗浄工程は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。
【0033】
洗浄工程の後に乾燥工程を設けることができる。
【0034】
洗浄工程における洗浄対象である前記再生用原料を、予め水で洗浄することが好ましい。本発明の製造方法は、このような水による洗浄工程、即ち、前洗浄工程を更に有することが好ましい。前洗浄工程を有することにより、前記洗浄工程において揮発性成分をより効果的に除去することができる。前洗浄工程を経て得られた再生用原料は、洗浄工程に供給される。
【0035】
前洗浄工程における水の使用量としては、洗浄性の観点から、再生用原料1g当たり、好ましくは5mL以上、より好ましくは10mL以上であり、洗浄性や費用対効果、操作性の観点から、好ましくは300mL以下、より好ましくは250mL以下である。
【0036】
前洗浄工程における洗浄条件としては、例えば、洗浄処理の時間は、洗浄性の観点から、好ましくは1秒間以上、より好ましくは10秒間以上であり、上限は特に限定されないが、洗浄性や費用対効果、操作性の観点から、好ましくは10分間以下、より好ましくは5分間以下である。
【0037】
前洗浄工程に使用する水の温度としては、除去性の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上、よりさらに好ましくは30℃以上、よりさらに好ましくは40℃以上であり、費用対効果及び作業時の安全性の観点から、好ましくは75℃以下、より好ましくは60℃以下である。
【0038】
前洗浄工程の際、水以外の成分(以下、成分Yともいう)、例えば、エタノール等の有機溶媒、防臭剤、漂白剤、殺菌剤、抗菌剤、除菌剤、分散剤、酸化剤、pH調整剤、キレート剤、アルカリ剤、粘度調整剤、安定化剤、消泡剤等が含まれていてもよい。また、前洗浄液が成分Yを含む場合、水の含有量は、成分Yの合計含有量の残部であってよい。
【0039】
前洗浄工程における処理の際、前洗浄液を撹拌してもよく、再生用原料を前洗浄液中に静置してもよい。また、再生用原料に前洗浄液を噴射するなどして掛け流してもよく、前洗浄液の流れ(水流)が循環する洗浄槽に再生用原料を浸してもよい。
前記再生用原料が包装容器である場合、前洗浄工程における処理の具体的な態様としては、例えば、前洗浄液を該包装容器に入れて1回又は複数回すすぐ態様、包装容器を裁断又は細断した後、前洗浄液を掛け流す態様、及び包装容器を裁断又は細断した後、前洗浄液中に静置する態様が挙げられる。
【0040】
前記再生用原料は、前洗浄工程に使用する洗浄槽の容量や操作性により、切断して洗浄槽に投入してもよく、切断せずにそのまま洗浄槽に投入してもよい。
【0041】
再生用原料を切断して前洗浄工程に供する場合、揮発性成分の除去性の観点から、切断された再生用原料を含有する組成を検知して、その組成に応じて分別し、それぞれ、異なる前洗浄工程に供するが好ましい。異なる洗浄工程は、1つの洗浄槽を用いて行ってもよいし、複数の洗浄槽を用いて並行して行ってもよい。分別せずに前洗浄工程に供してもよい。
【0042】
本発明における前洗浄工程は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。
【0043】
前洗浄工程の後に乾燥工程を設けることができる。
【0044】
本発明は、樹脂のリサイクル性の観点から、好ましくは溶融混練工程を更に有する。溶融混練工程では、上記洗浄工程で得られた洗浄後の再生用原料を対象とする。
洗浄後の再生用原料は、必要に応じて細断された上で、溶融混練することで、樹脂ペレット等の再生樹脂を製造することができる。
【0045】
本発明の溶融混練工程は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。溶融混練工程の実施の際の運転条件や使用機器等は、本発明分野で公知のものを採用することができる。
【0046】
本発明の方法で製造した再生樹脂は、リサイクルの観点から、包装容器の原料として好適である。包装容器としては、単層フィルム又は再生用樹脂を含む積層フィルムを袋状に加工して製造された容器、再生用樹脂から構成される単層フィルム又は再生用樹脂を含む積層フィルムで構成され、フィルム間に空気等の気体層を設けて自立性を持たせた容器などが挙げられる。
【0047】
本発明の方法で製造した再生樹脂から製造した包装容器は、さらに、再生用原料として利用することが挙げられる。すなわち、前記再生用原料は、リサイクルの観点から、好ましくは再生樹脂を含み、より好ましくは本発明で製造した再生樹脂を含む。
【0048】
上述の洗浄工程を採用することによって、前記再生用原料から揮発性成分の除去方法を提供することができる。かかる揮発性成分の除去方法においては、上述の前洗浄工程を更に有していてもよい。
【実施例0049】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0050】
実施例1
〔前洗浄工程〕
界面活性剤を含む衣料用洗剤などが入った、再生用原料としての積層フィルム容器(収容物接触面がLLDPEである)を、洗浄粉砕機(PFS-40型;日本シーム株式会社製)へと、投入スピード100kg/hrで投入し、1.4m/hrの循環水量にて、水温15~20℃にて処理を行った(即ち、再生用原料1g当たり14mLの水の使用量に該当する。)。その後さらに洗浄脱水機(SW-408型;日本シーム株式会社製)にて脱水処理を行った。
【0051】
〔洗浄工程〕
予めメディアバイアル(T-150;株式会社マルエム)内で、1-オクタンスルホン酸ナトリウムの0.5質量%濃度の水溶液(100mL)をイオン交換水にて調製して、洗浄液とした。
【0052】
その後、前洗浄工程後に脱水・乾燥を行ったフィルムを上記洗浄液が入ったメディアバイアル(T-150;株式会社マルエム)に7g入れ、蓋を閉めた後に、予め50℃に温めた振とう機(UNI THERMO SHAKER NTS-1300;EYELA 東京理化器械株式会社製)に置き、50℃、180rpm、1時間振とうした。1時間振とう後、フィルムをメディアバイアルから取り出し、1000mLのイオン交換水で洗い流した後、キムタオル(日本製紙クレシア株式会社製)で表面を軽くふき取った。ふき取った後のフィルムを0.7g取り、酢酸エチル10mLで室温(25℃)にて1時間抽出した。抽出後、抽出液をGC/FID分析し、揮発性成分のフィルムへの残留量を確認した。
【0053】
GC/FID分析の条件は以下のとおりである。
GC分析条件
Agilent社:7890B
カラム:DB-1HT(30m x 0.25mm x 0.25μm アジレント・テクノロジー株式会社製)
キャリアガス(N2):3.27mL/min
GCオーブン昇温条件:80℃→2℃/min→300℃(Hold 10min)、Total:120min
注入口温度:250℃
検出器:FID
【0054】
実施例2~11
実施例1における前洗浄工程で得られたフィルムに対して、表1及び表2に示す界面活性剤の水溶液を洗浄液として、実施例1と同じ洗浄工程の方法で同様の方法で揮発性成分のフィルムへの残留量を確認した。
【0055】
使用した界面活性剤は次のとおり。
1-ドデカンスルホン酸ナトリウム
1-ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム
スルホコハク酸ジオクチルナトリウム
ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(商品名:エマール270J、花王株式会社製)
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
2-エチルヘキシルグリセリルエーテル(なお、2-エチルヘキシルグリセリルエーテルは、例えば、特開2008-156289号公報の段落[0002]及び[0003]に記載の方法により製造することができる。)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル(C12-14)エーテル(商品名:エマルゲンLS-114、花王株式会社製)
【0056】
比較例1
界面活性剤水溶液の代わりにイオン交換水を用いて、実施例1と同様の方法で洗浄工程を実施し、揮発性成分のフィルムへの残留量を確認した。
【0057】
〔揮発性成分低減率〕
上記の各実施例及び比較例から、下記の式により、基準に対する揮発性成分低減率を算出した。
基準に対する揮発性成分低減率[%]=〔([前洗浄工程実施後であって洗浄工程実施前のGC/FIDピーク面積]-[洗浄工程実施後のGC/FIDピーク面積])/[[前洗浄工程実施後であって洗浄工程実施前のGC/FIDピーク面積]〕×100
結果を表1及び表2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
上記実施例から、再生用原料から揮発性成分を効果的に除去できることが分かった。