(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161678
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】カバー部材と便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/17 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
E03D11/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066677
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 啓太
(72)【発明者】
【氏名】八島 一哉
(72)【発明者】
【氏名】深川 雅史
(72)【発明者】
【氏名】浅井 崇臣
(72)【発明者】
【氏名】丸山 隆志
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC04
2D039CA04
2D039CB01
2D039DB00
2D039DB03
(57)【要約】
【課題】陶磁器に固定される配管ユニットから漏れた水が、水の付着を避けたい箇所に落下することを抑制するカバー部材を開示すること。
【解決手段】カバー部材は、陶磁器の第1の接続部に接続される一端部と前記陶磁器の第2の接続部に接続される他端部とを備える配管ユニットをカバーする。カバー部材は、配管ユニットの第1の配管と、第1の配管が接続される特定の部材と、の間の接続部分をカバーするカバー本体を備える。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陶磁器の第1の固定部に固定される一端部と前記陶磁器の第2の固定部に固定される他端部とを備える配管ユニットをカバーするためのカバー部材であって、
前記配管ユニットの第1の配管と、前記第1の配管が接続される特定の部材と、の間の接続部分をカバーするカバー本体を備える、カバー部材。
【請求項2】
前記第1の配管は、前記一端部を含み、
前記カバー本体は、前記一端部と、前記陶磁器の前記第1の固定部である前記特定の部材と、の間の接続部分をカバーする、請求項1に記載のカバー部材。
【請求項3】
前記カバー本体は、さらに、前記第1の配管と、前記配管ユニットの第2の配管であって、前記第1の配管が接続される前記第2の配管と、の間の接続部分をカバーする、請求項2に記載のカバー部材。
【請求項4】
前記カバー本体は、
前記第1の配管の外径よりも大きい内径を有するケース部材と、
前記ケース部材と前記第1の固定部との間に充填された充填剤と、を備える、請求項2又は3に記載のカバー部材。
【請求項5】
前記ケース部材は、前記充填剤が充填される充填口を備える、請求項4に記載のカバー部材。
【請求項6】
前記カバー本体は、さらに、前記ケース部材と前記第1の固定部との間に配置されるスポンジ部材を備える、請求項4又は5に記載のカバー部材。
【請求項7】
前記ケース部材の内面は、前記第1の固定部に対する前記ケース部材の位置を定めるための複数の突起を備える、請求項4から6のいずれか一項に記載のカバー部材。
【請求項8】
前記カバー本体は、前記第1の配管と、前記配管ユニットの第2の配管である前記特定の部材と、の間の接続部分をカバーする、請求項1に記載のカバー部材。
【請求項9】
前記カバー本体は、前記配管ユニットと前記カバー本体との間の空間を密閉するように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載のカバー部材。
【請求項10】
前記カバー本体は、前記配管ユニットからの漏水を排水する排水部を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のカバー部材。
【請求項11】
前記カバー部材は、さらに、
前記配管ユニットと前記カバー本体との間の空間に設けられるセンサであって、前記配管ユニットからの漏水を検出する前記センサを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のカバー部材。
【請求項12】
前記陶磁器と、
請求項1から11のいずれか一項に記載の前記カバー部材と、を備える便器。
【請求項13】
前記カバー本体の上端部は、前記便器の溜水面よりも高い位置に設けられている、請求項12に記載の便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カバー部材と便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本体外に設けられた給水部と本体内に設けられた受水部とを連結する連結管と、連結管を覆うカバー管と、を備える便器が開示されている。カバー管は、連結管によって連結された連結範囲で漏水する場合に、漏水を受け入れて本体内に導く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水洗便器は、通常、陶磁器で構成される。陶磁器は、金属及び樹脂等に比べて、寸法を精度よく製造するのは難しい。このため、水洗便器の製造においては、金属及び樹脂等の製品に比べ、大きめの寸法公差が許容されているのが実情である。公差の上限値及び下限値付近で製造された水洗便器に配管を固定する場合、公差の中央値付近で製造された水洗便器に配管を固定する場合と比べて、施工時に施工業者が組み付け部分に触れてしまい、接続箇所がずれるおそれがある。
【0005】
本明細書では、陶磁器に固定される配管ユニットから万が一水が漏れても、水の付着を避けたい箇所に水が付着することを抑制するカバー部材を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、陶磁器の第1の接続部に接続される一端部と前記陶磁器の第2の接続部に接続される他端部とを備える配管ユニットをカバーするためのカバー部材を開示する。カバー部材は、前記配管ユニットの第1の配管と、前記第1の配管が接続される特定の部材と、の間の接続部分をカバーするカバー本体を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】第1の接続管と第2の接続管との斜視図を示す。
【
図5】便器本体の底部と第1の接続管との断面図を示す。
【
図6】第1の接続管と第2の接続管との接続方法を説明するための斜視図を示す。
【
図7】
図6のVII-VII線における断面図を示す。
【
図8】第1の接続管が第2の接続管に挿通された状態で固定ピンが差し込まれた場合における
図6のVIII-VIII線断面図。
【
図9】
図8の状態から固定ピンがさらに差し込まれた場合における
図6のIX-IX線断面図を示す。
【
図10】第2の接続管と第3の接続管との斜視図を示す。
【
図11】第3の接続管と調整部材との斜視図を示す。
【
図14】便器本体の側面部と第3の接続管との断面図を示す。
【
図15】便器本体の側面部と第3の接続管との断面図を示す。
【
図16】便器本体の側面部と第3の接続管との断面図を示す。
【
図17】便器本体の側面部と第3の接続管との断面図を示す。
【
図20】便器本体の底部と第1の接続管との接続部分におけるカバー部材の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態の水洗便器を説明する。特に、水洗便器の配管ユニットを詳しく説明する。以下では、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」は、それぞれ、ユーザが便器を利用する状態、即ち、ユーザが便器に座った状態における向きを意味する。
【0009】
(水洗便器1の外観構成及び内部構成の概略:
図1及び
図2)
図1に示されるように、水洗便器1は、便器本体10を備える。便器本体10は、陶磁器によって構成される。
図2に示されるように、便器本体10は、鉢部12を備える。鉢部12は、上方に開口を有する。鉢部12は、下方に向かって凹状に湾曲している。鉢部12は、洗浄水26を貯えることができる。
【0010】
便器本体10は、さらに、上昇排水路14と下降排水路16とを備える。上昇排水路14の下端は、鉢部12の下部に接続される。上昇排水路14は、鉢部12の下部から後方上部に向かって延びる。上昇排水路14の上端は、下降排水路16の上端に接続される。下降排水路16は、上昇排水路14の上端から下方向に延びる。下降排水路16の下端は、排水管20に接続される。
【0011】
図1に示されるように、水洗便器1は、さらに、洗浄水供給管24を備える。洗浄水供給管24の上端24aは、図示省略する洗浄水供給源に接続されている。洗浄水供給源は、水洗便器1を洗浄するための洗浄水を供給する。洗浄水供給管24は、洗浄水供給源から供給された洗浄水を鉢部12に供給する。洗浄水供給管24から供給された洗浄水は、鉢部12の上方から下方に向かって、鉢部12の内面に沿って旋回しながら流れる。
【0012】
図1及び
図2に示されるように、水洗便器1は、さらに、洗浄水供給管24とは異なる洗浄水供給管22を備える。水洗便器1は、さらに、配管ユニット18とノズル30とを備える。洗浄水供給管22の上端22aは、洗浄水供給源に接続されている。洗浄水供給管22の下端22bは、配管ユニット18の上端部50aに接続されている。
【0013】
配管ユニット18は、配管本体50を備える。配管本体50は、洗浄水供給管22とノズル30との間を接続する。配管本体50は、前後方向に延びると共に上下方向に延びる。配管本体50の下端部50bは、ノズル30に接続される。ノズル30は、鉢部12の底部19に設けられた貫通孔19aに取り付けられる。ノズル30は、洗浄水供給源から配管本体50を介して供給された洗浄水を貫通孔19aから上昇排水路14に向けて噴射する。
【0014】
(配管本体50の構成:
図3~
図17)
図3から
図17を参照して、配管ユニット18の具体的な構成を説明する。水洗便器1は、さらに、配管ユニット18をカバーするためのカバー部材を備える。
図3等では、カバー部材を省略している。カバー部材については、
図18以降の図面を利用して後で説明する。
図3に示されるように、配管本体50は、複数の接続管60,80,100を備える。複数の接続管60,80,100は、第1の接続管60と第2の接続管80と第3の接続管100とを含む。第1の接続管60と第3の接続管100との間に第2の接続管80が配置されている。各接続管60,80,100が接続されることによって、洗浄水の供給経路が構成される。第3の接続管100が供給経路の最も上流側に位置し、第1の接続管60が供給経路の最も下流側に位置する。複数の接続管60,80,100は、例えば、ゴム等の弾性部材で構成されてもよいし、樹脂で構成されてもよいし、鉄等の金属材料で構成されていてもよい。
【0015】
(第1の接続管60の構成)
図4及び
図5を参照して、第1の接続管60について説明する。
図4に示されるように、第1の接続管60は、供給経路の下流側に位置する一端60aと上流側に位置する他端60bとを備える。第1の接続管60は、前後方向に沿って延びる部分70と、屈曲部72と、左右方向に沿って延びる部分74と、を備える。第1の接続管60は、概してL字形状を有する。従って、第1の接続管60は、約90度に曲がった供給経路を形成することができる。
図3に示されるように、第1の接続管60は、後側から見て、底部19を超えた領域に位置する部分70,72,74(
図4参照)を備える。このために、第1の接続管60は、ノズル30よりも後方に位置する洗浄水供給源から供給される洗浄水を、ノズル30から後方に向けて噴射するための供給経路を構成することができる。
【0016】
(第1の接続管60と便器本体10との固定)
図5に示されるように、第1の接続管60の一端60aには、ノズル30が嵌っている。ノズル30は、洗浄水の吐出口32を備える。第1の接続管60は、シール部材33を備える。シール部材33は、例えばゴム製のパッキンである。シール部材33は、第1の接続管60の外周を一周する部材である。鉢部12の底部19にノズル30を取り付ける場合には、先ず、シール部材33が、便器本体10の後ろ側から貫通孔19aを覆うように取り付けられる。その後、ノズル30が貫通孔19aに挿通される。シール部材33は、ノズル30によって底部19に固定される。ノズル30は、貫通孔19aを通って便器本体10よりも前側に突出し、第1の接続管60の一端60aに接続される。
【0017】
第1の接続管60は、さらに、シール部材62を備える。シール部材62は、例えばゴム製のパッキンである。シール部材62は、第1の接続管60の外周を一巡するリング状の部材である。シール部材62は、便器本体10の前側から貫通孔19aを覆うように構成される。シール部材62は、ワッシャー64を介して固定ナット66によって底部19に固定される。これにより、便器本体10の底部19にノズル30が取り付けられるとともに、第1の接続管60が便器本体10に固定される。
【0018】
(第1の接続管60と第2の接続管80との接続)
第1の接続管60と第2の接続管80との接続について説明する。
図4に示されるように、第1の接続管60の他端60bの開口76の径は、第2の接続管80の一端80aの開口82の径よりも小さい。第1の接続管60は、複数のOリング68を備える。複数のOリング68は、第1の接続管60が第2の接続管80に挿通された状態において、第1の接続管60と第2の接続管80との間を封止する。Oリング68は、例えばゴム等の弾性材料から構成される。
【0019】
第1の接続管60と第2の接続管80とを接続する場合には、
図6に示されるように、先ず、第1の接続管60の他端60bが第2の接続管80の開口82に挿通される。第1の接続管60が第2の接続管80に挿通された状態で固定ピンが差し込まれた場合における
図6のVII-VII線断面図である
図7に示されるように、第2の接続管80の内面には、段差86が形成されている。第2の接続管80は、段差86によって、第1の接続管60の外径よりも大きい内径81aと、第1の接続管60の外径よりも小さい内径81bと、を有する。これにより、第2の接続管80に第1の接続管60が挿通される際に、第1の接続管60が段差86の位置で係止する。
【0020】
図6に示されるように、第2の接続管80の一端80aは、二つの開口89a,89bと、これらの開口89a,89bの間の部分88と、を備える。第2の接続管80に第1の接続管60が挿通された状態において、固定ピン87が開口89a,89bに差し込まれる。固定ピン87は、脚部85と係合部83とを備える。
図8に示されるように、脚部85は、開口89a,89bを通る。脚部85は、第1の接続管60の外面61に沿った湾曲形状を有する。脚部85は、第1の接続管60に当接した場合に、第1の接続管60の外面61に沿って広がる。固定ピン87が
図8の状態からさらに差し込まれると、
図9に示されるように、脚部85が第1の接続管60の外面61に嵌る。この際に、固定ピン87の係合部83が部分88に当接する。これにより、第1の接続管60と第2の接続管80とが接続される。
【0021】
図9のVII-VII断面である
図7に示されるように、固定ピン87は、第1の接続管60に設けられた凹部69に嵌り込む。この構成によると、第1の接続管60が第2の接続管80から左方向(即ち
図7の右方向)に移動しようとしても、固定ピン87が凹部69の壁面に当接する。そのため、第1の接続管60の左方向への移動が禁止され、第1の接続管60が第2の接続管80から外れてしまうのを防止することができる。
【0022】
固定ピン87と第2の接続管80とは、方向A(即ち左右方向)を軸として、第1の接続管60に対して回転することができる。即ち、第1の接続管60と第2の接続管80とは、固定ピン87によって接続が解除されるのを防止するように構成されるとともに、方向Aを軸として相対的に回転可能であるように構成される。このように、第1及び第2の接続管60,80が相対的に回転可能であるので、作業者は、便器本体10の形状に応じて第1及び第2の接続管60,80の間の接続角度を調整しながら、配管ユニット18を便器本体10に固定することができる。
【0023】
(第2の接続管80の構成)
図10に示されるように、第2の接続管80は、左右方向(即ち方向A)に沿って延びる部分90と、屈曲部92と、前後方向(即ち方向B)に沿って延びる部分94と、を備える。第2の接続管80は、概してL字形状を有する。第2の接続管80は、約90度に曲がった供給経路を形成することができる。
図3に示されるように、第2の接続管80は、後側から見て、底部19を超えた領域に位置する部分90,92(
図10参照)を備える。このために、第2の接続管80は、ノズル30よりも後方に位置する洗浄水供給源から供給される洗浄水を、ノズル30から後方に向けて噴射するための供給経路を構成することができる。
【0024】
第2の接続管80の他端80bの開口96の径は、第3の接続管100の一端100aの開口102の径よりも小さい。第2の接続管80は、複数のOリング84を備える。複数のOリング84は、第1の接続管60のOリング68(
図4参照)と同様の構成を備える。
【0025】
(第2の接続管80と第3の接続管100との接続)
第2の接続管80と第3の接続管100とを接続する場合には、第2の接続管80の他端80bが第3の接続管100の一端100aに挿通される。第2の接続管80の他端80bは、第1の接続管60の他端60b(
図4参照)と同様の構成を備える。第3の接続管100の一端100aは、第2の接続管80の一端80a(
図4、
図6~
図9参照)と同様の構成を備える。第2の接続管80と第3の接続管100との間の接続は、第1の接続管60と第2の接続管80との間の接続と同様である。即ち、第2の接続管80の他端80bが第3の接続管100の一端100aに挿通された状態において、不図示の固定ピンが第3の接続管100に差し込まれる。第2の接続管80と第3の接続管100とは、固定ピンによって接続が解除されるのを防止するように構成されるとともに、方向Bを軸として相対的に回転可能であるように構成される。このように、第2及び第3の接続管80,100が相対的に回転可能であるので、作業者は、便器本体10の形状に応じて第2及び第3の接続管80,100の間の接続角度を調整しながら、配管ユニット18を便器本体10に固定することができる。
【0026】
(第3の接続管100の構成)
図11に示されるように、第3の接続管100は、3つの屈曲部104,106,108を有する。各屈曲部104,106,108は、約60度屈曲している。第3の接続管100は、さらに、3つの屈曲部104,106,108によって画定される4つの部分110,112,114,116を備える。
【0027】
(調整部材140の構成)
第3の接続管100の他端100bは、便器本体10の側面部11に固定される。これを実現するために、配管ユニット18は、さらに、調整部材140を備える。調整部材140は、スライド部材120と、スライド部材120に接続されるナット部材128と、を備える。スライド部材120は、第3の接続管100の他端100bにスライド可能に接続される。
図12に示されるように、スライド部材120は、鍔部124と管状部122とを備える。鍔部124は、リング形状を有する。鍔部124の外径は、側面部11の貫通孔13(
図11参照)の径よりも大きい。管状部122の内径は、第3の接続管100の他端100bの外径よりも大きい。管状部122の外径は、貫通孔13の径よりも小さい。管状部122の外面には、ナット部材128が接続される螺旋状のねじ部130が設けられる。
【0028】
管状部122は、管状本体122aと、管状本体122aに連続するアーム部132と、を有する。アーム部132は、略長方形の板状部分である。アーム部132の一端部132aは管状本体122aに連続しており、アーム部132の他端部132bは管状本体122aに連続していない。このため、アーム部132の他端部132bは、管状本体122aの内側に撓むことができる。
【0029】
アーム部132は、爪部126と突出部134とを有する。
図13に示されるように、爪部126は、アーム部132の他端部132bにおいて、内側に突出する。
図12に示されるように、突出部134は、アーム部132の外面において、外側に突出する。突出部134は、アーム部132の長手方向に沿って延びる。
【0030】
(第3の接続管100と便器本体10との固定)
図14から
図17を参照して、第3の接続管100と便器本体10との固定について説明する。先ず、スライド部材120が、側面部11の貫通孔13に前側から挿通される。スライド部材120が貫通孔13に挿通されると、鍔部124は、側面部11の裏面11aに当接する。
【0031】
第3の接続管100の他端100bの外周面には、複数の溝118が設けられる。複数の溝118は、第3の接続管100が延びる方向に沿って並ぶ。第3の接続管100は、スライド部材120が貫通孔13に挿通された状態において、スライド部材120の内側に挿通される。この際に、第3の接続管100は、複数の溝118と爪部126とが対向するように挿通される。複数の溝118には、スライド部材120のアーム部132の爪部126が嵌る。この段階では、爪部126が複数の溝118に対して比較的に浅く嵌り込んでいるので、第3の接続管100は、スライド部材120に対して前後方向に移動することができる。
【0032】
次いで、
図15に示されるように、ナット部材128がスライド部材120に接続される。ナット部材128の内面には、スライド部材120のねじ部130(
図12参照)に対応するねじ部142が設けられている。ナット部材128は、スライド部材120のねじ部130に沿って後側からスライド部材120に回し込まれる。ナット部材128がスライド部材120に回し込まれると、ナット部材128のねじ部142がアーム部132の突出部134(
図12参照)に当接する。
図16に示されるように、ナット部材128がさらに回し込まれると、ナット部材128は、突出部134に沿って前方向に移動する。この際に、アーム部132の他端部132bは、下方に撓む。これにより、爪部126は、第3の接続管100の複数の溝118のうちの1つに向けて押圧される。従って、爪部126が1つの溝118に比較的に深く嵌り込む。そのため、第3の接続管100に対するスライド部材120の位置が固定される。
【0033】
図17に示されるように、ナット部材128がさらに回し込まれると、ナット部材128は、便器本体10の側面部11に当接する。調整部材140は、鍔部124とナット部材128とによって、側面部11を前側と後側とから挟み込む。これにより、第3の接続管100が便器本体10に固定される。
【0034】
前述のように、第3の接続管100は、複数の溝118を備える。作業者は、調整部材140を利用して、複数の溝118の前後方向の長さの分だけ、便器本体10に対する第3の接続管100の位置を調整することができる。即ち、作業者は、調整部材140を利用して、第3の接続管100の他端100bの余剰長さを調整することができる。余剰長さは、前側から見て側面部11を超えた領域に位置する部分の長さである。具体的には、複数の溝118のうちの最も左側に位置する一つの溝に爪部126が嵌っている状態では、余剰長さが最も短くなる。複数の溝118のうちの最も右側に位置する一つの溝に爪部126が嵌っている状態では、余剰長さが最も長くなる。作業者は、便器本体10の形状に応じて余剰長さを調整しながら、配管ユニット18を便器本体10に固定することができる。
【0035】
スライド部材120の管状部122の内径は、第3の接続管100の他端100bの外径よりも大きい。従って、
図17に示すように、管状部122と他端100bとの間には空隙101が存在する。
図3に示されるように、第3の接続管100の他端100bには、洗浄水供給管22の下端22bが接続される。この際に、管状部122と他端100bとの間の空隙101に洗浄水供給管22の下端22bが入り込む。
【0036】
(カバー部材160の構成)
図18に示されるように、水洗便器1は、さらに、配管ユニット18をカバーするためのカバー部材160を備える。カバー部材160は、カバー本体162を備える。カバー本体162は、配管本体50に沿って、前後方向に延びると共に上下方向に延びる。カバー本体162は、半透明な材料によって構成される。
【0037】
(カバー本体162の構成)
図18から
図21を参照して、カバー本体162の具体的な構成を説明する。
図18に示されるように、カバー本体162は、ケース部材164と、ケース部材164に接続される伸縮筒190と、を備える。
図19に示されるように、ケース部材164は、概してL字形状を有する。伸縮筒190は、略円筒形状の蛇腹構造を有する。伸縮筒190の端部190aは、ケース部材164の端部164aに覆いかぶさった状態で、ケース部材164の外面に接着されている。
図18に示されるように、伸縮筒190は、ケース部材164との接着部分から、第3の接続管100と便器本体10の側面部11との接続部分まで延びる。
【0038】
(ケース部材164の構成)
図20に示されるように、ケース部材164の他端部164bは、便器本体10の底部19に固定される。ケース部材164は、第1の接続管60の外径よりも大きい内径を有する。ケース部材164は、第1の接続管60の一端60aを覆う。ケース部材164は、樹脂で構成される。ケース部材164は、内周面166,168と接着面170とを有する。内周面166の内径は、内周面168の内径よりも大きい。従って、内周面166と内周面168との間には、段差172が形成される。接着面170は、段差172に設けられる。
【0039】
カバー本体162は、さらに、スポンジ部材174を備える。スポンジ部材174は、ケース部材164と便器本体10の底部19との間に配置される。スポンジ部材174は、樹脂材料から構成される。スポンジ部材174は、弾性を有する多孔質性の他の材料によって構成されてもよい。スポンジ部材174は、ケース部材164の開口165に沿って一巡するリング状の部材である。
【0040】
(ケース部材164と便器本体10との固定)
図20を参照して、ケース部材164と便器本体10の底部19との固定について説明する。ケース部材164は、第1の接続管60が底部19に固定された状態で取り付けられる。先ず、スポンジ部材174が、便器本体10の前側からシール部材62の周囲に配置される。
【0041】
次いで、接着剤176が接着面170に接着された状態で、接着面170がワッシャー64に接着される。
図19に示されるように、ケース部材164の内周面168は、第1の接続管60に対するケース部材164の位置を定めるための複数の突起178を有する。複数の突起178は、固定ナット66に対向する部分に設けられる。複数の突起178は、固定ナット66の外形に合うように構成される。そのため、接着面170をワッシャー64に接着するために、ケース部材164が前側から後側に移動する際に、ケース部材164は、複数の突起178によって固定ナット66に沿って案内される。この構成によると、ワッシャー64に対するケース部材164の位置が正確に定められる。従って、接着面170に接着された接着剤176を、ワッシャー64に正確に接着させることができる。
【0042】
接着面170がワッシャー64に接着されると、スポンジ部材174は、ケース部材164と底部19との間で圧縮される。即ち、ケース部材164は、スポンジ部材174を介して底部19に固定される。この状態では、ケース部材164の内部に水が存在する場合に、スポンジ部材174から漏水する可能性がある。これを避けるために、次に説明する充填剤186が利用される。
【0043】
図19に示されるように、ケース部材164は、充填剤186が充填される複数の充填口182を備える。
図19は、充填剤186が充填される前の様子を示す。
図20のXXI-XXI断面である
図21に示されるように、複数の充填口182からケース部材164の内部の空間184に充填剤186が充填される。充填剤186は、矢印186Fで示される向きに流れるように充填される。充填剤186は、例えばウレタンを主原料とする合成樹脂である。
図20に示されるように、空間184は、ケース部材164と第1の接続管60と底部19とによって画定される。
図20は、充填剤186が充填される前の様子を示す。充填剤186が空間184に充填される場合に、空間184内の空気は、スポンジ部材174を通ってケース部材164の外に押し出される。充填剤186は、スポンジ部材174を通過しないので、スポンジ部材174の内部に留まる。これにより、充填剤186が空間184に充填される。
【0044】
充填剤186が空間184に充填された後のカバー部材160は、第1の接続管60の一端60aと便器本体10の底部19との間の接続部分をカバーする。この構成によると、第1の接続管60と便器本体10との間の接続部分からケース部材164の外部に洗浄水26が漏れることが抑制される。具体的には、例えば、洗浄水26が、矢印26Gで示されるように、ノズル30と便器本体10との間、便器本体10とシール部材62との間、及び、空間184を通って、スポンジ部材174から漏水することを抑制することができる。他の例では、例えば、洗浄水26が、矢印26Hで示されるように、ケース部材164と固定ナット66との間、及び、空間184を通って、スポンジ部材174から漏水することを抑制することができる。
【0045】
(カバー本体162の構成の続き)
図18を参照して、伸縮筒190の構成を説明する。伸縮筒190は、例えば樹脂によって構成される。伸縮筒190は、接続管60,80,100に沿って延びる。伸縮筒190の内径は、接続管60,80,100の外径よりも大きい。伸縮筒190は、軸方向に伸縮が可能である。伸縮筒190は、最も伸長させた状態と最も縮小させた状態との間で任意の伸縮状態を保持することができる。この構成によると、配管ユニット18の接続管同士の接続角度を調整される場合、及び、配管ユニット18の余剰長さが調整される場合に、配管ユニット18に応じた形状に伸縮筒190の長さを調整することができる。配管ユニット18の各接続管60,80,100が接続角度を調整可能に構成されているので、接続管同士の接続部分から漏水する可能性がある。伸縮筒190は、このような漏水を受け止めることができる。
【0046】
伸縮筒190の他端190bは、便器本体10の側面部11に固定されている。
図22に示されるように、伸縮筒190の他端190bは、鉢部12に貯えられる洗浄水26の溜水面よりも高い位置に設けられる。伸縮筒190の他端190bと便器本体10の側面部11とは、例えば接着剤によって固定される。これにより、配管ユニット18とカバー本体162との間の空間は密閉される。従って、配管ユニット18とカバー部材160との間に空気層が設けられ、カバー部材160が結露することを抑制することができる。
【0047】
カバー本体162は、さらに、排水部192を備える。排水部192は、伸縮筒190と排水管20との間を接続する配管である。接続管60,80,100と伸縮筒190との間に溜まった水の高さが排水部192の開口194に到達した場合に、その水は排水部192を介して排水管20に排出される。この構成によると、配管ユニット18と伸縮筒190との間に溜まった水が自動的に排水される。排水部192には、逆止弁(不図示)が設けられる。逆止弁は、伸縮筒190側から排水管20側に水が移動することを許容し、排水管20側から伸縮筒190側に水が移動することを禁止する。
【0048】
図22に示されるように、カバー部材160は、さらに、静電容量センサ196を備える。静電容量センサ196は、配管ユニット18と伸縮筒190との間の空間、又は、配管ユニット18とケース部材164との間の空間において、任意の位置に配置される。静電容量センサ196は、配管ユニット18からの漏水を検出するように構成される。静電容量センサ196は、漏水を検出したことを示す信号を図示省略の制御ユニットに供給する。この場合、制御ユニットは、漏水をユーザに通知したり、洗浄水の供給を停止したりする。これにより、カバー部材160からの漏水を抑制することができる。変形例では、静電容量センサ196が設けられなくてもよい。
【0049】
(組み付け手順)
続いて、上記の構成を備える配管ユニット18とカバー部材160とを便器本体10に組み付ける手順を説明する。作業員は、第1に、鉢部12の底部19に挿通されたノズル30に第1の接続管60を接続する(
図5参照)。これにより、第1の接続管60が便器本体10に固定される。
【0050】
第2に、作業員は、第2の接続管80の他端80bに第3の接続管100の一端100aを挿通し、両者を固定ピン(図示省略)によって固定する(
図10参照)。これにより、第2の接続管80と第3の接続管100とが接続される。
【0051】
第3に、作業員は、第2の接続管80の一端80aを第1の接続管60の他端60bに接続する(
図4参照)。この際、第2の接続管80の他端80bには、既に、第3の接続管100が接続されている。第1の接続管60の他端60bと第2の接続管80の一端80aとは固定ピン87によって固定される(
図6から
図9参照)。これにより、便器本体10に固定された第1の接続管60に、第2の接続管80と第3の接続管100とが接続される。
【0052】
第4に、作業員は、カバー部材160のケース部材164を、便器本体10の底部19と第1の接続管60との間の接続部分に取付ける(
図20参照)。その後、作業員は、充填剤186をケース部材164の充填口182に充填する。これにより、便器本体10と第1の接続管60との間の接続部分が、カバー部材160によってカバーされる。
【0053】
第5に、作業員は、スライド部材120が挿通された側面部11の貫通孔13に、第3の接続管100の他端100bを挿通する(
図11参照)。この際、第3の接続管100の一端100aは、既に、第2の接続管80及び第1の接続管60を介して、底部19に固定されている。そのため、作業員は、A方向に沿って延びる軸を中心として第1の接続管60に対して第2の接続管80を回転させることによって、第1の接続管60と第2の接続管80との間の接続角度を調整する。加えて、作業員は、A方向に直交するB方向に沿って延びる軸を中心として第2の接続管80に対して第3の接続管100を回転させることによって、第2の接続管80と第3の接続管100との間の接続角度を調整する。即ち、作業員は、直交する二つの方向に沿って延びる2つの軸を中心として各接続管60,80,100を相対的に回転させる。これにより、作業員は、第3の接続管100の他端100bが貫通孔13に挿通されるように、配管本体50の形状を調整することができる。
【0054】
第3の接続管100の他端100bが貫通孔13に挿通された状態では、スライド部材120の爪部126が第3の接続管100の溝118の1つに比較的に浅く嵌り込んでいる。この状態において、作業員は、貫通孔13の位置に応じて、第3の接続管100の他端100bの余剰長さを調整することができる。その後、作業員は、ナット部材128をスライド部材120に回し込むことによって、第3の接続管100の他端100bと便器本体10とを固定する(
図14から
図17参照)。
【0055】
第6に、作業員は、伸縮筒190を接続管60,80,100に沿って伸長させ、他端190bを便器本体10の側面部11に固定する(
図18参照)。
【0056】
(実施形態の効果)
便器本体10は陶磁器によって構成される。陶磁器は、金属及び樹脂等に比べて、寸法を精度よく製造するのは難しい。このため、便器本体10の製造においては、比較的に大きな寸法公差が許容されている。公差の上限値及び下限値付近で製造された便器本体10に配管ユニット18を固定する場合、公差の中央値付近で製造された便器本体に配管ユニット18を固定する場合と比べて、施工時に施工業者が組み付け部分に触れてしまい、接続箇所がずれるおそれがある。例えば、便器本体10の底部19の形状が公差の上限値及び下限値で製造されていると、第1の接続管60と底部19との間の接続部分がずれるおそれがある。これに対応するために、カバー本体162は、第1の接続管60と便器本体10との接続部分をカバーする。
【0057】
便器本体10の製造誤差に対応するために、配管ユニット18は、本実施形態のように、各接続管60,80,100の間の接続角度が調整可能に構成されている。この場合、各接続管60,80,100の間の接続部分から漏水し得る。これに対応するために、カバー本体162は、第1の接続管60と第2の接続管80との間の接続部分、及び、第2の接続管80と第3の接続管100との間の接続部分をカバーする。
【0058】
仮に、配管ユニット18が1本の配管のみによって構成されることを想定する。即ち、当該配管ユニットは、配管同士の接続角度を調整可能に構成されない。この場合、当該配管ユニットが製造誤差を有する便器本体10に固定されると、当該配管ユニットに負荷がかかる。この結果、当該配管ユニットと便器本体10の底部19との間から漏水し得る。カバー本体162は、このような配管ユニットと底部19との接続部分をカバーすることもできる。
【0059】
本実施形態によると、カバー本体162が上記の各接続部分をカバーするので、配管ユニット18から万が一水が漏れても、水の付着を避けたい箇所に水が付着することを抑制することができる。
【0060】
(対応関係)
底部19、側面部11が、それぞれ、「第1の固定部」、「第2の固定部」の一例である。配管本体50の下端部50b、配管本体50の下端部50bが、それぞれ、「一端部」、「他端部」の一例である。一つの例では、第1の接続管60、第2の接続管80、底部19が、それぞれ、「第1の配管」、「第2の配管」、「特定部材」の一例である。他の例では、第1の接続管60、第2の接続管80が、それぞれ、「第1の配管」、「特定の部材」の一例である。
【0061】
以上、具体的な実施形態を詳細に説明した。但し、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上記の実施形態の変形例を以下に列挙する。
【0062】
(変形例1)配管ユニット18は、便器本体10に代えて、陶磁器によって構成される他の物に接続されてもよい。例えば、配管ユニット18は、洗面ボウルに固定されてもよい。
【0063】
(変形例2)カバー本体162は、配管本体50の下端部50bと、便器本体10の底部19と、の間の接続部分をカバーしなくてもよい。この場合、カバー本体162は、2つの接続管の間の接続部分をカバーすればよい。
【0064】
(変形例3)配管本体50は、1つの配管のみによって構成されてもよい。この場合、カバー本体162は、配管本体50の下端部50bと、便器本体10の底部19と、の間の接続部分をカバーすればよい。本変形例では、「第2の配管」を省略可能である。一般的に言うと、「カバー本体」は、「第1の配管」と「第2の配管」との間の接続部分をカバーしなくてもよい。
【0065】
(変形例4)カバー本体162は、ケース部材164と充填口182と充填剤186とを備えなくてもよい。この場合、カバー本体162は、便器本体10の底部19まで伸びて、底部19に接着される伸縮筒190を備えていればよい。
【0066】
(変形例5)カバー本体162は、スポンジ部材174を備えなくてもよい。
【0067】
(変形例6)ケース部材164の内面は、複数の突起178を備えなくてもよい。
【0068】
(変形例7)カバー本体162の上端部(即ち伸縮筒190の他端190b)は、便器本体10の側面部11に接着されなくてもよい。即ち、カバー本体162の上端部は、開放されていてもよい。換言すると、カバー本体162は、配管ユニット18とカバー本体162との間の空間を密閉しなくてよい。
【0069】
(変形例8)カバー本体162は、排水部192を備えなくてもよい。この場合、例えば、ユーザは、カバー部材160と配管ユニット18との間に貯留される水を定期的に取り除く作業を行なえばよい。
【0070】
(変形例9)伸縮筒190の他端190bは、鉢部12に貯えられる洗浄水26の溜水面よりも高い位置に設けらなくてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1:水洗便器、10:便器本体、11:便器本体の側面部、18:配管ユニット、19:便器本体の底部、30:ノズル、50:配管本体、60,80,100:接続管、120:スライド部材、128:ナット部材、140:調整部材、160:カバー部材、162:カバー本体、164:ケース部材、174:スポンジ部材、186:充填剤、190:伸縮筒、192:排水部、196:静電容量センサ