(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161680
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】ガラス板の製造装置、及びガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 35/14 20060101AFI20221014BHJP
C03B 17/06 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C03B35/14
C03B17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066680
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】玉村 周作
(72)【発明者】
【氏名】三星 儀昭
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015GA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】支持ローラの表面がガラスリボンからの熱によって劣化するのを防止し、長寿命化を図ることで製造コストを削減するための、ガラス板の製造装置及びガラス板の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス板の製造装置1は、溶融ガラスGmをガラスリボンGrに成形する成形炉2と、ガラスリボンGrを徐冷する徐冷炉3と、ガラスリボンGrを放冷する冷却室4と、ガラスリボンGrを所定長さに切断しガラス板Gを得る切断室5と、を備え、冷却室4は、ガラスリボンGrと接触する支持ローラ41と、支持ローラ41の表面を冷却する冷却装置を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスをガラスリボンに成形する成形炉と、前記ガラスリボンを徐冷する徐冷炉と、前記ガラスリボンを放冷する冷却室と、前記ガラスリボンを所定長さに切断しガラス板を得る切断室と、を備えたガラス板の製造装置であって、
前記冷却室は、前記ガラスリボンと接触する支持ローラと、前記支持ローラの表面を冷却する冷却装置を備えることを特徴とするガラス板の製造装置。
【請求項2】
前記冷却装置は、前記支持ローラの表面を外部から冷却することを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造装置。
【請求項3】
前記支持ローラは、複数の前記支持ローラを前記ガラスリボンの長手方向に沿って並べて配置することで支持ローラ群を構成し、
前記冷却装置は、前記支持ローラ群のうちで前記ガラスリボンの200℃以上の部位と接触する前記支持ローラに設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス板の製造装置。
【請求項4】
前記支持ローラの表面の材料は、ゴムであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のガラス板の製造装置。
【請求項5】
前記ゴムの耐熱温度は、200℃以上であることを特徴とする請求項4に記載のガラス板の製造装置。
【請求項6】
前記冷却装置は、前記支持ローラの表面に当接する冷却ローラであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のガラス板の製造装置。
【請求項7】
前記冷却ローラは、内部に冷媒を流通させる流路を有することを特徴とする請求項6に記載のガラス板の製造装置。
【請求項8】
前記冷媒は、冷却液であることを特徴とする請求項7に記載のガラス板の製造装置。
【請求項9】
前記ガラスリボンは、幅2000mm以上であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のガラス板の製造装置。
【請求項10】
溶融ガラスをガラスリボンに成形する成形工程と、前記ガラスリボンを徐冷する徐冷工程と、前記ガラスリボンを支持ローラと接触させながら放冷する冷却工程と、前記ガラスリボンを所定長さに切断しガラス板を得る切断工程と、を備えたガラス板の製造方法であって、
前記冷却工程では、冷却装置を用いて前記支持ローラの表面を冷却することを特徴とするガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造装置、及びガラス板の製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラス板を製造するための手法としては、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、リドロー法に代表されるダウンドロー法を利用した手法や、フロート法を利用した手法が広く採用されている。特にオーバーフローダウンドロー法は、表面のうねりや粗さが非常に小さく、表面品位に優れたガラス板を得ることができる方法として知られている
【0003】
オーバーフローダウンドロー法では、成形炉内に設置された楔状の断面形状を有する成形体が用いられ、この成形体の頂部に設けられた溝部に溶融ガラスを連続的に供給する。供給された溶融ガラスは、溝部から溢れ出て成形体の両側面に沿って流下し、成形体の下端部で融合することによって板状のガラスリボンとなる。このガラスリボンの両縁部を複数の引張ローラで挟持しながら牽引することで、ガラスリボンは徐冷炉内の垂直方向に延びる搬送経路上を移送される。その際、徐冷炉内の雰囲気温度は管理されているので、ガラスリボンに徐冷処理が施され、意図しない熱歪がガラスリボンに発生するのが抑制される。徐冷炉内におけるガラスリボンは高温であるため、ガラスリボンを挟持する引張ローラは高い耐熱性が求められる。このため、引張ローラの表面は、セラミック繊維と結合剤を含む無機材料から作製される。続いてガラスリボンは、徐冷炉の下部に配置された冷却室内に延びる搬送経路上を移送されることで、放冷される。その後、ガラスリボンを切断室へ搬送し、所定の長さ毎に幅方向に切断することで、ガラス板を得る。
【0004】
近年、ディスプレイ用ガラス板は、大型化が進められている。ガラスリボンの幅寸法が大きくなると、搬送経路上で移送されるガラスリボンの自重が大きくなる。その自重が成形体付近の溶融ガラスを過度に牽引し、ガラスリボンが破損して落下するという現象が発生することがある。ガラスリボンは複数の引張ローラにより挟持されているが、前述の通り引張ローラは無機材料で作製されており、ガラスリボンとの間の摩擦係数が小さい。このため、ガラスリボンとの間で滑りが発生しやすく、ガラスリボンの移送速度を調整する役割を十分に果たすことができない。このような現象を防ぐため、ガラスリボンとの間の摩擦係数が大きい材料(例えば合成ゴム)で作製された支持ローラを冷却室内に設置し、ガラスリボンを挟持する方法が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えばガラスの歪点が高くなると、冷却室に搬入されるガラスリボンの温度も高くなり、ガラスリボンから支持ローラに伝導する熱量が増加する。また、製造効率を向上させるためにガラスリボンの移送速度を速くしても、ガラスリボンから支持ローラに伝導する熱量が増加する。このため、支持ローラの表面をフッ素ゴムやシリコーンゴム等の耐熱性の高いゴムで作製したとしても、支持ローラの表面が熱により比較的短期間で劣化し、頻繁に交換が必要となる課題があった。
【0007】
本発明は、支持ローラの表面がガラスリボンからの熱によって劣化するのを防止し、長寿命化を図ることで、製造コストを削減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく創案された本発明は、溶融ガラスをガラスリボンに成形する成形炉と、前記ガラスリボンを徐冷する徐冷炉と、前記ガラスリボンを放冷する冷却室と、前記ガラスリボンを所定長さに切断しガラス板を得る切断室と、を備えたガラス板の製造装置であって、前記冷却室は、前記ガラスリボンと接触する支持ローラと、前記支持ローラの表面を冷却する冷却装置を備えることを特徴とする。冷却装置によって支持ローラの表面を直接冷却することで、支持ローラの表面の熱による劣化を抑制し、寿命を延ばすことができる。これにより、支持ローラの交換頻度を下げることができ、製造コストを削減することができる。
【0009】
上記の構成において、前記冷却装置は、前記支持ローラの表面を外部から冷却することが好ましい。支持ローラの表面が熱伝導率の低い材料(例えばゴム)で作製されている場合、支持ローラの内部からは表面を効率良く冷却することができない。支持ローラの表面を外部から冷却することで、支持ローラの表面の材質に関わらず、支持ローラの表面を効率的に冷却することができる。
【0010】
上記の構成において、前記支持ローラは、複数の前記支持ローラを前記ガラスリボンの長手方向に沿って並べて配置することで支持ローラ群を構成し、前記冷却装置は、前記支持ローラ群のうちで前記ガラスリボンの200℃以上の部位と接触する前記支持ローラに設けられることが好ましい。このような構成によれば、複数の支持ローラのうちで、表面の温度が高く劣化速度の速い支持ローラのみを選択的に冷却することができる。これにより冷却装置の設置数量を減らすことができ、設備費用を削減することができる。
【0011】
上記の構成において、前記支持ローラの表面の材料は、ゴムであることが好ましい。ゴムはガラスに対する摩擦係数が大きいため、小さい接触圧で大きな摩擦力が得られる。従って、ガラスリボンに対する支持ローラの接触圧を小さくすることができ、ガラスリボンの破損を防止することができる。さらに、ゴムはその硬度や柔軟性、表面平滑性等の物性を調整し易いため、ガラスリボンを確実に支持できる材質を容易に得ることができる。
【0012】
上記の構成において、前記ゴムの耐熱温度は、200℃以上であることが好ましい。このような構成によれば、ガラスリボンと接触することで表面を耐熱温度以上に加熱される支持ローラの数量を減らすことができる。これにより冷却装置の設置数量を減らすことができ、設備費用を削減することができる。ここで、耐熱温度とは、ゴムが熱により変形を来たすことなく、且つ熱により無用の粘着性を有することなく、室温での物性をそのまま維持できる範囲内での最高温度を意味する。
【0013】
上記の構成において、前記冷却装置は、前記支持ローラの表面に当接する冷却ローラであることが好ましい。支持ローラの表面を冷却する冷却装置としては、支持ローラの表面に当接させる冷却ローラや冷却板、冷媒の吹き付け装置等がある。冷却板を設ける場合、支持ローラの表面と冷却板との間の摩擦により、支持ローラの表面の摩耗や、支持ローラの回転に要するトルクの増大、という問題がある。冷媒の吹き付け装置を設ける場合、ガラス板の製造装置内に気流が発生することで、雰囲気温度の乱れや、ガラス粉の飛散、という問題がある。冷却ローラを当接させる構成を用いることで、このような問題を引き起こすことなく、支持ローラの表面を冷却することができる。
【0014】
上記の構成において、前記冷却ローラは、内部に冷媒を流通させる流路を有することが好ましい。このような構成によれば、支持ローラの表面から冷却ローラへ伝導した熱を速やかに冷媒へ伝導することができる。従って冷却ローラに当接する支持ローラの表面を効率的に冷却することができる。
【0015】
上記の構成において、前記冷媒は、冷却液であることが好ましい。このような構成によれば、冷却ローラに当接する支持ローラの表面を、より効率的に冷却することができる。
【0016】
上記の構成において、前記ガラスリボンは、幅2000mm以上であることが好ましい。このような構成によれば、ガラスリボンの自重が大きくなり、支持ローラとの間で滑りが発生し易くなる。そのため、支持ローラがガラスリボンの滑りを防止する効果が顕著となる。
【0017】
また、本発明に係るガラス板の製造方法は、溶融ガラスをガラスリボンに成形する成形工程と、前記ガラスリボンを徐冷する徐冷工程と、前記ガラスリボンを支持ローラと接触させながら放冷する冷却工程と、前記ガラスリボンを所定長さに切断しガラス板を得る切断工程と、を備えたガラス板の製造方法であって、前記冷却工程では、冷却装置を用いて前記支持ローラの表面を冷却することを特徴とする。支持ローラの表面は、高温のガラスリボンと接触するため、温度が上昇し、比較的短期間で劣化する。冷却装置によって支持ローラの表面を直接冷却することで、支持ローラの表面の熱による劣化を抑制し、寿命を延ばすことができる。これにより、支持ローラの交換頻度を下げることができ、製造コストを削減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、支持ローラの表面を効率的に冷却し、長寿命化を図ることで、製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るガラス板の製造装置を示す正面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る支持ローラの要部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る冷却ローラを示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の他の実施形態に係る冷却ローラを示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の別の実施形態に係る支持ローラ及び冷却装置の要部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って、本発明に係るガラス板の製造装置、及びガラス板の製造方法の一実施形態について説明する。
【0021】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るガラス板の製造装置1は、溶融ガラスGmをガラスリボンGrに成形する成形炉2と、ガラスリボンGrを徐冷する徐冷炉3と、ガラスリボンGrを放冷する冷却室4と、ガラスリボンGrを所定長さに切断しガラス板Gを得る切断室5と、を備える。また、本実施形態に係るガラス板の製造方法の実行には、ガラス板の製造装置1を用いる。
【0022】
成形炉2は、炉壁11で囲まれた空間であり、楔状の断面形状を有する成形体21と、成形体21の下方に設けられた1組のエッジローラ22と、を備える。成形炉2では、溶融ガラスGmが、成形体21の頂部211に設けられた溝部に連続的に供給される。この溶融ガラスGmは、例えば溶融炉でガラス原料やカレットを加熱して溶融することで形成され、必要に応じて清澄処理や撹拌処理が施されている。
【0023】
供給された溶融ガラスGmは、溝部から溢れ出して成形体21の両側面212に沿って流下し、成形体21の下端部213で融合する。これにより、板状のガラスリボンGrが成形される。ガラスリボンGrの両縁部は、4個で1組のエッジローラ22により表裏から挟持されながら冷却される。これにより、ガラスリボンGrは、幅方向の収縮が最小限に抑えられる。
【0024】
徐冷炉3は、炉壁11で囲まれた空間であり、複数対の引張ローラ31を備える。複数の引張ローラ31はガラスリボンGrの長手方向に沿って配置され、ガラスリボンGrが表面張力等で幅方向に収縮しないよう、幅方向に引っ張りながら下方に牽引する。また徐冷炉3内は、図示しないヒータによって所定の温度勾配となるように設定されている。徐冷炉3内を移送されるに従ってガラスリボンGrの温度は徐々に低下し、歪点以下の温度に徐冷される。これによりガラスリボンGr内部に意図しない熱歪が発生するのを抑制できる。
【0025】
引張ローラ31は、セラミック繊維と結合材を含む無機材料から作製されている。引張ローラ31のローラ軸は、図示しない動力源(例えばモータ)に接続され、一定の速度(周速度又は回転数)で回転するよう制御されている。本実施形態では、3対の引張ローラ31がガラスリボンGrの長手方向に沿って配置されているが、これに限定されない。ガラスリボンGrの温度や幅、移送速度、徐冷炉3の大きさ等に応じて、引張ローラ31の対数は2対以下又は4対以上であっても良い。また、引張ローラ31のローラ軸は、一定のトルクで回転するように制御されてもよい。
【0026】
冷却室4は、支持ローラ41を備え、支持ローラ41は、複数対の支持ローラ41をガラスリボンGrの長手方向に沿って並べて配置することで支持ローラ群41Aを構成する。複数対の支持ローラ41は、ガラスリボンGrの両縁部を表裏から挟持しながら下方に移送する。冷却室4は、ヒータを備えることなく、ガラスリボンGrを放冷する。ガラスリボンGrの幅は、好ましくは2000mm以上であり、より好ましくは2500mm以上であり、さらに好ましくは3000mm以上である。このようにガラスリボンGrの幅が大きい場合、ガラスリボンGrの自重が大きくなり、支持ローラ41との間で滑りが発生し易くなる。そのため、支持ローラ41がガラスリボンGrの滑りを防止する効果が顕著となる。
【0027】
図3に示すように、支持ローラ41は、ゴム製の表層部413が、金属製の芯部412を介して、金属製の軸部411に取り付けられている。表層部413は、ガラスリボンGrと接触し、本発明の支持ローラ41の表面に相当する。表層部413の材料には、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴムを採用できる。表層部413のゴムの耐熱温度は200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましい。軸部411は、図示しない動力源(例えばモータ)に接続され、一定の速度(周速度又は回転数)で回転するよう制御されている。本実施形態では、4対の支持ローラ41がガラスリボンGrの長手方向に沿って配置されているが、これに限定されない。ガラスリボンGrの温度や幅、移送速度、冷却室4の大きさ等に応じて、支持ローラ41の対数は3対以下又は5対以上であっても良い。また、支持ローラ41の軸部411は、一定のトルクで回転するように制御されてもよい。
【0028】
切断室5は、放冷されたガラスリボンGrを所定の長さ毎に幅方向に切断し、ガラス板Gを得る図示しない切断機構を有する。得られたガラス板Gは、図示しない搬送装置により、ガラス板Gの幅方向の両端を切断して除去する除去工程や各種の検査工程、梱包工程等の後続工程に搬送される。このようにしてガラス板Gが製造される。
【0029】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の冷却室4は、支持ローラ41の表面を冷却する冷却装置としての冷却ローラ42を備える。
【0030】
図4及び
図5に示すように、冷却ローラ42は、支持ローラ41の表面に当接するローラ部421と、ローラ部421を保持する軸部425と、内部に冷却液Lc(例えば水)を流通させる流路422と、を有する。ローラ部421は軸受426を介して軸部425に保持されており、支持ローラ41の回転に従って回転可能である。また、ローラ部421は、ステンレス鋼等の金属材料で作製されており、支持ローラ41の表面からローラ部421へ伝導した熱を、速やかに冷却液Lcへ伝導することができる。軸受426には、冷却液Lcの漏出を防ぐためにシール構造が設けられている。流路422は軸部425の内部に設けられた流入路423及び流出路424に接続されている。
図5に示すように軸部425の長手方向の片側に流入路423を設け、軸部425の反対側に流出路424を設けても良く、
図6に示すように軸部425の長手方向の片側を二重管構造として、片側に流入路423及び流出路424を設けても良い。冷却液Lcは、図示しない冷却液源から、流入路423を通って流路422へ供給される。流路422でローラ部421を冷却した後、冷却液Lcは流出路424を通って排出される。
【0031】
以上のようなガラス板の製造装置、及びガラス板の製造方法によれば、冷却装置(冷却ローラ42)によって支持ローラ41の表面を効率的に冷却することができるため、支持ローラ41の寿命を延ばすことができ、交換頻度を下げることで、製造コストを削減することができる。
【0032】
図1及び
図2に示すように、ガラスリボンGrの長手方向に沿って配置された支持ローラ群41Aのうちで、ガラスリボンGrの200℃以上の部位と接触する支持ローラ41には、支持ローラ41の表面に当接した状態で冷却ローラ42が設けられていることが好ましい。このような構成によれば、冷却装置の設置数量を減らすことができるため、設備費用を削減することができる。本実施形態では、複数対の支持ローラ41のうち上方から3対の支持ローラ41に冷却ローラ42を設けているが、これに限定されない。冷却室4に搬入されるガラスリボンGrの温度や移送速度に応じて、冷却ローラ42を当接させる支持ローラ41の対数は、2対以下又は4対以上であっても良い。
【0033】
本実施形態では、支持ローラ41の上方から冷却ローラ42を当接させているが、支持ローラ41の下方、側方、又は斜め方向から冷却ローラ42を当接させても良い。ガラスリボンGrが破損した際に落下するガラス片から支持ローラ41を保護する観点では、支持ローラ41の上方から冷却ローラ42を当接させることが好ましい。
【0034】
支持ローラ41の表面が劣化すると、支持ローラ41を一定速度で回転させるために必要なトルクが変化する。従って、軸部411に接続された動力源のトルクを測定し、トルクの経時変化を検出することで、支持ローラ41の表面の劣化状態を監視することが好ましい。動力源としてモータを使用した場合には、センサを用いてモータの負荷電流を測定することで、モータのトルクを測定することができる。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0036】
上記実施形態では、オーバーフローダウンドロー法によるガラス板の製造に本発明を適用した場合について説明したが、これに本発明は限定されない。スロットダウンドロー法等、ローラを用いてガラスリボンGrを牽引しながら板引成形を行う他のガラス板の製造方法にも本発明を適用することができる。
【0037】
上記実施形態では、冷媒として冷却液Lcを用いていたが、これに本発明は限定されず、冷却ガスを使用しても良い。支持ローラ41を効率良く冷却する観点では、冷却液Lcを用いることが好ましい。
【0038】
上記実施形態では、冷却ローラ42を当接させることで支持ローラ41の表面を冷却していたが、これに本発明は限定されない。
図7に示すように、支持ローラ41の表面に、冷却装置として冷却板43を当接させても良く、支持ローラ41の表面に冷却ガスGcを吹き付けるダクト44を冷却装置として用いても良い。支持ローラ41の上方から冷却板43を当接させた場合、搬送経路においてガラスリボンGrが破損した場合に落下物から支持ローラ41を保護することができる。また、冷却板43の内部に冷媒を流通させる流路を設けても良い。また、冷却装置は、冷却ローラ42、冷却板43、及びダクト44を組み合わせて構成しても良い。
【0039】
上記実施形態では、ガラスリボンGrの両縁部と接触する2個の支持ローラ41で軸部411を共通とし、その軸部411の両端を支持する形態としたが、軸部411を分割することで上述の2個の支持ローラ41それぞれに軸部411を設け、その軸部411を片持ちで支持する形態としてもよい。同様に、上記実施形態では、ガラスリボンGrの両縁部と接触する2個の引張ローラ31でローラ軸を共通とし、そのローラ軸の両端を支持する形態としたが、ローラ軸を分割することで上述の2個の引張ローラ31それぞれにローラ軸を設け、そのローラ軸を片持ちで支持する形態としてもよい
【0040】
上記実施形態では、1本の軸部411に2つの芯部412及び表層部413を設け、ガラスリボンGrの両縁部を支持しているが、これに本発明は限定されない。1本の軸部411に3つ以上の芯部412及び表層部413を設け、ガラスリボンGrの両縁部及び中間部を支持しても良い。このような構成によれば、支持ローラ41とガラスリボンGrとの間の接触面積を増やすことができるため、より小さな接触圧でガラスリボンGrを支持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、支持ローラの表面を効率的に冷却し、長寿命化を図ることで、製造コストを削減することに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 製造装置
2 成形炉
3 徐冷炉
4 冷却室
41 支持ローラ
41A 支持ローラ群
42 冷却ローラ
422 流路
5 切断室
Gr ガラスリボン
Gm 溶融ガラス
Lc 冷却液