(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161682
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】潤滑油基油及び潤滑油用組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 105/36 20060101AFI20221014BHJP
C10M 105/50 20060101ALI20221014BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20221014BHJP
C10N 40/22 20060101ALN20221014BHJP
C10N 40/24 20060101ALN20221014BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20221014BHJP
【FI】
C10M105/36
C10M105/50
C10N30:08
C10N40:22
C10N40:24
C10N40:02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066685
(22)【出願日】2021-04-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】591066362
【氏名又は名称】築野食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】築野 卓夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 弥
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BB33A
4H104CD04A
4H104LA04
4H104PA01
4H104PA22
4H104PA23
(57)【要約】
【課題】耐熱性を有する潤滑油基油及び該潤滑油基油を含む潤滑油用組成物を提供すること。好ましくは、さらに、潤滑性を有する潤滑油基油及び該潤滑油基油を含む潤滑油用組成物を提供すること。
【解決手段】下記式(1):
【化1】
(式中、各記号は明細書中で定義した通りである)
又はその塩で示される化合物を含む潤滑油基油に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
{式(1)中、
R
1及びR
2は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい飽和又は不飽和の(C
1-C
6)アルキル基、置換されていてもよい(C
1-C
6)アルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシ基を表し、R
1及びR
2はそれぞれ互いに結合して、C
3-C
12の炭素環を形成してもよく、
A及びBは、同一又は異なっていてもよく、それぞれ、置換されていてもよい(C
2-C
6)アルキレンジオキシ基を表し、
C及びDは、同一又は異なっていてもよく、それぞれ、置換されていてもよい飽和又は不飽和の(C
6-C
22)アルキル基を表す。}又はその塩で示される化合物を含む潤滑油基油。
【請求項2】
置換されていてもよい(C2-C6)アルキレンジオキシ基が、-OCH2CH2O-、-OCH(CH3)CH2O-、-OCH2CH(CH3)O-又は-OCH2CH(OH)CH2O-であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油基油。
【請求項3】
R1及びR2が、飽和又は不飽和の(C1-C6)アルキル基である、請求項1又は2に記載の潤滑油基油。
【請求項4】
R1及びR2が、メチル基である、請求項1~3いずれか1項に記載の潤滑油基油。
【請求項5】
220℃、24時間の条件下での質量減少率が9.0%以下である、請求項1~4いずれか1項に記載の潤滑油基油。
【請求項6】
ASTM D4172に従い、回転数1500rpm、温度50℃、荷重30Kgf、試験時間30分の条件下でのシェル四球摩耗試験での摩擦痕径が0.58mm以下である、請求項1~5いずれか1項に記載の潤滑油基油。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1項に記載の潤滑油基油を含む潤滑油用組成物。
【請求項8】
アルコールに脂肪酸を反応させる工程を含む、請求項1~6いずれか1項に記載の潤滑油基油又は請求項7に記載の潤滑油用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油基油及び潤滑油用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油は様々な分野で広く用いられており、その用途は、主として金属どうしの接触摺動時の接触面における摩擦、摩耗を軽減することである。潤滑油は、天然油脂、石油精製物、合成油、又はこれらの混合物を基油とし、これに添加剤を加えて使用されている。近年は、用途に合わせて多くの合成潤滑油が合成され、利用されている。その中でも、潤滑性と熱安定性に優れることから、ポリオールエステル(多価アルコールとカルボン酸の縮合エステル)、特に、ヒンダードエステルが多くの分野で利用されている。
【0003】
しかしながら、近年の産業分野の多様化及び高度化に伴い、潤滑油に要求される性能も高度なものとなってきており、過酷な使用条件に耐えうる高耐熱性の潤滑油が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、高温下での蒸発量が抑制され、かつ流動性が長時間維持される、高温用に適した潤滑油組成物が開示されている。該潤滑油組成物は、ヒンダードエステル化合物と、芳香族エステル化合物とを、質量比5:95~95:5の割合で含む混合物を、基油中に50質量%以上を含有することを特徴とする。
【0005】
特許文献2には、自動車用セラミックスガスタービン等の高温、高速回転および高減速比の潤滑条件下に耐え得る高度の耐熱、耐酸化性および耐摩耗性を有する耐熱性潤滑油組成物が開示されている。該耐熱性潤滑油組成物は、ヒンダードエステルとポリフェニルエーテルとからなる潤滑油基油に、潤滑油組成物重量に対して(a)ジアリールアミン類0.01重量%~10重量%、(b)リン酸エステル類0.5重量%~10重量%、および(c)3個~5個の芳香環を有するポリフェニルチオエーテル0.01重量%~10重量%含有することを特徴とする。
【0006】
特許文献3には、300~350℃の高温における蒸発損失が少なく、熱安定性および高温清浄性において優れ、潤滑油に必要な他の諸性状、例えば低温流動性、粘度-温度特性、耐摩耗性、添加剤の溶解性などにおいても良好な性能を有し、特にエンジンオイルとして有効な高温用潤滑油組成物が開示されている。該高温用潤滑油組成物は、(A)アルキル置換ジフェニルエーテル40~95重量%と、(B)100℃において1.5ないし10センチストークスの粘度を有する飽和ヒンダードエステル5~60重量%とからなることを特徴とする。
【0007】
特許文献4には、耐熱性および潤滑性に優れる縮合エステルを含有する潤滑油基油と、該潤滑油基油を含有する潤滑油組成物が開示されている。該潤滑油組成物は、水素原子、メチル基、又は水酸基を持ち、水酸基が2~最高4個含有する多価アルコール(A)と炭素数4以上8以下のシクロアルカンモノカルボン酸(B)の縮合エステルを含有することを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-126519号公報
【特許文献2】特開平09-125085号公報
【特許文献3】特開昭61-287986号公報
【特許文献4】特開2018-95840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、耐熱性を有する潤滑油基油及び該潤滑油基油を含む潤滑油用組成物を提供することを課題とするものである。本発明は、好ましくは、さらに、潤滑性を有する潤滑油基油及び該潤滑油基油を含む潤滑油用組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のビスフェノール骨格を有する脂肪酸エステルを含む潤滑油基油及び該潤滑油基油を含む潤滑油用組成物が、高耐熱性を有することを見出した。即ち、本発明は、以下の通りである。
【0011】
[1]下記式(1):
【0012】
【0013】
{式(1)中、
R1及びR2は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい飽和又は不飽和の(C1-C6)アルキル基、置換されていてもよい(C1-C6)アルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシ基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに結合して、C3-C12の炭素環を形成してもよく、
A及びBは、同一又は異なっていてもよく、それぞれ、置換されていてもよい(C2-C6)アルキレンジオキシ基を表し、
C及びDは、同一又は異なっていてもよく、それぞれ、置換されていてもよい飽和又は不飽和の(C6-C22)アルキル基を表す。}又はその塩で示される化合物を含む潤滑油基油。
[2]置換されていてもよい(C2-C6)アルキレンジオキシ基が、-OCH2CH2O-、-OCH(CH3)CH2O-、-OCH2CH(CH3)O-又は-OCH2CH(OH)CH2O-であることを特徴とする前記[1]に記載の潤滑油基油。
[3]R1及びR2が、飽和又は不飽和の(C1-C6)アルキル基である、前記[1]又は[2]に記載の潤滑油基油。
[4]R1及びR2が、メチル基である、前記[1]~[3]いずれか1つに記載の潤滑油基油。
[5]220℃、24時間の条件下での質量減少率が9.0%以下である、前記[1]~[4]いずれか1つに記載の潤滑油基油。
[6]ASTM D4172に従い、回転数1500rpm、温度50℃、荷重30Kgf、試験時間30分の条件下でのシェル四球摩耗試験での摩擦痕径が0.58mm以下である、前記[1]~[5]いずれか1つに記載の潤滑油基油。
[7]前記[1]~[6]いずれか1つに記載の潤滑油基油を含む潤滑油用組成物。
[8]前記[7]に記載の潤滑油用組成物を摺動部に塗布する工程を含む、摺動部の潤滑方法。
[9]アルコールに脂肪酸を反応させる工程を含む、前記[1]~[6]いずれか1つに記載の潤滑油基油又は前記[7]に記載の潤滑油用組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、耐熱性を有する潤滑油基油及び該潤滑油基油を含む潤滑油用組成物が提供される。さらに、好ましくは、潤滑性を有する潤滑油基油及び該潤滑油基油を含む潤滑油用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
潤滑油基油
本発明の潤滑油基油は、式(1):
【化1】
{式(1)中、
R
1及びR
2は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい飽和又は不飽和の(C
1-C
6)アルキル基、置換されていてもよい(C
1-C
6)アルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシ基を表し、R
1及びR
2はそれぞれ互いに結合して、C
3-C
12の炭素環を形成してもよく、
A及びBは、同一又は異なっていてもよく、それぞれ、置換されていてもよい(C
2-C
6)アルキレンジオキシ基を表し、
C及びDは、同一又は異なっていてもよく、それぞれ、置換されていてもよい飽和又は不飽和の(C
6-C
22)アルキル基を表す。}又はその塩で示される化合物を含有する。なお、本発明において、潤滑油基油は、例えば、潤滑油用組成物の主成分であって、潤滑油用組成物から添加剤を除いたものをいう。
【0016】
潤滑油用組成物
本発明の潤滑油用組成物は、例えば、潤滑油基油に添加剤を配合したものをいう。本発明の潤滑油用組成物における潤滑油基油の含有割合は、特に限定されるものではないが、例えば、組成物全量に対して、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上含有することができる。
【0017】
本発明において、「ハロゲン原子」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを示す。
【0018】
本発明において、「置換されていても良い」とは、置換されていなくても良く、また、置換され、置換基を1個以上(好ましくは、1~3個)有していても良いことを意味する。置換されている場合としては、例えば、上記式(1)に記載のR1及びR2が、(C1-C6)アルキルであって、置換可能な位置に少なくとも1個以上(好ましくは、1~3個)置換されていることを示す。置換基は、それぞれ独立に、この技術分野における通常の1又は複数の置換基で置換されていてもよく、そのような置換基としては、例えば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基、飽和又は不飽和の(C1-C6)アルキル基、(C1-C6)アルキルカルボニル基、(C1-C6)アルコキシ基、(C1-C6)アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ(C1-C6)アルキル基、(C1-C6)アルキルチオ基、(C1-C6)アルキルスルフィニル基、(C1-C6)アルキルスルホニル基、ハロ飽和又は不飽和の(C1-C6)アルキル基、ハロ(C1-C6)アルキルカルボニル基、ハロ(C1-C6)アルコキシ基、ハロ(C1-C6)アルコキシカルボニル基、ハロ(C1-C6)アルキルチオ基、ハロ(C1-C6)アルキルスルフィニル基、又はハロ(C1-C6)アルキルスルホニル基等が例として挙げられる。
【0019】
本発明において、「飽和(C1-C6)アルキル基」とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2,3-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素原子数1~6個のアルキル基又は環状の炭素原子数3~6個のアルキル基を示す。
【0020】
本発明において、「不飽和(C1-C6)アルキル基」とは、前記の飽和(C2-C6)アルキル基に対応し不飽和結合を含むものを示し、1つ若しくは複数の二重結合、及び/又は1つ若しくは複数の三重結合を有するものが挙げられ、それぞれ(C2-C6)アルケニル基、(C2-C6)アルキニル基とも表記し得る。
【0021】
本発明の飽和又は不飽和(C1-C6)アルキル基は、好ましくは、飽和(C1-C6)アルキル基であり、より好ましくは、直鎖状又は環状の(C1-C6)アルキル基であり、さらに好ましくは、直鎖状の(C1-C4)アルキル基である。
【0022】
本発明において、「(C1-C6)アルコキシ基」とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、2,3-ジメチルプロピルオキシ基、1-エチルプロピルオキシ基、1-メチルブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、1,1,2-トリメチルプロピルオキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基等の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素原子数1~6個のアルコキシ基又は環状の炭素原子数3~6個のアルコキシ基を示す。好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状の(C1-C6)アルコキシ基、より好ましくは、直鎖状の(C1-C4)アルコキシ基である。
【0023】
本発明において、「(C2-C6)アルキレンジオキシ基」とは、例えば、直鎖状若しくは分岐鎖状又は環状の炭素原子数2~6個のアルカン中の水素原子2個がオキシ基で置換された2価の基であり、例えば、水酸基を有する化合物及びエポキシドの付加重合反応により形成される。エトポシドをとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクロロヒドリンが挙げられる。これらのエトポシドを有する化合物は、単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。好ましくは、-OCH2CH2O-、-OCH(CH3)CH2O-又は-OCH2CH(CH3)O-であり、より好ましくは、-OCH(CH3)CH2O-又は-OCH2CH(CH3)O-である。置換されていてもよい(C2-C6)アルキレンジオキシ基としては、例えば、水素原子が水酸基で置換されたものが好ましく、より好ましくは水酸基を有する化合物及びエピクロロヒドリンとの付加重合反応によって形成される、-OCH2CH(OH)CH2O-である。
【0024】
本発明において、「飽和又は不飽和の(C6-C22)アルキル基」とは、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素原子数6~22個のアルキル基を示す。「不飽和(C6-C22)アルキル基」とは、飽和(C6-C22)アルキル基に対応し不飽和結合を含むものを示す。該不飽和結合の位置は特に制限はなく、1つ若しくは複数の二重結合、及び/又は1つ若しくは複数の三重結合を有するものが挙げられる。好ましくは、飽和(C6-C22)アルキル基であり、より好ましくは、飽和(C6-C17)アルキル基であり、さらに好ましくは、飽和C6アルキル基又は飽和C18アルキル基である。
【0025】
本発明の飽和又は不飽和の(C6-C22)アルキル基は、例えば、脂肪酸からカルボキシル基を除いて構成される飽和又は不飽和アルキル基が好都合に挙げられる。この場合、脂肪酸は、飽和又は不飽和の(C6-C22)アルキル基を有していれば特に限定されないが、例えば、炭素数が7個以上23個以下の脂肪酸が挙げられる。その中でも、炭素数が7個以上18個以下の脂肪酸が本発明の所望の効果を得ることのできる、粘度及び流動点を得られる点から好ましく、より好ましくは、ヘプタン酸又はイソステアリン酸である。これらの脂肪酸は、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。脂肪酸は、市販品を使用してもよく、OLERIS(登録商標) n-heptanoic acid(ヘプタン酸、アルケマ株式会社製)、ルナック8-98(カプリル酸、花王株式会社製)、ルナック10-98(カプリン酸、花王株式会社製)、キョーワノイック-N(イソノナン酸、KHネオケム株式会社製)等を使用することができる。
【0026】
「(C1-C6)アルキルカルボニル基」としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ブチルカルボニル基、イソブチルカルボニル基、sec-ブチルカルボニル基、tert-ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、イソペンチルカルボニル基、tert-ペンチルカルボニル基、ネオペンチルカルボニル基、2,3-ジメチルプロピルカルボニル基、1-エチルプロピルカルボニル基、1-メチルブチルカルボニル基、2-メチルブチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、イソヘキシルカルボニル基、2-ヘキシルカルボニル基、3-ヘキシルカルボニル基、2-メチルペンチルカルボニル基、3-メチルペンチルカルボニル基、1,1,2-トリメチルプロピルカルボニル基、3,3-ジメチルブチル基カルボニル等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1~6個のアルキル基とカルボニル基とから構成されるアルキルカルボニル基を示す。
【0027】
「(C1-C6)アルコキシカルボニル基」としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、tert-ペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、2,3-ジメチルプロピルオキシカルボニル基、1-エチルプロピルオキシカルボニル基、1-メチルブチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、イソヘキシルオキシカルボニル基、1,1,2-トリメチルプロピルオキシカルボニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1~6個のアルコキシ基とカルボニル基とから構成されるアルコキシカルボニル基を示す。
【0028】
「(C1-C6)アルキルチオ基」としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、tert-ペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、2,3-ジメチルプロピルチオ基、1-エチルプロピルチオ基、1-メチルブチルチオ基、ヘキシルチオ基、イソヘキシルチオ基、1,1,2-トリメチルプロピルチオ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1~6個のアルキルチオ基を示し、「(C1-C6)アルキルスルフィニル基」としては、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、sec-ブチルスルフィニル基、tert-ブチルスルフィニル基、ペンチルスルフィニル基、イソペンチルスルフィニル基、tert-ペンチルスルフィニル基、ネオペンチルスルフィニル基、2,3-ジメチルプロピルスルフィニル基、1-エチルプロピルスルフィニル基、1-メチルブチルスルフィニル基、ヘキシルスルフィニル基、イソヘキシルスルフィニル基、1,1,2-トリメチルプロピルスルフィニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1~6個のアルキルスルフィニル基を示し、「(C1-C6)アルキルスルホニル基」としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、sec-ブチルスルホニル基、tert-ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、イソペンチルスルホニル基、tert-ペンチルスルホニル基、ネオペンチルスルホニル基、2,3-ジメチルプロピルスルホニル基、1-エチルプロピルスルホニル基、1-メチルブチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、イソヘキシルスルホニル基、1,1,2-トリメチルプロピルスルホニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1~6個のアルキルスルホニル基を示す。
【0029】
「飽和又は不飽和の(C1-C6)アルキル基」、(C1-C6)アルキルカルボニル基、「(C1-C6)アルコキシ基」、「(C1-C6)アルキルチオ基」、「(C1-C6)アルキルスルフィニル基」、又は「(C1-C6)アルキルスルホニル基」の置換し得る位置に1又は2以上のハロゲン原子が置換されていても良く、置換されるハロゲン原子が2以上の場合は、ハロゲン原子は同一又は異なっても良い。それぞれ、「ハロ飽和又は不飽和の(C1-C6)アルキル基」、「ハロ(C1-C6)アルキルカルボニル基」、「ハロ(C1-C6)アルコキシ基」、「ハロ(C1-C6)アルコキシカルボニル基」、「ハロ(C1-C6)アルキルチオ基」、「ハロ(C1-C6)アルキルスルフィニル基」、又は「ハロ(C1-C6)アルキルスルホニル基」と示す。
【0030】
「(C1-C6)」、「(C3-C6)」、「(C6-C22)」、「C3-C12」等の表現は各種置換基の炭素原子数の範囲を示す。更に、上記置換基が連結した基についても上記定義を示すことができ、例えば、「ヒドロキシ(C1-C6)アルキル基」の場合は、ヒドロキシル基が直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~6個のアルキル基に結合していることを示す。
【0031】
本発明の潤滑油基油は、ビスフェノールAから2つの水酸基を除いた構造(-Ph-C(CH3)2-Ph-(Phは1,4-フェニレン基))で表される、ビスフェノールA骨格を有する化合物を含むことが好ましい。
【0032】
本発明において、「塩」とは、例えば、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩等が挙げられる。酸付加塩として、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩;シュウ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、アスコルビン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。金属塩として、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。アンモニウム塩として、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩が挙げられる。有機アミン付加塩として、ピペリジン等の付加塩が挙げられる。
【0033】
以下、式(1)で表される化合物の各記号について説明する。
【0034】
R1及びR2は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい飽和又は不飽和の(C1-C6)アルキル基(例えば、メチル基)、置換されていてもよい(C1-C6)アルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシ基を表し、R1及びR2はそれぞれ互いに結合して、C3-C12の炭素環を形成してもよい。C3-C12の炭素環として、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン等の、炭素数3~12の飽和又は不飽和単環化合物、ナフタレン等の縮合環化合物等が例として挙げられる。好ましくは、飽和又は不飽和の(C1-C6)アルキル基であり、より好ましくは、飽和(C1-C6)アルキル基であり、さらに好ましくは、メチル基である。
【0035】
A及びBは、同一又は異なっていてもよく、それぞれ、置換されていてもよい(C2-C6)アルキレンジオキシ基を表す。好ましくは、-OCH2CH2O-、-OCH(CH3)CH2O-、-OCH2CH(CH3)O-又は-OCH2CH(OH)CH2O-である。
【0036】
C及びDは、同一又は異なっていてもよく、それぞれ、置換されていてもよい飽和又は不飽和の(C6-C22)アルキル基を表す。好ましくは、飽和又は不飽和の(C6-C17)アルキル基であり、さらに好ましくは、ヘキシル基又はイソステアリン酸からカルボキシル基を除いて構成される基である。
【0037】
本発明の潤滑油基油の製造方法について以下に説明する。
【0038】
本発明の式(1)で示される化合物は、公知方法又は自体公知の方法によって製造されてよい。例えば、ビスフェノール類と、エポキシドを公知の方法に従って、付加重合反応させ、アルコールを調製し、更に、該アルコールと脂肪酸を、公知の方法に従ってエステル化反応させ、脂肪酸エステルを調製することにより製造することができる。エポキシドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロロヒドリン等が例として挙げられる。アルコールとしては、市販品を使用してもよい。ビスフェノール類としては、アルデヒド又はケトン1分子と、フェノール等のフェノール類2分子とが縮合した化合物を使用することができ、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールP、ビスフェノールZ等が例として挙げられ、好ましくは、ビスフェノールAである。ビスフェノール類とエポキシドの組み合わせの例としては、特に限定されるものではないが、ビスフェノールAとエチレンオキサイド、ビスフェノールAとプロピレンオキサイド、ビスフェノールAとエピクロロヒドリン等が例として挙げられる。
【0039】
本発明の潤滑油基油は、式(1)で示される化合物単独でも、式(1)で示される化合物と他の潤滑油基油とを組み合わせて含有してもよく、公知の方法、例えば混合により調製することができる。式(1)で示される化合物と他の潤滑油基油との質量比(式(1)で示される化合物:他の潤滑油基油)は、例えば、1:(0.01~1)であってもよい。
【0040】
前記アルコールの市販品としては、AE-2(2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン)、明成化学工業株式会社製)、ブラウノン BEO-3.8AE(ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、青木油脂工業株式会社製)、BPO-2.2(ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル、青木油脂工業株式会社製)、jER828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量=189g/eq、三菱ケミカル社製)等を使用することができる。
【0041】
前記ビスフェノール類とエポキシドの付加重合反応に際して、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、反応促進の観点から、通常ビスフェノール類1当量に対して、エポキシドが1~10当量が好ましく、より好ましくは、1~5当量、さらに好ましくは、2~4当量である。また、市販の製品に記載されているポリオキシエチレンの平均付加モル数は、その数値を含む一定範囲であることを意味する。例えば、平均付加モル数「2」は、「1.5~2.4」の範囲を意味する。
【0042】
本発明の潤滑油基油の製造に用いるアルコールと脂肪酸の質量比(アルコール:脂肪酸)は、特に限定されないが、1:(0.5~4.0)が好ましく、より好ましくは、1:(0.5~2.0)であり、さらに好ましくは、1:(0.8~1.5)である。
【0043】
本発明の潤滑油基油は、耐熱性確保の観点から、後述する、220℃、24時間の条件下での質量減少率が、9.8%以下であることが好ましく、より好ましくは、9.0%以下であり、さらに好ましくは、8.0%以下、6.8%以下である。220℃、24時間の条件下での質量減少率が、0%であることが最も好ましい。
【0044】
本発明の潤滑油基油は、潤滑性確保の観点から、後述する、摩耗痕径が、0.59mm未満であることが好ましく、0.58mm以下であることがより好ましい。
【0045】
本発明の潤滑油基油における動粘度は、例えば、JIS K-2283に従って測定することができる。40℃における動粘度の上限としては、3250.0mm2/s未満が好ましく、340.0mm2/s未満がより好ましく、330.0mm2/s未満がさらに好ましい。当該組成物の40℃における動粘度の下限としては、例えば10.0mm2/s以上が好ましい。
【0046】
本発明の潤滑油基油の100℃における動粘度の上限としては、80.0mm2/s未満が好ましく、75.0mm2/s未満がより好ましく、74.0mm2/s未満がさらに好ましい。当該組成物の100℃における動粘度の下限としては、例えば10.0mm2/s以上が好ましい。
【0047】
本発明の潤滑油基油における粘度指数は、特に限定されるものではないが、低温から高温まで優れた粘度特性を得る観点からは、30.0~150.0が好ましく、より好ましくは、50.0~140.0であり、さらに好ましくは、54.0~110.0である。
【0048】
本発明の潤滑油基油における水酸基価は、例えば通常の水酸基価の測定方法により求めることができるが、その他に、ガスクロマトグラフィー(GC)、ガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC-MS)等により、遊離アルコールの含有量を測定することにより求めることもできる。水酸基価としては、0~140.0mgKOH/gが好ましい。
【0049】
本発明の潤滑油基油における流動点は、例えば、JIS K-2269に従って測定することができる。流動点としては、-40.0~0℃が好ましく、-40.0~-10.0℃がより好ましく、-40.0~-20.0℃がさらに好ましい。当該組成物の流動点を上記範囲とすることで、低温環境下においてもより固化し難く、加熱用の設備が不要となる点で好ましい。
【0050】
本発明の潤滑油用組成物は、前記潤滑油基油を含有する。
【0051】
本発明の潤滑油用組成物は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で、前記潤滑油基油以外の他の成分を添加することができる。他の成分としては、例えば、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、摩耗防止剤、極圧剤、防錆剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、摩擦調整剤、消泡剤、乳化剤、抗乳化剤、色安定剤、カビ防止剤、固体潤滑剤等が挙げられる。当該成分は、添加剤としてこの技術分野で十分に確立されていることから、本発明でもそれらに従ってよい。
【0052】
前記潤滑油基油以外の他の成分の合計の含有量は、特に限定されるものではないが、組成物全量に対して、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以上、特に好ましくは20質量%以上含有することができる。
【0053】
潤滑方法
摺動部の潤滑方法において、本発明の潤滑油用組成物を、例えば金属等の摺動部に塗布する工程を含む。摺動部とは、例えば、部品同士の接触部分のことを意味する。摺動部の部品として、ギヤ、ベアリング、ワッシャー等が例示される。塗布量や塗布頻度は、使用者によって適宜選択されてよい。
【実施例0054】
以下、本発明の実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0055】
1.潤滑油基油の原料
潤滑油基油の製造に用いた原料は下記の通りである。
(アルコール)
2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン;商品名:AE-2;明成化学工業株式会社製
ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル;商品名:ブラウノン BEO-3.8AE;青木油脂工業株式会社製
ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル;商品名:BPO-2.2;青木油脂工業株式会社製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量=189g/eq);商品名:jER828;三菱ケミカル社製
ペンタエリストール;商品名:Pentaerythritol mono;パーストープ社製
ジペンタエリスリトール;商品名:Di-Penta 90;パーストープ社製
(脂肪酸)
ヘプタン酸(C7);商品名:OLERIS(登録商標) n-heptanoic acid;アルケマ株式会社製
カプリル酸(C8);商品名:ルナック8-98;花王株式会社製
カプリン酸(C10);商品名:ルナック10-98;花王株式会社製
イソノナン酸(iC9);商品名:キョーワノイック-N;KHネオケム株式会社製
イソステアリン酸(iC18);不飽和脂肪酸(ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、トール油脂肪酸、トール油脂肪酸等)の重合により副生したモノマー酸(例えば、TFA-45、築野食品工業株式会社製)中に含有される分岐脂肪酸を分離した。
【0056】
2.耐熱性の測定方法
(耐熱性の評価)
硼珪酸ガラス製で口内径φ21.5mm、胴径φ24mm、全長40mmのカップに潤滑油基油2gを投入し、220℃、24時間の条件下で加熱試験を行った。加熱前後の潤滑油基油量を測定した。加熱前の潤滑油基油量に対する蒸発量を質量減少率として(%)を算出することにより、耐熱性を評価した。蒸発量が少ないほど、耐熱性が良好であることを意味する。
【0057】
3.潤滑性(耐摩耗性)の測定方法
ASTM D4172に従い、摩擦磨耗試験機(神鋼造機株式会社製)を使用し、潤滑油基油の耐摩耗性を評価した。ボールとして、径1/2インチ(SUJ2)を用い、荷重30kgf、回転速度1500rpm、温度50℃、試験時間30分の条件下でシェル四球摩耗試験での摩耗痕径(mm)を測定して評価した。本評価においては、摩耗痕径が小さいほど、耐摩耗性に優れることを意味する。
【0058】
4.動粘度の測定方法
JISK-2283に従って、得られた潤滑油基油の動粘度を測定した。粘度指数は、JIS K2283に従って測定された粘度指数を意味する。
【0059】
5.水酸基価の測定方法
JIS K 0070に従って、得られた潤滑油基油の水酸基価を測定した。
【0060】
6.流動点の測定方法
自動流動点・曇り点試験器 mpc-6形(田中科学機器製作株式会社製)を用いて、取扱説明書に記載の方法に従って、各種脂肪酸エステルの流動点を測定し、評価を行った。尚、この測定方法は米国規格(ASTM D6749-02(2018) 石油製品の流動点(自動エア圧力法)のための標準試験方法)に従っており、また、日本工業規格(JIS 2269:1987 原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に対応している測定方法である。具体的には、当該試験器の測定用セルに各種脂肪酸を標線まで入れ、45℃まで予備加熱した後、予期点+40℃までは4℃/分、それ以降は試験終了まで1℃/分の速度で冷却した。
【0061】
7.脂肪酸エステルの製造
上記アルコールと上記脂肪酸とを下記製造方法により、エステル化反応させて得た潤滑油基油の組成を下記表1に示す。尚、比較例1及び2は、ヒンダードエステルに該当する。
(実施例1のエステル製造法)
攪拌器、温度計及び冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、ヘプタン酸300g、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン300g、及び触媒としての酸化スズを総量に対し0.1質量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。水酸基価が1.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、エステル化粗物に対してそれぞれ0.2質量%の活性炭と活性白土を投入し、80℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、ろ過してそれらを除去し、エステル化粗物ろ過物を得た。ろ過後、過剰の脂肪酸を薄膜蒸留器にて留去して脂肪酸エステルAを得た。
(実施例2のエステル製造法)
実施例1のヘプタン酸300gをイソステアリン酸400gに変更し、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン300gを200gに変更した。それ以外は実施例1と同様の操作法で脂肪酸エステルBを得た。
(実施例3のエステル製造法)
実施例1の2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン300gをポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル350gに変更した。それ以外は実施例1と同様の操作法で脂肪酸エステルCを得た。
(実施例4のエステル製造法)
実施例1の2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン300gをポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル350gに変更した。それ以外は実施例1と同様の操作法で脂肪酸エステルDを得た。
(実施例5のエステル製造法)
実施例1のヘプタン酸300gをイソステアリン酸400gに変更し、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン300gをポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル250gに変更した。それ以外は実施例1と同様の操作法で脂肪酸エステルEを得た。
(実施例6のエステル製造法)
攪拌器、温度計及び冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、イソステアリン酸370g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂250g、及び触媒としてのベンジルトリエチルアンモニウムクロリドを総量に対し0.3質量%仕込み、窒素雰囲気下で130℃まで昇温した。130℃到達後、酸価が1.0mgKOH/g以下になるまで、エステル化反応を行った。反応終了後、エステル化粗物に対してそれぞれ0.2質量%の活性炭と活性白土を投入し、80℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、ろ過してそれらを除去し、脂肪酸エステルFを得た。
(比較例1のエステル製造法)
実施例1のヘプタン酸300gをイソステアリン酸555gに変更し、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン300gをペンタエリストール60gに変更した。それ以外は実施例1と同様の操作法で脂肪酸エステルGを得た。
(比較例2のエステル製造法)
実施例1のヘプタン酸300gをカプリル酸75g、カプリン酸25g及びイソノナン酸400g(質量%比=15:5:80)に変更し、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン300gをジペンタエリストール115gに変更した。それ以外は実施例1と同様の操作法で脂肪酸エステルHを得た。
【0062】
【0063】
8.物性の測定結果
潤滑油基油の上記各測定方法に基づく測定結果を下記表2に示す。
【0064】
【0065】
表1及び2から明らかなように、実施例1~6は、耐熱性が6.8%以下であり、比較例1及び2と比較して、耐熱性に優れた結果となった。また、摩耗痕径についても、実施例1~6は、0.58mm以下であり、比較例1及び2と比較して、潤滑性にも優れた結果となった。これらの結果を奏するメカニズムは定かでないが、脂肪酸エステルがビスフェノール骨格を有することにより、耐熱性及び潤滑性が向上すると考えられる。
本発明は、耐熱性を有する潤滑油基油及び該潤滑油基油を含む潤滑油用組成物として、有用であり得る。好ましくは、さらに、潤滑性を有する潤滑油基油及び該潤滑油基油を含む潤滑油用組成物として、有用であり得る。本発明の潤滑油用組成物は、潤滑油として好適に用いることができ、例えば、金属加工油、圧延油、金属切削油等として有用である。また、本発明の潤滑油用組成物は、回転摺動、面摺動、スライド摺動などの摺動部へ使用することができる。
ASTM D4172に従い、回転数1500rpm、温度50℃、荷重30Kgf、試験時間30分の条件下でのシェル四球摩耗試験での摩擦痕径が0.58mm以下である、請求項1~3いずれか1項に記載の潤滑油基油。