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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161693
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】芯材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/32 20060101AFI20221014BHJP
   A47C 27/15 20060101ALI20221014BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20221014BHJP
【FI】
B32B5/32
A47C27/15 A
B60N2/90
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066701
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】久松 功昇
(72)【発明者】
【氏名】橋本 圭一
【テーマコード(参考)】
3B087
3B096
4F100
【Fターム(参考)】
3B087DE05
3B096AB07
3B096AD07
4F100AK01A
4F100AK07A
4F100AK51B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DE01A
4F100DJ01A
4F100DJ01B
4F100GB32
4F100JA13A
4F100JB16A
4F100JK04A
4F100JK06
4F100JL04
4F100YY00A
(57)【要約】      (修正有)
【課題】芯材と、これに積層されるポリウレタンフォームとを備える積層体に用いられる当該芯材に関し、積層体の製造時の寸法安定性を改善し、積層体の解体時にポリウレタンフォームとの分離が容易である芯材を提供する。
【解決手段】芯材100Cは、発泡粒子成形体100が、貫通孔を有する発泡粒子が相互に融着してなる成形体であり、発泡粒子成形体の平均空隙率が10%以上25%以下であり、発泡粒子成形体の表面において、発泡粒子成形体の表面積に対する、発泡粒子の貫通孔部分14の開口面積の合計の割合が2%以上5%以下であり、発泡粒子の貫通孔部分の平均開口面積が5mm以上20mm以下であり、発泡粒子の貫通孔部分の個数の合計に対する、開口面積2mm以上の貫通孔部分の個数の合計の割合が60%以下となるよう構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂発泡粒子成形体からなる芯材にポリウレタンフォームが積層されてなる積層体に用いられる芯材であって、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体は、貫通孔を有する発泡粒子が相互に融着してなる成形体であり、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の平均空隙率が10%以上25%以下であり、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の表面において、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の表面積に対する、前記発泡粒子の貫通孔部分の開口面積の合計の割合が2%以上5%以下であり、
前記発泡粒子の貫通孔部分の平均開口面積が5mm以上20mm以下であり、
前記発泡粒子の貫通孔部分の個数の合計に対する、開口面積2mm以上の貫通孔部分の個数の合計の割合が60%以下であることを特徴とする芯材。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の表層部の空隙率が10%以上20%以下であり、前記平均空隙率に対する前記表層部の空隙率の比が1.0以上1.2以下である請求項1に記載の芯材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の成形体密度が15kg/m以上50kg/m以下である請求項1または2に記載の芯材。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体を構成する発泡粒子が、発泡芯層と前記発泡芯層を被覆する被覆層とを有する多層発泡粒子である請求項1から3のいずれか一項に記載の芯材。
【請求項5】
前記発泡芯層の基材樹脂が曲げ弾性率1200MPa以下のポリプロピレン系樹脂である、請求項4に記載の芯材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体からなる芯材にポリウレタンフォームが積層されてなる積層体に用いられる芯材に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡粒子成形体は、種々の用途に用いられており、たとえば近年は自動車内外装品の材料として注目されている。具体的には、上記自動車内外装品として、たとえば車両の床面とカーペットとの間に配置され衝突時などに乗員の足への衝撃を緩和するためのティビアパット、車両用ラゲッジボックス、車両用シート芯材などが例示される。
特に近年は、クッション性に優れるとともに軽量性の改善された複合的な特性を発揮させるために、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体または熱可塑性樹脂発泡粒子成形体にポリウレタンフォームが積層された積層体が提案されている(例えば下記特許文献1、2)。かかる積層体では、表面側に配置されたウレタンフォーム層が良好なクッション性を発揮するとともに、当該ポリウレタンフォーム層よりも相対的に密度が低い発泡粒子成形体である芯材が当該積層体の軽量化を実現していた。
【0003】
このような積層体では、芯材とポリウレタンフォーム層との接着強度が必ずしも十分ではなく、互いが剥離することによる使用感の低下などの課題があった。そこで、特許文献1、2では、芯材に用いる発泡粒子成形体を、貫通孔を有する発泡粒子で構成し、これに積層されるポリウレタンフォームの一部を当該発泡粒子からなる発泡粒子成形体の表面側の空隙に侵入させて発泡させることで、芯材とウレタンフォーム層の接合強度を十分に向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-155146
【特許文献2】特開2017-035378
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし従来の発泡粒子成形体からなる芯材とこれに積層されるポリウレタンフォーム層とを備える積層体は以下の問題を有していた。
即ち、昨今の環境問題に対する社会的要請に応えるため、材料のリサイクル化が進められている。材料のリサイクル化は、一つの製品または一つの部品を同種の材料ごとに解体し、それぞれの材料ごとで再利用されることが一般的である。そのため、芯材とこれに積層されるポリウレタンフォーム層とからなる積層体も、再利用するためには芯材とポリウレタンフォーム層とを分離させる必要がある。
ところが、特許文献1、2のように発泡粒子成形体とウレタンフォーム層との接合強度が十分に向上された積層体は、これらを分離することが容易ではない場合があった。
【0006】
また、芯材とこれに積層されるポリウレタンフォーム層とからなる積層体を一体成形する際には、積層体を一体成形した後に金型から前記積層体を離型すると、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体部分が膨張してしまい、寸法安定性が不十分になるというという新たな課題も確認された。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、芯材と、これに積層されるポリウレタンフォームとを備える積層体に用いられる当該芯材に関し、積層体の製造時の寸法安定性を改善し、かつ、積層体の解体時にポリウレタンフォームとの分離が容易である芯材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の芯材は、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体からなる芯材にポリウレタンフォームが積層されてなる積層体に用いられる上記芯材であって、上記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体は、貫通孔を有する発泡粒子が相互に融着してなる成形体であり、上記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の平均空隙率が10%以上25%以下であり、上記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の表面において、上記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の表面積に対する、上記発泡粒子の貫通孔部分の開口面積の合計の割合が2%以上5%以下であり、上記発泡粒子の貫通孔部分の平均開口面積が5mm以上20mm以下であり、上記発泡粒子の貫通孔部分の個数の合計に対する、開口面積2mm以上の貫通孔部分の個数の合計の割合が60%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上述する構成を備える本発明の芯材は、ポリウレタンフォームとともに積層体を構成する部材として用いられた場合、積層体の製造時における寸法安定性を改善し、寸法精度の優れた積層体の提供を可能とする。
これに加え、本発明の芯材は、ポリウレタンフォームとともに積層体を構成した場合、芯材とウレタンフォームとの剥離強度を適度に小さく抑えることが可能である。そのため、廃棄時におけるポリウレタンフォームと芯材との分離が容易である。したがって、本発明の芯材は、昨今の環境問題に対応し積層体のリサイクル化を推進可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態である芯材の表面を説明する写真である。
図2図1に示す写真と同じ写真であり、本発明の一実施形態である芯材の表面を説明する写真である。
図3】芯材である熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の型内成形を説明する説明図である。
図4】(4A)から(4C)は、従来の積層体の問題点を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の芯材について説明する。説明には適宜図面を使用する。
図1は、本発明の一実施形態である芯材100Cの表面を説明する写真であり、特に芯材100Cの表面において観察される凹部10のうちボイド部分12を黒く塗りつぶして視認容易としている。図2は、図1に示す写真と同じ写真であり、芯材100Cの表面を説明する写真であり、特に芯材100Cの表面において観察される凹部10のうち貫通孔部分14を黒く塗りつぶして視認容易としている。
図3は、芯材である熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の型内成形を説明する説明図である。図3には、拡大されるとともに貫通孔22の開口方向dと直交する方向に切断してなる断面を有する発泡粒子20の一例の斜視図を付している。図4Aから図4Cは、従来の積層体400の問題点を説明する説明図である。図4Aは芯材となる熱可塑性樹脂発泡粒子成形体410の縦断面図であり、図4Bは積層体を形成するための図示省略する成形型のキャビティに熱可塑性樹脂発泡粒子成形体410がセットされるとともに、当該キャビティの残余の空間にポリウレタンフォーム原料が充填され発泡させることでポリウレタンフォーム420が熱可塑性樹脂発泡粒子成形体410に積層された状態を示している。図4Cは成形型から取り出された積層体400の縦断面図である。
【0012】
本発明の芯材100Cは、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体100(以下、発泡粒子成形体100ともいう)からなる。発泡粒子成形体100は、貫通孔22を有する発泡粒子20(図3参照)が相互に融着してなる成形体である。本発明の芯材100Cは、ポリウレタンフォームが積層されることで、積層体を形成する。上記積層体は、例えば、車両用の座席、シートバック、シートクッション等として用いられるものであり、上記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体100はその芯材としても用いられることが好ましく、さらに好ましくは、車両用の座席芯材として用いられることが好ましい。芯材100Cは、発泡粒子成形体からなるものであるが、その一部にフレーム材などのワイヤー材などが埋設されていてもよい。
【0013】
本発明において、発泡粒子成形体100の平均空隙率は、10%以上25%以下である。たとえば、発泡粒子成形体100の表面には、発泡粒子20の貫通孔部分14(図2参照)に加え、発泡粒子20間のボイド部分12(図1参照)である複数の凹部10が形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の芯材100Cを構成する発泡粒子成形体100の表面は、発泡粒子成形体100の表面積に対する、貫通孔部分14の開口面積の合計の割合が2%以上5%以下であり、発泡粒子20の貫通孔部分14の平均開口面積が5mm以上20mm以下であり、かつ、発泡粒子20の貫通孔部分14の個数の合計に対する、開口面積2mm以上の貫通孔部分14の個数の合計の割合が60%以下である。
なお、発泡粒子成形体100の表面とは、特に断りがない場合には、積層体を構成する際にポリウレタンフォームと接触が予定される面を指す。
【0015】
上述のとおり構成される芯材100Cを、ポリウレタンフォームとともに構成される積層体の芯材として用いた場合、一体成形時における積層体の寸法変化が良好に改善されるとともに、廃棄時等における芯材100Cとこれに積層されたポリウレタンフォームとの解体が容易である。つまり本発明は、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体と、これに積層されたポリウレタンフォームとを備え、寸法安定性に優れるとともにリサイクルにも適した積層体の提供を可能とする。
【0016】
尚、本発明に関するいくつかの用語は、以下のとおり定義される。
発泡粒子成形体100の表面に形成された凹部10とは、貫通孔22を有する発泡粒子20によって形成される貫通孔部分14と、複数の発泡粒子20同士が融着する際に形成されるボイド部分12とからなる。ボイド部分12とは、具体的には、発泡粒子20同士が融着する際の互いの界面に形成される凹み部分をいう。なお、発泡粒子成形体100の表面には、これらの凹みの他に、金型の形状や金型のスチーム穴によって凹みが形成される場合があるが、これらの凹みは凹部10には含まない。
【0017】
[熱可塑性樹脂発泡粒子成形体]
芯材100Cを構成する熱可塑性樹脂発泡粒子成形体100は、貫通孔22を有する発泡粒子20が相互に融着することで構成される。かかる発泡粒子成形体100は、発泡粒子成形体100の内部に貫通孔22に由来する隙間が形成されている。また発泡粒子成形体100の表面には、当該表面に露出する貫通孔22に由来する貫通孔部分14が存在する。発泡粒子成形体100の表面に、特定の形状(特定範囲の面積)の貫通孔部分14が形成されていることにより、ポリウレタンフォームとの実用に耐え得る接着性が、発揮される。
【0018】
ここで、図4を用い、従来の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体410(以下、発泡粒子成形体410ともいう)と、これに積層されたポリウレタンフォーム420とからなる積層体400を一体成形する際の問題点について説明する。
図4Aに示す従来の発泡粒子成形体410を準備し、これを図4Bに示すとおり芯材410Cとして用い、図示省略する成形型のキャビティに設置する。そしてキャビティの残余の部分にポリウレタンフォーム原料を充填して発泡させることでポリウレタンフォーム420を芯材410Cに積層させる。このとき、キャビティに設置された発泡粒子成形体410はウレタンの発泡圧により圧縮され、元のサイズS1よりも小さくなり、その分、ポリウレタンフォーム420が占める空間比率が大きくなる。次いでウレタン発泡終了後、成形型から積層体400を取り出す。成形型による寸法規制がなくなったことで、図4Cに示すとおり、成形型内で圧縮されてもとのサイズよりも小さいサイズS2になっていた発泡粒子成形体410が元のサイズまたは元のサイズに近いサイズに戻り、これに連動して積層されたポリウレタンフォーム420も外側に拡張する。その結果、積層体400の外寸が、設計サイズS3(成形型のキャビティの外周面により示されるサイズ)よりも大きくなり寸法安定性に欠けるものとなると考えられた。
【0019】
かかる寸法安定性は、発泡粒子成形体100を構成する発泡粒子として貫通孔22を有する発泡粒子20を用いて成形されており、且つ発泡粒子成形体100の平均空隙率が10%以上25%以下であることで緩和されると考えられる。これは、上述するとおり、発泡粒子成形体100は、内部に貫通孔22に由来する隙間を有するため、ポリウレタンフォーム形成時の発泡圧を、当該隙間を通じて逃すことができ、この結果、図4Bのように発泡粒子成形体410が圧縮することを防止しうるものと思われる。
平均空隙率が10%未満であると、積層体の作製時、ウレタン発泡のための発泡圧を十分に逃すことができず、芯材100Cとして用いた発泡粒子成形体100の収縮が大きくなり、結果として得られる積層体の寸法安定性が十分でない場合がある。一方、平均空隙率が25%を超えた場合、ウレタン発泡のための発泡圧は十分に逃すことができるが、発泡粒子成形体100とウレタンフォームとの接着性が著しく強くなりリサイクル性に欠ける積層体となる可能性がある。尚、本明細書において、ウレタン発泡のための発泡圧とは、ウレタンが成形型の内部で発泡することにより成形型内の空間が狭まって、成形型内の内部の空気が圧縮されたことにより生じる圧力を意味する。なお、上記平均空隙率により測定される空隙としては、発泡粒子成形体内における、発泡粒子間に形成される空隙と、発泡粒子の貫通孔により形成される空隙とがある。
【0020】
本発明に関し、発泡粒子成形体100の平均空隙率とは、所定形状の発泡粒子成形体100全体の空隙率を指す。
発泡粒子成形体の平均空隙率は、下記式(1)を用いて算出される値である。
[数1]
空隙率(体積%)=〔(X-Y)/X〕×100・・・・・(1)
ここで、Xは発泡粒子成形体の見掛け体積(cm)、Yは発泡粒子成形体の真の体積(cm)である。見掛け体積Xは発泡成形体の外形寸法から算出される体積である。真の体積Yは発泡成形体の空隙部を除いた実質体積であり、発泡成形体を液体(例えばアルコール)中に沈めた時の増量した液体の体積を測定することによって求めることができる。 なお、平均空隙率の測定は、芯材(発泡粒子成形体)から無作為に選択して切り出した20mm×20mm×100mmのサンプル(発泡粒子成形体の表皮スキン部分を除く)を、10点以上測定し、その平均から得ることができる。
【0021】
発泡粒子成形体100の表層部の空隙率は、ポリウレタンフォームとの接着性の観点から10%以上20%以下であることが好ましく、12%以上19%以下であることがより好ましく、13%以上18%以下であることがさらに好ましい。
ウレタン発泡時の発泡圧を十分に逃して良好な寸法安定性を実現するとともにリサイクル時の芯材とポリウレタンフォームとの剥離を容易なものとするという観点から、発泡粒子成形体100は、上述する範囲の表層部の空隙率であって、上述する範囲の平均空隙率Qに対する表層部の空隙率Pの比(P/Q)が1.0以上1.2以下であることが好ましい。
【0022】
本発明に関し表層部の空隙率は、発泡粒子成形体100の表面側部分について、表面から深さ方向に5mmの部分からさらに深さ方向に25mmまでの部分をサンプル(20mm×20mm×100mm)として切り出し、その部分の空隙率を、上記の平均空隙率の算出方法と同様の方法で測定される。
【0023】
(発泡粒子成形体の表面積に対する、貫通孔部分の開口面積の合計の割合)
熱可塑性樹脂発泡粒子成形体100の表面積に対する、貫通孔部分14の開口面積の合計の割合は2%以上5%以下である。貫通孔部分14は発泡粒子20の内部を貫通する貫通孔22により形成されているので、貫通孔部分14の深さは発泡粒子20の大きさ(貫通孔22の開口方向dにおける長さ)に近くなる。そのためボイド部分12より、ポリウレタンフォームが貫通孔部分14の深い位置まで入り込み、発泡粒子成形体100に対するウレタンフォームのグリップ力が向上すると考えられる。貫通孔部分14の開口面積の合計の割合が上記範囲内であれば、発泡粒子成形体100とウレタンフォームとの接着を実用に耐え得るものとするとともに、リサイクル可能な接着性とすることができる。上記観点から、上述する数値範囲は、2.1%以上4%以下が好ましく、2.2%以上3.5%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
また本発明は所期の課題を解決するために、観察領域200において、発泡粒子20の貫通孔部分14の平均開口面積を5mm以上20mm以下と特定するとともに、発泡粒子20の貫通孔部分14の個数の合計R1に対する、開口面積2mm以上の貫通孔部分14の個数の合計r3の割合〔(r3/R1)×100〕が60%以下となるよう構成される。
かかる構成を備えることで、開口面積が著しく大きい貫通孔部分14が少ない芯材100Cが提供されるため、積層体としたときにポリウレタンフォームとの接着性が強くなり過ぎることが防止される。上記観点から、また、貫通孔部分14の個数の合計に対する開口面積2mm以上の貫通孔部分14の個数の合計の割合は55%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、48%以下であることがさらに好ましい。
ここで貫通孔部分14の平均開口面積は、1つの観察領域200において観察された全ての貫通孔部分14の面積を1つずつ測定し、測定値の和を、観察された貫通孔部分14の数で除することで求められる。
また発泡粒子20の貫通孔部分14の個数の合計R1に対する、開口面積2mm以上の貫通孔部分14の個数の合計r3の割合は、観察領域200において、全ての貫通孔部分14の個数および開口面積2mm以上の貫通孔部分14の個数をカウントし、その割合を算出することで求められる。なお、貫通孔部分14の開口面積の上限は、概ね30mmである。
また、同様にして算出される、発泡粒子20の貫通孔部分14の個数の合計R1に対する、開口面積0mm超1mm未満の貫通孔部分14の個数の合計r1の割合は、50%以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、発泡粒子成形体100とウレタンフォームとの接着強度を、実用性を有しリサイクル可能な範囲とすることができる。上記観点から、上述する開口面積0mm超1mm未満の貫通孔部分14の個数の合計r1の割合は、10%以上40%以下であることがより好ましく、15%以上35%以下であることがさらに好ましい。
さらには、上記観点から、貫通孔部分14の平均開口面積は、8mm以上18mm以下であることが好ましく、10mm以上16mm以下であることがさらに好ましい。
【0025】
(発泡粒子成形体の表面における凹部)
図1、2に示すとおり、発泡粒子成形体100の表面には、発泡粒子20の貫通孔部分14および発泡粒子20間に形成されたボイド部分12である複数の凹部10が形成されていることが好ましい。図1、2は、発泡粒子成形体100において確定された観察領域200における凹部10を示しており、理解容易のために、図1では凹部10のうち、ボイド部分12の一部を黒く塗りつぶし、図2では凹部10のうち、貫通孔部分14を黒く塗りつぶしている。
これらの凹部10が特定の範囲の割合で貫通孔部分14とボイド部分12により形成されて表面に存在することにより、ウレタン発泡時にポリウレタンフォームがそれぞれ異なる凹部10に入り込み、ポリウレタンフォームと発泡粒子成形体100とが良好に接着される。
図1、2に示す本発明の一例では、形状の異なる、貫通孔部分14とボイド部分12からなる凹部10が形成されていることにより、かかる接着の程度を、十分に実用に耐えうる範囲とし、かつリサイクル時にはポリウレタンフォームと発泡粒子成形体100とを容易に剥離できる程度に強くなり過ぎないようにすることができる。かかる調整は具体的には、以下のとおり行うことができる。
【0026】
(発泡粒子成形体の表面積に対する凹部の開口面積の合計の割合)
本発明では、観察領域200において、発泡粒子成形体100の表面積に対する、凹部10の開口面積の合計Tの割合が10%以上35%以下であることが好ましい。かかる範囲に調整することによって、発泡粒子成形体100を積層体の芯材100Cとして用いたとき、製造時の寸法安定性に優れ、かつリサイクル時における発泡粒子成形体100とウレタンフォームとの剥離が容易な積層体を提供しやすい。
かかる観点からは、上述する凹部10の開口面積の合計Tの割合は、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。
一方、上記凹部10の開口面積の合計Tの割合が35%を超えると、積層体において発泡粒子成形体100とウレタンフォームとの接着が強くなり過ぎ、リサイクル時に剥離性が悪くなる場合がある。かかる観点からは、上述する凹部10の開口面積の合計Tの割合は、30%以下であることがより好ましい。
ここで、観察領域200において観察される発泡粒子成形体100の表面積とは、上面視における観察領域200の平面の面積である。換言すると、上記表面積は、観察領域200における表面の凹凸に沿った面積ではない。
【0027】
(凹部の平均開口面積)
観察領域200において、発泡粒子20の凹部10の平均開口面積は、1mm以上5mm以下とすることが好ましく、1.2mm以上3mm以下とすることがより好ましく、1.5mm以上2mm以下とすることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、発泡粒子成形体とウレタンフォームとの接着性は実用性とリサイクル性のバランスに優れるものとなる。
【0028】
(凹部の開口面積の合計に対する、発泡粒子の貫通孔部分の開口面積の合計の比)
また、本発明では、観察領域200において、凹部10の開口面積の合計Tに対する、発泡粒子20の貫通孔部分14の開口面積の合計t1の比(t1/T)が0.05以上0.3以下であることが好ましい。このように貫通孔部分14の開口面積の合計t1が、所定の範囲でボイド部分12の開口面積の合計よりも少なくなるよう調整されることによって、積層体において、芯材100Cとウレタンフォームとが、実用に耐えうる程度に接着するとともに、リサイクル時には容易に剥離可能となる。かかる観点からは、上述する開口面積の合計の比(t1/T)が、0.08%以上0.25%以下であることがより好ましく、0.1%以上0.2%以下であることがさらに好ましい。
また、凹部の開口面積の合計Tに対する、発泡粒子20の貫通孔部分14の開口面積の合計t1の比(t1/T)が0.05以上0.3以下であり、かつ発泡粒子成形体100の表面積に対する、凹部10の開口面積の合計Tの割合が10%以上35%以下であることが特に好ましい。
【0029】
(発泡粒子成形体の表面積に対するボイド部分の開口面積の合計の割合)
発泡粒子成形体100の表面積に対する、ボイド部分12の開口面積の合計の割合は15%以上30%以下であることが好ましく、18%以上28%以下であることがさらに好ましい。
また、観察領域200において、発泡粒子20のボイド部分12の個数の合計R2に対する、開口面積2mm以上のボイド部分12の個数の合計r6の割合が20%以上40%以下であることが好ましく、25%以上35%以下であることがより好ましい。
さらに、同様にして算出される、発泡粒子20のボイド部分12の個数の合計R2に対する、開口面積0mm超1mm未満のボイド部分12の個数の合計r4の割合は、60%以上80%以下であることが好ましく、62%以上70%以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、発泡粒子成形体100とウレタンフォームとの接着強度を、実用性を有し、十分にリサイクル可能な範囲とすることができる。
【0030】
寸法安定性がより良好で、かつリサイクル時に芯材100Cとポリウレタンフォームとを剥離し易いという観点からは、観察領域200において、凹部10の平均開口面積が1.5mm以上2.0mm以下あることが好ましく、1.6mm以上1.9mm以下であることがより好ましい。
凹部10の平均開口面積は、観察領域200において、全ての貫通孔部分14の面積および全てのボイド部分12の開口面積を測定してその和をもとめ、測定された全ての貫通孔部分14および全てのボイド部分12の個数で除して個別の凹部10の平均開口面積を求めることで得られる。
【0031】
(貫通孔部分、ボイド部分、又は凹部の面積測定方法)
凹部10は、発泡粒子成形体100の表面において、平坦部分から無作為に決定された観察領域200(たとえば25mm×25mmの矩形領域)において、光学式非接触測定機(VR3200、株式会社キーエンス)で深さ分布を測定し、深さ方向の基準線から0.5mm深い部分の断面積の拡大写真を撮影する。上記拡大写真を市販のスキャナー装置で画像データ化する。次に、画像データ化された拡大写真の画像にモノトーン化処理を施してモノトーン画像を調整し、ボイド部分12を有色(例えば黒色)に表示する。尚、モノトーン化処理は、例えば、画像データ化された拡大写真を画像解析ソフト(NS2K-Pro、ナノシステム株式会社製)を用いて実施することができる。モノトーン化処理され画像データに基づき、黒色など有色で表れている部分の面積を算出することにより、ボイド部分12の面積測定を行う。また、画像データ化された拡大写真の画像にモノトーン化処理を施してモノトーン画像を調整し、貫通孔部分14を有色に表示したこと以外は、上述と同様に作業を行い、貫通孔部分14の面積測定を行う。ボイド部分12に関する測定値、および貫通孔部分14に関する測定値を適宜に使用することによって凹部10に関する測定値を算出することができる。
尚、凹部10の面積測定は、上記測定を、同様にして決定された10個の観察領域で実施し、各観察領域で得られた値を算術平均することにより行うことができる。
【0032】
(発泡粒子成形体の成形体密度)
上述する発泡粒子成形体100の成形体密度は特に限定されないが、軽量性と剛性等の機械的物性とのバランスに優れるという観点からは、15kg/m以上50kg/m以下であることが好ましく、20kg/m以上40kg/m以下であることがより好ましい。
なお、発泡粒子成形体100の成形体密度は、発泡粒子成形体100の重量を発泡粒子成形体100の外形寸法から算出される見掛けの体積で除することにより求められる値である。
【0033】
(発泡粒子成形体の通気量)
本発明において、発泡粒子成形体100の通気量は特に限定されないが、より良好な寸法安定性を示す積層体を提供可能であるという観点からは、発泡粒子成形体100の通気量は270L/min以上330L/min以下であることが好ましく、280L/min以上310L/min以下であることがより好ましい。
【0034】
上記通気量は、以下のとおり測定される。まず、得られた発泡粒子成形体から、表皮部分(スキン層を除く)を直径100mm×厚み20mmの寸法に切削し、これをサンプルとする。このサンプルを、JIS K6400-7A法(正圧系):2012に準拠して、レギュレーター、流量計(入り口側)、圧力計(入り口側)、サンプル固定具、圧力計(出口側)、流量計(出口側)のようにして組み立てられた、通気量測定用の装置にセットする。上記装置にセットされたサンプルに対し、入り口側から0.6MPaのエアーを吹き込み、通気量を入り口側の流量計から、JIS K6400-7A法:2012に基づいて測定する。なお、サンプルは、開放系として測定を行う。
【0035】
(本発明の構成の調整方法)
本発明において特定される貫通孔部分14の面積、および発泡粒子成形体100の空隙率は、例えば、貫通孔22を有する発泡粒子20の作製に用いられる樹脂粒子の作製において、ダイス内径の大きさを調整して、発泡粒子20の貫通孔部分14の開口面積を調整し、あるいは上記樹脂粒子を構成する熱可塑性樹脂の曲げ弾性率を適切なものとして発泡粒子20の成形時の2次発泡性を調整することで調整することが可能である。また下記のようなクラッキング成形を行うことによって貫通孔部分14の面積、および発泡粒子成形体100の空隙率を本発明において特定される範囲内とすることもできる。
なお、本発明において、芯材100Cを構成する発泡粒子20の貫通孔22の孔径の調整や発泡粒子成形体100のクラッキング成形の条件の変更、芯材100Cを構成する発泡粒子20を構成する樹脂の変更によって、発泡粒子成形体100を構成する発泡粒子20の貫通孔22を、ウレタンフォームの積層に適する特定の形状とすることができることを見出したものであるが、貫通孔22の形成方法(調整方法)についてはこれに限定されるものではない。本発明の特定する望ましい構成を備える発泡粒子成形体100を得るために、下記の制御方法を参考にして、予め予備実験において適切な成形条件を決定することができる。また、貫通孔部分22だけでなく、ボイド部分12や凹部10も、同様に、芯材100Cを構成する発泡粒子20を用いた型内成形時のクラッキング成形の条件の変更、芯材100Cを構成する発泡粒子20を構成する樹脂の変更などによって、特定の形状とすることができる。
【0036】
発泡粒子成形体100を作製する場合、一般的には、図3に示すように雄型320及び雌型330一対の成形型300を用いて型内成形が実施される。型内成形時において、キャビティ310に充填口340から発泡粒子20を充填する際、雄型320および雌型330の対向面を所定の間隔(クラッキング350)だけ開いておく。たとえば板状の発泡粒子成形体100を作製する場合には、発泡粒子成形体100の厚み方向においてクラッキング350を確保する。そして、発泡粒子20の充填が終了してから、雄型320および雌型330の対向面を当接させて型締めし(つまりクラッキング350をゼロにし)、型内成形するとよい。クラッキング350の量が多くなるほど、型締めすることで発泡粒子20は潰されるので、貫通孔22も小さくなるとともに、発泡粒子20間における隙間(ボイド)も小さくなる傾向にあり、得られた発泡粒子成形体100の平均空隙率および凹部10の開口面積が小さくなるよう調整可能である。
【0037】
また別の手段としては、発泡粒子成形体100を型内成形する際のスチーム圧を調整してもよい。たとえばスチーム圧を高くすることで発泡粒子20を成形型内で十分に2次発泡させ、この結果、貫通孔22が小さくなるとともに、発泡粒子20同士の隙間(ボイド)が小さくなるよう調整可能である。このようにして、貫通孔部分14の形状や面積、凹部10の開口面積を調整することができる。
【0038】
また別の手段として、発泡粒子20を加圧可能な密閉容器に貯留し、空気などの気体を該密閉容器内に圧入することにより加圧処理をして発泡粒子20の気泡内の内圧を高める操作を行う。このように内圧の高められた発泡粒子20を型内成形に用い発泡粒子20を成形型内で十分に2次発泡させることで、上述と同様に凹部10の開口面積を調整することができる。
【0039】
(発泡粒子)
次に上述する発泡粒子成形体100の形成に用いる貫通孔22を有する発泡粒子20について説明する。
発泡粒子20を構成する基材樹脂は、熱可塑性樹脂であればあらゆるものを使用することができる。例えば、エチレン-プロピレンコポリマー、プロピレン-ブテンコポリマー、エチレン-プロピレン-ブテンターポリマー、ホモポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-メチルメタクリレートコポリマー、エチレン-メタクリル酸コポリマーの分子間を金属イオンで架橋したアイオノマー系樹脂などのポリエチレン系樹脂やポリブテン、ポリペンテンなどのうちの1種または2種以上を例示することができる。なかでも、発泡成形体の圧縮後の回復性が良好である点で、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレンコポリマー、プロピレン-ブテンコポリマー、エチレン-プロピレン-ブテンターポリマーなどが好ましい。なお、コポリマー及びターポリマーは、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体がより好ましい。
上述する熱可塑性樹脂は、無架橋の状態のものでもよいが、パーオキサイドや放射線などにより架橋させていてもよい。しかしながら、生産工程数、リサイクル性の面で無架橋のものが好ましい。
なお、発泡粒子が後述する多層発泡粒子である場合には、その発泡芯層を構成する基材樹脂が、上記樹脂であることが好ましい。
【0040】
発泡粒子20を構成する基材樹脂において、熱可塑性樹脂の配合割合は50重量%を超えることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、100重量%であることが特に好ましい。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、基材樹脂には熱可塑性樹脂と共に熱可塑性樹脂以外の樹脂やエラストマー等のその他の材料が含まれていてもよい。
【0041】
発泡粒子20がポリプロピレン系樹脂発泡粒子である場合、当該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子に含まれるポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率は1200MPa以下であることが好ましく、1100MPa以下であることがより好ましく、1000MPa以下であることがさらに好ましい。また、その下限は700MPa以上であることが好ましく、800MPa以上であることがより好ましい。上記範囲内であれば、これらの樹脂を用いて型内成形する際、スチーム圧やクラッキング350の量を調整することにより、発泡粒子20の貫通孔22の孔径を良好に制御可能となるので、本発明の各構成を所望の範囲により調整しやすくなる。
尚、発泡粒子20がポリプロピレン系樹脂発泡粒子であるとは、発泡粒子20を構成する熱可塑性樹脂100重量%においてポリプロピレン系樹脂が50重量%を超えて含まれることを意味する。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子としては、熱可塑性樹脂100重量%においてポリプロピレン系樹脂が70重量%以上含まれることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、100重量%であることがさらに好ましい。
上記樹脂の曲げ弾性率は、JIS K7171:2008に基づき、射出成形にて試験片(試験片寸法;長さ80mm、幅10mm、厚さ4mm)を作製して、求めることができる。なお、発泡粒子20が後述する芯層と被覆層とを備える多層構造である場合には、芯層を構成する樹脂の曲げ弾性率が上記範囲を満足すればよい。
【0042】
また発泡粒子20は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、基材樹脂に、その他の添加剤が添加されていてもよい。その他の添加剤としては、黒、灰色、茶色等の着色顔料又は染料、難燃剤、難燃助剤、気泡調整剤、触媒中和剤、滑剤、結晶核剤、帯電防止剤等が例示される。
【0043】
貫通孔22を有する発泡粒子20には、例えば、筒状であって、(a)外周形状、中空部の形状がともに円形であるもの、(b)外周形状、中空部の形状ともに多角形であるもの、(c)外周形状が円形で中空部の形状が多角形であるもの、(d)外周形状が多角形で中空部の形状が円形であるもの、(e)上記(a)~(d)をその外周において互いに接合させた形状であるものなどが含まれる。
【0044】
筒状の発泡粒子20の外形や貫通孔22を構成する中空部の寸法などは適宜設計することができる。例えば、図3において拡大された貫通孔22を有する筒状の発泡粒子20のように、外周形状、中空部の形状がともに円形であるものの場合を例にとると、筒状の発泡粒子20の外径は2~6mm、内径は、1~3mm、長さは2~6mmであり、貫通孔22の長さは2~6mmであることが好ましい。
【0045】
発泡粒子成形体100を構成する、貫通孔22を有する発泡粒子20は、外表面から内表面まで一層で構成された単層構造であってもよく、また図3において拡大された筒状の発泡粒子20のように発泡芯層24と発泡芯層24を被覆する被覆層26とを有して構成された多層構造の発泡粒子(多層発泡粒子)であってもよい。発泡芯層24と被覆層26との間には異なる任意の層が配置されてもよい。また発泡芯層24は、発泡樹脂よりなる層である一方、被覆層26は、非発泡の樹脂よりなる層であってもよいし発泡樹脂よりなる層であってもよい。多層構造の発泡粒子20を構成する各層を構成する樹脂は、同種の樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよく、発泡粒子20を構成する基材樹脂として上述に説明した熱可塑性樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
発泡芯層24の基材樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であって、その曲げ弾性率は1200MPa以下であることが好ましく、1100MPa以下であることがより好ましく、1000MPa以下であることがさらに好ましい。また、上記曲げ弾性率の下限は700MPa以上であることが好ましく、800MPa以上であることがより好ましい。発泡芯層24の基材樹脂が上記曲げ弾性率の範囲内であれば、型内成形する際、スチーム圧やクラッキング350の量を調整することにより、発泡粒子20(多層発泡粒子)の貫通孔22の孔径を良好に制御可能となるので、本発明の各構成を所望の範囲に、より調整しやすい。
【0046】
たとえば、発泡芯層24と発泡芯層24を被覆する被覆層26とを有する多層構造の発泡粒子20は、発泡芯層24がポリプロピレン系樹脂より構成され、被覆層26がいずれかの熱可塑性樹脂で構成されるとよく、発泡芯層24を構成する樹脂からなる単層発泡粒子の成形温度よりも低い成形温度で型内成形可能であることが好ましい。発泡芯層24を構成する樹脂と被覆層26を構成する樹脂は、例えば物性を同じくする樹脂であってもよいが、融点または軟化点の異なる樹脂であることが好ましい。特に、被覆層26を構成する樹脂は、発泡芯層24を構成する樹脂の融点よりも融点が低いかまたは軟化点が低い樹脂であることが好適である。これによって、被覆層26を融着層として機能させることができる。つまり、発泡粒子20を用いて型内成形を行った場合、発泡芯層24の融点よりも低いスチーム圧で、被覆層26を融解または軟化させることができ、発泡粒子20同士を良好に融着させることができる。
【0047】
特に、本発明においては、樹脂粒子製造時のダイ孔径を小さくし、樹脂粒子を構成するポリプロピレン系樹脂として曲げ弾性率が700MPa以上1200MPa以下の樹脂を用いることにより発泡粒子20の貫通孔22の内径を比較的小さくし、且つ、クラッキング成形時のクラッキング率を20%以上30%以下に調整することで、発泡粒子成形体100の表面の貫通孔部分14の形状や凹部10の形状を特定の範囲とすることができる。
【0048】
[積層体の製造方法]
以下に、貫通孔を有する発泡粒子、発泡粒子成形体、および積層体の製造方法の例について説明する。貫通孔を有する発泡粒子を用いた発泡粒子成形体は、例えば、特開平08-108441号公報、特開平07-137063号公報、特開2012-126816号公報などの従来公知の方法によって製造することができる。
【0049】
具体的には、まず、発泡粒子を構成する基材樹脂となる熱可塑性樹脂を押出機で溶融混練した後、押出機に設けられた押出機ダイからストランド状に押し出して、冷却後に適宜の長さに切断するか、或いは適宜の長さに切断後に冷却する等の方法によって熱可塑性樹脂粒子(以下、樹脂粒子ともいう。)を製造する。
このとき、押出機ダイの溶融樹脂出口に所望の筒状の熱可塑性樹脂粒子の断面形状と同様のスリットを有するものを選択することや、筒形を維持するために、スリットの内側に筒形ストランド穴部の圧力を常圧もしくはそれ以上に保つための圧力調整孔を設けたものなどを使用することで、貫通孔を有する樹脂粒子を作製することができる。
【0050】
次に、分散媒の入った密閉容器内に樹脂粒子を充填し当該分散媒に分散させて、樹脂粒子の軟化温度以上の温度に加熱して樹脂粒子内に発泡剤を含浸させる。その後、密閉容器の一旦を開放し、密閉容器内圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら樹脂粒子と分散媒とを同時に容器内よりも低圧の雰囲気下(通常は大気圧下)に放出して樹脂粒子を発泡させる。これによって、貫通孔を有する熱可塑性樹脂発泡粒子を得ることができる。
【0051】
上記発泡剤としては、通常、プロパン、イソブタン、ブタン、イソペンタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロヘキサン、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,2,2,2-テトラフルオロエタン、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン等の揮発性有機発泡剤や、窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気等の無機ガス系発泡剤が挙げられる。なかでも発泡剤として、オゾン層の破壊がなく且つ安価な無機ガス系発泡剤が好ましく、特に窒素、空気、二酸化炭素が好ましい。又、上記発泡剤は、1種で用いてもよく、あるいは2種以上の混合系にて使用することもできる。
熱可塑性樹脂発泡粒子を得る際に用いられる分散媒としては、樹脂粒子を溶解しないものであればよく、このような分散媒としては例えば、水、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等の1種または2種以上の組み合わせが挙げられるが、通常は水が使用される。
【0052】
また、樹脂粒子を分散媒に分散させて発泡温度に加熱するに際し、樹脂粒子相互の融着を防止するために分散剤を用いることもできる。
【0053】
上述のような方法で作製された熱可塑性樹脂発泡粒子を成形型内に充填し、所定の温度に加熱して型内成形することで、貫通孔を有する熱可塑性樹脂発泡粒子が相互に融着した発泡粒子成形体が得られる。
尚、以上の述べる貫通孔を有する樹脂粒子の作製、発泡粒子の作製、および発泡粒子成形体の作製の適宜の工程において、製造条件を調整し、得られる発泡粒子成形体の表面における凹部の開口面積や発泡粒子成形体の平均空隙率、表層部の空隙率などを調整するとよい。
【0054】
上述のとおり作製した発泡粒子成形体を芯材として用い、積層体を製造する。
具体的には、ポリウレタンフォーム成形用の成形型のキャビティに発泡粒子成形体を設置し、キャビティの残余の空間に、液状のポリウレタンフォーム原料を供給する。
【0055】
液状のポリウレタンフォーム原料は、公知の材料を適宜使用することができ、ポリウレタンと各種の発泡剤などを含むことができる。また、液状のポリウレタンフォーム原料の量なども所望のポリウレタンフォームの密度にあわせて適宜設定することができる。
【0056】
キャビティに供給された液状のポリウレタンフォーム原料に対し加熱等によりウレタン発泡させることで、発泡粒子成形体とポリウレタンフォームとが積層一体化してなる積層体が製造される。
このとき、ポリウレタンフォーム用原料が発泡する際に、型内の空間が減少して型内の圧力が上昇するが、発泡粒子成形体に形成された空隙を通過して外部に逃れるため、発泡粒子成形体が著しく収縮することがない。上記空隙は発泡粒子成形体を構成する発泡粒子に設けられた貫通孔に主に起因する。一方で、ポリウレタンフォーム用原料を発泡粒子成形体上に供給した際に、発泡粒子成形体の表面における凹部、特には貫通孔部分にポリウレタンフォームが適度に入り込むことで発泡粒子成形体とポリウレタンフォームとは実用に耐えられる程度に接着する。ただし、本発明の芯材である発泡粒子成形体は表面の貫通孔部分の開口面積が良好な範囲に調整されておりポリウレタンフォームが発泡粒子成形体に入り込みすぎることが防止されている。そのため、積層体をリサイクルする際に発泡粒子成形体とポリウレタンフォームとを容易に分離することができる。
尚、上述のとおり製造された積層体は、成形型内において芯材が著しく圧縮されていない。そのため、本発明の芯材を備える積層体は、成形型から取り出された後、従来の積層体のように芯材の寸法の復元に起因するポリウレタンフォームの寸法の増大が抑制されており、寸法安定性に優れる。
【実施例0057】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。尚、以下のとおり得られた各実施例及び各比較例に関し、種々の測定及び評価を行った。結果は表に示す。またこれらの測定方法および評価方法は、後述する。
【0058】
[実施例1]
(発泡粒子の作製)
内径65mmの芯層形成用押出機および内径30mmの外側被覆層形成用押出機の出口側に多層ストランド形成用ダイが取付けられた押出機を用い、芯層を形成するための熱可塑性樹脂(ポリプロピレン系樹脂、融点:142℃、曲げ弾性率950MPa)、および被覆層を形成するためのポリプロピレン系樹脂(融点:132℃)を、それぞれの押出機に供給し、溶融混練してそれぞれ溶融混練物とした。なお、芯層を構成する樹脂には、気泡調整剤としてホウ酸亜鉛を添加し、芯層を構成する樹脂を基材樹脂としたマスターバッチを調製して芯層形成用押出機に供給した。ホウ酸亜鉛の含有量は、1000重量ppmとなるよう調整した。上述のとおり得た2種の溶融混練物を、多層ストランド形成用ダイに導入し、ダイ内で合流してダイ先端に取付けた口金の小孔から、円筒形状のストランドとして押出した(非発泡芯層の重量%:被覆層の重量%=90:10)。用いたダイスの内径は表に示す。押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで切断して乾燥して円筒形状の多層樹脂粒子を得た。多層樹脂粒子は、被覆層と非発泡状態の芯層とが積層された構造(鞘芯形状)を有しており、芯層の内側に貫通孔を有する。
上述のとおり調製した多層樹脂粒子800gと分散媒である水3Lとを、容量5Lの密閉容器内に仕込んだ。このとき、多層樹脂粒子100重量部に対し、分散剤としてカオリン0.3重量部、界面活性剤(商品名:ネオゲン(商標)、第一工業製薬株式会社製、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.4重量部(有効成分として)、および硫酸アルミニウム0.01重量部を、それぞれ密閉容器内に添加した。次いで、密閉容器内に発泡剤として二酸化炭素(3.4MPa)を圧入し、密閉容器内の内容物を撹拌しながら発泡温度146.5℃より5℃低い温度まで加熱昇温して、その温度を15分間保持して高温ピーク熱量を調整した。その後、さらに発泡温度まで加熱昇温して再度15分間保持し、平衡蒸気圧を3.6MPaに調整した。しかる後、密閉容器内の内容物を大気圧下に水とともに放出した。このとき芯層は、発泡して発泡芯層をなし、被覆層は、発泡芯層の周面を被覆する被覆層をなした。こうして、かさ密度27kg/m、平均粒子重量1.5mg、貫通孔の平均孔径4mm、平均肉厚0.8mm、平均外径Dに対する平均長さLの比L/D=1である、貫通孔を有し円筒形状である多層の熱可塑性樹脂発泡粒子を準備した。
【0059】
(発泡粒子成形体の作製)
上述のとおり得た熱可塑性樹脂発泡粒子を、成形用金型(長手方向400mm、前後方向400mm、厚み300mm)内に充填した。なお、この際に、成形用金型の厚み方向にクラッキングを確保した。発泡粒子成形体の厚み(300mm)に対する、クラッキング量(mm)の割合をクラッキング率(%)として表に示した。
上述のとおり熱可塑性樹脂発泡粒子が充填された成形用金型を型締めし、スチーム加熱して発泡粒子成形体からなる芯材を形成した。スチームによる加熱は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを4秒間型内に供給して予備加熱(排気工程)を行った後、0.14MPa(G)の成形スチーム圧で一方加熱を行い、さらに0.20MPa(G)の成形スチーム圧で逆方向から一方加熱を行った後、表中に記載の成形スチーム圧で両面から本加熱を行った。尚、(G)を付した圧力は、ゲージ圧、つまり、大気圧を基準とした圧力の値である。本加熱のスチーム圧を表に示した。加熱終了後、放圧し、1秒間水冷し、20秒間空冷して芯材を得た。75℃で2時間養生した後、6時間徐冷したものを芯材(熱可塑性樹脂発泡粒子成形体)とした。
【0060】
このようにして得られた芯材の成形体密度(kg/m)、平均空隙率Q(%)、表層部の空隙率P(%)、通気量(L/min)を以下のとおり測定した。また上述で測定された平均空隙率Qに対する表層部の空隙率Pの比(表層部の空隙率/平均空隙率;P/Q)を求めた。得られた値は、いずれも表に示した。
<成形体密度>
芯材の重量と外形寸法を測定し、重量を外見寸法から算出される見掛けの体積で除することにより、芯材の成形体密度を求めた。
<平均空隙率>
芯材の見掛け体積X(cm)、および真の体積Y(cm)を求め、下記式(1)を用いて芯材の平均空隙率を算出した。
[数2]
空隙率(体積%)=〔(X-Y)/X〕×100・・・・・(1)
尚、芯材の見掛け体積Xは、発泡成形体サンプルの外形寸法から算出される体積であり、真の体積Yは発泡成形体の空隙部を除いた実質体積である。真の体積Yは芯材をアルコール中に沈めた時の増量したアルコールの体積を測定することによって求めた。
なお、平均空隙率の測定は、芯材(発泡粒子成形体)から無作為に選択して切り出した20mm×20mm×100mmサンプル(発泡粒子成形体の表皮スキン部分を除く)を10点測定し、その平均から空隙率を算出することで実施した。
<表層部の空隙率>
芯材の表層部の空隙率の測定は以下のとおり行った。
発泡粒子成形体の表面側部分について、表面から深さ方向に5mmの部分からさらに深さ25mmまでの部分をサンプル(20mm×20mm×100mm)として切り出し、その部分の空隙率を、上記の平均空隙率の方法と同様の方法で測定した。
<通気量>
芯材の通気量の測定は、以下のとおり行った。まず、得られた熱可塑性樹脂発泡粒子成形体から、表皮部分(スキン層を除く)を直径100mm×厚み20mmの円盤状に切削し、これをサンプルとした。このサンプルを、JIS K6400-7A法(正圧系):2012に準拠して、レギュレーター、流量計(入り口側)、圧力計(入り口側)、サンプル固定具、圧力計(出口側)、流量計(出口側)のようにして組み立てられた、通気量測定用の装置にセットした。上記装置にセットしたサンプルに対し、入り口側から0.6MPaのエアーを吹き込み、通気量を入り口側の流量計から、JIS K6400-7A法:2012に基づいて測定した。なお、サンプルは、開放系として測定を行った。
【0061】
<貫通孔部分、ボイド部分、凹部の面積測定>
以下のとおり、芯材の表面における凹部の面積測定(貫通孔部分の面積測定およびボイド部分の面積測定)を行った。
凹部の面積測定では、芯材(発泡粒子成形体)の表面において、平坦部分から無作為に選択した25mm×25mmの矩形領域を観察領域とした。凹部は芯材の表面から深さ方向に0.5mmの部分における、当該表面と平行な面における空間部分として認定した。具体的には、光学式非接触測定機(VR3200、株式会社キーエンス製)で深さ分布を測定し、深さ方向の基準線から0.5mm深い部分の断面積の拡大写真を得た。上記拡大写真を市販のスキャナー装置で画像データ化した。次に、画像データ化された拡大写真の画像にモノトーン化処理を施してモノトーン画像を調整し、ボイド部分を黒色に表示した。尚、モノトーン化処理は、画像データ化された拡大写真を画像解析ソフト(NS2K-Pro、ナノシステム株式会社製)を用いて実施した。モノトーン化処理され画像データに基づき、黒く表れている部分の面積を算出することにより、ボイド部分の面積測定を行った。また、画像データ化された拡大写真の画像にモノトーン化処理を施してモノトーン画像を調整し、貫通孔部分を黒色に表示したこと以外は、上述と同様に作業を行い、貫通孔部分の面積測定を行った。
尚、凹部の面積測定は、上記測定を、上述のとおり選択された10個の観察領域で実施し、各観察領域で得られた値を算術平均することにより実施した。
【0062】
上記凹部の面積測定において、具体的に以下の項目を測定し算出した。
・凹部の平均開口面積
観察領域における貫通孔部分の開口面積の合計t1およびボイド部分の開口面積の合計t2および貫通孔部分およびボイド部分の全個数を測定し、上記開口面積の合計(t1+t2)を上記全個数で除することにより、凹部の平均開口面積を算出した。
・表面積に対する凹部の開口面積の合計の割合
観察領域における貫通孔部分およびボイド部分それぞれの開口面積の合計を測定し、その和(t1+t2)を凹部の開口面積の合計Tとした。そして観察領域の表面積に対する凹部の開口面積の合計Tの割合を算出した。
・貫通孔部分の開口面積合計/凹部の開口面積合計
観察領域における貫通孔部分およびボイド部分それぞれの開口面積の合計を測定し、その和(t1+t2)を凹部の開口面積の合計Tとした。そして、凹部の開口面積の合計Tに対する貫通孔部分の開口面積の合計t1の比(t1/T)を求めた。
・表面積に対する貫通孔部分の開口面積の割合
観察領域における貫通孔部分の開口面積の合計t1を測定し、観察領域の表面積に対する貫通孔部分の開口面積の合計t1の割合を算出した。
・貫通孔部分の平均開口面積
観察領域における貫通孔部分の開口面積の合計t1および貫通孔部分の全個数を測定し、上記開口面積の合計t1を上記全個数で除することにより、貫通孔部分の平均開口面積を算出した。
・所定範囲の面積を有する貫通孔部分の個数の合計の割合
観察領域における貫通孔部分の全個数R1および各貫通孔部分の面積を測定した。そして面積が0mm超1mm未満、1mm以上2mm未満、2mm以上の貫通孔部分の個数(それぞれr1、r2、r3とした)をカウントし、全個数R1に対する各面積範囲ごとの個数の合計の割合〔(r1/R1)×100〕、〔(r2/R1)×100〕、〔(r3/R1)×100〕を算出した。
・表面積に対するボイド部分の開口面積の割合
観察領域におけるボイド部分の開口面積の合計t2を測定し、観察領域の表面積に対するボイド部分の開口面積の合計t2の割合を算出した。
・所定範囲の面積を有するボイド部分の個数の合計の割合
観察領域におけるボイド部分の全個数R2および各ボイド部分の面積を測定した。そして面積が0mm超1mm未満、1mm以上2mm未満、2mm以上のボイド部分の個数(それぞれr4、r5、r6とした)をカウントし、全個数R2に対する各面積範囲ごとの個数の合計の割合〔(r4/R2)×100〕、〔(r5/R2)×100〕、〔(r6/R2)×100〕を算出した。
【0063】
(積層体の製造)
上述のとおり得られた芯材をポリウレタンフォーム成形用の成形型(キャビティ寸法500mm×500mm×500mm)内に設置し、残余の空間に液状のポリウレタンフォーム用原料を充填しスチームを供給して発泡させた。これにより、芯材に対し、ポリウレタンフォームを積層させ、芯材とポリウレタンフォームとが積層一体化されてなる積層体を得た。これを用いて、寸法安定性評価、剥離試験、実用性評価を以下のとおり行った。
【0064】
<寸法安定性評価>
積層体の製造に用いたポリウレタンフォーム成形用の成形型のキャビティの最大長さ部分Z1、および得られた積層体の上記最大長さ部分Z1に対応する対応部分Z2、それぞれの長さを測定した。そして対応部分Z2の長さから最大長さ部分Z1の長さを減じて得た数値を寸法変化量Mとして評価した。尚、最大長さ部分Z1、対応部分Z2、および寸法変化量Mについては、図4Cが参照される。
【0065】
<剥離試験>
得られた積層体を50mm×50mm×積層体厚みのサイズに切り出しサンプルとした。尚、切り出す領域は、厚み方向において芯材とウレタンフォームとが積層された領域から選択した。サンプルの一方面(ウレタンフォーム側の面)および他方面(芯材側の面)それぞれにSUS板に接着した。接着剤は、PPK1000(セメダイン株式会社製)を使用した。23℃、50%RH環境下、引張速度は10mm/minの条件で、万能試験機(テンシロン)にて引張試験を行い、芯材とウレタンフォームとが剥離した際の最大荷重を接着強度(N/mm)として、評価した。
【0066】
<実用性評価>
上述のとおり得られた積層体を、芯材が露出した面を下側にして試験台に設置し、上面(ウレタンフォームの面)に対し、上方から、φ300mm負荷子にて588Nの荷重を繰り返し20回負荷をかけた後、ウレタンフォームを目視で観察し、以下のとおり評価した。
○;ウレタンフォームが剥がれるなどの不具合が無かった。
×;芯材に対しウレタンフォームがズレた。
【0067】
[実施例2、3、比較例1~4]
表1に示す製造条件に変更し、かつ芯材(発泡粒子成形体)の成形体密度、平均空隙率、表層部の空隙率、通気量、貫通孔部分の面積、ボイド部分の面積が表1の内容となるよう、調整したこと以外は上述する実施例1と同様に芯材および積層体を作製し、実施例2、3、比較例1、2、4とした。
また用いる樹脂粒子の芯層を構成する熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン系樹脂、融点:142℃、曲げ弾性率1470MPaの樹脂を用いたこと、および表1に示す製造条件に変更し、かつ芯材(発泡粒子成形体)の成形体密度、平均空隙率、表層部の空隙率、通気量、貫通孔部分の面積、ボイド部分の面積が表1の内容となるよう、調整したこと以外は上述する実施例1と同様に芯材および積層体を作製し、比較例3とした。
以上のとおり得られた実施例2、3および比較例1~4についても実施例1を用いて行った各測定および評価を同様に実施し、その結果を表1に示した。
【0068】
【表1】
【0069】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)熱可塑性樹脂発泡粒子成形体からなる芯材にポリウレタンフォームが積層されてなる積層体に用いられる前記芯材であって、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体は、貫通孔を有する発泡粒子が相互に融着してなる成形体であり、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の平均空隙率Qが10%以上25%以下であり、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の表面において、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の表面積に対する、前記発泡粒子の貫通孔部分の開口面積の合計の割合が2%以上5%以下であり、
前記発泡粒子の貫通孔部分の平均開口面積が5mm以上20mm以下であり、前記発泡粒子の貫通孔部分の個数の合計R1に対する、開口面積2mm以上の貫通孔部分の個数の合計r3の割合〔(r3/R1)×100〕が60%以下であることを特徴とする芯材。
(2)前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の表層部の空隙率Pが10%以上20%以下であり、前記平均空隙率Qに対する前記表層部の空隙率Pの比(P/Q)が1.0以上1.2以下である上記(1)に記載の芯材。
(3)前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の成形体密度が15kg/m以上50kg/m以下である上記(1)または(2)に記載の芯材。
(4)前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体を構成する発泡粒子が、発泡芯層と前記発泡芯層を被覆する被覆層とを有する多層発泡粒子である上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の芯材。
(5)前記発泡芯層の基材樹脂が曲げ弾性率1200MPa以下のポリプロピレン系樹脂である、上記(4)に記載の芯材。
【符号の説明】
【0070】
10・・・凹部
12・・・ボイド部分
14・・・貫通孔部分
20・・・発泡粒子
22・・・貫通孔
24・・・発泡芯層
26・・・被覆層
100・・・熱可塑性樹脂発泡粒子成形体
100C・・・芯材
200・・・観察領域
300・・・成形型
310・・・キャビティ
320・・・雄型
330・・・雌型
340・・・充填口
350・・・クラッキング
400・・・積層体
410・・・熱可塑性樹脂発泡粒子成形体
410C・・・芯材
420・・・ポリウレタンフォーム
d・・・開口方向
S1、S2、S3・・・サイズ
Z1・・・最大長さ部分
Z2・・・対応部分

図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂発泡粒子成形体からなる芯材にポリウレタンフォームが積層されてなる積層体に用いられる芯材であって、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体は、貫通孔を有する発泡粒子が相互に融着してなる成形体であり、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の平均空隙率が10%以上25%以下であり、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の表面において、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の上面視における平面の面積に対する、前記発泡粒子の貫通孔部分の開口面積の合計の割合が2%以上5%以下であり、
前記発泡粒子の貫通孔部分の平均開口面積が5mm以上20mm以下であり、
前記発泡粒子の貫通孔部分の個数の合計に対する、開口面積2mm以上の貫通孔部分の個数の合計の割合が60%以下であることを特徴とする芯材。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の表層部の空隙率が10%以上20%以下であり、前記平均空隙率に対する前記表層部の空隙率の比が1.0以上1.2以下である請求項1に記載の芯材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の成形体密度が15kg/m以上50kg/m以下である請求項1または2に記載の芯材。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体を構成する発泡粒子が、発泡芯層と前記発泡芯層を被覆する被覆層とを有する多層発泡粒子である請求項1から3のいずれか一項に記載の芯材。
【請求項5】
前記発泡芯層の基材樹脂が曲げ弾性率1200MPa以下のポリプロピレン系樹脂である、請求項4に記載の芯材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の芯材は、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体からなる芯材にポリウレタンフォームが積層されてなる積層体に用いられる上記芯材であって、上記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体は、貫通孔を有する発泡粒子が相互に融着してなる成形体であり、上記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の平均空隙率が10%以上25%以下であり、上記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の表面において、上記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の上面視における平面の面積に対する、上記発泡粒子の貫通孔部分の開口面積の合計の割合が2%以上5%以下であり、上記発泡粒子の貫通孔部分の平均開口面積が5mm以上20mm以下であり、上記発泡粒子の貫通孔部分の個数の合計に対する、開口面積2mm以上の貫通孔部分の個数の合計の割合が60%以下であることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)熱可塑性樹脂発泡粒子成形体からなる芯材にポリウレタンフォームが積層されてなる積層体に用いられる前記芯材であって、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体は、貫通孔を有する発泡粒子が相互に融着してなる成形体であり、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の平均空隙率Qが10%以上25%以下であり、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の表面において、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の上面視における平面の面積に対する、前記発泡粒子の貫通孔部分の開口面積の合計の割合が2%以上5%以下であり、
前記発泡粒子の貫通孔部分の平均開口面積が5mm以上20mm以下であり、前記発泡粒子の貫通孔部分の個数の合計R1に対する、開口面積2mm以上の貫通孔部分の個数の合計r3の割合〔(r3/R1)×100〕が60%以下であることを特徴とする芯材。
(2)前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の表層部の空隙率Pが10%以上20%以下であり、前記平均空隙率Qに対する前記表層部の空隙率Pの比(P/Q)が1.0以上1.2以下である上記(1)に記載の芯材。
(3)前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の成形体密度が15kg/m以上50kg/m以下である上記(1)または(2)に記載の芯材。
(4)前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体を構成する発泡粒子が、発泡芯層と前記発泡芯層を被覆する被覆層とを有する多層発泡粒子である上記(1)から(3)のいずれかに記載の芯材。
(5)前記発泡芯層の基材樹脂が曲げ弾性率1200MPa以下のポリプロピレン系樹脂である、上記(4)に記載の芯材。