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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161695
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20221014BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B60C11/03 E
B60C11/03 200A
B60C11/13 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066703
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】大谷 匡史
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB06
3D131BC20
3D131BC34
3D131CB05
3D131EB33U
3D131EB44U
3D131EB46U
3D131EB47U
3D131EB48U
(57)【要約】      (修正有)
【課題】排水性能及び耐偏摩耗性能を向上した自動二輪車用タイヤを提供する。
【解決手段】第1傾斜部5と第2傾斜部6とを含む第1溝3と、タイヤ周方向の長さが小さい第2溝4とが設けられた自動二輪車用タイヤ1である。第1傾斜部5は、トレッド端Te側の第1端8からタイヤ赤道C側へ向かって第1タイヤ周方向Fへ傾斜して延びている。第2傾斜部6は、第1傾斜部5に繋がり、かつ、トレッド端Te側へ向かって第1タイヤ周方向Fへ傾斜して第2端9まで延びている。第2溝4は、タイヤ周方向に対して傾斜して延び、かつ、タイヤ赤道C側にタイヤ軸方向の内端4iを有している。内端4iは、第1溝3の第1端8及び第2端9よりもタイヤ軸方向の内側に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する自動二輪車用タイヤであって、
前記トレッド部には、第1溝と、前記第1溝よりもタイヤ周方向の長さが小さい第2溝とが設けられており、
前記第1溝は、第1傾斜部と第2傾斜部とを含み、
前記第1傾斜部は、トレッド端側の第1端からタイヤ赤道側へ向かって第1タイヤ周方向へ傾斜して延び、
前記第2傾斜部は、前記第1傾斜部に繋がり、かつ、前記トレッド端側へ向かって前記第1タイヤ周方向へ傾斜して第2端まで延び、
前記第2端は、他の溝と繋がらない閉じた端部とされており、
前記第2溝は、タイヤ周方向に対して傾斜して延び、かつ、タイヤ赤道側にタイヤ軸方向の内端を有し、
前記第2溝の前記内端は、前記第1溝の前記第1端及び前記第2端よりもタイヤ軸方向の内側に位置する、
自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記第2溝は、前記第1傾斜部と同じ向きで傾斜している、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記トレッド部は、直進走行時に接地するクラウン領域を有し、
前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部のそれぞれの少なくとも一部は、前記クラウン領域内に位置する、請求項1又は2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記第1傾斜部の前記第1端又は前記第2傾斜部の前記第2端は、前記クラウン領域のタイヤ軸方向の外側に位置する、請求項3に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記第2溝の前記内端は、前記クラウン領域内に位置する、請求項3又は4に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記第2溝のタイヤ軸方向の外端は、前記クラウン領域のタイヤ軸方向の外側に位置する、請求項3ないし5のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記第2溝の前記内端は、他の溝と繋がらない閉じた端部とされている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記第2溝の前記内端は、前記第2傾斜部に連通している、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記第2傾斜部の前記第2溝との接続部の溝深さは、前記第2溝の溝深さよりも小さい、請求項8に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項10】
前記第2傾斜部の前記接続部の溝深さは、前記第2溝の溝深さの20%~80%である、請求項9に記載の自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、斜めにのびる第1傾斜溝と、前記第1傾斜溝の後着側に配されかつ前記第1傾斜溝に沿ってのびる第2傾斜溝と、前記第1傾斜溝と逆向きに傾斜して前記第2傾斜溝の内端に連通する傾斜細溝とを含む自動二輪車用タイヤが記載されている。このような第1傾斜溝、第2傾斜溝及び傾斜細溝は、直進走行から旋回走行まで排水性能を向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6487702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排水性能を高めるために、例えば、前記第1傾斜溝や前記第2傾斜溝の溝容積を大きくすることが考えられる。しかしながら、このような自動二輪車用タイヤは、トレッド部の剛性が低下して耐偏摩耗性能が悪化するという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、排水性能及び耐偏摩耗性能を向上させた自動二輪車用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有する自動二輪車用タイヤであって、前記トレッド部には、第1溝と、前記第1溝よりもタイヤ周方向の長さが小さい第2溝とが設けられており、前記第1溝は、第1傾斜部と第2傾斜部とを含み、前記第1傾斜部は、トレッド端側の第1端からタイヤ赤道側へ向かって第1タイヤ周方向へ傾斜して延び、前記第2傾斜部は、前記第1傾斜部に繋がり、かつ、前記トレッド端側へ向かって前記第1タイヤ周方向へ傾斜して第2端まで延び、前記第2端は、他の溝と繋がらない閉じた端部とされており、前記第2溝は、タイヤ周方向に対して傾斜して延び、かつ、タイヤ赤道側にタイヤ軸方向の内端を有し、前記第2溝の前記内端は、前記第1溝の前記第1端及び前記第2端よりもタイヤ軸方向の内側に位置する。
【0007】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第2溝が、前記第1傾斜部と同じ向きで傾斜している、のが望ましい。
【0008】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記トレッド部が、直進走行時に接地するクラウン領域を有し、前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部のそれぞれの少なくとも一部は、前記クラウン領域内に位置する、のが望ましい。
【0009】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1傾斜部の前記第1端又は前記第2傾斜部の前記第2端が、前記クラウン領域のタイヤ軸方向の外側に位置する、のが望ましい。
【0010】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第2溝の前記内端が、前記クラウン領域内に位置する、のが望ましい。
【0011】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第2溝のタイヤ軸方向の外端が、前記クラウン領域のタイヤ軸方向の外側に位置する、のが望ましい。
【0012】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第2溝の前記内端が、他の溝と繋がらない閉じた端部とされている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤである。
【0013】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第2溝の前記内端が、前記第2傾斜部に連通している、のが望ましい。
【0014】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第2傾斜部の前記第2溝との接続部の溝深さが、前記第2溝の溝深さよりも小さい、のが望ましい。
【0015】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第2傾斜部の前記接続部の溝深さが、前記第2溝の溝深さの20%~80%である、のが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の自動二輪車用タイヤは、上記の構成を採用したことによって、優れた排水性能及び耐摩耗性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のタイヤの一実施形態を示すトレッド部の展開図である。
図2図1の第1溝の拡大図である。
図3図1のA-A線断面図である。
図4】トレッド部の展開図である。
図5】(a)は、他の実施形態のトレッド部の展開図、(b)は、(a)のB-B線断面図である。
図6】他の実施形態の第1溝の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の自動二輪車用タイヤ1(以下、単に「タイヤ」ということがある。)のトレッド部2を平面に展開した展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乾燥アスファルト路面などのオンロード走行に好適に用いられる。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2には、第1溝3と、第1溝3よりもタイヤ周方向の長さが小さい第2溝4とが設けられている。
【0020】
本実施形態の第1溝3は、第1傾斜部5と第2傾斜部6とを含んでいる。本実施形態の第1傾斜部5は、トレッド端Te側の第1端8からタイヤ赤道C側へ向かって第1タイヤ周方向Fへ傾斜して延びている。また、本実施形態の第2傾斜部6は、第1傾斜部5に繋がり、かつ、トレッド端Te側へ向かって第1タイヤ周方向Fへ傾斜して第2端9まで延びている。このような第1溝3は、タイヤ1の回転を利用して、その溝内の水をタイヤ軸方向の外側へスムーズに排出することができる。これにより排水性能が向上する。また、上述のような第1溝3は、例えば、タイヤ周方向に沿って延びる溝に比べて、トレッド部2のタイヤ周方向の剛性の局所的な低下を抑制する。これにより、耐偏摩耗性能の悪化が抑制される。第1タイヤ周方向Fは、本明細書では、タイヤ周方向のいずれか一方を意味するものであり、本実施形態では、図1の下側である。
【0021】
第2端9は、例えば、他の溝と繋がらない閉じた端部とされている。これにより、第2端9の付近において、トレッド部2の剛性の低下が抑制されて、ひいては、耐偏摩耗性能が向上する。本実施形態の第2端9は、サイプ(図示省略)にも繋がっていないので、上述の作用がより効果的に発揮される。本明細書では、溝は、溝幅が1.5mm以上の溝状体である。また、サイプは、幅が1.5mm未満の切込み状体である。
【0022】
第2溝4は、タイヤ周方向に対して傾斜して延び、かつ、タイヤ赤道C側にタイヤ軸方向の内端4iを有している。そして、本実施形態の第2溝4の内端4iは、第1溝3の第1端8及び第2端9よりもタイヤ軸方向の内側に位置している。このような第1溝3及び第2溝4のレイアウトは、ウェット路面の走行時、相対的に排水され難いトレッド部2のタイヤ軸方向の内側の領域において、路面とトレッド踏面2aとの間の水を効果的に集めて排水することができる。したがって、排水性能が向上する。また、内端4iは、第1端8と第2端9とに対してタイヤ軸方向に位置ずれしているので、トレッド部2の剛性の局所的な低下を抑制し、耐偏摩耗性能を高める。第2溝4の内端4iは、後述する第2溝4の溝中心線4nの最もタイヤ軸方向内側の端部である。
【0023】
トレッド部2は、タイヤ回転方向Nが指定されている。タイヤ回転方向Nは、本実施形態では、第1タイヤ周方向Fとは逆向きである。即ち、第1溝3は、第1端8からタイヤ回転方向Nの後着側に連続して延びている。第2溝4は、内端4iからタイヤ回転方向N側に連続して延びている。第1端8は、例えば、他の溝及びサイプと繋がらない閉じた端部とされている。
【0024】
トレッド部2は、直進走行時に接地するクラウン領域Crと、クラウン領域Crのタイヤ軸方向の両側に配された一対のショルダー領域Shとを有している。前記「直進走行時に接地する」とは、正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときに接地することを意味する。クラウン領域Crの展開幅Tcは、トレッド展開幅TWeの20%~30%である。また、各ショルダー領域Shのタイヤ軸方向の外縁は、トレッド端Teである。特に断りがない場合、本明細書では、タイヤ1の各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。また、トレッド展開幅TWeは、トレッド部2を平面に展開したときのトレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離である。
【0025】
前記「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim"である。
【0026】
前記「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE"である。
【0027】
前記「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0028】
第1溝3及び第2溝4のそれぞれは、本実施形態では、タイヤ赤道Cの両側に設けられている。第1溝3は、例えば、タイヤ赤道Cを挟んでタイヤ周方向へ交互に並べられている。第2溝4は、例えば、タイヤ赤道Cを挟んでタイヤ周方向へ交互に並べられている。また、タイヤ赤道Cの両側のそれぞれにおいて、第1溝3と第2溝4とがタイヤ周方向に交互に並べられている。
【0029】
第1溝3の第1傾斜部5は、第1端8からタイヤ赤道C側へ向かって第1タイヤ周方向Fへ連続して傾斜している。このような第1傾斜部5は、その溝内の移動をさらにスムーズにして排水性能を高める。同様の観点より、第2傾斜部6は、第2端9からタイヤ赤道C側へ向かって第1タイヤ周方向Fとは逆側へ連続して傾斜している。
【0030】
第1傾斜部5及び第2傾斜部6のそれぞれの少なくとも一部は、クラウン領域Cr内に位置している。これにより、排水され難いタイヤ赤道C側に位置するクラウン領域Crの水を第1傾斜部5及び第2傾斜部6で集積して排水することができる。
【0031】
第1傾斜部5の第1端8又は第2傾斜部6の第2端9は、例えば、クラウン領域Crのタイヤ軸方向の外側に位置している。これにより、直進走行時においても、第1溝3内の水をクラウン領域Crの外側へ排出することができるので、排水性能が高められる。本実施形態では、第1傾斜部5の第1端8がショルダー領域Shに位置している。第2傾斜部6の第2端9は、本実施形態では、クラウン領域Crに位置している。なお、第2端9は、ショルダー領域Shに位置されていても良い。
【0032】
図2は、図1の第1溝3の拡大図である。図2に示されるように、第1溝3は、例えば、その一部がタイヤ赤道C上に位置している。第1溝3は、本実施形態では、タイヤ赤道Cを跨るように形成されている。本実施形態の第1溝3は、後述する第2部分14と第2傾斜部6とがタイヤ赤道C上に位置するように延びている。
【0033】
第1溝3は、第1端8とはタイヤ軸方向で最も離間する離間点3aを有する。離間点3aは、本実施形態では、第1端8とタイヤ赤道Cを挟んでタイヤ軸方向の逆側に位置している。離間点3aとタイヤ赤道Cとの間のタイヤ軸方向の距離Laは、例えば、クラウン領域Crの展開幅Tcの15%以下が望ましく、10%以下がさらに望ましい。距離Laが展開幅Tcの15%以下であるので、最も排水し難いタイヤ赤道C上の水を効果的に取り除くことができる。第1傾斜部5と第2傾斜部6とは、本実施形態では、離間点3aで区分される。離間点3aは、例えば、第1端8と同じタイヤ赤道Cからタイヤ軸方向の一方側に位置していてもよい。
【0034】
本実施形態の第1傾斜部5は、第1端8を含む第1部分13と、第2傾斜部6に連なる第2部分14と、第1部分13と第2部分14とを繋ぐ第3部分15とを含んでいる。
【0035】
第1部分13、第2部分14及び第3部分15は、例えば、トレッド平面視、タイヤ赤道C側に向かって凸の円弧状である。このような第1部分13及び第2部分14は、その溝内の水の流れをスムーズにして排水性能を高めるとともに、トレッド部2の剛性の低下を抑制して耐偏摩耗性能を高く維持する。
【0036】
第3部分15の溝幅Wzは、本実施形態では、第1部分13の溝幅Wx及び第2部分14の溝幅Wyよりも小さく形成されている。このような第1傾斜部5は、第3部分15が第1部分13及び第2部分14の接地時の滑りを抑制して耐偏摩耗性能を高めるとともに、溝幅が相対的に大きい第1部分13及び第2部分14が排水性能の低下を抑制する。
【0037】
第1部分13、第2部分14及び第3部分15のそれぞれは、同じ溝幅で延びる等幅部16を含んでいる。このような等幅部16は、トレッド部2の剛性の局所的な低下を抑える。前記「同じ溝幅」とは、溝幅の最大値(図示省略)と最小値(図示省略)との差の絶対値が前記最大値の10%以下であることをいう。第1部分13の等幅部16aの全長は、本実施形態では、第1部分13の全長の80%以上である。第2部分14の等幅部16bの全長は、例えば、第2部分14の全長の80%以上である。第3部分15の等幅部16cの全長は、例えば、第3部分15の全長の80%以上である。第1部分13ないし第3部分15の溝幅WxないしWzは、等幅部16での溝幅である。
【0038】
第1部分13の溝幅Wxは、第2部分14の溝幅Wyと実質的に同じである。前記「実質的に同じ」とは、第1部分13の溝幅Wxと第2部分14の溝幅Wyとの差の絶対値が、1mm以下の態様をいう。
【0039】
接地時の滑りを抑制しつつ排水性能を高めるために、第3部分15の溝幅Wzは、第1部分13の溝幅Wxの35%以上が望ましく、40%以上がさらに望ましく、65%以下が望ましく、60%以下がさらに望ましい。第1部分13の溝幅Wxは、クラウン領域Crのタイヤ軸方向の幅Tcの10%以上が望ましく、12%以上がさらに望ましく、20%以下が望ましく、18%以下がさらに望ましい。
【0040】
第3部分15の横断面積は、第1部分13の横断面積及び第2部分14の横断面積の20%~80%であるのが望ましい。第3部分15の横断面積が第1部分13の横断面積及び第2部分14の横断面積の20%以上であるので、排水性能が高められる。第3部分15の横断面積が第1部分13の横断面積及び第2部分14の横断面積の80%以下であるので、耐偏摩耗性能が維持される。各「横断面積」は、各部分13~15のぞれぞれの中心線に対して直交する断面での面積最大値である。
【0041】
第1傾斜部5は、その長手方向に延びる一対の溝縁19、19を含んでいる。各溝縁19は、第1部分13、第2部分14及び第3部分15を形成している。第3部分15を形成する溝縁19cのそれぞれは、第1部分13を形成する溝縁19a、及び、第2部分14を形成する溝縁19bよりも第1傾斜部5の溝中心線5nに接近する側に位置している。このような第1傾斜部5は、より接地時のすべりを抑制することができる。
【0042】
第1傾斜部5のタイヤ周方向に対する角度θ1は、45度以下であるのが望ましい。第1傾斜部5の角度θ1が45度以下であるので、タイヤ1の回転による溝内の水のスムーズな移動が確保される。このため、第1傾斜部5の角度θ1は、40度以下がさらに望ましい。第1傾斜部5の角度θ1は、第1傾斜部5のタイヤ周方向の中間位置5cでの角度である。
【0043】
第2傾斜部6は、第1傾斜部5よりもタイヤ回転方向Nの後着側に位置している。このため、第2傾斜部6のタイヤ周方向に対する角度θ2は、第1傾斜部5の角度θ1よりも小さくするのが望ましい。これにより、第2傾斜部6内での水の流れのスムーズさが高まり、排水性能をより高めることができる。このような観点より、第2傾斜部6の角度θ2は、30度以下であるのが望ましく、25度以下がさらに望ましい。第2傾斜部6の角度θ2は、第2傾斜部6のタイヤ周方向の中間位置6cでの角度である。
【0044】
第1傾斜部5の角度θ1、及び、第2傾斜部6の角度θ2は、それぞれ、5度以上であるのが望ましい。これにより、第1傾斜部5及び第2傾斜部6の付近のタイヤ周方向の剛性の低下を抑制することができる。このため、第1傾斜部5の角度θ1、及び、第2傾斜部6の角度θ2は、それぞれ、10度以上であるのがさらに望ましい。
【0045】
第2傾斜部6の溝幅W2は、例えば、第1傾斜部5側から第2端9に向かって小さくなっている。このような第2傾斜部6は、耐偏摩耗性能を高く維持する。第2傾斜部6の溝幅W2は、本実施形態では、第1傾斜部5側から第2端9に向かって漸減している。なお、第2傾斜部6は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、第2端9に向かって溝幅W2が段差的に小さくなるような態様でも良い。また、第2傾斜部6の溝幅W2は、例えば、第2部分14の溝幅Wyよりも小さいのが望ましく、さらに、第1傾斜部5側から第2端9に向かって同じでもよい。
【0046】
第2傾斜部6は、第1傾斜部5よりもタイヤ回転方向Nの後着側に配されているので、とりわけ、直進走行時において、第1傾斜部5の接地時の滑りが大きく伝わる。このため、第2傾斜部6の平均の溝幅(図示省略)は、第1傾斜部5の平均の溝幅(図示省略)よりも小さく形成されているのが望ましい。これにより、第1傾斜部5の前記滑りを第2傾斜部6が受け止めて、耐偏摩耗性能を高める。第1傾斜部5の平均の溝幅は、第1傾斜部5の溝面積を第1傾斜部5の全長で除した値である。第2傾斜部6の平均の溝幅は、第2傾斜部6の溝面積を第2傾斜部6の全長で除した値である。
【0047】
上述の作用を効果的に発揮させるために、第2傾斜部6の中間位置6cでの溝幅Wdは、第3部分15の溝幅Wzよりも小さく形成されているのが望ましい。第2傾斜部6の溝幅Wdは、第3部分15の溝幅Wzの20%以上が望ましく、30%以上がさらに望ましく、80%以下が望ましく、70%以下がさらに望ましい。
【0048】
図3は、図1のA-A線断面図(第1溝3の断面図)である。図3に示されるように、第2傾斜部6の溝深さD2は、本実施形態では、第1傾斜部5の溝深さD1よりも小さく形成されている。このような第2傾斜部6は、さらに上述の作用を効果的に発揮する。本明細書では、「溝深さ」は、その溝内の最大の溝深さである。
【0049】
第2傾斜部6の溝深さD2が、第1傾斜部5の溝深さD1よりも過度に小さい場合、排水性能が低下するおそれがある。このため、第2傾斜部6の溝深さD2は、例えば、第1傾斜部5の溝深さD1の30%以上が望ましく、40%以上がさらに望ましく、90%以下が望ましく、80%以下がさらに望ましい。
【0050】
特に限定されるものではないが、第1部分13の溝深さDaは、本実施形態では、第2部分14の溝深さDbよりも小さく形成されている。と同じである。また、第3部分15の溝深さDcは、例えば、第1部分13の溝深さDa、及び、第2部分14の溝深さDbよりも小さく形成されている。なお、第1部分13の溝深さDaは、例えば、第2部分14の溝深さDbと同じでもよい。
【0051】
図4は、トレッド部2の展開図である。図2に示されるように、第2溝4は、本実施形態では、第1傾斜部5と同じ向きで傾斜している。第2溝4は、例えば、内端4iからタイヤ軸方向の外側へ第1タイヤ周方向Fとは逆向きに連続して延びている。
【0052】
第2溝4は、例えば、内端4iがクラウン領域Cr内に位置している。このような第2溝4は、より排水性能を高める。内端4iとタイヤ赤道Cとの間のタイヤ軸方向の距離Lbは、クラウン領域Crのタイヤ軸方向の幅Tcの20%以上が望ましく、25%以上がさらに望ましく、40%以下が望ましく、35%以下がさらに望ましい。
【0053】
第2溝4の内端4iは、例えば、他の溝と繋がらない閉じた端部とされている。これにより、クラウン領域Crの剛性の局所的な剛性の低下が抑制され、耐偏摩耗性能が向上する。第2溝4の内端4iは、本実施形態では、サイプにも繋がっていない。
【0054】
第2溝4は、本実施形態では、タイヤ軸方向の外端4eがショルダー領域Shに位置している。これにより、第2溝4の長さが大きく確保されるので、排水性能が向上する。耐偏摩耗性能を高めるために、本実施形態の第2溝4の外端4eは、第1溝3の第1端8及び第2端9とタイヤ軸方向で位置ずれしている。特に限定されるものではないが、第2溝4の外端4eは、例えば、第1端8のタイヤ軸方向の内側に位置している。
【0055】
第2溝4のタイヤ周方向に対する角度θ3は、第1傾斜部5の角度θ1と同じであるのが望ましい。これにより、第2溝4と第1傾斜部5との間のトレッド踏面2aのタイヤ周方向の長さの変化が抑えられるので、耐偏摩耗性能が向上する。前記「同じ」とは、第2溝4の角度θ3と第1傾斜部5の角度θ1との差の絶対値が0度である場合は勿論、5度以下、又は10度以下の態様を含む。
【0056】
このような作用を効果的に発揮させるため、第2溝4の角度θ3は、5度以上が望ましく、10度以上がさらに望ましく、45度以下が望ましく、40度以下がさらに望ましい。第2溝4の角度θ3は、第2溝4のタイヤ軸方向の中間位置4cでの角度である。
【0057】
第2溝4は、外端4eを含む外側部分20、内端4iを含む内側部分21、及び、外側部分20と内側部分21とを繋ぐ中間部分22を含んでいる。外側部分20、内側部分21及び中間部分22は、それぞれ、同じ溝幅で延びる等幅部23を含んで形成される。外側部分20の等幅部23の全長は、外側部分20の全長の80%以上である。内側部分21の等幅部23の全長は、内側部分21の全長の80%以上である。中間部分22の等幅部23の全長は、中間部分22の全長の80%以上である。
【0058】
中間部分22の溝幅Wtは、外側部分20の溝幅Wr及び内側部分21の溝幅Wsよりも小さく形成されている。これにより、接地時の滑りが抑制されて耐偏摩耗性能が向上する。
【0059】
特に限定されるものではないが、中間部分22の溝幅Wtは、外側部分20の溝幅Wrの35%以上が望ましく、40%以上がさらに望ましく、55%以下が望ましく、50%以下がさらに望ましい。外側部分20の溝幅Wrは、クラウン領域Crのタイヤ軸方向の幅Tcの10%以上が望ましく、12%以上がさらに望ましく、20%以下が望ましく、18%以下がさらに望ましい。
【0060】
第2溝4は、その長手方向に延びる一対の溝縁25、25を含んでいる。各溝縁25は、外側部分20、内側部分21及び中間部分22を形成している。中間部分22を形成する溝縁25のそれぞれは、外側部分20を形成する溝縁25、及び、内側部分21を形成する溝縁25よりも第2溝4の溝中心線4nに接近する側に位置している。このような第2溝4は、より接地時のすべりを抑制することができる。
【0061】
図5(a)は、他の実施形態のトレッド部2の展開図である。図5(b)は、図5(a)のB-B線断面図である。本実施形態のトレッド部2と同じ構成要素には同じ符号が付されてその詳細な説明が省略される場合がある。図5に示されるように、この実施形態では、第2溝4の内端4iが第2傾斜部6に連通している。このような第2溝4は、排水性能を高める。
【0062】
第2傾斜部6の第2溝4との接続部6jの溝深さD2aは、第2溝4の溝深さD3よりも小さい。接続部6jの溝深さD2aは、第2溝4の溝深さD3の20%以上が望ましく、30%以上がさらに望ましく、80%以下が望ましく、70%以下がさらに望ましい。このような接続部6jは、耐偏摩耗性能を高く維持する。接続部6jの溝深さD2aは、例えば、第2傾斜部6の最大の溝深さD2と同じである。
【0063】
図6は、他の実施形態の第1溝3の拡大図である。本実施形態の第1溝3と同じ構成要素には同じ符号が付されてその詳細な説明が省略される場合がある。図6に示されるように、この実施形態では、第3部分15において、タイヤ回転方向Nの後着側の溝縁19iが、タイヤ回転方向Nの溝縁19eに接近するように配されている。
【0064】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0065】
図1の基本パターンを有するタイヤが試作されて、各試供タイヤの排水性能及び耐偏摩耗性能がテストされた。各試供タイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
【0066】
<排水性能>
直径3mの周知構造のインサイドドラム試験機を用いて、各試供タイヤを水深5.0mmのドラム面上で走行させたときの制動力が測定された。制動力は、各試供タイヤあたり、ドラムの周速度が100km/h、及び、70km/hのときの2回測定され、これらの差が算出された。結果は、比較例1の制動力の差を100とする指数で表示されている。数値が小さい程、ウェット走行時の制動力が高く、排水性能に優れていることを示す。
タイヤサイズ:120/70ZR17
縦荷重:1.5kN
内圧:250kPa
【0067】
<耐偏摩耗性能>
各試供タイヤが、下記テスト車両の前輪に装着された。テストライダーは、この車両を乾燥アスファルトのサーキットコースにて走行させた。走行終了後、テストライダーが、タイヤに生じた偏摩耗に基づいて、耐偏摩耗性能を目視による官能で評価した。結果は、比較例1を100とする評点で示される。数値が、小さい程優れている。
タイヤサイズ:120/70ZR17(前輪)、180/55ZR17(後輪)
リムサイズ:MT3.50×17(前輪)、MT5.50×17(後輪)
内圧:250kPa(前輪)、290kPa(後輪)
排気量:1300cc
走行距離:5000km
平均速度:120km/h
後輪のタイヤは、全て同じ仕様である。
テスト車両:排気量1300ccのオンロード用の自動二輪車
テストの結果が表1に示される。
表1の「A」は、内端が第1端よりもタイヤ軸方向の内側、かつ、第2端よりもタイヤ軸方向の外側に位置することを示す。
同「B」は、内端が第1端及び第2端よりもタイヤ軸方向の内側に位置することを示す。
比較例及び実施例の「Tc」及び「D1」は、同じである。
【0068】
【表1】
【0069】
テストの結果、実施例のタイヤは、優れた排水性能及び耐偏摩耗性能を有していることが確認された。
【符号の説明】
【0070】
1 自動二輪車用タイヤ
3 第1溝
4 第2溝
4i 第2溝の内端
5 第1傾斜部
6 第2傾斜部
8 第1端
9 第2端
C タイヤ赤道
F 第1タイヤ周方向
Te トレッド端
図1
図2
図3
図4
図5
図6