(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161727
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】ウイルス感染症の予防用製品及び使用
(51)【国際特許分類】
A01N 25/12 20060101AFI20221014BHJP
D06M 11/74 20060101ALI20221014BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20221014BHJP
A01N 59/00 20060101ALI20221014BHJP
C01B 32/25 20170101ALI20221014BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221014BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20221014BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20221014BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20221014BHJP
A61K 33/44 20060101ALI20221014BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20221014BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221014BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20221014BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221014BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A01N25/12 101
D06M11/74
A01P1/00
A01N59/00 Z
C01B32/25
A61P17/00
A61P31/12
A61P31/16
A61P31/14
A61K33/44
A61K8/19
A61Q19/00
A61Q1/00
A61K9/14
A61K9/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066768
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間彦 智明
(72)【発明者】
【氏名】劉 明
(72)【発明者】
【氏名】後藤 友尋
(72)【発明者】
【氏名】梅本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 久義
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4G146
4H011
4L031
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA31
4C076BB31
4C076CC35
4C083AB131
4C083BB21
4C083BB48
4C083CC01
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC12
4C083CC13
4C083DD39
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA06
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA21
4C086MA28
4C086MA41
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB33
4G146AA04
4G146AB02
4G146AB04
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC07A
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4G146AC08A
4G146AC19A
4G146AC19B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AC30A
4G146AC30B
4G146AD37
4G146AD40
4H011AA04
4H011BB18
4H011DA02
4H011DA12
4L031AB01
4L031AB31
4L031BA24
4L031DA12
(57)【要約】
【課題】インフルエンザウイルスやCOVID19などのウイルス感染症を予防する。
【解決手段】一次粒子の平均粒径が2~100nmのナノダイヤモンドを含むウイルス感染症の予防用製品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子の平均粒径が2~100nmのナノダイヤモンドを含むウイルス感染症の予防用製品。
【請求項2】
前記ナノダイヤモンドが以下の(i)~(iv)
(i) BET比表面積が20~900 m2/gである
(ii) 形状が球状、楕円体状又は多面体状である
(iii) 炭素含有量が70~99質量%、水素含有量が0.1~5質量%、窒素含有量が0.1~5質量%である
(iv) ゼータ電位が-60~+60 mVである
の少なくとも1種を満たす、請求項1に記載のウイルス感染症の予防用製品。
【請求項3】
ウイルスがインフルエンザウイルス、ノロウイルス及びコロナウイルスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のウイルス感染症の予防用製品。
【請求項4】
前記製品がナノダイヤモンドと水又は含水エタノールを含む分散液、洗浄液、ナノダイヤモンドとポリマーと水を含む塗工液、ナノダイヤモンドを繊維中に含む繊維製品、ナノダイヤモンドを表面に含む金属、ガラス、セラミック及びプラスチックからなる群から選ばれる基体、口紅、ファンデーション、ハンドクリーム、乳液、化粧水等の化粧料、包装容器からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のウイルス感染症の予防用製品。
【請求項5】
ウイルス感染症を予防するための一次粒子の平均粒径が2~100nmのナノダイヤモンドの使用。
【請求項6】
前記ナノダイヤモンドが以下の(i)~(iv)
(i) BET比表面積が20~900 m2/gである
(ii) 形状が球状、楕円体状又は多面体状である
(iii) 炭素含有量が70~99質量%、水素含有量が0.1~5質量%、窒素含有量が0.1~5質量%である
(iv) ゼータ電位が-60~+60 mVである
の少なくとも1種を満たす、請求項5に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス感染症の予防用製品及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルス(A型、B型)やCOVID19のようなウイルスは飛沫により感染する。ウイルス感染を予防するにはマスク、手洗い、うがいなどが有効とされている。これらのウイルスは、ウイルスを含む飛沫を吸い込むことによっても感染するが、スマートフォン、クレジットカード、かばん、メガネ、衣類、財布、紙幣、硬貨などの持ち物やドアの取っ手、つり革、手すり、テーブル、キーボード、或いは飲食品や工業製品などの包装にウイルスが付着していると、そのような物品に触れることにより手指にウイルスが付着し、ウイルスが付着した手指で唇等を触ることでウイルスが体内に入り込み、ウイルス感染症を引き起こす。
【0003】
特許文献1は、銀微粒子とダイヤモンド微粒子とを含有するコロイド分散液が抗菌作用と防臭作用を有することを開示しているが、抗ウイルス作用については開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、インフルエンザウイルスやCOVID19などのウイルス感染症を予防することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のウイルス感染症の予防用製品及び使用を提供するものである。
〔1〕一次粒子の平均粒径が2~100nmのナノダイヤモンドを含むウイルス感染症の予防用製品。
〔2〕前記ナノダイヤモンドが以下の(i)~(iv)
(i) BET比表面積が20~900 m2/gである
(ii) 形状が球状、楕円体状又は多面体状である
(iii) 炭素含有量が70~99質量%、水素含有量が0.1~5質量%、窒素含有量が0.1~5質量%である
(iv) ゼータ電位が-60~+60 mVである
の少なくとも1種を満たす、〔1〕に記載のウイルス感染症の予防用製品。
〔3〕ウイルスがインフルエンザウイルス、ノロウイルス及びコロナウイルスからなる群から選択される少なくとも1種である、〔1〕又は〔2〕に記載のウイルス感染症の予防用製品。
〔4〕前記製品がナノダイヤモンドと水又は含水エタノールを含む分散液、洗浄液、ナノダイヤモンドとポリマーと水を含む塗工液、ナノダイヤモンドを繊維中に含む繊維製品、ナノダイヤモンドを表面に含む金属、ガラス、セラミック及びプラスチックからなる群から選ばれる基体、口紅、ファンデーション、ハンドクリーム、乳液、化粧水等の化粧料、包装容器からなる群から選択される、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のウイルス感染症の予防用製品。
〔5〕ウイルス感染症を予防するための一次粒子の平均粒径が2~100nmのナノダイヤモンドの使用。
〔6〕前記ナノダイヤモンドが以下の(i)~(iv)
(i) BET比表面積が20~900 m2/gである
(ii) 形状が球状、楕円体状又は多面体状である
(iii) 炭素含有量が70~99質量%、水素含有量が0.1~5質量%、窒素含有量が0.1~5質量%である
(iv) ゼータ電位が-60~+60 mVである
の少なくとも1種を満たす、〔5〕に記載の使用。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ウイルスの感染力価を速やかに低下させることで、ウイルス感染症を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ゼータネガティブナノダイヤモンドを用いたインフルエンザウイルスの感染力価の減少率を示す。
【
図2】ゼータポジティブナノダイヤモンドを用いたインフルエンザウイルスの感染力価の減少率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で使用するナノダイヤモンドの一次粒子の平均粒径は好ましくは2~100nm、より好ましくは3~50 nmである。ナノダイヤモンドの粒子径の標準相対偏差(RSD)は、好ましくは25~40%である、一次粒子の平均粒径と標準相対偏差(RSD)は、X線小角散乱法(SAXS)により測定することができる。相対標準偏差(%)は、以下の式により求めることができる。
【0010】
【0011】
本発明のウイルス感染症の予防用製品において、ナノダイヤモンドが水などの溶媒に分散されている場合、ナノダイヤモンドは凝集体(クラスター)と高分散液のいずれの状態でも抗ウイルス活性を示す。凝集体の大きさは100~1000 nm程度であり、一次粒子の平均粒径の50~500倍程度である。ナノダイヤモンドの高分散液の場合、高分散液中のナノダイヤモンドの大きさは2~100 nm程度であり、一次粒子の平均粒径の1~50倍程度である。このように、ナノダイヤモンドは分散状態に関わらず、一次粒子の平均粒径が2~100nmであれば強力な抗ウイルス活性を示す。なお、ナノダイヤモンドの分散粒子径は、レーザ回折/散乱法により測定することができる。
【0012】
ナノダイヤモンドのBET比表面積は、好ましくは20~900 m2/g、より好ましくは 25~800 m2/g、さらに好ましくは30~700 m2/g、特に好ましくは35~600 m2/gである。BET比表面積は、窒素吸着により測定することができる。BET比表面積の測定装置は、例えばBELSORP-miniII(マイクロトラック・ベル株式会社製)を挙げることができ、BET比表面積は、例えば以下の条件で測定することができる。
・測定粉末量:40mg
・予備乾燥:120℃、真空で3時間処理
・測定温度:-196℃(液体窒素温度)
本発明の1つの好ましい実施形態において、ナノダイヤモンドの表面に少なくとも1種の酸素官能基終端及び/又は少なくとも1種の水素終端を有していてもよい。酸素官能基末端としては、OH、COOH、CONH2、C=O、CHOなどが挙げられ、OH、C=O、COOHが好ましい。水素終端としては、炭素数1~20のアルキル基が挙げられる。
【0013】
ナノダイヤモンドの表面に少なくとも1種の酸素官能基終端が存在することで、ナノダイヤモンド粒子の凝集が抑制されるので好ましい。ナノダイヤモンドの表面に少なくとも1種の水素終端が存在することで、ゼータ電位がプラスになり、酸性水溶液中で安定的かつ高分散するので好ましい。
【0014】
本発明の他の1つの好ましい実施形態において、ナノダイヤモンドはコアシェル構造を有していてもよい。コアシェル構造のナノダイヤモンドのコアはナノダイヤモンド粒子である。シェルは非ダイヤモンド被覆層であり、sp2炭素を含んでいてもよく、さらに酸素原子を含有することが好ましい。シェルはグラファイト層であってもよい。シェルの厚さは、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下、さらに好ましくは1nm以下である。シェルは表面にOH、COOH、CONH2、C=O、CHOなどの親水性官能基を有していてもよい。
【0015】
本発明のナノダイヤモンドの炭素含有量は、好ましくは70~99質量%、より好ましくは75~98質量%、さらに好ましくは80~97質量%である。
【0016】
本発明のナノダイヤモンドの水素含有量は、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~4.5質量%、さらに好ましくは0.3~4.0質量%である。
【0017】
本発明のナノダイヤモンドの窒素含有量は、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~4.5質量%、さらに好ましくは0.3~4.0質量%である。
【0018】
ナノダイヤモンドの炭素、水素、窒素の含有量は、元素分析により測定することができる。
【0019】
ナノダイヤモンドは、好ましくは爆轟法で製造することができる。ナノダイヤモンドの形状は、好ましくは球状、楕円体状或いはそれらに近い多面体状である。
【0020】
本発明の好ましい1つの実施形態において、ナノダイヤモンド粒子の中心は、sp3炭素を含むダイヤモンド構造を有し、その表面は、sp2炭素で構成されるアモルファス層で覆われている。さらに好ましい実施形態において、アモルファス層の外側は酸化グラファイト層で覆われていてもよい。また、アモルファス層と酸化グラファイト層の間には水和層が形成されていてもよい。
【0021】
本発明の好ましい1つの実施形態において、ナノダイヤモンドは、プラス又はマイナスのゼータ電位を有する。ナノダイヤモンドのゼータ電位は、好ましくは-60~60mV、より好ましくは-60~30mVである。ゼータ電位の測定は、例えばMalvern社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、レーザードップラー式電気泳動法によって、25℃で実施できる。ゼータ電位を測定するときのナノダイヤモンドの分散液の濃度は、0.2質量%になるように超純水で希釈され、さらに超音波洗浄機による超音波照射を行い、ゼータ電位の測定に供される。
【0022】
本発明の製品がナノダイヤモンドの溶媒分散液の場合、ナノダイヤモンドの濃度は、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~1.0質量%である。溶媒としては、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられ、これらの溶媒は1種単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。好ましい溶媒は水、エタノール、含水エタノールである。溶媒分散液には、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、デキストラン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸-グリコール酸共重合体、キチン、キトサン、フィブリン、ヘパリン、トリアルコキシシランなどのシランカップリング剤などが含まれていてもよく、これらの溶媒分散液はコーティング液として使用できる。コーティング液又は塗工液に含まれるナノダイヤモンドの濃度は上記溶媒分散液と同様である。
【0023】
本発明の他の実施形態において、ナノダイヤモンドはポリウレタン樹脂水性分散液、シラノール変性ポリウレタン樹脂水性分散液、ヒドラジドおよびカルボニル基含有ポリウレタン樹脂水性分散液、シリコーンオイルの水性分散液などの水性分散液に含まれたコーティング液又は塗工液であってもよい。これらのコーティング液又は塗工液でコーティングされる物品としては、つり革、手すり、ドアの取っ手、テーブル、イス、デスクマット、キーボード、キャビネット、容器、コンセント、コード、鍵、クレジットカード、キャッシュカード、ポイントカードなどのカード類、財布、パスケース、リモコン、電気製品、ブラシ、はさみ、ハンドル、仕切板、壁紙、自動車内装部材、窓ガラスなどのガラス、金属、台所用シンク、まな板、包丁、玩具などが挙げられる。
【0024】
本発明のウイルス感染症の予防用製品は、洗浄液であってもよい。洗浄液には、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤、抗菌剤などが含まれていてもよい。洗浄液に含まれるナノダイヤモンドの濃度は上記溶媒分散液と同様である。
【0025】
本発明のウイルス感染症の予防用製品は、繊維製品であってもよい。繊維製品は、織物、編物、織布、不織布を含む。繊維製品としては、具体的には、マスク、手袋、布、ガーゼ、タオル、衣類、ぬいぐるみ、マフラー、不織布、カーペット、ソファー、壁紙、カーテン等のインテリア類、布団側地、布団カバー、布団中綿、シーツ、枕カバー、マット等の寝具類、カーシート、カーマット等の自動車部品類、綿、ナイロン、ポリエステル、羊毛等の繊維や、ポリエチレンやポリプロピレンなどの合成繊維等への表面加工または練り込み加工が挙げられる。繊維製品中のナノダイヤモンドの濃度は、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~1質量%である。
【0026】
本発明のウイルス感染症の予防用製品は、化粧料であってもよい。化粧料としては口紅、ファンデーション、マスカラ、アイシャドー、頬紅、マニキュア、ハンドクリーム、乳液、化粧水などが挙げられる。化粧料中のナノダイヤモンドの濃度は、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~1.0質量%である。
【0027】
本発明の製品により予防可能なウイルスは、DNAウイルス、RNAウイルスのいずれでもよいが、RNAウイルスが好ましい。DNAウイルスとしては、アデノ随伴ウイルスが挙げられる。RNAウイルスは二本鎖RNAウイルスと一本鎖RNAウイルスが挙げられ、一本鎖RNAウイルスが好ましい。二本鎖RNAウイルスとしてはロタウイルスが挙げられる。一本鎖RNAウイルスとしては、新型コロナウイルスを含むコロナウイルス、エンテロウイルス、風疹ウイルス、日本脳炎ウイルス、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルス、ノロウイルス、麻疹ウイルス、センダイウイルス、ムンプスウイルス、RSウイルス、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルスが挙げられる。
【0028】
本発明のナノダイヤモンドは、少なくとも1種の爆薬を含む爆薬組成物を混合する工程、得られた混合物を密閉容器内で爆発させる工程を含む製造方法により製造され得る。容器としては、金属製容器、合成樹脂製容器が挙げられる。爆薬組成物は、圧搾法(pressing)、注填法(casting)によって成形することが好ましい。
【0029】
爆薬の平均粒子径は、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。なお、これらの平均粒子径は、レーザ回折・散乱法、光学顕微鏡、ラマン法により測定することができる。
【0030】
爆発により得られた生成物は、さらに精製工程、ポスト処理工程に供することができる。精製工程は、混酸処理を含むことができる。
【0031】
爆薬と異原子化合物を含む爆薬組成物を容器内で爆発させると、ナノダイヤモンドの他に、グラファイト、金属不純物などが生成する。グラファイトと金属酸化物は混酸処理で除去することができる。
【0032】
混酸は、濃硫酸と濃硝酸の混酸を挙げることができ、好ましくは濃硫酸:濃硝酸=1:1(体積比)の混酸を挙げることができる。混酸処理の温度は50~200℃であり、混酸処理の時間は0.5~24時間である。
【0033】
ポスト処理工程は、アニーリング、気相酸化を含むことができる。また、気相酸化によりナノダイヤモンドの表面に形成されたグラファイト層を薄くするか、或いは除去することができる。
【0034】
アニーリングの温度は、好ましくは800℃以上であり、アニーリング時間は30分以上である。
気相酸化は、大気雰囲気下で行うことができ、気相酸化温度は、好ましくは300℃以上であり、気相酸化時間は2時間以上である。
【0035】
爆薬としては、特に限定されず、公知の爆薬を広く用いることができる。具体例としては、トリニトロトルエン(TNT)、シクロトリメチレントリニトラミン(ヘキソゲン、RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(オクトゲン)、トリニトロフェニルメチルニトラミン(テトリル)、ペンタエリスリトールテトラニトレート(PETN)、テトラニトロメタン(TNM)、トリアミノ-トリニトロベンゼン、ヘキサニトロスチルベン、ジアミノジニトロベンゾフロキサンなどが挙げられ、これらを1種単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【実施例0036】
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明する。
【0037】
本実施例では、以下の材料を使用した。
・ζネガティブナノダイヤモンド水分散液:DCY171020(株式会社ダイセル製)
・ζポジティブナノダイヤモンド水分散液:BMP200904(株式会社ダイセル製)
・コントロール:ダルベッコ改変リン酸緩衝液(D-PBS(-))
・インフルエンザウイルス:H1N1 A/PR/8/34(ATCC VR-1469)
・宿主細胞:MDCK細胞(イヌ腎細胞) ATCC CCL-34
DCY171020は、爆轟法で製造した球状のナノダイヤモンドであり、平均粒径が4.1nm、BET比表面積が約291 m2/g、炭素含有量が86.79質量%、水素含有量が0.79質量%、窒素含有量が2.14質量%、ゼータ電位が-35 mVである(pHが9.0の時)。
DCY171020試料は凝集したナノダイヤモンドの水分散液である。精製直後の凝集状態のナノダイヤモンド粉体を純水に加え、超音波で10分間処理を行い、作製した。凝集体の大きさは100nm~数100nmである。
【0038】
BMP200904は、爆轟法で製造した球状のナノダイヤモンドであり、平均粒径が5.0 nm、BET比表面積が約310 m2/g、炭素含有量が91.46質量%、水素含有量が0.73質量%、窒素含有量が2.25質量%、ゼータ電位が+40 mVである(pHが3.0の時)。
BMP200904試料は高分散したナノダイヤモンドの水分散液である。凝集体のナノダイヤモンド粉体を純水に加え、ビーズミル処理により分散させ、調製した。動的光散乱(Dynamic Light Scattering)による粒子径の測定では、D(50)が5.0nmである。
【0039】
実施例1
冷凍保存したインフルエンザウイルス溶液を解凍し、ダルベッコ改変リン酸緩衝液(D-PBS(-))を用いて1~10×10
6PFU/mLとなるように調製した。よく攪拌した試験検体(DCY171020)及び対照溶液を0.9 mL準備し、前述したインフルエンザウイルス溶液0.1mLと混合し、室温で反応させた。反応液は10分おきにボルテックスミキサーを用いて攪拌した。60分処理後、反応液から0.12mL回収し、SCDLP培地1.08mLと混合し10倍希釈を行った。さらにSDCLP培地を用いて10倍段階希釈系列を作成した。10倍段階希釈系列を事前に播種し準備した宿主細胞に1 mL滴下し、37℃5% CO2下で1時間感染処理を行った。ウイルス感染後、細胞上清を0.8%オキソイド寒天溶液に置換し、37℃5% CO
2下で1~2日間培養した。プラークの形成を目視で確認した後、5%グルタルアルデヒド溶液で固定し、メチレンブルー染色を行い、形成されたプラーク数の測定データを元にウイルス感染力価を測定した。結果を
図1に示す。
【0040】
実施例2
試験検体溶液(BMP200904)及び対照溶液を1.08mLずつチューブに分注した。そこにD-PBS(-)を用いて調製した各種ウイルス溶液(1~5×10
6PFU/mL)0.12mLを混合し、反応液とした。反応液はよく撹拌後、室温下で静置した。60分経過後、反応液から0.12mL溶液を回収し、SCDLP培地1.08mLと混合し反応を停止した。反応停止後の溶液をさらにSDCLP培地を用いて10倍ずつ段階希釈し、10倍段階希釈系を作成した。10倍段階希釈液を事前に播種し準備した宿主細胞に1 mL滴下し、37℃5% CO
2下で1時間感染処理を行った。ウイルス感染後、細胞上清を0.8%オキソイド寒天溶液に置換し、37℃5% CO
2下で1~2日間培養した。プラークの形成を目視で確認した後、5%グルタルアルデヒド溶液で固定し、メチレンブルー染色を行い、形成されたプラーク数の測定データを元にウイルス感染力価を測定した。結果を
図2に示す。