(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161750
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 33/00 20060101AFI20221014BHJP
A63H 5/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A63H33/00 P
A63H5/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066814
(22)【出願日】2021-04-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(72)【発明者】
【氏名】鵜池 善仁
(72)【発明者】
【氏名】永岡 悠作
(72)【発明者】
【氏名】真野 瑛子
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150AA12
2C150BB01
2C150CA18
2C150DF31
2C150DG01
2C150FC15
(57)【要約】
【課題】気泡緩衝材を潰す感覚を繰り返し楽しむ事ができる玩具において、操作感を本物の気泡緩衝材の気泡を潰すそれにより似せる技術を提供すること。
【解決手段】玩具2は、正面側に複数の凸部31が形成された第1シート30を有する。第1シート30の背面には第2シート40が接着されて、凸部31それぞれは個別に気体封入状態に密閉される。第2シート40の背面側には、凸部31それぞれに対応するタクタイルスイッチ61の可動接点62がある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面側に突出するN個(N≧2)の凸部が形成された第1シートと、
前記第1シートの背面に接着されることで、前記凸部それぞれを個別に気体封入状態に密閉する第2シートと、
前記第2シートの背面側に前記凸部それぞれに対応する位置に設けられた可動接点と、
演出出力部と、
前記可動接点の導通状態に基づいて前記演出出力部の演出出力を制御する電子制御部と、
を備え、
前記可動接点は、対応する前記凸部への押圧が当該凸部内の密閉気体を介して伝達されることで個別にオフ状態からオン状態に変化する、
玩具。
【請求項2】
前記可動接点は、タクタイルスイッチ用の接点であり、
前記可動接点の動作を、当該可動接点に対応する前記凸部内の密閉気体を介して前記第1シートの正面側で触覚検知可能な、
請求項1に記載の玩具。
【請求項3】
前記凸部は円錐台形状である、
請求項1又は2に記載の玩具。
【請求項4】
前記可動接点は、正面側から見て、対応する前記凸部の下面外形に収まる大きさである、
請求項1~3の何れか一項に記載の玩具。
【請求項5】
前記可動接点は、正面側から見て、対応する前記凸部の上面外形に収まる大きさである、
請求項1~4の何れか一項に記載の玩具。
【請求項6】
前記凸部は、上面の厚さよりも側面の厚さの方が薄い、
請求項1~5の何れか一項に記載の玩具。
【請求項7】
前記第1シート及び前記第2シートは、半透明であり、
前記第2シートと前記可動接点との間に設けられた不透明のシート、を更に備える請求項1~6の何れか一項に記載の玩具。
【請求項8】
前記第1シートは、背面の前記凸部の周部に当該凸部を取り囲む環状の溝部を1つ又は複数有する、
請求項1~7の何れか一項に記載の玩具。
【請求項9】
前記第2シートは、前記可動接点に対向する位置に、前記可動接点に向けて突出する突出部を有する、
請求項1~8の何れか一項に記載の玩具。
【請求項10】
前記第1シートは、前記N個の凸部の他に、M個のダミー凸部を有し、
前記第2シートは、前記ダミー凸部それぞれに対応する位置に通気孔を有する、
請求項1~9の何れか一項に記載の玩具。
【請求項11】
前記可動接点、前記演出出力部、及び前記電子制御部を有する基部と、
枠体と、
を更に備え、前記基部と前記枠体との間に前記第1シート及び前記第2シートが配置されている請求項1~10の何れか一項に記載の玩具。
【請求項12】
前記演出出力部は、スピーカを有し、
前記基部は、電池を収容する収容部と前記スピーカを収容するスピーカ収容部とを背面側に突出して有し、当該収容部及び当該スピーカ収容部以外の非突出部分がユーザによる把持部として構成された、
請求項11に記載の玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡緩衝材を潰す感覚を繰り返し楽しむ事ができる玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
商品包装等に用いられる気泡緩衝材の一種として、多数の気泡が幾何的に配置されたシートタイプの緩衝材がある。エアーキャップ(登録商標)やプチプチ(登録商標)として商品化されているそうした気泡緩衝材は、破棄される前に気泡を潰す遊びに使われることがある。気泡緩衝材は薄いビニールで作られており、気泡を潰すと元には戻らないので、全ての気泡を潰してしまうとそれ以上遊ぶことはできない。
【0003】
特許文献1には、気泡緩衝材を潰す感覚を繰り返し楽しむ事ができる玩具が開示されている。当該玩具を使えば、いつまでも何度でも気泡を潰す遊びを楽しめるだけでなく、遊戯的要素もありストレスの発散もできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の玩具では、気泡緩衝材の気泡を模したシリコーンラバーシート越しに、シリコーンラバーの中実体(特許文献1の大ボタン501と小ボタン601とを有する第2ボタンシート203)を介して、タククトスイッチを押す構成となっている。そのため、本物の気泡緩衝材のような気泡を潰す操作感とは若干異なる感覚があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、本物の気泡緩衝材の気泡を潰すかのような操作感を得ることができる玩具の技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、正面側に突出するN個(N≧2)の凸部が形成された第1シートと、前記第1シートの背面に接着されることで、前記凸部それぞれを個別に気体封入状態に密閉する第2シートと、前記第2シートの背面側に前記凸部それぞれに対応する位置に設けられた可動接点と、演出出力部と、前記可動接点の導通状態に基づいて前記演出出力部の演出出力を制御する電子制御部と、を備え、前記可動接点は、対応する前記凸部への押圧が当該凸部内の密閉気体を介して伝達されることで個別にオフ状態からオン状態に変化する、玩具である。
【0008】
また、前記可動接点は、タクタイルスイッチ用の接点であり、前記可動接点の動作を、当該可動接点に対応する前記凸部内の密閉気体を介して前記第1シートの正面側で触覚検知可能である、としてもよい。
【0009】
また、前記凸部は円錐台形状である、としてもよい。
【0010】
また、前記可動接点は、正面側から見て、対応する前記凸部の下面外形に収まる大きさである、としてもよい。
【0011】
また、前記可動接点は、正面側から見て、対応する前記凸部の上面外形に収まる大きさである、としてもよい。
【0012】
また、前記凸部は、上面の厚さよりも側面の厚さの方が薄い、としてもよい。
【0013】
また、前記第1シート及び前記第2シートは、半透明であり、前記第2シートと前記可動接点との間に設けられた不透明のシート、を更に備える、としてもよい。
【0014】
また、前記第1シートは、背面の前記凸部の周部に当該凸部を取り囲む環状の溝部を1つ又は複数有する、としてもよい。
【0015】
また、前記第2シートは、前記可動接点に対向する位置に、前記可動接点に向けて突出する突出部を有する、としてもよい。
【0016】
また、前記第1シートは、前記N個の凸部の他に、M個のダミー凸部を有し、前記第2シートは、前記ダミー凸部それぞれに対応する位置に通気孔を有する、としてもよい。
【0017】
また、前記可動接点、前記演出出力部、及び前記電子制御部を有する基部と、枠体と、を更に備え、前記基部と前記枠体との間に前記第1シート及び前記第2シートが配置されている、としてもよい。
【0018】
また、前記演出出力部は、スピーカを有し、前記基部は、電池を収容する収容部と前記スピーカを収容するスピーカ収容部とを背面側に突出して有し、当該収容部及び当該スピーカ収容部以外の非突出部分がユーザによる把持部として構成されている、としてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1シートと第2シートとが、本物の気泡緩衝材の気泡と同様の気体封入状態の凸部を形成する。この凸部は、気泡を押しつぶすような操作を受けて弾性変形はするが、操作を解除すれば気密が破れることなく元の状態に復元する。そして、気泡を押しつぶす操作をされた凸部は、弾性変形しつつ背面側に操作力を伝えて可動接点を作動させる。可動接点の作動によって、例えば、玩具からは気泡を潰したときの音を模した演出音などが演出出力される。よって、本物の気泡緩衝材の気泡を潰すかのような操作感を得ることができる玩具を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】玩具のIII-III断面を、Y軸マイナス方向から見たXZ断面図及び部分拡大図。
【
図4】第1シートを正面斜め上から見た斜視外観図。
【
図5】第1シートを背面斜め上から見た斜視外観図。
【
図6】第2シートを正面斜め上から見た斜視外観図。
【
図7】第2シートを背面斜め上から見た斜視外観図。
【
図8】1つの凸部の周りを拡大して示すXZ断面図。
【
図9】ユーザが玩具を操作した状態における1つの凸部の周りを拡大して示すXZ断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の例を説明するが、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限られないことは勿論である。また、各図には右手系の直交三軸を示す。直交三軸のX軸プラス方向を正面又は前、X軸マイナス方向を背面又は後、Y軸プラス方向を左、Y軸マイナス方向を右、Z軸プラス方向を上、Z軸マイナス方向を下、として説明する。
【0022】
図1は、本実施形態の玩具2の構成例を示す図であって、玩具2を正面斜め上から見た斜視外観図である。
図2は、玩具2を背面斜め上から見た斜視外観図である。
【0023】
玩具2は、気泡緩衝材を潰す感覚を繰り返し楽しむ事ができる携帯可能な略箱型の小型の玩具である。玩具2は、基部4の正面側に枠体6を有する。
【0024】
基部4の上部には、ストラップホール8と、演出出力用のLED10と、が設けられている。また、基部4の背面には、収容蓋部12付きの電池収容部14と、スピーカ収容部16とが、突設されている。基部4の背面のうち、電池収容部14及びスピーカ収容部16以外の非突出部分は、前後方向の厚さがスピーカ収容部16よりも薄く作られており、玩具2を前後方向に手指で把持するための把持部18として形成されている。
【0025】
玩具2は、基部4と枠体6との間でシートアッセンブリ20の上下左右の外縁部を挟持している。枠体6の窓部からは、シートアッセンブリ20の複数の凸部31及び複数のダミー凸部33が、正面側に突出して露出している。凸部31及びダミー凸部33は、シート状の気泡緩衝材の気泡を模して形作られている。ユーザは、親指の腹を凸部31の上面に当て、人差し指他の手指を玩具2の背面に回して把持部18に掛けて玩具2を保持する。そして、親指で凸部31を押し潰す要領で操作して遊ぶ。
【0026】
凸部31を操作すると内部で回路がONになり、玩具2は、スピーカ収容部16に内蔵されているスピーカから、気泡緩衝材の気泡を潰した時に発せられる音に似せた演出音を放音させ、LED10を所与の演出パターンで発光させる。
【0027】
図3は、玩具2のIII-III断面(
図1参照)を、Y軸マイナス方向から見たXZ断面図及び部分拡大図である。なお、理解を容易にするために、電気配線や細かな電子電気部品の図示は省略している。
【0028】
玩具2は、基部4と枠体6との間に、正面側から順に、シートアッセンブリ20と、スペーサ52と、制御基板60と、内部の支持構造体であるインナーケース70と、を保持する。
【0029】
シートアッセンブリ20は、積層シート体であって、正面側から順に、第1シート30・第2シート40・不透明シート50の3つのシートが層状に接着されて形成されている。
【0030】
図4は、第1シート30を正面斜め上から見た斜視外観図である。
図5は、第1シート30を背面斜め上から見た斜視外観図である。
第1シート30は、半透明又は透明のシリコーンラバーで成形されている。
第1シート30は、N個(Nは2以上の整数)の凸部31と、M個(Mは1以上の整数)のダミー凸部33と、を有する。凸部31及びダミー凸部33は、正面視すると所定の幾何的な位置関係で配置されている。
【0031】
凸部31は、本物の気泡緩衝材の気泡を模した略円錐台の形状の外形を有しており、背面側に開口した略円錐台形状の内部空間を形成している。なお、凸部31の外形及び内部空間の形状はこれに限らず適宜設定可能である。例えば、円筒形でもよい。正面から見ると長楕円に見える形状でもよい。
【0032】
凸部31の背面側の開口部の外周部分には、環状溝部35が形成されている。環状溝部35は、前後方向の凹凸を形成して、第1シート30と第2シート40とを接着するための接着剤を保持する空間を確保し、開口部の周囲の接着強度を高めるのに寄与する。環状溝部35の溝の諸元や数は、第1シート30や第2シート40の材質、接着剤の仕様などに応じて適宜設定可能である。
【0033】
図6は、第2シート40を正面斜め上から見た斜視外観図である。
図7は、第2シート40を背面斜め上から見た斜視外観図である。
第2シート40は、半透明又は透明のシリコーンラバーで成形されている。
第2シート40は、正面側が平坦に形成されているが、ダミー凸部33に対向する位置に通気孔41を有する。また、第2シート40は、背面側に、凸部31それぞれに対応する位置関係において、薄肉凹部43及び突起部45を有する。具体的には、凸部31の正面視中心と、当該凸部31に対応する薄肉凹部43及び突起部45の背面視中心とが、同じYZ平面座標を有する位置に、薄肉凹部43及び突起部45が設けられている。
【0034】
薄肉凹部43は、X軸方向(前後方向)の厚さが周囲よりも局所的に薄く設定されて背面方向に開口したドーナツ形状の皿状の凹部である。突起部45は、薄肉凹部43の中央部から背面方向に向けて形成された部位である。
【0035】
図3に戻って、第1シート30の背面側には、環状溝部35に接着剤が塗布された後、第2シート40の正面側が対向するようにして接着される。これにより、凸部31は、背面側開口部が第2シート40で閉じられて密閉空間を形成し、気密空気が封入された気体封入状態となる。
【0036】
第2シート40の背面側には、不透明シート50が貼りつけられる。
不透明シート50は、印刷可能で且つ弾性変形可能な樹脂シートである。例えば、PET(polyethylene terephthalate)シートや不透明シリコーンラバーで実現される。不透明シート50は、半透明又は透明な第1シート30及び第2シート40越しに、玩具2の内部が透けて見えない様にする。不透明シート50の正面側に様々な絵柄を印刷した種類違いを用意すれば、バリエーション違いの玩具2を作り出すことができる。
【0037】
不透明シート50の背面側には、スペーサ52を介して制御基板60が配置される。
スペーサ52は、不透明シート50と制御基板60との間に可動接点62の設置スペースを確保する部材である。スペーサ52は、例えばX軸方向に薄い板状部材であって、凸部31それぞれの背面側に、薄肉凹部43と同径又は略同径のX軸方向に貫通した貫通孔54を有する。
【0038】
制御基板60は、凸部31それぞれに対応して設けられたタクタイルスイッチ61と、電子制御部65と、各種電子・電気部品とを搭載し、電池収容部14に収容されているボタン電池80から電力供給を受ける。そして、制御基板60は、第1の演出出力部であるスピーカ収容部16に収容されているスピーカ82と、第2の演出出力部であるLED10と、に電気的に接続され、これらの演出出力を制御する。
【0039】
タクタイルスイッチ61は、可動接点62と固定接点63とを有し、これらの接点は電子制御部65に接続されている。可動接点62は、反転バネとして機能する金属製の薄いドーム形状材であって、標準状態においてドームが突起部45に対向する位置に配置されている。固定接点63は、可動接点62のドーム内方において、可動接点62の形状が背面方向に反転した際に可動接点62が接触する位置関係に配置されている。
【0040】
電子制御部65は、可動接点62と固定接点63との導通状態に基づいて、スピーカ82(第1の演出出力部)と、LED10(第2の演出出力部)との演出出力を制御する。電子制御部65は、例えば、ICチップ、SoC(System on a Chip)により実現できる。
【0041】
図8は、1つの凸部31の周りを拡大して示すXZ断面図である。
凸部31周りの各部寸法の大小関係に着目すると、凸部31は、上面の厚さtpよりも側面の厚さtsの方が薄く、凸部31を正面側から見た上端部の外径φ1は、正面側から見た下端部の外径φ2よりも小さく設定されている。
【0042】
第2シート40の薄肉凹部43の径と、スペーサ52の貫通孔54の径とは、凸部31の背面側開口部の径と同じ又は略同じに設定されている。
【0043】
タクタイルスイッチ61を正面から見た外径φ3(可動接点62の外形相当)は、第2シート40の突起部45の突端径φ4よりも大きいが、第2シート40の薄肉凹部43の径φ5よりは小さく設定されている。また、可動接点62の外径φ3は、凸部31を正面側から見た上端部の外径φ1よりも小さく、且つ、凸部31を正面側から見た下端部の外径φ2よりも小さい。つまり、可動接点62は、正面側から見て、対応する凸部31の下面外形及び凸部31の上面外形に収まる大きさである、と言える。
【0044】
図9は、ユーザが玩具2を操作した状態における1つの凸部31の周りを拡大して示すXZ断面図である。
ユーザは、親指の腹を凸部31の正面側の端面に当て、人差し指他の手指を玩具2の背面に回して把持部18に掛けて玩具2を保持する。そして、ユーザは、親指で凸部31を、本物の気泡緩衝材の気泡を潰す要領で押圧する。
【0045】
凸部31は、当該操作による押圧により
図9に示すように変形する。すなわち、凸部31の上下左右の側面が外向きに膨らんで変形し、且つ、第2シート40の薄肉凹部43が背面方向に向けて膨らむように変形する。ユーザの手指には、本物の気泡緩衝材の気泡を押し潰すときの感触に良く似たリアルな感触が伝わる。
【0046】
第1シート30と第2シート40とは、環状溝部35の溝に保持された接着剤で強固に密着されており、押し潰す要領で押圧されても凸部31の気密は破れることはない。加えて、押された分の気密気体の大部分は、上面の厚さtpよりも薄い厚さtsの側面に集中することで凸部31の上下左右の側面が外向きに膨らむこととなる。これにより、押された分の気密気体が第1シート30と第2シート40との隙間に作用して接着部を引き剥がすことはない。
【0047】
そして、第2シート40の薄肉凹部43が背面方向に向けて膨らむと、不透明シート50もまた背面方向へ弾性変形し、突起部45が不透明シート50越しに可動接点62を押し、可動接点62のドーム形状を、正面側から背面側へ反転した形状に変形させる。
【0048】
構造上、可動接点62の形状の反転動作に伴う衝撃は、当該可動接点62に対応する凸部31内の密閉気体を介して第1シート30に伝わるので、第1シート30の正面側で触覚検知可能である。可動接点62を金属製のドーム形状材としたことで、可動接点62の反転動作に伴い生じる衝撃は小さいが、金属製のドーム形状材を使わない場合のそれよりもシャープになる。この小さいがシャープな衝撃が、凸部31を介してユーザの指に伝わり、あたかも本物の気泡緩衝材の気泡が破裂したかのような感覚をユーザに与える。この衝撃のシャープさが、従来の同類の玩具では実現できなかったリアルな感触を生み出す重要な要素の1つとなっている。
【0049】
可動接点62が反転すると、可動接点62と固定接点63とが個別に導通状態(オン状態)となり、電子制御部65が所定の演出出力制御を行う。すなわち、LED10を所定の発光パターンで発光させ、スピーカ82から本物の気泡緩衝材の気泡が弾けた時の音を模した演出音を放音させる。
【0050】
ユーザが凸部31から指を離すと、可動接点62の反転が解けて正面側に向けて凸の状態に戻り、可動接点62と固定接点63との接触が解けて非導通状態(オフ状態)になる。また、凸部31はその弾性力により元の形状に復元する。つまり、ユーザは、同じ凸部31を再び押し潰すように操作することが可能になる。
【0051】
以上、本実施形態によれば、本物の気泡緩衝材の気泡を潰すかのような操作感を得ることができる玩具を実現できる。
【0052】
また、ユーザが、ダミー凸部33を押し潰すように操作しても、対応するタクタイルスイッチ61が無く、通気孔41でダミー凸部33の空気が簡単に抜けることから、上述のような凸部31を押した時のような演出出力も無ければ、指に衝撃が返ってくる感触も無い。本物のシート状の気泡緩衝材の端が切られた状態で、その端の部分に一部が残っている欠けた気泡を押したかのような、押し潰す触感が得られない状態を、ダミー凸部33で再現している。
【0053】
〔変形例〕
本発明を適用可能な実施形態は、上記の例に限らず適宜構成要素の追加・省略・変更が可能である。
【0054】
(変形例その1)
例えば、上記実施形態では、演出出力の形態として、LED10による発光と、スピーカ82からの放音との2つを例示したがこれに限らない。例えば、LED10による発光を省略してもよいし、バイブレータを追加して短い加振を演出出力に加えても良い。
【0055】
(変形例その2)
上記実施形態のタクタイルスイッチ61の可動接点62として、金属製ドーム形状材の板厚や材質の違いによる、形状反転に要する荷重が異なる複数種類の可動接点62を混在させてもよい。当該構成によれば、本物の気泡緩衝材の気泡であっても、潰し難い気泡と、比較的簡単につぶれる気泡とがあるような、まばらな気泡がある状態を玩具2にて再現することができる。更に言えば、可動接点62の種類別に、スピーカ82から放音する音色を、例えば異なる破裂音としてもよい。
【符号の説明】
【0056】
2…玩具
4…基部
6…枠体
8…ストラップホール
10…LED
12…収容蓋部
14…電池収容部
16…スピーカ収容部
18…把持部
20…シートアッセンブリ
30…第1シート
31…凸部
33…ダミー凸部
35…環状溝部
40…第2シート
41…通気孔
43…薄肉凹部
45…突起部
50…不透明シート
52…スペーサ
54…貫通孔
56…シート
60…制御基板
61…タクタイルスイッチ
62…可動接点
63…固定接点
65…電子制御部
70…インナーケース
80…ボタン電池
82…スピーカ