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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161762
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】船舶用プロペラ推進装置
(51)【国際特許分類】
   B63H 1/28 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
B63H1/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066834
(22)【出願日】2021-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】521156011
【氏名又は名称】李 秀男
(74)【代理人】
【識別番号】100181087
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 知久
(72)【発明者】
【氏名】李 秀男
(57)【要約】
【課題】船舶スクリュープロペラの後方に効果的な供給量の気体を送り込む船舶用プロペラ推進装置を提供する。
【解決手段】実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Aは、内軸シャフト21aの外周面と外軸シャフト22aの内周面との間に設けられた送風路23aに気体を送風可能とする2重軸シャフト2Aと、2重軸シャフト2Aに結合されて回転する1又は複数のプロペラ3Aと、2重軸シャフト2Aの後端側の送風路23aの吐出口212aを開口及び閉塞可能に設けられた、スライド可能な邪魔板4Aとを備えている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内軸シャフトと、当該内軸シャフトの外周側に設けられる外軸シャフトとが同心軸に位置する2重軸シャフトを有する船舶用プロペラ推進装置であって、
前記内軸シャフトの外周面と前記外軸シャフトの内周面との間に設けられた送風路に気体を送風可能とする前記2重軸シャフトと、
前記2重軸シャフトに結合されて回転する1又は複数のプロペラと、
前記2重軸シャフトの後端側の前記送風路の吐出口を開口及び閉塞可能に設けられた邪魔板とを、備え、
前記邪魔板を前記2重軸シャフトの後端側の前記送風路の前記吐出口を開口及び閉塞するようにスライド可能に制御する
ことを特徴とする船舶用プロペラ推進装置。
【請求項2】
前記送風路の前記吐出口と対向する前記邪魔板の面方向と反対の面方向側に、複数の後方拡散フィンを設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の船舶用プロペラ推進装置。
【請求項3】
前記送風路の前記吐出口と対向する前記邪魔板の前記面方向側に、複数の軸流拡散フィンを設けた
ことを特徴とする請求項2に記載の船舶用プロペラ推進装置。
【請求項4】
前記同心軸を回転軸の中心として、前記邪魔板を回転可能に制御する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の船舶用プロペラ推進装置。
【請求項5】
前記邪魔板は、前記同心軸を回転軸の中心として、前記内軸シャフトの軸回転よりも高速回転となるように前記内軸シャフトの後端側に遊星ギアと太陽ギアとの組み合せにより回転可能に設けられた
ことを特徴とする請求項4に記載の船舶用プロペラ推進装置。
【請求項6】
前記送風路から前記プロペラのプロペラ翼へ気体を吐出させるためのスリット管が設けられて、当該スリット管から前記プロペラ翼の外部へ気体を吐出させるプロペラスリットが設けられた
ことを特徴とする請求項1乃至請求5のいずれか一項に記載の船舶用プロペラ推進装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用プロペラ推進装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶スクリュープロペラ後方に気体を送り込むと、プロペラの推進効率が良くなることは知られている。そのため、プロペラの推進効率を上げるための種々の船舶用プロペラ推進装置が開発、提案等されている。
【0003】
なお、船舶用推進補助装置において、船舶のスクリュープロペラ前面側もしくはウォータージェットの噴出し口前面側に形成される水流内に設けられる空気排出口と、空気排出口と大気とを連通させる連通管とから構成することで、空気排出口から、水流により生じる負圧によって水流内に空気が細かな気泡となって混合し、スクリュープロペラ等により生じる水流とこの水流の周りの水との間の負圧を緩和して、スクリュープロペラやウォータージェット噴出し口を後方に引き戻す力を抑制することが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-62683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の船舶用プロペラ推進装置では、船舶スクリュープロペラ後方に気体を送り込む場合に、プロペラの推進効率が良くなることは知られている。しかしながら、さらに推進効率を上げるための、より十分で効果的な供給量を送り込む装置となるように改善の余地がある。
【0006】
例えば、特許文献1等に記載されている技術のように、単にプロペラ後方の水流に空気を排出方法では、排出される空気を多量にした場合でも、水流に十分に撹拌されず、気液混合状態が十分とは言えない状態のため、プロペラの推進効率の向上には限界があった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、船舶スクリュープロペラの後方に効果的な供給量の気体を送り込む船舶用プロペラ推進装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る船舶用プロペラ推進装置は、内軸シャフトと、当該内軸シャフトの外周側に設けられる外軸シャフトとが同心軸に位置する2重軸シャフトを有する船舶用プロペラ推進装置である。当該船舶用プロペラ推進装置は、前記内軸シャフトの外周面と前記外軸シャフトの内周面との間に設けられた送風路に気体を送風可能とする前記2重軸シャフトと、前記2重軸シャフトに結合されて回転する1又は複数のプロペラと、前記2重軸シャフトの後端側の前記送風路の吐出口を開口及び閉塞可能に設けられた邪魔板とを、備え、前記邪魔板を前記2重軸シャフトの後端側の前記送風路の前記吐出口を開口及び閉塞するようにスライド可能に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る船舶用プロペラ推進装置によれば、船舶スクリュープロペラの後方に効果的な供給量の気体を送り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る船舶用プロペラ推進装置の第1の実施形態の構成の一例を示す図である。
図2図1に示す船舶用プロペラ推進装置のI-I矢視線方向から視た構造を示す斜視図である。
図3図1に示す船舶用プロペラ推進装置の邪魔板のスライド制御動作の一例を示す図である。
図4】第2の実施形態の船舶用プロペラ推進装置の構造の一例を示す斜視図である。
図5図4に示す船舶用プロペラ推進装置の側面透視図である。
図6図5に示す船舶用プロペラ推進装置の邪魔板の構造の一例を示す図である。
図7図5に示す船舶用プロペラ推進装置の邪魔板が吐出口を開いた場合及び閉じた場合における説明図である。
図8】第3の実施形態の船舶用プロペラ推進装置の構造の一例を示す図である。
図9】第4の実施形態の船舶用プロペラ推進装置の構造の一例を示す図である。
図10図9に示す邪魔板の構成の一例を示す図である。
図11】第5の実施形態の船舶用プロペラ推進装置を用いた船舶の一例を示す図である。
図12】第5の実施形態の船舶用プロペラ推進装置の構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る船舶用プロペラ推進装置の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。ここで、本発明に係る船舶用プロペラ推進装置の構造等についての説明するために、以降の実施形態ではいずれも、海洋、湖等を航行する船舶に取り付けられた場合の一例をとりあげて説明する。なお、本発明に係る船舶用プロペラ推進装置は、海洋、湖等の水面を航行する船だけでなく、水中を潜航する潜水艦等の船舶用プロペラ推進装置にも適用可能である。
【0012】
[第1の実施形態]
以下、本発明に係る船舶用プロペラ推進装置の実施形態の構成について、図1乃至図3を用いて説明する。ここで、図1(a)は、本発明に係る船舶用プロペラ推進装置1Aの第1の実施形態の構成の一例を示す図である。図1(b)は、図1(a)に示す船舶用プロペラ推進装置1AのII-II矢視線方向から視た縦断面図である。図2は、図1に示す船舶用プロペラ推進装置1AのI-I矢視線方向から視た構造を示す斜視図である。図3は、図1に示す船舶用プロペラ推進装置1Aの邪魔板4Aのスライド制御動作の一例を示す図である。
【0013】
なお、図1(a)、図3(a)及び(b)に示す円筒状の外軸シャフト22aを、軸心に沿って切断したイメージを示すが、その他の破線、符号線等の記載が見難くなるのを回避するため、切断線等のハッチング線は略して示すものとする。また、図4以降の図面の記載についても同様とする。
【0014】
図1及び図2に示す船舶用プロペラ推進装置1Aは、例えば内軸シャフト21aと、当該内軸シャフト21aの外周側に設けられる外軸シャフト22aとが同心軸に位置する2重軸シャフト2Aを有する装置である。
【0015】
例えば、船舶用プロペラ推進装置1Aは、図1及び図2に示すように、主に、内軸シャフト21aの外周面と外軸シャフト22aの内周面との間に設けられた送風路23aに気体を送風可能とする2重軸シャフト2Aと、2重軸シャフト2Aに結合されて回転する1又は複数のプロペラ3Aと、2重軸シャフト2Aの後端側の送風路23aの吐出口221aを開口及び閉塞可能に設けられた邪魔板4Aとを備えている。
【0016】
船舶用プロペラ推進装置1Aは、邪魔板4Aを2重軸シャフト2Aの後端側の送風路23aの吐出口221aを開口及び閉塞するようにスライド可能に制御する。
【0017】
2重軸シャフト2Aは、内軸シャフト21aと、当該内軸シャフト21aの外周側に設けられる外軸シャフト22aとが同心軸に位置する2重構造のシャフト構造である。2重軸シャフト2Aは、船舶の船体に備えられたエンジンの回転軸に回転可能なように結合される。
【0018】
船体91aに取り付けられる2重軸シャフト2Aにおいて、例えば図1(a)に示すように、船体91a側に固定される軸受支持材92aとシャフト軸補強部24aとが接合されている。シャフト軸補強部24aは、例えば外軸シャフト22aと船体91aとの間に設けられ、内軸シャフト21aを軸回転可能に支持するために、ベアリング242a及びベアリング243aによって内軸シャフト21aを支持する。図1(b)は、図1(a)に示す船舶用プロペラ推進装置1AのII-II矢視線方向から視た断面図であり、この図中に、ベアリング242aの断面が含まれている。
【0019】
また、シャフト軸補強部24aにおいて、例えば軸受外周部241aが船体91aに強固に接合されている軸受支持材92aによって、船体91aに設けられる船舶用プロペラ推進装置1Aの強度及び安定性等が補強されている。
【0020】
オイル管導入用ベアリング244aは、例えば内軸シャフト21a外の油圧配管51aから内軸シャフト21aへのオイル導入用配管を設けるために、内軸シャフト21aの特定区分にベアリングで支持されたシャフト部分である。
【0021】
図2は、図1(a)に示す船舶用プロペラ推進装置1AのI-I矢視線方向から視た構造を示す斜視図である。プロペラ翼31aが外軸シャフト22aに溶接、固定された構造であり、かつ、プロペラ基軸34aは外軸シャフト22aと共に内軸シャフト21aに接続されている。これにより、プロペラ3Aは、内軸シャフト21aの軸回転に同期して回転する。
【0022】
プロペラ3Aを構成する複数のプロペラ翼31aは、各々の翼の方向から外軸シャフト22aに接続されて、すべてのプロペラ翼31aがプロペラ基軸34aに接続されている。プロペラ基軸34aは内軸シャフト21aに接続されている。
【0023】
プロペラ3Aにおいて、内軸シャフト21aと外軸シャフト22aの送風路23aから気体を導入する気体導入路33aが外軸シャフト22bを貫通してプロペラ翼31aへ管経路が設けられ、気体導入路33aからプロペラ翼31aのスリット管32aへ気体を導入可能とする。これにより、各プロペラ翼31aのスリット管32aから空気等を吐出可能とされている。なお、送風路23aから気体を導入する気体導入路33aに、送風路23aから気体の導入を遮断可能なように、制御可能な開閉弁を備えてもよい。また、スリット管32aは、管状のスリットだけでなく、例えばスリット、穴孔等の開口部分へ気体導入路33aから導入された気体が吐出可能である部位であればよい。
【0024】
プロペラ翼31aのプロペラ素材は、好ましくは、例えば炭素繊維、金属・合金、樹脂、ガラス繊維などの単一又は複合材が効果的である。構造的にも、プロペラ羽1枚ずつの設置が可能であるため、製造コストの低下にもつながる。
【0025】
ここで、2重軸シャフト2Aの主な構造の特徴例として、
(1)2重軸シャフト2Aの内周側の内軸シャフト21aに沿って、送風路23aへ多量の空気を送風可能であり、内軸シャフト21aに沿って前方から後方へ、内軸シャフト21aに沿った多量の空気の軸流(1点鎖線の矢印)を起すことができる。外軸シャフト22aは、内軸シャフト21aの外周面側に環装されており、図1等に示す例のプロペラ3Aを回転させるプロペラシャフトである。
【0026】
(2)2重軸シャフト2Aの軸後端部には邪魔板4Aが設けられ、空気の軸流が送風路23aの軸端の吐出口221aから吐出して、図1及び図2等に示すように、邪魔板4Aにあたる構造である。
【0027】
(3)内軸シャフト21aの外周面と外軸シャフト22aの内周面とに囲まれた空間内に気体を送出できる送風路23aを設けることができ、送風路23aの軸端の吐出口221aの閉塞及び解放とするように、図3(a)及び(b)に示すような内軸シャフト21aの軸端側から邪魔板4Aをスライド可能に制御する構造である。
【0028】
(4)さらに、2重軸シャフト2Aにおいて、内軸シャフト21aと外軸シャフト22aの送風路23aから空気を吐出させるためのスリット、気体導入路33a等を設けて、この空気をプロペラ翼31aの孔、スリット管32a等へも吐出させる構造にすることができる。
【0029】
以上のような2重軸シャフト2Aの構造等により、内軸シャフト21aと外軸シャフト22aとの間に沿って、送風路23aへ多量の気体を送風できるため、かつ、吐出する気体を邪魔板4Aにより制御して、プロペラ後方へ効果的な供給量の空気を送り込むことができる。これにより、船舶の推進力増加や、燃費を向上することができる。また、上記の船舶の推進力増加や、燃費の向上により、プロペラ形状を小型化設計可能とすることができる。
【0030】
<邪魔板について>
邪魔板4Aは、例えば圧力センサー72aなどに基づいて制御され、所定の圧力になれば軸のシャフト方向に沿ってスライド移動して吐出口221aを閉じて、またはスライド移動して吐出口221aを開くことが可能となる。スライド移動は、例えば油圧ポンプ71a、モーター等により行い、吐出口221aを開閉可能とする。気体供給管61a及び62aから2重軸シャフト2Aへ気体を供給し、2重軸シャフト2A内の送風路23aには気体で充足される。
【0031】
邪魔板4Aを回転させることができるため、邪魔板4Aにより拡散する気体を、プロペラ後方へ送出して、水流のボイド率を高めることができる。これにより、プロペラ3Aの回転エネルギー消費低減につながる。
【0032】
邪魔板4Aに伴流が認められれば、背後に整流形状物(フィン形状)を設置してもよい。邪魔板4A自体も、吐出口221aを開閉可能である、撹拌効率の良い撹拌形状物に加工してもよい。
【0033】
<邪魔板のスライド制御動作例の概要>
図3に、図1に示す船舶用プロペラ推進装置1Aの邪魔板4Aのスライド制御動作の一例を示す。船舶用プロペラ推進装置1Aは、図3(a)及び(b)に示すように、内軸シャフト21aの外周面と外軸シャフト22aの内周面とに囲まれた空間である送風路23aの吐出口221aを閉塞及び解放とするように、邪魔板4Aを軸端の吐出口221aからスライド可能に制御する。例えば、以下のような油圧制御を用いた邪魔板4Aの制御動作の一例を説明する。
【0034】
例えば、船舶の停止状態では、図3(b)に示すように、邪魔板4Aが軸端の吐出口221aを閉じて、送風路23aの軸流からの送風を停止する。
【0035】
船舶のエンジン稼働後、制御盤73aが気体供給管62aの圧力センサー72aの圧力検出によって、気体圧が一定圧力に達したと感知した時に、制御盤73aが油圧ポンプ71aに油圧を高める指令を出す。この制御盤73aの指令により、油圧ポンプ71aは、油圧系統5Aのうちの油圧配管51a~52aの経路を通じて、油圧シリンダー53aを軸端側へ押し出すように作動する。
【0036】
これにより、図3(a)に示すように、邪魔板4Aが油圧シリンダー53aの作動によりスライドして、邪魔板4Aが軸受け間の軸端の吐出口221aを開き、送風路23aを開放して、軸端の吐出口221aから空気を吐出する。
【0037】
また、以下のような場合にも、制御盤73aの手動操作又は自動制御により、油圧ポンプ71aを作動させる。例えば万一、事故・故障等による気体の圧力低下が生じた場合、制御盤73aの手動操作又は自動制御により、油圧ポンプ71aが作動し、図3(b)に示すように、邪魔板4Aがスライドして軸受け間の吐出口221aを閉じて、送風路23aを閉塞する。吐出口221aを閉じた後、プロペラ翼31aのスリット管32aに必要なだけの圧力(気体の供給量)にする。
【0038】
スライド制御は、図3(a)及び(b)に示す油圧ポンプ71aの油圧配管51a及び52aのコントロールにより、油圧シリンダー53aの軸方向に沿ったスライド長の伸縮を制御するものである。
【0039】
図3(a)に示す例では、油圧ポンプ71aが所定の圧力より高めの圧力となるように、油圧配管51a及び52aを介して、油圧を上げる。また、図3(b)に示す例では、油圧ポンプ71aが所定の圧力より低めとなる圧力となるように、油圧配管51a及び52aを介して、油圧を下げる。
【0040】
制御盤73aでは、気体供給管61a及び62aにおける気体の圧力を圧力センサー72aで監視し、気体圧に異常が生じていないかをチェックする。制御盤73aは、圧力センサー72aの監視結果に基づいて、手動操作又は自動制御等により、油圧ポンプ71aの油圧コントロールを行う。
【0041】
以上に示すように、油圧系統5Aの油圧コントロールを用いて、油圧シリンダー53aの軸方向に沿ったスライド長の伸縮を制御することにより、吐出口221aの閉塞及び解放することが可能となる。すなわち、2重軸シャフト2Aに設けられた邪魔板4Aを軸端の吐出口221aからスライド可能に制御する。なお、図3の例では、スライド制御を油圧制御による構成例を示したが、アクチュエータ制御として、例えば電気モーター、電磁ソレノイド、空気圧などを利用した制御方法であってもあってもよい。
【0042】
以上のような船舶用プロペラ推進装置1Aにおける邪魔板4Aのスライド制御によって、必要に応じて(自動制御・手動制御等に応じて)、プロペラ3Aの後方に多量の気体を吐出させることができる。
【0043】
2重軸シャフト2A(軸心を同一とする)の送風路23aに、例えばラジエーターファンから多量の気体(空気など)を送り、供給される気体が2重軸シャフト2Aの吐出口221aで、スライド制御で開いた邪魔板4Aに衝突し、それにより拡散した気体が送風圧と水流の負圧とによりプロペラ3A後方に向かう。これにより、多量の気体供給により推進力増加効果がある。
【0044】
本実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Aは、シンプルな2重軸構造であり、十分推進効率をあげることができ、また、2重軸1プロペラだけの推進でも十分な効果がある。例えば、プロペラ翼31aのスリット管32aの複数加工により、気体供給量を設計(調整設計)できる。例えば、2重軸の外側の表面積が広く、プロペラ接合付近の自由な加工ができるため、多量の気体を供給が可能である。
【0045】
本実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Aでは、多量の気体の供給によりプロペラの負担が減り、推進力が増し燃費の向上、もしくは主機関エンジンのダウンサイジングが可能となる。この他にも、既存のスクリュープロペラと交換が可能である。このプロペラ構造は、発電機を持つ中・大型船で効果を発揮する。
【0046】
本船舶用プロペラ推進装置1Aでは、小型・薄型設計が可能なため、2重軸シャフト2Aの駆動をモーター使用で船体前部にも設置可能であり、故に多量の気体を船底に供給できる。この場合、あまり気体を微細にせずに粒径を調整すれば船底の一定面積に供給ができる。また、例えばエンジン排気ガスを熱交換し、冷却後利用することにより、船底への海中生物の除去につながる使い方も可能であり、排気ガスに係わらず船体前部に開口部を設置すれば、その部分から空気の供給も可能である。
【0047】
船舶用プロペラ推進装置1Aにおいて、2重軸構造のメリットとしては、プロペラの負荷減少に伴うプロペラ形状を新たに設計できる点である。例えば、スーパーキャビテーションプロペラ形状により、回転数を増すことができる。その場合、プロペラ外壁面に多量の通気をすることがキャビテーション・エロージョン及び騒音抑制効果が見込め、この効果は回転する液体との粘性を劇的に減少させるため、プロペラ効果アップを望むことができる。
【0048】
本来、回転するプロペラの後方は複雑な流れになるが、気液混合の場合、2相流となりさらに複雑となる。しかしながら、本実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Aの2重軸シャフト2A及びプロペラ3Aにより、複雑な混流を整流(以降では、ボイド率を高めた水中の流れにすることの意味で用いる)にする効果がある。
【0049】
以上のような構造により、例えばラジエーターファンからの強力風圧気体を2重軸シャフト2Aへ導き、スライド制御可能な邪魔板4Aを開放させて2重軸シャフト2Aの後端側の吐出口221aから気体を吐出することができ、さらに航行する水流の負圧により、プロペラ3Aの後方に多量の気体を送ることができる。
【0050】
また、これにより、プロペラ3Aの後方のボイド率を高める(液体の中の気体割合を高める)ことができ、プロペラの回転負荷を低減することができる。
【0051】
以上のように、スクリュープロペラ後方に気体を効果的により多く供給することができると、プロペラ後方液体の質量は変化し(気体をより多く含む)、プロペラの後方への”引きずり”が減少し、同時にプロペラを回転させる負担が減り、エンジンの消費エネルギーが減少する。同時に、作用反作用の効果で船舶が前進する効果が得られる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の船舶用プロペラ推進装置によれば、船舶スクリュープロペラの後方に効果的な供給量の気体を送り込むことができる。
【0053】
[第2の実施形態]
次に、図4乃至図7を参照しながら、第2の実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Bについて説明する。図4は、第2の実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Bの構造の一例を示す斜視図である。図5は、図4に示す船舶用プロペラ推進装置1Bの側面透視図である。図6は、図5に示す船舶用プロペラ推進装置1Bの邪魔板4Bの構造の一例を示す図である。図7は、図5に示す船舶用プロペラ推進装置1Bの邪魔板が吐出口を開いた場合及び閉じた場合における説明図である。
【0054】
ここで、第2の実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Bは、第1の実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Aと比べて、邪魔板4Bが邪魔板4Aと以下に説明するような点が主に相違する。以降では、第2の実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Bの構成について、第1の実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Aとの相違点を主に説明する。なお、説明図としては、図4図2に対応する図であり、図7(a)が図1(a)に対応する図である。
【0055】
例えば、船舶用プロペラ推進装置1Bは、図4乃至図7に示すように、主に、内軸シャフト21bの外周面と外軸シャフト22bの内周面との間に設けられた送風路23bに気体を送風可能とする2重軸シャフト2Bと、2重軸シャフト2Bに結合されて回転する1又は複数のプロペラ3Bと、2重軸シャフト2Bの後端側の送風路23bの吐出口221bを開口及び閉塞可能に設けられた邪魔板4Bとを備えている。
【0056】
2重軸シャフト2Bは、内軸シャフト21bと、当該内軸シャフト21bの外周側に設けられる外軸シャフト22bとが同心軸に位置する2重構造のシャフト構造である。2重軸シャフト2Bは、船舶の船体に備えられたエンジンの回転軸に回転可能なように結合される。
【0057】
プロペラ3Bを構成する複数のプロペラ翼31bは、各々の翼の方向から外軸シャフト22bに接続されて、すべてのプロペラ翼31bがプロペラ基軸34bに接続されている。プロペラ基軸34bは内軸シャフト21bに接続されている。
【0058】
プロペラ3Bにおいて、内軸シャフト21bと外軸シャフト22bとの間に設けられた送風路23bから気体を導入する気体導入路33bが外軸シャフト22bを貫通してプロペラ翼31bへ管経路が設けられ、気体導入路33bからプロペラ翼31bのスリット管32bへ気体を導入可能とする。これにより、各プロペラ翼31bのスリット管32bから空気等を吐出可能とされている。なお、送風路23bから気体を導入する気体導入路33bに、送風路23bから気体の導入を遮断可能なように開閉弁を備えてもよい。
【0059】
ここで、図5(a)は、図5(b)に示すIII-III矢視線方向の縦断面を示し、図5(b)は、図4に示す船舶用プロペラ推進装置1Bの側面透視図である。また、図6は、図5(b)に示す船舶用プロペラ推進装置1Bの邪魔板4Bの構造の一例を示す図である。また、図6(a)に示す側面から視た邪魔板4Bを天板部U、フィン部V、ギア収納部Wとに区分し、図6(b)に天板部Uの正面図、図6(c)にフィン部Vの正面図、図6(d)にギア収納部Wの正面図を示す。なお、正面図は、図6(a)に示す天板部Uの近傍に位置する白矢印の方向から視た図である。
【0060】
第2の実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Bにおける邪魔板4Bは、第1の実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Aにおける邪魔板4Aと比べて、主に以下に説明するような構造が相違する。
【0061】
ここで、2重軸シャフト2Bの主な構造の特徴例として、第1の実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Aの2重軸シャフト2Aに加えて、
(5)邪魔板4Bは、拡散フィンを設けた構造である。
邪魔板4Bに、i)2重軸シャフト2Bの開口側に対向する軸流拡散フィン42bと、ii)邪魔板4Bの後端側に設けられる後方拡散フィン41bとの少なくともいずれか一方を備えた構造等によりプロペラ3B後方をより整流することができる。
【0062】
邪魔板4Bは、内軸シャフト21bの外周面と外軸シャフト22bの内周面とに囲まれた空間内に気体を送出できる送風路23bの軸端の吐出口221bの閉塞及び解放とするように、図7(a)及び(b)に示すような2重軸シャフト2Bの軸端側からスライド可能に制御される構造である。
【0063】
邪魔板4Bは、主に、例えば図6に示す天板部Uと、フィン部Vと、ギア収納部Wとから構成される。図6(b)に示す天板部Uは、天板411bの中心に後部開口414bが設けられる盤である。また、図6(c)に示すフィン部Vは、後方拡散フィン41bとして、複数のフィン413bが設けられる部分である。図6(d)に示すギア収納部Wは、後述するような太陽ギア43b、遊星ギア44b、ギア受部45b、ギア外周壁部412b、ギア内周壁部415b等からなる部分である。
【0064】
内軸シャフト21bの軸心に沿った気体の軸流の流れ(1点鎖線の矢印)が、邪魔板4Bに設けられた軸流拡散フィン42bに吐出口221bから吐出された気体が当たるため、これにより、吐出口221bから吐出された気体は、軸心側から拡がりをもって流れる(図7(a)に示す拡散第1流Lx)。さらに、図7(a)に示す拡散第1流Lxが、後方拡散フィン41bから排出される回転排出流Foutにより、図7(a)に示す拡散第2流Lyとなり、プロペラ翼31bの後方側へ流れる。
【0065】
軸流拡散フィン42bは、送風路23bを通気した気体を、主にプロペラ3Bの後方に拡散するために設けられるフィンである。軸流拡散フィン42bは、図4及び図5に示すように、2重軸シャフト2Bにおける吐出口221b側と対向する邪魔板4Bの面方向側(盤面421b)に、複数の三角板状フィン422bが設けられる構造である。三角板状フィン422bは、2重軸シャフト2Bの軸心を中心として、例えば軸心側から周縁方向にかけて当該盤面421b上に傾斜を高から低への三角形状などである。なお、三角板状フィン422bは、例えばスロープ形状等のフィンであってもよい。
【0066】
図7(b)に示すように、邪魔板4Bが吐出口221bを閉塞する場合、軸流拡散フィン42bは、送風路23b内に収納される。
【0067】
後方拡散フィン41bは、主にプロペラ3Bの後方に気体を拡散するために設けられるフィンである。後方拡散フィン41bは、2重軸シャフト2Bにおける吐出口221b側と対向する邪魔板4Bの面方向側(盤面421b)と反対側の面方向側(天板411bの盤面)にフィンが設けられる構造である。例えば、図6(a)乃至(d)に示すような2重軸シャフト2Bの軸心を中心として、当該ギア外周壁部412bの盤面に複数のフィン413bがスクリュー形状に設けられる。
【0068】
天板411bの盤面とギア外周壁部412bの盤面との間に立直されるギア内周壁部415bの部分は、周回りに複数のフィン413bに接続される。さらに、当該周回りのギア内周壁部415bの部分は、図7(a)に示すような天板411bの中心側の後部開口414bから流入する水流(開口部流入Fin)が複数のフィン413b間を通って、回転排出流Foutとして排出可能に開口されている。複数のフィン413bの形状によっては、図6に示す天板部Uに天板411bがなくてもよい。
【0069】
<後方拡散フィン41bの高速回転例について>
邪魔板4Bにおいて、図5(a)及び(b)に示すように、同心軸を回転軸の中心として、内軸シャフト21bの軸回転よりも、後方拡散フィン41bが高速回転となるように内軸シャフト21bの後端側に複数の遊星ギア44bと太陽ギア43bとの組み合せにより回転可能に設けられている。例えば、遊星ギア44bと太陽ギア43bとの組み合せにより、後方拡散フィン41bの回転を内軸シャフト21bと逆回転で、2倍速となるようにすることができる。
【0070】
太陽ギア43bは、内軸シャフト21bに接続されて、ギアの回転基準となる。遊星ギア44bは、図5(a)に示すように、太陽ギア43bのまわりに複数のギアの歯車が噛み合うように配置され、太陽ギア43bを中心にして、インターナルギアが設けられるギア受部45bの内側歯車に噛み合いながら回転しながら周回する。
【0071】
ギア受部45bは、高速回転側の後方拡散フィン41bの土台となる部位であり、前述したようなインターナルギアが組み込まれる。ギア内周壁部415bは、太陽ギア43b、遊星ギア44b、ギア受部45b等を囲む円筒状の部位である。ギア外周壁部412bは、さらにギア内周壁部415bを囲む円筒状の部位であり、その盤面には、複数のフィン413bが設けられる。なお、太陽ギア43b、遊星ギア44b、ギア受部45b等のギアの構成を変えることにより、プロペラ3Bと同じ方向の回転であってもよい。
【0072】
邪魔板4Bの天板411bに衝突した気体を含む水の一部は、海水の流れ(負圧)によって、図6(b)に示す天板411bの中心側の後部開口414bへ引き込まれる。そのとき、図4及び図7(a)に示す後方拡散ファン41b(海水)の回転しながらの四方八方への拡散動作により、その拡散の勢いでプロペラ翼31bの後方へ撹拌させる。この結果、プロペラ翼31bの後方へバランスよく均等に気体を海水中に拡散させて、送ることができる。
【0073】
図4及び図7(a)に示すように、邪魔板4Bが吐出口221bを開放している場合、邪魔板4Bの後方側の水流の負圧により、後方拡散フィン41bにおける天板411bの中心側の後部開口414bへ、例えば水流の開口部流入Finが発生する。この水流の開口部流入Finは、後方拡散フィン41bの回転により回転排出流Foutとして、排出される。これにより、送風路23bから吐出される気体の軸流が突起形状(三角板状フィン422b)に沿って吐出口221bからプロペラ翼31bの後方側へ拡散第1流Lxとなり、さらに、後方拡散フィン41bの回転排出流Foutによって、拡散第2流Lyとして、プロペラ翼31bの後方側へ拡散される。
【0074】
邪魔板4Bの後方拡散フィン41bは、主にプロペラ3Bの後方に気体を拡散するために設けられる複数のフィン413bにより構成される。邪魔板4Bの天板411bに衝突した気体の一部は、例えば海水の流れ(負圧)に引き込まれる。そのとき、後方拡散ファン41bにより、図4に示すような回転による四方八方への拡散動作により、その拡散の勢いで図7(a)に示すようなプロペラ翼31bの後方方向へはじく効果を狙ったものである。その結果、プロペラ翼31bの後方へバランスよく均等に気体を送ることができる。
【0075】
また、邪魔板4Bの後方拡散フィン41bが内軸シャフト21bの軸回転よりも高速で回転できるため、吐出口221bから吐出された気体が(図7(a)に示す拡散第1流Lx)、回転排出流Foutよって、プロペラ翼31bの後方側の海水と共に、拡散第2流Lyで撹拌される。これにより、プロペラ翼31b後方のボイド率をたかめることができる。これにより、プロペラ3Bの回転エネルギーの消費低減につながる。
【0076】
邪魔板4Bにおいて、以上のような軸流拡散フィン42bにより軸心側から気体を拡散させることができ、さらに後方拡散フィン41bの回転によりプロペラ翼31b後方へより拡散させることができる。これにより、プロペラ翼31b後方の水流中に混入した気体を拡散させることができる。
【0077】
本来、回転するプロペラ翼31bの後方は複雑な流れになるが、さらに気液混合の場合、2相流となりこれも複雑になるが、本実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Bの軸流拡散フィン42bの回転と、この軸流拡散フィン42bの回転よりも高速な後方拡散フィン41bの回転とにより、プロペラ翼31b後方の水流中に気体をより拡散させることができる。
【0078】
以上説明したように、船舶用プロペラ推進装置1Bの構造により、空気などの気体を送風路23bへ導入して、吐出口221bから吐出させて、航行する水流の負圧により、プロペラ3Bの後方に多量の気体を送ることができる。これにより、ボイド率を高める(液体の中の気体割合)ことができ、プロペラ3Bの回転負荷を低減することができる。
【0079】
例えば、ラジエーター等からの送気圧と水流による負圧が気体を、2重軸シャフト2Bの後ろに引き込むことができ、それを邪魔板4Bにより拡散させ、さらに後方拡散フィン41bの回転により、プロペラ3B後方へより拡散させることができる。その効果により、プロペラ3B後方の水流中に混入した気体を拡散させることができる。
【0080】
また、船舶用プロペラ推進装置1Bの邪魔板4Bに設けた拡散フィン(後方拡散フィン41b又は/及び軸流拡散フィン42b)により、水と気体とを拡散しながら撹拌することにより、高いボイド率とすることができ、プロペラ回転のエネルギー消費低減につながるという効果がある。
【0081】
さらに、邪魔板4Bに設けた拡散フィンと、プロペラ翼31bのスリット管32bとからの気体排出の相乗効果により、さらに高いボイド率とすることができ、プロペラ回転のエネルギー消費低減につながるという効果がある。
【0082】
以上のように、スクリュープロペラ後方に気体を効果的により多く供給することができると、プロペラ後方液体の質量は変化し(気体をより多く含む)、プロペラの後方への”引きずり”が減少し、同時にプロペラを回転させる負担が減り、エンジンの消費エネルギーが減少する。同時に、作用反作用の効果で船舶が前進する効果が得られる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態の船舶用プロペラ推進装置によれば、船舶スクリュープロペラの後方に効果的な供給量の気体を送り込むことができる。
【0084】
[第3の実施形態]
図8は、第3の実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Cの構造の一例を示す図である。図8に示す船舶用プロペラ推進装置1Cは、例えば後述するような船舶9Cに備え付けることができる。図8は、いわゆる2重軸2重反転プロペラの実施例として示すものである。また、図8に示す例では、気体供給系統6Cとして、主に発電機82cに用いるラジエーターファンからの送風と、大気導入管93cから吸引する大気とを使用する方法を示す。なお、例えばエンジン81cに用いるラジエーターファンからの送風等であってもよい。
【0085】
船舶9Cの船体内には、例えば図9に示すように、プロペラシャフトを駆動するエンジン81cと、船内に電気を供給する発電機82cと、船舶用プロペラ推進装置1Cの部品へ油圧コントロール可能とする油圧ポンプ71cとを備える構成とする。油圧ポンプ71cは、油圧系統5Cのうちの油圧配管51c~52cの経路を通じて、油圧シリンダー53cを軸方向へスライド制御する。
【0086】
船舶用プロペラ推進装置1Cは、図8に示すように、主に、内軸シャフト21cの外周面と外軸シャフト22cの内周面との間に設けられた送風路23cに気体を送風可能とする2重軸シャフト2Cと、2重軸シャフト2Cに結合されて回転する複数のプロペラ3C(以降では、2重軸2重反転プロペラ3Cと称す)と、2重軸シャフト2Cの後端側の送風路23cの吐出口221cを開口及び閉塞可能に設けられた邪魔板4Cとを備えている。
【0087】
2重軸シャフト2Cは、円筒状の内軸シャフト21cと、当該内軸シャフト21cの外周側に設けられる外軸シャフト22cとが同心軸に位置するように構成されている。2重軸シャフト2Cは、船舶9Cの船体内に備えられたエンジン81cの回転軸に回転可能なように結合される。内軸シャフト21cの外周面と外軸シャフト22cの内周面との間に設けられた送風路23cは、空気等の気体が送風可能なように設けられている。
【0088】
内軸シャフト21cは、ベアリング軸受部242c及び243cを介して、船舶9C内のエンジン81cの回転軸に軸結合される。ベアリング軸受部242c及び243cは、2重軸シャフト2Cとエンジン81c側に結合されるシャフトとを接続するための軸受けである。また、軸受けは、図1の例のように、軸受外周部241cが船体に強固に接合されているシャフト軸受補強材(図示省略)によって、船体に設けられる船舶用プロペラ推進装置1Cの強度及び安定性等が補強されていてもよい。
【0089】
2重軸2重反転プロペラ3Cは、2重軸シャフト2Cに結合されて回転する。2重軸2重反転プロペラ3Cは、例えば複数の前方プロペラ翼312cと、前方プロペラ翼312cの回転と逆回転する複数の後方プロペラ翼311cとから構成される。
【0090】
2重軸2重反転プロペラ3Cにおいて、内軸シャフト21cと外軸シャフト22cの送風路23cから気体を導入する気体導入路331cを設けて、気体導入路331cから後方プロペラ翼311cのスリット管321cへ気体を導入可能とする。また、気体導入路332cを設けて、気体導入路332cから前方プロペラ翼312cのスリット管322cへ気体を導入可能とする。これにより、各プロペラ翼311c及び312cのスリット管321c及び322cから空気を吐出可能とされている。
【0091】
なお、送風路23cから気体を導入する気体導入路331c及び332cに、送風路23cから気体の導入を遮断可能なように、制御可能な開閉弁を備えてもよい。
【0092】
前方プロペラ軸接続部35c及び36cは、前方プロペラ翼312cの回転軸を支持する。内軸シャフト21cを中心として囲むケーシングに、複数の前方プロペラ翼312cが接続されており、当該ケーシングは、例えばギア構造又はベアリング構造等により複数の前方プロペラ翼312cを回転させる。
【0093】
後方プロペラ翼311cは、プロペラ基軸34cに接続されている。プロペラ基軸34cは内軸シャフト21cに接続され、そのため、後方プロペラ翼311cは内軸シャフト21cの回転と同期する。
【0094】
2重軸2重反転プロペラ3Cにした場合、図1(a)に示すような2重軸1プロペラ3Aよりも、例えば、以下のようなより大きな効果がある。
【0095】
前方プロペラ翼312cの反転による整流と希薄(拡散による現象)による後方プロペラ翼311cの負荷軽減の効果がある。
【0096】
また、後方プロペラ翼311cのスリット管321cの複数加工により、気体供給量を設計(調整設計)できる。2重軸の外側の表面積が広く、プロペラ接合付近の自由な加工ができるため、空気を多量に供給可能となる。
【0097】
また、上記以外にも、気体供給量により2重軸2重反転プロペラ3Cの負担が減り、推進力が増し燃費の向上、もしくは主機関のエンジン81cのダウンサイジングや、既存のスクリュープロペラと交換が可能である。
【0098】
例えば、図8に示す船舶用プロペラ推進装置1Cにおいて、2重反転の後方プロペラ翼311cは内軸シャフト21cに固定し、前方プロペラ翼312cは遊星ギアを使うシャフト駆動反転方法と、もしくはボールベアリングを使う自由回転反転方法などが選択できる。
【0099】
気体供給系統6Cの発電機82cに用いるラジエーター等からの送気圧と水流による負圧が、気体を邪魔板4C(シャフト軸の真後ろ)に引き込むことができる。
【0100】
さらに、邪魔板4Cにより拡散させ、例えば邪魔板4Cへさらに後方拡散フィンを用いた場合には、後方拡散フィンの回転によりプロペラ後方へより拡散させることができる。その効果により、プロペラ後方の水流中に混入した気体を拡散させることができる。
【0101】
本来、回転する後方プロペラ翼311cの後方は複雑な流れになるが、さらに気液混合の場合、2相流となりこれも複雑になるが、本実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Cの2重軸2重反転プロペラ3Cとフィンが複雑な混流を整流にする効果がある。
【0102】
以上のような構造により、例えばラジエーターファンからの送風気体を導き、さらに航行する水流の負圧により、後方プロペラ翼311cの後方に多量の気体を送ることができる。また、これにより、ボイド率を高める(液体の中の気体割合)ことができ、2重軸2重反転プロペラ3Cの回転負荷を低減することができる。
【0103】
さらに、邪魔板に拡散フィンを設けた場合(例えば、第2の実施形態の邪魔板4Bの例)、気体吐出口のプロペラスリットからの気体排出の相乗効果により、高いボイド率とすることができ、プロペラ回転のエネルギー消費低減につながるという効果がある。
【0104】
好ましくは、推進装置に極力排気ガスを使用しない場合、その理由としては、例えば30千~40千cc排気量のディーゼルエンジンの排気ガス温度が400度に達するからであり、そのまま取り入れた場合に、器具・装置の損傷につながる恐れがある。
【0105】
好ましくは、コストを考慮すると、コンプレッサーを極力使わない方が良い理由は、高圧気体のための装置費用やランニング費用が高コストとなり、また、ボイラー蒸気も高温なため使用しない。そのため、主にラジエーターファンの送風と、吸引する大気とを使用する方法がよい。
【0106】
2重軸シャフト構造において、2重軸2重反転プロペラを容易に設計できる点であり、さらに、2重軸2重反転プロペラにした場合、前方プロペラの反転による後方プロペラ負荷軽減の効果がある。
【0107】
また、2重反転後方プロペラは固定、前方プロペラは遊星ギアを使うシャフト駆動反転方法と、もしくはボールベアリングを使う自由回転反転方法などが選択できる。
【0108】
以上説明したように、本実施形態の船舶用プロペラ推進装置によれば、船舶スクリュープロペラの後方に効果的な供給量の気体を送り込むことができる。
【0109】
[第4の実施形態]
図9は、第4の実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Dの構造の一例を示す図である。また、図10は、図9に示す邪魔板4Dの構成の一例を示す図である。
【0110】
特に、本実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Dは、既存のスクリュープロペラに改造を施すことにより、例えば図9及び図10に示すような構造にすることが可能とする構成である。
【0111】
例えば、船舶用プロペラ推進装置1Dは、図9及び図10に示すように、主に、内軸シャフト21dの外周面と外軸シャフト22dの内周面との間に設けられた送風路23dに気体を送風可能とする2重軸シャフト2Dと、2重軸シャフト2Dに結合されて回転する複数のプロペラ3Dと、2重軸シャフト2Dの後端側の送風路23dの吐出口を開口及び閉塞可能に設けられた邪魔板4Dとを備えている。
【0112】
邪魔板4Dに、邪魔板4Dの後端側に設けられる後方拡散フィン41dを備えた構造等によりプロペラ3D後方をよりボイド率を高めた水流にすることができる。後方拡散フィン41dは、主にプロペラ3Dの後方に気体を拡散するために設けられるフィンである。後方拡散フィン41dは、2重軸シャフト2Dにおける吐出口側と対向する邪魔板4Dの面方向側と反対側の面方向側の盤面にフィンが設けられる構造である。
【0113】
2重軸2重反転プロペラ3Dは、2重軸シャフト2Dに結合されて回転する。2重軸2重反転プロペラ3Dは、例えば複数の前方プロペラ翼と、前方プロペラ翼の回転と逆回転する複数の後方プロペラ翼311dとから構成される。
【0114】
2重軸シャフト2Dには、内軸シャフト21d内に船舶9Dの船体91dから油圧ポンプ等による油圧コントロールされる邪魔板のスライド制御方法に代えて、後述するような邪魔板4Dのスライド制御法を用いた構造である。
【0115】
邪魔板4D部分をスイベル等により分け、発電装置装備により自立したエネルギー開閉が可能である。ここで、スイベルは、2つの接続点を持って互いに自由に回転できるようにした接続部、又は接続部品などである。
【0116】
図10に、邪魔板4Dと共に内軸シャフト21dに接続される発電プロペラ81dを含む発電ユニット8Dの構成を示す。
【0117】
船舶9Dの航行時、内軸シャフト21dの回転と水流等の流れにより、図10に示す2重軸シャフト2Dの後端側に設けられた発電プロペラ81dが回転し、発電プロペラ81dの回転軸に直結された発電機82dの回転子が回転することにより、発電する。この発電による発電エネルギーが、逐次、バッテリー83dに蓄えられる。このバッテリー83dはモーターポンプ84dに電気的に接続される。
【0118】
スライド動作等の制御指令は、信号送信器75dにより、例えば光信号等の通信手段にて受信器(受光器)85dに送信されて、モーターポンプ84dを駆動制御可能とする。モーターポンプ84dは、駆動対象としてシリンダー86d、シリンダーピストン87dを動作させることができ、これにより、邪魔板4Dのスライド制御を実現することができる。
【0119】
発電ユニット8Dの軸発電のメリットは、既存の船舶9Dの船体91dの一部加工等の改造により、例えば1ユニットの船舶用プロペラ推進装置1Dの取付けで済むことができる。
【0120】
邪魔板4Dのスライド制御の作動方法は、アクチュエーター(いろいろな駆動方法)を採用することができる。また、邪魔板部分をスイベル等により分け、発電装置装備により自立した電源によりエネルギー供給可能な邪魔板部分の開閉制御が可能である。
【0121】
以上説明したように、本実施形態の船舶用プロペラ推進装置によれば、船舶スクリュープロペラの後方に効果的な供給量の気体を送り込むことができる。
【0122】
[第5の実施形態]
本実施形態の船舶用プロペラ推進装置の構成の一例をPODプロペラシステムに活かして、例えば図11に示す水面WPを航行する船舶9Eの船底91eに多量の気体供給をする方法の一例を、図12の船舶用プロペラ推進装置1Eを用いて説明する。ここで、図11は、第5の実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Eを用いた船舶9Eの構造の一例を示す図である。また、図12は、図11に示す船舶用プロペラ推進装置1Eの構造の一例を示す図である。特に、図12に示す実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Eは、図11(a)及び(b)に示す船舶9Eの前方側に設置されたものである。
【0123】
なお、図11(a)及び(b)に示す船舶9Eの後方側に設置されている船舶用プロペラ推進装置1Fは、前述した第1乃至第4の実施形態の船舶用プロペラ推進装置1A乃至1Dのいずれかで構成可能であり、また、本実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Eでも構成可能である。以降では、主に、船舶用プロペラ推進装置1Eについて説明する。
【0124】
第5の実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Eは、図12に示すように、主に、内軸シャフト21eの外周面と外軸シャフト22eの内周面との間に設けられた送風路23eに気体を送風可能とする2重軸シャフト2Eと、2重軸シャフト2Eに結合されて回転する2重軸2重反転プロペラ3Eと、2重軸シャフト2Eの後端側の送風路23eの吐出口221eを開口及び閉塞可能に設けられた邪魔板4Eとを備えている。
【0125】
2重軸シャフト2Eは、円筒状の内軸シャフト21eと、当該内軸シャフト21eの外周側に設けられる外軸シャフト22eとが同心軸に位置するように構成されている。2重軸シャフト2Eは、繭型形状(楕円体形状)の容器93e内に備えられた電動モーター81eの回転軸に回転可能なように結合されている。内軸シャフト21eの外周面と外軸シャフト22eの内周面との間に設けられた送風路23eは、空気等の気体が送風可能なように設けられている。繭型形状の容器93e内の気体供給管61e及び62eから2重軸シャフト2Eへ気体が供給され、2重軸シャフト2E内の送風路23eには気体で充足される。邪魔板4Eは、電動アクチュエータ制御等による可動シリンダー53eにより、吐出口221eを開閉可能に制御される。
【0126】
気体供給系統6Eは、船底91eに設けられた船舶用プロペラ推進装置1Eへ空気などの気体を供給する。気体供給系統6Eは、例えば電動タービンなどにより、強い圧力で気体供給接続管68eに気体を送出する。気体供給接続管68eは、船底通気部64e及び気体導入部63eを介して、船底91eに回転可能に取り付けられた繭型形状の容器93eへ気体を送出する。繭型形状の容器93eでは、気体導入部63eから流入する気体を、容器内の遮蔽壁94eにより、気体供給管61e及び62eへ導出可能なように空間が設けられている。
【0127】
船底通気部64eにおいて、繭型形状の容器93eを略360度回転可能なように、回転部65e、回転ギア部66eおよび回転動力部67eが設けられている。回転動力部67eは、回転ギア部66eを駆動して、回転部65eを回転可能に制御する。回転部65eは、繭型形状の容器93eを支持する容器支持部92eに接続されている。回転部65eの回転と共に、容器支持部92eに接続された繭型形状の容器93eが回転することにより、船底通気部64eにおいて、2重軸2重反転プロペラ3Eの方向を変えることができる。
【0128】
図12に示す船舶用プロペラ推進装置1Eを、図11に示す船舶9Eの船底91eに多量の気体供給をする方法の一例について説明する。
1)2重軸2重反転プロペラ3Eの後方プロペラ翼311e及び前方プロペラ翼312eの適切な位置にスリット状開口部を複数加工する、または孔状、四角形状などの開口部321e及び322eを多数設けて、同時にバルブをその開口部付近、もしくは有効な部位に設置する。
2)2重軸2重反転プロペラ3Eの2重反転方式により、さらに気体供給の効果が見込める。例えば、プロペラシャフトの軸空間から負圧・拡散による排出気体と、前記1)の気体供給との相乗効果による効果を生じる。
【0129】
以上のような船舶用プロペラ推進装置1Eの構造により、小粒の気体泡であるマイクロバブルのみを含む水流よりも有効とされる、図12に示すような小粒の気体泡からさらに中型及び大型の粒径の気体を含む水流WBを船底91eに送り込むことが可能となる。また、船底91eとの接続と気体供給が簡易な方法で改造工事が可能なため、多くの船舶に後付けにより設置が可能となる。以上のような船舶用プロペラ推進装置1Eにより、船舶推進の最大抵抗とされる摩擦を低減することができる。
【0130】
図12に示す船舶用プロペラ推進装置1Eにおいて、船底91eのPODシステム+2重軸2重反転プロペラの機能を含み、かつ、多量の気体(泡)の供給ができる。その方法は、後方プロペラ翼311e及び前方プロペラ翼312eに設けた開口部321e及び322eの形状・面積と2重軸2重反転プロペラ3Eの回転数によって、それに応じた気体供給が可能な構造である。
【0131】
さらに、船舶用プロペラ推進装置1Eでは、後部の吐出口221eより多量の気体の排出を行うことができる。気体は、負圧による吸い込む気体だけではなく、気体供給系統6Eにおいて、電動タービンなどにより、強い圧力で気体供給接続管68eに気体を送出することができる。
【0132】
図11(a)及び(b)に示すPODプロペラ推進装置1E(船舶用プロペラ推進装置1Eとも称す)は、例えば図12に示すように、いわゆる繭型形状(楕円型形状)の容器93eに電動モーター81eを内蔵し、その繭型形状の容器93eに2重軸シャフト2Eを取り付けて駆動する推進装置である。また、繭型形状の容器93eに内蔵する構造以外にも、繭型形状の容器外の船体内にモーター等を備える構造がある。本実施形態の船舶用プロペラ推進装置1EをPODプロペラ推進装置として用いた場合、例えば以下のような船舶推進装置とすることができる。
【0133】
例えば特に中大型船に設置する場合、例えば図11に示すように、後方に3基の船舶用プロペラ推進装置1F又は3基のPODプロペラ推進装置1E、前方に3基のPODプロペラ推進装置1E等を設置すれば、推進装置の分散化により、推進装置の故障に対する重大故障を回避できる冗長化構成によるメリットと、微調整推進力が制御しやすく、エネルギー効率がよい。さらに、船底91eの前方から後方の間に複数設置すれば、船底91eに対しても気体を含む水流WBをいきわたらせることができる。
【0134】
また、船舶9Eの前方に配置するPODプロペラ推進装置1Eの2重軸2重反転プロペラ3Eのスリット構造、2重軸シャフト2Eの構造等を調整すれば、多量の気体を供給可能であり、図12に示すように、船舶9Eの船底91eに気体を含む水流WBを送ることができるので、船底抵抗低減装置としても効果がある。その結果、本実施形態の船舶用プロペラ推進装置1EをPODプロペラ推進装置に適用した場合、従来のPODプロペラ推進装置の推進効率を改善することができる。
【0135】
さらに、例えば、図12に示す船舶用プロペラ推進装置1Eを略360度回転可能にして、船舶9Eの前方の船舶用プロペラ推進装置1Eは、港湾等に接岸するときや、運河等での航行上の安全運行において、微速度による調整運転が可能である。また、例えば、一枚の大口径(例えば8m~12m)のプロペラを有する大型プロペラ推進装置を、それよりも中型のプロペラを有するPODプロペラ推進装置(例えば船舶用プロペラ推進装置1E)の複数へ代えた場合には、大型プロペラ推進装置は空船のときカラ回りしてしまうような事態が、喫水のレベルに対応して、各々の船舶用プロペラ推進装置1Eの調整運転が可能である。また、船舶9Eの後方の船舶用プロペラ推進装置1Fを舵として使用することができる。
【0136】
また、船舶9Eの短期的及び長期的な使用の観点においても、本実施形態の船舶用プロペラ推進装置1Eによれば、船舶スクリュープロペラの後方に効果的な供給量の気体を送り込むことができるため、船底91eの海洋等の付着物を取り除いたり、付着し難くする等の効果も有する。
【0137】
以上説明したように、本実施形態の船舶用プロペラ推進装置によれば、船舶スクリュープロペラの後方に効果的な供給量の気体を送り込むことができる。
【0138】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、例えばこれらの実施形態の特徴をいくつか組み合わせてもよい。さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形には、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0139】
1A、1B、1C、1D、1E…船舶用プロペラ推進装置、2A、2B、2C、2D…2重軸シャフト、3A、3B…プロペラ、3C、3D、3E…2重軸2重反転プロペラ、4A、4B、4C、4D、4E…邪魔板、5A、5B、5C…油圧系統、6C、6E…気体供給系統、8D…発電ユニット、9D、9E…船舶、21a、21b、21c、21d…内軸シャフト、22a、22b、22c、22d…外軸シャフト、23a、23b、23c、23d…送風路、24a…シャフト軸補強部、221a、221b、221c、221e…吐出口、241a、241c…軸受外周部、242a、243a…ベアリング、242c、243c…ベアリング軸受部、31a、31b…プロペラ翼、32a、32b、321c、322c、321d…スリット管、33a、33b、331c、332c…気体導入路、34a、34b、34c、34d…プロペラ基軸、35c、36c…前方プロペラ軸接続部、311c、311d、311e…後方プロペラ翼、312c、312e…前方プロペラ翼、321e、322e…開口部、41b、41d…後方拡散フィン、42b…軸流拡散フィン、43b…太陽ギア、44b…遊星ギア、45b…ギア受部、411b…天板、412b…ギア外周壁部、413b…フィン、414b…後部開口、415b…ギア内周壁部、421b…盤面、422b…三角板状フィン、51a、51b、51c、52a、52b、52c…油圧配管、53a、53b、53c…油圧シリンダー、53e…可動シリンダー、61a、61b、62a、62b、61e、62e…気体供給管、63e、64e…船底通気部、65e…回転部、66e…回転ギア部、67e…回転動力部、68e…気体供給接続管、71a、71c…油圧ポンプ、72a…圧力センサー、73a…制御盤、75d…信号送信器、81c…エンジン、81d…発電プロペラ、81e…電動モーター、82c、82d…発電機、83d…バッテリー、84d…モーターポンプ、85d…受信器(受光器)、86d…シリンダー、87d…シリンダーピストン、91a、91d…船体、91e…船底、92a…軸受支持材、92e…容器支持部、93c…大気導入管、94e…遮蔽壁

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