(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161765
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】衛生用のマスクおよびその専用部品ならびにマスク着用方法
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20221014BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069786
(22)【出願日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2021066829
(32)【優先日】2021-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516011590
【氏名又は名称】株式会社適正地盤構造設計
(71)【出願人】
【識別番号】521153973
【氏名又は名称】オーエムカラーコピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142114
【弁理士】
【氏名又は名称】小石川 由紀乃
(72)【発明者】
【氏名】宮本 裕司
(72)【発明者】
【氏名】大山 雅充
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA08
2E185CC36
(57)【要約】
【課題】通常のマスクと同様の着用状態と、上下いずれかの端縁部を開放して口を一時的に露出させることが可能な着用状態とを容易に切り替えることができるようにする。
【解決手段】マスク本体1の左右の端縁部のそれぞれに上下方向に沿って並ぶように一対のガイド片11,12が設けられ、これらのガイド片11,12の左右の端縁部がマスク本体1に連結される。耳掛け部2は各ガイド片11,12とマスク本体1との間の隙間s1,s2に通されることによって、マスク本体1の上端部および下端部の2箇所から延び出るように支持される。上部のガイド片12の左側または右側の連結箇所はマスク本体1から取り外し可能であり、その取り外しによりガイド片12による耳掛け部2の支持が解除されると、耳掛け部2はマスク本体1の下端縁側に偏った2箇所から延び出る状態となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布または柔軟性を有するシート材によるマスク本体と、このマスク本体の左右の端縁部から延び出るように当該マスク本体に連結される一対の耳掛け部とを備え、
前記一対の耳掛け部の各々を前記マスク本体の上端部および下端部の2箇所から延び出させる第1の支持状態と、前記一対の耳掛け部の各々を前記マスク本体の上端縁側または下端縁側に偏った2箇所から延び出させる第2の支持状態とを切り替えることができるように、前記マスク本体における各耳掛け部の連結位置または連結の範囲を変動可能とした、ことを特徴とする衛生用のマスク。
【請求項2】
前記マスク本体の左右の端縁部のそれぞれに、前記耳掛け部の一部分をその端縁の全長に沿わせて支持すると共に、その支持範囲の上下いずれかの端縁から両端縁の間の所定位置までにおける前記耳掛け部の支持を解除可能なガイド部が設けられている、
請求項1に記載された衛生用のマスク。
【請求項3】
前記マスク本体の左右の端縁部のガイド部は、上下方向に沿って並ぶように当該端縁部に重ねられた一対のガイド片を備え、
前記一対のガイド片は、それらが重なる端縁部との間に前記耳掛け部を上下方向に沿って通過させることが可能な隙間が形成されるようにそれぞれの左右の端縁部が前記マスク本体に連結されると共に、当該一対のガイド片の少なくとも一方の左側または右側の連結箇所がマスク本体から取り外し可能となっている、
請求項2に記載された衛生用のマスク。
【請求項4】
布または柔軟性を有するシート材によるマスク本体の裏面の上端部または下端部に重なる状態となって当該端部に連結される基部と、前記マスク本体の横幅より長い一本の紐部材とを具備し、
前記紐部材は、前記マスク本体に連結された基部によって、当該マスク本体の横幅方向に長さ方向を沿わせ、かつ当該マスク本体の左右に延び出す状態となって支持されると共に、マスク本体の左に延び出た部分の端部は当該マスク本体の左端部に対し、マスク本体の右に延び出た部分の端部は当該マスク本体の右端部に対し、それぞれ着脱可能に連結される、
ことを特徴とする衛生用マスクの専用部品。
【請求項5】
布または柔軟性を有するシート材によるマスク本体の裏面の上端部または下端部に重なる状態となって当該端部に連結される基部と一対の紐部材とを具備し、
前記一対の紐部材は、前記マスク本体の左右に一本ずつ延び出るようにそれぞれの一端部が当該マスク本体に連結された基部に支持されると共に、マスク本体の左に延び出た紐の延出部分の端部は当該マスク本体の左端部に対し、マスク本体の右に延び出た紐の延出部分の端部は当該マスク本体の右端部に対し、それぞれ着脱可能に連結される、
ことを特徴とする衛生用マスクの専用部品。
【請求項6】
布または柔軟性を有するシート材によるマスク本体と、このマスク本体の左右の端縁部から延び出るように当該マスク本体に連結される一対の耳掛け部とを備える衛生用のマスクを着用する方法であって、
前記一対の耳掛け部の各々の少なくとも一端部を前記マスク本体の任意の場所に着脱可能に連結できるようにし、
前記マスク本体に対し、前記一対の耳掛け部の前記着脱可能な一端部を他方の端部の連結位置に対向する側の端部に連結することによって、前記一対の耳掛け部の各々を前記マスク本体の上端部および下端部の2箇所から延び出させた第1の支持状態とし、これらの耳掛け部を対応する側の耳に掛けることにより前記マスク本体を顔面に沿わせた状態にして支持する第1の着用状態と、
前記マスク本体に対し、前記一対の耳掛け部の前記着脱可能な一端部を前記マスク本体の上下方向の中心位置または当該中心位置と他方の端部の連結位置との間に連結することによって、前記一対の耳掛け部の各々を前記マスク本体の上端縁側または下端縁側に偏った2箇所から延び出させる第2の支持状態とし、これらの耳掛け部を対応する側の耳に掛けることにより、前記マスク本体を耳掛け部が連結されていない側の端縁部が開放された状態にして支持する第2の着用状態とを
切り替え可能に選択して、選択した方の状態で前記マスクを着用する、
ことを特徴とする衛生用マスクの着用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布または柔軟性を有するシート材によるマスク本体と、このマスク本体の左右の端縁部から延び出るように当該マスク本体に連結される一対の耳掛け部とを備え、主としてウイルスへの飛沫感染を防止する目的に使用される衛生用のマスク(以下、単に「マスク」という場合がある。)および当該マスクの専用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルスの世界的な流行によって、衛生用のマスクは飛沫感染を防ぐために不可欠の手段となっている。しかし、食事のときにはどうしてもマスクを外さざるを得ず、その際に人と会話をすると飛沫が周囲に飛んでしまうおそれがあるため、商談や交流を目的とする会食が非常に難しくなっている。また介護の現場では、現状では、要介護者がマスクを着用していない状態下で食事介助をしているため、感染のリスクをふまえて食事中に会話をしないようにしており、介護の現場で大切にすべきコミュニケーションをとることが難しくなっている。
【0003】
さらに最近は、新型コロナウイルスへの爆発的な感染拡大を抑制するために、会食の際にマスクを着用することを求める動きがある。
【0004】
これらの問題を解決可能なものとして、中央部に開口部が設けられたマスク本体の表面に上記の開口部を塞ぐ表カバー部材を取り付け、表カバー部材を外すことによって口元を露出させることができる構成のマスクが考案されている(特許文献1を参照。)。
【0005】
さらに最近では、左右の耳掛け部の両端部をマスク本体の下端部側または上端部側に連結することによって、マスク本体を耳掛け部が連結されていない側の端縁から開放できる構成のマスクが商品化されている(非特許文献1,2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「食事用 使い捨て 飛沫注意マスク/開け閉めできる会食マスク」,楽天市場内「ファッション雑貨の店コラージュ」のサイト,https://item.rakuten.co.jp/collage/as1959/?iasid=07rpp_10095
【非特許文献2】「ハイスト 飲食マスク 不織布 つけっぱなしで飲食できる」、楽天市場内 株式会社ハイストのサイト,https://item.rakuten.co.jp/hist/hs-04901wh/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1,2に開示されているマスクによれば、食べ物や飲み物を口に運ぶときだけ、マスク本体の開放された側の端縁部を顔面から離れる方向に動かして口の前方を開放し、それ以外のときは口の前方をマスク本体によりガードすることができるので、会話をしながら食事をする場合の飛沫の拡散を抑えることができる。しかし、これらのマスクは、マスク本体の一端縁が常に開放されており、周囲の人の密集度合いが高くなるなど、マスク本体と顔面との間の隙間をなくす必要が生じても、通常のマスクと同じ着用状態にすることができない、という欠点がある。
【0009】
特許文献1に開示されているマスクは、マスク本体を動かすものではなく、表カバー部材で開口部を塞ぐことによって通常のマスクと同様の状態で着用できるので、非特許文献1,2のマスクより安全性は高いと思われる。しかし、このマスクを着用して会食を行う場合は、表カバー部材の装着と取り外しとを頻繁に繰り返さなければならない。開口部を閉じてマスク本体を顔面に密着させた状態で食物の咀嚼や会話のために口を動かすことも、利用者に負担をかける可能性がある。しかも、表カバー部材を外すと口が丸見えになってしまい、それを見た人に違和感を与えるので、周囲が密でない環境下でも表カバー部材を付けたままにしなければならず、着用者が息苦しさや暑さを感じてもそれを解消することが困難である。また、マスク本体や表カバー部材は汎用品ではないので、製作に手間がかかり、コスト高になるという問題もある。
【0010】
上記の問題に鑑み、本発明は、通常のマスクと同様に上下の端縁部を顔面に沿わせた着用状態と、上下いずれかの端縁部を開放して顔面の口を含む範囲を一時的に露出させることが可能な着用状態とを容易に切り替えることができるマスクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明では、一対の耳掛け部をマスク本体の上端部および下端部の2箇所から延び出させる第1の支持状態と、前記一対の耳掛け部をマスク本体の上端縁側または下端縁側に偏った2箇所から延び出させる第2の支持状態を切り替えることができるように、マスク本体における各耳掛け部の連結位置または連結の範囲を変動可能とした。
【0012】
たとえば、耳掛け部となる紐体が左右に一本ずつ連結される場合には、各耳掛け部の両端部のいずれか一方をマスク本体に着脱可能に連結されるようにし、その着脱可能な端部を他方の端部の連結位置に対向する側の端縁部に連結することによって第1の支持状態にすることができ、着脱可能な端部をマスク本体の上下方向の中心位置または当該中心位置と他方の端部の連結位置との間に連結することによって第2の支持状態にすることができる。または、各耳掛け部の両端部を着脱可能として、それらをマスク本体の上端部と下端部とに分けて連結することにより第1の支持状態にし、各耳掛け部の両端部の双方をマスク本体の上端部または下端部に連結することにより第2の支持状態にすることもできる。
【0013】
また、マスク本体の左右の端縁部のそれぞれに、耳掛け部の一部分をその端縁の全長に沿わせて支持するガイド部を設け、このガイド部による支持範囲の上下いずれかの端縁から両端縁の間の所定位置までにおける耳掛け部の支持を解除可能とすれば、当該解除をせずにガイド部全体に耳掛け部を支持させることによって第1の支持状態とし、当該解除を行って耳掛け部の支持範囲をマスク本体の上部または下部に偏らせることによって第2の支持状態にすることができる。
【0014】
第1および第2の支持状態のいずれにおいても、マスク本体を顔面にあてがって左右の耳掛け部を対応する側の耳に掛けることによって、顔面の口を含む所定範囲の前方にマスク本体を配置して、口からの飛沫が拡散するのを防ぐことができる。さらに、第1の支持状態では、マスク本体の上端縁部および下端縁部の双方を耳掛け部からの引張り力によって顔面の側に引き寄せることができるので、一般的なマスクと同様に、マスク本体を顔面に沿わせた状態にして支持することができる。
【0015】
第2の支持状態では、マスク本体の耳掛け部が連結されていない側の端縁部が耳掛け部に引っ張られない状態になるので、この端縁部を顔面から離れる方向に動かして、マスク本体と顔面との間にスペースを設けることで、会話や食べ物を咀嚼するために口を楽に動かすことができ、呼吸も楽に行えるようにすることができる。さらに、耳掛け部が連結されていない側の端縁部を引き下げる、またはめくり上げることによって、顔面の口を含む範囲を露出させることができるので、食べ物や飲み物を口に入れることも容易である。また、露出範囲に鼻を含めるようにすると、臭いを感じることも容易になる。
【0016】
マスク本体の耳掛け部により引っ張られている側の端縁部はほぼ同じ高さ位置に安定して支持されるので、開放された側の端縁部を元の位置に戻すことにより、再び口の前方をマスク本体によりガードすることができる。よって、飲食のシーンにおいて、一時的に口を露出させた後に速やかに口を隠すことができる。また、各耳掛け部をやや長めにしてアジャスター等により実質的に機能する部分の長さを調整できるようにすれば、第2の支持状態のときの各耳掛け部を第1の支持状態のときより長くすることによって、耳掛け部が連結された側の端縁部も顔面から離れた方向に湾曲させて支持することが容易になる。これにより、マスク本体と口との間に十分なスペースが生じて、口をより楽に動かすことができる。
【0017】
本発明の一実施形態では、マスク本体の左右の端縁部に、一対のガイド片がマスク本体の上下方向に沿って並ぶように重ねられる。
これら一対のガイド片は、それらが重なる端縁部との間に耳掛け部を上下方向に沿って通過させることが可能な隙間が形成されるようにそれぞれの左右の端縁部がマスク本体に連結される。さらに当該一対のガイド片の少なくとも一方の左側または右側の連結箇所がマスク本体から取り外し可能となっている。
【0018】
上記の構成によれば、マスク本体の左右の端縁部のそれぞれに一対のガイド片を連結し、それらと端縁部との間の隙間に耳掛け部を通過させることによって、耳掛け部を第1の支持状態にすることができる。その状態から一方のガイド片をマスク本体から取り外すことによって、マスク本体の上下方向における耳掛け部の通過範囲がもう一方のガイド片による隙間のみに変更され、耳掛け部を第2の支持状態にすることができる。
【0019】
さらに、本発明は、マスク本体に連結することによって、上記第1の支持状態と第2の支持状態とを切り替えることが可能な耳掛け部を有するマスクを形成する専用部品として、以下の2通りの構成の部品を提供する。
【0020】
第1の専用部品は、マスク本体の裏面の上端部または下端部に重なる状態となって当該端部に連結される基部と、マスク本体の横幅より長い一本の紐部材とを具備する。紐部材は、マスク本体に連結された基部によって、当該マスク本体の横幅方向に長さ方向を沿わせ、かつ当該マスク本体の左右に延び出す状態となって支持される。さらに、この紐部材のマスク本体の左に延び出た部分の端部は当該マスク本体の左端部に対し、マスク本体の右に延び出た部分は当該マスク本体の右端部に対し、それぞれ着脱可能に連結される。
【0021】
第2の専用部品は、マスク本体の裏面の上端部および下端部に重なる状態となって当該端部に連結される基部と一対の紐部材とを具備する。各紐部材は、マスク本体の左右に一本ずつ延び出るようにそれぞれの一端部が当該マスク本体に連結された基部に支持される。また、マスク本体の左に延び出た紐の延出部分の端部は当該マスク本体の左端部に対し、マスク本体の右に延び出た紐の延出部分の端部は当該マスク本体の右端部に対し、それぞれ着脱可能に連結される。
【0022】
上記第1および第2の専用部品によれば、紐部材のマスク本体の左右に延び出た部分(以下「延出部分」という。)の各々の端部をマスク本体の対応する側の端部に連結することによって、これら延出部分を耳掛け部として機能させることができる。また、これら延出部分の端部を基部が連結されている側とは反対側の端部に連結することによって、各延出部分を第1の支持状態の耳掛け部にすることができ、各延出部分の端部をマスク本体の上下方向の中心位置または当該中心位置と基部との間に連結することによって、各延出部分を第2の支持状態の耳掛け部にすることができる。
【0023】
いずれの構成でも、基部をマスク本体の上端部および下端部のいずれにも着脱可能とすれば、マスク本体の上端縁部および下端縁部の双方を開放可能にすることができる。さらに、この基部を着脱可能にするための連結手段が専用部品のみによって実現されるようにすれば、一般的な構成のマスク本体に本発明の専用部品を取り付けるだけで、第1の支持状態と第2の支持状態とを切り替えることが可能なマスクを得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、マスク本体に対する耳掛け部の連結位置または連結の範囲を変更するだけで、マスク本体を顔面に沿わせた着用状態と、マスク本体の一方の端縁部を顔面から離れる方向に動かして顔面の口を含む範囲を露出可能にする着用状態とを切り替えることができる。よって、通常の感染対策にも飲食の際の感染対策にも使用することが可能な衛生用のマスクを手頃な価格で提供し、多くの人の感染防止に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施例に係るマスクM1の構成を表す図である。
【
図2】上記のマスクM1の耳掛け部の支持状態を変更する方法を表す図である。
【
図3】耳掛け部の支持状態の変更が完了したマスクM1を表す図である。
【
図4】本発明の第2実施例に係るマスクM2の構成を表す図である。
【
図5】上記のマスクM2の耳掛け部の支持状態を変更する方法を表す図である。
【
図6】耳掛け部の支持状態の変更が完了したマスクM2を表す図である。
【
図7】耳掛け部を
図1に示した支持状態にしたマスクM1の着用例を表す図である。
【
図8】耳掛け部を
図4に示した支持状態にしたマスクM2の着用例を表す図である。
【
図9】耳掛け部を
図3に示した支持状態にしたマスクM1の着用例、およびこのマスクM1のマスク本体を上端縁側から開放して口を露出させた例を表す図である。
【
図10】耳掛け部を
図6に示した支持状態にしたマスクM2の着用例、およびこのマスクM2のマスク本体を下端縁側から開放して口を露出させた例を表す図である。
【
図11】本発明の第3実施例に係るマスクM3の構成を表す図である。
【
図12】本発明の第4実施例に係るマスクM4の構成を表す図である。
【
図13】上記のマスクM4の耳掛け部の一端部および当該端部とマスク本体との連結部分を拡大して表した図である。
【
図14】上記のマスクM4の耳掛け部を下端縁側に偏らせる支持状態に変更した例、および当該耳掛け部を上端縁側に偏らせる支持状態に変更した例を表す図である。
【
図15】耳掛け部が下端縁側に支持されたマスクM4の着用例、およびこのマスクM4のマスク本体を上端縁側から開放して口を露出させた例を表す図である。
【
図16】耳掛け部が上端縁側に支持されたマスクM4の着用例、およびこのマスクM4のマスク本体を下端縁側から開放して口を露出させた例を表す図である。
【
図17】本発明の第5実施例に係るマスクM5の構成を表す図である。
【
図18】上記のマスクM5の耳掛け部を下端縁側に偏らせる支持状態に変更した例、および当該耳掛け部を上端縁側に偏らせる支持状態に変更した例を表す図である。
【
図19】本発明による専用部品を第1の支持状態の耳掛け部が形成されるようにマスク本体に連結した例を表す図である。
【
図20】上記の専用部品を第2の支持状態の耳掛け部が形成されるようにマスク本体に連結した例を表す図である。
【
図21】上記の専用部品を第2の支持状態の耳掛け部が形成されるようにマスク本体に連結した他の例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の第1実施例にかかる衛生用マスクM1の全体構成を表す図(
図1中の(A))と、当該マスクの模式的な断面図(
図1中の(B1)(B2))とを組み合わせたものである。
【0027】
この実施例のマスクM1は、上下の端縁部を山状に湾曲させた布製のマスク本体1と、このマスク本体1の左右の端縁部に一部分が挿通されることにより支持される一対のゴム紐による耳掛け部2,2(平ゴムを使用。)とを主要構成とする。なお、実際のマスク本体1は、利用者の顔面に沿わせるために、左右の端縁から幅中央部に向かうにつれて前に出るように湾曲しているが、
図1では、マスク本体1の裏面を湾曲のない平坦面として表している(後続の
図2~6,
図11も同じ。)。
【0028】
マスク本体1の左右の端縁部はそれぞれ所定の幅をもたせて裏面側に折り返され、この折り返しにより裏面側に回された部分の上下方向の中心位置よりやや下の位置に切れ目10が形成されている。この切れ目10より下の部分11(以下「下部ガイド片11」という。)の開放側端縁部は縫合または接着剤によりマスク本体1の裏面に固定され、切れ目10より上の部分12(以下「上部ガイド片12」という。)の開放側端縁部は面ファスナー3を介してマスク本体1の裏面に着脱可能に連結される。
【0029】
図1(B1)では、マスク本体1の上部ガイド片12を横切るラインに沿う断面形状と共に、その右端部分の拡大図を表している。
図1(B2)では、マスク本体1の下部ガイド片11を横切るラインに沿う断面形状と共に、その右端部分の拡大図を表している。なお、
図1(B1)の拡大図では、面ファスナー3の雄型のフックを符号3Fで表し、雌型のループを符号3Lで表している。
【0030】
上記の拡大図や
図1(A)中の破線により示すように、左右の耳掛け部2,2は、マスク本体1の対応する側の端縁部の各ガイド片11,12と表側部分との間の隙間s1,s2に通されることにより、マスク本体1の上端面および下端面から延び出た状態となって支持される。
各耳掛け部2の両端部も連結され、その連結による輪の一箇所(輪を耳に掛けたときに耳の後ろに位置する部分)に長さ調整用のアジャスター20が取り付けられる。
【0031】
マスク本体1の下端縁部には、形状保持機能および可撓性を有する線状体4(形状保持プラスチック製のワイヤーや細い亜鉛メッキ鉄線などによるもの。以下、「形状保持ワイヤー4」という。)が配備される。図示は省略するが、形状保持ワイヤー4には保護用の被覆片が被せられ、この被覆片がマスク本体1の裏面に連結されることによって、形状保持ワイヤー4は被覆片とマスク本体1との間に挟まれた状態で保持される。
【0032】
図2および
図3は、
図1と同じ作図方針による3つの図(A)(B1)(B2)の組み合わせにより、上部ガイド片12とマスク本体1との連結を解除することにより生じる耳掛け部2の支持状態の変化を表している。この実施例では、マスク本体1の左右の端縁部の各々において、上部ガイド片12の連結を解除して耳掛け部2の上部ガイド片12に支持されていた部分を切れ目10の位置までずらし(
図2を参照。)、上部ガイド片12を再びマスク本体1に連結する(
図3を参照。)ことによって、耳掛け部2が下部ガイド片11による隙間s1のみに通された状態、言い換えればマスク本体1の下端縁側に偏った2箇所から延び出るように支持される状態となる。
【0033】
図4~6は、本発明の第2の実施例にかかるマスクM2を、
図1~3と同様の作図方針で表したものである。このマスクM2の基本的な構成も第1実施例のマスクM1と同様であるので、各構成にマスクM1に付したのと同じ符号を使用することによって、説明を省略する。
【0034】
第2実施例では、マスク本体1の左右の端縁部の折り返された部分の切れ目10が上下方向の中心位置より上に形成され、その切れ目10より上の部分(上部ガイド片)12の開放側端縁部がマスク本体1の裏面に固定され、切れ目10より下の部分(下部ガイド片)11の開放側端縁部が面ファスナー3を介してマスク本体1の裏面に連結される。
【0035】
上記の構成により、マスク本体1の左右の端縁部の各々において、下部ガイド片11の連結を外して耳掛け部2の下部ガイド片11に支持されていた部分を切れ目10の位置までずらし(
図5参照。)、下部ガイド片11を再びマスク本体1に連結する(
図6参照。)ことによって、耳掛け部2は上部ガイド片12による隙間s2のみに通された状態、言い換えればマスク本体1の上端縁側に偏った2箇所から延び出るように支持される状態となる。
【0036】
図7は、第1実施例のマスクM1を、各耳掛け部2を
図1に示した支持状態にして着用した例を表し、
図8は、第2実施例のマスクM2を、各耳掛け部2を
図4に示した支持状態にして着用した例を表している。いずれの例でも、マスク本体1の上端面および下端面からそれぞれ延び出た一対の耳掛け部2,2を適度に伸張させて利用者の耳に掛けることによって、各耳掛け部2,2に生じた引張り力をマスク本体1の上端縁部および下端縁部の双方に作用させて、マスク本体1の全体を顔面の側に引き寄せることができる。
【0037】
図9(A)(B)は、第1実施例のマスクM1を、左右の耳掛け部2,2を
図3に示した支持状態にして着用した例を表している。このときの各々の耳掛け部2はマスク本体1の下端縁側に偏る2箇所から延び出た状態となるため、マスク本体1の上端縁部には耳掛け部2からの引張り力は作用せず、上端縁部を顔面から離れる方向に動かすことができる。マスク本体1の下端縁部は耳掛け部2からの引張り力によって支持されるが、こちらも顔面から離れるように湾曲させて支持することができる。さらに、形状保持ワイヤー4の保持力を利用して、
図9(A)に示すようにマスク本体1の全体を
図7に示した位置より前方に動かして、顎とマスク本体1との間にスペースを設ければ、唇がマスク本体1に当たることを防止して、快適に食事をすることができる。
【0038】
さらに、マスク本体1の上端縁部を前方側にめくれるように引き下げることによって、
図9(B)に示すように、顔面の口や鼻を含む範囲を露出させることができる。このときにもマスク本体1の下部ガイド部11に対応する高さ範囲は耳掛け部2からの引張り力によって
図9(A)に示したのとほぼ同じ位置に支持される。よって、マスク本体1の引き下げられた部分を元の高さまで引き上げることによって、
図9(A)の状態に速やかに復帰させることができる。
【0039】
図10(A)(B)は、第2実施例のマスクM2を、左右の耳掛け部2,2を
図6に示した支持状態にして着用した例を表している。このときの各々の耳掛け部2はマスク本体1の上端縁側に偏る2箇所から延び出た状態となるので、マスク本体1の下端縁部には耳掛け部2からの引張り力は作用せず、下端縁部を顔面から離れる方向に動かすことができる。マスク本体1の上端縁部は耳掛け部2からの引張り力によって支持されるが、こちらも顔面から離れる方向に湾曲させて支持することができる。さらに、形状保持ワイヤー4の保持力を利用して、
図10(A)に示すようにマスク本体1の全体を
図8に示した位置より前方に動かして、顎とマスク本体1との間にスペースを設ければ、唇がマスク本体1に当たることを防止して、快適に食事をすることができる。
【0040】
さらに、マスク本体1の下縁部をめくり上げることによって、
図10(B)に示すように、顔面の口や顎を含む範囲を露出させることができる。このときにもマスク本体1の上部ガイド片12に対応する高さ範囲は耳掛け部2からの引張り力によって
図10(A)に示したのとほぼ同じ位置に支持される。よって、マスク本体1のめくり上げられた部分を元の位置に戻すことによって、
図10(A)の状態に速やかに復帰させることができる。
【0041】
上記のとおり、第1,第2の実施例のマスクM1,M2によれば、左右の耳掛け部2,2の連結範囲を変更するだけで、マスク本体1を顔面に沿わせた着用状態(
図7,
図8)と、マスク本体1の下端縁部または上端縁部を開放して顔面の口を含む範囲を露出可能にする着用状態(
図9,
図10)とを切り替えることができる。
【0042】
後者の着用状態では、口や鼻が露出していないときでも、マスク本体1と顔面との間にスペースが設けられるので、口の前方をマスク本体1によりガードして口を自由に動かすことができ、ある程度の飛沫の拡散を防ぎながら咀嚼や会話を楽に行うことができる。また、飲食に限らず、戸外での作業や運動をするときなどにも、
図9(A)または
図10(A)の状態で着用することによって、マスク本体1と顔面との間の空間を通気スペースとして機能させ、ある程度の飛沫の拡散を防ぎながら呼吸を楽に行うことができる。
【0043】
いずれの実施例でも、耳掛け部2の実質的な長さをアジャスター20により調整することができるので、マスク本体1を顔面から離すことにより耳掛け部2の引張り力が強くなりすぎたときは、耳掛け部2を長くして引張り力を緩和し、マスク本体1を前方に動かしやすくすることができる。
【0044】
なお、第1,第2の実施例では、マスク本体1の左右の端縁部を折り返して切れ目10を入れる方法により2つのガイド片11,12を形成したが、これに限らず、左右の端縁部の各々の裏面に各ガイド片11,12に適合する大きさおよび形状の一対の布片を重ねて縫い合わせる方法を採用してもよい。
【0045】
また第1,第2の実施例では、マスク本体1に固定される側のガイド片を他方のガイド片より短くしたが、これも必須の事項ではなく、
図11に示すように、切れ目10を上下方向の中央位置に入れることによって上下のガイド片12,11を同等の長さにしてもよい。
【0046】
図11に示す第3実施例のマスクM3では、上下のガイド片12,11が共に面ファスナー3,3を介してマスク本体1の裏面に着脱可能に連結されている。こうすれば、マスク本体1の上端部および下端部のいずれを開放するかを利用者自身が選択することが可能になり、その選択によって、
図9または
図10に示した着用状態にすることができる。
【0047】
その他の構成は第1実施例や第2実施例と概ね同じであるが、第3実施例のマスクM3には形状保持ワイヤー4が設けられていない。形状保持ワイヤー4がないと、マスク本体1が唇に近くなって唇に接触する可能性はあるが、耳掛け部2,2が連結されていない側の端縁部を開放し、耳掛け部2,2が連結されている側の端縁部を顔面から離れる方向に撓ませるという基本的な作用を生じさせることはでき、顔面の口を含む範囲を露出させることもできる。
勿論、マスクM3にも形状保持ワイヤー4を配備しても良く、その場合は、マスク本体1の上端縁および下端縁の双方に形状保持ワイヤー4を1本ずつ設けるのが望ましい。
【0048】
図12は、本発明の第4実施例にかかるマスクM4を、裏面側を正面として表したものである。このマスクM4は、不織布によるマスク本体1xの左右の端縁部にそれぞれ平ゴムによる紐部材2x,2xを連結して成るものである。
【0049】
各紐部材2x,2xは、一方の端部がマスク本体1xの上端部に連結され、他方の端部がマスク本体1の下端部に連結されることによって、それらの連結箇所を起点にマスク本体1xの外側に延び出る耳掛け部として機能する。
【0050】
このマスクM4のマスク本体1xでは、上端縁部および下端縁部にそれぞれ形状保持ワイヤー4xが設けられている。この形状保持ワイヤー4xも、第1,第2の実施例の形状保持ワイヤー4と同様に、図示しない被覆片とマスク本体1xとの間に挟まれて保持される。
【0051】
紐部材2xの長さ方向の中間位置には、長さ調整用のアジャスター20が取り付けられる。さらに、この紐部材2xは、マスク本体1から取り外し、任意の場所に付け替えることができる構成となっている。
【0052】
図13には、上記の紐部材2xの一端部のマスク本体1xに連結される面の拡大図(
図13中の(A)と、この端部とマスク本体1xとの連結箇所を紐部材2xの長さ方向に沿う端面側から表した拡大図(
図13中の(B))と、同じ連結箇所を紐部材2xの幅方向に沿う端面側から表した拡大図(
図13中の(C))とが含まれている。
【0053】
これらの拡大図に示すように、紐部材2xの両端部のマスク本体1xに重ねられる面には、微細なフック30Fが配列された雄型の面ファスナー30が固定されている。この面ファスナー30をマスク本体1xに接触させることによって、マスク本体1xの細かい繊維がループとして面ファスナー30のフック30Fと絡み合い、それらを介して紐部材2xをマスク本体1xに取り付けることができる。また、紐部材2xをマスク本体1xから離れる方向に引っ張れば、面ファスナー30とマスク本体1xとの係合が解除され、紐部材2xをマスク本体1xから取り外すことができる。
【0054】
なお、上記の実施例では、面ファスナー30を紐部材2xからはみ出さない大きさとしたが、紐部材2xのマスク本体1xへの連結がより安定するように、面ファスナー30を紐部材2xの端部からややはみ出る大きさにしてもよい。
【0055】
上記の仕組みにより、この実施例では、左右の紐部材2x,2xをマスク本体1xの任意の場所に着脱可能に連結することができる。これを利用して、
図12に示した連結状態のほか、
図14(A)に示すように各紐部材2x、2xの両端部を共にマスク本体1の下端縁部に連結したり、
図14(B)に示すように各紐部材2x,2xの両端部を共にマスク本体1xの上端縁部に連結することができる。
【0056】
図15(A)(B)は、各紐部材2x,2xをマスク本体1の下端縁側に偏らせて連結したとき(
図14(A)を参照。)のマスクM4の着用例を表している。
図16(A)(B)は、各紐部材2x,2xをマスク本体1の上端縁側に偏らせて連結したとき(
図14(B)を参照。)のマスクM4の着用例を表している。
【0057】
いずれの例でも、先の
図9および
図10の例と同様に、マスク本体1xの紐部材2xが連結されていない側の端縁部を顔面から離れる方向に動かすことができ、紐部材2xが連結されている側の端縁部も顔面から離れる方向に湾曲させて支持することによって、マスク本体1xと顔面との間にスペースを設けることができる(
図15(A)および
図16(A)を参照。)。さらに、紐部材2xが連結されていない側の端縁部を引き下げる、またはめくり上げることによって、顔面の口や鼻を含む範囲を露出させることができる(
図15(B)および
図16(B)を参照。)。
【0058】
図示は省略するが、第4実施例のマスクM4でも、
図12に示したように、左右の紐部材2x,2xの各々の両端部をマスク本体1の上端部と下端部とに分けて連結することによって、それらの紐部材2x,2xからの引張り力をマスク本体1の上端縁部および下端縁部の双方に作用させて、マスク本体1xの全体を顔面の側に引き寄せ、
図7,8の例と同様のマスク本体1xを顔面に沿わせた着用状態にすることができる。
【0059】
よって、第4実施例のマスクM4も、左右の紐部材2x,2xによる耳掛け部の連結位置を変更することによって、マスク本体1xを顔面に沿わせた着用状態と、マスク本体1xの下端縁部または上端縁部を開放して顔面の口を含む範囲を露出可能にする着用状態とを、切り替えることができる。
【0060】
なお、
図11のマスクM3の説明で述べたように、形状保持ワイヤー4xがなくともマスク本体1xの上下の端縁部を顔面から離れる方向に撓ませることは可能である。そうとすると、第4実施例のマスクM4は、一対の紐部材2x,2xの両端部に面ファスナー30を取り付け、これらを従来と同様の構成のマスク本体1xに組み合わせるだけで提供できるので、大がかりな労力やコストをかけることなく容易に製作することができる。
【0061】
また、面ファスナー30が取り付けられた紐部材2xさえあれば、市販のマスクのマスク本体から耳掛け部を外し、そのマスク本体に面ファスナー付きの紐部材2xを連結することによって、誰でも簡単にマスクM4を製作することができる。
【0062】
なお、
図14~16の各例では、耳掛け部2xの両端部をマスク本体1xの同じ側の端縁部の近接する2箇所に連結したが、これに限らず、両端部は、マスク本体1xの下半分の範囲または上半分の範囲内に任意の距離をあけて連結することができる。
【0063】
耳掛け部2xをマスク本体1xに連結する手段は面ファスナー30に限らず、たとえばクリップを使用することもできる。また、コストや手間が若干増えるが、マスク本体1xの左右の両端縁に沿って雄型の面ファスナーを取り付け、その面ファスナーのフックに係合可能な紐部材による耳掛け部を連結し、さらに不織布等による被覆片を面ファスナーの全域に重ねて両者を連結することによって、耳掛け部をマスク本体1xと被覆片との間に挟み込んで支持してもよい。
【0064】
第4実施例のマスク本体1xは、上下を逆にして使用することも可能であるので、耳掛け部2xの一端部のみに面ファスナー30を取り付け、マスク本体1xの上下の端縁部のいずれか一方の左右のコーナー部に、それぞれ耳掛け部2xの面ファスナー30が取り付けられていない方の端部を固定してもよい。その場合も、マスク本体1xの耳掛け部2xの一端部が固定されている端縁部の側に耳掛け部2xの他方の端部も連結し、
図15に示した着用状態にしたい場合は耳掛け部2xが取り付けられている側の端縁部を下方に向け、
図16に示した着用状態にしたい場合は耳掛け部2xが取り付けられている側の端縁部を上方に向けて、各耳掛け部2x,2xを耳にかけることによって、目的の着用状態にすることができる。また、耳掛け部2xの面ファスナー30が取り付けられている側の端部をマスク本体1xの他方の端部が取り付けられていない側の端縁部に連結することによって、マスク本体1xを顔面に沿わせた着用状態にすることもできる。
【0065】
図17および
図18は、本発明の第5実施例にかかるマスクM5を表したものである。
このマスクM5は、第4実施例と同様の不織布製のマスク本体1xと、このマスク本体1xの横幅の2倍を超える長さの紐部材200とを主要構成とする。紐部材200はリング状になるように両端部が連結された平ゴムであって、その一方の面内の2箇所(図中の点線枠r1,r2により囲まれた部分。)にマスク本体1xの横幅とほぼ同じ長さの雄型の面ファスナー31が固定されている。これらの面ファスナー31,31によって、紐部材200をマスク本体1xの任意の位置に着脱可能に連結することができる。
【0066】
各面ファスナー31,31の取り付け範囲r1,r2は、それらに挟まれる2箇所m1,m2の長さが等しくなる位置に設定されている。したがって、各面ファスナー31,31をマスク本体1xの横幅方向に合わせて紐部材200をマスク本体1xに連結することによって、面ファスナー31,31の間の部分m1,m2をそれぞれマスク本体1xの左右の端縁から延び出させ、耳掛け部として機能させることができる。またこの実施例でも、各耳掛け部m1,m2の実質的に機能する部分の長さを調整できるように、それぞれにアジャスター20が取り付けられている。
【0067】
上記構成のマスクM5では、
図17に示すように、マスク本体1xの上端縁部および下端縁部に面ファスナー31を1つずつ取り付けることによって、左右の耳掛け部m1,m2をそれぞれマスク本体1xの上端部および下端部から延び出させた状態とし、マスク本体1xの上端縁部および下端縁部の双方に耳掛け部31,32からの引張り力を作用させることができる。
【0068】
また、
図18(A)(B)に示すように、マスク本体1xの下端縁部または上端縁部に2つの面ファスナー31,31を並列に取り付けることによって、左右の耳掛け部m1,m2をマスク本体1xの下端縁側または上端縁側に偏らせ、反対側の端縁部を耳掛け部m1,m2からの引張り力が作用しない開放状態にすることもできる。
【0069】
よって、第5実施例のマスクM5でも、紐部材200の連結位置を変更することによって、先の4例と同様に、マスク本体1xを顔面に沿わせた着用状態と、マスク本体1xの下端縁部または上端縁部を開放して顔面の口を含む範囲を露出可能にする着用状態とを、切り替えることができる。
【0070】
上記第4,第5の実施例の紐部材2x,200は、上記2通りの着用状態を切り替えることが可能な衛生用マスクM4,M5を形成することができる専用部品であると考えることができる。これらと同様の機能を有し、より耐久性を高めた専用部品の実施形態について、以下、詳細に説明する。
【0071】
図19~21は、上記の機能を備える2種類の専用部品5A,5B(以下、単に「部品5A,5B」という場合がある。)を使用したマスクM6,M7を上下に並べて表したものである。これらの図の上段に示す第1の専用部品5Aは、マスク本体1xの横幅よりやや短い短冊形の基部50と、マスク本体1xの横幅より長い一本の紐部材51とを主要構成とする。
【0072】
この例の紐部材51も平ゴムであって、マスク本体1xの横幅を超える部分は2本分の耳掛け部とするのに十分な長さに設定される。また紐部材51の両端部には、それぞれ雄型の面ファスナー53,53が装着されている。これらの面ファスナー53はフック面を表に向けて2つ折りにされ、その折り目を挟んで重なった2つの片の間に紐部材51の端部が挟み込まれて各片が接着または溶着されることにより、紐部材51の端部の両面に一体に設けられる。また、紐部材51の基部50から延び出る部分の中間位置には長さ調整用のアジャスター54が取り付けられている。
【0073】
図19~21の下段に示す第2の専用部品5Bは、専用部品5Aと同じ構成の基部50と一対の紐部材52,52とを主要構成とする。こちらの紐部材52は1本分の耳掛け部に適した長さの平ゴムであって、一端部に上記と同様の面ファスナー53が装着され、中間部にアジャスター54が取り付けられている。
【0074】
上記の基部50は、一対の矩形状の開口部57が長さ方向に整列するように形成された雄型の面ファスナーを、フック面を表に向けて2枚重ね合わせ、上下の端縁部を溶着することによって形成される。
【0075】
部品5Bの基部50の内部の左下および右下の端部には、紐部材52を止めるための係止片56が設けられている。この係止片56もフック面を表に向けて2つ折りにされた雄型の面ファスナーにより成るもので、各フック面を基部50の内面に対向させた状態にして一端縁部が接着または溶着等により基部50の底部に固定される。
【0076】
専用部品5Aの紐部材51は、上記の基部50の下端部(開口部57より下の部分)の隙間に通され、基部50の左右にほぼ同じ長さをもって延び出るように調整された状態で支持される。
【0077】
専用部品5Bの各紐部材52,52は、面ファスナー53が装着されていない側の端部が基部50の左または右の開口端面から下端部の隙間に挿入され、前出の係止片56に連結されることによって、支持される。
【0078】
さらに、専用部品5A,5Bともに、基部50の高さ中央部(開口部57に対応する範囲)に、形状保持ワイヤー55が配備される。この形状保持ワイヤー55は、開口部57から基部50の内部に差し込まれて、溶着加工により基部50の左右の端部に設けられたポケット部(図示せず。)に両端部が挿入されることによって支持される。必要に応じて、開口部57から形状保持ワイヤー55を抜き出すことも可能である。
【0079】
上記したように、基部50は2枚の雄型の面ファスナーを重ね合わせて溶着する方法により製作されることによって、両面がフック面となるので、一方の面をマスク本体1xに接触させることによって、マスク本体1xの細かい繊維をループとして背面部のフックに絡み合わせて、基部50をマスク本体1xの任意の場所に取り付けることができる。また基部50をマスク本体1xから離れる方向に引っ張ることによって、両者の連結を解除することもできる。
紐部材51,52の面ファスナー53が装着された端部も同様に、マスク本体1xの任意の場所に着脱可能に連結することができる。
【0080】
なお、基部50の利用者の顔面の側に配置されることになる面には、不織布やガーゼなどによる被覆片58(
図19~21では一点鎖線により示す。)が連結される。面ファスナー53による紐部材51,52とマスク本体1xとの連結箇所にも、同様に、面ファスナー53の利用者の顔面の側に配置されることになる面に被覆片59が連結される。
【0081】
上記構成の専用部品5A,5Bは、基部50の長さ方向をマスク本体1xの横幅方向に合わせて、マスク本体1xの下端部に重ねられることによって、マスク本体1xの下端縁部の左右にそれぞれ紐部材51,52を延び出させた状態にしてマスク本体1xに連結される(
図19および
図20を参照。)。また、上下を反転させてマスク本体1xの上端部に重ねることによって、マスク本体1xの上端縁部の左右にそれぞれ紐部材51,52を延び出させた状態にしてマスク本体1xに取り付けることもできる(
図21を参照。)。
【0082】
専用部品5A,5Bがマスク本体1xの下端部に取り付けられたときは、
図19(A)(B)に示すように、紐部材51,52のマスク本体1xの左右に延び出た部分の各々をマスク本体1xの左上および右上の端部に連結することによって、これらの延出部分をマスク本体1xの上端部と下端部との2箇所から延び出る耳掛け部として機能させることができる。
【0083】
図示は省略したが、専用部品5A,5Bがマスク本体1xの上端部に取り付けられたときにも、紐部材51,52のマスク本体1xの左右に延び出た部分の各々をマスク本体1xの左下および右下の端部に連結することによって、これらの延出部分をマスク本体1xの上端部と下端部との2箇所から延び出る耳掛け部として機能させることができる。
【0084】
専用部品5A,5Bがマスク本体1xの下端部に取り付けられたときに、
図20(A)(B)に示すように、紐部材51,52のマスク本体1xの左右に延び出た部分の各々を、その延出方向側のマスク本体1xの端縁部の基部50よりやや上の位置に連結すれば、これらの延出部分をマスク本体1xの下端縁側に偏った2箇所から延び出る耳掛け部として機能させることができる。
【0085】
専用部品5A,5Bがマスク本体1xの上端部に取り付けられたときに、
図21(A)(B)に示すように、紐部材51,52のマスク本体1xの左右に延び出た部分の各々を、その延出方向側のマスク本体1xの端縁部の基部50よりやや下の位置に連結すれば、これらの延出部分をマスク本体1xの上端縁側に偏った2箇所から延び出る耳掛け部として機能させることができる。
【0086】
このように、上記の専用部品5A,5Bをマスク本体1xの上端部または下端部に取り付けた構成のマスクM6,M7でも、左右一対の耳掛け部をマスク本体1xの上端部および下端部の2箇所から延び出させる第1の支持状態と、左右一対の耳掛け部の各々をマスク本体1xの上端縁側または下端縁側に偏った2箇所から延び出させる第2の支持状態とを切り替えることができる。
【0087】
したがって、これらのマスクM6,M7でも、紐部材51,52の耳掛け部として機能する部分の端部の連結位置を変更することによって、マスク本体1xを顔面に沿わせた着用状態(
図7,
図8に示したのと同様の状態)と、マスク本体1xの下端縁部または上端縁部を開放して顔面の口を含む範囲を露出可能にする着用状態(
図9,10,15,16に示したのと同様の状態)とを、切り替えることができる。
【0088】
専用部品5A,5Bが取り付けられたマスクM6,M7は、第1の支持状態のときは、表側から見ると普通のマスクと変わらない外観が保たれるので、周囲の人に違和感を与えるおそれがない。また基部50の両面にそれぞれ一対の開口部57,57が設けられているので、基部50が装着された範囲を通過する空気の量の減少や、マスク本体1xと顔面との間に熱気がこもることを防ぐことができる。また、基部50や面ファスナー53の顔面側に配置される面に被覆片58,59が重ねられるので、顔面側のフック部や形状保持ワイヤー55が顔面に接触して利用者に不快感や痛みを与えることも防ぐことができる。
【0089】
専用部品5A,5Bは基部50の一面全体がマスク本体1xに連結されるので、使用中にマスク本体1xから外れる可能性は低く、安心して使用することができる。また紐部材51,52や形状保持ワイヤー55が基部50に一体に設けられるので、これらを紛失する可能性も低くなり、損傷からも防ぐことができる。したがって、マスク本体1xを取り替えてもそれらに同じ部品5A,5Bを組み合わせることができ、1つの部品を長期間利用することができる。
【0090】
いずれの部品5A,5Bもマスク本体1xから容易に取り外すことができ、紐部材51,52や形状保持ワイヤー55の基部50からの取り外しも容易であるので、適宜、各パーツを分離して、洗浄や消毒をすることができ、清潔な状態を維持することができる。
ただし、紐部材51,52については、基部50との位置関係が変わらないように、基部50に固定する構成に変更してもよい。
【0091】
上記の専用部品5A,5Bは、市販の不織布製のマスクの耳掛け部を取り外して、その代わりにマスク本体に連結する方法により使用することができるので、普及させることによって、多数の人の感染防止対策に役立たせることができる。
【0092】
なお、上記の実施例では、上記専用部品5A,5Bを不織布製のマスク本体1xに連結するとしたが、紙製のマスク本体にも、基部50や紐部材51,52が連結される箇所に雌型の面ファスナーを装着すれば、同様に、部品5A,5Bを着脱可能に連結することができる。第4,第5実施例の紐部材2x,200も同様に、雌型の面ファスナーが装着された紙製のマスク本体に着脱可能に取り付けることができる。
【0093】
紙製のマスク本体は紙ナプキン等の柔らかい紙で代替させることもできる。そうすれば飲食店等で容易に本発明のマスク着用方法を実施することができ、会食中の飛沫感染の可能性を減らすことができる。ただし、紙ナプキンは通常のマスク本体と同等の性能を発揮するものではないので、主として第2の支持状態として飲食中に使用することにとどめるのが望ましい。
【0094】
上述したいずれの実施例でも、耳掛け部となる紐部材として平ゴムを使用するとしたが、これに限らず、伸縮性のある糸が混ぜ込まれた不織布や伸縮性のある布を使用することもできる。また各実施例では、耳掛け部のマスク本体1,1xから延び出た部分を一連に連なった状態として、その部分の実質的な長さをアジャスター20,54により調整としたが、マスク本体からの延出部分を2つに分割し、それらを連結して耳にかけることとして、その連結の位置によって長さを調整してもよい。
【0095】
マスク本体1,1xや専用部品5A,5Bの基部50の素材や形状も、上記に説明したものに限らず、種々、変更可能である。
【符号の説明】
【0096】
M1,M2,M3,M4,M5,M6,M7 衛生用のマスク
1,1x マスク本体1x
2,2x,m1,m2 耳掛け部
3,30、31 面ファスナー
5A,5B 専用部品
10 切れ目
11 下部ガイド片
12 上部ガイド片
50 基部
51,52 紐部材
s1,s2 隙間