(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161776
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】指紋認証機能付きICカード用指紋登録装置
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
G06T1/00 400G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021089618
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】520487093
【氏名又は名称】株式会社マグネット
(72)【発明者】
【氏名】沖田 雅也
【テーマコード(参考)】
5B047
【Fターム(参考)】
5B047AA25
5B047BA10
5B047BB04
5B047BC21
5B047BC23
5B047CA23
(57)【要約】
【課題】本発明は、指紋認証機能を内蔵したICカードへの指紋登録をパソコンを接続して行う場合において、指紋登録画像にノイズが乗ってしまう現象を大幅に抑え、高い認証率を維持し安定した指紋登録作業が行える指紋登録装置を提供する。
【解決手段】 指紋認証機能付きICカード用指紋登録装置は、ICカード表面に設けられた外部接点に電気的に接続する複数の端子を備え、前記複数の端子より前記外部接点を経由して前記ICカードに前記登録に必要な電力を供給する手段、前記複数の端子より前記外部接点を経由して前記ICカードと通信する手段を備え、導電性材料で作られた部材を前記指紋登録装置の表面に配置し、前記導電性材料で作られた部材を前記複数の端子の中の一つと電気的に接続することを特徴とする構成とした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指紋センサと指紋認証機能を内蔵したICカードに対し、前記指紋センサを用いて読み取った照合用指紋データを前記ICカード内に登録するための指紋登録装置であって、前記ICカード表面に設けられた外部接点に電気的に接続する複数の端子を備え、前記複数の端子より前記外部接点を経由して前記ICカードに前記登録に必要な電力を供給する手段、前記複数の端子より前記外部接点を経由して前記ICカードと通信する手段を備え、導電性材料で作られた部材を前記指紋登録装置の表面に配置し、前記導電性材料で作られた部材を前記複数の端子の中の一つと電気的に接続することを特徴とする指紋登録装置。
【請求項2】
前記導電性材料で作られた部材が前記登録時に被登録者の人体に接触する場所に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の指紋登録装置。
【請求項3】
前記ICカードを前記通信可能な状態にした時に前記導電性材料で作られた部材が前記ICカードの前記指紋センサの背面に配置されることを特徴とする請求項2に記載の指紋登録装置。
【請求項4】
前記ICカードを前記通信可能な状態にした時に前記導電性材料で作られた部材が前記ICカードの前記指紋センサを搭載していない面の一部を露出させる様に配置され、前記指紋登録装置から前記ICカードを取り外しやすくすることを特徴とする請求項3に記載の指紋登録装置。
【請求項5】
前記導電性材料で作られた部材の電気的な接続先が前記複数の端子の中のグランド端子であることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の指紋登録装置。
【請求項6】
前記導電性材料で作られた部材の電気的な接続が前記複数の端子の中のグランド端子と抵抗器を介して接続することを特徴とする請求項5に記載の指紋登録装置。
【請求項7】
前記指紋登録装置はパソコンに接続され前記パソコンのディスプレイに前記指紋センサで読み取った前記照合用指紋データを画像表示することを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の指紋登録装置。
【請求項8】
前記指紋登録装置の前記パソコンへの接続にはUSBインターフェイスを用いることを特徴とする請求項7に記載の指紋登録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋認証機能を内蔵したICカード内へ照合用の指紋データを登録するためにICカードに電気的に接続する指紋登録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年様々な分野でICカードが使用されているが、ICカードを使用する人物を確認する手段として暗証番号ではなりすまし等の本人以外の使用を防ぐことが難しく、指紋センサや指紋認証機能を内蔵し本人の指紋であるとICカード内で認証した時のみ動作するICカードが開発されている。ICカードに内蔵する指紋センサとしては静電容量式の指紋センサであれば薄型化が可能でありクレジットカードの規格である厚さ0.76mmに収めることが可能である。消費電力も近年の半導体の微細化により非接触ICカードで供給される電力で指紋センサの駆動及び指紋認証を行うことが可能となっており、非接触ICカードに指紋認証機能を内蔵することも電池レスで実現可能である。
【0003】
指紋認証機能を内蔵したICカードでは使用前に使用者本人の指紋を登録する必要がある。使用者本人の指紋データはカード内に特徴点を抽出した指紋画像に復元不能なデータ形式で保存される。ICカード読み取り端末側とは指紋データのやり取りは行わず、指紋データの照合結果のみがやり取りされるため、登録された指紋データは登録したカード内のみに保存され、個人情報としての指紋データを集中して管理する必要はない。
指紋データを集中管理しなくても良いことは、使用者にも安心感があり個人情報漏洩のリスクも少なくはなるものの、カード1枚毎に本人の指紋を登録する必要がある。指紋登録時は指紋認証時に比べて消費電力が大きいため非接触ICカードでもカード上の外部接点を使って外部から給電しながら指紋登録する必要がある。十分な給電があればカード上の指紋センサを用いて指紋登録は可能であるため、電池で給電のみ行う格安のアダプタで指紋登録を提案している会社もあるが、指紋センサの読み出した画像を確認する手段がないため、指紋センサの触れ方によっては認証率が低下するなどの問題が起こる可能性があった。
【0004】
指紋センサの読み出した画像を確認しながら指紋登録を行う方法としては、ICカードを接触式のICカードリーダー/ライターを介してパソコンと接続し、指紋センサの読み出した画像をパソコンのディスプレイ上に表示しながら登録を行う方法がある。ICカードの電気的な外部接点については規格化がされており位置や用途が定められているので、この外部接点の一部を使って給電とパソコンとの通信を行うことで、市販のICカードリーダー/ライターをそのまま使うか一部改造して使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ICカードを接触式のICカードリーダー/ライターを介してパソコンと接続し、ICカード内の指紋センサの読み出した画像をパソコンのディスプレイ上に表示しながら登録を行う方法は指紋センサに正しく触れているかの確認が出来るため高い認証率を維持できるなど利点が多く一般的なパソコンを使用するため登録できる環境を整えるためにはICカードとパソコンを電気的に接続する接触式のICカードリーダー/ライターを用意すれば済むので費用的にも安価で済む。ところがこの登録方法を様々な顧客に対し様々な場所で実施しようとすると、登録する環境、特にパソコンの電源にノイズが多い環境においては登録する指紋画像に
図1の様に多くの横縞状のノイズが乗ってしまい、認証率の低下などの問題が発生していた。特に指紋のピッチと横縞上のノイズのピッチが同じくらいになった場合には登録できないあるいは認証に使えないなどの不具合が発生し深刻な問題となっていた。この対策としてノートパソコンの場合にはバッテリー駆動にすることによりノイズの影響が小さくなることは確認したが、環境によってはバッテリー駆動でも登録ができない場合が発生することもあった。さらにデスクトップパソコンではバッテリー駆動は出来ず、ノートパソコンをバッテリー駆動する場合でも多人数の登録を行うにはバッテリー駆動時間が十分ではないなど実際の登録作業の上で深刻な問題であった。電源ノイズを低減するためにノイズフィルタを用いる等の従来のノイズ対策では大幅な改善は見られず指紋認証機能を内蔵したICカードの普及に対して重大な問題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するためになされた本発明は、ノイズの発生原因が電源等のノイズにより電気的に接続された指紋センサのグランド電位が変動していることと、被登録者の人体の電位が電源等のノイズによる変動の影響をあまり受けないことから、指紋センサと人体の間の電位差がノイズによる影響で相対的に変動してしまい、静電容量を検知する指紋センサの各画素の電荷量がノイズにより変動することにより、電荷量の変動を静電容量の変化として指紋センサが読み取り、結果的に指紋画像にノイズが乗ってしまうと発明者は考えた。
そこで発明者は指紋センサに触れている指とは反対側の手の指でICカードのグランド電位になっている部分に触れることにより
図2の様にノイズがほとんどない指紋画像を得られることを発見した。反対側の手の指でなくても指紋センサに触れている手の他の指でICカードのグランド電位になっている部分に触れることでも同様の効果があり、被登録者の人体のどこかがグランド電位になっている部分に触れればよいことが判った。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては指紋認証機能を内蔵したICカードの指紋登録をパソコンと接続して行う際に、指紋登録画像にノイズが乗ってしまう現象を大幅に抑え、高い認証率を維持し安定した指紋登録作業が行える。被登録者の人体の電位を安定させるための導電体で出来た板は金属や導電プラスチックなどを加工して製作しても良いし、ICカードリーダー/ライターの一部を延長し、金属メッキ処理や導電テープを張り付けるなどの方法で構成しても良い。本発明の実施例では被登録者の指紋を登録する指と別の指でICカードを挟むように指紋センサに触れることで、別の指が導電体で出来た板に触れることになり被登録者の人体と指紋センサとの電位差がノイズの影響をほとんど受けなくなるよう構成しているが、ICカードリーダー/ライターの表面の一部を導電体で構成し、被登録者の指紋を登録する指のある手とは別の手でICカードリーダー/ライターを保持させることで同様の効果を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1は従来技術を使った場合のノイズの乗った指紋画像を示す図である。
図2は本発明を用いた場合のノイズのない指紋画像を示す図である。
図3、
図4及び
図5は本発明の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図3は本発明の実施例であり、1は指紋認証機能を内蔵したICカード、2は静電容量式の薄型指紋センサ、3は被登録者の指紋を登録する指、4は接触式のICカードリーダー/ライターの上カバー、5は接触式のICカードリーダー/ライターの下カバー、6はICカードリーダー/ライターのICカード接続用端子モジュール、7はICカードの外部接点の中のグランド端子、8は被登録者の人体の電位を安定させるための導電体で出来た板、9は被登録者の指紋を登録する指とは別の指である。
接触式のICカードリーダー/ライターは市販されているものと同様の構造であり、上カバー4と下カバー5の隙間からICカード1を挿入するとICカード1のグランド端子7と接続用端子モジュール6が電気的に接続され、不図示の回路基板を経由してパソコンのUSBインターフェイスに接続されICカード1との通信が行われる。同時に導電体で出来た板8も接続用端子モジュール6を経由してICカード1の外部接点のグランド端子7に接続される。この状態で被登録者の指紋を登録する指3と別の指9でICカード1を挟むように指紋センサ2に触れると、別の指9が導電体で出来た板8に触れることになり被登録者の人体と指紋センサ2との電位差がノイズの影響をほとんど受けなくなり、
図2の様にノイズがほとんどない指紋画像を得られる。本実施例ではICカード1を非接触読み取り端末にかざす時とほぼ同じ状態で被登録者の指紋を登録する指3と指紋センサ2が触れ、別の指9が無意識の内に導電体で出来た板8に触れることになり、被登録者に対して導電体で出来た板8に触れるように指示する必要がない。
【0010】
図4は本発明の別の実施例であり、1~9は
図3と同じものである。10は抵抗器であり導電体で出来た板8がパソコン周辺機器の何かの端子や筐体等に触れた際に過電流が流れることを防ぐ効果がある。実際に抵抗値をいくつか変えてノイズの影響を調べたところ、1kΩ以下であればノイズは十分抑えられることを確認した。
【0011】
図5及び
図6は本発明の実施例であり、1、2、4、5、8は
図3又は
図4と同じものである。この実施例ではノイズを抑えるために内部構造は
図3又は
図4と同様に導電体で出来た板8を不図示の接続用端子モジュール6を経由してICカード1の外部接点のグランド端子7に接続している。本実施例ではICカード1を接触式のICカードリーダー/ライターに差し込んだ状態で、導電体で出来た板8に
図6の破線の様に切り欠きを設けICカード1と重ならない部分を形成している。これは安価な接触式のICカードリーダー/ライターではICカード1を取り外す際に特別な排出機構を設けずICカード1を引っ張ることにより取り外す構造であるため、導電体で出来た板8が完全にICカード1と重なってしまうと、ICカード1の取り外しが難しくなってしまうことを避けるためである。なお、導電体で出来た板8の切り欠きは指紋センサ2と重なる部分は避けて設ける方が、安定してノイズを抑える効果を得やすい。
【符号の説明】
1 :ICカード
2 :薄型指紋センサ
3 :登録する指
4 :上カバー
5 :下カバー
6 :端子モジュール
7 :グランド端子
8 :導電体で出来た板
9 :別の指
10 :抵抗器