(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161784
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】特性試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/34 20060101AFI20221014BHJP
G01N 33/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
G01N3/34 C
G01N33/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021089631
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】516250856
【氏名又は名称】日本FC企画株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀 美知郎
(72)【発明者】
【氏名】大野 由佳
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA05
2G061AA06
2G061AA07
2G061AB03
2G061AB05
2G061AC01
2G061BA04
2G061BA15
2G061BA20
2G061CB01
2G061DA01
2G061DA05
2G061DA12
2G061EA05
2G061EA10
2G061EB10
2G061EC02
(57)【要約】
【課題】極低温水素環境下において部材の疲労破損を評価しうるコンパクトで低コストの試験装置を提供する。
【解決手段】平板状試験片2によって第一作用空間6と第二作用空間22とに仕切られて平板状試験片2を収納する容器3において、第一流体圧力変動弁16によって第一作用空間6に供給する第一流体の圧力を調節して平板状試験片2に繰り返し変動する曲げ負荷を与えると共に、第一作用空間6に供給される第一流体の流量を第一流体流量測定手段19によって測定し、そのデータを第二演算手段34に送信して、容器3内の第一作用空間6と第二作用空間22との圧力バランスを取り続けることで、自動的かつ連続的に疲労試験などの特性試験を実施することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体雰囲気下で試験片の特性及び/又は耐久性を評価する特性試験装置であって、
前記試験片によってそれぞれ一定の体積を有する第一作用空間と第二作用空間とに仕切られて前記試験片を収納する容器と、
該容器と収納された前記試験片との間に形成された前記第一作用空間に第一流体を供給する第一流体供給手段と、
前記第一作用空間に供給される前記第一流体の圧力を調節して前記試験片に繰り返し変動する曲げ負荷を与える第一流体圧力調節手段と、
前記第一作用空間に供給される前記第一流体の流量を測定する第一流体流量測定手段と、
該容器と収納された前記試験片との間に形成された前記第二作用空間に第二流体を供給する第二流体供給手段と、
前記第二作用空間に供給される前記第二流体の圧力を調節する第二流体圧力調節手段と、
前記第一流体流量測定手段によって測定された第一流体の流量測定データを基に前記第二流体圧力調節手段の圧力を調節する演算手段と、
を備えていることを特徴とする特性試験装置。
【請求項2】
前記第一の作用空間の第一流体とは異なる第二流体を前記第二の作用空間に供給する第二流体供給手段と、
前記試験片の破損に伴い前記第二作用空間にクロスリークする前記第一流体の前記第二流体に含まれる濃度の経時変化を分析する濃度分析手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の特性試験装置。
【請求項3】
前記第二流体を循環させる循環系統と、
循環動力源としての循環手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1から2の何れかに記載の特性試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素雰囲気中等、所定環境下での材料特性を評価することが可能な特性試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、水素雰囲気などの流体雰囲気下で平板状の試験片の特性又は耐久性を評価する特性試験装置が開示されている。この特性試験装置は、前記試験片によって第一空間と第二空間とに仕切られて前記試験片を収納する容器を備えて、流体圧力調節手段によって第一空間に圧力を変動させた第一流体(例えば水素ガス)を供給して試験片に繰り返し変動する曲げ負荷を与えると共に、第二流体(例えばアルゴンガス)を第二空間に供給して、前記試験片の破損の進行に伴って第一流体が第二空間にクロスリークする量を、第二流体に含まれる第一流体の濃度の経時変化として分析するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の特許文献1の特性試験装置においては、試験片の破損の進行に伴って、第一空間の第一流体と第二空間の第二流体とが相互に拡散し出して、両流体の圧力の平衡が維持できなくなり、第二流体の排気系統に背圧弁を設けて、手動で背圧弁を絞るなどして圧力の平衡を取らざるを得ないと言った問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものである。その主たる目的は、特許文献1の特性試験装置において試験片の破損が進行しても、試験片が破壊に近づくまで、あるいは試験片が破壊に至るまで、第一空間の第一流体の圧力と第二空間の第二流体の圧力の平衡を自動的にとり続けることのできる特性試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る特性試験装置は、水素などの流体の雰囲気下で試験片の機械的特性やクリープ特性や疲労特性などを評価する特性試験装置であって、前記試験片によってそれぞれ一定の体積を有する第一作用空間と第二作用空間とに仕切られて前記試験片を収納する容器と、該容器と収納された前記試験片との間に形成された前記第一作用空間に第一流体を供給する第一流体供給手段と、前記第一作用空間に供給される前記第一流体の圧力を調節して前記試験片に繰り返し変動する曲げ負荷を与える第一流体圧力調節手段と、前記第一作用空間に供給される前記第一流体の流量を測定する第一流体流量測定手段と、該容器と収納された前記試験片との間に形成された前記第二作用空間に第二流体を供給する第二流体供給手段と、前記第二作用空間に供給される前記第二流体の圧力を調節する第二流体圧力調節手段と、前記第一流体流量測定手段によって測定された第一流体の流量測定データを基に前記第二流体圧力調節手段の圧力を連続的に算出する演算手段と、を備えていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る特性試験装置は、水素などの流体の雰囲気下で試験片の機械的特性やクリープ特性や疲労特性などを評価する特性試験装置であって、前記第一作用空間の第一流体とは異なる第二流体を前記第二作用空間に供給する第二流体供給手段と、前記試験片の破損に伴い前記第二作用空間にクロスリークする前記第一流体の前記第二流体に含まれる濃度の経時変化を分析する濃度分析手段と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明に係る特性試験装置は、請求項1から請求項2に記載の特性試験装置において、前記第二流体のループを形成して、そのループ内に第二流体を循環させるための循環系統と、前記第二流体を循環させるための動力源としての循環手段と、濃度分析手段と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る特性試験装置によれば、第一演算手段によってプログラミングした圧力波形を、第一圧力調節手段を介して第一圧力変動弁に伝達して、第一流体の圧力を変動させて容器内に収納された試験片に繰り返し変動する曲げ負荷を与えることができるので、コンパクトな構造を実現でき、装置外への流体リークを低減できるという効果を奏する。
【0010】
また、本発明に係る特性試験装置によれば、試験片の破損の進行に伴って第一作用空間の第一流体と第二作用空間の第二流体との間に相互拡散が起きて、第一流体と第二流体の圧力の平衡が時間的に変化しても、第一作用空間に供給される第一流体の流量の時間的な変化を第一流体流量測定手段によって測定し、その流量データを第二演算手段に入力し、第二流体圧力調節手段の設定圧力を算出して、第二圧力変動弁の開度を予測することで、第一流体の圧力と第二流体の圧力の新たな平衡状態に自動的・連続的に設定し続けることができるという効果を奏する。
【0011】
また、本発明に係る特性試験装置によれば、前記第二演算手段によって連続的に算出された第二流体の圧力の時間的な変化によって、前記試験片の破損の進行、すなわち前記試験片の損傷度の時間的な変化を定量化することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る特性試験装置によれば、前記第二演算手段に多項式近似さらには人工知能の深層学習機能を組み込めば、多種の材質の試験片に対するデータベースを構築できるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る特性試験装置によれば、請求項1記載の特性試験装置の奏する効果に加えて、濃度分析手段を備えているので、第二作用空間に含まれる流体の濃度の経時変化を分析することで、曲げ荷重によって生じた試験片の損傷度の時間的な変化を把握することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る特性試験装置によれば、前記第二演算手段によって算出された第一流体の圧力と第二流体の圧力との平衡状態の時間的な変化から推測される試験片の破損の進行と、前記濃度分析手段から第二作用空間の第二流体中に第一流体の濃度の時間的な変化から推測される試験片の破損の進行とを組み合わせることで、試験片のより立体的な破損の進行を把握することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る特性試験装置によれば、請求項1から請求項2に記載の特性試験装置の奏する効果に加えて、前記第二流体を循環させるための循環系統と、前記第二流体を循環させるための動力源としての循環手段と、濃度分析手段と、を備えることで、第一流体の第二空間への僅かなクロスリークでも検知することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の特性試験装置の第一の実施例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の特性試験装置の第一の実施例の第一流体の圧力履歴と第二流体の圧力履歴を示す計算結果である。
【
図3】本発明の特性試験装置の第二の実施例を示す概略構成図である。
【
図4】本発明の特性試験装置の第三の実施例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【第一の実施例】
【0018】
図1は、本発明の特性試験装置の第一の実施例を示す概略構成図である。本第一の実施例の特性試験装置1は、平板状試験片2が収納される容器3を備えている。容器3は、平板状試験片2と縦断面略逆凹状の容器上部5とがつくる第一作用空間6と、平板状試験片2を境にして第一作用空間6と相対する位置に第一作用空間6とは離隔されて有する、縦断面略凹状の容器下部21と平板状試験片2の裏面とがつくる第二作用空間22とを有する。内部に第一作用空間6と第二作用空間22を構成する容器3は、容器上部5と容器下部21が開閉可能に設けられて構成されている。そして、容器3は金属製または樹脂製のパッキン4を備えており、このような容器上部5と容器下部21を閉じた際には、容器上部5の下端部と容器下部21の上端部とがパッキン4を介して重ね合される。これにより容器3を密閉することができ、容器3内に密封された第一作用空間6と第二作用空間22とを形成することができる。
【0019】
なお、本第一の実施例の容器3は、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、銅の少なくとも1種類を含む金属製である。容器上部5は、下方に開口した有底円筒状、円板状、球状または矩形状であり、容器下部21は、上方に開口した有底円筒状、円板状、球状または矩形状である。
【0020】
また、本第一の実施例の特性試験装置1は、第一作用空間6に試験環境を構成するための流体を供給する第一流体供給手段としてのガスボンベ7と、第一作用空間6に供給される流体を加圧する第一加圧手段としての第一流体圧縮機8とからなる第一流体供給系統11、並びに、第二作用空間22に流体を供給する第二流体供給手段としてのガスボンベ23と、第二作用空間22に供給される流体を加圧する第二加圧手段としての第二流体圧縮機24とからなる第二流体供給系統27の、少なくとも1つの流体供給系統を備えている。
【0021】
第一流体供給系統11は、容器上部5の第一作用空間6に接続されている。これにより、ガスボンベ7からのガスが容器上部5の第一作用空間6へ供給される。また、第二流体供給系統27は、容器下部21の第二作用空間22に接続されている。これにより、ガスボンベ23からのガスが容器下部21の第二作用空間22へ供給される。なお、第一流体供給手段7又は第二流体供給手段23は、ガスボンベからのガスを、減圧弁を介して供給する構成であってもよい。
【0022】
第一流体圧縮機8、第二流体圧縮機24は、ガスボンベ7、23からのガスを圧縮するものである。第一流体供給系統11を備えている場合には、第一流体圧縮機8又は減圧弁の出力側の流体の圧力を検出する第一流体圧力計9が第一流体供給系統11に設けられている。第二流体供給系統27を備えている場合には、第二流体圧縮機24又は減圧弁の出力側の圧力を検出する第二流体圧力計25が第二流体供給系統27に設けられている。第一流体圧縮機8、第二流体圧縮機24は、第一流体圧力計9、第二流体圧力計25の検出圧力に基づき調節される。
【0023】
また、本第一の実施例の特性試験装置1は、第一作用空間6からの流体を容器3外に排出する第一流体排出系統14又は第一流体弁排出系統12の少なくとも1つの流体排出系統、並びに、第二作用空間22からの流体を容器3外に排出する第二流体排出系統30又は第二流体弁排出系統28の少なくとも1つの流体排出系統を備えている。これら流体排出系統は、いずれも装置内に流体を保持する構成であって、第一流体排出系統14には第一流体排出弁15を、また第二流体排出系統30には第二流体排出弁31を設けてもよい。
【0024】
また、本第一の実施例の特性試験装置1は、第一流体弁出口系統13又は第一作用空間6又は第一流体排出系統14の少なくとも1箇所に、第一作用空間6の圧力を検出する第一作用空間圧力計10を備え、第一作用空間圧力計10の圧力値を所定の圧力値又は所定の圧力変動幅に調節することができる第一流体圧力調節手段17と第一流体圧力変動弁16とを設けている。
【0025】
また、本第一の実施例の特性試験装置1は、第一演算手段18を備え、前記第一演算手段18においてプログラミングした圧力波形を、信号として第一流体圧力調節手段17に伝達して、プログラミングされた圧力波形に第一流体圧力変動弁16を駆動させることができる構成としている。
【0026】
図1においては、第一流体圧力変動弁16を第一流体供給系統11に設けているが第一流体排気系統14に設けてもよい。他方、
図1においては、第二流体圧力変動弁32を第二流体供給系統27に設けているが第二流体排気系統30に設けてもよい。
【0027】
また、本第一の実施例の特性試験装置1は、第二流体弁出口系統29又は第二作用空間22又は第二流体排出系統30の少なくとも1箇所に、第二作用空間22の圧力を検出する第二作用空間圧力計26を備え、第二作用空間圧力計26の圧力値を所定の圧力値又は所定の圧力変動幅に調節することのできる第二流体圧力調節手段33と第二流体圧力変動弁32とを設けている。
【0028】
また、本第一の実施例の特性試験装置1は、第一流体供給系統11に第一流体流量測定手段19を組み入れて、前記第一流体流量測定手段19で収録した第一流体の流量のデータを、第一流体測定値送信手段20を介して、第二演算手段34に送信することができる構成としている。
【0029】
図1においては、第一流体流量測定手段19を第一流量供給系統11に組み入れたが、第一流体弁排出系統12に組み入れても、第一流体排出系統14に組み入れてもよい。
【0030】
本第一の実施例では、第一流体圧力変動弁16と第二流体圧力変動弁32は、第一流体圧力調節手段17と第二流体圧力調節手段33からの信号を受けて空気圧によって駆動して弁の開度を設定することができるが、弁の駆動源にはモータ(電動機)、電磁(ソレノイド)、圧電素子(ピエゾスタック)等で構成することもできる。
【0031】
図1において、第一演算手段18と第二演算手段34は、例えば、中央演算装置(CPU)、プログラマブルロジックコントローラー(PLC)、記憶手段(RAM及びROM)などからなる演算回路を備えている。
【0032】
また、
図1においては、第二流体圧力計25から制御操作部36への信号入力回路35を一例として図示するが、第二流体圧力計25に加え、第一流体圧力計9、第一作用空間圧力計10、第二作用空間圧力計26、第一流体圧力調節手段17、第二流体圧力調節手段33、第一流体流量測定手段19などの入力機器からの信号入力回路35、及び、試験実施者の操作入力を受け付けて制御する制御操作部36とそれらの制御操作の状況を表示する制御操作表示部38を備えていてもよい。
【0033】
また、
図1においては、制御操作部36から第二演算手段34への信号出力回路37を一例として図示するが、第一流体圧縮機8、第二流体圧縮機24、第一流体排出弁15、第二流体排出弁31、第一流体圧力変動弁16、第一演算手段18、第二流体圧力変動弁32、第二演算手段34などの出力機器への信号出力回路37、及び試験実施者の操作入力を受け付けて制御する制御操作部36とそれらの制御操作の状況を表示する制御操作表示部38を備えていてもよい。
【0034】
次に、本第一の実施例の特性試験装置1を用いた試験方法について説明する。まず、平板状試験片2を容器下部21の上端部に置き、パッキン4を介して、容器上部5の下端部を重ね合わせて密閉する。これによって、容器下部21の上端部と容器上部5の下端部の重ね合わせ部から流体の漏れがないようにする。
【0035】
平板状試験片2を収納後、ガスボンベ7から第一流体供給系統11を介して容器3の第一作用空間6へガスが供給される。また、ガスボンベ23から第二流体供給系統27を介して容器3の第二作用空間22へガスが供給される。第一作用空間6と第二作用空間22へ供給されるガスは、それぞれ第一流体圧縮機8、第二流体圧縮機24によって圧縮される。この際、第一流体圧縮機8、第二流体圧縮機24は、それぞれ第一流体圧力計9、第二流体圧力計25から得られる検出圧力を一定に維持するように制御する。ガスボンベ7、23の圧力が高い場合には、第一流体圧縮機8、第二流体圧縮機24に換えて、減圧弁を用いることも可能である。
【0036】
試験の際、平板状試験片2は、容器上部5と容器下部21との間に挟み込まれ、第一作用空間6と第二作用空間22とを隔離する状態で固定されている。平板状試験片2の上面には第一作用空間6のガス圧が負荷され、平板状試験片2の下面には第二作用空間22のガス圧が負荷される。
【0037】
そして、第一演算手段18にプログラミングされて入力された圧力値又は圧力波形、又は、試験実施者が入力した圧力又は圧力波形を、第一圧力調節手段17に送信して、送信されたデータに基づいて第一流体圧力変動弁16の開度を調節することができる。
図2は、一例として、第一流体最大圧力39と第一流体最小圧力40との間の台形波の圧力変動41の出力結果である。
図2においては、一例として台形波によって圧力変動を図解したが、三角波、正弦波、矩形波を用いることも可能である。
【0038】
ここで、前記圧力波形の周期、波形幅は、第一演算手段18によって自動的に、連続的に、必要に応じランダム的に設定し続けることができる。その結果、第一作用空間6と第二作用空間22との圧力差の変動によって、前記平板状試験片2の疲労破損、疲労破壊を評価する試験を行うことができる。
【0039】
また、特性試験装置1を用いた平板状試験片2の特性試験の過程において、前記平板状試験片2の破損が進行して、第一作用空間6から第二作用空間22へと第一流体のクロスリークが増加し始めると、その増加分を、第一流体流量測定手段19によって単位時間当たりの第一流体の流量増加分として検知することができる。
【0040】
図2は、第一流体流量測定手段19に積算流量計を用いて、前記の第一流体流量増加分を例えば積算流量として捉えた例である。台形波の1サイクル当たりに消費される第一流体流量42がq
1、・・・、q
i、・・・、q
jへと増加するにつれて、所定の積算流量Q43に達するまでのサイクル数44はn
1、・・・、n
i、・・・、n
jへと減少する。
【0041】
さらに、第一流体流量測定手段19によって測定された第一流体の流量増加分のデータは、第一流体流量測定値送信手段20を通して第二演算手段34に送信することができる。前記第一流体流量測定手段19からのデータを受信した前記第二演算手段34は、受信したデータに基づいて演算を行い、その演算結果に基づいて前記第二流体圧力調節手段33を介して第二流体圧力変動弁32の開度を調節することができる。
【0042】
図2には、第二流体変動弁32の開度調節に伴って、第二流体の圧力45の変化を捉えた例を示す。第二流体圧力45は、P
1
2、・・・P
i
2、・・・、P
j
2へと段階的にて変化する。
【0043】
この場合、
図2の第二流体圧力45の変化(P
1
2、・・・P
i
2・・・、P
j
2)は、平板状試験片2の破損・破壊の経時特性を示している。一般的に、材料の破損・破壊の経時特性を表す指標として、応力拡大係数が用いられているが、第一の実施例における第二流体圧力45の変化は、前記応力拡大係数に相当する指標と言える。
【0044】
上述したように、本第一の実施例の特性試験装置1によれば、平板状試験片2の破損の進行に伴って第一空間6の第一流体と第二空間22の第二流体との間に相互拡散が起きて、第一流体と第二流体の圧力の平衡が時間的に変化しても、第一空間6に供給される第一流体の流量の時間的な変化を第一流体流量測定手段19によって測定し、その流量データを第二演算手段34に入力し、第二流体圧力調節手段33の設定圧力を算出して、第二圧力変動弁32の開度を、
図2に一例を示す方法によって予測することで、第一流体の圧力と第二流体の圧力の新たな平衡状態に、連続的又は段階的に設定し続けることができる。
【0045】
また、本第一の実施例の特性試験装置1によれば、第一流体圧力調節手段17及び/又は第二流体圧力調節手段33によって第一流体圧力変動弁16、並び、第二流体圧力変動弁32の少なくとも一方を調節することで、第一空間6の流体の圧力と、第二空間22の流体の圧力との間に間欠的・連続的に差を持たせて、平板状試験片2に対して間欠的・連続的に曲げ荷重を負荷することができる。
【0046】
すなわち、本第一の実施例の特性試験装置1によれば、油圧ポンプやシリンダなどによって平板状試験片2に負荷を与えるのではなく、雰囲気を形成する第一空間6と第二空間22との差圧によって平板状試験片2に曲げ荷重を負荷することが可能となる。こうした構成にすることで、従来、ピストン運動によって試験片に負荷を与えていたロッドと静止した水素環境容器との間の摺動部を削除することができる。これにより、水素などのガスリークを無視できるまでに低減でき、高い安全性を担保することができる。
【0047】
また、本第一の実施例の特性試験装置1によれば、油圧ポンプやシリンダなどの試験片に負荷を与えていた機構が不要となり、非常にコンパクトな試験機を作り出すことが可能となる。
【0048】
本第一の実施例の特性試験装置1において、ガスボンベ7、23の少なくとも一方に水素ガスボンベを用いて、第一空間6、並びに、第二空間22の少なくとも一方を水素ガスで満たすことで、平板状試験片2の水素ガス環境下での特性を評価することが可能となる。
【0049】
このように、流体雰囲気下で平板状試験片2の機械的特性やクリープ特性や疲労特性などを評価する特性試験装置1であって、平板状試験片2を収納する容器3と、容器3に収納された平板状試験片2との間に有する第一空間6に水素ガスを供給する流体供給手段7と、第一空間6に供給された水素ガスの圧力を調節する第一流体圧力調節手段17と、第一流体圧力調節手段17を制御して平板状試験片2に負荷を与える第一流体圧力変動弁16と、を備えている場合には、平板状試験片2の水素ガス環境下での特性を、コンパクトな装置で、かつ、水素ガスの漏出を防止しつつ、評価することができる。
【0050】
なお、本第一の実施例の特性試験装置1において、試験片は平板状としたが、概ね平板状であっても、半球状等であっても、同様に試験片の特性試験を行うことが可能である。
【0051】
また、上記第一の実施例においては、第一空間6へ供給する流体並びに第二空間22へ供給する流体の一例としてガスを挙げたが、何らこれに限定されるものではない。例えば、試験温度において、液体状態の物質であってもガス状態の物質であってもよい。試験温度で液体状態の物質としては、液水、アルコール、オイルが挙げられる。流体は、これらのいずれであってもよい。試験温度でガス状態の物質としては、水素などの還元性ガス、窒素、アルゴンなどの不活性ガス、ヘリウムなどの希ガス族元素、空気、酸素、水蒸気などが挙げられる。流体は、これらのいずれであってもよいし、これらの混合ガスであってもよい。
【0052】
また、上記第一の実施例においては、容器3は、縦断面略逆凹状の容器上部5と、縦断面略凹状の容器下部21とから構成されるものとしたが、何らこれに限定されるものではない。容器3は、試験片との間に作用空間を有するものであればよい。作用空間は、少なくとも流体の通路を有するものであればよく、例えば、容器3に単数又は複数の凹状の溝を有するものや、燃料電池のセパレータのような構造のものであってもよい。
【0053】
図1には、第一流体供給手段7と第一流体排出系統14の双方を備えており、かつ、第二流体供給手段23と第二流体排出系統30の双方を備えている場合の特性試験装置1を図示したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、特性試験装置1は、第一流体供給手段7と第一流体弁排出系統12又は/かつ第一流体排出系統14を備えている場合、第一流体供給手段7と第一流体弁排出系統12又は/第一流体排出系統14と第二流体供給手段23とを備えている場合、第二流体供給手段23と第二流体弁排出系統28又は/かつ第二流排出系統30とを備えている場合、第二流体供給手段23と第二流体弁排出系統28又は/かつ第二流体排出系統30と第一流体供給手段7とを備えている場合であってもよい。
【0054】
上記第一の実施例では、第一流体圧力調節手段として第一流体圧力変動弁16を第一流体供給系統11に用いた場合の実施例を挙げたが、第一流体圧力調節手段は第一空間6の流体の圧力を調節するものであればよく、何らこれに限定されるものではない。例えば、第一流体圧力変動弁16を第一流体排出系統14に用いてもよい。同様にして、第二流体圧力調節手段として第二流体圧力変動弁32を第二流体供給系統27に用いた場合の実施例を挙げたが、第二空間22の流体の圧力を調節するものであればよく、何らこれに限定されるものではない。例えば、第二流体圧力変動弁32を第二流体排出系統30に用いてもよい。
【第二の実施例】
【0055】
本第二の実施例の特性試験装置は、試験片の破損・破壊特性やリーク特性などを定量化するためのものであり、前述の第一の実施例に限らず、各種の特性試験装置への適用が可能である。
図3は、第二の実施例の特性試験装置を示す概略構成図である。本第二の実施例の特性試験装置1は、基本的には前記第一の実施例の特性試験装置1と同様である。そこで、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。また、両実施例で共通の事項については、説明を省略する。
【0056】
本第二の実施例の特性試験装置1においては、第一空間6の第一流体とは組成が異なる第二流体を容器外へ排出させる第二流体排出系統30を有し、第二空間22から容器3外に排出される第二流体に含まれる、第一空間6から第二空間22にリークした流体の濃度を分析する濃度分析計46を備えている。また、濃度分析計46は、測定された濃度の値を記録するデータ収録系47を備えている。そのために、ガスボンベ7とガスボンベ23には、組成が異なるガスボンベを使用する。
【0057】
濃度分析計46は、第二流体排出系統30に設けられており、検出器としての金属酸化物半導体式ガスセンサと、サンプルガスを分離させる管であるカラムとを備えている。濃度分析計46は、ガスクロマトグラフィ手法を用いてガス分析を行い、ガス成分がカラムを通過する際の速度の違いを利用し、ガスを分離する。ガス成分の同定は、クロマトグラムにおけるピークの出現時間(保持時間)で行う。カラムを変えれば様々なガス種に対応できる。
【0058】
データ収録系47は、専用ソフトを組み込んだパソコンである。データ収録系47の操作部を操作して、例えば、サンプル名、測定時間、測定温度などを入力し、測定後にデータ収録系47の画面出力部に測定結果が表示される。さらに、測定データは、データ収録系47の記憶部に保存されるので、データを容易に管理、検索することができる。
【0059】
次に、本第二の実施例の特性試験装置1の動作について説明する。平板状試験片2を容器3に収納後、ガスボンベ7、23から流体供給系統11、27を介して容器3の第一空間6、第二空間22へガスを供給する。この場合、第一空間6の流体と第二空間22の第二流体の種類を違える。例えば、ガスボンベ7として水素ボンベを用い、第一空間6を水素ガスで満たすようにし、ガスボンベ23としてアルゴンボンベを用いて、第二空間22をアルゴンガスで満たすようにする。それら第一空間6、第二空間22へ供給されるガスの圧力が低い場合には、圧縮機8、24によって圧縮する。逆に、ガスボンベ7、23の圧力が高い場合には、圧縮機8、24に換えて減圧弁を用いる。
【0060】
この状態で、第一空間6の第一流体の圧力を第二空間22の第二流体の圧力よりも連続的又は間欠的に高くし、第二空間22から排出される第二流体に含まれる、第一空間6から第二空間22にリークした第一流体の濃度を濃度分析計46で分析することで、平板状試験片2のガス透過特性、例えば、フィックの法則のガス拡散係数を測定することが可能となる。
【0061】
より具体的には、本第二の実施例の場合、濃度分析計46で第二流体排出系統30中のガスの濃度を分析することで、アルゴン中にリークした水素の濃度を測ることができる。
【0062】
本第二の実施例の特性試験装置1によれば、第一空間6の流体と第二空間22の第二流体の種類を違え、平板状試験片2に静的な曲げ荷重、あるいは、変動的な曲げ荷重を与え、第二空間22から排出される第二流体に含まれる第一空間6から第二空間22にリークした流体の濃度を分析することで、曲げ荷重によって生じた平板状試験片2の損傷度、および損傷の経時変化を連続的に追跡することが可能となる。
【0063】
さらに、本第二の実施例の特性試験装置1によれば、平板状試験片2の破損の進行に伴って第一空間6の第一流体と第二空間22の第二流体との間に相互拡散が起きて、第一流体と第二流体の圧力の平衡が時間的に変化しても、第一空間6に供給される第一流体の流量の時間的な変化を第一流体流量測定手段19によって測定し、その流量データを第二演算手段34に入力し、第二流体圧力調節手段33の設定圧力を算出して、第二圧力変動弁32の開度を、
図2に一例を示す方法によって予測することで、第一流体の圧力と第二流体の圧力の新たな平衡状態に連続的に設定し続けることもできる。
【0064】
また、本第二の実施例の特性試験装置1によれば、第一空間6の流体と第二空間22の第二流体の種類を違え、第一空間6の流体の圧力を第二空間22の第二流体の圧力よりも高くし、第二空間22から排出される第二流体に含まれる第一空間6から第二空間22にリークした流体の濃度を分析することで、平板状試験片2の流体の透過性、とりわけ、流体の拡散係数を同定することが可能となる。
【0065】
さらに、圧力制御手段としての第一演算手段18の信号を受けて第一流体圧力調節手段17によって第一流体圧力変動弁16を作動させることで、第一空間6の流体に、
図2に示すような、例えば、台形波、矩形波、三角波、正弦波などの圧力変動41を平板状試験片2に曲げ荷重モードとして負荷することができる。この場合、第二空間22から排出される第二流体に含まれる、第一空間6から第二空間22にリークした流体の濃度を濃度分析計46で分析することで、変動荷重による平板状試験片2の損傷の経時特性を定量的に把握することができる。さらに、データ収録系47を備えているので、データとして収録することができる。
【0066】
このように、油圧ポンプや油圧シリンダなどによって平板状試験片2に負荷を与えるのではなく、平板状試験片2の雰囲気を形成する第一空間6と第二空間22との差圧によって平板状試験片2に曲げ荷重を負荷することが可能となる。こうした構成にすることで、従来、油圧によるピストン運動によって試験片に負荷を与えていたロッドと静止した水素環境容器との間の摺動部を削除することができるので、水素などのガスリークを無視できるまでに低減することができ、高い安全性を担保することができる。また、油圧ポンプや油圧シリンダなどの試験片に負荷を与えていた機構が不要となり、非常にコンパクトな試験機を作り出すことが可能となる。
【0067】
特に、本第二の実施例の特性試験装置1において、例えば、第一流体供給手段7に水素ガスボンベを用いて、第一空間6に水素ガスを流通し、第二流体供給手段23にアルゴン・ガスボンベを用いて、第二空間22にアルゴンガスを流通する。この状態で、濃度分析計46を水素ガス分析計として、第一空間6から第二空間22のアルゴンガス中にリークする水素ガスの濃度を測定することで、平板状試験片2の水素ガス透過特性、例えば、水素ガス拡散係数を測定することができる。また、平板状試験片2の変動曲げ荷重下の損傷の経時特性を評価することも可能となる。
【0068】
なお、本第二の実施例の特性試験装置1においては、第一空間6の流体と第二流体は異なる流体であればよく、第一空間6の流体並びに第二流体として、例えば、試験温度において、液体状態の物質であってもガス状態の物質であってもよい。試験温度で液体状態の物質としては、液水、アルコール、オイルであってもよい。試験温度でガス状態の物質としては、水素、窒素、空気、酸素、アルゴン、ヘリウム、水蒸気などであってもよい。
【0069】
また、上記第二の実施例では、濃度分析計46としてガス分析計の一例を挙げたが、何らこれに限定されるものではない。例えば、濃度分析計46は、液分析計、酸素濃度計、質量分析計、微量濃度ガス分析計、JIS規格の酸素分析計などであってもよい。
【0070】
図3には、第一流体供給手段7と、第一流体圧力変動弁16と、第一流体排出系統14と、第二流体供給手段23と、第二流体圧力変動弁32と、第二流体排出系統30と、濃度分析計46と、データ収録系47とを備えている場合の特性試験装置1を図示したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、特性試験装置1は、第一流体供給手段7と第一流体圧力変動弁16と第一流体弁排出系統12又は/かつ第一流体排出系統14と、濃度分析計46と、データ収録系47とを備えている場合でもよい。また、第一流体供給手段7と、第一流体圧力変動弁16と、第一流体弁排出系統12又は/第一流体排出系統14と第二流体供給手段23と、濃度分析計46と、データ収録系47とを備えている場合であってもよい。
【第三の実施例】
【0071】
本第三の実施例の特性試験装置は、試験片の破損・破壊特性やリーク特性などを高精度に定量化するためのものであり、前述の第一と第二の実施例に限らず、各種装置への適用が可能である。
図4は、第三の実施例の特性試験装置を示す概略構成図である。本第三の実施例の特性試験装置1は、基本的には前記の第一と第二の実施例の特性試験装置1と同様である。そこで、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。また、第三の実施例で第一および第二の実施例と共通の事項については、説明を省略する。
【0072】
本第三の実施例の特性試験装置1においては、第一空間6の流体とは組成が異なる第二流体を容器外へ排出させる第二流体排出系統30を有し、第二流体排出系統30を介して排出される第二流体の少なくとも一部を、第二流体循環系統48を設けて、第二流体供給系統27に戻す構成とし、第二流体循環系統48には、少なくとも濃度分析計46と第二流体循環ポンプ49とが組み込まれている。また、濃度分析計46は、測定された濃度の値を記録するデータ収録系47を備えている。
【0073】
また、本第三実施例の特性試験装置1の第二流体循環系統48には、減圧弁50を組み込んでもよい。
【0074】
次に、本第三の実施例の特性試験装置1の動作について説明する。平板状試験片2を容器3に収納後、ガスボンベ7、23から流体供給系統11、27を介して容器3の第一空間6、第二空間22へガスを供給する。この場合、第一空間6の第一流体と第二空間22の第二流体の種類を違える。例えば、ガスボンベ7として水素ボンベを用い、第一空間6を水素ガスで満たすようにし、ガスボンベ23としてアルゴンボンベを用いて、第二空間22をアルゴンガスで満たすようにする。それら第一空間6、第二空間22へ供給されるガスの圧力が低い場合には、圧縮機8、24によって圧縮する。逆に、ガスボンベ7、23の圧力が高い場合には、圧縮機8、24に換えて減圧弁を用いる。
【0075】
この状態で、第一空間6の第一流体の圧力を第二空間22の第二流体の圧力よりも連続的又は間欠的に高くし、第二空間22から排出される第二流体に含まれる、平板状試験片2を介して第一空間6から第二空間22にリークした第一流体の濃度を、第二流体排出系統30から分岐した第二流体循環系統48に設けた濃度分析計46によって分析することで、平板状試験片2のガス透過特性、平板状試験片2の破損・破壊特性を連続的かつ高レンジ又は高精度に測定することが可能となる。
【0076】
本第三の実施例の特性試験装置1の測定の高レンジ化の原理を定量的に説明してみると、例えば、濃度分析計46の測定上限が10ppmのレンジであっても、第二流体の循環流量が10に対して、平板状試験片2を介しての第一流体の第二流体へのリーク量が1である場合には、実施上、100ppmのレンジとして測定を可能とする。この場合、第二流体循環系統48の循環流量は、第二流体循環ポンプ49の流量によって制御・管理することが出来る。
【0077】
逆に、本第三の実施例の特性試験装置1の測定の高精度化の原理を定量的に説明してみると、例えば、濃度分析計46の測定下限が1ppmであっても、循環系統48の第二流体の循環流量が一定であるのに対して、平板状試験片2を介して第一空間6から第二空間22へリークする第一流体は時間に伴って蓄積して第二流体中の第一流体の濃度は上昇するので、濃度分析計46の測定下限1ppm以下のリ-ク濃度を観察できる。すなわち、平板状試験片2の破損・破壊特性をより高精度化することを可能にする。
【0077】
また、本第三の実施例の特性試験装置1において、第二流体循環系統48の任意の位置に循環系統減圧弁50を設けることで、循環系統減圧弁50の下流の流体圧力を減圧することができる。循環系統48の減圧弁50の下流側で、かつ、第二流体循環還ポンプ49の上流側に濃度分析計46を組み込むことで、濃度分析計46の設計圧力を低減することが可能となる。
【0078】
上記実施形態から次の技術的思想が把握できる。
(1)第一空間(前記第一作用空間)の内圧と第二空間(前記第二作用空間)の内圧との差圧を変動させることで前記流体により少なくとも前記試験片の一方向に負荷を与えることを特徴とする特性試験装置。
【0079】
この(1)の発明によれば、大掛かりで複雑な構造の部位は必要なく、低コストの特性試験装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、水素環境に晒される供試体のガス透過性や疲労特性などの材料特性を評価する特性試験装置に適用されるものである。
【符号の説明】
【0081】
1 特性試験装置
2 平板状試験片(試験片)
3 容器
4 パッキン
5 容器上部
6 第一作用空間(第一空間)
7 第一流体供給手段(ガスボンベ)
8 第一流体圧縮機
9 第一流体圧力計
10 第一作用空間圧力計
11 第一流体供給系統
12 第一流体弁排出系統
13 第一流体弁出口系統
14 第一流体排出系統
15 第一流体排出弁
16 第一流体圧力変動弁
17 第一流体圧力調節手段
18 第一演算手段
19 第一流体流量測定手段
20 第一流体流量測定値送信手段
21 容器下部
22 第二作用空間(第二空間)
23 第二流体供給手段(ガスボンベ)
24 第二流体圧縮機
25 第二流体圧力計
26 第二作用空間圧力計
27 第二流体供給系統
28 第二流体弁排出系統
29 第二流体弁出口系統
30 第二流体排出系統
31 第二流体排出弁
32 第二流体圧力変動弁
33 第二流体圧力調節手段
34 第二演算手段
35 信号入力回路
36 制御操作部
37 信号出力回路
38 制御操作表示部
39 第一流体最大圧力
40 第二流体最小圧力
41 圧力変動
42 第一流体流量
43 積算流量
44 サイクル数
45 第二流体圧力
46 濃度分析手段(濃度分析計)
47 データ収録系
48 第二流体循環系統
49 第二流体循環ポンプ
50 循環系統減圧弁