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特開2022-161809高保磁力と高抵抗率を有するネオジム鉄ボロン永久磁性体及びその製造方法
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  • 特開-高保磁力と高抵抗率を有するネオジム鉄ボロン永久磁性体及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161809
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】高保磁力と高抵抗率を有するネオジム鉄ボロン永久磁性体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20221014BHJP
   H01F 1/057 20060101ALI20221014BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20221014BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20221014BHJP
   C22C 1/04 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H01F41/02 G
H01F1/057 150
B22F1/00 W
B22F1/102 100
C22C1/04 F
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203110
(22)【出願日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】202110385184.8
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519390438
【氏名又は名称】寧波科田磁業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チャンチャン
(72)【発明者】
【氏名】キアン、ニチャン
(72)【発明者】
【氏名】ウ、チグオ
【テーマコード(参考)】
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K018AA27
4K018BA18
4K018BB05
4K018BC01
4K018BC28
4K018BC29
4K018BD01
4K018DA11
4K018KA45
5E040AA04
5E040CA01
5E062CD04
5E062CG01
5E062CG02
5E062CG07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法は、表面が洗浄プロセスで処理された薄いシート状のネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料に、重希土類化合物、酸化物及び/または炭化物を含む粉体スラリーを噴霧し、磁性体を重ね合わせた後3段階の熱処理を行う。重希土類は高温で薄いシート磁性体の内部に浸透することで、薄いシート磁性体の保磁力を高めると同時に、薄いシート磁性体の内部に浸透してない重希土類元素または合金元素及び炭化物粉体または酸化物粉体は二つの薄いシート磁性体を結合する中間層を形成する。中間層は、酸素や炭素など非導電性元素を含む比例が高いため、磁性体全体の抵抗率を高めることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法を提供し、その方法は、
薄いシート状のネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を提供するステップS1と、
表面洗浄プロセスを提供して、上記の表面洗浄プロセスで上記のネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を処理し、清浄なネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を取得するステップS2と、
上記の清浄なネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料の表面に一層のスラリーを塗布することにより、塗布されたネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を取得し、上記のスラリーにおいて、重希土類粉体と、化合物粉体と、有機溶媒とを含み、上記の化合物粉体は炭化物粉体及び/または酸化物粉体とを含むステップS3と、
複数のシートの上記の塗布されたネオジム鉄ブロン磁性体の合金原料を重ね合わせて、ネオジム鉄ボロン磁性体の合金原料のラミネートを得るステップS4と、
3段階の熱拡散プロセスを提供して、上記の3段階の熱拡散プロセスで上記のネオジム鉄ボロン磁性体の合金原料のラミネートを処理し、高保磁力と高抵抗率を備えたネオジム鉄ボロン永久磁性体を取得するステップS5とを含む。
【請求項2】
ステップS3において、上記のスラリー中の各成分の質量比は、重希土類粉体:化合物粉体:有機溶媒=27~40:0.2~1.5:58.5~72.8であることを特徴とする請求項1に記載の高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法。
【請求項3】
ステップS3において、上記の重希土類粉体の平均粒度は1~5μmであることを特徴とする請求項1に記載の高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法。
【請求項4】
ステップS3において、上記の重希土類粉体はDy単体粉体、Tb単体粉体、Dy合金粉体、Tb合金粉体のうちの一つまたは複数を含むことを特徴とする請求項1に記載の高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法。
【請求項5】
上記のDy合金粉体及びTb合金粉体は、Dy元素またはTb元素と、Al、Cu、Ga、Fe、Co元素のうちの一つはまた複数とによって形成される合金粉体であることを特徴とする
請求項4の高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法。
【請求項6】
ステップS3において、上記の化合物粉末の平均粒度は0.1~200nmであることを特徴とする請求項1に記載の高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法。
【請求項7】
ステップS3において、上記の酸化物粉体は、酸化アルミニウム粉体、酸化シリコン粉体、酸化マグネシウム粉体、酸化セリウム粉体、及び酸化カルシウム粉体のうちの1つまたは複数を含むことを特徴とする請求項1に記載の高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法。
【請求項8】
ステップS3において、上記の炭化物粉体は、炭化ケイ素粉体及び炭化タングステン粉体のうちの1つまたは2つであることを特徴とする請求項1に記載の高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法。
【請求項9】
ステップS3において、上記の有機溶媒は、無水エタノール、グリセリン、及びエチレングリコールのうちの一つまたは複数を含むことを特徴とする請求項1に記載の高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法。
【請求項10】
ステップS3において、上記の清浄なネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料の表面に塗布された上記のスラリーの厚さは10~30μmであることを特徴とする請求項1に記載の高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法。
【請求項11】
ステップS3において、塗布は窒素の保護下で行われることを特徴とする請求項1に記載の高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法。
【請求項12】
ステップS1において、上記のネオジム鉄ブロン磁性体の合金原料の厚さは1.5~6mmであることを特徴とする請求項1に記載の高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法。
【請求項13】
ステップS5において、上記の3段階の熱拡散プロセスは、具体的に、熱処理温度は1000~1100℃で、保温時間は4~6時間の1段階目と、エイジング温度は850~950℃で、保温時間は4~10時間の2段階目と、エイジング温度は450~550℃で、保温時間は2~6時間の3段階目とを含むことを特徴とする請求項1に記載の高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法。
【請求項14】
請求項1から13の方法によって製造され、上記のネオジム鉄ブロン永久磁性体は、交互に重ね合わされた高保磁力磁性体層及び高抵抗率層を含むことを特徴とする高保磁力及び高抵抗率を有するネオジム鉄ブロン永久磁性体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類永久磁石の分野に属し、高保磁力と高抵抗率を有する永久磁石及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネオジム鉄ボロン永久磁石は磁気エネルギー積が高いため、風力発電、新エネルギー自動車、インバーターエアコン、産業用モーターなどの分野で広く使用されている。これらの分野では、磁性体の作動温度が高くて、磁性鋼に対し高温耐性が求められている、当業者は、この磁性鋼の高温耐性についてたくさんの量の研究を実施し、磁石の耐熱性を改善するために、二つ方法を提供した。
【0003】
方法1:磁性体の保磁力の改善
この方法は主に、ネジオム鉄ブロン合金にDyやTbなど重希土類を追加することによって実現される。通常、合金に1wt%Dyを追加すると、2kOeの保磁力が増加し、1wt%Tbを追加すると4kOeの保磁力が増加する。ただし、この方法では、磁石の残留磁気が低下し、材料費が大幅に増加する問題がある。この欠陥を考慮して、ネジオム鉄ブロン企業は粒界拡散プロセスを開発した。このプロセスは、主に磁性体の表面に重希土類フッ化物をコーティングし、次に熱拡散処理を行って重希土類を内部に浸透させることで、結晶粒子表面に高い磁気結晶異方性場を持つ(Nd,Dy)Fe14B相を形成することによって、磁性体の保磁力を高める。この方法では、保磁力は高くなるが、磁性体の抵抗率を高めないで、モーター内の磁石鋼に対して、渦電流による温度上昇を効果的に抑えることはできない。
【0004】
方法2:作動プロセスで磁性鋼の渦電流が低減され
渦電流により、モーター内の磁性鋼の温度が上昇し、磁性体の残留磁気と保磁力が低下する。通常、渦電流を減らす方法は二つある。一つは、磁性体に酸化カルシウムやフッ化物粉末など酸化物粉末という不純物粉末を添加する方法である。この不純物粉末はネジオム鉄ブロン磁性粉末と混合してから焼結すると、磁性体の性能が低下する。もう一つは、磁性鋼を細かく切ってから、接着剤で接着して磁性鋼部品を形成することで、磁性鋼の抵抗を全体的に高め、渦電流の損失をさらに低減する方法である。この方法は部品法とも呼ばれ、プロセスフローが長くて、処理コストが高いという問題が存在する。
【0005】
したがって、本発明はコストが低いネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法を提供し、この製造方法による高保磁力と高抵抗率を持つネジオム鉄ブロン永久磁性体はこの分野で早急に解決する必要のある課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の目的を実現するために、高保磁力と高抵抗率を持つネジオム鉄ブロン磁性体及びその製造方法を提供する。この製造方法は、単純な粒界拡散プロセスの低抵抗率と部品法の高プロセスコストと長プロセスフローの欠点を克服し、磁性体の耐熱性を高めるという技術目的を達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1方面は高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法を提供し、その方法は、
薄いシート状のネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を提供するステップS1と、
表面洗浄プロセスを提供して、表面洗浄プロセスで上記のネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を処理し、清浄なネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を取得するステップS2と、
上記の清浄なネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料の表面に一層のスラリーを塗布することにより、塗布されたネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を取得し、上記のスラリーにおいて、重希土類粉体と、化合物粉体と、有機溶媒とを含み、上記の化合物粉体は炭化物粉体及び/または酸化物粉体とを含むステップS3と、
複数のシートの上記の塗布されたネオジム鉄ブロン磁性体の合金原料を重ね合わせて、ネオジム鉄ボロン磁性体の合金原料のラミネートを得るステップS4と、
3段階の熱拡散プロセスを提供して、上記の3段階の熱拡散プロセスで上記のネオジム鉄ボロン磁性体の合金原料のラミネートを処理し、高保磁力と高抵抗率を備えたネオジム鉄ボロン永久磁性体を取得するステップS5とを含む。
【0008】
好ましくは、ステップS3において、上記のスラリー中の各成分の質量比は、重希土類粉体:化合物粉体:有機溶媒=27~40:0.2~1.5:58.5~72.8である。
【0009】
好ましくは、上記の重希土類粉体の平均粒子サイズは1~5μmである。
【0010】
好ましくは、上記の重希土類粉体はDy単体粉体、Tb単体粉体、Dy合金粉体、Tb合金粉体のうちの一つまたは複数を含む。
【0011】
好ましくは、Dy合金粉体及びTb合金粉体は、Dy元素またはTb元素と、Al、Cu、Ga、Fe、Co元素のうちの一つはまた複数とによって形成される合金粉体である。
【0012】
好ましくは、ステップS3において、上記の化合物粉末の平均粒子サイズは、0.1~200nmである。
【0013】
好ましくは、ステップS3において、上記の酸化物粉体は、酸化アルミニウム粉体、酸化シリコン粉体、酸化マグネシウム粉体、酸化セリウム粉体、及び酸化カルシウム粉体のうちの1つまたは複数を含む。
【0014】
好ましくは、ステップS3において、上記の炭化物粉体は、炭化ケイ素粉体及び炭化タングステン粉体のうちの1つまたは2つである。
【0015】
好ましくは、ステップS3において、上記の有機溶媒は、無水エタノール、グリセリン、及びエチレングリコールのうちの一つまたは複数を含む。
【0016】
好ましくは、ステップS3において、上記の清浄なネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料の表面に塗布されたスラリーの厚さは10~30μmである。
【0017】
好ましくは、ステップS3において、塗布は窒素の保護下で行われる。
【0018】
好ましくは、ステップS1において、上記のネオジム鉄ブロン磁性体の合金原料の厚さは1.5~6mmである。
【0019】
好ましくは、ステップS5において、上記の3段階の熱拡散プロセスは、具体的に、熱処理温度は1000~1100℃で、保温時間は4~6時間の1段階目と、エイジング温度は850~950℃で、保温時間は4~10時間の2段階目と、エイジング温度は450~550℃で、保温時間は2~6時間の3段階目とを含む。
【0020】
第2方面では、本発明は上記の方法によって製造された高保磁力及び高抵抗率を有するネオジム鉄ブロン永久磁性体を提供し、上記のネオジム鉄ブロン永久磁性体は、交互に重ね合わされた高保磁力磁性体層及び高抵抗率層を含む。
【発明の効果】
【0021】
従来技術と比較して、本発明は以下の技術的な効果を有する。
【0022】
(1)重希土類単体または合金粉体と、炭化物粉体または酸化物粉体とを含むスラリーをネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料の表面に塗布して、重希土類は高温の下でシート磁性体の内部に浸透することにより、シート磁性体の保磁力を高めることができる。一部シート磁性体の内部に浸透してない重希土類または合金元素と、炭化物粉体または酸化物粉体は二つのシート磁性体を接着する中間層を形成し、当該中間層は酸素や炭素など非導電性元素を含む比例が高いため、磁性体全体の抵抗率を高めることができる。上記によって、本発明は同時にネジオム鉄ブロン磁性体の保磁力と抵抗率を高めることができる。
【0023】
(2)本発明により、磁性体の合金原料の方面にスラリーを塗布するため、ネジオム鉄ブロン合金の中に重希土類を添加するプロセスと比較して、使用されている重希土類は大きく減少し、コストを低下することができる。
【0024】
(3)本発明により、2つのシート磁性体の間の中間層(即ち、抵抗率が高い層)に炭化物粉体、酸化物粉体を添加し、シート磁性体の内部に添加しないため、シート磁性体の性能に不良な影響を与えない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明によるネジオム鉄ブロンを製造する方法のフローチャートである。
図2】清浄なネジオム鉄ブロンの磁性体の合金原料を示す図である。
図3】塗布されたネジオム鉄ブロンの磁性体の合金原料を示す図である。
図4】ネジオム鉄ブロンの磁性体の合金原料のラミネートを示す図である。
図5】高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1方面は高保磁力と高抵抗率を有するネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法を提供し、図1に示すように、その方法は、
薄いシート状のネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を提供するステップS1と、
図2に示すように、表面洗浄プロセスを提供し、その表面洗浄プロセスで上記のネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を処理し、清浄なネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を取得するステップS2と、
図3に示すように、上記の清浄なネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料の表面に一層のスラリーを塗布することにより、塗布されたネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を取得し、上記のスラリーにおいて、重希土類粉体(RE-T粉)と、化合物粉体(T-X粉)と、有機溶媒とを含み、上記の化合物粉体は炭化物粉体及び/または酸化物粉体とを含むステップS3と、
複数のシートの上記の塗布されたネオジム鉄ブロン磁性体の合金原料を重ね合わせて、ネオジム鉄ボロン磁性体の合金原料のラミネートを得るステップS4と、
3段階の熱拡散プロセスを提供し、上記の3段階の熱拡散プロセスで上記のネオジム鉄ボロン磁性体の合金原料のラミネートを処理し、高保磁力と高抵抗率を備えたネオジム鉄ボロン永久磁性体を取得するステップS5とを含む。
【0027】
具体的な一態様の中で、ステップS1において、知られたいずれの方法で、焼結後のネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料をシート状なネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料に加工することができ、さらに、上記のネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料の厚さは1.5~6mmである。
【0028】
具体的な一態様の中で、ステップS2において、表面洗浄プロセスは薄いシート状のネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料の表面上の不純物及び油汚れを除去して、清浄で油のない表面を得ることができ、さらに、上記の表面洗浄プロセスは酸洗浄であることが好ましい。
【0029】
具体的な一態様の中で、ステップS3において、上記のスラリー中の各成分の質量比は、重希土類粉体:化合物粉体:有機溶媒=27~40:0.2~1.5:58.5~72.8である。
【0030】
スラリーの中で、化合物粉体の含有量が高すぎると、ネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料のラミネートは3段階の熱拡散プロセスを通して、ラミネートの間は接着できず、高保磁力と高抵抗率を備えたネジオム鉄ブロン磁性体を形成することができない。
【0031】
具体的な一態様の中で、上記の重希土類粉体は重希土類単体粉体及び/または重希土類合金粉体を含む。粒界拡散プロセスの原理に基づいて、重希土類元素は高温で薄いシートの磁性体の内部に浸透し、結晶粒子の表面に高い磁気結晶異方性場を持つ(Nd,Dy)Fe14B相を形成し、それにより、磁性体の保磁力を高める。
【0032】
さらに、重希土類粉体中の重希土類元素はDy元素及び/またはTb元素であり、具体的に、重希土類粉体はDy単体粉体、Tb単体粉体、Dy合金粉体、Tb合金粉体のうちの一つまたは複数を含む。
【0033】
好ましい態様の中で、Dy合金粉体はDy元素と、Al、Cu、Ga、Fe、Co元素のうちの一つはまた複数とによって形成される合金粉体であり、Tb合金粉体はTb元素とAl、Cu、Ga、Fe、Co元素のうちの一つはまた複数とによって形成される合金粉体であり、さらに、重希土類合金粉体は上記のDy合金粉体のうちの一つまたは複数及び/またはTb合金粉体のうちの一つまたは複数を含む。
【0034】
さらに、上記の重希土類粉体の平均粒度は1~5μmである。
【0035】
具体的な一態様の中で、上記の化合物粉体は炭化物粉体または酸化物粉体のうちの一つまたは二つを含み、さらに、上記の酸化物粉体は酸化アルミニウム粉体、酸化シリコン粉体、酸化マグネシウム粉体、酸化セリウム粉体、及び酸化カルシウム粉体のうちの1つまたは複数を含み、もっと好ましくは、上記の酸化物粉体は酸化アルミニウム粉体または酸化カルシウム粉体である。
【0036】
3段階の熱拡散プロセスにおいて、シート磁性体に浸透してない一部の重希土類元素及び炭化物粉体と酸化物粉体は二つのシート磁性体を接着する一つの中間層を形成し、当該中間層は酸素や炭素など非導電性元素を含む比例が高いため、磁性体全体の抵抗率を高めることができる。それによって、本発明はネジオム鉄ブロン磁性体の保磁力と抵抗率を同時に高めることを実現した。
【0037】
さらに、上記の炭化物粉体は炭化ケイ素粉体、炭化タングステン粉体のうちの1つまたは2つであり、もっと好ましくは上記の炭化物粉体は炭化ケイ素粉体である。
【0038】
もっとさらに、上記の化合物粉末の平均粒度は0.1~200nmである。
【0039】
具体的な一態様の中で、上記の有機溶媒(ET)は無水エタノール、グリセリン、及びエチレングリコールのうちの一つまたは複数を含み、もっと好ましくは、上記の有機溶媒は無水エタノールである。
【0040】
具体的な一態様の中で、ステップS3において、窒素保護の下で上記の清浄なネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料の表面に塗布されたスラリーの厚さは10~30μmである。
【0041】
具体的な一態様の中で、ステップS4において、塗布されたネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を厚さ方向で重ね合わせて、重ね合わされる層の数は2~6層であり、さらに好ましくは、重ね合わされる層の数は3層である。
【0042】
好ましい一態様の中で、熱拡散プロセスに対して、ステップS5において、上記の3段階の熱拡散プロセスは具体的に、熱処理温度は1000~1100℃で、保温時間は4~6時間の1段階目と、エイジング温度は850~950℃で、保温時間は4~10時間の2段階目と、エイジング温度は450~550℃で、保温時間は2~6時間の3段階目とを含む。
【0043】
第2方面では、本発明は上記の方法によって製造された高保磁力及び高抵抗率を有するネオジム鉄ブロン永久磁性体を提供し、上記のネオジム鉄ブロン永久磁性体は、交互に重ね合わされた高保磁力磁性体層及び高抵抗率層2を含む。
【0044】
以下は、特定的な実施例を参照しながら、本発明を説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0045】
以下の実施例と対照例において、すべて45SH磁性体を使用し、高温焼結後、磁性体を厚さ30mm×30mm×2mmの角型磁性体に加工し、2mmの厚さ方向に重ね合わせる。
【0046】
実施例と対照例の中に採用されたスラリーの成分は表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例1
本実施例は高保磁力と高抵抗率を備えたネジオム鉄ブロン永久磁性体の製造方法を提供し、その方法は、
30m×30mm×2mmのサイズの薄いシート状のネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を提供するステップS1と、
酸洗浄などの表面処理を経たネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料は、表面上の油汚れなどの不純物が除去され、清浄なネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を得たステップS2と、
清浄なネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料をトライに置き、窒素の保護下で噴霧装置を用いて、スラリーを30mm×30mmのサイズの清浄なネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料の両面に噴霧し、その後磁性体の表面を乾燥させて、塗布されたネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を得;ここで、スラリーの特定の調製方法は表1に示す成分と配合割合及び粉体粒度に従ってスラリーを調製し、調製されたスラリーを1時間で攪拌するステップS3と、
複数のシートの上記のネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料を2mmの厚さ方向に沿って重ね合わせ、重ね合わされた層の数は3層であり、ネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料のラミネートを得たステップS4と、
ネジオム鉄ブロン磁性体の合金原料のラミネートを1010℃で5時間保温処理した後、アルゴンガスを充填して、10℃/minの冷却速度で冷却し、室温まで冷却した後、焼戻しをし、焼戻しは、900℃で4時間保温してから、アルゴンガスを充填して10℃/minの冷却速度で冷却し、室温まで冷却する第1の段階をしてから、500℃で4時間保温してから、アルゴンガスを充填して10℃/minの冷却速度で冷却し、室温まで冷却する第2の段階をするという順で施され、最終的に高保磁力と高抵抗率のネジオム鉄ブロン永久磁性体を得たステップS5と、
を含む。
【0049】
実施例2及び3
実施例2及び3は実施例1に基づく。違いは、スラリーの成分の配合割合及び粉体の粒度が異なることである。表1の成分の配合割合と粉体粒度に従って実施例2及び3のスラリーを調製して、ステップS1の中の方法によって、高保磁力と高抵抗率のネジオム鉄ブロン永久磁性体を製造する。
【0050】
対照例1
45SH磁性体を用いて、高温焼結により磁性体を厚さ30mm×30mm×2mmの角型磁性体に加工し、2mmの厚さ方向に重ね合わせ、重ね合わされた層の数は3層であるステップS1と、
実施例1のステップS5と同様であるステップS2を含む。
【0051】
対照例2
対照例2は実施例1に基づく。違いは、スラリーの成分の配合割合及び粉体の粒度が異なることである。表1の成分の配合割合と粉体粒度に従って対照例2のスラリーを調製して、ステップS1の中の方法によって、高保磁力と高抵抗率のネジオム鉄ブロン永久磁性体を製造する。
【0052】
対照例3
対照例3は実施例3に基づく。違いは、スラリー中の酸化物粉体の含有量が異なることである。表1の成分の配合割合と粉体粒度に従って実施例2-3のスラリーを調製して、ステップS1の中の方法によって、高保磁力と高抵抗率のネジオム鉄ブロン永久磁性体を製造する。
【0053】
性能試験
実施例1-3および対照例1-3で作製したネジオム鉄ブロン永久磁性体を10mm×10mm×6mmのサンプルカラムに加工し、磁気特性を測定した。性能測定方法はGB13560-2007を参照する。
【0054】
実施例1-3および対照例1-3で得られたネジオム鉄ブロン永久磁性体を2mm×2mm×6mmのサンプルに加工して抵抗率を測定した。
【0055】
テスト構造を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
表2の試験結果から、スラリー噴霧されたネジオム鉄ブロン永久磁性体の保磁力が向上していることがわかる。例えば、Dyを含むスラリーを噴霧した実施例1のように、その保磁力は6.8kOe増加した。Tbを含むスラリーを噴霧した実施例3のように、その保磁力は9.7kOe増加した。これは、主に高温焼結処理によるもので、表面に塗布された重希土類DyまたはTbが磁性体の内部に入り、磁性体の粒界で磁気結晶異方性場を上昇させて保磁力が増加した。抵抗率の増加の観点から見ると、酸化アルミニウム粉体、酸化カルシウム粉体及び酸化ケイ素粉体を添加したものの抵抗率は大幅に改善された。これは主に、上記のような非導電性粉体が二つの磁性体の間の中間層に分布し、抵抗が増加したためである。この増加した抵抗は磁性体の使用中の渦電流の損失を減らすことができる。
【0058】
実施例3と対照例3の試験結果を比較すると、スラリー中の化合物粉体の含有量が高すぎる場合、3段階の熱拡散プロセス後にネオジム鉄ブロン磁性体の合金原料のラミネートが結合されないことが分かる。結果として、本発明の高保磁力及び高抵抗性のネオジム鉄ブロン永久磁性体を形成することはできない。
【0059】
要するに、本発明は、重希土類粉体、酸化物粉体、炭化物粉体などを含むスラリーを噴霧し、熱拡散プロセスをすることによって、磁性体の保磁力及び抵抗率を大幅に改善した。
【0060】
本発明の特定の実施例は、上記で詳細に説明されているが、それらは単なる例示であり、本発明は、上記の特定の実施例に限定されない。当業者にとって、本発明に対してなされた均等の修正及び置換も、本発明の範囲内である。したがって、本発明の旨及び範囲から逸脱することなく行われたすべての均等の変更及び修正は、本発明の範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0061】
1 スラリー
2 高抵抗率層
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
【表2】