(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161813
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】高利得電気光学差動変調器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/025 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
G02F1/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022004138
(22)【出願日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】17/226,730
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522018893
【氏名又は名称】ドエル コンサルティング エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー アール. ドエル
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA02
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA21
2K102DA05
2K102DA07
2K102DB04
2K102DD03
2K102EA03
2K102EA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非常に高い変調帯域幅及び/又は効率を達成する差動電気光学変調器の提供。
【解決手段】光変調器100は、(i)第1の半導体接合ダイオードを有する第1の光導波管、及び(ii)第2の半導体接合ダイオードを有する第2の光導波管を備えたマッハ・ツェンダー干渉計を備える。半導体領域は、第1及び第2の光導波管間の距離が、光変調器の長手方向の少なくとも一部で2.0μm未満であるように、第1の半導体接合ダイオードと第2の半導体接合ダイオードを接続する。別の態様では、光信号を変調する方法は、入力光を第1及び第2の光伝送路に分割すること;該第1及び第2の光伝送路間に100Ω未満のインピーダンスを介するバイアス電圧を印加することなく、該第1の光伝送路102の光と該第2の光伝送路104の光との間の位相差を変調すること;並びに該第1の光伝送路から出力される光と該第2の光伝送路から出力される光とを結合する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変調器であって:
(i)第1の半導体接合ダイオードを有する第1の光導波管、及び(ii)第2の半導体接合ダイオードを有する第2の光導波管を備えたマッハ・ツェンダー干渉計;並びに
該第1の光導波管と該第2の光導波管との間の距離が、該光変調器の長手方向の少なくとも一部で2.0μm未満であるように、該第1の半導体接合ダイオードを該第2の半導体接合ダイオードに接続する半導体領域、を備える、前記光変調器。
【請求項2】
前記第1の半導体接合ダイオードが、第1のアノード及び第1のカソードを備え、
前記第2の半導体接合ダイオードが、第2のアノード及び第2のカソードを備え、且つ
該第1のアノードが、前記第1の光導波管と前記第2の光導波管との間の距離に跨る前記半導体領域を介して該第2のアノードに接続されている、請求項1記載の光変調器。
【請求項3】
前記第1のアノードと前記第2のアノードとの間の前記半導体領域が、100Ω未満のインピーダンスを有する一切の外部電圧接続なしで構成されている、請求項2記載の光変調器。
【請求項4】
前記第1のカソードに接続され、第1の電界を前記第1の光導波管に印加するように構成された第1の電極;及び
前記第2のカソードに接続され、第2の電界を前記第2の光導波管に印加するように構成された第2の電極をさらに備える、請求項2記載の光変調器。
【請求項5】
(i)第1の電圧を第1の電極を介して前記第1のカソードに印加し、且つ(ii)第2の電圧を第2の電極を介して前記第2のカソードに印加するように構成された無線周波数(RF)伝送線をさらに備える、請求項2記載の光変調器。
【請求項6】
前記第1の光導波管が、複数の第1の半導体接合ダイオードを備え、
前記第2の光導波管が、複数の第2の半導体接合ダイオードを備え、且つ
前記RF伝送線が、(i)前記第1の電圧を複数の第1の電極を介して該複数の第1の半導体接合ダイオードに印加し、且つ(ii)前記第2の電圧を複数の第2の電極を介して前記複数の第2の半導体接合ダイオードに印加するように構成されている、請求項5記載の光変調器。
【請求項7】
前記光変調器の第1の部分では、前記第1の光導波管が、前記第2の光導波管よりも少なくとも0.04μm幅が広く、且つ
前記光変調器の第2の部分では、該第2の光導波管が、該第1の光導波管よりも少なくとも0.04μm幅が広い、請求項1記載の光変調器。
【請求項8】
前記光変調器の少なくとも一部では:
前記第1の光導波管が、該光変調器の長手方向に沿って幅が増加し、且つ
前記第2の光導波管が、該光変調器の長手方向に沿って幅が減少している、請求項1記載の光変調器。
【請求項9】
前記第1の半導体接合ダイオードが、第1のpドープ領域及び第1のnドープ領域を備え、且つ
前記第2の半導体接合ダイオードが、第2のpドープ領域及び第2のnドープ領域を備える、請求項1記載の光変調器。
【請求項10】
前記第1のpドープ領域が、前記第1の半導体接合ダイオードを前記第2の半導体接合ダイオードに接続する前記半導体領域の第3のpドープ領域を介して前記第2のpドープ領域に接続され、
該第3のpドープ領域が、100Ω未満のインピーダンスを有する一切の外部電圧接続なしで構成されている、請求項9記載の光変調器。
【請求項11】
前記第1の半導体接合ダイオードが、前記第1のpドープ領域と前記第1のnドープ領域との間に第1の酸化物層をさらに備え、且つ
前記第2の半導体接合ダイオードが、前記第2のpドープ領域と前記第2のnドープ領域との間に第2の酸化物層をさらに備える、請求項9記載の光変調器。
【請求項12】
前記マッハ・ツェンダー干渉計が:
入力光を受け取って該入力光を前記第1の光導波管及び前記第2の光導波管に分割するように構成された光スプリッタ;及び
該第1の光導波管からの第1の出力光及び該第2の光導波管からの第2の出力光を受け取って、該第1の出力光と該第2の出力光とを結合するように構成された光コンバイナをさらに備える、請求項1記載の光変調器。
【請求項13】
入力光を第1の光伝送路及び第2の光伝送路に分割するように構成された光スプリッタ;
該第1の光伝送路と該第2の光伝送路との間に100Ω未満のインピーダンスを介するバイアス電圧を印加することなく、該第1の光伝送路の光と該第2の光伝送路の光との間の位相差を変調するための手段;並びに
該第1の光伝送路から出力される光と該第2の光伝送路から出力される光とを結合するように構成された光コンバイナを備える、光変調器。
【請求項14】
(i)第1の電圧を第1の電極を介して前記第1の光伝送路に印加し、且つ(ii)第2の電圧を第2の電極を介して前記第2の光伝送路に印加するように構成された無線周波数(RF)伝送線をさらに備える、請求項13記載の光変調器。
【請求項15】
前記第1の光伝送路が、第1の半導体接合ダイオードを備え、
前記第2の光伝送路が、第2の半導体接合ダイオードを備え、且つ
変調中に、該第1の半導体接合ダイオードが、オンになるよりも僅かに低い電圧である一方、該第2の半導体接合ダイオードは、最大逆電圧である、請求項13記載の光変調器。
【請求項16】
前記第1の光伝送路の光と前記第2の光伝送路の光との間の位相差が、プッシュプルモードで、第1の電界を前記第1の光伝送路に印加し、且つ第2の電界を前記第2の光伝送路に印加することによって変調される、請求項13記載の光変調器。
【請求項17】
前記第1の光伝送路の光と前記第2の光伝送路の光との間の位相差が、該第1の光伝送路及び該第2の光伝送路のそれぞれにおける半導体接合ダイオードの有限空乏領域を維持したまま変調される、請求項13記載の光変調器。
【請求項18】
光信号を変調する方法であって:
入力光を第1の光伝送路及び第2の光伝送路に分割すること;
該第1の光伝送路と該第2の光伝送路との間に100Ω未満のインピーダンスを介するバイアス電圧を印加することなく、該第1の光伝送路の光と該第2の光伝送路の光との間の位相差を変調すること;並びに
該第1の光伝送路から出力される光と該第2の光伝送路から出力される光とを結合することを含む、前記方法。
【請求項19】
前記第1の光伝送路の光と前記第2の光伝送路の光との間の位相差が、該第1の光伝送路及び該第2の光伝送路のそれぞれにおける半導体接合ダイオードの有限空乏領域を維持したまま変調される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
(i)第1の半導体接合ダイオードを有する第1の光導波管、及び(ii)第2の半導体接合ダイオードを有する第2の光導波管を備えたマッハ・ツェンダー干渉計;並びに
該第1の半導体接合ダイオードの端子を該第2の半導体接合ダイオードの端子に接続する半導体領域を備え、
該第1の半導体接合ダイオードの該端子及び該第2の半導体接合ダイオードの該端子が、両方ともpドープアノードであるか、又は両方ともnドープカソードであるかのいずれかであり、
該半導体領域が、100Ω未満のインピーダンスを介するその他の回路素子に接続されていない、光変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本開示は、一般に、電気光学差動変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
光通信システムにおいて、電気光学変調器は、情報を伝送するための光波形を変調する基本的な機構を提供する。一般に、電気光学変調器は、電気信号によって提供されるデジタルデータなどの情報に従って光波形の1つ又は複数の特性を変調することによって機能する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(概要)
本開示の実施は、一般に、電気光学作動変調器に関する。
【0004】
1つの一般的な態様は、(i)第1の半導体接合ダイオードを有する第1の光導波管、及び(ii)第2の半導体接合ダイオードを有する第2の光導波管を備えたマッハ・ツェンダー干渉計を備える光変調器を含む。光変調器はまた、第1の光導波管と第2の光導波管との間の距離が、光変調器の長手方向の少なくとも一部で2.0μm未満であるように、第1の半導体接合ダイオードを第2の半導体接合ダイオードに接続する半導体領域も備える。
【0005】
実施は、1つ又は複数の以下の特徴を有し得る。光変調器において、第1の半導体接合ダイオードは、第1のアノード及び第1のカソードを備え、第2の半導体接合ダイオードは、第2のアノード及び第2のカソードを備える。光変調器において、第1のアノードは、第1の光導波管と第2の光導波管との間の距離に跨る半導体領域を介して第2のアノードに接続されている。光変調器において、第1のアノードと第2のアノードとの間の半導体領域は、100Ω未満のインピーダンスを有する一切の外部電圧接続なしで構成されている。光変調器は:第1のカソードに接続され、第1の電界を第1の光導波管に印加するように構成された第1の電極をさらに備える。光変調器は、第2のカソードに接続され、第2の電界を第2の光導波管に印加するように構成された第2の電極をさらに備え得る。光変調器は:(i)第1の電圧を第1の電極を介して第1のカソードに印加し、且つ(ii)第2の電圧を第2の電極を介して第2のカソードに印加するように構成された無線周波数(RF)伝送線をさらに備える。光変調器において、第1の光導波管は、複数の第1の半導体接合ダイオードを備え、第2の光導波管は、複数の第2の半導体接合ダイオードを備える。光変調器において、RF伝送線は、(i)第1の電圧を複数の第1の電極を介して複数の第1の半導体接合ダイオードに印加し、且つ(ii)第2の電圧を第2の複数の電極を介して複数の第2の半導体接合ダイオードに印加するように構成されている。光変調器において、該光変調器の第1の部分では、第1の光導波管は、第2の光導波管よりも少なくとも0.04μm幅が広く、且つ光変調器の第2の部分では、該第2の光導波管は、該第1の光導波管よりも少なくとも0.04μm幅が広い。光変調器において、該光変調器の少なくとも一部では:第1の光導波管は、該光変調器の長手方向に沿って幅が増加し、且つ第2の光導波管は、該光変調器の長手方向に沿って幅が減少している。光変調器において、第1の半導体接合ダイオードは、第1のpドープ領域及び第1のnドープ領域を備え、第2の半導体接合ダイオードは、第2のpドープ領域及び第2のnドープ領域を備える。光変調器において、第1のpドープ領域は、第1の半導体接合ダイオードを第2の半導体接合ダイオードに接続する半導体領域の第3のpドープ領域を介して第2のpドープ領域に接続されている。光変調器において、第3のpドープ領域は、100Ω未満のインピーダンスを有する一切の外部電圧接続なしで構成されている。光変調器において、第1の半導体接合ダイオードは、第1のpドープ領域と第1のnドープ領域との間に第1の酸化物層をさらに備え、第2の半導体接合ダイオードは、第2のpドープ領域と第2のnドープ領域との間に第2の酸化物層をさらに備える。光変調器において、マッハ・ツェンダー干渉計は:入力光を受け取って該入力光を第1の光導波管及び第2の光導波管に分割するように構成された光スプリッタをさらに備える。光変調器は、第1の光導波管からの第1の出力光及び該第2の光導波管からの第2の出力光を受け取って、該第1の出力光を該第2の出力光に結合するように構成された光コンバイナをさらに備え得る。光変調器において、第1の光導波管と第2の光導波管との間の距離は、該第1の光導波管の内側壁と該第2の光導波管の内側壁との間の距離である。
【0006】
別の一般的な態様は、入力光を第1の光伝送路及び第2の光伝送路に分割するように構成された光スプリッタを備える光変調器を含む。光変調器はまた、第1の光伝送路と第2の光伝送路との間に100Ω未満のインピーダンスを介するバイアス電圧を印加することなく、該第1の光伝送路の光と該第2の光伝送路の光との間の位相差を変調するための手段も備える。光変調器はまた、第1の光伝送路から出力される光と第2の光伝送路から出力される光とを結合するように構成された光コンバイナも備える。
【0007】
実施は、1つ又は複数の以下の特徴を有し得る。光変調器は:(i)第1の電圧を第1の電極を介して第1の光伝送路に印加し、且つ(ii)第2の電圧を第2の電極を介して第2の光伝送路に印加するように構成された無線周波数(RF)伝送線をさらに備える。光変調器において、第1の光伝送路は、第1の半導体接合ダイオードを備え、第2の光伝送路は、第2の半導体接合ダイオードを備え、変調中に、該第1の半導体接合ダイオードは、オンになるよりも僅かに低い電圧である一方、該第2の半導体接合ダイオードは、最大逆電圧である。光変調器において、第1の光伝送路の光と第2の光伝送路の光との間の位相差は、プッシュプルモードで、第1の電界を前記第1の光伝送路に印加し、且つ第2の電界を記第2の光伝送路に印加することによって変調される。光変調器において、第1の光伝送路の光と第2の光伝送路の光との間の位相差は、該第1の光伝送路及び該第2の光伝送路のそれぞれにおける半導体接合ダイオードの有限空乏領域を維持したまま変調される。
【0008】
別の一般的な態様は、光信号を変調する方法を含み、この方法は:入力光を第1の光伝送路及び第2の光伝送路に分割することを含む。変調する方法はまた、第1の光伝送路と第2の光伝送路との間に100Ω未満のインピーダンスを介するバイアス電圧を印加することなく、該第1の光伝送路の光と該第2の光伝送路の光との間の位相差を変調することも含む。変調する方法はまた、第1の光伝送路から出力される光と第2の光伝送路から出力される光とを結合することも含む。
【0009】
実施は、1つ又は複数の以下の特徴を有し得る。方法において、第1の光伝送路の光と第2の光伝送路の光との間の位相差は、該第1の光伝送路及び該第2の光伝送路のそれぞれにおける半導体接合ダイオードの有限空乏領域を維持したまま変調される。
【0010】
別の一般的な態様は、(i)第1の半導体接合ダイオードを有する第1の光導波管、及び(ii)第2の半導体接合ダイオードを有する第2の光導波管を備えたマッハ・ツェンダー干渉計を備える光変調器を含む。光変調器はまた、第1の半導体接合ダイオードの端子を第2の半導体接合ダイオードの端子に接続する半導体領域も備える。第1の半導体接合ダイオードの端子及び第2の半導体接合ダイオードの端子は、両方ともpドープアノードであるか、又は両方ともnドープカソードであるかのいずれかである。半導体領域は、100Ω未満のインピーダンスを介するその他の回路素子に接続されていない。
【0011】
本開示の主題の1つ又は複数の実施の詳細を、添付の図面及び以下の説明に示す。主題の他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
(図面の簡単な説明)
【
図1】
図1は、導波管間のバイアス電圧接続を実施する差動変調器の上面図の例を示す。
【0013】
【
図2】
図2は、導波管間のバイアス電圧接続を実施する変調器の断面の例を示す。
【0014】
【
図3】
図3は、導波管間のバイアス電圧接続を実施する変調器の断面に沿った等価回路の例を示す。
【0015】
【
図4】
図4は、導波管間のバイアス電圧接続を実施する変調器の断面の別の例を示す。
【0016】
【
図5】
図5は、本開示の実施に従った変調器の上面図の例を示す。
【0017】
【
図6】
図6は、本開示の実施に従った変調器の上面図の別の例を示す。
【0018】
【
図7】
図7は、本開示の実施に従った、光導波管の幅の変動部を示す変調器の上面図の例を示す。
【0019】
【
図8】
図8は、本開示の実施に従った変調器の断面の例を示す。
【0020】
【
図9】
図9は、本開示の実施に従った変調器の断面に沿った等価回路の例を示す。
【0021】
【
図10】
図10は、本開示の実施に従った変調器の断面の別の例を示す。
【0022】
【
図11】
図11は、導波管間の距離に応じたV+端子とV-端子との間の単位長さ当たりのコンダクタンスについての、異なる変調器の性能の例を示す。
【0023】
【
図12】
図12は、変調器の2つの端子の両端の印加差動電圧ΔVに応じた各半導体接合ダイオードの両端の電圧についての、異なる変調器の性能の例を示す。
【0024】
【
図13】
図13は、様々な導波管幅での、導波管間の距離に応じた、変調器の2つの導波管間の正規化示差屈折率変化についての、本開示の実施に従った変調器の性能の例を示す。
【0025】
【
図14】
図14は、本開示の実施に従った、光信号を変調する例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(詳細な説明)
非常に高い変調帯域幅及び/又は効率を達成することができる新規な差動電気光学変調器を提供するシステム及び技術を本明細書に開示する。これは、変調器の導波管間の物理的な距離を著しく短縮することができる新規な実施によって達成される。いくつかの実施では、導波管間の物理的な距離の短縮は、半導体接合ダイオードにおける有限空乏領域を維持したまま、変調器の導波管の半導体接合ダイオード間のバイアス電圧接続を排除することによって達成される。次に、ダイオード間の物理的な距離の短縮は、ダイオード間の電気抵抗の著しい低下を可能にし、これにより、変調器の変調帯域幅及び/又は効率が増大する。いくつかの実施では、密接配置された導波管間で発生し得る有害な光結合を軽減するために、導波管は、変調器の長さに沿って交互に異なる幅を有する。
【0027】
図1は、導波管間のバイアス電圧接続を実施する差動変調器100の上面図の一例を示す。この例は、
図5~
図14を参照して以下にさらに説明する本開示の実施に従った変調器との比較を提供する。
【0028】
変調器100は、マッハ・ツェンダー干渉計(MZI)の実施に基づき、このMZIでは、光信号が、2つの光伝送路102及び104に沿って変調器100の長さに沿って(例えば、
図1の左から右に)伝播する。変調器100の入力時に、光スプリッタ106が、入力光を2つの光伝送路102及び104に分割する。変調器100の出力時に、光コンバイナ108が、2つの光伝送路102及び104からの出力光を結合する。光スプリッタ106及び光コンバイナ108は、様々な方法、例えば、対称、非対称、又は調整可能な光強度カプラを使用して実施することができる。光伝送路102及び104は、
図2を参照して以下にさらに詳細に説明するように、半導体構造116に形成された導波管によって実施することができる。いくつかの実施では、導波管の光コア、及び/又は光スプリッタ106、及び/又は光コンバイナ108はシリコンリブを含み得る。
【0029】
変調器100は、進行波構成を使用し、該構成では、端子110及び112に加えられる電圧が、無線周波数(RF)伝送線114に沿って伝播する電気信号を生成し、該電気信号は、RF終端抵抗で終端する。RF伝送線114における電気信号は、2つの光伝送路102及び104に沿って伝播する光と同じ速度で移動し、該光に電気光学変調を誘導する。具体的には、RF伝送線114は、電極を介して半導体構造116に接続され(
図2を参照して以下にさらに詳細に説明する)、該電極は、それぞれの電圧を加え、結果として生じる電界は、光伝送路102及び104の一方又は両方にわたる。加えられる電圧(複数可)は、光伝送路102及び104の一方又は両方を伝播する光に位相シフトを誘導する。いくつかの実施では、位相シフトは、該位相シフトの大きさが等しく、該位相シフトの符号が光伝送路102及び104間で反対であるという点で差動である。
【0030】
電気光学変調は、端子110及び112の一方又は両方の電圧を変化させて、第1の光伝送路102の位相と第2の光伝送路104の位相との間の差動位相シフトを変調することによって達成される。例えば、端子電圧が、差動位相シフトが光コンバイナ108で相殺的干渉を引き起こすように制御されると、これは、変調器100の「off」又は論理「0」の状態に対応する。対照的に、端子電圧が、2つの光伝送路102及び104間の差動位相シフトが光コンバイナ108で建設的干渉を引き起こすように制御されると、これは、変調器100の「on」又は論理「1」の状態に対応する。
【0031】
2つの光伝送路102及び104間の差動位相シフトもまた、他の因子による影響を受け得る。例えば、光伝送路102及び104の物理的な長さは、0の固有の差動位相シフトを提供するために同じ長さであってもよいし、又は0でない固有の差動位相シフトを提供するために異なる長さであってもよい。さらに、いくつかの実施では、直流(DC)位相シフタ122及び124(例えば、光導波管ヒーターなどの熱光学位相シフタ)は、光コンバイナ108で結合される前に2つの光信号の相対位相を制御するために光伝送路102及び104の端部近傍に実施することができる。
【0032】
いくつかの実施では、位相変調は、「プッシュプル」機構によって実施することができ、該機構では、2つの光伝送路102及び104間の相対位相シフトを制御するために、該光伝送路の両方の光の位相が変調される。プッシュプルの動作では、端子110の電圧V+が増加し、端子112の電圧V-が低下し(又は逆)、光伝送路102及び104のそれぞれの光の対応する位相シフトが生じる。プッシュプル変調は、非プッシュプル変調に対して、平均エネルギー消費の削減及び変調信号におけるチャープの軽減などの様々な利点を提供し得る。
【0033】
いくつかのシナリオでは、直流(DC)バイアス接続118は、2つの光伝送路102及び104間で接続され得る。DCバイアス接続118は、端子110及び112に加えられるデータ信号が論理1と論理0との間で変化したとしても、光伝送路102及び104のそれぞれにおける半導体接合ダイオードが逆バイアスを維持するように実施される。DCバイアス接続118及び半導体接合ダイオードのさらなる詳細は、
図2を参照して以下に示す。
【0034】
図2は、導波管間のバイアス電圧接続を実施する変調器200(例えば、
図1の変調器100)の断面図の例を示す。この例は、
図5~
図14を参照して以下にさらに説明する本開示の実施に従った変調器との比較のために示す。
【0035】
変調器200の断面図は、MZI構造の詳細を示す。MZIは、第1の光導波管202及び第2の光導波管204を備える。光導波管202及び204は、例えば、スラブの上のシリコンリブ付き導波管として実施することができる。いくつかの実施では、変調器200は、基板206(例えば、シリコン基板)、絶縁構造208(例えば、酸化物などの誘電体)、及び半導体構造210(例えば、光導波管202及び204を備えるシリコン層)を備える。
【0036】
光導波管202及び204のそれぞれは、半導体接合を含む。半導体接合ダイオードは、例えば、PIN(P型/固有/N型)接合ダイオード又はP/N接合ダイオードによって実施することができる。変調器200において、P/N接合は、光導波管202及び204のそれぞれに埋め込まれ、各導波管のダイオードを形成している。これらのダイオードは、第1の半導体接合ダイオード212及び第2の半導体接合ダイオード214として示されている。
【0037】
変調器200はまた、シリコン層210と物理的に接触している電極216及び218(例えば、金属電極)も備える。いくつかの実施では、電極216及び218は、シリコン層210のPドープ接触領域220及び222と物理的に接触している。電極216及び218は、例えば、絶縁層208をエッチングして、金属(例えば、タングステン、銅、及び/又はアルミニウム)接点を形成することによって形成することができる。
【0038】
変調器200はまた、電極216及び218の上に金属層224及び226も備えることができる。いくつかの実施では、金属層224及び226は、RF伝送線(例えば、
図1のRF伝送線114)のセグメントを形成することができる。
【0039】
いくつかのシナリオでは、DCバイアス接続228は、2つの光導波管202及び204間に実施される。DCバイアス接続228は、半導体接合ダイオード212及び214が変調中に逆バイアスを確実に維持するようにする。例えば、変調のプッシュプルモードでは、差動電圧(例えば、V+及びV-)は、金属層224及び226(従って、電極216及び218)に加えられる。第1の電極216における電圧(例えば、V+)が上昇し、第2の電極218における電圧(例えば、V-)が低下すると、第1の光導波管202の空乏領域の幅が減少する一方、第2の光導波管204の空乏領域の幅が増加する(逆も同様である)。空乏幅が変化すると、光導波管202及び204のそれぞれに沿って進行する光が受ける有効屈折率が変化し、光の対応する位相シフトが起こる。結果として、プッシュプル変調を変調器200で達成することができる。
【0040】
変調器200の例では、DCバイアス接続228が、半導体接合ダイオード212及び214のカソード230及び232(Nドープ領域)に形成される一方、変化する電圧V+及びV-が、半導体接合ダイオード212及び214のアノード234及び236(Pドープ領域)に印加される。DCバイアス接続228は、半導体接合ダイオード212及び214が逆バイアスを確実に維持するようにする。例えば、変調器200の例では、DCバイアス接続228に印加されるバイアス電圧が非常に低いと(又は存在しないと)、第1の半導体接合ダイオード212の空乏領域に注入された非常に多数のキャリアによって該第1の半導体接合ダイオード212の作動が引き起こされ得(例えば、シリコンでは0.6Vを超える順方向バイアス)、結果として、順方向バイアスとなり、遅い動作となる。十分に大きいバイアス電圧を有するDCバイアス接続228の実施は、半導体接合ダイオード212及び214が変調下で逆バイアスを確実に維持するようにする。
【0041】
しかしながら、変調器200の構造は、変調性能に対して様々な制限をもたらす。具体的には、変調器200の構造は、該変調器200の様々な領域に著しい直列電気抵抗をもたらす。
【0042】
具体的には、DCバイアス接続228の存在は、半導体接合ダイオード212及び214間の半導体(例えば、シリコン)領域238の物理的距離を増加させる。これにより、半導体接合ダイオード212と214を接続する半導体領域238に著しい直列電気抵抗が生じる。さらに、半導体構造のシリコンドーピングの増加などの、そのような直列電気抵抗を低減するための典型的な技術は、光吸収の増加などの他の悪影響を有し得る。
【0043】
さらに、半導体領域240及び242(半導体接合ダイオード212及び214のそれぞれを、それぞれの電極216及び218に接続する)は、Pドープ半導体材料であり、該Pドープ半導体材料は、Nドープ半導体材料よりも高い抵抗を有する(同じ光吸収の場合)。これにより、電極216及び218と半導体接合ダイオード212及び214との間の半導体領域240及び242に著しい直列電気抵抗が生じる。
【0044】
結果として、電極216と218との間の全直列電気抵抗が、ダイオード容量の充電及び放電により、変調器200に沿った電圧を著しく減衰させ得る。さらに、この減衰は、典型的には、変調周波数が増加するにつれて増加する。結果として生じる変調器200に沿ったRF損失は、該変調器200の帯域幅に悪影響を及ぼし得る。
【0045】
図3は、導波管間のバイアス電圧接続を実施する変調器の断面(例えば、
図2の変調器200の断面)に沿った等価回路300の例を示す。この例は、
図5~
図14を参照して以下にさらに説明する本開示の実施に従った変調器との比較のために示す。
【0046】
図3の例では、第1の電極316と第1の半導体接合ダイオード312との間の直列電気抵抗340(例えば、
図2の半導体領域240に対応する)は7.2mΩ・mである。第2の電極318と第2の半導体接合ダイオード314との間の直列電気抵抗342(例えば、
図2の半導体領域242に対応する)は7.2mΩ・mである。半導体接合ダイオード312と314との間の直列電気抵抗338(例えば、
図2の半導体領域238に対応する)は7.4mΩ・mである(半導体接合ダイオード312及び314のそれぞれとDCバイアス電圧接続328との間の直列抵抗は3.7mΩ・mである)。
【0047】
図4は、導波管間のバイアス電圧接続を実施する変調器400の断面の別の例(例えば、
図1の変調器100の断面の別の例)を示す。この例は、
図5~
図14を参照して以下にさらに説明する本開示の実施に従った変調器との比較のために示す。
【0048】
変調器400の構造は、シリコン-絶縁体-シリコンキャパシタ(SISCAP)変調器構造と呼ばれる。
図2の変調器200と比較すると、変調器400は、光導波管402及び404の半導体接合ダイオード412及び414に薄い酸化物層444及び446を実施する。さらに、変調器400では、DCバイアス接続428が、半導体接合ダイオード412及び414のアノード434及び436(Pドープ領域)にバイアス電圧を印加する一方、電極416及び418は、半導体接合ダイオード412及び414のカソード430及び432(Nドープ領域)に変化する電圧を印加する。DCバイアス接続428は、半導体接合ダイオード412及び414を逆バイアスに確実に維持するようにする。
【0049】
図5~
図14は、本開示の実施に従った変調器に関する。
図1~
図4の変調器とは対照的に、
図5~
図14の変調器は、導波管間に一切のバイアス電圧接続を実施しなくてもよく、結果として電極間の直列抵抗が著しく低くなり、従って、変調の帯域幅が広くなる。さらに、
図5~
図14では、変調器は、密接した導波管間の有害な光結合を軽減するように幅が変化する導波管構造を実施する。
【0050】
図5は、本開示の実施に従った変調器500の上面図の例を示す。
【0051】
変調器500は、2つの光伝送路502及び504、光スプリッタ506、並びに光コンバイナ508を備えるMZIの実施に基づいている。変調器500は、端子510及び端子512などの端子をさらに備え、このような端子を介して電圧を印加することができる。電圧は、RF伝送線514に沿って移動し、該RF伝送線514は、それぞれの電圧を印加する電極を介して半導体構造516に接続され、結果として生じる電界は、光伝送路502及び504の一方又は両方にわたる。
【0052】
図1の変調器100とは対照的に、変調器500は、2つの光伝送路502及び504間に一切のDCバイアス接続を実施しない。これにより、2つの光伝送路502及び504を互いにより密接させることが可能となり、従って、それらの間の直列電気抵抗が低下する。例えば、いくつかの実施では、2つの光伝送路502及び504の導波管間の距離は、該光伝送路502及び504の長手方向の少なくとも一部で0.5μm未満である。いくつかの実施では、導波管間の距離は、光伝送路502及び504の長手方向の少なくとも一部で2.0μm未満である。いくつかの実施では、導波管間の距離は、光伝送路502及び504の長手方向の少なくとも一部で0.1μm~2.0μmの範囲である。いくつかの実施では、導波管間の距離は、変調器500の長手方向に沿った所与の点(例えば、
図5の点505)で、2つの導波管の内側壁間の距離と定義される。
【0053】
しかしながら、2つの光伝送路502及び504がより密接しているため、光伝送路502の光と光伝送路504の光との間のより一層の有害な光結合のリスクがある。そのような光結合を軽減するために、いくつかの実施では、光伝送路の一方(502又は504)の導波管は、変調器500の長さに沿った同じ距離において、他方の光伝送路よりも広い幅を有するように設計されている。これが、光伝送路502及び504の導波管を進行する光の位相が整合しないようにするのに役立ち、従って、2つの導波管間の光結合が軽減される。異なる導波管幅を使用する重要さを理解するための代わりの方法は、光伝送路502及び504の結合された導波管の2つの固有モードに目を向けることである。導波管が等しい幅を有すると、最低次の固有モードは、イーブン固有モード(even eigenmode)であり、2番目に低い固有モードは、オッド固有モード(odd eigenmode)である。そのようなシナリオでは、差動変調は起こり得ない。しかしながら、一方の導波管が他方の導波管よりも十分に幅が広いと、最低次の固有モードは、主に幅が広い導波管にある光で構成され、2番目に低い固有モードは、主に幅が狭い導波管においてである。これにより、導波管の間隔が狭いにもかかわらず、差動変調を行うことができる。例えば、いくつかの実施では、光伝送路702又は704の一方の導波管は、他方の光伝送路の導波管よりも少なくとも0.04μm幅が広い。いくつかの実施では、導波管の幅の差は、0.04μm~0.4μmの範囲内である。
【0054】
さらに、そのような実施では、2つの導波管の幅の変動部を、変調器500に沿って入れ替えることができ、各導波管の幅が広い部分の全長を等しくなるようにし、また各導波管の幅が狭い部分の全長を等しくなるようにするのに有用である。
図5の例では、左から右にかけて、第1の光伝送路502の導波管は、第2の光伝送路504の導波管よりも幅が広いが、後に該第2の光伝送路504の導波管よりも狭くなっている(別法では、第1の光伝送路502は、最初は狭く、後に広くなってもよい)。
図5の例は、変調器500の中間での1回の幅の入れ替えを示しているが、いくつかの実施では、追加の幅の入れ替えを含み得る。導波管の幅の変動部のさらなる詳細は、
図7を参照して以下に説明する。
【0055】
上の
図5の描写は、2つの光伝送路502及び504の導波管の幅が異なる変調器500の例を示しているが、他の実施では、導波管は、変調器500の長さに沿って一定の幅を有し得る。
【0056】
さらに、
図5の描写は、物理的なDCバイアス接続を備えていない変調器500の例を示しているが、いくつかの実施では、DCバイアス接続は、2つの光伝送路502及び504間に実施することができるが、高インピーダンスを介する。例えば、いくつかの実施では、高インピーダンスは、1kΩを超えるインピーダンスで達成される。別の例として、いくつかの実施では、高インピーダンスは、100Ωを超えるインピーダンスで達成される。高インピーダンスを介するDCバイアス接続のそのようなシナリオでは、(i)外部電圧と(ii)外部電圧が印加されなかった場合に光伝送路502及び504間に発生することになる電圧との間の電圧差によって電流が生成されることになる。この生成された電流は、ダイオード漏れ電流とダイオードのすべての光生成電流との合計よりも少ないはずであり、従って、回路は、主として、印加された外部DCバイアス電圧(例えば、真のフローティング電圧に類似)が存在しなかったかのように動作することになる。従って、物理的なDCバイアス接続が存在しない
図5~
図10に示すような本開示の実施もまた、DCバイアス接続で実施することができるが、高インピーダンスを介することを理解されたい。
【0057】
変調器500は、RF伝送線514が半導体構造516に連続的に接続されている連続進行波構造の例を実施する。別法では、セグメント化進行波構造は、
図6を参照して以下に説明するように実施することができる。
【0058】
図6は、本開示の実施に従った変調器600の上面図の別の例を示す。変調器600は、セグメント化進行波構造の実施の例である。
【0059】
変調器600はまた、2つの光伝送路602及び604、光スプリッタ606、並びに光コンバイナ608を備えるMZIの実施に基づいている。変調器600は、端子610及び端子612などの端子をさらに備え、このような端子を介して電圧を印加することができる。電圧は、RF伝送線614に沿って移動し、該RF伝送線614は、それぞれの電圧を印加する電極を介して半導体構造616に接続され、結果として生じる電界は、光伝送路602及び604の一方又は両方にわたる。変調器600はまた、2つの光伝送路602及び604間に、これらの間の距離を短縮する一切のDCバイアス接続を実施していない。例えば、いくつかの実施では、2つの光伝送路602及び604の導波管間の距離は、該光伝送路602及び604の長手方向の少なくとも一部で0.5μm未満である。いくつかの実施では、導波管間の距離は、光伝送路602及び604の長手方向の少なくとも一部で2.0μm未満である。いくつかの実施では、導波管間の距離は、光伝送路602及び604の長手方向の少なくとも一部で0.1μm~2.0μmの範囲内である。いくつかの実施では、導波管間の距離は、変調器600の長手方向に沿った所与の点(例えば、
図6の点605)で、2つの導波管の内側壁間の距離と定義される。
【0060】
図5の変調器500と
図6の変調器600との間の差は、半導体構造(516、616)の構成及びRF伝送線(514、614)が該半導体構造(516、616)に接続される方法に起因する。
図5の変調器500は、RF伝送線514が半導体構造516に連続的に直接接続される連続進行波構造を実施する。対照的に、
図6の変調器600は、RF伝送線614が半導体構造616のセグメントに断続的に接続されたセグメント化進行波構造を実施し、光伝送路602及び604に沿った断続領域620には半導体構造が存在しない。変調器600のこの構造は、容量装荷型進行波構造(capacitively loaded traveling wave structure)と呼ばれることもあり、RF伝送線614の実施に追加の自由度、例えば、該RF伝送線614の単位長さ当たりの平均容量を提供するという利点を有する。集中素子変調器もまた、本明細書に開示する技術から恩恵を受け得る。
【0061】
さらに、変調器600では、光伝送路602及び604の導波管は、
図5の変調器500の導波管の構造に類似して、変調器600の異なる部分に異なる幅を有する。導波管の幅の変動部のさらなる詳細を、
図7を参照して以下に示す。
【0062】
図7は、本開示の実施(例えば、
図5の変調器500又は
図6の変調器600)に従った、光導波管の幅の変動部を示す変調器700の幅入れ替え領域の上面図の例を示す。いくつかの実施では、幅入れ替え領域は、
図6の半導体領域616間で実施される。
【0063】
変調器700は、シリコンリブ付き導波管によって実施することができる2つの光伝送路702及び704を備える。さらに、
図5及び
図6を参照して上で議論したように、変調器700は、一切のDCバイアス接続を実施せず、従って、2つの光伝送路702及び704をより密接させることができ、これにより、それらの間の直列電気抵抗が低下する。
【0064】
光伝送路702及び704のより密接した導波管間の有害な光結合を軽減するために、該光伝送路702又は704の一方が、他方の光伝送路の導波管よりも広い幅の導波管を有する。これは、光伝送路702及び704の導波管内の光の進行が位相整合していないため、2つの導波管間の光結合が確実に軽減するようにするのに有用である。例えば、いくつかの実施では、光伝送路702又は704の一方の導波管は、他方の光伝送路の導波管よりも少なくとも0.04μm幅が広い。
【0065】
さらに、2つの導波管の幅の変動部は、変調器700に沿って入れ替えることができる。例えば、
図7では、変調器500の部分722において、第2の光伝送路704の導波管は、第1の光伝送路702の導波管よりも幅が広い。次に、変調器700の部分724において、第1の光伝送路702の導波管は、第2の光伝送路704の導波管よりも幅が広い。いくつかの実施では、導波管の幅の差は、少なくとも0.04μmである。いくつかの実施では、導波管の幅の差は、0.04μm~0.4μmの範囲内である。
【0066】
図7の例は、変調器700の中間における1つの幅入れ替え部を示すが、いくつかの実施では、例えば、幅入れ替え部間の距離が、典型的には10μmである、2つの導波管の2つの固有モード間のビート長よりも大幅に長いのであれば、追加の幅入れ替え部を備えることができる。これは、2つの導波管間の光結合を確実に軽減するのに有用である。いくつかの実施では、奇数個の入れ替え部は、開始及び終了移行部を確実に互いに相殺するのみ有用であるため好ましい。
【0067】
光伝送路702及び704の導波管の幅の変動に起因する潜在的な厄介な問題は、幅が広い導波管は、幅が狭い導波管よりも高い有効屈折率を有することである。結果として、導波管内の光の位相が、導波管のより幅が狭い部分と比較して導波管の幅が広い部分に異なる影響を及ぼす。従って、2つの光伝送路702及び704が異なる長さの幅が広い部分を有する場合(例えば、部分722の長さが、部分724の長さよりも長い場合、又はその逆の場合)、例えば、波長若しくは温度の差、又は2つの導波管の光の異なる速度により、該2つの導波管内の光の異なる固有位相シフトをもたらし得る。
【0068】
そのような厄介な問題を軽減するために、2つの導波管の幅の入れ替えを実施して、各導波管の幅が広い部分の全長が確実に等しくし、且つ各導波管の幅が狭い部分の全長も確実に等しくするようにすることができる。これは、光伝送路702の全有効経路長を、光伝送路704の全有効経路長と確実に同じようにするのに有用である。結果として、これは、2つ光伝送路702及び704に沿って伝播する光間の0でない固有の差動位相シフトを確実にするのに有用であり得る。
【0069】
いくつかの実施では、幅入れ替え部の移行を徐々に実施することができる。例えば、
図7の左から右にかけて、2つの光伝送路702及び704の導波管間の距離が徐々に増加している。これは、2つの光伝送路702及び704内の光がほぼ結合されずに維持するようにするのに有用である。この分離の増加により、幅が広い導波管の幅が狭くなり、幅が狭い導波管の幅が広くなるように各導波管の幅が変更されている。導波管の幅が入れ替わると、2つの導波管が、再び互いに徐々に近づいている。
【0070】
いくつかの実施では、2つの光伝送路702及び704の導波管間の距離は、該光伝送路702及び704の長手方向の少なくとも一部で0.5μm未満である。いくつかの実施では、導波管間の距離は、光伝送路702及び704の長手方向の少なくとも一部で2.0μm未満である。いくつかの実施では、導波管間の距離は、光伝送路702及び704の長手方向の少なくとも一部で0.1μm~2.0μmの範囲内である。いくつかの実施では、導波管間の距離は、変調器700の長手方向に沿った所与の点(例えば、
図7の点705)における、2つの導波管の内側壁間の距離と定義される。
【0071】
図8は、本開示の実施に従った変調器800の断面(例えば、
図5の変調器500の点505における断面、又は
図6の変調器600の点605における断面)の例を示す。
【0072】
変調器800の断面は、MZI構造の詳細を示す。MZIは、第1の光導波管802及び第2の光導波管804を備える。光導波管802及び804は、例えば、スラブの上のシリコンリブ付き導波管として実施することができる。いくつかの実施では、変調器800は、基板806(例えば、シリコン基板)、絶縁構造808(例えば、酸化物などの誘電体)、及び半導体構造810(例えば、光導波管802及び804を備えるシリコン層)を備える。
【0073】
いくつかの実施では、
図5~
図7について上で論じたように、光導波管802及び804の一方は、他方の光導波管よりも幅が広い。例えば、
図8では、第2の光導波管804は、第1の光導波管802よりも少なくとも0.04μm幅が広い。いくつかの実施では、導波管の幅の差は、0.04μm~0.4μmの範囲内である。
【0074】
光伝送路802及び804のそれぞれは、半導体接合部を備える。半導体接合ダイオードは、例えば、PIN(P型/固有/N型)接合ダイオード又はP/N接合ダイオードによって実施することができる。変調器800では、P/N接合を光導波管802及び804のそれぞれに埋め込んで、各導波管にダイオードを形成している。これらのダイオードは、第1の半導体接合ダイオード812及び第2の半導体接合ダイオード814として示されている。
【0075】
変調器800はまた、シリコン層810と物理的に接触している電極816及び818(例えば、金属電極)も備える。いくつかの実施では、電極816及び818は、シリコン層810のNドープ接触領域820及び822と物理的に接触している。電極816及び818は、例えば、絶縁層808をエッチングして、金属(例えば、タングステン、銅、及び/又はアルミニウム)接点を形成することによって形成することができる。変調器800はまた、電極816及び818の上に金属層824及び826も備え得る。いくつかの実施では、金属層824及び826は、RF伝送線(例えば、
図1のRF伝送線114)のセグメントを形成することができる。
【0076】
変調器800と
図2の変調器200との間には多数の差異が存在する。最も顕著なのは、変調器800は、(DCバイアス接続228を実施する変調器200と比較して)半導体接合ダイオード812及び814間に一切のDCバイアス電圧接続を実施していないことである。代わりに、半導体接合ダイオード812及び814は、反対の極性で直列に接続されている(アノード834及び836は互いに接続されている)。これは、連続電流が、半導体接合ダイオード812及び814を絶対に流れないようにする。この構成により、2つの半導体接合ダイオード812及び814の両端の電圧を自然に自動調整することができ、電極816及び818に印加され得る変調電圧(例えば、V+及びV-)の変動にもかかわらず、該ダイオード812及び814が逆バイアスを確実に維持するようにする。半導体接合ダイオード812及び814間にフローティング電圧を実施することにより、該ダイオード812及び814がオンになるよりも僅かに低い値の電圧による位相シフトの点で変調器の最も効率の良い点で該ダイオード812及び814を自動的にバイアスする。いくつかの実施では、この電圧による位相シフトは、変調器の「利得」である。
【0077】
変調器800と
図2の変調器200との間の別の差異は、該変調器200と比較して、半導体接合ダイオード812及び814の極性が反転していることである。具体的には、半導体接合ダイオード812及び814は、変調器800の中心近くにそれぞれの(Pドープ)アノード834及び836、並びに該変調器800の縁部近くにそれぞれの(Nドープ)カソード830及び832を有する。従って、半導体接合ダイオード812及び814間の半導体領域838がPドープされている一方、半導体領域840及び842(該半導体接合ダイオード812及び814のそれぞれをそれぞれの電極816及び818に接続している)はNドープされている。
【0078】
これらの前述の差異は、
図2の変調器200と比較して、変調器800に多数の技術的利点を提供する。1つの利点は、変調器800にDCバイアス電圧接続が存在しないため、2つの光導波管802及び804を、
図2の変調器200と比較して互いに著しく近づけて実施できることである。これにより、半導体接合ダイオード812及び814を接続している半導体領域838のサイズを著しく縮小することができ、これにより、該半導体接合ダイオード812及び814間の直列電気抵抗が著しく低下する。例えば、いくつかの実施では、2つの光導波管802及び804間の距離(
図8に805として示されている)は0.5μm未満である。いくつかの実施では、2つの光導波管802及び804間の距離805は2.0μm未満である。いくつかの実施では、2つの光導波管802及び804間の距離805は0.1μm~2.0μmの範囲内である。いくつかの実施では、導波管間の距離805は、変調器800の長手方向に沿った所与の点における、2つの導波管の内側壁間の距離(例えば、
図8に示されている変調器800の断面で測定される)と定義することができる。
【0079】
別の利点は、Pドープシリコンは、Nドープシリコンよりも高い抵抗を有するため(同じ光吸収率の場合)、高抵抗性Pドープ材料が、小さい半導体領域838(半導体接合ダイオード812及び814間)に使用され、低抵抗性Nドープ材料が、大きい半導体領域840及び842(半導体接合ダイオード812及び814を電極816及び818に接続している)に使用されることである。別法では、いくつかの実施では、Nドープ材料を小さい半導体領域838に使用することができ、Pドープ材料を大きい半導体領域840及び842に使用することができる。
【0080】
結果として、電極816及び818間の全直列抵抗が著しく低下し、従って、帯域幅及び変調の速度が著しく改善される。
【0081】
変調器800にDCバイアス電圧接続が存在しないことにより、半導体接合ダイオード812及び814の逆バイアスの程度を調整する能力における自由度が奪われるが、いくつかのシナリオでは、変調器800の構成によって提供される、帯域幅及び変調の速度の改善などの著しい利点が、そのような制限を上回る。
【0082】
図9は、本開示の実施に従った変調器の断面(例えば、
図8の変調器800の断面)に沿った等価回路900の例を示す。
【0083】
図9の例では、第1の電極916と第1の半導体接合ダイオード912との間の直列電気抵抗940(例えば、
図8の半導体領域840に対応する)は3.7mΩ・mである。第2の電極918と第2の半導体接合ダイオード914との間の直列電気抵抗942(例えば、
図8の半導体領域842に対応する)は3.7mΩ・mである。第1の半導体接合ダイオード912と914との間の直列電気抵抗938(例えば、
図8の半導体領域838に対応する)は4.6mΩ・mである(ダイオード間に一切のDCバイアス電圧接続が存在しない)。
【0084】
この例で分かるように、電極916及び918間の全直列抵抗は、
図3の等価回路300と比較して、約2分の1に低下する。全直列抵抗のこの低下は、変調器の性能を著しく改善し得る。例えば、変調帯域幅は、変調器に沿ったRF損失の減少によって増加する。別法では、変調効率を改善され得る。例えば、薄いスラブを使用することができ、該スラブは、全直列抵抗を増加させるが、光導波管802及び804内への光の閉じ込めも高め、従って、変調効率が改善される。別法では、厚い導波管を使用することができ、該導波管は、容量を増加させるが、光の閉じ込めも高める。
【0085】
図10は、本開示の実施に従った変調器1000の断面の別の例(例えば、
図5の変調器500又は
図6の変調器600の断面の別の例)を示す。
【0086】
変調器1000の構造は、シリコン-絶縁体-シリコンキャパシタ(SISCAP)変調器構造である。
図8の変調器800と比較すると、変調器1000は、光導波管1002及び1004の半導体接合ダイオード1012及び1014における薄い酸化物層1044及び1046を実施する。さらに、
図8の変調器800と同様に、半導体接合ダイオード1012及び1014のアノード1034及び1036(Pドープ領域)は、(それらの間のDCバイアス接続なしで)互いに接続され、電極1016及び1018は、該半導体接合ダイオード1012及び1014のカソード1030及び1032(Nドープ領域)に変動する電圧を印加する。
【0087】
これらの特徴は、
図2の変調器200と比較して、変調器1000に多数の技術的な利点を提供する。1つの利点は、変調器1000にDCバイアス電圧接続が存在しないため、2つの光導波管1002及び1004を、
図2の変調器200と比較して互いに著しく近づけて実施できることである。これにより、半導体接合ダイオード1012及び1014を接続している半導体領域1038のサイズを著しく縮小することができ、これにより、該半導体接合ダイオード1012及び1014間の直列電気抵抗が著しく低下する。別の利点は、高抵抗性Pドープ材料が、小さい半導体領域1038(半導体接合ダイオード1012及び1014間)に使用され、低抵抗性Nドープ材料が、大きい半導体領域1040及び1042(半導体接合ダイオード1012及び1014を電極1016及び1018に接続している)に使用されることである。結果として、電極1016及び1018間の全直列抵抗が著しく低下し、従って、帯域幅及び変調の速度が著しく改善される。例えば、いくつかの実施では、2つの光導波管1002及び1004間の距離(
図10に1005として示されている)は0.5μm未満である。いくつかの実施では、2つの光導波管1002及び1004間の距離1005は2.0μm未満である。いくつかの実施では、2つの光導波管1002及び1004間の距離1005は0.1μm~2.0μmの範囲内である。いくつかの実施では、導波管間の距離1005は、変調器1000の長手方向に沿った所与の点における、2つの導波管の内側壁間の距離(例えば、
図10に示されている変調器1000の断面で測定される)と定義することができる。
【0088】
さらに、いくつかの実施では、
図5~
図8について上で論じたように、光導波管1002及び1004の一方は、他方の光導波管よりも幅が広い。例えば、
図10では、第2の光導波管1004は、第1の光導波管1002よりも少なくとも0.04μm幅が広い。いくつかの実施では、導波管の幅の差は、0.04μm~0.4μmの範囲内である。
【0089】
本開示の実施に従った変調器は、多くの適用例に使用することができる。例えば、1つの適用例は、非ゼロ復帰(NRZ)又はパルス振幅変調(PAM)などの強度変調直接検波(IM-DD)方式を実施する高速光強度変調器である。別の適用例は、大きい干渉計の一部として、変調器を90度の相対位相シフトで第2の変調器と共に使用して、4位相偏移変調(QPSK)変調器又は直角位相振幅変調(QAM)などの、コヒーレント検出用のより複雑な変調方式を実施することである。例えば、これは、変調器(外側変調器)の2つの分岐のそれぞれが別の変調器(内側変調器)を実施しているネスト型変調器を含む同相/直交位相(IQ)変調器構造によって達成することができる。いくつかの実施では、内側変調器及び外側変調器をそれぞれ180度及び90度の位相差に設定する位相調整器を実施することができる。そのようなネスト型変調器構造の各変調器は、本開示で説明するように実施(例えば、
図5~
図10を参照して説明した変調器として実施)することができる。
【0090】
図11は、導波管間の距離に応じたV+端子とV-端子との間の単位長さ当たりのコンダクタンスに関して性能が異なる変調器の例を示す。
【0091】
図11に示すプロットは、典型的には、半導体ドーピングレベルについて、DCバイアス接続を備える変調器(例えば、
図1の変調器100)の性能を、フローティングアノードが実施された変調器(例えば、
図5~
図10の変調器)及びフローティングカソードが実施された変調器の性能と比較している。
図11に示すように、導波管間の距離が0.1μmである場合、フローティングアノードの実施は、DCバイアス接続の実施と比較してコンダクタンスを2倍にする。フローティングカソードの実施もまた、DCバイアス接続の実施に対して改善をもたらすが、変調器の半導体構造のPドープ領域が優勢であるため著しく小さい。
【0092】
図12は、
図3及び
図9の直列の2つのダイオードの両端の電圧である、変調器の2つの端子の両端の印加差動電圧ΔV(ΔV=V+-V-)に応じた各半導体接合ダイオードの両端の電圧についての、異なる変調器の性能の例を示す。
【0093】
点線の曲線は、DCバイアス接続を備える変調器(例えば、
図1の変調器100)の2つのダイオードのそれぞれの両端の電圧を表し、実線の曲線は、フローティングアノードが実施された変調器(例えば、
図5~
図10の変調器)の2つのダイオードのそれぞれの両端の電圧を表す。
【0094】
点線の曲線(DCバイアス接続を備える変調器、例えば、
図1の変調器100)では、ダイオードがオンになる電圧よりも低く該ダイオードを維持するようにバイアス電圧を調製する。これらの曲線では、各ダイオードの両端の電圧は、傾きの大きさが約1/2(即ち、2つの点線の曲線では+1/2及び-1/2)に等しいほぼ直線である。
【0095】
実線の曲線(フローティングアノードが実施された変調器、例えば、
図5~
図10の変調器)では、印加差動電圧ΔVがゼロに等しい場合、各ダイオードの両端の電圧もゼロであるため、2つのダイオードの曲線は、グラフの点(0、0)で交差している。印加差動電圧ΔVが大きいと、一方のダイオードは、オンになるよりも僅かに低い電圧であり、他方のダイオードは、大きい逆電圧を有する。これにより、変調器が、環境又は製造プロセスの変化にもかかわらず、可能な限り最も高い利得で自動的に動作することが可能である。両方のダイオードの実線の曲線は、傾きの大きさ1(即ち、2つの実線の曲線の傾いた部分で+1及び-1)で最初に変化している。全体的な結果は、印加差動電圧ΔVに応じた各ダイオードの両端の電圧の非線形挙動である。2つのダイオードの両端の電圧の差は、いずれの場合も印加差動電圧ΔVに厳密に比例するが、変調器のMZI構成はもはや、各光伝送路における大きさが等しい反対の符号の電圧では駆動されない。これにより、光コンバイナから出力される、結果として生じる光信号に小さい非線形チャープが導入され、これが、色分散の存在下での伝送に影響を及ぼし得る。しかしながら、この影響は非常に小さいはずである。
【0096】
図13は、様々な導波管幅での、導波管間の距離に応じた、変調器の2つの導波管間の正規化示差屈折率変化についての、本開示の実施に従った変調器(例えば、
図5~
図10の変調器)の性能の例を示す。
【0097】
図13の例では、公称導波管幅は0.45μmであり、波長は1.31μmである。導波管の厚さは0.22μmであり、スラブの厚さは0.10μmである。
図13の結果は、各導波管の中心に空乏領域をシミュレーションすることによって生成し、該空乏領域のサイズは、幅が0.2μm、高さが0.22μmである。空乏領域は、一方の導波管では屈折率が3×10
-4増加し、他方の導波管では屈折率が3×10
-4減少し、2つの導波管モードの屈折率を計算する。屈折率変化の符号が変わると、2つの導波管のモードの屈折率を再び計算する。2つのケースのモード屈折率を、2つの導波管について減算して平均化し、その結果を、最も大きい値に対して正規化して、
図13のプロットの示差屈折率を得た。
【0098】
図14は、本開示の実施に従った、光信号を変調する例示的な方法1400を示すフローチャートである。方法1400は、本明細書に開示する変調器(例えば、
図5~
図10を参照して説明した変調器)を使用することによって実施することができる。
【0099】
方法1400は、入力光を第1の光伝送路と第2の光伝送路に分割すること(1402)を含む。
【0100】
方法1400は、第1の光伝送路と第2の光伝送路との間にバイアス電圧を印加することなく、該第1の光伝送路の光と該第2の光伝送路の光との間の位相差を変調すること(1404)をさらに含む。いくつかの実施では、第1の光伝送路の光と第2の光伝送路の光との間の位相差は変調するが、該第1の光伝送路及び該第2の光伝送路のそれぞれにおける半導体接合ダイオードの有限空乏領域は維持する。例えば、この変調は、
図5~
図10を参照して上で説明した変調器のフローティングアノード構造を使用して実施することができる。
【0101】
方法1400は、第1の光伝送路から出力される光と第2の光伝送路から出力される光とを結合すること(1406)をさらに含む。
【0102】
本開示は、多数の特定の実施の詳細を含むが、これらは、すべての発明の範囲又は請求され得るものに対する制限と解釈されるべきではなく、むしろ、特定の発明の特定の実施に特有であり得る特徴の説明と解釈されるべきである。別個の実施の文脈における本開示で説明する特定の特徴は、単一の実施において組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施の文脈で説明した様々な特徴は、複数の実施で別個に、又は任意の適切な部分的な組み合わせで実施することもできる。さらに、特徴は、特定の組み合わせで機能するものとして上で説明し、そのようなものとして最初に請求さえできるが、請求する組み合わせの1つまたは複数の特徴は、場合によっては組み合わせから排除することができ、請求する組み合わせは、部分的な組み合わせ又は部分的な組み合わせの変形に関してであり得る。
【0103】
同様に、動作を特定の順序で図面に示したが、これは、そのような動作を、所望の結果を達成するために、図示した特定の順序で若しくは順番に実行する必要があると解釈するべきでも、例示したすべての動作を実行する必要があると解釈するべきでもない。
【外国語明細書】