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特開2022-1618452,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161845
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/23 20060101AFI20221014BHJP
   C07C 41/58 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C07C43/23 A
C07C41/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051750
(22)【出願日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2021066055
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩二
(72)【発明者】
【氏名】曾我部 祥多
(72)【発明者】
【氏名】杉町 幸寛
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB46
4H006AD15
4H006GN06
4H006GP03
(57)【要約】
【課題】工業的規模での実施に際し、より好適な2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの製造方法を提供すること。
【解決手段】2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンと、芳香族炭化水素およびメタノールを特定の割合で含む溶媒との溶液から、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの結晶を析出させることにより前記課題が解決でき、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンを工業的規模で効率よく製造可能であることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン、芳香族炭化水素類及びメタノールを含み、芳香族炭化水素類とメタノールとの比率が、重量基準で芳香族炭化水素類:メタノール=99:1~10:90である、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン溶液。
【請求項2】
芳香族炭化水素類及びメタノールの合計量が、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン100重量部に対し、100~2000重量部である、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の溶液から2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの結晶を晶析させる工程を含む、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズや光学フィルムに代表される光学部材を構成する樹脂(光学樹脂)を形成するモノマーとして好適な2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの改良された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンなどのビナフタレン類を原料モノマーとするポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタンやエポキシなどの樹脂材料は光学特性、耐熱性等に優れることから、近年、光学レンズやシートなどの新規な光学材料として注目されている。
【0003】
2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンを得る方法としては、1,1’-ビ-2-ナフトールとアルキレンオキサイド、ハロゲノアルカノール、またはアルキレンカーボネートとを反応させる方法が知られており、例えば、特開2011-153248号公報(特許文献1)には、その合成例1として、1,1’-ビ-2-ナフトールと過剰量のエチレンカーボネートとを水酸化カリウム触媒下に反応させた反応混合物をメチルイソブチルケトンに溶解し、水で洗浄した後、150℃で脱溶剤を行い2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンを樹脂状物として得る方法が開示されている。特開2010-18753号公報(特許文献2)には、その実施例1として、1,1’-ビ-2-ナフトールと過剰量のエチレンカーボネートとを炭酸カリウム触媒下、トルエン溶媒中で反応させた反応混合物を1%水酸化ナトリウム水溶液および水で洗浄した後、減圧下、ロータリーエバポレーターで脱溶媒を行い2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンを得る方法が開示されている。しかしながら、これらの方法では、反応混合物から溶媒を留去することにより、樹脂状の濃縮残渣として目的物が得られており、取り出しが困難であった。
【0004】
また、結晶状の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンを晶析により得る方法としては、例えば、特許文献1や2に記載の方法にしたがって、1,1’-ビ-2-ナフトールとエチレンカーボネートをアルカリ触媒存在下反応することにより2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンを含む反応混合物を得、得られた反応混合物を溶媒に溶解した後、冷却する手法が考えられる。しかし、該方法では、瞬時に大量の結晶が析出し、撹拌や移送が困難な状態となることが知られている。該問題の解決方法として本願出願人により、特開2015-168658号公報(特許文献3)の方法が見出されている。該方法では、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの晶析操作で得られた母液の一部または全部を再使用して晶析を行うことにより、上記問題を解決している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-153248号公報
【特許文献2】特開2010-18753号公報
【特許文献3】特開2015-168658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に記載の方法では、晶析及びろ過等の操作を経ることにより得られる母液を予め調製する必要があるため、母液の調製を必要としない、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの製造方法が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、工業的規模での実施に際し、より好適な2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンと、芳香族炭化水素およびメタノールを特定の割合で含む溶媒との溶液から、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの結晶を析出させる(即ち、晶析を行う)ことにより前記課題が解決でき、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンを工業的規模で効率よく製造可能であることを見出した。具体的には、本発明は以下の発明を含む。
【0009】
[1]
2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン、芳香族炭化水素類及びメタノールを含み、芳香族炭化水素類とメタノールとの比率が、重量基準で芳香族炭化水素類:メタノール=99:1~10:90である、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン溶液。
【0010】
[2]
芳香族炭化水素類及びメタノールの合計量が、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン100重量部に対し、100~2000重量部である、[1]に記載の溶液。
【0011】
[3]
[1]又は[2]に記載の溶液から2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの結晶を晶析させる工程を含む、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来方法での晶析時の撹拌、移送等の問題が生ずることなく、また、予め母液の調製も必要とすることなく工業的規模でも有利に2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの結晶を得ることが可能となる。
【0013】
また、本発明においては、母液を必要としないことから、母液に含まれる不純物の影響を回避することができる。そのため、例えば、特許文献3の方法によって得られた2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの純度をより向上させたい場合、本発明の製造方法を適用すること(本発明の製造方法により、所謂、再結晶を実施すること)によって、特許文献3の方法で得られた2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの純度を、容易かつ効率良く向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<本発明の溶液(2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン溶液)>
本発明の溶液は、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン、芳香族炭化水素及びメタノールを特定の割合で含む。また、該溶液に含まれる2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンは、好ましくは完溶している。
【0015】
本発明で使用する2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンは、例えば、従来公知の方法(例えば、上記特許文献1~3に記載の方法)によって得られ、本発明の効果が発揮され易い点で、1,1’-ビ-2-ナフトールとエチレンカーボネートとの反応により調製されることが好ましい。
【0016】
本発明の溶液に使用する芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられる。これら芳香族炭化水素の中でも、トルエン又はキシレンが好ましい。これら芳香族炭化水素は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンを晶析する際、芳香族炭化水素のみを使用すると、特許文献3の記載や後述する実施例の項にも示す通り、晶析時の撹拌に障害をきたすことから、メタノールを併用する必要がある。また、メタノールに代えて他のアルコールを使用した場合には、後述する実施例の項に示す通り、芳香族炭化水素のみを使用した場合と同様、晶析時の撹拌が困難となる。
【0017】
本発明の溶液において、芳香族炭化水素とメタノールとの割合は、重量基準で、芳香族炭化水素:メタノール=99:1~10:90であり、好ましくは96:4~20:80である。芳香族炭化水素:メタノール=99:1~10:90の範囲であれば、後述する製造工程において、撹拌が困難な状態とならずに2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの結晶を析出させることができる。
【0018】
本発明の溶液には、芳香族炭化水素及びメタノール以外に他の有機溶媒が含まれていてもよい。含まれていてもよい他の有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類等が挙げられる。前記脂肪族炭化水素類としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等が、前記エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル等が、前記エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が、前記ケトン類としては、例えば、アセトン、2-ブタノン、4-メチル-2-ペンタノンおよびシクロヘキサノン等が挙げられる。他の有機溶媒を含む場合、その量は、上記溶液中の芳香族炭化水素類及びメタノールの合計量100重量部に対し、例えば、50重量部以下、好ましくは30重量部以下である。
【0019】
また、本発明の溶液において、芳香族炭化水素類及びメタノールの合計量は、例えば、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン100重量部に対し、100~2000重量部、好ましくは150~1500重量部、より好ましくは150~1000重量部である。
【0020】
本発明の溶液において、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンは、好ましくは完溶している。完溶する温度は、通常、40℃以上、溶媒の沸点以下、好ましくは50~65℃である。
【0021】
<2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの製造方法>
上記した本発明の溶液から、該溶液を冷却する等の方法により2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの結晶を析出させることで、晶析時の撹拌が困難になることなく、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの結晶が製造可能となる。以下、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの製造方法について詳述する。
【0022】
2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの結晶は、本発明の溶液を、前述した本発明の溶液の温度より15℃以下に、具体的には、通常、25~45℃、好ましくは30~40℃に冷却することにより析出させることができる。なお、冷却は、通常、放冷又は徐冷により行われる。また、必要に応じ、所定の温度で種晶を添加することにより、結晶を析出させることもできる。結晶析出後は、必要に応じ、一定時間同温度で保持して結晶を成長させる操作を施してもよいし、更なる冷却を行ってもよい。
【0023】
このようにして調製された2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの結晶を含む晶析溶液に対し、その後、固液分離操作を行うことにより該結晶を回収する。固液分離操作としては、例えば、遠心分離機、フィルタープレス、ヌッチェなどを使用したろ過操作が挙げられるが、工業的には遠心分離機が好ましい。その後、回収した結晶を、必要に応じ、溶媒等を用いて洗浄してもよいし、乾燥してもよい。また、必要に応じ、吸着・再晶析等の更なる精製を行ってもよい。
【実施例0024】
以下、実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。なお、各種測定は下記の方法で実施した。また、以下実施例等において、特に断りのない限り、収率は反応で使用した(RS)-1,1’-ビ-2-ナフトールに対する(RS)-2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの有姿収率であり、HPLC純度は下記条件で測定したHPLCの面積百分率値である。
【0025】
<HPLC測定条件>
装置 :島津 LC-2010A
カラム:SUMIPAX ODS A-211(5μm、4.6mmφ×250mm)
移動相:0.03%トリフルオロ酢酸含有水/0.03%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル(0.03%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル30%→100%)
流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃、検出波長:UV 254nm
【0026】
<実施例1>
攪拌器、冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、(RS)-1,1’-ビ-2-ナフトール50g(0.175mol)、エチレンカーボネート35g(0.401mol)、炭酸カリウム2.5gおよびトルエン50gを仕込み、110℃で8時間撹拌することで、(RS)-2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンを含む反応混合物を得た。
得られた反応混合物にトルエン180gを加え希釈した後、反応混合物を含む有機溶媒層を撹拌しながら85℃に保ち、水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した。次いでこの有機溶媒層を、洗浄水が中性となるまで水洗し、得られた有機溶媒層を還流下脱水した。次いで、有機溶媒層を60℃まで冷却した後、メタノール21gを添加し、晶析溶液を得た。この晶析溶液を39℃まで冷却後、同温度で1時間保持し結晶を析出させ、更に2℃まで冷却して晶析混合物を得た。得られた晶析混合物は、撹拌可能であった。
析出した結晶を濾別し、トルエン35gで2回洗浄した後、減圧下80℃で乾燥して(RS)-2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの白色結晶53gを得た(収率:81%、HPLC純度:99%)。
【0027】
<実施例2>
実施例1において、反応混合物に添加するトルエンの量を246gとした以外は、実施例1と同様に還流下脱水まで行った後、有機溶媒層を60℃まで冷却し、メタノール12gを添加し、晶析溶液を得た。この晶析溶液を45℃まで冷却後、同温度で1時間保持し結晶を析出させ、更に2℃まで冷却して晶析混合物を得た。得られた晶析混合物は、撹拌可能であった。
析出した結晶を濾別し、トルエン35gで2回洗浄した後、減圧下80℃で乾燥して(RS)-2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの白色結晶53gを得た(収率:81%、HPLC純度:99%)。
【0028】
<実施例3>
実施例1において、反応混合物に添加するトルエンの量を16gとした以外は、実施例1と同様に還流下脱水まで行った後、有機溶媒層を62℃まで冷却し、メタノール263gを添加し、晶析溶液を得た。この晶析溶液を31℃まで冷却後、同温度で1時間保持し結晶を析出させ、更に2℃まで冷却して晶析混合物を得た。得られた晶析混合物は、撹拌可能であった。
析出した結晶を濾別し、トルエン35gで2回洗浄した後、減圧下80℃で乾燥して(RS)-2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの白色結晶52gを得た(収率:79%、HPLC純度:99%)。
【0029】
<実施例4>
実施例1において、反応混合物に添加するトルエンの量を16gとした以外は、実施例1と同様に還流下脱水まで行った後、有機溶媒層を64℃まで冷却し、メタノール33gを添加し、晶析溶液を得た。この晶析溶液を39℃まで冷却後、同温度で1時間保持し結晶を析出させ、更に2℃まで冷却して晶析混合物を得た。得られた晶析混合物は、撹拌可能であった。
析出した結晶を濾別し、トルエン35gで2回洗浄した後、減圧下80℃で乾燥して(RS)-2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの白色結晶56gを得た(収率:85%、HPLC純度:99%)。
【0030】
<実施例5>
実施例1において、反応混合物に添加するトルエンの量を896gとした以外は、実施例1と同様に還流下脱水まで行った後、有機溶媒層を60℃まで冷却し、メタノール39gを添加し、晶析溶液を得た。この晶析溶液を30℃まで冷却後、同温度で1時間保持し結晶を析出させ、更に2℃まで冷却して晶析混合物を得た。得られた晶析混合物は、撹拌可能であった。
析出した結晶を濾別し、トルエン35gで2回洗浄した後、減圧下80℃で乾燥して(RS)-2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの白色結晶37gを得た(収率:57%、HPLC純度:99%)。
【0031】
<比較例1>
実施例1において、反応混合物に添加するトルエンの量を1264gとした以外は、実施例1と同様に還流下脱水工程までの操作を行った後、有機溶媒層を30℃まで冷却したところ、結晶が一気に析出し、撹拌困難となった。
【0032】
<比較例2>
実施例1において水洗工程まで同様の操作を行った後、得られた有機溶媒層を濃縮し、水及びトルエンを留去した。得られた残渣にメタノール217gを添加した後、62℃まで昇温し、結晶を完溶させた。次いで、得られた溶液を35℃まで冷却したところ、結晶が一気に析出し、撹拌困難となった。
【0033】
<比較例3>
実施例1において、還流下脱水工程まで同様の操作を行った後、有機溶媒層を62℃まで冷却し、エタノール21gを添加し、晶析溶液を得た。この晶析溶液を45℃まで冷却したところ、結晶が一気に析出し、撹拌困難となった。
【0034】
<比較例4>
実施例1において、還流下脱水工程まで同様の操作を行った後、有機溶媒層を66℃まで冷却し、2-プロパノール21gを添加し、晶析溶液を得た。この晶析溶液を55℃まで冷却したところ、結晶が一気に析出し、撹拌困難となった。
【0035】
<比較例5>
実施例1において還流下脱水工程まで同様の操作を行った後、有機溶媒層を82℃まで冷却し、1-ブタノール21gを添加し、晶析溶液を得た。この晶析溶液を53℃まで冷却したところ、結晶が一気に析出し、撹拌困難となった。