(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161846
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】蒸着マスク、蒸着マスク装置、蒸着装置及び有機デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20221014BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221014BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052480
(22)【出願日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2021066651
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】宮谷 勲
(72)【発明者】
【氏名】池永 知加雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 陽子
(72)【発明者】
【氏名】井上 功
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC35
3K107CC45
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG28
3K107GG32
3K107GG33
3K107GG34
4K029AA09
4K029AA24
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4K029BC07
4K029BD01
4K029CA01
4K029DB06
4K029HA01
4K029HA02
4K029HA03
4K029HA04
4K029JA02
4K029JA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機械的強度を向上できる蒸着マスク、蒸着マスク装置、蒸着装置及び有機デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】本開示による蒸着マスクは、第1面と、第1面とは反対側に位置する第2面20bと、2つ以上の貫通孔25と、を備えている。貫通孔は、第1面に位置する第1凹部30と、第2面に位置する第2凹部35と、を含んでいる。蒸着マスクは、第2面が残存している面積の比率を示す第1面残存率を有するマスク第1領域M1と、第2面が残存している面積の比率を示す第2面残存率であって、第1面残存率よりも大きい第2面残存率を有するマスク第2領域M2と、を備えている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着マスクであって、
第1面と、
前記第1面とは反対側に位置する第2面と、
前記第1面から前記第2面に延びる2つ以上の貫通孔と、を備え、
前記貫通孔は、前記第1面に位置する第1凹部と、前記第2面に位置する、前記第1凹部に連通した第2凹部と、前記第1凹部の壁面と前記第2凹部の壁面に接続され、前記第1凹部の壁面及び前記第2凹部の壁面から前記貫通孔の内側に突き出された稜線と、を含み、
前記稜線は、前記第2面よりも前記第1面の側に位置し、
前記蒸着マスクは、前記第2面が残存している面積の比率を示す第1面残存率を有するマスク第1領域と、前記第2面が残存している面積の比率を示す第2面残存率であって、前記第1面残存率よりも大きい第2面残存率を有するマスク第2領域と、を備えた、蒸着マスク。
【請求項2】
前記マスク第1領域は、前記貫通孔の面積の比率を示す第1開口率を有し、
前記マスク第2領域は、前記貫通孔の面積の比率を示す第2開口率であって、前記第1開口率よりも小さい第2開口率を有する、請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
互いに隣り合う前記第2凹部の前記壁面の間に、前記壁面を接続する接続面を含む桟が位置し、
前記第2凹部は、平面視において前記接続面に囲まれており、
平面視において1つの前記第2凹部を取り囲む前記接続面は、最も前記第2面の側に位置する最高点を含み、
前記接続面の任意の点を通るとともに前記第1面に垂直な断面であって、平面視において当該点からの距離が最短となる前記稜線上の点を通る断面を定義断面とし、
前記定義断面において、前記接続面と前記稜線とに接する直線を傾斜定義直線とし、
前記定義断面が前記最高点を通るとき、前記傾斜定義直線と前記第1面とがなす角度は、25°以上且つ45°以下である、請求項1又は2に記載の蒸着マスク。
【請求項4】
1つの前記第2凹部を取り囲む前記接続面は、2つ以上の前記最高点を含み、
2つ以上の前記最高点のうち対応する前記最高点を通る2つ以上の前記定義断面が定義され、
2つ以上の前記定義断面のうちの少なくとも1つの前記定義断面における前記傾斜定義直線と前記第1面とがなす角度が、25°以上且つ45°以下である、請求項3に記載の蒸着マスク。
【請求項5】
前記最高点は、前記第1面に垂直な方向において前記第2面と同じ位置に位置する、請求項3又は4に記載の蒸着マスク。
【請求項6】
前記接続面は、残存している前記第2面を構成するトップ面を含み、
前記最高点は、平面視において前記トップ面のうち前記稜線に最も近い点である、請求項5に記載の蒸着マスク。
【請求項7】
前記接続面のうちの任意の点を通る前記定義断面における前記傾斜定義直線と前記第1面とがなす角度は、25°以上且つ45°以下である、請求項3~6のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項8】
2つ以上の前記貫通孔は、平面視において、第1方向に配列され、
前記マスク第1領域に位置するとともに前記第1方向において隣り合う前記貫通孔の配列ピッチは、20μm以上且つ170μm以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項9】
2つ以上の前記貫通孔は、平面視において、前記第1方向に直交する第2方向に配列され、
前記マスク第1領域に位置するとともに前記第2方向において隣り合う前記貫通孔の配列ピッチは、20μm以上且つ170μm以下である、請求項8に記載の蒸着マスク。
【請求項10】
前記蒸着マスクの厚みは、5μm以上且つ35μm以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項11】
フレーム開口を含むフレームと、
前記フレームに固定され、平面視において前記フレーム開口に重なる前記貫通孔を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の蒸着マスクと、を備えた、蒸着マスク装置。
【請求項12】
蒸着材料を蒸発させる蒸着源と、
前記蒸着源に対向する、請求項11に記載の蒸着マスク装置と、を備えた、蒸着装置。
【請求項13】
前記蒸着源に対して前記蒸着マスクを回転させる回転駆動機構を備えた、請求項12に記載の蒸着装置。
【請求項14】
請求項11に記載の蒸着マスク装置の前記蒸着マスクを基板に密着させる工程と、
蒸着材料を、前記フレーム開口及び前記蒸着マスクの前記貫通孔を通過させることにより、前記基板に前記蒸着材料を蒸着させて蒸着層を形成する工程と、を備えた、有機デバイスの製造方法。
【請求項15】
前記蒸着層を形成する工程において、前記蒸着材料を蒸発させる蒸着源に対して前記蒸着マスク装置及び前記基板を回転させる、請求項14に記載の有機デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸着マスク、蒸着マスク装置、蒸着装置及び有機デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン又はタブレットPC等の電子デバイスにおいて、高精細な表示装置が、市場から求められている。表示装置は、例えば、400ppi以上又は800ppi以上等の画素密度を有する。
【0003】
このような表示装置として、応答性の良さと、又は/及びコントラストの高さと、を有する有機EL表示装置が注目されている。有機EL表示装置の画素を形成する方法として、画素を構成する材料を、基板に蒸着させる方法が知られている。この場合、まず、貫通孔を含む蒸着マスクと、蒸着マスクを支持するフレームと、を備える蒸着マスク装置を準備する。次に、蒸着装置内で、蒸着マスクを基板に密着させた状態で、有機材料又は無機材料等の蒸着材料を蒸着させる。このことにより、基板に、蒸着材料が付着して蒸着層が形成される。蒸着層は、有機EL表示装置の表示領域を構成する。
【0004】
蒸着材料を基板に蒸着させる際、蒸着材料の一部は、蒸着マスクの貫通孔の壁面及び蒸着源に対向する蒸着マスクの面に付着し得る。このことにより、基板への蒸着材料の付着が、貫通孔の壁面及び蒸着源に対向する蒸着マスクの面によって阻害される。この現象をシャドーとも称する。シャドーの発生を抑制するために、蒸着マスクの厚みは小さくなる傾向にある。このことにより、蒸着マスクの機械的強度が低下し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-060028号公報
【特許文献2】特開2005-183153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の実施の形態は、機械的強度を向上できる蒸着マスク、蒸着マスク装置、蒸着装置及び有機デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による蒸着マスクは、第1面と、第1面とは反対側に位置する第2面と、第1面から第2面に延びる2つ以上の貫通孔と、を備えている。貫通孔は、第1面に位置する第1凹部と、第2面に位置する、第1凹部に連通した第2凹部と、第1凹部の壁面と第2凹部の壁面に接続され、第1凹部の壁面及び第2凹部の壁面から貫通孔の内側に突き出された稜線と、を含んでいる。稜線は、第2面よりも第1面の側に位置している。蒸着マスクは、第2面が残存している面積の比率を示す第1面残存率を有するマスク第1領域と、第2面が残存している面積の比率を示す第2面残存率であって、第1面残存率よりも大きい第2面残存率を有するマスク第2領域と、を備えている。
【0008】
本開示による蒸着マスク装置は、フレーム開口を含むフレームと、フレームに固定され、平面視においてフレーム開口に重なる貫通孔を含む、上述の蒸着マスクと、を備えている。
【0009】
本開示による蒸着装置は、蒸着材料を蒸発させる蒸着源と、蒸着源に対向する、上述の蒸着マスク装置と、を備えている。
【0010】
本開示による有機デバイスの製造方法は、上述の蒸着マスク装置の蒸着マスクを基板に密着させる工程と、蒸着材料を、フレーム開口及び蒸着マスクの貫通孔を通過させることにより、基板に蒸着材料を蒸着させて蒸着層を形成する工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、機械的強度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の一実施の形態による有機デバイスの一例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施の形態による蒸着マスク装置を用いて作製された有機デバイスの素子の一例を示す拡大平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す有機デバイスのA-A線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す有機デバイスのB-B線に沿った断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施の形態による蒸着マスク装置を備えた蒸着装置の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す蒸着マスク装置を、蒸着マスクの第1面の側から見た平面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示すマスク装置のマスクを示す平面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す蒸着マスクの第2面におけるマスク第1領域を示す部分拡大平面図である。
【
図12】
図12は、
図7に示す蒸着マスクの第2面におけるマスク第2領域を示す部分拡大平面図である。
【
図14】
図14は、
図6に示す蒸着マスクの製造方法の一例を全体的に説明するための模式図である。
【
図15】
図15は、
図6に示す蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、長尺金属板上にレジスト層を形成する工程を示す断面図である。
【
図16】
図16は、
図6に示す蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、レジスト層に露光マスクを密着させる工程を示す断面図である。
【
図17】
図17は、
図6に示す蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、レジスト層を現像する工程を示す図である。
【
図18】
図18は、
図6に示す蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、第1エッチング工程を示す図である。
【
図19】
図19は、
図6に示す蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、第1凹部を樹脂によって被覆する工程を示す図である。
【
図20】
図20は、
図6に示す蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、第2エッチング工程を示す図である。
【
図21】
図21は、
図6に示す蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、
図13に続く第2エッチング工程を示す図である。
【
図22】
図22は、
図6に示す蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、長尺金属板から樹脂を除去する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び本図面において、特別な説明が無い限りは、「基板」や「基材」や「板」や「シート」や「フィルム」などのある構成の基礎となる物質を意味する用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。
【0014】
本明細書及び本図面において、特別な説明が無い限りは、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待してもよい程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0015】
本明細書及び本図面において、特別な説明が無い限りは、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に」や「下に」、「上側に」や「下側に」、又は「上方に」や「下方に」とする場合、ある構成が他の構成に直接的に接している場合を含む。さらに、ある構成と他の構成との間に別の構成が含まれている場合、つまり間接的に接している場合も含む。また、特別な説明が無い限りは、「上」や「上側」や「上方」、又は、「下」や「下側」や「下方」という語句は、上下方向が逆転してもよい。
【0016】
本明細書及び本図面において、特別な説明が無い限りは、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0017】
本明細書及び本図面において、特別な説明が無い限りは、矛盾の生じない範囲で、その他の実施の形態や変形例と組み合わせられてもよい。また、その他の実施の形態同士や、その他の実施の形態と変形例も、矛盾の生じない範囲で組み合わせられてもよい。また、変形例同士も、矛盾の生じない範囲で組み合わせられてもよい。
【0018】
本明細書及び本図面において、特別な説明が無い限りは、製造方法などの方法に関して複数の工程を開示する場合に、開示されている工程の間に、開示されていないその他の工程が実施されてもよい。また、開示されている工程の順序は、矛盾の生じない範囲で任意である。
【0019】
本明細書及び本図面において、特別な説明が無い限りは、「~」という記号によって表現される数値範囲は、「~」という符号の前後に置かれた数値を含んでいる。例えば、「34~38質量%」という表現によって画定される数値範囲は、「34質量%以上且つ38質量%以下」という表現によって画定される数値範囲と同一である。
【0020】
本明細書の一実施の形態においては、有機デバイスを製造する際に有機材料を所望のパターンで基板上にパターニングするために用いられる蒸着マスクやその製造方法に関した例をあげて説明する。ただし、このような適用に限定されることなく、種々の用途に用いられる蒸着マスクに対し、本実施の形態を適用できる。例えば、仮想現実いわゆるVRや拡張現実いわゆるARを表現するための画像や映像を表示又は投影するための装置を製造するために、本実施の形態のマスクを用いてもよい。
【0021】
本開示の第1の態様は、
蒸着マスクであって、
第1面と、
前記第1面とは反対側に位置する第2面と、
前記第1面から前記第2面に延びる2つ以上の貫通孔と、を備え、
前記貫通孔は、前記第1面に位置する第1凹部と、前記第2面に位置する、前記第1凹部に連通した第2凹部と、前記第1凹部の壁面と前記第2凹部の壁面に接続され、前記第1凹部の壁面及び前記第2凹部の壁面から前記貫通孔の内側に突き出された稜線と、を含み、
前記稜線は、前記第2面よりも前記第1面の側に位置し、
前記蒸着マスクは、前記第2面が残存している面積の比率を示す第1面残存率を有するマスク第1領域と、前記第2面が残存している面積の比率を示す第2面残存率であって、前記第1面残存率よりも大きい第2面残存率を有するマスク第2領域と、を備えた、蒸着マスク、
である。
【0022】
本開示の第2の態様は、上述した第1の態様による蒸着マスクにおいて、
前記マスク第1領域は、前記貫通孔の面積の比率を示す第1開口率を有し、
前記マスク第2領域は、前記貫通孔の面積の比率を示す第2開口率であって、前記第1開口率よりも小さい第2開口率を有する、
ようにしてもよい。
【0023】
本開示の第3の態様は、上述した第1の態様又は上述した第2の態様による蒸着マスクにおいて、
互いに隣り合う前記第2凹部の前記壁面の間に、前記壁面を接続する接続面を含む桟が位置し、
前記第2凹部は、平面視において前記接続面に囲まれており、
平面視において1つの前記第2凹部を取り囲む前記接続面は、最も前記第2面の側に位置する最高点を含み、
前記接続面の任意の点を通るとともに前記第1面に垂直な断面であって、平面視において当該点からの距離が最短となる前記稜線上の点を通る断面を定義断面とし、
前記定義断面において、前記接続面と前記稜線とに接する直線を傾斜定義直線とし、
前記定義断面が前記最高点を通るとき、前記傾斜定義直線と前記第1面とがなす角度は、25°以上且つ45°以下である、蒸着マスク、
である。
【0024】
本開示の第4の態様は、上述した第3の態様による蒸着マスクにおいて、
1つの前記第2凹部を取り囲む前記接続面は、2つ以上の前記最高点を含み、
2つ以上の前記最高点のうち対応する前記最高点を通る2つ以上の前記定義断面が定義され、
2つ以上の前記定義断面のうちの少なくとも1つの前記定義断面における前記傾斜定義直線と前記第1面とがなす角度が、25°以上且つ45°以下である、
ようにしてもよい。
【0025】
本開示の第5の態様は、上述した第3の態様又は上述した第4の態様による蒸着マスクにおいて、
前記最高点は、前記第1面に垂直な方向において前記第2面と同じ位置に位置する、
ようにしてもよい。
【0026】
本開示の第6の態様は、上述した第5の態様による蒸着マスクにおいて、
前記接続面は、残存している前記第2面を構成するトップ面を含み、
前記最高点は、平面視において前記トップ面のうち前記稜線に最も近い点である、
ようにしてもよい。
【0027】
本開示の第7の態様は、上述した第3の態様から上述した第6の態様のそれぞれによる蒸着マスクにおいて、
前記接続面のうちの任意の点を通る前記定義断面における前記傾斜定義直線と前記第1面とがなす角度は、25°以上且つ45°以下である、
ようにしてもよい。
【0028】
本開示の第8の態様は、上述した第1の態様から上述した第7の態様のそれぞれによる蒸着マスクにおいて、
2つ以上の前記貫通孔は、平面視において、第1方向に配列され、
前記マスク第1領域に位置するとともに前記第1方向において隣り合う前記貫通孔の配列ピッチは、20μm以上且つ170μm以下である、
ようにしてもよい。
【0029】
本開示の第9の態様は、上述した第8の態様による蒸着マスクにおいて、
2つ以上の前記貫通孔は、平面視において、前記第1方向に直交する第2方向に配列され、
前記マスク第1領域に位置するとともに前記第2方向において隣り合う前記貫通孔の配列ピッチは、20μm以上且つ170μm以下である、
ようにしてもよい。
【0030】
本開示の第10の態様は、上述した第1の態様から上述した第9の態様のそれぞれによる蒸着マスクにおいて、
前記蒸着マスクの厚みは、5μm以上且つ35μm以下である、
ようにしてもよい。
【0031】
本開示の第11の態様は、
フレーム開口を含むフレームと、
前記フレームに固定され、平面視において前記フレーム開口に重なる前記貫通孔を含む、上述した第1の態様から上述した第10の態様のそれぞれによる蒸着マスクと、を備えた、蒸着マスク装置、
である。
【0032】
本開示の第12の態様は、
蒸着材料を蒸発させる蒸着源と、
前記蒸着源に対向する、上述した第11の態様による蒸着マスク装置と、を備えた、蒸着装置、
である。
【0033】
本開示の第13の態様は、上述した第12の態様による蒸着装置において、
前記蒸着源に対して前記蒸着マスクを回転させる回転駆動機構を備える、
ようにしてもよい。
【0034】
本開示の第14の態様は、
上述した第11の態様による蒸着マスク装置の前記蒸着マスクを基板に密着させる工程と、
蒸着材料を、前記フレーム開口及び前記蒸着マスクの前記貫通孔を通過させることにより、前記基板に前記蒸着材料を蒸着させて蒸着層を形成する工程と、を備えた、有機デバイスの製造方法、
である。
【0035】
本開示の第15の態様は、上述した第14の態様による有機デバイスの製造方法において、
前記蒸着層を形成する工程において、前記蒸着材料を蒸発させる蒸着源に対して前記蒸着マスク装置及び前記基板を回転させる、
ようにしてもよい。
【0036】
以下、本開示の一実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は本開示の実施の形態の一例であって、本開示はこれらの実施の形態のみに限定して解釈されない。
【0037】
本実施の形態による有機デバイス100について説明する。有機デバイス100は、複数の素子115を備える。素子115は、例えば、後述する基板110上に形成された画素であってもよい。有機デバイス100は、有機EL表示装置であってもよい。
図1は、有機デバイス100の基板110の法線方向に沿って見た場合における有機デバイス100の一例を示す平面図である。以下の説明において、基板などの基礎となる物質の面の法線方向に沿って見ることを、平面視とも称する。
【0038】
有機デバイス100は、
図1に示すように、平面視において第1表示領域101及び第2表示領域102を含んでいてもよい。第2表示領域102は、第1表示領域101よりも小さい面積を有していてもよい。
図1に示すように、第2表示領域102は、第1表示領域101によって囲まれていてもよい。図示はしないが、第2表示領域102の外縁の一部が、第1表示領域101の外縁の一部と同一直線上に位置していてもよい。
【0039】
図2は、第1表示領域101の素子115及び第2表示領域102の素子115を拡大して示す平面図である。
図2では、後述する第2電極140は省略されている。図示しない第2電極140は、第1表示領域101及び第2表示領域102のいずれにおいても、平面視において素子115を構成する有機層130に重なっていてもよい。
【0040】
第1表示領域101において、素子115は、異なる2方向に沿って並んでいてもよい。第1表示領域101の2つ以上の素子115は、素子第1方向G1に沿って並んでいてもよい。第1表示領域101の2つ以上の素子115は、素子第1方向G1に交差する素子第2方向G2に沿って並んでいてもよい。素子第2方向G2は、素子第1方向G1に直交していてもよい。素子115は、後述するように、第1素子115A、第2素子115B及び第3素子115Cを含んでいてもよい。
図2には、各素子115A、115B、115Cの配列の一例が示されている。しかしながら、このことに限られることはなく、各素子115A、115B、115Cの配列は任意である。
【0041】
図2に示すように、第1表示領域101において、有機層130は、素子第1方向G1に沿って第1ピッチP1で並んでいてもよい。第2表示領域102において、有機層130は、素子第1方向G1に沿って第2ピッチP2で並んでいてもよい。第2ピッチP2は、第1ピッチP1よりも大きくてもよい。このことにより、透過領域104の面積が大きくなる。このため、第2表示領域102の透過率を大きくきる。
【0042】
第1ピッチP1に対する第2ピッチP2の比は、例えば、1.1以上でもよく、1.3以上でもよく、1.5以上でもよい。第1ピッチP1に対する第2ピッチP2の比は、例えば、2.0以下でもよく、3.0以下でもよく、4.0以下でもよい。第1ピッチP1に対する第2ピッチP2の比の範囲は、1.1、1.3及び1.5からなる第1グループ、及び/又は、2.0、3.0及び4.0からなる第2グループによって定められてもよい。第1ピッチP1に対する第2ピッチP2の比の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。第1ピッチP1に対する第2ピッチP2の比の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。第1ピッチP1に対する第2ピッチP2の比の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、1.1以上4.0以下でもよく、1.1以上3.0以下でもよく、1.1以上2.0以下でもよく、1.1以上1.5以下でもよく、1.1以上1.3以下でもよく、1.3以上4.0以下でもよく、1.3以上3.0以下でもよく、1.3以上2.0以下でもよく、1.3以上1.5以下でもよく、1.5以上4.0以下でもよく、1.5以上3.0以下でもよく、1.5以上2.0以下でもよく、2.0以上4.0以下でもよく、2.0以上3.0以下でもよく、3.0以上4.0以下でもよい。第1ピッチP1に対する第2ピッチP2の比が小さい場合、第1表示領域101の画素密度に対する第2表示領域102の画素密度の差が小さくなる。これにより、第1表示領域101と第2表示領域102の間に視覚的な差が生じることを抑制できる。
【0043】
図2に示すように、第1表示領域101において、有機層130は、素子第2方向G2に沿って第3ピッチP3で並んでいてもよい。第2表示領域102において、有機層130は、素子第2方向G2に沿って第4ピッチP4で並んでいてもよい。第4ピッチP4は、第3ピッチP3よりも大きくてもよい。
【0044】
第3ピッチP3に対する第4ピッチP4の比は、例えば、1.1以上でもよく、1.3以上でもよく、1.5以上でもよい。第3ピッチP3に対する第4ピッチP4の比は、例えば、2.0以下でもよく、3.0以下でもよく、4.0以下でもよい。第3ピッチP3に対する第4ピッチP4の比の範囲は、1.1、1.3及び1.5からなる第1グループ、及び/又は、2.0、3.0及び4.0からなる第2グループによって定められてもよい。第3ピッチP3に対する第4ピッチP4の比の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。第3ピッチP3に対する第4ピッチP4の比の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。第3ピッチP3に対する第4ピッチP4の比の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、1.1以上4.0以下でもよく、1.1以上3.0以下でもよく、1.1以上2.0以下でもよく、1.1以上1.5以下でもよく、1.1以上1.3以下でもよく、1.3以上4.0以下でもよく、1.3以上3.0以下でもよく、1.3以上2.0以下でもよく、1.3以上1.5以下でもよく、1.5以上4.0以下でもよく、1.5以上3.0以下でもよく、1.5以上2.0以下でもよく、2.0以上4.0以下でもよく、2.0以上3.0以下でもよく、3.0以上4.0以下でもよい。第3ピッチP3に対する第4ピッチP4の比が小さい場合、第1表示領域101の画素密度に対する第2表示領域102の画素密度の差が小さくなる。これにより、第1表示領域101と第2表示領域102の間に視覚的な差が生じることを抑制できる。
【0045】
図2に示すように、第2表示領域102は、非透過領域103及び透過領域104を含んでいてもよい。非透過領域103は、平面視において素子115と重なる領域であって、素子第2方向G2に沿って延びる領域であってもよい。非透過領域103において、素子115が、素子第2方向G2に並んでいてもよい。透過領域104は、平面視において素子115が存在していない領域であって、素子第2方向G2に沿って延びる領域であってもよい。非透過領域103及び透過領域104は、素子第1方向G1に交互に並んでいてもよい。
【0046】
非透過領域103の透過率を、第1透過率とも称する。透過領域104の透過率を、第2透過率とも称する。透過領域104が素子115を含まないため、第2透過率が第1透過率よりも高い。このため、透過領域104を含む第2表示領域102においては、有機デバイス100に到達した光が透過領域104を透過して基板110の裏側の光学部品などに到達できる。光学部品は、例えばカメラなどの、光を検出することにより何らかの機能を実現する部品である。第2表示領域102が非透過領域103を含むため、素子115が画素である場合、第2表示領域102に映像を表示できる。このように、第2表示領域102は、光を検出し、且つ映像を表示できる。光を検出することによって実現される第2表示領域102の機能は、例えば、カメラ、指紋センサ、顔認証センサなどのセンサなどである。透過領域104の第2透過率が高いほど、センサが受光する光量を増やすことができる。
【0047】
素子第1方向G1及び素子第2方向G2における非透過領域103の寸法、及び素子第1方向G1及び素子第2方向G2における透過領域104の寸法のいずれかが1mm以下である場合、顕微分光光度計を用いて第1透過率及び第2透過率が測定される。顕微分光光度計としては、オリンパス株式会社製OSP-SP200が用いられる。石英がレファレンスとして用いられる550nmにおける測定結果が、第1透過率及び第2透過率として用いられる。
【0048】
素子第1方向G1及び素子第2方向G2における非透過領域103の寸法、及び素子第1方向G1及び素子第2方向G2における透過領域104の寸法のいずれもが1mmより大きい場合、分光光度計を用いて第1透過率及び第2透過率が測定される。分光光度計としては、株式会社島津製作所製の紫外可視分光光度計UV-2600iが用いられる。分光光度計に微小光束絞りユニットを取り付けることにより、最大で1mmの寸法を有する領域の透過率を測定できる。大気をレファレンスとして用いる。550nmにおける測定結果が、第1透過率及び第2透過率として用いられる。
【0049】
第1透過率TR1に対する第2透過率TR2の比であるTR2/TR1は、例えば、1.2以上でもよく、1.5以上でもよく、1.8以上でもよい。TR2/TR1は、例えば、2以下でもよく、3以下でもよく、4以下でもよい。TR2/TR1の範囲は、1.2、1.5及び1.8からなる第1グループ、及び/又は、2、3及び4からなる第2グループによって定められてもよい。TR2/TR1の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。TR2/TR1の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。TR2/TR1の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、1.2以上4以下でもよく、1.2以上3以下でもよく、1.2以上2以下でもよく、1.2以上1.8以下でもよく、1.2以上1.5以下でもよく、1.5以上4以下でもよく、1.5以上3以下でもよく、1.5以上2以下でもよく、1.5以上1.8以下でもよく、1.8以上4以下でもよく、1.8以上3以下でもよく、1.8以上2以下でもよく、2以上4以下でもよく、2以上3以下でもよく、3以上4以下でもよい。
【0050】
有機デバイス100について、より詳細に説明する。
図3は、
図2に示す有機デバイス100のA-A線に沿った断面図である。
図4は、
図2に示す有機デバイス100のB-B線に沿った断面図である。有機デバイス100は、本実施の形態による後述の蒸着マスク装置10を用いることによって基板110に形成された有機層130を備えている。1つの有機デバイス100は、1つの表示領域を含んでいてもよい。
【0051】
図3に示すように、有機デバイス100は、基板110と、基板110上に位置する素子115と、を備える。素子115は、第1電極120と、第1電極120上に位置する有機層130と、有機層130上に位置する第2電極140と、を含んでいてもよい。
【0052】
有機デバイス100は、平面視において隣り合う2つの第1電極120の間に位置する絶縁層160を備えていてもよい。絶縁層160は、例えばポリイミドを含んでいてもよい。絶縁層160は、第1電極120の端部に重なっていてもよい。
【0053】
有機デバイス100は、アクティブマトリクス型であってもよい。例えば、図示はしないが、有機デバイス100は、複数の素子115のそれぞれに電気的に接続されているスイッチを備えていてもよい。スイッチは、例えばトランジスタであってもよい。スイッチは、対応する素子115に対する電圧又は電流のON/OFFを制御してもよい。
【0054】
基板110は、素子115が位置する第1面110aと、第1面110aとは反対側に位置する第2面110bと、を含んでいてもよい。基板110は、絶縁性を有する板状の部材であってもよい。基板110は、可視光を透過させる光透過性を有していてもよい。例えば、基板110は、ガラス基板であってもよい。
【0055】
基板110が、所定の光透過性を有する場合、基板110の光透過性は、有機層130からの発光を透過させて表示できる光透過性であってもよい。例えば、可視光領域における基板110の透過率が70%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよい。基板110の透過率は、JIS K7361-1に準ずるプラスチック-透明材料の全光透過率の試験方法によって測定されてもよい。
【0056】
基板110は、可撓性を有していてもよく、又は可撓性を有していなくてもよい。有機デバイス100の用途に応じて基板110の材料は選択されてもよい。
【0057】
基板110の厚みは、基板110に用いられる材料や有機デバイス100の用途等に応じて適宜選択されてもよい。例えば、基板110の厚みは、0.005mm以上であってもよい。基板110の厚みは、5mm以下であってもよい。
【0058】
素子115は、第1電極120と第2電極140との間に電圧が印加されることによって、何らかの機能を実現するように構成されていてもよい。又は、素子115は、第1電極120と第2電極140との間に電流が流れることによって、何らかの機能を実現するよう構成されていてもよい。例えば、素子115が、有機デバイス100の画素である場合、素子115は、映像を構成する光を放出してもよい。
【0059】
第1電極120は、導電性を有する材料を含む。例えば、第1電極120は、金属、導電性を有する金属酸化物又は、その他の導電性を有する無機材料などを含んでいてもよい。第1電極120は、インジウム・スズ酸化物などの、光透過性及び導電性を有する金属酸化物を含んでいてもよい。第1電極120を構成する材料としては、ITOと称される酸化インジウム錫、IZOと称される参加インジウム亜鉛等を用いてもよい。
【0060】
有機層130は、有機材料を含む。有機層130に通電されると、有機層130は、何らかの機能を発揮できる。通電とは、有機層130に電圧が印加されること、又は有機層130に電流が流れることを意味する。有機層130には、通電によって光を放出する発光層、又は通電によって光の透過率若しくは屈折率が変化する層等であってもよい。有機層130は、有機半導体材料を含んでいてもよい。
【0061】
図2及び
図3に示すように、有機層130は、第1有機層130Aと、第2有機層130Bと、第3有機層130Cと、を含んでいてもよい。有機層130A、130B、130Cは、本実施の形態による蒸着マスク20を用いる蒸着法によって形成されてもよい。例えば、第1有機層130Aは、赤色発光層であってもよい。例えば、第2有機層130Bは、青色発光層であってもよい。例えば、第3有機層130Cは、緑色発光層であってもよい。例えば、第1有機層130Aの形成に用いられる蒸着マスク20の貫通孔25は、第1有機層130Aのパターンに対応するように形成されていてもよい。第2有機層130Bの形成に用いられる蒸着マスク20の貫通孔25は、第2有機層130Bのパターンに対応するように形成されていてもよい。第3有機層130Cの形成に用いられる蒸着マスク20の貫通孔25は、第3有機層130Cのパターンに対応するように形成され炊いてもよい。以下の説明において、有機層の構成のうち、第1有機層130A、第2有機層130B及び第3有機層130Cに共通する構成を説明する場合には、「有機層130」という用語及び符号を用いる。
【0062】
上述した第1素子115Aは、第1電極120、第1有機層130A及び第2電極140を含んでいてもよい。第2素子115Bは、第1電極120、第2有機層130B及び第2電極140を含んでいてもよい。第3素子115Cは、第1電極120、第3有機層130C及び第2電極140を含んでいてもよい。第1素子115A、第2素子115B及び第3素子115Cはそれぞれ、サブ画素である。第1素子115A、第2素子115B及び第3素子115Cの組み合わせによって、1つの画素が構成されてもよい。
【0063】
以下の説明において、素子の構成のうち、第1素子115A、第2素子115B及び第3素子115Cに共通する構成を説明する場合には、「素子115」という用語及び符号を用いる。
図2のような平面図において、素子115の輪郭は、平面視において第1電極120及び第2電極140と重なる有機層130の輪郭であってもよい。有機デバイス100が絶縁層160を備える場合、素子115の輪郭は平面視において第1電極120及び第2電極140と重なるとともに絶縁層160と重ならない有機層130の輪郭であってもよい。
【0064】
第1電極120と第2電極140との間に電圧を印加すると、両者の間に位置する有機層130が駆動される。有機層130が発光層である場合、有機層130から光が放出され、光が第2電極140側又は第1電極120側から外部へ取り出される。
【0065】
有機層130が、通電によって光を放出する発光層である場合、有機層130は、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層などを含んでいてもよい。
【0066】
例えば、第1電極120が陽極である場合、有機層130は、発光層と第1電極120との間に正孔注入輸送層を有していてもよい。正孔注入輸送層は、正孔注入機能を有する正孔注入層であってもよい。あるいは、正孔注入輸送層は、正孔輸送機能を有する正孔輸送層であってもよく、又は正孔注入機能及び正孔輸送機能の両機能を有していてもよい。正孔注入輸送層は、正孔注入層及び正孔輸送層が積層された構成を有していてもよい。
【0067】
第2電極140が陰極である場合、有機層130は、発光層と第2電極140との間に電子注入輸送層を有していてもよい。電子注入輸送層は、電子注入機能を有する電子注入層であってもよい。あるいは、電子注入輸送層は、電子輸送機能を有する電子輸送層であってもよく、又は電子注入機能及び電子輸送機能の両機能を有していてもよい。電子注入輸送層は、電子注入層及び電子輸送層が積層された構成を有していてもよい。
【0068】
有機層130が発光層である場合、有機層130は、発光材料を含む。発光層は、レベリング性を良くする添加剤を含んでいてもよい。発光材料には、公知の材料を用いてもよい。例えば、発光材料には、色素系材料、金属錯体系材料、又は高分子系材料を用いてもよい。
【0069】
有機層130の厚みは、電子と正孔とが再結合して発光できる厚みであれば任意である。有機層130の厚みは、例えば1nm以上であってもよい、有機層130の厚みは、例えば500nm以下であってもよい。
【0070】
第2電極140は、金属などの、導電性を有する材料を含む。第2電極140は、有機層130の上に形成されてもよい。第2電極140を構成する材料には、白金、金、銀、銅、鉄、錫、クロム、アルミニウム、インジウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、クロム、又は炭素等が用いられてもよい。これらの導電性材料は、単独で用いられてもよく、又は2種類以上の材料を組み合わせて用いられてもよい。2種類以上の材料を用いる場合には、各材料からなる層が積層されてもよい。導電性材料に、2種類以上の材料を含む合金が用いられてもよい。例えば、導電性材料に、MgAg等のマグネシウム合金、AlLi、AlCa、AlMg等のアルミニウム合金、アルカリ金属類又はアルカリ土類金属類の合金等が用いられてもよい。第2電極140を構成する材料としては、ITOと称される酸化インジウム錫、IZOと称される参加インジウム亜鉛等を用いてもよい。
【0071】
図3及び
図4に示すように、第2電極140は、第1層140A及び第2層140Bを含んでいてもよい。第1層140A及び第2層140Bはそれぞれ、パターン状に形成されている。第1層140A及び第2層140Bは、蒸着層の一例であってもよい。第1層140A及び第2層140Bは、互いに異なる蒸着マスク20を用いる蒸着法によって形成される層であってもよい。より具体的には、第1層140Aの形成に用いられる蒸着マスク20の貫通孔25は、第1層140Aのパターンに対応するように形成されていてもよい。第2層140Bの形成に用いられる蒸着マスク20の貫通孔25は、第2層140Bのパターンに対応するように形成されていてもよい。第2電極140を、パターン状の第1層140A及び第2層140Bで構成することにより、設計の自由度を向上させることができる。例えば、光透過度を向上させる位置には、第2電極140が配置されることを容易に回避することができる。このため、有機デバイス100の光透過度を向上させることができる。
【0072】
第1層140A及び第2層140Bは、第1有機層130A、第2有機層130B及び第3有機層130Cを含む少なくとも1つの有機層130と平面視で重なるように広がっていてもよい。
図3及び
図4に示すように、第1層140Aの端部と第2層140Bの端部とが部分的に重なっていてもよい。第1層140Aと第2層140Bとが重なっている領域のことを、電極重なり領域145とも称する。第1層140Aと第2層140Bとが重なることにより、第1層140Aと第2層140Bとを電気的に接続することができる。
【0073】
有機デバイス100は、有機層130等の基板110上の要素を覆う封止層(図示せず)を備えていてもよい。封止層は、有機デバイス100の外部の水蒸気等が有機デバイス100の内部に入ることを抑制できる。これにより、有機層130等が水分に起因して劣化することを抑制できる。封止層は、例えば有機材料で構成された層を含んでいてもよい。有機材料は、封止層で光の屈折が生じることを抑制するために、有機層130と等しい屈折率を有していてもよく、又は有機層130に近い屈折率を有していてもよい。有機材料は、例えば、窒化シリコン(SiN)等の無機材料で封止されていてもよい。この場合、封止層は、有機材料の層と無機材料の層とが積層された積層構造を有していてもよい。第2電極140と封止層との間には、平坦化層(図示せず)が介在されていてもよい。平坦化層は、基板110上の要素の凹凸に入り込むことにより、封止層の密着性を向上させるための層であってもよい。
【0074】
平面視における有機層130の配置は、高倍率のデジタルマイクロスコープを用いて有機デバイス100を観察することによって検出される。検出結果に基づいて、上述の占有率、面積、寸法、間隔などを算出できる。有機デバイス100がカバーガラスなどのカバーを備える場合、カバーを取り除いた後、有機層130を観察してもよい。カバーは、剥がすことによって取り除かれる。
【0075】
有機デバイス100の各構成要素の厚みは、白色干渉計を用いて有機デバイス100の断面の画像を観察することによって測定してもよい。基板110の厚み、有機層130の厚み及び第2電極140の厚みの測定には、株式会社菱化システム製の白色干渉計「VertScan(登録商標)、R6500H-A300」が用いられる。
【0076】
上述の有機デバイス100の有機層130及び第2電極140を蒸着法によって形成する方法について説明する。
【0077】
まず、対象物としての基板に蒸着材料を蒸着させる蒸着処理を実施する蒸着装置80について、
図5を参照して説明する。
図5は、蒸着装置80を示す図である。
図5に示すように、蒸着装置80は、ケーシング81と、排気部82と、蒸着源83と、ヒータ84と、回転駆動機構85と、蒸着マスク装置10と、を備えていてもよい。
図5に示す蒸着装置80は、回転式の蒸着装置の一例である。
【0078】
ケーシング81は、蒸着処理を実施するための処理空間81aを画定していてもよい。ケーシング81には、排気部82が接続されていてもよい。この場合、排気部82が処理空間81a内の気体を排出することにより、処理空間81aの圧力が低下し、処理空間81aが真空雰囲気に維持される。
【0079】
蒸着源83は、ケーシング81内に位置している。蒸着源83は、蒸着材料90を蒸発させるように構成されており、例えば、るつぼとして構成されていてもよい。蒸着源83に収容される蒸着材料90の例としては、有機発光材料又は無機材料などが挙げられる。ヒータ84は、蒸着源83に収容された蒸着材料90を加熱するように構成されている。蒸着源83は、処理空間81a内で移動しないようにケーシング81に固定されていてもよい。
【0080】
ケーシング81に、回転駆動機構85が取り付けられていてもよい。回転駆動機構85は、蒸着源83に対して基板110及び蒸着マスク装置10を回転させるように構成されていてもよい。
図5に示す例では、回転駆動機構85は、蒸着源83の上方に位置している。回転駆動機構85は、基板110及び蒸着マスク装置10を保持するホルダー85aと、ホルダー85aをケーシング81に対して回転する回転駆動部85bと、ホルダー85aと回転駆動部85bとを連結する回転軸85cと、を含んでいてもよい。ホルダー85aは、後述する磁石87を介して、基板110及び蒸着マスク装置10を保持してもよい。
【0081】
蒸着マスク装置10は、ケーシング81の内部に位置しており、蒸着源83と対向している。蒸着マスク装置10は、蒸着時には、上述したホルダー85aに保持されてもよい。
図5に示す例では、蒸着マスク装置10は、蒸着源83の上方に位置している。本実施の形態においては、基板110のうち蒸着材料90を蒸着すべき領域は、蒸着源83で蒸発した蒸着材料90が到達し得る領域よりも大きくなっている。蒸着源83の中心軸線83aと、蒸着マスク装置10の回転の中心軸線10aとはずれていてもよい。蒸着時には、上述した回転駆動部85bを駆動することにより、基板110及び蒸着マスク装置10が中心軸線10aを中心に回転する。このようにして、基板110のうち蒸着材料90を蒸着すべき領域の全体に、蒸着材料90が到達し得る。
【0082】
蒸着装置80は、
図5に示すように、冷却板86を備えていてもよい。冷却板86は、蒸着マスク20とは反対側の基板110の第2面110bに位置する。冷却板86は、内部に冷媒を循環させるための流路を有していてもよい。蒸着工程では、冷却板86で基板110を冷却することにより、基板110の温度上昇を抑制できる。蒸着マスク装置10の詳細は、後述する。
【0083】
蒸着装置80は、磁石87を備えていてもよい。磁石87は、冷却板86の蒸着マスク20とは反対側の面に位置する。磁石87は、上述したホルダー85aに保持される。磁石87の磁力によって蒸着マスク装置10を基板110に引き寄せられ、蒸着マスク装置10は基板110とともにホルダー85aに保持される。蒸着マスク20は基板110に密着される。このことにより、基板110に形成される後述の有機層130の寸法精度や位置精度を向上できる。磁石87の代わりに静電気力を利用する静電チャックを用いて、蒸着マスク20を基板110に密着させてもよい。
【0084】
次に、蒸着マスク装置10について
図5及び
図6を用いて説明する。
図6は、蒸着マスク装置の平面図である。
図5及び
図6に示すように、蒸着マスク装置10は、フレーム15と、蒸着マスク20と、を備えていてもよい。蒸着マスク20は、フレーム15に固定されていてもよい。フレーム15は、蒸着マスク20が撓むことを抑制するように、蒸着マスク20を、マスク第2方向D2に引っ張った状態で支持する。
【0085】
蒸着マスク装置10は、上述したように蒸着装置80内に配置される。この場合、蒸着マスク20は、
図5に示すように、蒸着材料90を付着させる対象物である基板110の第1面110aに接する。蒸着マスク20は、蒸着源83から飛来した蒸着材料90を通過させる複数の貫通孔25を有する。以下の説明において、蒸着マスク20は、第1面20aと、第2面20bと、を含んでいてもよい。第1面20aは、基板110の側に位置する。第2面20bは、第1面20aとは反対側に位置する。
【0086】
蒸着マスク装置10は、
図6に示すように、マスク第1方向D1に並ぶ複数の蒸着マスク20を備えていてもよい。
図6は、蒸着マスク装置10を蒸着マスク20の第1面20aの側から示す平面図である。本実施の形態において、各蒸着マスク20は、マスク第1方向D1に直交するマスク第2方向D2に延びる矩形状の形状を有している。各蒸着マスク20のマスク第2方向D2における両端部が、例えばスポット溶接によって、フレーム15に固定されていてもよい。
【0087】
フレーム15は、第1面15aと、第2面15bと、を含んでいる。第1面15aは、蒸着マスク20の側に位置する。第2面15bは、第1面15aとは反対側に位置する。
【0088】
フレーム15は、フレーム開口16を含んでいてもよい。フレーム15は、平面視で矩形枠状に形成されている。フレーム15の内側にフレーム開口16が形成されている。フレーム開口16は、第1面15aから第2面15bに延びており、フレーム15を貫通している。平面視とは、フレーム15の第1面15a又は蒸着マスク20の第2面20bの法線方向Nに沿って蒸着マスク装置10または蒸着マスク20等を見ることを意味する。
【0089】
次に、蒸着マスク20について、
図6乃至
図15を用いて説明する。
図7は、蒸着マスク装置10の蒸着マスク20を示す平面図であり、
図8は、蒸着マスク20の第2面20bにおけるマスク第1領域M1を示す部分拡大平面図である。
図9は、
図8に示すC-C線断面図であり、
図10は、
図8に示すD-D線断面図であり、
図11は、
図8に示すE-E線断面図である。
図12は、蒸着マスク20の第2面20bにおけるマスク第2領域M2を示す部分拡大平面図であり、
図13は、
図12に示すF-F線断面図である。
【0090】
図6に示すように、蒸着マスク20は、マスク第2方向D2を長手方向とするように矩形状に形成されていてもよい。蒸着マスク20は、一対の耳部21A、21Bと、中間部22と、を有していてもよい。一対の耳部21A、21Bは、フレーム15に固定された部分であってもよい。耳部21Aは、マスク第2方向D2における蒸着マスク20の第1端であってもよい。耳部21Bは、マスク第2方向D2における蒸着マスク20の第2端であってもよい。中間部22は、一対の耳部21A、21Bの間に位置する。
【0091】
蒸着マスク20の中間部22は、少なくとも1つの有効領域23と、周囲領域24と、を含んでいてもよい。周囲領域24は、有効領域23の周囲に位置する。
図6に示す例において、中間部22は、5つの有効領域23を含む。周囲領域24は、平面視で有効領域23を囲む。
【0092】
1つの有効領域23は、有機デバイス100の1つの表示領域に対応してもよい。
図6に示す各蒸着マスク20は、複数の有効領域23を含んでいるため、表示領域の多面付蒸着が可能である。より具体的には、
図6に示す1つの蒸着マスク20から、5つの有機デバイス100の作製が可能である。
【0093】
有効領域23は、例えば、平面視で略矩形状の輪郭を有していてもよい。
図6に示す有効領域23は、マスク第2方向D2を長手方向とする略矩形状の輪郭を有している。図示はしないが、有効領域23は、有機デバイス100の表示領域の形状に応じて、様々な形状の輪郭を有していてもよい。例えば、有効領域23は、円形状の輪郭を有していてもよい。
【0094】
蒸着マスク20は、第1面20aと、第2面20bと、複数の貫通孔25と、を含んでいてもよい。第1面20aは、フレーム15とは反対側に位置していてもよい。第1面20aは、蒸着時には、基板110の側に位置していてもよい。第2面20bは、第1面20aとは反対側に位置していてもよい。第2面20bは、蒸着時にフレーム15の側に位置していてもよい。
【0095】
貫通孔25は、第1面20aから第2面20bに延びており、蒸着マスク20を貫通している。蒸着マスク装置10の形態では、貫通孔25は、平面視において、フレーム開口16に重なる。貫通孔25は、上述した一対の耳部21A、21Bの間に位置していてもよい。貫通孔25は、有効領域23に位置していてもよい。貫通孔25は、マスク第1方向D1及びマスク第2方向D2に並んでいてもよい。
【0096】
図7に示すように、有効領域23に、複数の貫通孔25で構成された貫通孔群26が位置していてもよい。1つの有効領域23は、1つの貫通孔群26で構成されていてもよい。有効領域23は、貫通孔群26が占める領域であってもよい。貫通孔群26は、平面視でフレーム15のフレーム開口16に重なっていてもよい。貫通孔群26は、2つ以上の貫通孔25が群を形成するように構成されていてもよい。貫通孔群26とは、規則的に配列された複数の貫通孔25の集合体を意味する用語として用いている。1つの貫通孔群26を構成する外縁の貫通孔25は、同様に規則的に配列されている複数の貫通孔25のうち最も外側に位置する貫通孔25である。1つの貫通孔群26における外縁の貫通孔25の外側には、同様に規則的に配列されて蒸着材料90の通過を意図する貫通孔25は存在していなくてもよい。規則的な配列の例として、例えば、後述するように、貫通孔25は、並列配列されていてもよい。貫通孔群26は、有効領域23と同様に、平面視で略矩形状の輪郭を有していてもよい。
【0097】
図7に示すように、蒸着マスク20は、マスク第1方向D1及びマスク第1方向D1に交差するマスク第2方向D2を有する。マスク第1方向D1は、マスク第2方向D2に直交していてもよい。マスク第1方向D1が素子第1方向G1に沿っていてもよく、マスク第2方向D2が素子第2方向G2に沿っていてもよい。
【0098】
図7に示すように、第1面20aの法線方向に沿って蒸着マスク20を見た場合、蒸着マスク20の有効領域23は、マスク第1領域M1及びマスク第2領域M2を含んでいてもよい。マスク第1領域M1は、有機デバイス100の第1表示領域101に対応している。マスク第2領域M2は、有機デバイス100の第2表示領域102に対応している。
【0099】
マスク第1領域M1は、貫通孔25の面積の比率を示す第1開口率を有する。第1開口率は、マスク第1領域M1に位置する貫通孔25の面積の合計を、マスク第1領域M1の面積で割ることによって算出される。マスク第2領域M2は、貫通孔25の面積の比率を示す第2開口率を有する。第2開口率は、マスク第2領域M2に位置する貫通孔25の面積の合計を、マスク第2領域M2の面積で割ることによって算出される。第2開口率は、第1開口率よりも小さくてもよい。
【0100】
マスク第1領域M1の面積は、第2面20bにおいて、有効領域23又は貫通孔群26の最も外側に位置する貫通孔25に外側から接する接線TL1(
図8参照)によって画定される。この接線TL1は、第2面20bにおける第2凹部35の縁に接している。マスク第1領域M1の面積は、マスク第2領域M2の面積を含まない。マスク第2領域M2の面積は、マスク第2領域M2に接する貫通孔25に内側から接する接線TL2(
図12参照)によって画定される。貫通孔25の内側とは、マスク第2領域M2を中心としてみた場合の内側を意味している。接線TL2は、マスク第2領域M2の外縁を画定する線である。この接線TL2は、第2面20bにおける第2凹部35の縁に接している。
【0101】
第1開口率および第2開口率を算出するための貫通孔25の面積は、第1面20aにおける貫通孔25の面積である。
【0102】
第1開口率に対する第2開口率の比は、例えば、0.2以上でもよく、0.3以上でもよく、0.4以上でもよい。第1開口率に対する第2開口率の比は、例えば、0.6以下でもよく、0.7以下でもよく、0.8以下でもよい。第1開口率に対する第2開口率の比の範囲は、0.2、0.3及び0.4からなる第1グループ、及び/又は、0.6、0.7及び0.8からなる第2グループによって定められてもよい。第1開口率に対する第2開口率の比の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。第1開口率に対する第2開口率の比の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。第1開口率に対する第2開口率の比の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、0.2以上0.8以下でもよく、0.2以上0.7以下でもよく、0.2以上0.6以下でもよく、0.2以上0.4以下でもよく、0.2以上0.3以下でもよく、0.3以上0.8以下でもよく、0.3以上0.7以下でもよく、0.3以上0.6以下でもよく、0.3以上0.4以下でもよく、0.4以上0.8以下でもよく、0.4以上0.7以下でもよく、0.4以上0.6以下でもよく、0.6以上0.8以下でもよく、0.6以上0.7以下でもよく、0.7以上0.8以下でもよい。
【0103】
図8及び
図9に示すように、マスク第1領域M1において、貫通孔25は、第1凹部30と、第2凹部35と、稜線41と、を含んでいてもよい。第2凹部35は、第1凹部30に連通している。このことにより、貫通孔25は第1面20aから第2面20bに貫通している。第1凹部30及び第2凹部35はそれぞれ、蒸着マスク20の母材となる長尺金属板64を両面からエッチングすることによって形成される。
【0104】
第1凹部30は、第1面20aに位置していてもよい。第1凹部30は、第1壁面31を含む。第1面20aに沿った貫通孔25の断面開口は、後述する稜線41から第1面20aに向かって徐々に大きくなっていてもよい。第1壁面31は、稜線41から第1面20aに向かって、貫通孔25の中心軸線CLから遠ざかるように形成されていてもよい。第1壁面31は、湾曲状に形成されていてもよい。第1壁面31は、第1凹部30が外側に膨らむように湾曲していてもよい。
【0105】
第2凹部35は、第2面20bに位置していてもよい。第2凹部35は、第2壁面36を含む。第2面20bに沿った貫通孔25の断面開口は、稜線41から第2面20bに向かって徐々に大きくなっていてもよい。第2壁面36は、稜線41から第2面20bに向かって、貫通孔25の中心軸線CLから遠ざかるように形成されていてもよい。第2壁面32は、湾曲状に形成されていてもよい。第2壁面32は、第2凹部35が外側に膨らむように湾曲していてもよい。
【0106】
第2面20bにおける第2凹部35の断面開口は、第1面20aにおける第1凹部30の断面開口よりも大きくなっていてもよい。
【0107】
稜線41は、第1凹部30の第1壁面31と、第2凹部35の第2壁面36とに接続されていてもよい。稜線41は、貫通孔25の内側に突き出していてもよい。稜線41は、貫通孔25の内側に突き出す位置に位置していてもよい。稜線41は、平面視における貫通孔25の周方向に延びていてもよい。稜線41は、第2面20bよりも第1面20aの側に位置していてもよい。第1面20aからの稜線41の高さは、断面高さとも称される。断面高さは、シャドーの影響要因になり得る。稜線41は、蒸着マスク20の平面視において貫通孔25の開口面積が最小になる貫通部42を画成してもよい。
【0108】
図8に示すように、複数の貫通孔25は、並列配列されていてもよい。複数の貫通孔25は、平面視において、マスク第1方向D1に配列されるとともに、マスク第2方向D2に配列されていてもよい。マスク第1領域M1における複数の貫通孔25は、マスク第1方向D1に、配列ピッチC1で配列されていてもよい。マスク第1領域M1における複数の貫通孔25は、マスク第2方向D2に、配列ピッチC2で配列されていてもよい。貫通孔25の配列ピッチC1、C2は、有機デバイス100又は投影装置の画素密度に応じて定められていてもよい。
【0109】
配列ピッチC1は、例えば、20μm以上でもよく、50μm以上でもよく、80μm以上でもよい。配列ピッチC1は、例えば、110μm以下でもよく、140μm以下でもよく、170μm以下でもよい。配列ピッチC1の範囲は、20μm、50μm及び80μmからなる第1グループ、及び/又は、110μm、140μm及び170μmからなる第2グループによって定められてもよい。配列ピッチC1の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。配列ピッチC1の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。配列ピッチC1の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、20μm以上170μm以下でもよく、20μm以上140μm以下でもよく、20μm以上110μm以下でもよく、20μm以上80μm以下でもよく、20μm以上50μm以下でもよく、50μm以上170μm以下でもよく、50μm以上140μm以下でもよく、50μm以上110μm以下でもよく、50μm以上80μm以下でもよく、80μm以上170μm以下でもよく、80μm以上140μm以下でもよく、80μm以上110μm以下でもよく、110μm以上170μm以下でもよく、110μm以上140μm以下でもよく、140μm以上170μm以下でもよい。このような配列ピッチC1の範囲は、150ppi以上1200ppiの表示領域に対応していてもよい。
【0110】
配列ピッチC2は、例えば、20μm以上でもよく、50μm以上でもよく、80μm以上でもよい。配列ピッチC2は、例えば、110μm以下でもよく、140μm以下でもよく、170μm以下でもよい。配列ピッチC2の範囲は、20μm、50μm及び80μmからなる第1グループ、及び/又は、110μm、140μm及び170μmからなる第2グループによって定められてもよい。配列ピッチC2の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。配列ピッチC2の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。配列ピッチC2の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、20μm以上170μm以下でもよく、20μm以上140μm以下でもよく、20μm以上110μm以下でもよく、20μm以上80μm以下でもよく、20μm以上50μm以下でもよく、50μm以上170μm以下でもよく、50μm以上140μm以下でもよく、50μm以上110μm以下でもよく、50μm以上80μm以下でもよく、80μm以上170μm以下でもよく、80μm以上140μm以下でもよく、80μm以上110μm以下でもよく、110μm以上170μm以下でもよく、110μm以上140μm以下でもよく、140μm以上170μm以下でもよい。このような配列ピッチC2の範囲は、150ppi以上1200ppiの表示領域に対応していてもよい。
【0111】
図8に示すように、貫通孔25は、平面視において、略矩形状の輪郭を有していてもよい。この場合、貫通孔25の輪郭のうちの四隅は湾曲していてもよい。
図8においては、貫通孔25は、マスク第2方向D2に沿う長手方向を有していてもよい。貫通孔25の輪郭の形状は、画素の形状に応じて任意に定められてもよい。貫通孔25の輪郭は、例えば、六角形又は八角形などのその他の多角形の形状を有していてもよく、円形状を有していてもよい。また、貫通孔25の輪郭の形状は、複数の形状の組み合わせであってもよい。また、貫通孔25はそれぞれ、互いに異なる輪郭の形状を有していてもよい。貫通孔25が多角形状の輪郭を有する場合、貫通孔25の開口寸法は、多角形において対向する一対の辺の間の間隔としてもよい。
【0112】
図9及び
図10において、蒸着マスク20の第1面20aにおける貫通孔25の開口寸法が、符号S1及びS2で示されている。符号S1は、マスク第1方向D1における貫通孔25の開口寸法であり、符号S2は、マスク第2方向D2における貫通孔25の開口寸法である。S2がS1よりも大きくなっている。しかしながら、このことに限られることはなく、S1がS2よりも大きくてもよい。また、貫通孔25の平面形状は正方形であってもよい。この場合、S1とS2は等しくなる。
【0113】
符号S1は、例えば、10μm以上でもよく、30μm以上でもよく、50μm以上でもよい。符号S1は、例えば、75μm以下でもよく、95μm以下でもよく、115μm以下でもよい。符号S1の範囲は、10μm、30μm及び50μmからなる第1グループ、及び/又は、75μm、95μm及び115μmからなる第2グループによって定められてもよい。符号S1の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。符号S1の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。符号S1の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、10μm以上115μm以下でもよく、10μm以上95μm以下でもよく、10μm以上75μm以下でもよく、10μm以上50μm以下でもよく、10μm以上30μm以下でもよく、30μm以上115μm以下でもよく、30μm以上95μm以下でもよく、30μm以上75μm以下でもよく、30μm以上50μm以下でもよく、50μm以上115μm以下でもよく、50μm以上95μm以下でもよく、50μm以上75μm以下でもよく、75μm以上115μm以下でもよく、75μm以上95μm以下でもよく、95μm以上115μm以下でもよい。
【0114】
符号S2は、例えば、10μm以上でもよく、30μm以上でもよく、50μm以上でもよい。符号S2は、例えば、75μm以下でもよく、95μm以下でもよく、115μm以下でもよい。符号S2の範囲は、10μm、30μm及び50μmからなる第1グループ、及び/又は、75μm、95μm及び115μmからなる第2グループによって定められてもよい。符号S2の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。符号S2の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。符号S2の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、10μm以上115μm以下でもよく、10μm以上95μm以下でもよく、10μm以上75μm以下でもよく、10μm以上50μm以下でもよく、10μm以上30μm以下でもよく、30μm以上115μm以下でもよく、30μm以上95μm以下でもよく、30μm以上75μm以下でもよく、30μm以上50μm以下でもよく、50μm以上115μm以下でもよく、50μm以上95μm以下でもよく、50μm以上75μm以下でもよく、75μm以上115μm以下でもよく、75μm以上95μm以下でもよく、95μm以上115μm以下でもよい。
【0115】
図8~
図11に示すように、隣り合う2つの第1凹部30は、互いに離間していてもよい。マスク第1方向D1及びマスク第2方向D2のいずれにおいても、隣り合う2つの第1凹部30は互いに離間していてもよい。隣り合う第1凹部30の間には、第1面20aが残存していてもよい。平面視における各第1凹部30の周囲に、第1面20aが残存していてもよい。各第1凹部30は、第1面20aに囲まれていてもよい。隣り合う第1凹部30の間に、後述する桟43が位置していてもよい。桟43は、隣り合う貫通孔25の間で、金属材料がエッチングされずに残存している部分である。
図8に示すように、蒸着マスク20は、マスク第1方向D1に沿って延びる複数の桟43と、マスク第2方向D2に沿って延びる複数の桟43と、を含んでいてもよい。
【0116】
マスク第1領域M1において、隣り合う2つの第2凹部35は、互いに接続されていてもよい。より具体的には、
図8及び
図9に示すように、マスク第1方向D1において隣り合う2つの第2凹部35は互いに接続されていてもよい。マスク第1方向D1において隣り合う2つの第2凹部35の間には、第2面20bは残存していなくてもよい。同様に、
図8及び
図10に示すように、マスク第2方向D2において隣り合う2つの第2凹部35は互いに接続されていてもよい。マスク第2方向D2において隣り合う2つの第2凹部35の間には、第2面20bは残存していなくてもよい。
【0117】
図8及び
図11に示すように、マスク第1方向D1及びマスク第2方向D2のいずれにも傾斜するマスク第3方向D3において隣り合う2つの第2凹部35は、互いに離間していてもよい。マスク第3方向D3は、平面視において貫通孔25の対角方向に概略的に相当している。マスク第3方向D3は、
図8において断面E-Eを示す線に沿う方向に相当している。マスク第3方向D3において隣り合う2つの第2凹部35の間には、第2面20bが残存していてもよい。隣り合う2つの第2凹部35の間に位置する桟43は、トップ面44を含んでいてもよい。トップ面44は、第2面20bのうちエッチングされずに残っている部分である。トップ面44が残存するように蒸着マスク20を作製することにより、蒸着マスク20の厚みtを確保でき、蒸着マスク20の機械的強度を向上できる。この場合、例えば搬送中等に蒸着マスク20が変形したり破損したりすることを抑制できる。
【0118】
図8~
図11に示されているように、互いに隣り合う第2凹部35の第2壁面36の間に、上述した桟43が位置している。桟43は、互いに隣り合う第1凹部30の第1壁面31の間の部分から、互いに隣り合う第2凹部35の第2壁面36の間の部分にわたって形成されている。桟43は、互いに隣り合う第2凹部35の第2壁面36を接続する接続面45を含んでいる。平面視で周囲に他の貫通孔25が位置している貫通孔25を構成する第2凹部35は、平面視において、接続面45で囲まれている。1つの有効領域23における外縁の貫通孔25の外側には、桟43は形成されていなくてもよい。
【0119】
図9に示すように、接続面45は、マスク第1方向D1において隣り合う第2凹部35の間に位置する尾根面47を含んでいてもよい。マスク第1方向D1において隣り合う第2凹部35の間に位置する尾根面47は、第2面20bに向かって凸となるように湾曲状に形成されていてもよい。尾根面は、尾根のように形成されていてもよい。
図9に示す符号h1は、マスク第1方向D1において隣り合う第2凹部35の間に位置する尾根面47の高さであって、第1面20aからの高さを示している。この符号h1は、平面視で貫通孔25の中心を通る断面における尾根面47の高さである。当該断面位置からトップ面44に向かって、尾根面47の高さが徐々に増大してもよい。
【0120】
図10に示すように、マスク第2方向D2において隣り合う第2凹部35の間に尾根面47が存在している。マスク第2方向D2において隣り合う第2凹部35の間に位置する尾根面47は、第2面20bに向かって凸となるように湾曲状に形成されていてもよい。
図10に示す符号h2は、マスク第2方向D2において隣り合う第2凹部35の間に位置する尾根面47の高さであって、第1面20aからの高さを示している。尾根面47は、尾根のように形成されていてもよい。この符号h2は、平面視で貫通孔25の中心を通る断面における尾根面47の高さである。当該断面位置から後述するトップ面44に向かって、尾根面47の高さが徐々に増大してもよい。高さh2は、高さh1よりも低くてもよい。
【0121】
図11に示すように、上述のマスク第3方向D3において隣り合う2つの第2凹部35の間に接続面45が存在している。
図11に示す符号h3は、マスク第3方向D3において隣り合う第2凹部35の間に位置する接続面45の高さであって、第1面20aからの高さを示している。高さh3は、上述した高さh1よりも高くてもよく、上述した高さh2よりも高くてもよい。
【0122】
本実施の形態においては、マスク第3方向D3において隣り合う2つの第2凹部35の間に存在する接続面45は、上述したトップ面44を含んでいてもよい。トップ面44は、第2面20bのうちエッチングされずに残っている部分であるため、トップ面44は、第2面20bと同じ位置に位置している。トップ面44は、残存している第2面20bを構成している。本実施の形態における高さh3は、蒸着マスク20の厚みtに相当する。
【0123】
本実施の形態においては、高さh3の部分であるトップ面44に、接続面45の最高点46が含まれている。言い換えると、1つの第2凹部35を取り囲む接続面45は、最も第2面20bの側に位置するトップ面44に含まれた最高点46を含んでいる。本実施の形態においては、マスク第1方向D1及びマスク第2方向D2に複数の貫通孔25が並列配列されているため、1つの第2凹部35を取り囲む接続面45は、4つのトップ面44を含んでいる。4つのトップ面44は、第2凹部35に対して上述した対角方向に位置している。4つのトップ面44は、法線方向Nにおいて蒸着マスク20の第2面20bと同じ位置に位置している。トップ面44は、第2面20bと同様に平坦状に形成されていてもよい。接続面45のうちトップ面44以外の部分は、尾根面47として、第2面20bに向かって凸となるように湾曲状に形成されていてもよい。
【0124】
本実施の形態においては、概略的には、蒸着マスク20の第1面20aに対する貫通孔25の壁面の傾斜角度が小さくなっている。貫通孔25の傾斜角度は、上述した桟43及び第2凹部35の第2壁面36によって画定される。このことについて、傾斜定義直線Lを用いて、以下説明する。
【0125】
傾斜定義直線Lは、定義断面において、接続面45と稜線41とに接する直線として定義される。定義断面は、接続面45の任意の点を通るとともに蒸着マスク20の第1面20aに垂直な断面である。定義断面は、平面視において当該点からの距離が最短となる稜線41上の点を通る。
【0126】
図11に示すように、本実施の形態においては、定義断面が最高点46を通るとき、傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度θ3が、25°以上且つ45°以下になっていてもよい。
【0127】
角度θ3は、例えば、25°以上でもよく、28°以上でもよく、30°以上でもよい。角度θ3は、例えば、40°以下でもよく、42°以下でもよく、45°以下でもよい。角度θ3を45°以下とすることにより、貫通孔25の断面高さをシャドーの支配的な影響要因とすることができ、シャドーの影響要因に、トップ面44の大きさ等の他の要因が含まれることを抑制できる。角度θ3の範囲は、25°、28°及び30°からなる第1グループ、及び/又は、40°、42°及び45°からなる第2グループによって定められてもよい。角度θ3の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。角度θ3の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。角度θ3の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、25°以上45°以下でもよく、25°以上42°以下でもよく、25°以上40°以下でもよく、25°以上30°以下でもよく、25°以上28°以下でもよく、28°以上45°以下でもよく、28°以上42°以下でもよく、28°以上40°以下でもよく、28°以上30°以下でもよく、30°以上45°以下でもよく、30°以上42°以下でもよく、30°以上40°以下でもよく、40°以上45°以下でもよく、40°以上42°以下でもよく、42°以上45°以下でもよい。
【0128】
図8には、桟43のトップ面44に位置する最高点46を通る定義断面の一例がE-E線として示されている。E-E線は、上述したマスク第3方向D3に沿っている。E-E線は、貫通孔25の中心を通っていなくてもよい。E-E線で示される定義断面は、トップ面44の任意の点を通り、当該点から稜線41までの平面距離が最短となる稜線41上の点を通っている。
図8においては、定義断面は直線として示されており、この定義断面において定義される傾斜定義直線Lと重なっている。
【0129】
本実施の形態においては、接続面45の最高点46がトップ面44に位置している。トップ面44は、法線方向Nにおいて第2面20bと同じ位置に位置している。トップ面44は、点ではなく、2次元的な広がりを持つ平面領域を有している。この場合、最高点46は、平面視においてトップ面44のうち稜線41に最も近い点としてもよい。この場合、傾斜定義直線Lも、最高点46を通ってもよい。
【0130】
図8には、マスク第1方向D1に沿う定義断面をC-C線で示している。C-C線は、貫通孔25の中心を通っている。
図9には、
図8に示すC-C線に沿う定義断面が示されている。この定義断面において、接続面45を構成する尾根面47と稜線41とに接する傾斜定義直線Lが示されている。この傾斜定義直線Lが延びる方向と、第1面20aとがなす角度が、符号θ1で示されている。この角度θ1は、上述した角度θ3と同様に25°以上且つ45°以下であってもよい。
【0131】
同様に、
図8には、マスク第2方向D2に沿う定義断面をD-D線で示している。D-D線は、貫通孔25の中心を通っている。
図10には、
図8に示すD-D線に沿う定義断面が示されている。この定義断面において、接続面45を構成する尾根面47と稜線41とに接する傾斜定義直線Lが示されている。この傾斜定義直線Lが延びる方向と、第1面20aとがなす角度が、符号θ2で示されている。この角度θ2は、上述した角度θ3と同様に、25°以上且つ45°以下であってもよい。
【0132】
上述したように、1つの第2凹部35を取り囲む接続面45は、4つのトップ面44を含んでいる。4つのトップ面44のうち対応するトップ面44に位置する最高点46を通る4つの定義断面が定義され得る。4つの定義断面のうちの少なくとも1つの定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度θ3が、45°以下になっていてもよい。例えば、4つの定義断面のうちの1つの定義断面における傾斜定義直線Lのみと第1面20aとがなす角度θ3が、25°以上且つ45°以下であってもよい。この場合、残りの3つの定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度θ3は、45°以下でなくてもよい。あるいは、例えば、4つの定義断面のうちの2つ又は3つの定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度θ3が、45°以下であってもよい。この場合、残りの定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度θ3は、45°以下でなくてもよい。
【0133】
本実施の形態においては、4つの定義断面の各々における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度θが、25°以上且つ45°以下になっていてもよい。この場合、接続面45のうちトップ面44以外の任意の点を通る定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度も、25°以上且つ45°以下になっていてもよい。言い換えると、接続面45のうちの任意の点を通る定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度が、25°以上且つ45°以下になっていてもよい。例えば、
図9に示す定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度θ1が、45°以下になっていてもよい。例えば、
図10に示す定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度θ2が、45°以下になっていてもよい。角度θ1は、角度θ3よりも小さくてもよい。角度θ2は、角度θ1よりも小さくてもよい。
【0134】
マスク第2領域M2について、
図12及び
図13を用いて説明する。
【0135】
マスク第2領域M2においても、マスク第1領域M1と同様にして、複数の貫通孔25が形成されている。マスク第2領域M2における複数の貫通孔25は、並列配列されていてもよい。マスク第2領域M2における複数の貫通孔25は、マスク第1方向D1に、配列ピッチC3で配列されていてもよい。配列ピッチC3は、
図8に示す配列ピッチC1よりも大きくてもよい。マスク第2領域M2における複数の貫通孔25は、マスク第2方向D2に、配列ピッチC4で配列されていてもよい。配列ピッチC4は、
図8に示す配列ピッチC2よりも大きくてもよい。貫通孔25の配列ピッチC3、C4は、第2表示領域102の機能に応じて定められていてもよい。
【0136】
配列ピッチC3は、例えば、35μm以上でもよく、70μm以上でもよく、100μm以上でもよい。配列ピッチC3は、例えば、240μm以下でもよく、270μm以下でもよく、300μm以下でもよい。配列ピッチC3の範囲は、35μm、70μm及び100μmからなる第1グループ、及び/又は、240μm、270μm及び300μmからなる第2グループによって定められてもよい。配列ピッチC3の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。配列ピッチC3の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。配列ピッチC3の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、35μm以上300μm以下でもよく、35μm以上270μm以下でもよく、35μm以上240μm以下でもよく、35μm以上100μm以下でもよく、35μm以上70μm以下でもよく、70μm以上300μm以下でもよく、70μm以上270μm以下でもよく、70μm以上240μm以下でもよく、70μm以上100μm以下でもよく、100μm以上300μm以下でもよく、100μm以上270μm以下でもよく、100μm以上240μm以下でもよく、240μm以上300μm以下でもよく、240μm以上270μm以下でもよく、270μm以上300μm以下でもよい。
【0137】
配列ピッチC4は、例えば、35μm以上でもよく、70μm以上でもよく、100μm以上でもよい。配列ピッチC4は、例えば、240μm以下でもよく、270μm以下でもよく、300μm以下でもよい。配列ピッチC4の範囲は、35μm、70μm及び100μmからなる第1グループ、及び/又は、240μm、270μm及び300μmからなる第2グループによって定められてもよい。配列ピッチC4の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。配列ピッチC4の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。配列ピッチC4の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、35μm以上300μm以下でもよく、35μm以上270μm以下でもよく、35μm以上240μm以下でもよく、35μm以上100μm以下でもよく、35μm以上70μm以下でもよく、70μm以上300μm以下でもよく、70μm以上270μm以下でもよく、70μm以上240μm以下でもよく、70μm以上100μm以下でもよく、100μm以上300μm以下でもよく、100μm以上270μm以下でもよく、100μm以上240μm以下でもよく、240μm以上300μm以下でもよく、240μm以上270μm以下でもよく、270μm以上300μm以下でもよい。
【0138】
マスク第2領域M2において、隣り合う2つの第2凹部35は、互いに離間していてもよい。より具体的には、
図12及び
図13に示すように、マスク第1方向D1において隣り合う2つの第2凹部35は互いに離間していてもよい。マスク第1方向D1において隣り合う2つの第2凹部35の間には、第2面20bは残存していてもよい。同様に、マスク第2方向D2において隣り合う2つの第2凹部35は互いに離間していてもよい。マスク第2方向D2において隣り合う2つの第2凹部35の間には、第2面20bは残存していてもよい。同様に、上述したマスク第3方向D3において隣り合う2つの第2凹部35は互いに離間していてもよい。マスク第3方向D3において隣り合う2つの第2凹部35の間には、第2面20bは残存していてもよい。マスク第2領域M2においては、平面視における各第2凹部35の周囲に、第2面20bが残存していてもよく、第2凹部35は、第2面20bに囲まれていてもよい。
【0139】
マスク第2領域M2において、隣り合う2つの第2凹部35の間に位置する桟43は、上述したトップ面44を含んでいてもよい。
【0140】
上述のように構成されたマスク第1領域M1は、第2面20bの残存している面積の比率を示す第1面残存率を有する。第1面残存率は、マスク第1領域M1に残存する第2面20bの面積の合計を、上述したマスク第1領域M1の面積で割ることによって算出される。例えば、
図8に示す例では、マスク第1領域M1に残存する第2面20bは、斜線で示されたトップ面44と、マスク第1領域M1の境界付近に形成された部分と、を含んでいる。上述のように構成されたマスク第2領域M2は、第2面20bの残存している面積の比率を示す第2面残存率を有する。第2面残存率は、マスク第2領域M2に残存する第2面20bの面積の合計を、上述したマスク第2領域M2の面積で割ることによって算出される。例えば、
図12に示す例では、マスク第2領域M2に残存する第2面20bは、斜線で示された部分に相当する。第2面残存率は、第1面残存率よりも大きくてもよい。しかしながら、第2面残存率は、第1面残存率と等しくてもよい。
【0141】
第1面残存率に対する第2面残存率の比は、例えば、1.0以上でもよく、2.0以上でもよく、3.0以上でもよい。第1面残存率に対する第2面残存率の比は、例えば、8.0以下でもよく、9.0以下でもよく、10.0以下でもよい。第1面残存率に対する第2面残存率の比の範囲は、1.0、2.0及び3.0からなる第1グループ、及び/又は、8.0、9.0及び10.0からなる第2グループによって定められてもよい。第1面残存率に対する第2面残存率の比の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。第1面残存率に対する第2面残存率の比の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。第1面残存率に対する第2面残存率の比の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、1.0以上10.0以下でもよく、1.0以上9.0以下でもよく、1.0以上8.0以下でもよく、1.0以上3.0以下でもよく、1.0以上2.0以下でもよく、2.0以上10.0以下でもよく、2.0以上9.0以下でもよく、2.0以上8.0以下でもよく、2.0以上3.0以下でもよく、3.0以上10.0以下でもよく、3.0以上9.0以下でもよく、3.0以上8.0以下でもよく、8.0以上10.0以下でもよく、8.0以上9.0以下でもよく、9.0以上10.0以下でもよい。
【0142】
図13に示す定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度θ4が、45°以下になっていてもよい。角度θ4は、25°以上且つ45°以下であってもよい。角度θ4は、角度θ3と等しくてもよい。
【0143】
角度θ1~θ4の技術的意義について説明する。蒸着マスク20を用いて蒸着材料90を基板110に蒸着させる蒸着工程において、蒸着材料90の一部は、蒸着源83から基板110に向かって法線方向Nに沿って飛来する。しかしながら、法線方向Nに対して傾斜した方向に沿って飛来する蒸着材料90も存在し得る。この場合、傾斜した方向に沿って飛来する蒸着材料90の一部は、基板110に到達することなく蒸着マスク20の第2面20b及び貫通孔25の壁面に到達して付着する。貫通孔25においては、第2凹部35の第2壁面36に付着しやすい。このため、基板110に形成される蒸着層の厚みは、貫通孔25の壁面に近いほど薄くなり易い。このような、基板110への蒸着材料90の付着が、貫通孔25の壁面及び蒸着マスク20の第2面20bによって阻害される現象のことを、シャドーと称する。
【0144】
シャドーの発生を抑制するための対策の1つとしては、蒸着マスク20の厚みtを小さくすることが考えられる。このため、蒸着マスク20の機械的強度が確保可能な程度に、厚みtを小さくしてもよい。しかしながら、蒸着マスク20の機械的強度を確保するためには、厚みtを確保しながら、上述の角度θ1~θ4を小さくしてもよい。角度θ1~θ4のうち、
図11に示す角度θ3及び
図13に示す角度θ4が、最も大きくなりやすい。そこで本実施の形態では、シャドーの発生を抑制するために、上述のように、角度θ3及び角度θ4が、45°以下に設定されている。
【0145】
蒸着マスク20の厚みtは、例えば、5μm以上でもよく、8μm以上でもよく、10μm以上でもよく、15μm以上でもよい。蒸着マスク20の厚みtを5μm以上とすることにより、蒸着マスク20の機械的強度を確保でき、蒸着マスク20の損傷及び変形を抑制できる。蒸着マスク20の厚みtは、例えば、20μm以下でもよく、25μm以下でもよく、30μm以下でもよく、35μm以下でもよい。蒸着マスク20の厚みtを35μm以下とすることにより、シャドーの発生を抑制できる。蒸着マスク20の厚みtの範囲は、5μm、8μm、10μm及び15μmからなる第1グループ、及び/又は、20μm、25μm、30μm及び35μmからなる第2グループによって定められてもよい。蒸着マスク20の厚みtの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。蒸着マスク20の厚みtの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。蒸着マスク20の厚みtの範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、5μm以上35μm以下でもよく、5μm以上30μm以下でもよく、5μm以上25μm以下でもよく、5μm以上20μm以下でもよく、5μm以上15μm以下でもよく、5μm以上10μm以下でもよく、5μm以上8μm以下でもよく、8μm以上35μm以下でもよく、8μm以上30μm以下でもよく、8μm以上25μm以下でもよく、8μm以上20μm以下でもよく、8μm以上15μm以下でもよく、8μm以上10μm以下でもよく、10μm以上35μm以下でもよく、10μm以上30μm以下でもよく、10μm以上25μm以下でもよく、10μm以上20μm以下でもよく、10μm以上15μm以下でもよく、15μm以上35μm以下でもよく、15μm以上30μm以下でもよく、15μm以上25μm以下でもよく、15μm以上20μm以下でもよく、20μm以上35μm以下でもよく、20μm以上30μm以下でもよく、20μm以上25μm以下でもよく、25μm以上35μm以下でもよく、25μm以上30μm以下でもよく、30μm以上35μm以下でもよい。なお厚みtは、周囲領域24の厚み、すなわち蒸着マスク20のうち第1凹部30及び第2凹部35が形成されていない部分の厚みである。従って厚みは、蒸着マスク20の厚みtであると言うこともできる。
【0146】
蒸着マスク20の材料としては、例えば、ニッケルを含む鉄合金を用いてもよい。鉄合金は、ニッケルに加えてコバルトを含んでいてもよい。例えば、蒸着マスク20の材料として、ニッケル及びコバルトの含有量が合計で30質量%以上且つ54質量%以下であり、且つコバルトの含有量が0質量%以上且つ6質量%以下である鉄合金を用いてもよい。ニッケルを含む鉄合金、又はニッケル及びコバルトを含む鉄合金の具体例としては、34質量%以上且つ38質量%以下のニッケルを含むインバー材、30質量%以上且つ34質量%以下のニッケルに加えてさらにコバルトを含むスーパーインバー材、又は38質量%以上且つ54質量%以下のニッケルを含む低熱膨張Fe-Ni系めっき合金等を挙げることができる。このような鉄合金を用いることにより、蒸着マスク20の熱膨張係数を低くできる。例えば、基板110としてガラス基板が用いられる場合に、蒸着マスク20の熱膨張係数を、ガラス基板と同等に低くできる。これにより、蒸着工程の際、基板110に形成される有機層130の寸法精度や位置精度が、蒸着マスク20と基板110との間の熱膨張係数の差に起因して低下することを抑制できる。
【0147】
フレーム15を構成する材料としては、上述した蒸着マスク20の材料と同一でもよい。例えば、フレーム15を構成する材料に、ニッケルを含む鉄合金を用いてもよい。
【0148】
次に、上述の蒸着マスク20を製造する方法について説明する。
【0149】
(蒸着マスクの製造方法)
まず、長尺金属板64を用いて蒸着マスク20を製造する方法について、主に
図14~
図22を参照して説明する。以下に説明する蒸着マスク20の製造方法では、
図14に示すように、長尺金属板64が供給され、この長尺金属板64に貫通孔25が形成される。その後、長尺金属板64を切断することによって枚葉状の金属板からなる蒸着マスク20が得られる。
図14には、蒸着マスク20を製造するための製造装置60が示されている。
図14~
図22に示す例では、蒸着マスク20のうちマスク第1領域M1の断面を示しているが、第2領域M2においても同様にして貫通孔25が形成される。
【0150】
より具体的には、蒸着マスク20の製造方法は、金属板準備工程と、第1エッチング工程と、第2エッチング工程と、を含んでいてもよい。金属板準備工程においては、帯状に延びる長尺金属板64が準備されてもよい。第1エッチング工程においては、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング処理が長尺金属板64に実施されてもよい。このことにより、長尺金属板64に第1面64aの側から第1凹部30が形成されてもよい。第2エッチング工程においては、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング処理が長尺金属板64に実施されてもよい。このことにより、長尺金属板64に第2面64bの側から第2凹部35が形成されてもよい。長尺金属板64に形成された第1凹部30と第2凹部35とが互いに連通し、長尺金属板64に貫通孔25が作製されてもよい。以下、各工程の詳細を説明する。
【0151】
まず、金属板準備工程として、長尺金属板64を供給コア61に巻き取った巻き体62が準備されてもよい。そして、エッチング装置70の下流側に位置する駆動ローラー72が回転駆動されることにより、供給コア61の巻き体62から長尺金属板64が巻き出されてもよい。このことにより、
図14に示すように帯状に延びる長尺金属板64がエッチング装置70に供給される。長尺金属板64は、搬送ローラー71によってエッチング装置70に案内されてもよい。エッチング装置70によって、以下に示す各処理が実施されてもよい。
【0152】
金属板準備工程の後、レジスト層形成工程として、
図15に示すように、長尺金属板64の第1面64a上及び第2面64b上にレジスト層65a、65bが形成されてもよい。レジスト層65a、65bは、ネガ型の感光性レジスト材料を含んでいてもよい。レジスト層65a、65bは、アクリル系光硬化性樹脂などの感光性レジスト材料を含む層が形成されたドライフィルムであってもよい。このようなドライフィルムは、長尺金属板64の第1面64a上及び第2面64b上に貼り付けられていてもよい。なお、レジスト層65a、65bは、液体レジストによって形成されていてもよい。この場合、まず、液体レジストが、長尺金属板64の第1面64a上及び第2面64b上にそれぞれ塗布されてもよい。その後、必要に応じて焼成が実施されてもよい。このことにより、レジスト層65a、65bが形成されてもよい。
【0153】
レジスト層形成工程の後、露光工程として、レジスト層65a、65bが露光されてもよい。この場合、まず、
図16に示すように、レジスト層65a、65bに露光マスク66a、66bが位置づけられてもよい。露光マスク66a、66bは、除去したい領域に光を透過させないように構成されてもよい。ネガ型の感光性レジスト材料の代わりに、ポジ型の感光性レジスト材料が用いられてもよい。この場合、露光マスクとして、レジスト層65a、65bのうちの除去したい領域に光を透過させるようにした露光マスクが用いられてもよい。その後、レジスト層65a、65bが露光マスク66a、66bを介して露光されてもよい。
【0154】
露光工程の後、現像工程として、
図17に示すように、レジスト層65a、65bが現像されてもよい。このことにより、
図17に示すように、長尺金属板64の第1面64a上に第1レジスト開口67aがパターン状に形成されてもよい。第1レジスト開口67aは、第1凹部30の第1面20aにおける断面開口に対応する開口形状を有していてもよい。長尺金属板64の第2面64b上に第2レジスト開口67bがパターン状に形成されてもよい。第2レジスト開口67bは、第2凹部35の第2面20bにおける断面開口に対応する開口形状を有していてもよい。
【0155】
露光工程と現像工程との間に、熱処理工程が実施されてもよい。熱処理工程においては、レジスト層65a、65bの硬度を高めるに、レジスト層65a、65bが加熱されてもよい。熱処理工程においては、長尺金属板64に対するレジスト層65a、65bの密着強度を向上させるために、レジスト層65a、65bが加熱されてもよい。熱処理工程は、例えば100℃~400℃の温度範囲の不活性ガスの雰囲気で実施されてもよい。不活性ガスの例としては、アルゴンガス、ヘリウムガス又は窒素ガスなどが挙げられる。
【0156】
現像工程の後、第1エッチング工程として、
図18に示すように、長尺金属板64の第1面64aが、第1エッチング液を用いてエッチングされてもよい。第1エッチング液は、第1レジスト開口67aから露出されている領域をエッチングしてもよい。例えば、第1エッチング液が、搬送される長尺金属板64の第1面64aに対向するノズルから、第1レジスト開口67aを介して長尺金属板64の第1面64aに向けて噴射されてもよい。この結果、
図18に示すように、長尺金属板64のうちの第1レジスト開口67aから露出されている領域で、第1エッチング液による浸食が進む。このことにより、長尺金属板64の第1面64aに多数の第1凹部30が形成される。第1エッチング液としては、例えば塩化第2鉄溶液及び塩酸を含むエッチング液が用いられてもよい。第1エッチング液による浸食は、法線方向Nに進むだけでなく、法線方向Nに垂直な方向にも進んでいく。
【0157】
第1エッチング工程の後、樹脂被覆工程として、
図19に示すように、第1凹部30及び第1レジスト開口67aが樹脂69によって被覆されてもよい。樹脂69は、後述する第2エッチング工程において用いられる第2エッチング液に対する耐性を有していてもよい。
図19に示す例では、形成された第1凹部30及び第1レジスト開口67aが樹脂69で封止されるとともに、レジスト層65aも樹脂69で被覆される。このようにして、長尺金属板64の第1面64aに、樹脂69の層が形成されてもよい。
【0158】
樹脂被覆工程の後、第2エッチング工程として、
図20に示すように、長尺金属板64の第2面64bが、第2エッチング液を用いてエッチングされてもよい。第2エッチング液は、第2レジスト開口67bから露出されている領域をエッチングしてもよい。例えば、第2エッチング液が、搬送される長尺金属板64の第2面64bに対向するノズルから、第2レジスト開口67bを介して長尺金属板64の第2面64bに向けて噴射されてもよい。この結果、
図20に示すように、長尺金属板64のうちの第2レジスト開口67bから露出されている領域で、第2エッチング液による浸食が進む。このことにより、長尺金属板64の第2面64bに多数の第2凹部35が形成されてもよい。第2エッチング工程は、第1凹部30と第2凹部35とが互いに連通するまで実施されてもよい。このことにより、貫通孔25が形成される。第2エッチング液としては、上述の第1エッチング液と同様に、例えば塩化第2鉄溶液及び塩酸を含むエッチング液が用いられてもよい。第2エッチング液による浸食は、長尺金属板64の厚み方向に進むだけでなく、長尺金属板64の厚み方向に垂直な方向にも進んでいく。
【0159】
第2エッチング工程は、マスク第1方向D1及びマスク第2方向D2において隣り合う2つの第2凹部35の第2壁面36が、対応する2つの第2レジスト開口67bの間に位置するブリッジ部68の裏側において互いに接続されるまで実施されてもよい。このことにより、
図21に示すように、マスク第1領域M1において、2つの第2壁面36の間に、第2面20bに向かって凸となる尾根面47が形成されてもよい。しかしながら、上述したマスク第3方向D3において隣り合う2つの第2凹部35の第2壁面36が、ブリッジ部68の裏側において接続される前に、第2エッチング工程を終了してもよい。このことにより、
図11に示すように、接続面45の最高点46を含むトップ面44を残存させることができる。マスク第2領域M2においては、互いに隣り合う第2凹部35の間に、トップ面44が形成される。トップ面44は、第2凹部35の周囲に形成され、第2凹部35は、トップ面44で囲まれる。
【0160】
第2エッチング工程の後、樹脂除去工程として、
図22に示すように、長尺金属板64から樹脂69が除去される。例えばアルカリ系剥離液を用いることによって、樹脂69が除去されてもよい。アルカリ系剥離液が用いられる場合、
図22に示すように、樹脂69と同時にレジスト層65a、65bも除去されてもよい。なお、樹脂69を除去した後、樹脂69を剥離させるための剥離液とは異なる剥離液を用いて、レジスト層65a、65bが除去されてもよい。
【0161】
樹脂69が除去された長尺金属板64は、
図14に示すように、駆動ローラー72が回転駆動されることにより、切断装置73へ搬送される。
【0162】
切断工程として、多数の貫通孔25が形成された長尺金属板64が切断装置73によって切断される。このことにより、長尺金属板64が個片化され、所定の長さ及び所定の幅を有する枚葉状の蒸着マスク20が得られる。この蒸着マスク20は、上述のようにして形成された多数の貫通孔25を有している。
【0163】
以上のようにして、本実施の形態による蒸着マスク20が得られる。
【0164】
本実施の形態による蒸着マスク装置10を製造する場合、上述のようにして得られた蒸着マスク20は、フレーム15に固定されてもよい。より具体的には、蒸着マスク20の第2面20bが、フレーム15の第1面15aに接した状態で、蒸着マスク20がフレーム15に固定される。蒸着マスク20の耳部21A、21Bが、例えばスポット溶接によりフレーム15に固定されてもよい。
【0165】
蒸着マスク20は、フレーム15に固定される際に、マスク第2方向D2の張力が付与されてもよい。蒸着マスク20の張力が付与されることにより、各貫通孔25が、フレーム15に対して位置合わせされ、所望の位置に対して許容範囲内に位置付けられてもよい。
【0166】
以上のようにして、本実施の形態による蒸着マスク装置10が得られる。
【0167】
蒸着マスク装置10を蒸着装置80に取り付けて、有機デバイス100を製造する方法について説明する。
【0168】
有機デバイス100の製造方法は、上述した蒸着マスク装置10を用いて基板110に蒸着材料90を付着させて有機層130を形成する工程を備えていてもよい。より具体的には、本実施の形態による有機デバイス100の製造方法は、準備工程と、位置合わせ工程と、密着工程と、蒸着工程と、裁断工程と、を備えていてもよい。
【0169】
まず、準備工程として、上述した蒸着マスク装置10を準備してもよい。蒸着マスク装置10は、蒸着装置80に取り付けられる。また、上述した第1電極120が形成された基板110を準備してもよい。第1電極120は、例えば、第1電極120を構成する導電層をスパッタリング法などによって基板110に形成した後、フォトリソグラフィー法などによって導電層をパターニングすることによって形成されてもよい。平面視において隣り合う2つの第1電極120の間に位置する絶縁層160が基板110に形成されていてもよい。
【0170】
準備工程の後、位置合わせ工程として、蒸着マスク装置10の蒸着マスク20が基板110に対して位置合わせされる。位置合わせ工程においては、蒸着マスク装置10が、
図1に示す蒸着装置80のケーシング81内で、図示しない支持部材に支持される。蒸着マスク装置10は、回転駆動機構85のホルダー85aには保持されておらず、ホルダー85aよりも下方に位置づけられている。基板110は、ケーシング81内で、図示しない別の支持部材に支持される。基板110は、蒸着マスク装置10とホルダー85aとの間に位置づけられており、基板110と蒸着マスク装置10とは離間している。この状態で、蒸着マスク20の貫通孔25の位置が、基板110に対して位置合わせされてもよい。
【0171】
位置合わせ工程の後、密着工程として、蒸着マスク装置10の蒸着マスク20が基板110に密着してもよい。蒸着マスク20の第1面20aが、基板110の第1面110aに密着してもよい。より具体的には、蒸着マスク装置10を、回転駆動機構85のホルダー85aの側に移動させ、回転駆動機構85のホルダー85aに保持された磁石87に吸着させる。蒸着マスク20と磁石87との間に、基板110が介在されるため、磁石87の磁力によって蒸着マスク装置10が基板110に引き寄せられる。このようにして、蒸着マスク20の第1面20aが、基板110の第1面110aに密着する。
【0172】
なお、後述するように、有機層130A、130B、130C並びに第2電極140の第1層140A及び第2層140Bを形成するために、対応する複数の蒸着マスク20が用いられる。蒸着マスク20を交換する際には、上述した準備工程、位置合わせ工程及び密着工程がそれぞれ実施されてもよい。
【0173】
密着工程の後、蒸着工程として、基板110に、蒸着層が形成される。蒸着工程は、有機層130A、130B、130Cを形成する有機層形成工程と、第2電極140を形成する電極形成工程と、を含んでいてもよい。有機層130A、130B、130Cは、蒸着層の一例であり、第2電極140は、蒸着層の他の一例である。
【0174】
有機層形成工程として、基板110に、蒸着材料90を蒸着させて有機層130A、130B、130Cが形成される。有機層130A、130B、130Cは、対応する蒸着マスク20を用いる蒸着法によって形成されてもよい。蒸着材料90は、フレーム開口16及び蒸着マスク20の貫通孔25を通過することにより、基板110に蒸着する。
【0175】
より具体的には、
図5に示す蒸着装置80の排気部82が駆動されて、ケーシング81内の処理空間81aの圧力を下げて、真空雰囲気が形成される。ヒータ84により蒸着源83が加熱され、蒸着源83に収容された蒸着材料90が蒸発する。蒸発した蒸着材料90は、フレーム15のフレーム開口16及び蒸着マスク20の貫通孔25を通過して、基板110の第1面110aに到達する。第1面110aに到達した蒸着材料90は、第1面110aに形成された正孔輸送層に付着する。蒸着時には、回転駆動部85bが駆動されて、基板110及び蒸着マスク装置10が回転する。このことにより、基板110うち有機層130が形成される領域の全体にわたって、蒸着材料90がパターン状に付着し、所望のパターンの有機層130が形成される。
【0176】
一般に、蒸着装置80においては、蒸着源83から蒸発した蒸着材料90は、基板110に向けて法線方向Nに沿って移動するだけでなく、法線方向Nに対して大きく傾斜した方向にも移動する。蒸着マスク20の厚みtが大きいと、傾斜した方向に移動する蒸着材料90が、トップ面44を含む第2面20b、第2凹部35の第2壁面36又は第1凹部30の第1壁面31に付着し易くなる。この結果、上述したシャドーが発生し、貫通孔25を通過できない蒸着材料90が増える。
図5に示すような回転式の蒸着装置80においては、蒸着源83が移動せず、基板110が回転する。このことにより、蒸着時には、蒸着源83からの基板110の各位置までの距離が変化し、基板110の各位置には、様々な角度で蒸着材料90が飛来し得る。このため、本実施の形態のような蒸着マスク20を用いることにより、シャドーの発生を効果的に抑制できる。
【0177】
これに対して本実施の形態においては、上述のように、蒸着マスク20の第1面20aに対する貫通孔25の壁面の傾斜角度が小さくなっている。より具体的には、上述のように定義された定義断面が、接続面45の最高点46としてのトップ面44の最高点46を通るときに、傾斜定義直線Lと蒸着マスク20の第1面20aとがなす角度θ3およびθ4が、45°以下になっている。このことにより、第2凹部35の第2壁面36のうち、蒸着材料90が付着しやすいトップ面44の近傍においても、蒸着材料90が第2壁面36及び第2面20bに付着することを抑制できる。蒸着源83から飛来する蒸着材料90が、法線方向Nに対して大きく傾斜している場合であっても、蒸着材料90が第2壁面36に付着することを抑制できる。このことにより、法線方向Nに対して大きく傾斜する方向に飛来する蒸着材料90であっても、貫通部42を通過できる。貫通部42を通過した蒸着材料90は、基板110の第1面110aに到達できる。
【0178】
本実施の形態においては、接続面45、より具体的には尾根面47のうちの任意の点を通る定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度が、45°以下になっている。このことにより、平面視において第2凹部35の全周にわたって、第2壁面36及び第2面20bに蒸着材料90が付着することを抑制できる。より具体的には、平面視における任意の方向から飛来する蒸着材料が、第1面20aに対して45°以下の角度をなす方向に飛来する場合であっても、蒸着材料90が第2面20bに付着することを抑制できる。このため、貫通部42を通過できる蒸着材料90を増やすことができる。
【0179】
有機層130A、130B、130Cは、第1電極120と当該第1電極120に隣接する絶縁層160に跨がるように形成される。図示しないが、絶縁層160上において隣り合う有機層130A、130B、130Cは、重なり合っていてもよい。
【0180】
本実施の形態では、有機層130A、130B、130Cは、基板110の所望の正孔輸送層上に形成される。有機層130A、130B、130Cは、対応する蒸着材料90を用いて、別々に形成されてもよい。より具体的には、基板110の各表示領域において、各色の有機層130A、130B、130Cが形成される。例えば、赤色用の有機発光材料、緑色用の有機発光材料及び青色用の有機発光材料が1つの基板110にそれぞれ蒸着する。このようにして、基板110の各表示領域に、有機層130A、130B、130Cが形成される。有機層130A、130B、130Cは、基板110に所望の順番で形成されてもよい。有機層130Aは、有機層130Aのパターンに対応した貫通孔25を有する蒸着マスク20を用いて形成される。他の色の有機層130B、130Cは、各色のパターンに対応した貫通孔25を有する蒸着マスク20を用いて形成される。
【0181】
有機層130A、130B、130Cが形成された後、有機層130A、130B、130C上に、電子輸送層及び電子注入層が形成される。
【0182】
電子輸送層及び電子注入層が形成された後、電極形成工程として、第2電極140が形成される。第2電極140は、各有機層130A、130B、130Cを覆うように形成されてもよい。第2電極140は、有機層130A、130B、130C上において、第1電極120と当該第1電極120に隣接する絶縁層160に跨がるように形成される。
【0183】
より具体的には、対応する蒸着マスク20を用いる蒸着法によって、第2電極140の第1層140Aを形成する工程を実施してもよい。例えば、対応する蒸着マスク20を介して金属などの導電性材料などを有機層130などの上に蒸着させることにより、第1層140Aを形成してもよい。第1層140Aは、有機層130A、130B、130Cと同様に、
図5に示す回転式の蒸着装置80によって形成されてもよい。
【0184】
続いて、他の蒸着マスク20を用いる蒸着法によって第2電極140の第2層140Bを形成する工程を実施してもよい。例えば、対応する蒸着マスク20を介して金属などの導電性材料などを有機層130などの上に蒸着させることにより、第2層140Bを形成してもよい。第2層140Bは、有機層130A、130B、130Cと同様に、
図5に示す回転式の蒸着装置80によって形成されてもよい。
【0185】
このようにして、
図3及び
図4に示すように、第1層140A及び第2層140Bを含む第2電極140が形成される。第1層140A及び第2層140Bを形成する順序は、特に限定されない。例えば、第2層140Bを形成した後に第1層140Aを形成してもよい。
【0186】
電極形成工程の後、第2電極140に、上述した平坦化層及び封止層が形成される。このようにして、基板110に設けられた有機層130A、130B、130C等の要素が、封止層で封止される。
【0187】
平坦化層及び封止層が形成された後、裁断工程として、有機デバイス100の表示領域毎に基板110が裁断されてもよい。この場合、例えば、互いに隣り合う表示領域の間で、ダイシングソーを用いて基板110が裁断される。
【0188】
このようにして、基板110に、各色の有機層130A、130B、130Cが形成された表示領域を有する有機デバイス100が得られる。
【0189】
このように本実施の形態によれば、マスク第1領域M1は、第2面20bが残存している面積の比率を示す第1面残存率を有し、マスク第2領域M2は、第2面20bが残存している面積の比率を示す第2面残存率を有している。第2面残存率は、第1面残存率よりも大きい。このことにより、マスク第2領域M2に占める第2凹部35の面積を小さくし、第2面20bが残存している面積を増大できる。このため、蒸着マスク20の厚みが厚い部分を増やすことができる。この結果、蒸着マスク20の機械的強度を向上できる。
【0190】
また、本実施の形態によれば、マスク第1領域M1は、貫通孔25の面積の比率を示す第1開口率を有し、マスク第2領域M2は、貫通孔25の面積の比率を示す第2開口率を有している。第2開口率は、第1開口率よりも小さい。このことにより、有機デバイス100の第2表示領域102において、貫通孔25を通過して基板110に付着する蒸着材料90の蒸着面積を小さくできる。このため、基板110において、有機層130及び第2電極140等を構成する蒸着層の面積を小さくでき、第2表示領域102の第2透過率を高くできる。
【0191】
また、本実施の形態によれば、定義断面は、接続面45の任意の点を通るとともに蒸着マスク20の第1面20aに垂直な断面であって、平面視において当該点からの距離が最短となる稜線41上の点を通る断面として定義される。傾斜定義直線は、この定義断面において接続面45と稜線41とに接する直線として定義される。定義断面が、接続面45の最高点46を通るときに、傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度は、45°以下になっている。このことにより、第2凹部35の第2壁面36のうち、蒸着材料90が付着しやすい最高点46の近傍においても、蒸着材料90がトップ面44に付着することを抑制できる。このため、シャドーの発生を抑制できる。
【0192】
また、本実施の形態によれば、接続面45は、4つの最高点46を含み、4つの最高点46のうち対応する最高点46を通る4つの定義断面が定義される。4つの定義断面のうちの少なくとも1つの定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度が、45°以下になっている。このことにより、第2壁面36のうち、蒸着材料90が付着しやすい4つの最高点46のうちの少なくとも1つの最高点46の近傍において、蒸着材料90が第2壁面36及び第2面20bに付着することを抑制できる。このため、シャドーの発生を抑制できる。
【0193】
また、本実施の形態によれば、接続面45の最高点46は、法線方向Nにおいて蒸着マスク20の第2面20bと同じ位置に位置している。この場合、傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度が大きくなりやすいにも関わらず、その角度を45°以下に設定することができる。このことにより、第2壁面36のうち蒸着材料90が付着しやすい最高点46の近傍においても、蒸着材料90が第2壁面36及び第2面20bに付着することを効果的に抑制できる。このため、シャドーの発生を効果的に抑制できる。
【0194】
また、本実施の形態によれば、傾斜定義直線Lは、接続面45のうちの任意の点を通る定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度が、45°以下になっている。このことにより、平面視において第2凹部35の全周にわたって、第2壁面36及び第2面20bに蒸着材料90が付着することを抑制できる。このため、シャドーの発生をより一層抑制できる。
【0195】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0196】
第1変形例について説明する。
【0197】
上述した本実施の形態においては、マスク第1領域M1に位置する1つの第2凹部35を取り囲む接続面45が、4つのトップ面44を含んでいる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。接続面45が含むトップ面44の個数は、1つ、2つ又は3つでもよく、5つ以上であってもよい。この場合においても、トップ面44の各々に対応する定義断面のうちの少なくとも1つの定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度θ3が25°以上且つ45°以下になっていてもよい。
【0198】
第2変形例について説明する。
【0199】
上述した本実施の形態においては、マスク第1領域M1に位置する接続面45の最高点46が、法線方向Nにおいて蒸着マスク20の第2面20bと同じ位置に位置するトップ面44に含まれている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。最高点46は、接続面45のうち最も第2面20bの側に位置していれば、第2面20bと同じ位置に位置していなくてもよい。
【0200】
例えば、
図23及び
図24に示すように、最高点46は、第2面20bよりも第1面20aの側に位置していてもよい。そして、接続面45の最高点46を通る定義断面における傾斜定義直線Lと蒸着マスク20の第1面20aとがなす角度θ3が、25°以上且つ45°以下になっていてもよい。このことにより、第2凹部35の第2壁面36のうち、蒸着材料90が付着しやすい最高点46の近傍においても、蒸着材料90が第2壁面36及び接続面45に付着することを抑制できる。このため、シャドーの発生を抑制できる。
図23及び
図24に示す例においては、最高点46は、接続面45を構成する湾曲状の尾根面47の頂点であってもよい。
図24に示す例においても、接続面45の最高点46における高さh3は、
図9に示す高さh1よりも高くてもよく、
図10に示す高さh2よりも高くてもよい。
図23及び
図24に示す接続面45を形成する場合、第2エッチング工程は、上述したマスク第3方向Dにおいて隣り合う2つの第2凹部35の第2壁面36が、ブリッジ部68の裏側において接続されるまで、実施されてもよい。
【0201】
第3変形例について説明する。
【0202】
上述した本実施の形態においては、マスク第1領域M1及びマスク第2領域M2に位置する複数の貫通孔25が、並列配列されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、複数の貫通孔25は、
図25に示すように、千鳥配列されていてもよい。
【0203】
例えば、
図25に示すように、マスク第1方向D1に沿った1つの列を構成する各貫通孔25と、当該列とマスク第2方向D2において隣り合う他の列を構成する各貫通孔25とは、マスク第2方向D2において整列されていなくてもよい。
図25に示す例では、1つの列を構成する各貫通孔25と、隣り合う他の列を構成する貫通孔25とは、マスク第1方向D1においてずれて配列されており、そのずれ量が、マスク第1方向D1における配列ピッチC1の半分になっている。
【0204】
図25に示す例では、1つの第2凹部35を取り囲む接続面45は、4つのトップ面44を含んでいる。4つのトップ面44は、マスク第1方向D1において第2凹部35の両側及びマスク第2方向D2において第2凹部35の両側に位置している。
図25に示すトップ面44は、法線方向Nにおいて蒸着マスク20の第2面20bと同じ位置に位置している。トップ面44は、第2面20bと同様に平坦状に形成されていてもよい。接続面45のうちトップ面44以外の部分は、尾根面47として、第2面20bに向かって凸となるように湾曲状に形成されていてもよい。
【0205】
4つのトップ面44のうち対応するトップ面44に位置する最高点46を通る4つの定義断面が定義される。
図25に、トップ面44の最高点46を通る定義断面の一例がH-H線及びI-I線として示されている。
【0206】
H-H線は、マスク第1方向D1に沿っている。H-H線は、貫通孔25の中心を通っていてもよい。最高点46は、平面視においてトップ面44のうち稜線41に最も近い点としてもよい。
図25に示すように、平面視においてトップ面44の稜線41に対向するマスク第2方向D2に沿う縁が、稜線41のマスク第2方向D2に沿う部分と平行になっている場合には、トップ面44の当該縁上の任意の点を最高点46として定義断面を定義してもよい。H-H線で示す定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度θ1が、25°以上且つ45°以下になっていてもよい。
【0207】
I-I線は、マスク第2方向D2に沿っている。I-I線は、貫通孔25の中心を通っていてもよい。最高点46は、平面視においてトップ面44のうち稜線41に最も近い点としてもよい。
図25に示すように、平面視においてトップ面44の稜線41に対向するマスク第1方向D1に沿う縁が、稜線41のマスク第1方向D1に沿う部分と平行になっている場合には、トップ面44の当該縁上の任意の点を最高点46として定義断面を定義してもよい。I-I線で示す定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度θ2が、25°以上且つ45°以下になっていてもよい。
【0208】
接続面45のうちトップ面44以外の任意の点を通る定義断面における傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度も、25°以上且つ45°以下になっていてもよい。
【0209】
複数の貫通孔25が千鳥配列されている場合であっても、最高点46は、第2面20bよりも第1面20aの側に位置していてもよい。
【0210】
第4変形例について説明する。
【0211】
上述した本実施の形態においては、有機デバイス100の有機層130A、130B、130Cが、
図5に示す回転式の蒸着装置80によって形成される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、有機層130A、130B、130Cは、蒸着源83が移動する蒸着装置80等の任意の蒸着装置80によって形成されてもよい。同様に、有機デバイス100の第2電極140を構成する第1層140A及び第2層140Bが、
図5に示す回転式の蒸着装置80によって形成される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、第1層140A及び第2層140Bは、蒸着源83が移動する蒸着装置80等の任意の蒸着装置80によって形成されてもよい。
【0212】
第5変形例について説明する。
【0213】
上述した本実施の形態においては、有機デバイス100の第2電極140が、第1層140Aと、第2層140Bと、を含む例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、第2電極140は、平面視において隣り合う2つの有機層130A、130B、130Cに跨がるように連続的に形成されてもよい。第2電極140は、単一の層によって構成されていてもよい。あるいは、第2電極140は、3つの層を含んでいてもよい。この場合の第2電極140の各層は、有機層130A~130Cに対応させて、重なるように形成されてもよい。
【0214】
第6変形例について説明する。
【0215】
上述した本実施の形態においては、マスク第1領域M1の第1面残存率が、マスク第2領域M2の第2面残存率よりも大きければ、接続面45の構成は任意である。この場合、マスク第1領域M1に位置する1つの第2凹部35を取り囲む接続面45は、1つ若しくは複数のトップ面44を含んでいてもよく、又はトップ面44を含んでいなくてもよい。接続面45がトップ面44を含まない場合、第1面残存率はゼロとしてもよい。また、マスク第2領域M2に位置する1つの第2凹部35の周囲に第2面20bが残存していなくてもよい。例えば、マスク第2領域M2に位置する1つの第2凹部35を取り囲む接続面45は、尾根面47を含んでいてもよい。この場合、マスク第2領域M2における接続面45は、1つ若しくは複数のトップ面44を含んでいてもよい。
【0216】
第7変形例について説明する。
【0217】
上述した本実施の形態においては、マスク第1領域M1の第1面残存率が、マスク第2領域M2の第2面残存率よりも大きい例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、第1面残存率と第2面残存率との大小関係に関わることなく、定義断面が最高点46を通るとき、傾斜定義直線Lと第1面20aとがなす角度が、25°以上且つ45°以下であればよい。この場合、蒸着材料90が蒸着マスク20に付着することを抑制でき、シャドーの発生を抑制できる。
【0218】
なお、上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。