(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161849
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】酸性洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 3/20 20060101AFI20221014BHJP
C11D 3/36 20060101ALI20221014BHJP
C11D 1/62 20060101ALI20221014BHJP
C11D 1/75 20060101ALI20221014BHJP
C11D 1/90 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C11D3/20
C11D3/36
C11D1/62
C11D1/75
C11D1/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054941
(22)【出願日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2021065940
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】益田 篤
(72)【発明者】
【氏名】大村 亮介
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC05
4H003AC15
4H003AD04
4H003AE05
4H003BA12
4H003BA21
4H003DA05
4H003DA08
4H003DB01
4H003DB04
4H003DC02
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB07
4H003EB08
4H003EB13
4H003EB24
4H003ED02
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】浴室やトイレ等の硬質表面に付着した脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する頑固な複合汚れの洗浄力に優れる酸性洗浄剤組成物、及び脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れの除去方法を提供する。
【解決手段】(a)陽イオン界面活性剤[以下、(a)成分という]、(b)第一酸解離定数pKa1が1以上7未満の有機カルボン酸、及び第一酸解離定数pKa1が1以上7未満の有機ホスホン酸から選ばれる1種以上の酸剤[以下、(b)成分という]、及び水を含有し、(a)成の含有量と(b)成分の含有量との質量比(b)/(a)が0.1以上7以下であり、20℃におけるpHが2.0を超え6.0以下である、酸性洗浄剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)陽イオン界面活性剤[以下、(a)成分という]、(b)第一酸解離定数pKa1が1以上7未満の有機カルボン酸、及び第一酸解離定数pKa1が1以上7未満の有機ホスホン酸から選ばれる1種以上の酸剤[以下、(b)成分という]、及び水を含有し、(a)成の含有量と(b)成分の含有量との質量比(b)/(a)が0.1以上7以下であり、20℃におけるpHが2.0を超え6.0以下である、酸性洗浄剤組成物。
【請求項2】
(b)成分が、酸解離定数pKaの全てが7未満の有機カルボン酸である、請求項1記載の酸性洗浄剤組成物。
【請求項3】
(b)成分が、第一酸解離定数pKa1が2.9以上5以下の有機カルボン酸である、請求項1又は2記載の酸性洗浄剤組成物。
【請求項4】
(b)成分が、クエン酸である、請求項1~3の何れか1項に記載の酸性洗浄剤組成物。
【請求項5】
さらに(c)成分としてグリコールエーテルを含有する、請求項1~4の何れか1項記載の酸性洗浄剤組成物。
【請求項6】
(a)成分が、窒素原子に結合する基のうち、1つ又は2つが炭素数8以上16以下の炭化水素基であり、残りが炭素数1以上3以下のアルキル基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる基である4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤である、請求項1~5の何れか1項記載の酸性洗浄剤組成物。
【請求項7】
更に、(d)成分として、(a)成分以外の界面活性剤を含有する、請求項1~6の何れか1項記載の酸性洗浄剤組成物。
【請求項8】
(d)成分が、ベタイン型界面活性剤及びアミンオキシド型界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤である、請求項7記載の酸性洗浄剤組成物。
【請求項9】
全界面活性剤中の(a)成分の含有量が50質量%以上である、請求項1~8の何れか1項記載の酸性洗浄剤組成物。
【請求項10】
(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(b)/(a)が、0.4以上4以下である、請求項1~9の何れか1項記載の酸性洗浄剤組成物。
【請求項11】
(b)成分の含有量と、(a)成分と(c)成分の合計含有量との質量比(b)/[(a)+(c)]が、0.02以上1以下である、請求項5~10の何れか1項記載の酸性洗浄剤組成物。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項記載の酸性洗浄剤組成物を、脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れが付着した硬質表面に接触させて、水で濯ぐ、脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れの除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性洗浄剤組成物、及び脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に浴室やトイレなどの住環境の硬質表面には人体由来の皮脂や洗浄成分中に含まれる脂肪酸と水道水の硬度成分が結合した脂肪酸カルシウム石鹸を含む複合汚れが付着する。このような汚れは時間がたつにつれて蓄積され、強固な汚れに変化するため、これらを除去するためには、浴室用やトイレ用の洗浄剤を用いて強く擦り洗いする方法で洗浄されることが一般的である。従ってより簡便にしかも短時間で除去する方法が求められる。
【0003】
特許文献1、特許文献2には、有機酸を含有する酸性洗浄剤が台所あるいは浴室で典型的に見られる石灰質水垢含有のしみを除去するのに最適であることが記載されている。特許文献3、特許文献4には陽イオン界面活性剤と有機酸である金属封鎖剤を含有する中性の洗浄剤が硬質表面のスカム汚れに対して良好な洗浄性能を有することが開示されている。また、特許文献4には陽イオン界面活性剤と金属封鎖剤を含有する無機質汚れに好適な台所用洗浄剤の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001-522397号公報
【特許文献2】特表平11-514696号公報
【特許文献3】特開平7-233394号公報
【特許文献4】特開平10-204480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、浴室やトイレ等の硬質表面に付着した脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する頑固な複合汚れの洗浄力に優れる酸性洗浄剤組成物、及び脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れの除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)陽イオン界面活性剤[以下、(a)成分という]、(b)第一酸解離定数pKa1が1以上7未満の有機カルボン酸、及び第一酸解離定数pKa1が1以上7未満の有機ホスホン酸から選ばれる1種以上の酸剤[以下、(b)成分という]、及び水を含有し、(a)成の含有量と(b)成分の含有量との質量比(b)/(a)が0.1以上7以下であり、20℃におけるpHが2.0を超え6.0以下である、酸性洗浄剤組成物に関する。
【0007】
本発明は、前記酸性洗浄剤組成物を、脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れが付着した硬質表面に接触させて、水で濯ぐ、脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れの除去方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、浴室やトイレ等の硬質表面に付着した脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する頑固な複合汚れの洗浄力に優れる酸性洗浄剤組成物、及び脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れの除去方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔酸性洗浄剤組成物〕
本発明の酸性洗浄剤組成物が、浴室やトイレ等の硬質表面に付着した脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する頑固な複合汚れの洗浄力に優れる理由は必ずしも定かではないが以下のように推定される。
脂肪酸カルシウム石鹸は界面活性剤を含む洗浄液には難溶であり、そのため脂肪酸カルシウム石鹸を含む複合汚れは非常に難洗浄性の汚れとして知られている。脂肪酸カルシウム石鹸を含む複合汚れの洗浄は、一般にはカルシウムを捕捉する能力があるキレート剤などを洗浄剤に応用する方法が採用される。しかしながらキレート剤が汚れ内部まで浸透し、カルシウムを捕捉して、脂肪酸ナトリウムに変換し、洗浄する工程は自発的には起こりにくく、キレート剤が汚れに浸透する時間と擦り洗いなどの機械力とが必要であった。
本発明者らは、(b)成分である第一酸解離定数pKa1が1以上7未満の有機カルボン酸、及び第一酸解離定数pKa1が1以上7未満の有機ホスホン酸から選ばれる1種以上の酸剤を含有し、pHが2.0を超え6.0以下の洗浄液を、脂肪酸カルシウム石鹸を含む複合汚れに接触させると、脂肪酸カルシウム石鹸が素早く脂肪酸に変換され、しかも、(a)成分である陽イオン界面活性剤が(b)成分を汚れ内部まで浸透させる作用を有するため、短時間で脂肪酸カルシウム石鹸を脂肪酸に変換することができることを見出した。また本発明者らは、(a)成分である陽イオン界面活性剤が酸性条件下で脂肪酸洗浄力に優れることも見出した。このため、本発明の酸性洗浄剤組成物を用いれば、脂肪酸カルシウム石鹸を含む複合汚れに対して、短時間で擦るなどの機械力をかけなくても高い洗浄力を可能にする。
本発明の(b)成分は、本発明の酸性洗浄剤組成物のpH領域では十分な量のプロトンを放出することができ、脂肪酸カルシウム石鹸を脂肪酸に変換できる。一方、洗浄剤組成物のpHが高い場合には、プロトン量が十分ではなく、またpHが低すぎる場合には汚れそのものを変質させるため洗浄力が低下する。また本発明の(b)成分と(a)成分を特定の比率含有することで、(b)成分の脂肪酸カルシウム石鹸を含む複合汚れへの浸透性と、脂肪酸カルシウム石鹸の高い洗浄力を得ることを可能にすると考えられる。
【0010】
<(a)成分>
(a)成分は、陽イオン界面活性剤である。
陽イオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤が挙げられる。第4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤としては、脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れの洗浄力(以下、単に洗浄力という)の観点から、窒素原子に結合する基のうち、1つ又は2つが炭素数8以上16以下の炭化水素基であり、残りが炭素数1以上3以下のアルキル基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基及びアリールアルキル基(ベンジル基等)からなる群から選ばれる基である4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤が好ましい。
【0011】
陽イオン界面活性剤としては、洗浄力の観点から、下記一般式(a1)で表される第4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤、下記一般式(a2)で表される第4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。
【0012】
【0013】
〔式中、R1aは炭素数8以上16以下の炭化水素基を表す。R2a、R3aはそれぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。R4aは炭素数1以上3以下のアルキレン基を表す。Z-は陰イオン基を表す。〕
【0014】
【0015】
〔式中、R4aは、炭素数8以上16以下の炭化水素基であり、R5aは、炭素数8以上16以下の炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、R6a及びR7aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、Z-は陰イオンである。〕
【0016】
一般式(a1)中、R1aは、洗浄力の観点から、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、16以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
また一般式(a1)中、R2a、R3aはそれぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキル基であり、炭素数1以上2以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
また一般式(a1)中、R4aは炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、炭素数1以上2以下のアルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
また一般式(a1)中のZ-としては、塩化物イオン等のハロゲンイオンが好ましい。Z-としては塩化物イオン(Cl-)がより好ましい。
【0017】
一般式(a2)中、R4aは、洗浄力の観点から、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、16以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
また一般式(a2)中、R5aが炭素数8以上16以下の炭化水素基である場合、R5aは、洗浄力の観点から、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、16以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
また一般式(a2)中、R5aが炭素数1以上3以下のアルキル基である場合、R5aは、炭素数1以上2以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
また一般式(a2)中、R6a、R7aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1以上2以下のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。
また一般式(a2)中のZ-としては、好ましくは塩化物イオン等のハロゲンイオンであり、より好ましくは塩化物イオン(Cl-)である。
【0018】
<(b)成分>
(b)成分は、第一酸解離定数pKa1が1以上7未満の有機カルボン酸、及び第一酸解離定数pKa1が1以上7未満の有機ホスホン酸から選ばれる1種以上の酸剤である。
本発明の(b)成分の酸解離定数pKaは、水を溶媒とした時に、25℃で(b)成分の化合物の0.1mol/Lの濃度におけるpKaを示す。
酸解離定数pKaは、「日本化学会編 化学便覧 基礎編 改訂5版」(平成16年2月20日、丸善株式会社発行、II-334~II-343頁)に記載されている25℃におけるpKaを用いることができる。
【0019】
(b)成分の第一酸解離定数pKa1は、洗浄力の観点から、1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.9以上、更に好ましくは2.9以上、そして、7未満、好ましくは6以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは4.5以下、より更に好ましくは4以下である。
(b)成分は、酸解離定数pKaを複数有していてもよく、洗浄力の観点から、好ましくは4以下、好ましくは3以下、そして、臭いの観点から、1以上、好ましくは2以上のpKaを持つ有機カルボン酸又は有機ホスホン酸が好ましい。複数のpKaを有する有機カルボン酸又は有機ホスホン酸を用いる場合には、洗浄力の観点から、最も低いpKa、すなわち第一酸解離定数pKa1は、好ましくは1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.9以上、更に好ましくは2.9以上、そして、7未満、好ましくは6以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは4.5以下、より更に好ましくは4以下であり、また、最も高いpKaは、洗浄力の観点から、12以下、好ましくは9以下、より好ましくは7以下である。
本発明では有機カルボン酸が好ましく、3以下の酸解離定数を有するモノカルボン酸または多価カルボン酸が好ましく、すべての酸解離定数が1以上7未満、好ましくは1.5以上6以下、より好ましくは2.9以上6以下の有機カルボン酸が好ましい。
【0020】
(b)成分は、酸性条件下での脂肪酸カルシウム石鹸含有汚れへの吸着性と浸透性の観点から、モノカルボン酸である場合の分子量が、46以上、そして、200以下、好ましくは180以下、より好ましくは150以下であり、ジカルボン酸である場合の分子量が、90以上、そして、200以下、好ましくは180以下、より好ましくは150以下であり、トリカルボン酸である場合の分子量が、150以上、そして、200以下、好ましくは180以下であり、さらにアミノカルボン酸である場合の分子量が、70以上、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、そして、300以下であり、さらに有機ホスホン酸である場合の分子量が、170以上、好ましくは200以上、そして、300以下、好ましくは250以下である。なお、これら分子量は、(b)成分を酸型に換算した値とする。
【0021】
(b)成分は、具体的には以下のものから選ばれる1種以上が挙げられる。
モノカルボン酸としては、酢酸(pKa14.76)、乳酸(pKa13.64)、プロピオン酸(pKa14.62)、酪酸(pKa14.57)、ヘキサン酸(pKa14.85)、安息香酸(pKa14.00)を挙げることができる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸(pKa11.04、pKa23.82)、マレイン酸(pKa11.84、pKa25.83)、リンゴ酸(pKa13.23、pKa24.77)、コハク酸(pKa13.99、pKa25.20)、マロン酸(pKa12.60、pKa25.29)、グルタル酸(pKa14.13、pKa25.04)、アジピン酸(pKa14.26、pKa25.03)、酒石酸(pKa12.87、pKa23.97)、セバシン酸(pKa14.59、pKa25.59)を挙げることができる。
トリカルボン酸としては、クエン酸(pKa12.90、pKa24.35、pKa35.69)を挙げることができる。
アミノカルボン酸としてはエチレンジアミン4酢酸(pKa12.00、pKa22.67、pKa36.36、pKa410.27)、ジカルボキシメチルグルタミン酸(pKa2.6、pKa23.5、pKa35.0、pKa49.4)を挙げることができる。
有機ホスホン酸としては、ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(pKa11.99、pKa22.67、pKa36.16、pKa410.26)を挙げることができる。
なお化合物のカッコ書きのpKa1は第1酸解離定数、pKa2は第2酸解離定数、pKa3は第3酸解離定数、pKa4は第4酸解離定数を示す。
【0022】
本発明の(b)成分は、洗浄力の観点から、モノカルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸から選ばれる1種以上が好ましく、特に臭いの観点からジカルボン酸、及びトリカルボン酸から選ばれる1種以上が好ましい。
また本発明の(b)成分は、洗浄力の観点から、
【0023】
<組成等>
本発明の酸性洗浄剤組成物は、(a)成分を、洗浄力の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは1.3質量%以上、より更に好ましくは1.5質量%以上、より更に好ましくは1.7質量%以上、より更に好ましくは1.9質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、更に好ましくは5.5質量%以下、より更に好ましくは4.5質量%以下含有する。
【0024】
本発明の酸性洗浄剤組成物は、(b)成分を、洗浄力の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは1.3質量%以上、より更に好ましくは2.5質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、更に好ましくは5.7質量%以下、より更に好ましくは5.5質量%以下、より更に好ましくは5.3質量%以下、より更に好ましくは5.1質量%以下含有する。
【0025】
本発明の酸性洗浄剤組成物において、(a)成の含有量と(b)成分の含有量との質量比(b)/(a)は、洗浄力の観点から、0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.25以上、更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.35以上、より更に好ましくは0.4以上、より更に好ましくは0.45以上、そして、7以下、好ましくは6.5以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは5.5以下、より更に好ましくは5以下、より更に好ましくは4.5以下、より更に好ましくは4以下、より更に好ましくは3.5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2.8以下である。
【0026】
本発明の酸性洗浄剤組成物は、水を含有する。本発明の酸性洗浄剤組成物は、水を、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下含有する。水は、イオン交換水、滅菌イオン交換水等を使用することが好ましい。
【0027】
本発明の酸性洗浄剤組成物は、20℃におけるpHが、洗浄力の観点から、2.0を超え、好ましくは2.5以上、より好ましくは2.9以上、更に好ましくは4以上、そして、6.0以下、好ましくは5.5以下、より好ましくは5以下である。
本発明の酸性洗浄剤組成物は、洗浄力の観点から、20℃におけるpHが、(b)成分として含有する化合物の酸解離定数pKaに1.1を乗じた値(ただし乗じた値が6.0を超える場合には、6.0以下とする)以下の値とすることが好ましい。但し、(b)成分の化合物が複数の酸解離定数pKaを持つ場合、酸解離定数pKaが6.0未満で且つ最も高い酸解離定数pKaを採用するものとする。
また本発明の酸性洗浄剤組成物が、(b)成分を2種以上含有する場合、0.1質量%以上含有する(b)成分の中で、酸解離定数pKaが6.0未満で且つ最も高い酸解離定数pKaを採用するものとする。
例えば、本発明の酸性洗浄剤組成物が(b)成分として、クエン酸(pKa12.90、pKa24.35、pKa35.69)を含有する場合、本発明の酸性洗浄剤組成物の20℃におけるpHは、クエン酸の第3酸解離定数pKa35.69に1.1を乗じた6.2以下の値であるため6.0以下とすることが好ましい。
もう一つの例としては、本発明の酸性洗浄剤組成物が(b)成分として、エチレンジアミン4酢酸(pKa11.99、pKa22.67、pKa36.16、pKa410.26)を含有する場合、本発明の酸性洗浄剤組成物の20℃におけるpHは、エチレンジアミン4酢酸の第2酸解離定数pKa22.67に1.1を乗じた2.9以下の値とすることが好ましい。
もう一つの例としては、本発明の酸性洗浄剤組成物が(b)成分として、エチレンジアミン4酢酸(pKa11.99、pKa22.67、pKa36.16、pKa410.26)を0.1質量%、クエン酸(pKa12.90、pKa24.35、pKa35.69)を0.1質量%含有する場合、本発明の酸性洗浄剤組成物の20℃におけるpHは、クエン酸の第3酸解離定数pKa35.69に1.1を乗じた6.2以下の値であるため6.0以下とすることが好ましい。
【0028】
本発明の酸性洗浄剤組成物は、石鹸カス汚れを構成するオレイン酸などの脂肪酸のカルシウム塩に作用することで、脂肪酸のカルシウム塩から酸・塩基反応により脂肪酸(-COOH型)を生成させる。そのため本発明の酸性洗浄剤組成物は、脂肪酸のカルシウム塩の自発的な分解促進を狙う目的から、オレイン酸のpKa(=5)近傍の値よりも小さなpHであることを特徴とする(理論上、本発明の酸性洗浄剤組成物のpHが6で1割、pHが5で5割、pHが4で9割の脂肪酸を生成)。
本発明の(b)成分は、前記脂肪酸のカルシウム塩へのプロトンドナーの役割を果たして分解を促進する観点から、オレイン酸よりも強い酸であることが好ましい。即ち(b)成分の酸解離定数pKaは、オレイン酸のpKaである5以下が好ましい((b)成分が複数のpKaを有する化合物の場合は、最も小さい酸解離定数pKaの値が5以下であることが好ましい。)。一方で、(b)成分の酸解離定数pKaが極端に小さすぎると、常に解離状態のイオンとなり、プロトンドナーとして機能しなくなることから、(b)成分の酸解離定数pKaは1.9以上が好ましく、より好ましくは2.9以上である。
【0029】
本発明の酸性洗浄剤組成物は、洗浄力の観点から、更に(c)成分としてグリコールエーテルを含有することが好ましい。
【0030】
(c)成分のグリコールエーテルとしては、下記一般式(c1)で表される化合物が好ましい。
R1cO-(R2cO)n-H (c1)
(式中、R1cは炭素数1以上8以下の炭化水素基であり、R2cは炭素数2又は3のアルキレン基であり、nは1以上4以下の整数である。)
【0031】
R1cは、炭素数1以上、好ましくは2以上、そして、8以下、好ましくは7以下、より好ましくは6以下の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基、アルケニル基、又はアリール基であり、より好ましくはアルキル基である。
nは、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。
【0032】
(c)成分は、具体的には、2-エチルヘキシルグリコール、ヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、ブチルプロピレンジグリコール、ブチルプロピレングリコール、プロピルプロピレンジグリコール、ブチルグリコール、プロピルプロピレングリコール、ブチルジグリコール、2-tert-ブトキシエタノール、イソブチルジグリコール、メチルプロピレングリコール、メチルグリコール、メチルジプロピレングリコール、ベンジルグリコール、ベンジルジグリコール、から選ばれる1種以上が挙げられ、洗浄力の観点から、ブチルジグリコール、ブチルプロピレングリコール、ベンジルジグリコール、フェニルジグリコール、及びイソブチルジグリコールから選ばれる1種以上が好ましく、ブチルプロピレングリコール、ブチルジグリコール及びベンジルジグリコールから選ばれる1種以上がより好ましく、ブチルジグリコール、ベンジルジグリコールが更に好ましい。
【0033】
本発明の酸性洗浄剤組成物は、(c)成分を、洗浄力の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、より更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは6質量%以下含有する。
【0034】
本発明の酸性洗浄剤組成物において、(b)成分の含有量と、(a)成分と(c)成分の合計含有量との質量比(b)/[(a)+(c)]は、洗浄力の観点から、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上、より更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.4以上、より更に好ましくは0.5以上、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下、より更に好ましくは0.7以下である。
【0035】
本発明の酸性洗浄剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、(d)成分として、(a)成分以外の界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤としては、(d1)陰イオン界面活性剤(以下、(d1)成分ともいう)、(d2)両性界面活性剤(以下、(d2)成分ともいう)、及び(d3)非イオン界面活性剤(以下、(d3)成分ともいう)から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0036】
(d1)成分としては、アルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル又はその塩、脂肪酸又はその塩、及びアルキル又はアルケニルベンゼンスルホン酸又はその塩から選ばれる1種以上が挙げられる。陰イオン界面活性剤の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましい。
【0037】
(d2)成分としては、ベタイン型界面活性剤及びアミンオキシド型界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。
(d2)成分は、具体的には、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアミンオキシド、及びN-アルキル-N,N-ジメチルアミンオキシドから選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。これら界面活性剤のアルカノイル基又はアルキル基の炭素数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
【0038】
(d2)成分のアミンオキシド型界面活性剤としては、(a)成分との併用による脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する頑固な複合汚れへの洗浄力向上の観点から、下記一般式(d1)の化合物が好適である。
【0039】
【0040】
〔式中、R1dは炭素数7以上18以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基を示し、R2d及びR3dは、同一又は異なって、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。Dは-NHC(=O)-基又は-C(=O)NH-基を示し、Eは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。q及びpは、q=0かつp=0又はq=1かつp=1を示す。〕
【0041】
上記一般式(d1)において、q=1かつp=1の場合には、R1dは、(a)成分との併用による脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する頑固な複合汚れへの洗浄力向上の観点から、好ましくは炭素数7以上、そして、17以下、好ましくは15以下、より好ましくは13以下、更に好ましくは11以下、より更に好ましくは9以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。またq=0かつp=0の場合には、R1dは、(a)成分との併用による脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する頑固な複合汚れへの洗浄力向上の観点から、好ましくは炭素数8以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。本発明ではq=0かつp=0が好ましい。R2d及びR3dは、好ましくは炭素数1のメチル基である。
【0042】
(d3)成分としては、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル(炭素数2又は3のアルキレンオキシドを平均1モル以上8モル以下付加させたもの)、炭素数8以上18以下のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテル(炭素数2又は3のアルキレンオキシドを平均1モル以上8モル以下付加させたもの)、炭素数8以上18以下の脂肪酸基を有するポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル(炭素数2又は3のアルキレンオキシドを平均1モル以上8モル以下付加させたもの)、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルグリコシド、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリコシド、炭素数8以上18以下の脂肪酸基を有するショ糖脂肪酸エステル、及び炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリセリルエーテル又はアルキルグリセリルエーテルから選ばれる1種以上が挙げられ、洗浄力向上の点から、炭素数8以上14以下のアルキル基を有するアルキルグリコシド、炭素数8以上14以下のアルキル基を有するアルキルポリグリコシド、及び炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリセリルエーテル又はアルキルグリセリルエーテルから選ばれる1種以上が好適である。
【0043】
本発明の酸性洗浄剤組成物は、(d)成分として、(d2)成分を含有する場合、(a)成分との併用による脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する頑固な複合汚れへの洗浄力向上の観点から、(d)成分を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは質量5%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下含有する。
【0044】
本発明の酸性洗浄剤組成物において、全界面活性剤中((a)成分と(d)成分の合計)の(a)成分の含有量は、洗浄力の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは85質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下であり、100質量%であってもよい。
【0045】
本発明の酸性洗浄剤組成物には、製品の付加価値を増大させるために、香料、色素、防腐剤、酸化防止剤等を任意に配合することができる(但し、前記(a)~(d)成分を除く)。
【0046】
本発明の酸性洗浄剤組成物は、25℃における粘度が、汚れに対する付着性、及び汚れへの浸透性の観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは4mPa・s以上、そして、好ましくは200mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下、更に好ましくは50mPa・s以下である。この粘度は、B型粘度計(型番;TVB-10東機産業株式会社製、No.2のローターを使用、60r/min)を用いて測定されるものである。本発明の酸性洗浄剤組成物の粘度は増粘剤を添加することにより調整される。
【0047】
本発明の酸性洗浄剤組成物は、硬質表面用として好適に用いることができる。硬質表面としては、浴室、トイレ、浴槽、洗面器、タイル、化粧室、洗面台、鏡、台所まわりのシンク、カウンタートップ、水道まわり等が挙げられる。本発明の酸性洗浄剤組成物は硬質表面の洗浄に好適に用いられ、特に脂肪酸カルシウム石鹸を含む汚れが付着、蓄積しやすい浴室用やトイレ用として好適に用いられる。ここで、浴室用とは、浴室のみならず、浴槽、洗面器など、浴室内に存在する他の硬質表面を有する物品をも対象とするものである。
【0048】
[脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れの除去方法]
本発明は、本発明の酸性洗浄剤組成物を、脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れが付着した硬質表面に接触させて、水で濯ぐ、脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れの除去方法(以下、本発明の方法ともいう)を提供する。
本発明の方法は、本発明の酸性洗浄剤組成物で記載した事項を適宜適用することができる。
本発明では(a)成分と(b)成分と任意成分とを含む濃厚組成物を調製しておき、該濃厚組成物を水で希釈して本発明の酸性洗浄剤組成物を調製し、脂肪酸カルシウム石鹸を含有する汚れが付着した硬質表面に接触させてもよい。すなわち、本発明の(a)成分と(b)成分と任意成分とを含有する濃厚組成物を水で希釈して本発明の酸性洗浄剤組成物に調製し、該組成物を希釈せずに脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れが付着した硬質表面に接触させる、脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れの除去方法であってもよい。
【0049】
また、本発明の方法は、本発明の酸性洗浄剤組成物を、脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れが付着した硬質表面に接触させた後、機械力などの外力をかけず(付与せず)に放置する方法が挙げられる。本発明では、本発明の酸性洗浄剤組成物が脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れに優れるため、スポンジ等の可撓性材料や手指等を用いることなく接触させ、機械力などの外力をかけずにそのまま放置しても高い洗浄効果が得られる。これにより、手や道具の届かない部位や届きにくい細部の洗浄に好適である。
機械力などの外力をかけずに放置するとは、例えば、組成物の接触以外に、洗浄のための意図的な操作を行わないことである。例えば、接触させた組成物が硬質表面を自然に流下することや、洗浄を意図しない振動が硬質表面に伝わることなどは、外力をかけずに放置すると理解できる。
放置した後は、通常、水ですすぐ。すすぐ際は、スポンジなどで外力(物理的力)を掛けてもよく、単に水流ですすいでもよい。
【0050】
本発明の方法では、本発明の酸性洗浄剤組成物を、対象物である硬質表面の面積100cm2に対して、洗浄力と経済性の観点から、好ましくは0.1g以上、より好ましくは1g以上、更に好ましくは2g以上、そして、好ましくは10g以下、より好ましくは5g以下の割合で接触させる、更に、塗布又は噴霧することが好ましい。
【0051】
本発明の方法では、洗浄力の観点から、本発明の酸性洗浄剤組成物を、脂肪酸カルシウム石鹸を含有する汚れが付着した硬質表面に接触後、好ましくは10秒以上、より好ましくは15秒以上、更に好ましくは20秒以上、より更に好ましくは30秒以上、そして、好ましくは30分以下、より好ましくは10分以下、更に好ましくは5分以下、より更に好ましくは2分以下、より更に好ましくは1分以下、放置する。この場合、最初に前記組成物が硬質表面に接触した時点を放置の開始としてよい。
なお、放置する際の温度は、室温でよく、例えば、10℃以上30℃以下が挙げられる。
【0052】
本発明の方法では、本発明の酸性洗浄剤組成物を、脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合含有する汚れが付着した硬質表面に、噴霧又は塗布して接触させてもよい。
本発明の酸性洗浄剤組成物を、硬質表面に接触させる方法は、噴霧又は塗布が好ましく、液滴状にして噴霧する又は泡状にして塗布する方法が挙げられる。具体的には、スプレー手段を用いることができる。すなわち本発明の酸性洗浄剤組成物を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる洗浄剤物品を用いるのが好ましい。本発明は、本発明の酸性洗浄剤組成物を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる、スプレー容器入り洗浄剤物品を提供する。
【0053】
本発明のスプレー容器入り洗浄剤物品において、本発明の酸性洗浄剤組成物を充填するスプレイヤーを具備する容器は、トリガー式スプレー容器、ポンプ式スプレー容器等の噴射剤を使用しない手動式スプレー装置、噴射剤を用いるエアゾール等が挙げられる。前記スプレイヤーを具備する容器は、内容物を液滴状又は泡状にして噴霧又は塗布することができるトリガー式スプレーが好ましく、内容物を液滴状に噴霧する機構を備えたトリガー式スプレー又は泡を形成する機構(泡形成機構)を備えたトリガー式スプレーがより好ましい。
【0054】
本発明のスプレー容器入り洗浄剤物品において、液滴状に本発明の酸性洗浄剤組成物を噴霧する機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、前記組成物を入れるスプレー容器の噴射ノズルの噴口径は、スプレーのし易さや、噴射された液滴が荒くなく、直線状にスプレーされず、スプレーできる面積が極端に狭くならないために、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、そして、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下の範囲である。
液滴状に噴霧する機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、本発明のスプレー容器入り洗浄剤物品は、1回の操作で、好ましくは0.1mL以上、より好ましくは0.3mL以上、そして、好ましくは5mL以下、より好ましくは2mL以下の組成物を噴霧する。
【0055】
泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、本発明のスプレー容器入り洗浄剤物品は、1回の操作で、好ましくは0.5mL以上、より好ましくは1mL以上、そして、好ましくは30mL以下、より好ましくは15mL以下、更に好ましくは5mL以下の組成物を噴霧する。
【0056】
本発明の方法は、硬質物品の硬質表面、更に浴室、トイレ、浴槽、洗面器、タイル、化粧室、洗面台、鏡、台所まわりのシンク、カウンタートップ、水道まわり等の硬質表面、特に脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れが付着、蓄積しやすい浴室、トイレの硬質表面の洗浄方法として好ましい。
【0057】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の酸性洗浄剤組成物、及び脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れの除去方法を開示する。これらの態様には、本発明の酸性洗浄剤組成物、及び脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れの除去方法で述べた事項を、相互に適宜適用することができる。
【0058】
<1>
(a)陽イオン界面活性剤[以下、(a)成分という]、(b)第一酸解離定数pKa1が1以上7未満の有機カルボン酸、及び第一酸解離定数pKa1が1以上7未満の有機ホスホン酸から選ばれる1種以上の酸剤[以下、(b)成分という]、及び水を含有し、(a)成の含有量と(b)成分の含有量との質量比(b)/(a)が0.1以上7以下であり、20℃におけるpHが2.0を超え6.0以下である、酸性洗浄剤組成物。
【0059】
<2>
(a)成分が、窒素原子に結合する基のうち、1つ又は2つが炭素数8以上16以下の炭化水素基であり、残りが炭素数1以上3以下のアルキル基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基及びアリールアルキル基(ベンジル基等)からなる群から選ばれる基である4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤である、<1>に記載の酸性洗浄剤組成物。
【0060】
<3>
(a)成分が、下記一般式(a1)で表される第4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤、及び下記一般式(a2)で表される第4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤から選ばれる1種以上である、<1>又は<2>に記載の酸性洗浄剤組成物
【0061】
【0062】
〔式中、R1aは炭素数8以上16以下の炭化水素基を表す。R2a、R3aはそれぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。R4aは炭素数1以上3以下のアルキレン基を表す。Z-は陰イオン基を表す。〕
【0063】
【0064】
〔式中、R4aは、炭素数8以上16以下の炭化水素基であり、R5aは、炭素数8以上16以下の炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、R6a及びR7aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、Z-は陰イオンである。〕
【0065】
<4>
(b)成分が、酸解離定数pKaの全てが7未満の有機カルボン酸である、<1>~<3>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
【0066】
<5>
(b)成分が、第一酸解離定数pKa1が2.9以上5以下の有機カルボン酸である、<1>~<4>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
【0067】
<6>
(b)成分が、分子量46以上150以下のモノカルボン酸、分子量90以上180以下のジカルボン酸、分子量150以上200以下のトリカルボン酸、分子量200以上300以下のアミノカルボン酸、及び分子量170以上250以下の有機ホスホン酸から選ばれる1種以上である、<1>~<5>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
【0068】
<7>
(b)成分が、酢酸(pKa14.76)、乳酸(pKa13.64)、プロピオン酸(pKa14.62)、酪酸(pKa14.57)、ヘキサン酸(pKa14.85)、安息香酸(pKa14.00)、シュウ酸(pKa11.04、pKa23.82)、マレイン酸(pKa11.84、pKa25.83)、リンゴ酸(pKa13.23、pKa24.77)、コハク酸(pKa13.99、pKa25.20)、マロン酸(pKa12.60、pKa25.29)、グルタル酸(pKa14.13、pKa25.04)、アジピン酸(pKa14.26、pKa25.03)、酒石酸(pKa12.87、pKa23.97)、セバシン酸(pKa14.59、pKa25.59)、及びクエン酸(pKa12.90、pKa24.35、pKa35.69)から選ばれる1種以上である、<1>~<6>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
【0069】
<8>
(b)成分が、クエン酸である、<1>~<7>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
【0070】
<9>
(b)成分が、ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸である、<1>~<7>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
【0071】
<10>
(a)成分を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは1.3質量%以上、より更に好ましくは1.5質量%以上、より更に好ましくは1.7質量%以上、より更に好ましくは1.9質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、更に好ましくは5.5質量%以下、より更に好ましくは4.5質量%以下含有する、<1>~<9>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
【0072】
<11>
(b)成分を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは1.3質量%以上、より更に好ましくは2.5質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、更に好ましくは5.7質量%以下、より更に好ましくは5.5質量%以下、より更に好ましくは5.3質量%以下、より更に好ましくは5.1質量%以下含有する、<1>~<10>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
【0073】
<12>
(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(b)/(a)が、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.25以上、更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.35以上、より更に好ましくは0.4以上、より更に好ましくは0.45以上、そして、好ましくは6.5以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは5.5以下、より更に好ましくは5以下、より更に好ましくは4.5以下、より更に好ましくは4以下、より更に好ましくは3.5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2.8以下である、<1>~<11>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
【0074】
<13>
さらに(c)成分としてグリコールエーテルを含有する、<1>~<12>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
【0075】
<14>
(c)成分が、下記一般式(c1)で表される化合物である、<13>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
R1cO-(R2cO)n-H (c1)
(式中、R1cは炭素数1以上8以下の炭化水素基であり、R2cは炭素数2又は3のアルキレン基であり、nは1以上4以下の整数である。)
【0076】
<15>
(c)成分が、一般式(c1)中、R1cが、炭素数2以上7以下のアルキル基、アルケニル基、又はアリール基であり、nが2以下の化合物である、<14>に記載の酸性洗浄剤組成物。
【0077】
<16>
(c)成分が、2-エチルヘキシルグリコール、ヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、ブチルプロピレンジグリコール、ブチルプロピレングリコール、プロピルプロピレンジグリコール、ブチルグリコール、プロピルプロピレングリコール、ブチルジグリコール、2-tert-ブトキシエタノール、イソブチルジグリコール、メチルプロピレングリコール、メチルグリコール、メチルジプロピレングリコール、ベンジルグリコール、及びベンジルジグリコールから選ばれる1種以上である、<13>又は<14>に記載の酸性洗浄剤組成物。
【0078】
<17>
(c)成分が、ブチルプロピレングリコール、ブチルジグリコール、及びベンジルジグリコールから選ばれる1種以上である、<13>又は<14>に記載の酸性洗浄剤組成物。
【0079】
<18>
(c)成分を、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、より更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは6質量%以下含有する、<13>~<17>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
【0080】
<19>
(b)成分の含有量と、(a)成分と(c)成分の合計含有量との質量比(b)/[(a)+(c)]が、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上、より更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.4以上、より更に好ましくは0.5以上、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下、より更に好ましくは0.7以下である、<13>~<18>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
【0081】
<20>
更に、(d)成分として、(a)成分以外の界面活性剤を含有する、<1>~<19>の何れかに項記載の酸性洗浄剤組成物。
【0082】
<21>
(d)成分が、(d1)陰イオン界面活性剤(以下、(d1)成分ともいう)、(d2)両性界面活性剤(以下、(d2)成分ともいう)、及び(d3)非イオン界面活性剤(以下、(d3)成分ともいう)から選ばれる1種以上の界面活性剤である、<20>に記載の酸性洗浄剤組成物。
【0083】
<22>
(d)成分が、(d2)成分である、好ましくはベタイン型界面活性剤及びアミンオキシド型界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤である、<21>に記載の酸性洗浄剤組成物。
【0084】
<23>
(d)成分が、アミンオキシド型界面活性剤である、好ましくは下記一般式(d1)の化合物から選ばれる1種以上である、<22>に記載の酸性洗浄剤組成物。
【0085】
【化6】
〔式中、R
1dは炭素数7以上18以下の炭化水素基を示し、R
2d及びR
3dは、同一又は異なって、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。Dは-NHC(=O)-基又は-C(=O)NH-基を示し、Eは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。q及びpは、q=0かつp=0又はq=1かつp=1を示す。〕
【0086】
<24>
(d)成分が、一般式(d1)中、q=1かつp=1であり、R1dが、炭素数7以上15以下の炭化水素基であり、R2d及びR3dがメチル基の化合物である、<23>に記載の酸性洗浄剤組成物。
【0087】
<25>
(d)成分が、一般式(d1)中、q=0かつp=0であり、R1dが、炭素数8以上16以下のアルキル基であり、R2d及びR3dがメチル基の化合物ある、<23>に記載の酸性洗浄剤組成物。
【0088】
<26>
(d)成分が、ベタイン型界面活性剤である、好ましくはN-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアミンオキシド、及びN-アルキル-N,N-ジメチルアミンオキシドから選ばれる1種以上の界面活性剤であって、前記界面活性剤のアルカノイル基又はアルキル基の炭素数が10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である、<22>に記載の酸性洗浄剤組成物。
【0089】
<27>
(d)成分が、(d3)成分である、好ましくは炭素数8以上18以下のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル(炭素数2又は3のアルキレンオキシドを平均1モル以上8モル以下付加させたもの)、炭素数8以上18以下のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテル(炭素数2又は3のアルキレンオキシドを平均1モル以上8モル以下付加させたもの)、炭素数8以上18以下の脂肪酸基を有するポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル(炭素数2又は3のアルキレンオキシドを平均1モル以上8モル以下付加させたもの)、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルグリコシド、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリコシド、炭素数8以上18以下の脂肪酸基を有するショ糖脂肪酸エステル、及び炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリセリルエーテル又はアルキルグリセリルエーテルから選ばれる1種以上である、より好ましくは炭素数8以上14以下のアルキル基を有するアルキルグリコシド、炭素数8以上14以下のアルキル基を有するアルキルポリグリコシド、及び炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリセリルエーテル又はアルキルグリセリルエーテルから選ばれる1種以上である、<21>に記載の酸性洗浄剤組成物。
【0090】
<28>
全界面活性剤中の(a)成分の含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは85質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である、<20>~<27>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
【0091】
<29>
25℃における粘度が、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは4mPa・s以上、そして、好ましくは200mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下、更に好ましくは50mPa・s以下である、<1>~<28>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
【0092】
<30>
浴室、トイレ、浴槽、洗面器、タイル、化粧室、洗面台、鏡、台所まわりのシンク、カウンタートップ、水道まわりの硬質表面用である、<1>~<29>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物。
【0093】
<31>
<1>~<30>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物を、脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れが付着した硬質表面に接触させて、水で濯ぐ、脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れの除去方法。
【0094】
<32>
<1>~<30>の何れかに記載の酸性洗浄剤組成物を、スプレイヤーを具備する容器に充填し、硬質表面に液滴状にして噴霧する又は泡状にして塗布する、<31>に記載の脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する複合汚れの除去方法。
【実施例0095】
下記配合成分を用いて、表1~3に示す酸性洗浄剤組成物を調製し、以下の項目について評価を行った。結果を表1~3に示す。表1~3の酸性洗浄剤組成物は、(a)~(d)成分を表中の配合量で添加し、室温(20℃)で溶解させた。配合後、水酸化ナトリウム及び/又は塩酸を用いてpHを表1~3に記載の値になるように調整した。なお、pHはガラス電極法で測定した。また表1~3中の配合成分の質量%は、全て有効分に基づく数値である。
【0096】
<配合成分>
(a)成分
・C10BAC:一般式(a1)中、R1aが炭素数10のアルキル基、R2a、R3aがメチル基、R4aがメチレン基、Z-が塩化物イオンである化合物、レベノールRK、花王(株)製
・C8BAC:一般式(a1)中、R1aが炭素数8のアルキル基、R2a、R3aがメチル基、R4aがメチレン基、Z-が塩化物イオンである化合物、サニゾール08、花王(株)製
・C12BAC:一般式(a1)中、R1aが炭素数12のアルキル基、R2a、R3aがメチル基、R4aがメチレン基、Z-が塩化物イオンである化合物、サニゾールB-50、花王(株)製
・C12TMAC:ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、一般式(a2)中、R4aが炭素数12のアルキル基、R5a、R6a、及びR7aがメチル基、Z-が塩化物イオンである化合物、コータミン20W、花王(株)製
【0097】
(b)成分
・クエン酸:pKa12.90、pKa24.35、pKa35.69、富士フイルム和光純薬(株)製
・GLDA:ジカルボキシメチルグルタミン酸、pKa12.6、pKa23.5、pKa35.0、pKa49.4、Nouryon製
・酢酸:pKa14.76、キシダ化学(株)製
・リンゴ酸:pKa13.23、pKa24.77、扶桑化学工業(株)製
・乳酸:pKa13.64、富士フイルム和光純薬(株)製
・マレイン酸:pKa11.84、pKa25.83、富士フイルム和光純薬(株)製
・ディクエスト:ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、pKa11.99、pKa22.67、pKa36.16、pKa410.26、ディクエスト2010CS、イタルマッチジャパン(株)製
【0098】
(b’)成分((b)成分の比較成分)
・リン酸:pKa11.83、pKa26.43、pKa311.46、キシダ化学(株)製
【0099】
(c)成分
・BzDG:ベンジルジグリコール、日本乳化剤(株)製
・BFG:ブチルプロピレングリコール、日本乳化剤(株)製
・BDG:ブチルジグリコール、日本乳化剤(株)製
【0100】
(d)成分
・C12スルホベタイン:ヒドロキシラウリルスルホベタイン、アンヒトール20HD、花王(株)製
・C8アミンオキサイド:オクチルジメチルアミンオキサイド、アンヒトール08N、花王(株)製
・C12/14アミンオキサイド:ラウリルジメチルアミンオキサイドとミリスチルジメチルアミンオキサイドの混合物、アンヒトール20N、花王(株)製
・C12APB:ラウリン酸アミドプロピルベタイン、花王(株)製
・AG:炭素数C10~16のアルキル基を有するアルキルグリコシド、花王(株)製
【0101】
<脂肪酸カルシウム石鹸/皮脂複合汚れの洗浄力評価>
脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂が複合したモデル浴室汚れに対する洗浄力を評価した。モデル汚れの作成方法を以下に示す。固形石鹸(花王(株)製、花王ホワイト)を90質量%、モデル皮脂汚れを10質量%、50~60℃にて混合、保温した溶液をA溶液とする。なお、モデル皮脂汚れの組成は、リノール酸40質量%、オレイン酸20質量%、パルミチン酸20質量%、コレステロール10質量%及び流動パラフィン10質量%である。塩化カルシウム6質量%水溶液を20~30℃で保温した溶液をB溶液とする。ポリプロピレンプレート(50mm×100mm×2mm)にA溶液を出来るだけ均一に塗布し、20~30℃で5分間自然乾燥させてからB溶液を出来るだけ均一に塗布し、20~30℃で5分間自然乾燥させる。このA溶液塗布→自然乾燥→B溶液塗布→自然乾燥の操作を10回繰り返した後、1ヶ月室温で乾燥させ、モデル浴室汚れを作製した。
【0102】
モデル浴室汚れに、表1~3の酸性洗浄剤組成物20μLを滴下して1分間放置した後、イオン交換水で充分にすすいだ。洗浄力を以下の基準で判定した。具体的方法としては、汚れ未塗布のプレート、汚れ塗布後の洗浄前プレート、洗浄後プレートを明るさ等の撮影条件が同一の状態で撮影し、得られた画像から各プレートのグレースケールを測定した。汚れ洗浄前プレートを洗浄率0%、汚れ未塗布プレートを洗浄率100%とし、洗浄後プレートの洗浄率を算出した。グレースケールの測定には、画像処理ソフトのImageJ1.47vを使用した。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
<配合例>
表4に本発明の酸性洗浄剤組成物の配合例を示す。下記配合の酸性洗浄剤組成物は、浴室やトイレ等の硬質表面に付着した脂肪酸カルシウム石鹸と皮脂を含有する頑固な複合汚れに対して優れた洗浄力を有する。
【0107】