(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161859
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】放熱材組成物及び放熱材
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20221014BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20221014BHJP
C08L 33/10 20060101ALI20221014BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20221014BHJP
C08L 31/04 20060101ALI20221014BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221014BHJP
【FI】
C08L75/04
C08L101/12
C08L33/10
C08L23/08
C08L31/04 S
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061735
(22)【出願日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2021066260
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 賢佑
(72)【発明者】
【氏名】森 宏一
(72)【発明者】
【氏名】満保 泰章
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA01W
4J002BB00W
4J002BB06W
4J002BF03W
4J002BG04W
4J002BG05W
4J002CF00W
4J002CF19W
4J002CK02X
4J002CK03X
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4J002DA076
4J002DC006
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4J002DG056
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4J002DJ046
4J002DJ056
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4J002DL006
4J002FA086
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD200
4J002FD310
4J002GQ00
4J002GQ05
(57)【要約】
【課題】0℃~50℃の温度域で粘着性を発現可能で、粘着性が発現した後も柔軟性に優れる放熱材組成物および放熱材を提供する。
【解決手段】ウレタン樹脂を除く0℃~50℃に軟化点を有する樹脂(A)、ウレタン樹脂(B)及び無機充填剤(C)を含有する放熱材組成物であって、前記ウレタン樹脂(B)の重量Wbに対する前記樹脂(A)の重量Waの比(Wa/Wb)が0.1~100であり、放熱材組成物をシート状に成形して測定した0℃における貯蔵弾性率(X)と、放熱材組成物をシート状に成形して測定した50℃における貯蔵弾性率(Y)との比(X/Y)が5~10000であり、前記50℃における貯蔵弾性率(Y)が104Pa~106Paである放熱材組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂を除く0℃~50℃に軟化点を有する樹脂(A)、ウレタン樹脂(B)及び無機充填剤(C)を含有する放熱材組成物であって、
前記ウレタン樹脂(B)の重量Wbに対する前記樹脂(A)の重量Waの比(Wa/Wb)が0.1~100であり、
放熱材組成物をシート状に成形して測定した0℃における貯蔵弾性率(X)と、放熱材組成物をシート状に成形して測定した50℃における貯蔵弾性率(Y)との比(X/Y)が5~10000であり、前記50℃における貯蔵弾性率(Y)が104Pa~106Paである放熱材組成物。
【請求項2】
前記樹脂(A)が、(メタ)アクリル樹脂及びエチレン-酢酸ビニル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂である請求項1に記載の放熱材組成物。
【請求項3】
前記樹脂(A)とウレタン樹脂(B)との合計重量の割合が、放熱組成物の合計重量に基づいて2~30重量%である請求項1に記載の放熱材組成物。
【請求項4】
請求項1~4のいずれか1項に記載の放熱材組成物を含む放熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱材組成物及び放熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品等が出す熱を外部に発散(放熱)する樹脂として、熱伝導性樹脂が知られている。このような熱伝導性樹脂をシート状に成形してなる放熱シートは、電子部品などに組み付けた後に、組付け位置などの微調整が容易であるが、シート状であることに起因し、界面抵抗が高くなる傾向がある。一方、ペースト状の熱硬化型熱伝導性樹脂組成物である放熱ギャップフィラーは、電子部品等に組み付けるときには液状なので放熱シートよりも界面抵抗は低いが、組付け後は硬化するため、組付け位置等の微調整が難しいという問題がある。このような問題(界面抵抗と組み付け位置の微調整の難しさ)を解決するものとして例えばスチレン系熱可塑性エラストマーを含む熱伝導性の組成物が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のスチレン系熱可塑性エラストマーを含む組成物からなる放熱材は、放熱材の軟化点付近の温度(例えば軟化点±2℃)において粘着性が発現して界面抵抗を低くすることができるが、軟化後には柔らかくなりすぎて取り付けられた部材から脱落することがあった。
本発明の課題は、放熱材が組付けられる電子部品等の使用環境において、特に0℃~50℃の温度域において、粘着性を発現でき、粘着性が発現した後の柔軟性に優れる放熱材組成物および放熱材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、ウレタン樹脂を除く0℃~50℃に軟化点を有する樹脂(A)、ウレタン樹脂(B)及び無機充填剤(C)を含有する放熱材組成物であって、前記ウレタン樹脂(B)の重量Wbに対する前記樹脂(A)の重量Waの比(Wa/Wb)が0.1~100であり、放熱材組成物をシート状に成形して測定した0℃における貯蔵弾性率(X)と、放熱材組成物をシート状に成形して測定した50℃における貯蔵弾性率(Y)との比(X/Y)が5~10000であり、前記50℃における貯蔵弾性率(Y)が104Pa~106Paである放熱材組成物及び前記放熱材組成物を含む放熱材である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば0℃~50℃の温度域で粘着性を発現可能で、粘着性が発現した後も柔軟性に優れる放熱材組成物および放熱材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の放熱材組成物は、ウレタン樹脂を除く0℃~50℃に軟化点を有する樹脂(A)、ウレタン樹脂(B)及び無機充填剤(C)を含有する放熱材組成物である。
本発明の組成物に含まれる樹脂(A)は、ウレタン樹脂を除く0℃~50℃に軟化点を有する樹脂である。本発明において軟化点は、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)に準拠して測定した値である。
【0008】
樹脂(A)としては、軟化点が0℃~50℃の範囲内であり、かつウレタン樹脂以外の樹脂であれば特に限定はないが、例えば(メタ)アクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカプロラクトン及びポリエステル樹脂等が挙げられる。
本明細書において、(メタ)アクリル樹脂とはアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を意味し、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。また(共)重合体とは共重合体及び/または重合体を意味する。
【0009】
(メタ)アクリル樹脂としては、炭素数12~30の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体が挙げられる。
【0010】
炭素数12~30の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸へプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル[(メタ)アクリル酸ステアリル]、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンイコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸トリコシル、(メタ)アクリル酸テトラコシル、(メタ)アクリル酸ペンタコシル、(メタ)アクリル酸ヘキサコシル、(メタ)アクリル酸ヘプタコシル、(メタ)アクリル酸オクタコシル、(メタ)アクリル酸ノナコシル及び(メタ)アクリル酸トリアコンチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂としては、上記炭素数12~22の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル及び(メタ)アクリル酸ドコシルからなる群より選ばれる2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合体がより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する成分の組成は、当該共重合体の軟化点が0~50℃となる組成であれば特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量に基づき、メタクリル酸オクタデシル50重量%、メタクリル酸ヘキサデシル40重量%、およびメタクリル酸ドデシル10重量%である組成の共重合体(軟化点は12℃)、ならびに、アクリル酸オクタデシル60重量%、アクリル酸ヘキサデシル10重量%、およびクリル酸ドコシル30重量%である組成の共重合体(軟化点は35℃)が挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂は、上記の炭素数12~30の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと共重合しうる他の構成単位を含んでいてもよい。他の構成単位としてはアクリル酸、メタクリル酸及び炭素数2~8のオレフィン(エチレン及びプロピレン)等が挙げられる。
【0011】
(メタ)アクリル樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸オクタデシルと(メタ)アクリル酸ヘキサデシルと(メタ)アクリル酸ドデシルとの共重合体、(メタ)アクリル酸オクタデシルと(メタ)アクリル酸ヘキサデシルと、(メタ)アクリル酸ドコシルとの共重合体が挙げられる。
【0012】
(メタ)アクリル樹脂としては、特開2017-206593号公報に記載の、炭素数が22以上の(メタ)アクリル酸エステルと炭素数2~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体のうち、軟化点が0~50℃のものを用いてもよい。
【0013】
エチレン-酢酸ビニル樹脂としては、例えば酢酸ビニルが10~60重量%でエチレンが40~90重量%の組成のエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む樹脂が挙げられる。本発明において樹脂(A)としては、酢酸ビニルが30~50重量%エチレンが50~70重量%の組成のエチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましく、酢酸ビニルが40重量%、エチレンが60重量%の組成のエチレン-酢酸ビニル共重合体(軟化点が20℃)が特に好ましい。
【0014】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、炭素数2~8のオレフィンの共重合体および炭素数2~8のオレフィンと他のモノマーとの共重合体などが挙げられ、これらのうち軟化点が0~50℃のものを用いることができる。
ポリオレフィン樹脂の具体例としては。例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン樹脂などのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(1-ブテン)、ポリ4-メチルペンテン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン)、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン-1共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・へキセン共重合体などのα-オレフィン共重合体、及びアイオノマー樹脂などを挙げることができる。更に、これらポリオレフィンを塩素化した塩素化ポリオレフィンも用いうる。
【0015】
ポリカプロラクトンとしては、ポリ-ε-カプロラクトン、及び1分子中に水酸基1~8個を有する化合物{炭素数1~20の1~8価のアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、デカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビトール等)、1~8価のアルコールのエーテル化物であって炭素数1~20の化合物[ジグリセリン及びポリグリセリン(3~6量体)等]及び炭素数1~20の糖(ショ糖等)等}へのカプロラクトン(ε-カプロラクトン等)付加物等が挙げられ、これらのうち軟化点が0~50℃のものを用いうる。
【0016】
ポリエステル樹脂としては、例えば特開2020-117686号公報に記載の結晶性ポリエステル樹脂などが挙げられ、これらのうち軟化点が0~50℃のものを用いうる。
【0017】
これらの樹脂は1種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂(A)としては、粘着性が発現した後の柔軟性に優れるという観点から(メタ)アクリル樹脂及びエチレン-酢酸ビニル樹脂が好ましい。
【0018】
放熱材組成物中の樹脂(A)の含有量は、0℃~50℃の温度域で粘着性を発現可能で、粘着性が発現した後も柔軟性に優れるという観点から、放熱材組成物の重量に基づき、好ましくは0.1~25重量%、より好ましくは0.3~20重量%、さらに好ましくは9~17重量%である。
【0019】
ウレタン樹脂(B)は、ポリオール(b1)とイソシアネート(b2)とを反応させてなる樹脂である。
【0020】
本発明においてポリオール(b1)としては、例えば、化学式量又は数平均分子量が1000以下のポリアルキレングリコール(b11)をポリオール(b1)の重量に基づいて50重量%以上含有するものが挙げられる。
【0021】
ポリアルキレングリコール(b11)としては、炭素数2~20の脂肪族ジオールに炭素数2~4のアルキレンオキサイド(以下、AOと記載する)を付加重合して得られるジオールがあげられる。
炭素数2~20の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-または1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコール等があげられ、好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、更に好ましくはエチレングリコールである。
AOとしては、エチレンオキサイド、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイド及び1,2-、1,3-、1,4-又は2,3-ブチレンオキサイド等があげられ、好ましくはエチレンオキサイド、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイド、更に好ましくは1,2-又は1,3-プロピレンオキサイドである。
これらのAOは2種以上を併用してもよく、2種以上の併用の場合のAOの結合様式は、ブロック付加、ランダム付加及びこれらの併用のいずれでもよい。
【0022】
ポリアルキレングリコール(b11)は、好ましくは化学式量又は数平均分子量が1000以下のポリアルキレングリコールである。ポリアルキレングリコール(b11)の化学式量又は数平均分子量は、より好ましくは500以下、更に好ましくは300以下である。
【0023】
ポリオール(b1)に含まれるポリアルキレングリコール(b11)の割合は、ポリオール(b1)の重量に基づいて好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは70~100重量%、更に好ましくは90~100重量%である。
【0024】
本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以降GPCと略記)を用いて、例えば以下の条件で測定することができる。
装置本体:HLC-8120(東ソー(株)製)
カラム:東ソー(株)製TSKgel α6000、G3000 PWXL
検出器:RI(Refractive Index)
溶離液:0.5%酢酸ソーダ・水/メタノール(体積比70/30)
溶離液流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
試料濃度:0.25重量%
注入量:200μl
標準物質:東ソー(株)製TSK TANDARD POLYETHYLENE OXIDE
データ処理ソフト:GPC-8020modelII(東ソー(株)製)
【0025】
ポリアルキレングリコール(b11)は、前記の炭素数2~20の脂肪族ジオールに対して公知の方法でAOを付加することで得ることができ、用いるAOの量を調整することで化学式量又は数平均分子量を調整することができる。
【0026】
ポリアルキレングリコール(b11)としては、市場から入手できるものを使用することができ、サンニックスPP-200[Mn=200のポリプロピレングリコール、三洋化成工業(株)製]、サンニックスPP-400[Mn=400のポリプロピレングリコール、三洋化成工業(株)製]、サンニックスPP-600[Mn=600のポリプロピレングリコール、三洋化成工業(株)製]、サンニックスPP-950[Mn=950のポリプロピレングリコール、三洋化成工業(株)製]等を好ましく用いることができる。
【0027】
ポリオール(b1)は、上記のポリアルキレングリコール(b11)以外に他のポリオール(b12)を含んでも良い。
【0028】
他のポリオール(b12)としては、脂肪族ジオール(b121)、3価以上の脂肪族ポリオール(b122)、前記脂肪族ジオール(b121)のAO付加物であって化学式量又は数平均分子量が1000を超えるAO付加物(b123)、前記脂肪族ポリオール(b122)のAO付加物(b124)、脂環式ポリオール(b125)、前記脂環式ポリオール(b125)のAO付加物(A26)、2価以上のフェノールのAO付加物(b127)、ポリエステルポリオール(b128)、ポリブタジエンポリオール(b129)、及びポリカーボネートポリオール(b130)等が挙げられる。
【0029】
脂肪族ジオール(b121)としては、炭素数2~20の脂肪族ジオールがあげられ、好ましくは炭素数が2~10の脂肪族ジオール、更に好ましくは炭素数が2~5の脂肪族ジオールである。
【0030】
3価以上の脂肪族ポリオール(b122)としては、炭素数3~20の脂肪族ポリオールのうち3価以上のアルコールがあげられ、グリセリン、及びペンタエリスリトール等があげられ、好ましくはグリセリンである。
【0031】
脂肪族ジオール(b121)のAO付加物(b123)としては、前記の脂肪族ジオール(b121)にAOを付加した化合物があげられ、付加するAOの量を調整することで1000を超える化学式量又は数平均分子量としたものがあげられる。AOとしては、ポリアルキレングリコール(b11)の説明において例示した炭素数2~4のAOを用いることができ、好ましいものも同じである。
脂肪族ジオールのAO付加物(b123)としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等があげられ、なかでも好ましくはポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール、更に好ましくはポリプロピレングリコールである。
【0032】
脂肪族ポリオール(b122)のAO付加物(b124)としては、前記の脂肪族ポリオール(b122)にAOを付加した化合物などがあげられる。AOとしては、(b11)の説明において例示したものと同じものを用いることができ、好ましいものも同じである。
脂肪族ポリオールのAO付加物(b124)としては、グリセリンのAO付加物及びペンタエリスリトールのAO付加物などがあげられ、具体的にはポリエチレントリオール(ポリエチレングリセリルエーテル)、ポリプロピレントリオール(ポリプロピレングリセリルエーテル)、ポリオキシプロピレントリオール(ポリオキシプロピレングリセリルエーテル)及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリオール(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル)等があげられる。
これらのうち、好ましくはポリプロピレントリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリオール及びポリオキシプロピレントリオール、更に好ましくはポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリオール及びポリオキシプロピレントリオールである。脂肪族ポリオールのAO付加物(b124)としては、市場から入手できるものを使用することができ、サンニックスGP-1000[Mn=1000のポリオキシプロピレングリセリルエーテル、三洋化成工業(株)製]などを好ましく用いうる。
【0033】
脂環式ポリオール(b125)としては、炭素数4~16の脂環式ポリオール(1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA)等が挙げられる。
脂環式ポリオール(b125)のAO付加物(b126)としては、前記の脂環式ポリオール(b125)にAOを付加した化合物が挙げられる。AOとしては、(b11)の説明において例示したものと同じものを用いることができ、好ましいものも同じである。
【0034】
2価以上のフェノールのAO付加物(b127)における2価以上のフェノールとしては、炭素数6~16の多価フェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールS、クレゾール及びヒドロキノン等)等が挙げられる。2価以上のフェノールのAO付加物(b127)としては、前記の2価以上のフェノールにAOを付加した化合物等が挙げられる。AOとしては、(b11)の説明において例示したものと同じものを用いることができ、好ましいものも同じである。
【0035】
ポリエステルポリオール(b128)としては、ポリオール[前記のポリアルキレングリコール(b11)、脂肪族ジオール(b121)、脂肪族ポリオール(b122)、脂肪族ジオール(b121)のAO付加物(b123)、脂肪族ポリオール(b122)のAO付加物(b124)、脂環式ポリオール(b125)、脂環式ポリオール(b125)のAO付加物(b126)及び2価以上のフェノールのAO付加物(b127)等]と、ポリカルボン酸との縮合物等が挙げられる。
ポリカルボン酸としては、炭素数2~20の鎖状脂肪族ポリカルボン酸[シュウ酸、マロン酸、ジプロピルマロン酸、コハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、2,4-ジメチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、3,3-ジメチルグルタル酸、3-エチル-3-メチルグルタル酸、アジピン酸、3-メチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6-テトラメチルピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ペンタデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸及びエイコサン二酸等];炭素数5~20の脂環式ポリカルボン酸[シクロプロパンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ジシクロヘキシル-4,4’-ジカルボン酸及びショウノウ酸];炭素数8~20の芳香族ポリカルボン酸[テレフタル酸、イソフタル酸、2-メチルテレフタル酸、4,4-スチルベンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4-ビフェニルジカルボン酸、及びオルトフタル酸及びジフェニルエーテルジカルボン酸等]等が挙げられる。ポリエステルポリオール(b128)としては、クラレポリオールP-2010[数平均分子量:2000のポリエステルジオール、(株)クラレ製]等として、市場から入手することができる。
【0036】
ポリブタジエンポリオール(b129)としては、「G-1000」、「G-2000」及び「G-3000」[日本曹達(株)製]等として、市場から入手したものを用いてもよい。
また、ポリブタジエンポリオール(b129)として、ポリブタジエンポリオールの水添物を用いても良く、水添物は「GI-1000」、「GI-2000」及び「GI-3000」[日本曹達(株)製]等として、市場から入手することができる。
【0037】
ポリカーボネートポリオール(b130)としては、ポリオール[前記のポリアルキレングリコール(b11)、脂肪族ジオール(b121)、脂肪族ポリオール(b122)、脂肪族ジオール(b121)のAO付加物(b123)、脂肪族ポリオール(b122)のAO付加物(b124)、脂環式ポリオール(b125)、脂環式ポリオール(b125)のAO付加物(b126)、2価以上のフェノールのAO付加物(b127)等]とホスゲンとの反応物等が挙げられ、クラレポリオールC-590(数平均分子量:500のポリカーボネートジオール)、及びクラレポリオールC2090(数平均分子量:2000のポリカーボネートジオール)[共に(株)クラレ製]等として、市場から入手することができる。
【0038】
ポリアルキレングリコール(b11)と共に用いる他のポリオール(b12)としては、好ましくは、脂肪族ジオール(b121)、脂肪族ポリオール(b122)、(b121)のAO付加物(b123)、(b122)のAO付加物(b124)、ポリカーボネートポリオール(b130)であり、更に好ましくはグリセリンのAO付加物、ペンタエリスリトールのAO付加物及び3-メチル-1,5-ペンタンジオールと1,6ヘキサンジオールとホスゲンとの反応物であるポリカーボネートポリオールである。前記の他のポリオール(b12)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0039】
ポリオール(b1)としては、放熱材組成物を成形して成形体とするときの成形性に優れるという観点から、一分子当たり平均して水酸基を少なくとも2個以上有するものが好ましい。
【0040】
ポリオール(b1)の数平均分子量は、放熱材組成物を成形して成形体とするときの形性に優れるという観点から、300~2,500であることが好ましく、600~2,000であることが更に好ましい。
【0041】
イソシアネート(b2)としては、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、及び、これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0042】
鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数4~20の鎖状脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられ、好ましくはエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0043】
脂環式ポリイソシアネートとしては、炭素数6~17の脂環式ポリイソシアネート等が挙げられ、好ましくはイソホロンジイソシアネート、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート及び2,5-又は2,6-ノルボルナンジイソシネート等が挙げられる。脂環式ポリイソシアネートとしては、デスモジュールI[住化コベストウレタン(株)]などとして市場から入手することができる。
【0044】
芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数8~22の芳香族ポリイソシアネート等が挙げられ、好ましくは1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-又は2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m-又はp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、m-又はp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、m-又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)及びα,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0045】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体は、ポリイソシアネート(前記の鎖状脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネート等)の3量体等が挙げられる。前記のイソシアヌレート体は、TLA-100[旭化成(株)]等として、市場から入手することができる。
【0046】
イソシアネート(b2)のうち、放熱材組成物を成形して成形体とするときの成形性に優れるという観点から、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、鎖状脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体及び脂環式ポリイソシアネートのイソシアヌレート体が好ましい。
イソシアネート(b2)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0047】
ポリオール(b1)とイソシアネート(b2)とのイソシアネートインデックス[イソシアネート(b2)が有するイソシアネート基の合計モル数/ポリオール(b1)が有する水酸基の合計モル数]は、0.2~1.0(さらに好ましくは0.5~0.8)であることが好ましい。イソシアネートインデックスが前記範囲であると、放熱材の柔軟性が良好となる。
【0048】
放熱材組成物中のウレタン樹脂(B)の含有量は、0℃~50℃の温度域で粘着性を発現可能で、粘着性が発現した後も柔軟性に優れるという観点から、放熱材組成物の重量に基づき、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.1~15重量%、さらに好ましくは0.1~10重量%である。
【0049】
本発明において、ウレタン樹脂(B)の重量Wbに対する樹脂(A)の重量Waの比(Wa/Wb)は、0.1~100である。Wa/Wbが前記範囲内であることにより、0℃~50℃の温度域で粘着性を発現可能で、粘着性が発現した後も柔軟性に優れる放熱材組成物を提供できる。Wa/Wbが0.1未満であると0℃~50℃の温度域での密着性が発現しないことがあり、Wa/Wbが100を超えると粘着性発現後の柔軟性が不十分になることがある。
Wa/Wbは、好ましくは0.5以上90以下であり、より好ましくは0.7以上85以下である。
【0050】
本発明において、樹脂(A)とウレタン樹脂(B)との合計重量の割合が、放熱組成物の合計重量に基づいて、好ましくは2~30重量%、より好ましくは7~20重量%である。
【0051】
無機充填剤(C)としては、ケイ酸塩(タルク、クレー、マイカ、及びガラス等)、金属酸化物(酸化チタン、アルミナ、シリカ、及び酸化マグネシウム等)、金属炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及びハイドロタルサイト等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウム)、金属(亜)硫酸塩(硫酸バリウム、硫酸カルシウム、及び亜硫酸カルシウム)、金属ホウ酸塩(ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、及びホウ酸ナトリウム)、金属窒化物(窒化アルミニウム、窒化ホウ素、及び窒化ケイ素等)、及び金属(金、銀、銅、及びこれらを含む合金等)等の粒子があげられる。
なかでも、熱伝導率(W/m・K)が0.5~200(更に好ましくは1~200、特に好ましくは10~200)の無機充填剤を好ましく用いることができる。無機充填剤の熱伝導率が前記の範囲であると、放熱材の用途において好適である。好適な熱伝導率を有する無機充填剤としては、例えば、アルミナ(熱伝導率:30W/m・K)及び酸化マグネシウム(熱伝導率:59W/m・K)等が挙げられる。
【0052】
放熱性が良好であるという観点から、無機充填剤(C)として好ましいのは、金属、金属酸化物、金属窒化物、及び金属炭酸塩等の粒子であり、さらに好ましいのは金属酸化物の粒子、とくに好ましいのは酸化マグネシウム粒子及びアルミナ粒子である。これらは一種のみを用いてもよいし二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
無機充填剤(C)の形状としては特に制限はなく、球状、板状、針状又は破砕状の粒子等が使用できる。放熱材組成物を成形する場合の成形性に優れるという観点から、無機充填剤(C)の形状として好ましいのは球状である。
【0054】
無機充填剤(C)が球状の場合、無機充填剤(C)の体積平均粒子径[体積基準での粒度分布における積算粒子量が50%となる粒子径]は、放熱材組成物を成形する場合の成形性に優れるという等の観点から好ましくは0.01~200μm、更に好ましくは0.1~150μmである。
無機充填剤(C)の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置[島津製作所製SALD-2000A等]を用いて、測定することができる。
【0055】
放熱材組成物を放熱材の材料として用いた場合の放熱性と機械的強度などが優れるという観点から、異なる体積平均粒子径を有する二種以上の無機充填剤(C)を用いることが好ましい。なかでも、体積平均粒子径が1μm~10μmの無機充填剤(Ea)と体積平均粒子径が10μm超~100μmの無機充填剤(Eb)とを含むことが好ましく、無機充填剤(Ea)と無機充填剤(Eb)とをEa:Ebが10:90~90:10(更に好ましくは20:80~80:20であり、特に好ましくは30:70~70:30)の重量比で含むことが好ましい。
放熱材組成物に含まれる無機充填剤(C)として、異なる体積平均粒子径を有する二種以上の無機充填剤を用いた場合、無機充填剤(C)の体積平均粒子径を測定すると2つ以上のピークを有する測定結果が得られる。これによって、異なる体積平均粒子径を有する二種以上の無機充填剤を用いたことが確認出来る。
【0056】
放熱材組成物中の無機充填剤(C)の合計含有量は、熱伝導性に優れかつ、放熱材組成物を成形する場合の成形性に優れるという観点から、放熱材組成物の重量に基づき、好ましくは70~97重量%、より好ましくは80~97重量%である。
【0057】
本発明の放熱材組成物は、樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)及び無機充填剤(C)以外の他の成分を含有していてもよい。当該他の成分としては、界面活性剤(D)、可塑剤(E)及びウレタン化触媒(F)などが挙げられる。放熱材組成物は、更に、他の成分として、ウレタン樹脂に用いられる公知の添加剤(特開2018-076537号公報に記載の酸化防止剤及び紫外線吸収剤等)を含有しても良い。
【0058】
界面活性剤(D)としては、ノニオン性界面活性剤(D1)、アニオン性界面活性剤(D2)及びカチオン性界面活性剤(D3)等が挙げられる。
【0059】
ノニオン性界面活性剤(D1)としては、例えば、エステル型ノニオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレン型ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0060】
エステル型ノニオン性界面活性剤としては、多価アルコール脂肪酸エステル型ノニオン性界面活性剤(例えばソルビタン脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステル等)並びに糖類の脂肪酸エステル型ノニオン性界面活性剤(例えばショ糖脂肪酸エステル型ノニオン性界面活性剤等)等が挙げられる。
【0061】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンと炭素数8~22の脂肪酸とのモノ~トリエステルがあげられ、具体的にはソルビタンパルミテート[花王(株)製のレオドールSP-P10等、及び理研ビタミン社製のリケマールP-300等]、ソルビタンオレイン酸モノエステル等が挙げられる。また、市場からも、脂肪酸ソルビタンエステル[三洋化成工業(株)製、イオネットS-80T]、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル[三洋化成工業(株)製、イオネットT-60V]等として入手することができる。
【0062】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリン又はポリグリセリンの重合物(重合度2~20)と炭素数8~22の脂肪酸とのモノ~トリエステルがあげられ、具体的には、ジグリセリンモノラウレート[理研ビタミン(株)製のポエムDL-100等]、ジグリセリンモノミリステート[理研ビタミン(株)製のポエムDM-100等]、ジグリセリンモノステアレート[理研ビタミン(株)製のポエムDS-100A等]、ジグリセリンモノオレート[理研ビタミン(株)製のポエムDO-100V、リケマールDO-100等]、デカグリセリンステアレート[理研ビタミン(株)製のポエムJ-0081HV、ポエムJ-0381V等]等が挙げられる。
【0063】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖と炭素数8~22の脂肪酸とのエステルがあげられ、具体的には、ショ糖ステアリン酸エステル[第一工業製薬社製のDKエステルF-50、F-70及びF-110等、三菱化学フーズ(株)製のリョートーシュガーエステルS-770、S-970、S-1170及びS-1170F等]等が挙げられる。
【0064】
ポリオキシアルキレン型ノニオン性界面活性剤としては、炭素数4~30の脂肪族アルコール、アルキル(炭素数1~30)のフェノール、炭素数4~30の脂肪族アミン又は炭素数4~30の脂肪族アミドのAO付加物(好ましい付加モルが1~30)等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン型ノニオン性界面活性剤を構成する脂肪族アルコールとしては、n-、i-、sec-又はt-ブタノール、オクタノール、及びドデカノール等が好ましく、アルキルフェノールとしては、フェノール、メチルフェノール及びノニルフェノール等が好ましく、脂肪族アミンとしては、ラウリルアミン及びメチルステアリルアミン等が好ましく、脂肪族アミドとしては、ステアリン酸アミド等が好ましい。
【0065】
アニオン性界面活性剤(D2)としては、リン酸塩型、カルボン酸塩型、硫酸エステル型及びスルホン酸塩型があげられる。
【0066】
リン酸塩型としては、炭素数4~30の脂肪族アルコール又は脂肪族アルコールのAO(炭素数2~4)1~30モル付加物のモノ又はジリン酸エステルの塩[アルカリ金属塩及び4級アンモニウム塩等]等が挙げられる。市場からもポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル[東邦化学工業(株)製、商標名:フォスファノール RS-710]等として入手することができる。
カルボン酸塩型としては、炭素数4~30の上記脂肪酸のアルカリ金属塩、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸のアルカリ金属塩等があげられる。市場からも、ポリエーテルカルボン酸[花王(株)製、カオーアキポRLM-100]等として入手することができる。
硫酸エステル型としては、炭素数4~30の前記脂肪族アルコール又は脂肪族アルコールのAO付加物の硫酸エステルアルカリ金属塩等があげられる。
スルホン酸塩型としては、アルキルフェノールのスルホン酸アルカリ金属)塩等があげられる。
【0067】
カチオン性界面活性剤(D3)としては、1~3級アミン塩型及び4級アンモニウム塩型等があげられる。
1~3級アミン塩型としては、炭素数4~30の脂肪族アミン[1級(ラウリルアミン等)、2級(ジブチルアミン等)及び3級アミン(ジメチルステアリルアミン等)等]塩酸塩、トリエタノールアミンと炭素数4~30の脂肪酸のモノエステルの無機酸(塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸等)塩等があげられ、4級アンモニウム塩型としては、炭素数4~30の4級アンモニウム(ブチルトリメチルアンモニウム、ジエチルラウリルメチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム等)の無機酸塩等が挙げられる。市場からも、ノプコパース092[サンノプコ(株)製、カチオン系界面活性剤]等として入手することができる。
【0068】
界面活性剤(D)は一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。界面活性剤(D)としては、ソルビタン脂肪酸エステル塩型ノニオン性界面活性剤及びリン酸塩型アニオン性界面活性剤が好ましく、ソルビタン脂肪酸エステル及びリン酸エステル塩がより好ましい。
【0069】
可塑剤(E)としては、フタル酸系可塑剤[ジイソノニルフタレート、ジ-(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等]、脂肪酸エステル系可塑剤[ジ-(2-エチルヘキシル)アジペート、ジ-n-デシルアジペート、ジ-(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジブチルセバケート、ジ-(2-エチルヘキシル)セバケート等]、リン酸エステル系可塑剤[トリブチルホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート等]、安息香酸系可塑剤[ポリエチレングリコール安息香酸エステル]、エポキシ化大豆油等のエポキシ系可塑剤、トリメリテート系可塑剤、ピロメリテート系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤等があげられる。市場からも、ジイソノニルフタレート[Aekyung Petrochemical(株)製、DINP]、ポリエチレングリコール安息香酸エステル[三洋化成工業、EB-300]等として入手することができる。
【0070】
ウレタン化触媒(F)としては、アミン触媒[トリエチレンジアミン、N-エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン及び1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等]及び金属触媒[ビスマストリス(2-エチルへキサノエート)、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジラウレート及びオクチル酸鉛等]等が挙げられる。市場からも、無機ビスマス触媒[日東化成(株)製、ネオスタンU-600]等として入手することができる。
【0071】
放熱材組成物が界面活性剤(D)を含有する場合、放熱材組成物の重量に基づき界面活性剤(D)を0.001~10重量%含有することが好ましく、更に好ましくは0.01~7重量%である。
【0072】
放熱材組成物が可塑剤(E)を含有する場合、放熱材組成物の重量に基づき可塑剤(E)を0.001~10重量%含有することが好ましく、更に好ましくは0.01~7重量%である。
【0073】
放熱材組成物がウレタン化触媒(F)を含有する場合、放熱材組成物の重量に基づきウレタン化触媒(F)を0.001~10重量%含有することが好ましく、更に好ましくは0.01~7重量%である。
【0074】
放熱材組成物は、樹脂(A)、ウレタン樹脂(B)及び無機充填剤(C)と、必要に応じ添加される他の成分[界面活性剤(D)、可塑剤(E)及びウレタン化触媒(F)など]を混合する方法(方法1)、樹脂(A)、ウレタン樹脂(B)の材料[ポリオール(b1)及びイソシアネート(b2)]及び無機充填剤(C)と、必要に応じ添加される他の成分[界面活性剤(D)、可塑剤(E)及びウレタン化触媒(F)など]を混合した後、ポリオール(b1)及びイソシアネート(b2)とを反応させる方法(方法2)等により製造することができる。
【0075】
方法1により放熱材組成物を製造する場合、混合方法(各成分の混合の順番、混合に用いる機器及び温度条件等)については特に限定されない。
【0076】
方法2により放熱材組成物を製造する場合、混合方法(各成分の混合の順番、混合に用いる機器及び温度条件等)については特に限定されない。方法2により放熱材組成物を製造する場合、樹脂(A)、ポリオール(b1)、イソシアネート(b2)及び無機充填剤(C)と、必要に応じ添加される他の成分を混合して混合物を得た後、当該混合物を所定条件で反応させることにより、ポリオール(b1)とイソシアネート(b2)とが反応してなるウレタン樹脂(B)を含む本発明の放熱材組成物を得ることができる。
ここで、樹脂(A)、ポリオール(b1)、イソシアネート(b2)及び無機充填剤(C)と、必要に応じ添加される他の成分を混合して混合物を成形用型に注ぎこみ、該混合物を反応させると放熱材組成物を含む成形体が得られる。
【0077】
方法2により放熱材組成物を製造する場合、放熱材組成物中のポリオール(b1)及びイソシアネート(b2)の合計重量の割合は、放熱性と、柔軟性との両立の観点から、放熱材組成物の重量に基づき、好ましくは0.01~30重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~15重量%である。
【0078】
方法2により放熱材組成物を製造する場合、混合物を反応させるときの条件(反応温度、反応時間及び圧力等)は用いる材料に応じ適宜調節しうる。
【0079】
本発明の放熱材組成物は以下の物性値を有する。
(1)放熱材組成物をシート状に成形して測定した50℃における貯蔵弾性率(Y)が104Pa~106Paである。
(2)放熱材組成物をシート状に成形して測定した0℃における貯蔵弾性率(X)と、放熱材組成物をシート状に成形して測定した50℃における貯蔵弾性率(Y)との比(X/Y)が5~10000である。
(1)および(2)の物性値を有する放熱材組成物は、樹脂(A)とウレタン樹脂(B)とを、ウレタン樹脂(B)の重量Wbに対する樹脂(A)の重量Waの比(Wa/Wb)が0.1~100となるように配合し、かつ無機充填剤(C)を含めることにより得られる。(1)および(2)の物性値を有する放熱材組成物が得られるという観点から、ウレタン樹脂(B)の重量Wbに対する樹脂(A)の重量Waの比(Wa/Wb)は、好ましくは0.5以上90以下であり、より好ましくは0.7以上85以下である。
【0080】
放熱材組成物をシート状に成形して測定した0℃における貯蔵弾性率(X)及び放熱材組成物をシート状に成形して測定した50℃における貯蔵弾性率(Y)は、放熱材組成物を厚み100μmのシートに成形し、当該成形体を用いて測定する。
具体的には前記成形体を直径8mmの円状に切り取り、アントンパール(Anton Paar)社製の動的粘弾性測定装置を使用して、振動数1Hz、せん断歪み0.1%、0~80℃の昇温過程で0℃と50℃における貯蔵弾性率を測定する。後述のtanδのピーク値も、この方法により測定する。
【0081】
本発明において、放熱材組成物をシート状に成形して測定した50℃における貯蔵弾性率(Y)が104Pa~106Paであることにより、0℃~50℃の温度域で粘着性を発現可能で、粘着性が発現した後も柔軟性に優れる放熱材組成物および放熱材を提供することができる。
50℃における貯蔵弾性率(Y)が104Pa未満であると粘着性が発現した後に柔軟性が低下し(硬化する)、106Paを超えると0℃~50℃の温度域で粘着性が十分に発現しないことがある。前記貯蔵弾性率(Y)は、粘着性及び柔軟性に優れるという観点から、好ましくは1.1×104Pa~9,7×105Paであり、より好ましくは2.0×104Pa~8.0×105Paである。
【0082】
本発明において、放熱材組成物をシート状に成形して測定した0℃における貯蔵弾性率(X)と、放熱材組成物をシート状に成形して測定した50℃における貯蔵弾性率(Y)との比(X/Y)が5~10000であることにより、0℃~50℃の温度域で粘着性を発現整可能で、粘着性が発現した後も柔軟性に優れる放熱材組成物および放熱材を提供することができる。
前記X/Yが5未満であると粘着性が発現した後に柔軟性が低下することがあり、106Paを超えると0℃~50℃の温度域で粘着性が十分に発現しないことがある。前記X/Yは、粘着性及び柔軟性に優れるという観点から、好ましくは20~9800であり、より好ましくは30~9700である。
【0083】
放熱材組成物をシート状に成形して測定したtanδのピーク値は、0℃~50℃の温度域で粘着性を十分に発現できるという観点から、0.8以上1000以下が好ましく、0.9以上500以下がより好ましい。
【0084】
本発明において、放熱材組成物の軟化点は、使用環境(例えば蓄電素子の放熱材として使用する場合など)を考慮すると、好ましくは0~50℃であり、より好ましくは15~40℃である。放熱材組成物の軟化点は樹脂(A)の軟化点の測定方法と同じ方法により測定することができる。
【0085】
本発明の放熱材は、本発明の放熱材組成物を含む。本発明の放熱材は、本発明の放熱材組成物そのものを放熱材としてもよいし、前記放熱材組成物を成形してなる成形体を放熱材としてもよいし、放熱材組成物(またはその成形体)と受熱部材とを備えるものであってもよい。
【0086】
ここで、本発明の放熱材組成物を成形してなる成形体は、例えば、上述した方法(樹脂(A)、ポリオール(b1)、イソシアネート(b2)及び無機充填剤(C)と、必要に応じ添加される他の成分を混合して混合物を成形用型に注ぎこみ、該混合物を反応させる方法)及び前記混合物を基材の上に塗布して硬化する方法などにより製造することができる。
【0087】
本発明の放熱材が本発明の放熱材組成物(またはその成形体)と受熱部材を備えるものである場合、受熱部材としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫、及び、これらの合金等からなるシート状の基材並びにグラファイトシート等が挙げられる。
熱放散性の観点から、放熱材組成物(またはその成形体)と受熱部材とが接着していることが好ましい。
【0088】
本発明の放熱材が本発明の放熱材組成物(またはその成形体)と受熱部材とを備えるものである場合、当該放熱材は前記放熱材組成物を受熱部材の上に塗布して硬化する方法、及び放熱材組成物を膜状に成形してなる膜状成形体と受熱部材とを積層して接着する方法等で製造することができる。放熱材組成物(またはその成形体)と受熱部材との接着に際しては、公知の接着剤等を用いても良く、放熱材組成物自体(またはその成形体自体)が粘着性を有するものであれば、接着剤等を用いずに放熱材組成物(またはその成形体自体)が有する粘着性によって、接触面に対して受熱部材を接着させても良い。
【0089】
本発明の放熱材が、本発明の放熱材組成物そのものから構成される場合、当該放熱材は例えば発熱部材の冷却用に用いることができる。
発熱部材とは、放熱材による冷却の対象となる部材であり、具体的には、半導体素子(CPU等)、LEDバックライト、バッテリー、およびこれらを備えた電気回路等が挙げられる。
【0090】
本発明の放熱材組成物そのものから構成される放熱材を、発熱部材の冷却用に用いる場合、熱放散性の観点から、本発明の放熱材と、発熱部材とが接着していることが好ましい。放熱材と発熱部材とが接着している態様は、本発明の放熱材組成物を発熱部材の上に塗布して硬化する方法、及び放熱材組成物を膜状に成形してなる放熱材と発熱部材とを積層して接着する方法等で製造することができる。
放熱材と発熱部材との接着に際しては、公知の接着剤等を用いても良く、放熱材組成物(またはその成形体)自体が粘着性を有するものであれば、接着剤等を用いずに、放熱材組成物(またはその成形体)自体が有する粘着性によって、発熱部材を接着させても良い。
【0091】
放熱材が放熱材組成物(またはその成形体)と受熱部材とを備える態様である場合も、発熱部材の冷却用に用いることができる。この場合、前記発熱部材と前記受熱部材とが、本発明の放熱材組成物(またはその成形体)を介して接着していることが好ましい。発熱部材と受熱部材とが接着している態様としては、電気回路等の発熱部材の片面又は両面に、前記の受熱部材が、前記の放熱材を介して接着されている態様等が挙げられる。
【実施例0092】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0093】
<製造例1>
加熱、撹拌、加減圧及び冷却が可能な耐圧反応容器中で酢酸ビニル45重量部、メタノール4.5重量部及び2-メチレン-1,3-プロパンジオールジアセテート2.2重量部を投入し70℃に昇温した後、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行い、その後、反応槽の圧力(エチレン圧力)が4.2MPaとなるようにエチレンを導入した。重合時間中、前記の圧力を維持し、開始剤として0.08重量部の2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を添加し重合を開始した。5時間加熱撹拌したのち、常圧に戻して窒素をバブリングさせて脱エチレンを行い120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)未反応の酢酸ビニルを2時間かけて除去し、エチレン-酢酸ビニル共重合体(a-1)を得た。
【0094】
<製造例2>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、酢酸エチル185重量部、メタクリル酸オクタデシル50重量部、メタクリル酸ヘキサデシル40重量部、メタクリル酸ドデシル10重量部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5重量部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.2重量部を投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で6時間重合反応を行った。室温に冷却後、酢酸エチル43重量部を加えメタクリル酸エステル共重合体(a-2)の酢酸エチル溶液を得た。
【0095】
<製造例3>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、酢酸エチル185重量部、アクリル酸ドコシル30重量部、アクリル酸オクタデシル60重量部、アクリル酸ヘキサデシル10重量部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5重量部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.2重量部を投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で6時間重合反応を行った。室温に冷却後、酢酸エチル43重量部を加えアクリル酸エステル共重合体(a-3)の酢酸エチル溶液を得た。
【0096】
<製造例4>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、酢酸エチル185重量部、アクリル酸ドコシル100重量部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5重量部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.2重量部を投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で6時間重合反応を行った。室温に冷却後、酢酸エチル43重量部を加えアクリル酸エステル共重合体(a-4)の酢酸エチル溶液を得た。
【0097】
<製造例5>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、酢酸エチル185重量部、メタクリル酸ドデシル25重量部、メタクリル酸ヘキサデシル75重量部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5重量部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.2重量部を投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で6時間重合反応を行った。室温に冷却後、酢酸エチル43重量部を加えアクリル酸エステル共重合体(a-5)の酢酸エチル溶液を得た。
【0098】
実施例及び比較例において用いた各成分は下記のとおりである。
(a-1)~(a-6)の樹脂の軟化点はDSC(セイコーインスツル(株)製)を用いてASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で測定した。
(a-1):製造例1で製造したエチレン-酢酸ビニル樹脂、軟化点20℃
(a-2):製造例2で製造したポリメタクリレート(メタクリル樹脂)、軟化点12℃
(a-3):製造例3で製造したポリアクリレート(アクリル樹脂)、軟化点35℃
(a-4):製造例4で製造したポリアクリレート(アクリル樹脂)、軟化点48℃
(a-3):製造例5で製造したポリアクリレート(アクリル樹脂)、軟化点0℃
(a-6):スチレン系熱可塑性エラストマー(クラレ(株)製、セプトン4055、スチレン-エチレン/エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体、スチレン付加量 30質量%、軟化点:180℃以上)
(b1-1):ポリオキシプロピレングリコール(三洋化成工業(株)製、サンニックス PP-600)
(b1-2):ポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製、PEG-400)
(b1-3):ポリカーボネート(クラレ(株)製、クラレポリオール C-590、数平均分子量:500)
(b1-4):ポリエステルポリオール(クラレ(株)製、クラレポリオール P-2010、数平均分子量:2000)
(b2-1):ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成(株)製、TLA-100)
(b2-2):イソホロンジイソシアネート(住化コベストウレタン(株)製、デスモジ
ュールI)
(b3-1):水添テルペン樹脂(ヤスハラケミカル(株)製、YSポリスターUH115)
(c-1):球状アルミナ(日鉄ケミカル&マテリアル製、AZ75-150、体積平均粒子径:75μm、熱伝導率:30W/m・K)
(c-2):球状アルミナ(日鉄ケミカル&マテリアル製、AZ4-75、体積平均粒子径:5.5μm、熱伝導率:30W/m・K)
(c-3):球状の酸化マグネシウム(宇部マテリアルズ(株)製、RF-10CS、体積平均粒子径:8μm、熱伝導率:59W/m・K)
(d-1):ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(東邦化学工業(株)製、フォスファノール RS-710)
(d-2):モノ脂肪酸ソルビタンエステル(三洋化成工業(株)製、イオネットS-80)
(e-1):ジイソノニルフタレート(Aekyung Petrochemical co. ltd製、DINP)
(e-2):ポリエチレングリコール安息香酸エステル(三洋化成工業(株)製、EB-300)
【0099】
<実施例1~12のシート及び比較例1~3のシートの製造>
表1に示す各成分を、表1に示す配合割合で混合して(R-1)~(R-12)の組成物及び(S-1)~(S-3)の組成物を得た。各組成物を、成形用型(縦1cm×横1cm×深さ0.2cm)を満たすように注ぎ込み、プレス機でプレスし、25℃で24時間静置することで、反応させた。これにより放熱材組成物からなる実施例1~10のシート(T-1)~(T-12)及び比較例1~3のシート(H-1)~(H-3)を得た。各シートの厚みは100μmである。実施例1~12のシート及び比較例1~4のシートについて、以下の方法により熱伝導率、0℃の貯蔵弾性率、50℃の貯蔵弾性率、tanδピーク温度、柔軟性及び密着性を評価した。結果を表1に示す。
【0100】
[評価方法]
<熱伝導率の測定>
各例のシートを、25℃で2時間静置した後、熱伝導率計「キセノンフラッシュアナライザー LFA447 NanoFlash、ネッチジャパン(株)製」を用いて、レーザーフラッシュ法にて、熱伝導率(単位:W/m・K)を測定した。熱伝導率が高いほど、熱放散性に優れることを示す。
【0101】
<粘弾性試験:0℃での貯蔵弾性率、50℃での貯蔵弾性率及びtanδピーク温度の測定>
各例のシートを直径8mmの円状に切り取り、アントンパール(Anton Paar)社製の動的粘弾性測定装置を使用して、振動数1Hz、せん断歪み0.1%、0~80℃の昇温過程で、0℃での貯蔵弾性率、50℃での貯蔵弾性率及びtanδピーク温度を測定した。
【0102】
<柔軟性の測定>
各例のシートを25℃で24時間静置した後、JIS K7312の「7.硬さ試験」の附属書2に記載のスプリング硬さ試験タイプC試験方法に準拠して測定される、50℃における硬さ(アスカ―C硬度ともいう)を測定した。アスカーC硬度は低いほうが柔軟性に優れ、50℃におけるアスカーC硬度が40以上であると、粘着性が発現した後も柔軟性に優れており好ましい。表には、下記の基準で判定した柔軟性に関する判定結果とともに測定値(カッコ内に記載)を示した。
(柔軟性の判定基準)
A:C硬度が40以下
B:C硬度が41~60
C:C硬度が60以上
【0103】
<段差追従性による密着性の評価>
各例のシートの片面を、厚さ500μmのアルミナ板に圧着して貼り合せ、片面にアルミナ板が貼り合わされた縦5cm、横5cmの方形状のサンプルシートを得た。厚さ1mm、縦10cm、横10cmの方形状のアクリル板に、深さ100μm、幅2cm、長さ10cmの2本の溝を、アクリル板の縦方向に対し平行に成形した。2本の溝は、軸心がアクリル板の横方向の中央位置から左右の端部方向に3cmの位置に配されるように成形した。
サンプルシートの各例のシートが貼付されている側の面を、アクリル板の溝が形成されている側の面の上にのせて、50℃に温調した保温容器に10分間入れた。次に保温容器から、アクリル板の上に載せたサンプルシートを取り出し、50Nの力で押圧し、室温(25℃)に戻した。次にサンプルシートが下になるようにアクリル板を持ち上げて逆さにし、1分経過したときのサンプルシートとアクリル板との様子を観察して密着性を以下の基準により評価した。
(評価基準)
〇:1分経過したときにサンプルシートが外れず、サンプルシートとアクリル板との間に気泡の混入も認められない。なお、1分経過してもサンプルシートが剥がれず、起泡の発生もない場合には、0~50℃の温度域で十分な粘着性を発揮できる。
△:1分経過したときにサンプルシートは外れないが、サンプルシートとアクリル板との間に気泡の混入が認められる。
×:1分経過前にサンプルシートが外れる。
【0104】
【0105】
本発明の放熱材組成物からなる実施例1~10のシートでは、0~50℃の温度域で十分な粘着性が発現しており、50℃におけるアスカーC硬度が良好であった。これらの結果から、本発明によれば、0℃~50℃の温度域で粘着性を発現可能で、粘着性が発現した後も柔軟性に優れる放熱材組成物および放熱材を提供することができるということが分かる。