(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161860
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20221014BHJP
C08F 4/08 20060101ALI20221014BHJP
C08F 20/00 20060101ALN20221014BHJP
【FI】
C08F2/44 Z
C08F4/08
C08F20/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061742
(22)【出願日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2021066265
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮島 徹
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 駿介
(72)【発明者】
【氏名】澤邊 朋美
【テーマコード(参考)】
4J011
4J015
【Fターム(参考)】
4J011BA03
4J011BA06
4J011BB01
4J011BB12
4J011HB02
4J011HB14
4J011HB22
4J011HB28
4J011PA26
4J011PA90
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
4J015DA12
4J015EA03
(57)【要約】
【課題】温和な温度条件で重合でき、重合開始効率が高くリビング性も高い(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体成分(A)を、カリウムアルコキシド(B)およびポリエーテル化合物(C)の存在下でアニオン重合する工程1を含み、前記工程1において、カリウムアルコキシド(B)を含む重合系内の温度を10℃~60℃とし、単量体成分(A)を重合系内に滴下または複数回に分けて添加する、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体成分(A)を、カリウムアルコキシド(B)およびポリエーテル化合物(C)の存在下でアニオン重合する工程1を含み、
前記工程1において、カリウムアルコキシド(B)を含む重合系内の温度を10℃~60℃とし、単量体成分(A)を重合系内に滴下または複数回に分けて添加する、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法。
【請求項2】
ポリエーテル化合物(C)がオキシエチレン骨格を含み、数平均分子量が250~4000であり、水酸基を有さない高分子化合物である請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法。
【請求項3】
工程1における重合系内の温度が20℃~45℃である請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法。
【請求項4】
工程1が2種以上の単量体成分(A)を1種ずつ順に重合系内に添加してアニオン重合する工程であり、2種以上の単量体成分(A)に含まれる(メタ)アクリル酸エステル単量体がそれぞれ異なる請求項1~3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル酸共重合体の製造方法。
【請求項5】
(メタ)アクリル酸エステル単量体がメタクリル酸エステル単量体である請求項4に記載の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、界面制御機能を有することから、樹脂改質剤や分散剤等の様々な用途に使用されている。近年では、高機能化の観点から所望の分子量を含み狭い分子量分布を持つ重合体、末端に官能基を有する重合体及びブロック共重合体などの、構造が高度に制御された重合体が求められている。このような重合体の製造方法としては、リビングアニオン重合法が知られている。当該リビングアニオン重合法では、リビング重合開始剤としてブチルリチウムなどの有機アルカリ金属化合物を用いて低温(例えば-78℃等)条件下で重合を行うのが一般的である。低温条件下での重合によりリビング性を保つことができるが重合速度が遅く、重合温度を0℃にするとリビング性が低下するという問題がある。
【0003】
一方、取り扱いが容易な開始剤としてアルカリ金属アルコキシドが知られているが、従来のリビングアニオン重合法において当該化合物を用いた場合、反応性が低いという問題があった。
これらの問題を解決するものとして、特許文献1においては、有機オキシ金属化合物と有機アルミニウム化合物とを組み合わせて用いるアクリル酸エステル重合体の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の発明によれば0℃以下の環境下で重合することで副反応を抑制しながらリビングに重合反応を進めてアクリル酸エステル重合体を製造することが可能である。しかし、0℃以下に制御するためのコストが必要であり、かつ汎用性の低い有機アルミニウム化合物を多量に使用するため不経済である。また、重合開始効率が低く得られる重合体が高分子量化しやすいという問題もある。
本発明は、温和な温度条件であっても重合開始効率が高くリビング性も高い(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体成分(A)を、カリウムアルコキシド(B)およびポリエーテル化合物(C)の存在下でアニオン重合する工程1を含み、前記工程1において、カリウムアルコキシド(B)を含む重合系内の温度を10℃~60℃とし、単量体成分(A)を重合系内に滴下または複数回に分けて添加する、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、温和な温度条件であっても重合開始効率が高くリビング性も高い(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体成分(A)を、カリウムアルコキシド(B)およびポリエーテル化合物(C)の存在下でアニオン重合する工程1を含み、前記工程1において、カリウムアルコキシド(B)を含む重合系内の温度を10℃~60℃とし、単量体成分(A)を重合系内に滴下または複数回に分けて添加する、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法である。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル」とは「メタクリル酸エステル」及び/又は「アクリル酸エステル」を意味する。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「メタクリレート」及び/又は「アクリレート」を意味する。
【0009】
工程1は(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体成分(A)をカリウムアルコキシド(B)およびポリエーテル化合物(C)の存在下でアニオン重合する工程である。
【0010】
単量体成分(A)に含まれる(メタ)アクリル酸エステル単量体は、アニオン重合性を有する化合物であれば、特に制限はない。
(メタ)アクリル酸エステル単量体のうち、好ましく用いることが出来る(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1)としては、例えば、直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、環状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族を有する(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、エーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、Si原子を有する(メタ)アクリル酸エステル、F原子を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリル酸エステル、ビニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、アリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び炭化水素重合体をベースとするマクロモノマー(炭化水素重合体の(メタ)アクリレート)等が挙げられる。
【0011】
直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数が1~24の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-へプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ペンタデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸n-ノナデシル、(メタ)アクリル酸n-エイコシル、(メタ)アクリル酸n-ヘンイコシル及び(メタ)アクリル酸ベヘニル等]が挙げられる。
【0012】
分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数が3~40の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸2-メチルノニル、(メタ)アクリル酸2-メチルデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルウンデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルドデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルトリデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-エチルオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルノニル、(メタ)アクリル酸2-エチルデシル、(メタ)アクリル酸2-エチルウンデシル、(メタ)アクリル酸2-エチルドデシル、(メタ)アクリル酸2-エチルトリデシル、(メタ)アクリル酸2-プロピルヘプチル、(メタ)アクリル酸2-プロピルオクチル、(メタ)アクリル酸2-プロピルノニル、(メタ)アクリル酸2-プロピルウンデシル、(メタ)アクリル酸2-プロピルドデシル、(メタ)アクリル酸2-ブチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ブチルヘプチル、(メタ)アクリル酸2-ブチルオクチル、(メタ)アクリル酸2-ブチルノニル、(メタ)アクリル酸2-ブチルデシル、(メタ)アクリル酸2-ブチルウンデシル、(メタ)アクリル酸2-オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸2-イソオクチルイソドデシル、(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-イソデシルイソテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-ドデシルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2-テトラデシルオクタデシル、(メタ)アクリル酸2-テトラデシルイコシル、(メタ)アクリル酸2-ヘキサデシルオクタデシル、(メタ)アクリル酸2-ヘキサデシルイコシル、(メタ)アクリル酸2-イソヘキサデシルイソイコシル、(メタ)アクリル酸8-メチルノニル、(メタ)アクリル酸8-メチルデシル、(メタ)アクリル酸8-メチルウンデシル、(メタ)アクリル酸8-メチルドデシル、(メタ)アクリル酸8-メチルトリデシル、(メタ)アクリル酸8-メチルテトラデシル、(メタ)アクリル酸8-エチルオクチル、(メタ)アクリル酸8-エチルノニル、(メタ)アクリル酸8-エチルデシル、 (メタ)アクリル酸8-エチルウンデシル、(メタ)アクリル酸8-エチルドデシル、(メタ)アクリル酸8-エチルトリデシル、(メタ)アクリル酸8-プロピルヘプチル、(メタ)アクリル酸8-プロピルオクチル、(メタ)アクリル酸8-プロピルノニル、(メタ)アクリル酸8-プロピルデシル、(メタ)アクリル酸8-プロピルウンデシル、(メタ)アクリル酸8-プロピルドデシル、(メタ)アクリル酸8-ブチルヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ブチルヘプチル、(メタ)アクリル酸8-ブチルオクチル、(メタ)アクリル酸8-ブチルノニル、(メタ)アクリル酸8-ブチルデシル及び(メタ)アクリル酸8-ブチルウンデシル等)]が挙げられる。
【0013】
環状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数が6~12の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル及び(メタ)アクリル酸イソボルニル等)]が挙げられる。
【0014】
芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数が6~12の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル及び(メタ)アクリル酸ナフチル等]が挙げられる。
【0015】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0016】
エーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル及びメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、ポリエーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、カリウムが配位しやすいポリエーテル構造を有しているので、単量体単位(a1)であり、かつ、ポリエーテル化合物(C)としての機能も有する。そのため、ポリエーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、別途ポリエーテル化合物(C)を用いなくても、高い重合開始効率及びブロック化率の達成が可能であり好ましい。
ポリエーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、さらに好ましくは分子鎖の末端がメチル基で水酸基(OH基)非含有の直鎖ポリエチレングリコール鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、さらに好ましくはメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。
【0017】
アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル及び(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノプロピル等が挙げられる。
【0018】
Si原子を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル等が挙げられる。
F原子を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数が1~16のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[例えば(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル及び(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル等]が挙げられる。
【0019】
(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する2~8官能の(メタ)アクリル酸エステルがあげられる。具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート及び9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能(メタ)アクリレート化合物;ならびに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びε-カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3~8官能の(メタ)アクリレート化合物等]が挙げられる。
【0020】
ビニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ビニル及び(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
アリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル等が挙げられる。
【0021】
炭化水素重合体をベースとするマクロモノマーは、炭素数2~10のアルケン(例えばエチレン、プロピレン、ノルマルブテン及びイソブテン等)並びに炭素数2~10のアルカジエン(例えばブタジエン及びイソプレン等)からなる群から選ばれる1種以上の単量体を構成単量体とする炭化水素重合体の片末端に水酸基を導入した水酸基含有(共)重合体又は前記炭化水素重合体の片末端にアミノ基を導入したアミノ基含有(共)重合体と、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応又はアミド化反応、もしくは(メタ)アクリル酸メチルとのエステル交換等により得ることができるマクロモノマーである。炭化水素重合体が、二重結合を有する場合には、水素添加により、二重結合の一部又は全部を水素化したものであってもよい。炭化水素重合体をベースとするマクロモノマーとしては、例えば、ポリブタジエン(メタ)アクリレート及び水添ポリブタジエン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0022】
これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1)のなかでも、円滑な反応の進行や重合開始効率及びブロック化率の観点から、好ましくはメタクリル酸エステルであり、より好ましくは、炭素数1~24の直鎖アルキル基を有するメタクリル酸エステル、アミノ基を有するメタクリル酸エステル及びエーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体であり、さらに好ましくは炭素数2~18の直鎖アルキル基を有するメタクリル酸エステル、N,N-ジアルキルアミノ基を有するメタクリル酸エステル及びポリエチレングリコール鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体であり、特に好ましくは、エチルメタクリレート(メタクリル酸エチル、EMA)、n-ヘキシルメタクリレート(メタクリル酸n-ヘキシル、n-HMA)、ステアリルメタクリレート(メタクリル酸オクタデシル、SMA)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、及びメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)からなる群より選ばれる少なくとも一種のメタクリル酸エステルである。
【0023】
工程1において、異なる(メタ)アクリル酸エステル単量体を2種以上用いることで(メタ)アクリル酸エステル共重合体を製造することができる。
(メタ)アクリル酸エステルを2種以上用いるときは、(メタ)アクリル酸エステル単量体ごとに単量体成分(A)を調製して用いてもよいし、異なる複数の(メタ)アクリル酸エステル単量体を1つの単量体成分(A)に含めてもよい。
工程1において、(メタ)アクリル酸エステル単量体を2種類以上用いる場合、(メタ)アクリル酸エステル単量体の添加方法、及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の組み合わせ等を調整することにより、重合の形態(ランダム及びブロック等)を調整することができる。本明細書において、「ブロック」とは、1種の単量体に由来する単位が2個以上連続している態様をいう。単量体の添加方法については後述する。
【0024】
単量体成分(A)には、(メタ)アクリル酸エステル単量体以外のアニオン重合性単量体(以下「他の単量体(a2)」ともいう)を含んでいてもよい。
他の単量体(a2)としては、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド単量体、ビニルケトン単量体、シアノアクリレート単量体、マレイミド単量体、メチレンマロン酸エステル単量体、α位置換アクリル酸エステル単量体、無水マレイン酸及び(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0025】
N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、N-デシル(メタ)アクリルアミド、N-ドデシル(メタ)アクリルアミド、N-トリデシル(メタ)アクリルアミド、N-テトラデシル(メタ)アクリルアミド、N-ペンタデシル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキサデシル(メタ)アクリルアミド、N,N-ドデシル(メタ)アクリルアミド、N-(2-オクチル)ドデシル(メタ)アクリルアミド、N-(2-イソオクチル)イソドデシル(メタ)アクリルアミド、N-(2-デシル)テトラデシル(メタ)アクリルアミド及びN-(2-イソデシル)イソテトラデシル(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有しアミノ基を有していない単量体、ならびに、N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド等のアミノ基及びアミド基を有している単量体等が挙げられる。
【0026】
ビニルケトン単量体としては、例えば、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン及びエチルイソプロペニルケトン等が挙げられる。
シアノアクリレート単量体としては、例えば、メチルシアノアクリレート、エチル-2-シアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、アリルシアノアクリレート、n-ブチルシアノアクリレート、n-オクチルシアノアクリレート及び2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0027】
マレイミド単量体としては、無置換マレイミド及びN-置換マレイミド単量体が挙げられる。N-置換マレイミド単量体としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-メチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジエチルフェニル)マレイミド、N-(2-クロロフェニル)マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルメチルマレイミド、N-(2,4,6-トリブロモフェニル)マレイミド、N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]マレイミド、N-オクタデセニルマレイミド、N-ドデセニルマレイミド、N-(2-メトキシフェニル)マレイミド、N-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド及びN-(1-ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられる。
【0028】
メチレンマロン酸エステル単量体としては、例えば、メチレンマロン酸メチルプロピル、メチレンマロン酸ジヘキシル、メチレンマロン酸ジシクロヘキシル、メチレンマロン酸ジイソプロピル、メチレンマロン酸ブチルメチル、メチレンマロン酸エトキシエチルエチル、メチレンマロン酸メトキシエチルメチル、メチレンマロン酸ヘキシルエチル、メチレンマロン酸ジペンチル、メチレンマロン酸エチルペンチル、メチレンマロン酸メチルペンチル、メチレンマロン酸エチルエチルメトキシル、メチレンマロン酸エトキシエチルメチル、メチレンマロン酸ブチルエチル、メチレンマロン酸ジブチル、メチレンマロン酸ジエチル、メチレンマロン酸ジエトキシエチル、メチレンマロン酸ジメチル、メチレンマロン酸ジ-n-プロピル、メチレンマロン酸エチルヘキシル、メチレンマロン酸フェンキルメチル、メチレンマロン酸メンチルメチル、メチレンマロン酸2-フェニルプロピルエチル、メチレンマロン酸3-フェニルプロピル及びメチレンマロン酸ジメトキシエチル等が挙げられる。
【0029】
α位置換アクリル酸エステル単量体としては、例えば、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチルが挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステル単量体および必要に応じて使用される他の単量体(a2)は、窒素ガス等の不活性ガス気流下等で予め十分に乾燥処理しておくことが重合反応を円滑に進行させる点から好ましい。乾燥処理は、例えば、水素化カルシウム、モレキュラーシーブス、活性アルミナ等の脱水・乾燥剤により行うことができる。
【0031】
単量体成分(A)は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体を含んでいればよく、1つの単量体成分(A)が(メタ)アクリル酸エステル単量体を2種以上含んでいてもよい。また単量体成分(A)は(メタ)アクリル酸エステル単量体とともに、他の単量体(a2)を1種または2種以上含んでいてもよい。工程1では1種の単量体成分(A)を用いてもよいし、2種以上の単量体成分(A)を用いてもよい。
【0032】
単量体成分(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び他の単量体(a2)以外の他の成分(単量体以外の成分)を含んでいてもよい。単量体以外の成分(a3)としては、溶媒(具体例は後述の「溶媒(D)」の説明を参照)等が挙げられる。
【0033】
工程1で用いるカリウムアルコキシド(B)としては、モノアルコールの水酸基が有する水素原子をカリウム原子で置換したカリウムアルコキシド(メトキシカリウム、エトキシカリウム、n-ブトキシカリウム、t-ブトキシカリウム、フェノキシカリウム、及び直鎖ポリエチレングリコールモノメチルカリウムアルコキシド)ならびに2官能以上のアルコール(ポリエチレングリコール等)が有する水酸基のうち2個以上の水酸基において水素原子をカリウム原子に置換した多価カリウムアルコキシド等が挙げられる。
カリウムアルコキシド(B)のうち、直鎖ポリエチレングリコールモノメチルカリウムアルコキシド等のポリエーテル鎖を有するカリウムアルコキシドは、工程1で用いるポリエーテル化合物(C)としての機能も有する。
ポリエーテル鎖を有するカリウムアルコキシドをカリウムアルコキシド(B)として用いた場合、別途ポリエーテル化合物(C)を用いなくても、高い重合開始効率及びブロック化率の達成が可能である。
【0034】
カリウムアルコキシド(B)としては、市販品を用いてもよいし、アルコール成分と強塩基性のカリウム化合物(水素化カリウム等)等を反応させることで製造したカリウムアルコキシドを用いてもよい。
【0035】
カリウムアルコキシド(B)としては、工業的使用面での利便性(発火の危険性の低さ、取り扱いの容易さ、製造の容易さ等)と重合開始能力との両立性に優れるという観点から、t-ブトキシカリウムが好ましい。
上記カリウムアルコキシド開始剤(B)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
カリウムアルコキシド(B)の合計使用量は、単量体成分(A)に含まれる単量体の量、目的物[(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体]の分子量などに応じて適宜設定できる。
カリウムアルコキシド(B)は、あらかじめ少量の溶媒に溶解させてから使用してもよい。
カリウムアルコキシド(B)は、単量体成分(A)を滴下または添加する前に重合系中に予め含めておいても良いし、単量体成分(A)中に混合しても良い。
カリウムアルコキシド(B)を単量体成分(A)中に混合して滴下または添加し、カリウムアルコキシド(B)を含む複数の単量体成分(A)を順に滴下または添加する場合、本発明の製造方法中の工程1におけるカリウムアルコキシド(B)の使用量は、複数の単量体成分(A)に含まれるカリウムアルコキシド(B)の合計使用量を意味する。
また、カリウムアルコキシド(B)を、単量体成分(A)を滴下または添加する重合系と単量体成分(A)中の両方に含む場合、本発明の製造方法中の工程1におけるカリウムアルコキシド(B)の使用量は、単量体成分(A)を滴下または添加する重合系に含まれるカリウムアルコキシド(B)の重量と単量体成分(A)に含まれるカリウムアルコキシド(B)の重量との合計使用量を意味する。
【0037】
本発明の製造方法は、工程1においてポリエーテル化合物(C)を用いる。
工程1において用いるポリエーテル化合物(C)は、アニオン重合反応の円滑な進行及び重合開始効率、ブロック化率及び共重合体の分子量の均一性などを向上する機能を有する。
【0038】
ポリエーテル化合物(C)としては、水酸基を有さないポリエーテル化合物が好ましく、ポリエーテルポリオールが有する水酸基が有する水素原子をアルキル基(好ましくは炭素数1~4、さらに好ましくはメチル基)で置換した、ポリエーテルのポリアルキルエーテルがさらに好ましく、ポリエーテルジアルキルエーテルがより好ましい。
ポリエーテルジアルキルエーテルとしては、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル及びエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体のジアルキルエーテル等が挙げられる。
ポリエーテル化合物(C)としては、重合開始効率及びブロック化率に優れるという観点から、オキシエチレン骨格を含むことが好ましい。オキシエチレン骨格を有するポリエーテル化合物は、活性水素原子を有する化合物にエチレンオキサイドを公知の方法で付加することにより製造することができる。
ポリエーテル化合物(C)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは250~4000(さらに好ましくは250~2500)である。
ポリエーテル化合物(C)としては、ポリエチレングリコールジメチルエーテルがより好ましく、Mnが500~2000であるポリエチレングリコールジメチルエーテルが特に好ましい。
【0039】
ポリエーテル化合物(C)は、単量体成分(A)を滴下または添加する前に重合系中に予め含めておいても良いし、単量体成分(A)中に混合して滴下または添加しても良い。
ポリエーテル化合物(C)を単量体成分(A)中に混合して滴下または添加し、ポリエーテル化合物(C)を含む複数の単量体成分(A)を順に滴下または添加する場合、本発明の製造方法中の工程1におけるポリエーテル化合物(C)の使用量は、複数の単量体成分(A)に含まれるポリエーテル化合物(C)の合計使用量を意味する。
また、ポリエーテル化合物(C)を、単量体成分(A)を滴下または添加する重合系と単量体成分(A)中の両方に含む場合、本発明の製造方法中の工程1におけるカポリエーテル化合物(C)の使用量は、単量体成分(A)を滴下または添加する重合系に含まれるポリエーテル化合物(C)の重量と単量体成分(A)に含まれるポリエーテル化合物(C)の重量との合計使用量を意味する。
工程1におけるポリエーテル化合物(C)の合計使用量は、重合開始効率及びブロック化率の観点から、工程1において用いるカリウムアルコキシド(B)中のカリウム1モルに対して0.05モル~50モルで使用することが好ましく、0.05~10.0モルで使用することがさらに好ましい。
なお、カリウムアルコキシド(B)として、ポリエーテル鎖を有するカリウムアルコキシドを用いた場合、ポリエーテル鎖を有するカリウムアルコキシドはポリエーテル化合物(C)としても機能する。
そのため、カリウムアルコキシド(B)として、ポリエーテル鎖を有するカリウムアルコキシドを用いることで、等モルのポリエーテル化合物(C)も同時に用いたことになる。従って、カリウムアルコキシド(B)中のカリウム1モルに対するポリエーテル化合物(C)のモル数を計算する際には、カリウムアルコキシド(B)のモル数とポリエーテル化合物(C)のモル数のそれぞれにポリエーテル鎖を有するカリウムアルコキシドのモル数を当てはめて計算を行う。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体として、ポリエーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いた場合、ポリエーテル化合物(C)としても機能する。
そのため、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてポリエーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いることで、等モルのポリエーテル化合物(C)も同時に用いたことになる。従って、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてポリエーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いた場合にカリウムアルコキシド(B)中のカリウム1モルに対するポリエーテル化合物(C)のモル数を計算する際には、ポリエーテル化合物(C)のモル数として、ポリエーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステルのモル数を当てはめて計算を行う。すなわち、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてポリエーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いた場合、ポリエーテル化合物(C)のモル数は、ポリエーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステルのモル数とポリエーテル化合物(C)として用いたポリエーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の化合物のモル数との合計モル数である。
(メタ)アクリル酸エステル単量体としてポリエーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いない場合には、カリウムアルコキシド(B)中のカリウム1モルに対するポリエーテル化合物(C)のモル数は0.1~1.0モルであることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体としてポリエーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合には、カリウムアルコキシド(B)中のカリウム1モルに対するポリエーテル化合物(C)のモル数は1.0~10モルであることがさらに好ましい。
【0040】
工程1においては、単量体成分(A)及び/又は単量体成分(A)を滴下または添加する重合系には溶媒(D)を用いてもよい。
溶媒(D)としては、特に限定されないが、取り扱い時の安全性が比較的高く、廃水への混入が生じにくく、溶媒の回収精製が容易である等の観点から、芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等)、飽和炭化水素系溶媒(ヘキサン、シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサン等)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(クロロホルム、塩化メチレン及び四塩化炭素等)、エステル系溶媒(フタル酸ジメチル等)、及びエーテル[テトラヒドロフラン(THF)等]等が好ましい。これらの溶媒(D)は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。重合の円滑な進行の観点から、特にトルエンが好ましい。
【0041】
工程1において、単量体成分(A)及び/又は単量体成分(A)を滴下または添加する重合系が溶媒(D)を含む場合、その使用量は、目的物である(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の重合度、単量体の種類、使用するカリウムアルコキシド(B)の種類、ポリエーテル化合物(C)の種類、溶媒の種類等に応じて適宜調整し得る。
円滑に重合が進行するという観点から、溶媒(D)の使用量は、単量体成分(A)1重量部に対して0.1~100重量部の範囲であることが好ましい。
【0042】
本発明の製造方法においては、重合開始効率を高く保持する観点から、単量体成分(A)を重合系に滴下または添加する前に、カリウムアルコキシド(B)とポリエーテル化合物(C)とを重合系中で混合しておくことが好ましい。
【0043】
本発明の製造方法において、(メタ)アクリル酸エステル単量体を滴下または添加したカリウムアルコキシド(B )を含む重合系の温度は、重合開始効率とリビング性との観点から、10℃~60℃である。重合系内の温度を前記範囲内とすることにより、重合開始効率が高くリビング性が高い(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法を提供できる。
本発明の製造方法によれば、従来のアニオン重合方法に比べ、重合系の温度条件を緩和することができ、室温(25℃)に近い温度条件または室温以上の温度条件であっても、高いリビング性を達成できるが、重合系内の温度が10℃未満では重合開始効率が低くなり、重合系内の温度が60℃を超えるとリビング性が低下する。
重合系内の温度は、単量体成分(A)に含まれる単量体[(メタ)アクリル酸エステル単量体及び必要に応じ用いる他の単量体(a2)]の種類等に応じて10℃~60℃の範囲で適切な温度を選択し得る。中でも、重合系内の温度は、重合開始効率及びリビング性の観点から、20℃~45℃であることが好ましい。
【0044】
本発明の製造方法において、単量体成分(A)は重合系内に滴下または複数回に分けて添加する。単量体成分(A)を滴下または複数回に分けて添加することにより、重合開始効率が高くリビング性が高い(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法を提供することができる。単量体成分(A)を重合系内に一括添加すると重合開始効率が低下することがある。一括添加とは、一度に全量を添加して重合を行うこと、又は全量が重合系に入った状態で重合を開始することを意味する。
単量体成分(A)を滴下または複数回に分けて添加するときの添加の速度は、カリウムアルコキシド(B)1モルに対する(メタ)アクリル酸エステル単量体の添加量が1分間あたり0.01~10モルとなる速度で滴下または添加することが好ましく、0.1~5モルであることがさらに好ましい。
【0045】
本発明の製造方法において、1種の(メタ)アクリル酸エステルを用いて重合を行ってもよいし、2種類以上の(メタ)アクリル酸エステルを用いて重合を行ってもよいし、1種以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体と1種以上の他の単量体(a2)を用いて重合を行ってもよい。(メタ)アクリル酸エステル単量体として1種類の単量体を用いて重合を行う場合、当該単量体を含む単量体成分(A)を調製して、重合系内に添加する。
2種類以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いて重合する場合、以下の添加方法1~4に記載の方法を用いることができる。
<添加方法1>(メタ)アクリル酸エステル単量体ごとに必要に応じて用いる他の単量体(a2)と混合して2種以上の単量体成分(A)をそれぞれ調製し、2種以上の単量体成分(A)を重合系内に同時に添加する方法。
<添加方法2>2種類以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体と必要に応じて用いる他の単量体(a2)とを含む1つの単量体成分(A)を調製し重合系内に添加する方法。
<添加方法3>(メタ)アクリル酸エステル単量体ごとに必要に応じて用いる他の単量体(a2)と混合し、含まれる(メタ)アクリル酸エステル単量体がそれぞれ異なる2種以上の単量体成分(A)を調製して、2種以上の単量体成分(A)を1種ずつ順に重合系内に添加する方法。
<添加方法4>1種または2種以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体成分(A)を2種以上調製して、2種以上の単量体成分(A)を別々に同時に重合系に添加する方法(添加方法4)等が挙げられる。
【0046】
本発明の製造方法は、高いリビング性を発揮させることができるため、高いブロック化
率が要求されるブロック共重合体の製造に特に好適であり、ブロック化率の高いブロック共重合体が得られるという観点から、上記添加方法のうち、添加方法3が好ましい。
添加方法3によれば、(メタ)アクリル酸エステル単量体ごとに調製した2種以上の単量体成分(A)を、1種ずつ順に重合系内に添加してアニオン重合することにより、ブロック化率の高いブロック共重合体を製造することができる。
【0047】
本発明の一態様として、添加方法3により2種類の(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いて(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を製造する方法について説明する。
下記の方法においては、重合系に添加する順に第1の(メタ)アクリル酸エステル単量体(第1の単量体と略記する)及び第2の(メタ)アクリル酸エステル単量体(第2の単量体と略記する)を用いてアニオン重合を行い、第1の単量体から構成される第1の単量体成分及び第2の単量体から構成される第2の単量体成分を用いてブロック共重合体の製造を行う。
まず、カリウムアルコキシド(B)およびポリエーテル化合物(C)を含む重合系内に第1の単量体から構成される第1の単量体成分を添加して重合を行う(1段目の重合)。1段目の重合を行うことにより第1の単量体が重合してなる重合体(1)が生成する。次に重合系内に第2の単量体から構成される第2の単量体成分を添加して2段目の重合を行う。2段目の重合により第1の単量体が重合してなる重合体ブロック(1)と第2の単量体が重合してなる重合体ブロック(2)とを有する重合体(2)(ブロック共重合体)が生成する。
【0048】
本発明の製造方法において、工程1のアニオン重合は、窒素、アルゴン、及びヘリウム等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。また本発明の製造方法において、工程1は重合系が均一になるように十分な撹拌条件下で重合することが好ましい。
【0049】
本発明の製造方法において、工程1の重合時間は、製造する(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の分子量及び単量体成分(A)に含まれる単量体の種類に応じて適宜設定できるが、従来の重合方法と比べて、重合を高速で進行させることが可能である。
他の重合条件(重合系の温度など)にも依存するが、例えば、メタクリル酸エステルを重合する場合は数分間以内で重合を完結させることも可能である。したがって、本発明の製造方法では、生産性が高く、かつ冷却効率が良好な管型連続重合装置でアニオン重合を行うことも可能である。
【0050】
本発明の製造方法においては、所望の重合体鎖が形成された段階で重合停止剤を反応混合物に添加することにより重合反応を停止してもよい。
重合停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、酢酸及び塩酸のメタノール溶液等のプロトン性化合物を使用することができる。重合停止剤の使用量は、その重合体の活性末端量等に応じて適宜設定できるが、カリウムアルコキシド(B)1モルに対して、1~2000モルの範囲内であることが好ましい。
【0051】
本発明の製造方法は、重合を全て終えた後、かつ重合停止剤を添加する前の段階で、末端官能基付与剤を反応系に添加する工程を含んでいてもよい。当該工程で用いる末端官能基付与剤としては、例えば、アルデヒド類、ケトン類、ハロゲン化アルキル類、二酸化炭素、ラクトン類、ラクタム類、環状エーテル類及び環状シロキサン類が挙げられ、これらを使用した場合には分子鎖の末端に水酸基、アルキル基、カルボキシル基等の官能基、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル及びポリシロキサン等の構造を有する(共)重合体を得ることができる。
【0052】
本発明の製造方法は工程1で得られた生成物から(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を分離する工程(分離工程)を含んでいてもよい。
工程1で得られた生成物から、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を分離する方法は特に制限されない。前記(共)重合体を分離取得する方法としては、例えば、生成物を前記(共)重合体の貧溶媒に注いで該(共)重合体を沈殿させる方法、生成物から溶媒を留去して、前記(共)重合体を取得する方法などが挙げられる。
【0053】
前記分離工程を行った後に得られる(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体中には、工程1で使用したカリウムアルコキシド(B)、当該カリウムアルコキシド(B)由来のカリウム化合物及びポリエーテル化合物(C)が残存していることがある。これらの残存物は、前記(共)重合体自体の物性や前記(共)重合体を用いた材料の物性に影響を与えることがあるので、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の使用目的によっては、残存物を除去する処理を行うことが好ましい。
残存物の除去方法としては、工程1を行った後、溶媒を留去し、メタノールと水の混合溶媒[メタノール/水=9/1~1/1(重量比)]を添加し、残留物を含む溶媒と沈殿する(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体とに分けて残留物を除去した(メタ)アクリル酸エステルを得る方法等が挙げられる。
【実施例0054】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例等において、化学品は常法により乾燥精製し、窒素にて脱気したものを使用した。また、化学品の移送および供給は窒素雰囲気下で行った。
【0055】
[(共)重合体の分子量の測定方法]
実施例及び比較例の1段目の重合反応で得られた重合体および2段目の重合反応で得られた(共)重合体の、数平均分子量(Mn)重量平均分子量(Mw)及びピークトップ分子量(Mp)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定した。結果を表1~表4に示す。
装置:「HLC-8120」[東ソー(株)製]
カラム:「TSK GEL GMH6」[東ソー(株)製]2本
測定温度:40℃
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液(不溶解分をグラスフィルターでろ別したもの)
溶液注入量:100μl
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0056】
[反応率の算出方法]
実施例及び比較例の1段目の重合反応の反応率及び2段目の重合反応の反応率を、1H-NMR法で測定した結果を用いて、以下の方法により算出した。結果を表1~表4に示す。
(1)1H-NMR測定
1段目の重合反応または2段目の重合反応により得られた反応溶液約30mgと1,1,2,2-テトラブロモエタン1mgを混合し混合物を得た。当該混合物に約1.0mlの重水素化クロロホルムを加え溶解して得られる溶液0.7mlをNMR用試料管に入れ、測定用試料とした。
測定試料の1H-NMR測定を以下の条件で行った。
装置:ブルカーバイオスピン社製「AVANCE III HD400」
積算回数:4回
緩和時間:1秒
(2)反応率の算出
重合反応の反応率を下記式1で定義した。
反応率(%)={[投入単量体量(g)-残存単量体量(g)]/投入単量体量(g)}×100 (式1)
式1において、投入単量体量(g)は実際に投入した単量体量(g)であり、残存単量体量(g)は(1)の1H-NMR法で測定した各数値(MM,MH,BW,BH、MN)を用いて下記式2から算出した値である。
残存単量体量(g)=(2×(MM)×(MH)×(BW))/(345.65×(BH)×(MN)) (式2)
式2におけるMM,MH,BW,BH及びMNは、以下のとおりである。
BHは、6.0ppm付近に確認されるピークの積分値(当該ピークは1,1,2,2-テトラブロモエタンのH原子由来のピーク)である。
MHは単量体の二重結合に結合するH原子由来のピークの積分値である。
MNは単量体の二重結合に結合するH原子数である。
MMは単量体の分子量(g/mol)である。
BWは添加した1,1,2,2-テトラブロモエタンの重量(g)である。
【0057】
[重合開始効率の算出方法]
1段目の重合反応における重合開始効率(1段目の重合の開始効率)を下記式3により算出し、当該重合開始効率を下記評価基準により評価した。結果を表1及び2に示す。
重合開始効率=理論数平均分子量(Mn)/実測ピークトップ分子量(Mp) (式3)
式3におけるMnは、下記式4により定義される数値であり、Mpは、上記「(共)重合体の分子量の測定方法」により測定した1段目の重合反応で得られる重合体のピークトップ分子量である。
理論数平均分子量(Mn)=単量体分子量(g/mol)×添加した単量体物質量(mol)/添加した開始剤物質量(mol) (式4)
重合開始効率は1に近ければ近い程、好ましい。以下の評価基準により評価した結果を表1~表4に示す。
(評価基準)
A:重合開始効率が0.6以上1以下
B:重合開始効率が0.4以上0.60未満
C:重合開始効率が0.4未満
【0058】
[ブロック化率の算出方法]
ブロック化率は下記式5により定義した。式5によりブロック化率を算出し、当該ブロック化率を下記評価基準により評価した。結果を表1及び2に示す。
ブロック化率=[(Mp2)-(Mp1)]/[(理論Mn2)-(Mp1)] (式5)
式5におけるMp1及びMp1は以下の通りである。
Mp1:上記「(共)重合体の分子量の測定方法」により測定した1段目の重合反応で得られる重合体の実測ピークトップ分子量である。
Mp2:上記「(共)重合体の分子量の測定方法」により測定した2段目の重合反応で得られる重合体の実測ピークトップ分子量である。
理論Mn2:2段目の重合反応で得られる重合体の理論数平均分子量(Mn)であり、下記式6で定義した。
理論Mn2=(Mp1)+[{(Mp1)/((G1)×(R1)/100)}×(M1)×(1-(R1)/100)×(Mw1)]+[{(Mp1)/((G1)×(R1)/100)}×(M2)×(R2)/100×(Mw2)] (式6)
式6におけるMp1、G1、R1、R2、M1、M2、Mw1及びMw2は以下の通りである。
Mp1は上記「(共)重合体の分子量の測定方法」により測定した1段目の重合反応で得られる重合体の実測ピークトップ分子量である。
G1は1段目の重合反応で投入した単量体の重量(g)である。
R1は1段目の重合反応の反応率(%)である。
R2は2段目の重合反応の反応率(%)である。
M1は、1段目の重合反応で投入した単量体の物質量(mol)である。
M2は、2段目の重合反応で投入した単量体の物質量(mol)である。
Mw1は、1段目の重合反応で投入した単量体の分子量(g/mol)である。
Mw2は、2段目の重合反応で投入した単量体の分子量(g/mol)である。
ブロック化率は1に近ければ近い程、好ましい。リビング性が高いとブロック化率が高くなるので、ブロック化率が高いとリビング性も高い。ブロック化率は以下の評価基準により評価した。
(評価基準)
A:ブロック化率0.6以上1以下
B:ブロック化率0.4以上0.60未満
C:ブロック化率0.4未満
【0059】
表1~表4に略号で記載した各成分は下記のとおりである。
n-HMA:メタクリル酸n-ヘキシル(分子量:170.25)
EMA:エチルメタクリレート(分子量:114.14)
DMAEMA:ジメチルアミノエチルメタクリレート(分子量:157.21)
SMA:ステアリルメタクリレート(分子量:338.58)
PEGMA(n=9):メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(分子量:500、ポリエーテル化合物(C)としても機能する)
PEGMA(n=20):メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(分子量:1096、ポリエーテル化合物(C)としても機能する)
EA:エチルアクリレート(分子量:100.1)
t-BuOK:t-ブトキシカリウム(分子量:112.21)
PEG/KH:直鎖ポリエチレングリコールモノメチルアルコール(分子量:2000)と水素化カリウムを反応させることで得られた直鎖ポリエチレングリコールモノメチルカリウムアルコキシド(ポリエーテル化合物(C)としても機能する)
PEG(両末端Me):ポリエチレングリコールジメチルエーテル(Mnは表に記載)
THF:テトラヒドロフラン
【0060】
[実施例1]
(1)1段目の重合
窒素置換した100mlのガラス製反応容器内に、THFを40g、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(Mn:1000)を0.4g(0.4mmol)及びt-ブトキシカリウムを0.2g(1.56mmol)を加え、水浴下に撹拌しながら反応容器を45℃に温調した。反応容器内の溶液を撹拌しながら、メタクリル酸n-ヘキシル(第1の単量体)6.6gを10分かけて等速で滴下して重合を行い、さらに10分間攪拌し、重合体(1)を含む重合体溶液(1)を得た。
重合体溶液(1)の一部を用いて1H-NMR測定を行い、上記「反応率の算出方法」
により反応率を算出した。NMR測定用の試料溶液は、重合体溶液(1)0.5gをサンプリングし、これにメタノールを0.5g投入することにより調製し、当該試料溶液30mgを用いてNMR測定を行った。
また重合体溶液(1)3.5gをサンプリングし、これにメタノール3.5gを投入した溶液から、45℃、0.001~0.026MPaの条件で溶媒を留去した後、メタノールと水の混合溶媒[メタノール/水=90/10(重量比)]を10g投入し、得られた沈殿物を回収した。回収した沈殿物を130℃、0.001~0.026MPaの条件で乾燥し、重合体(1)を得た。当該重合体(1)についてGPC測定を行った。1段目の重合反応により得られる重合体(1)は、単峰性のピークを示し、Mpは5500、Mw/Mnは1.3であった。これらの結果を用いて、上記[重合開始効率の算出方法]により、重合開始効率を評価した。
【0061】
(2)2段目の重合
1段目の重合反応により得られた重合体溶液(1)を撹拌しながら、エチルメタクリレート(第2の単量体)4.2gを10分かけて等速で滴下して重合を行い、さらに10分間撹拌した。その後、反応溶液にメタノール20gを添加することで反応を停止し、重合体(2)を含む重合体溶液(2)を得た。
重合体溶液(2)の一部を用いて1H-NMR測定を行い、上記「反応率の算出方法」により反応率を算出した。NMR測定用の試料溶液は、重合体溶液(2)0.5gをサンプリングし、これにメタノールを0.5g投入することにより調製し、当該試料溶液30mgを用いてNMR測定を行った。
残りの重合体溶液(2)から、45℃、0.001~0.026MPaの条件で溶媒を留去した後、メタノールと水の混合溶媒[メタノール/水=90/10(重量比)]を10g投入し、得られた沈殿物を回収した。回収した沈殿物を130℃、0.001~0.026MPaの条件で乾燥し、重合体(2)を得た。当該重合体(2)についてGPC測定を行った。2段目の重合反応後に得られる重合体(2)は、単峰性のピークを示し、Mpは8500、Mw/Mnは1.3であった。これらの結果を用いて、上記[ブロック化率の算出方法]により、ブロック化率を評価した。
【0062】
[実施例2~18及び比較例2~4]
実施例1において、表1~表4に記載の種類の材料[第1の単量体、第2の単量体、カリウムアルコキシド(B)、ポリエーテル化合物(C)及び溶剤(D)]を表1~表4に記載の量で用いたこと、単量体成分の投入方法を表1~表4に記載の方法としたこと、および重合系内の温度を表1~表4に記載の温度としたこと以外は実施例1と同じ操作を行い、実施例2~18及び比較例3~4については重合体溶液(1)、重合体(1)、重合体溶液(2)及び重合体(2)を得た。これらについて実施例1と同じ方法により評価試験を行った。結果を表1及び2に示す。なお、表4の比較例4の単量体成分の添加方法の欄に記載の「一括二段」とは、1段目の重合において第1の単量体成分を一括して添加し、2段目の重合において第2の単量体成分を一括して添加することを意味する。
比較例2では1段目の重合の反応率及び2段目の重合の反応率が低く、重合体(1)および重合体(2)が得られなかったので、重合体(1)の分子量及び重合体(2)の分子量の測定ならびに重合開始効率及びブロック化率の評価ができなかった。よって比較例2の、重合体(1)の分子量、重合体(2)の分子量、重合開始効率及びブロック化率の欄には「-」と記載した。
【0063】
[実施例19]
実施例1において、メタクリル酸n-ヘキシル6.6gに代えて、エチルメタクリレート3.6gとメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(分子量:500)0.9gを混合した単量体成分を用いたこと、エチルメタクリレート4.2gに代えて、ジメチルアミノエチルメタクリレート4.2gを用いたこと、およびTHFに代えてトルエン40gを用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、重合体溶液(1)、重合体(1)、重合体溶液(2)及び重合体(2)を得た。これらについて実施例1と同じ方法により評価試験を行った。結果を表4に示す。
なお、本例では、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートがポリエーテル化合物(C)としても機能している。したがって、表4におけるカリウムアルコキシド(B)中のカリウム1モルに対するポリエーエル化合物(C)のモル数を計算する際には、ポリエーテル化合物(C)のモル数がメトキシポリエチレングリコールメタクリレートとポリエチレングリコールジメチルエーテルとの合計モル数と等しいものとして計算した。
【0064】
[実施例20]
実施例1において、メタクリル酸n-ヘキシル6.6gに代えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(Mn:1096)を5.3g用いたこと、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(Mn:1000)0.4gを用いなかったこと、およびTHFに代えてトルエン40gを用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、重合体溶液(1)、重合体(1)、重合体溶液(2)及び重合体(2)を得た。これらについて実施例1と同じ方法により評価試験を行った。結果を表4に示す。
なお、本例では、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートがポリエーテル化合物(C)としても機能している。したがって、表4のポリエーテル化合物(C)の欄には、「PEGMA(n=20)で兼用」と記載し、表4におけるカリウムアルコキシド(B)中のカリウム1モルに対するポリエーエル化合物(C)のモル数を計算する際には、ポリエーテル化合物(C)のモル数がメトキシポリエチレングリコールメタクリレートのモル数と等しいものとして計算した。
【0065】
[実施例21]
窒素置換した100mlのガラス製反応容器(第1の反応容器)内に、30wt%の水素化カリウムのオイル分散液68mg(水素化カリウム1.7mmol)を加え、脱水ヘキサンで2回洗浄しオイルを除去し、THFを10g投入した。
第1の反応容器とは別の窒素置換した100mlのガラス製反応容器(第2の反応容器)内に、THFを30g、直鎖ポリエチレングリコールモノメチルアルコール(分子量:2000)3.2g(1.6mmol)を加え、水浴を用いて撹拌しながら反応容器を45℃に温調し溶解させ直鎖ポリエチレングリコールモノメチルアルコールのTHF溶液を得た。その後、水素化カリウムとTHFが入っている第1の反応容器に、上記直鎖ポリエチレングリコールモノメチルアルコールのTHF溶液33.2gを投入した。前記直鎖ポリエチレングリコールモノメチルアルコールのTHF溶液の投入は、一括投入すると気泡が発生することがあるため、複数回に分けて添加した。これにより直鎖ポリエチレングリコールモノメチルカリウムアルコキシドを生成した。
この直鎖ポリエチレングリコールモノメチルカリウムアルコキシドのTHF溶液を、水浴を用いて45℃に温調した。第1の反応容器内の前記溶液を撹拌しながら、メタクリル酸n-ヘキシル(第1の単量体)6.6gを10分かけて等速で滴下して重合を行い、さらに10分間攪拌し、重合体(1)を含む重合体溶液(1)を得た(1段目の重合)。
重合体溶液(1)の一部を用いて1H-NMR測定を行い、上記「反応率の算出方法」により反応率を算出した。NMR測定用の試料溶液は、重合体溶液(1)0.5gをサンプリングし、これにメタノールを0.5g投入することにより調製し、当該試料溶液30mgを用いてNMR測定を行った。
また重合体溶液(1)3.5gをサンプリングし、これにメタノール3.5gを投入した溶液から、45℃、0.001~0.026MPaの条件で溶媒を留去した後、メタノールと水の混合溶媒[メタノール/水=50/50(重量比)]を10g投入し、得られた沈殿物を回収した。回収した沈殿物を130℃、0.001~0.026MPaの条件で乾燥し、重合体(1)を得た。当該重合体(1)についてGPC測定を行った。
1段目の重合反応により得られた重合体溶液(1)を撹拌しながら、エチルメタクリレート(第2の単量体)4.2gを10分かけて等速で滴下して重合を行い、さらに10分間撹拌した。その後、反応溶液にメタノール20gを添加することで反応を停止し、重合体(2)を含む重合体溶液(2)を得た。
重合体溶液(2)の一部を用いて1H-NMR測定を行い、上記「反応率の算出方法」により反応率を算出した。NMR測定用の試料溶液は、重合体溶液(2)0.5gをサンプリングし、これにメタノールを0.5g投入することにより調製し、当該試料溶液30mgを用いてNMR測定を行った。
残りの重合体溶液(2)から、45℃、0.001~0.026MPaの条件で溶媒を留去した後、メタノールと水の混合溶媒[メタノール/水=50/50(重量比)]を10g投入し、得られた沈殿物を回収した。回収した沈殿物を130℃、0.001~0.026MPaの条件で乾燥し、重合体(2)を得た。得られた重合体溶液(1)、重合体(1)、重合体溶液(2)、及び重合体(2)は、実施例1と同じ方法により評価試験を行った。結果を表4に示す。
なお、本例でカリウムアルコキシド(B)として用いた直鎖ポリエチレングリコールモノメチルカリウムアルコキシドは、ポリエーテル化合物(C)としても機能する。したがって表4のポリエーテル化合物(C)の欄には、「PEG/KHで兼用」と記載し、表4におけるカリウムアルコキシド(B)中のカリウム1モルに対するポリエーエル化合物(C)のモル数を計算する際には、ポリエーテル化合物(C)のモル数が直鎖ポリエチレングリコールモノメチルカリウムアルコキシドのモル数と等しいものとして計算した。
【0066】
[比較例1]
実施例1において、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(Mn:1000)0.4gを用いなかったこと以外は実施例1と同じ操作を行い、重合体溶液(1)、重合体(1)、重合体溶液(2)および重合体(2)を得た。これらについて実施例1と同じ方法により評価試験を行った。結果を表4に示す。なお、この例は、ポリエーテル化合物(C)として機能する化合物を用いていない例である(表4のポリエーテル化合物(C)の欄に「添加せず」と記載)。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
表1~表4に示すように、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体成分(A)を、カリウムアルコキシド(B)およびポリエーテル化合物(C)の存在下でアニオン重合する工程1を含み、前記工程1において、カリウムアルコキシド(B)を含む重合系内の温度を10℃~60℃とし、単量体成分(A)を重合系内に滴下または複数回に分けて添加する実施例の製造方法によれば、温和な温度条件で重合でき、重合開始効率が高くブロック化率が高いという結果が得られた。これにより、本発明によれば、温和な温度条件で重合でき、重合開始効率が高くリビング性が高い(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の製造方法を提供できるということがわかる。