(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161863
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】流体噴射吐出装置、吐出ヘッドの製造方法及びプルーム特徴を改善する方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20221014BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20221014BHJP
A61M 31/00 20060101ALI20221014BHJP
A61M 11/00 20060101ALI20221014BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20221014BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20221014BHJP
B05B 1/14 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B41J2/14 501
A61M31/00
A61M11/00 F
A61M11/00 300A
B05D1/02 Z
B05D3/00 B
B05D3/00 D
B05B1/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062498
(22)【出願日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】17/225,215
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】マーラ サード・マイケル エー.
【テーマコード(参考)】
2C057
4C066
4D075
4F033
4F041
【Fターム(参考)】
2C057AG01
2C057AG14
2C057BA04
4C066AA06
4C066BB10
4C066CC05
4C066DD11
4C066EE11
4C066FF02
4C066HH01
4C066KK14
4D075AA01
4D075AA71
4D075AA76
4D075AA81
4D075AC64
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075BB47Z
4D075BB66Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DC15
4D075DC16
4D075DC30
4D075EA05
4D075EA15
4D075EA45
4D075EB33
4D075EB37
4D075EB39
4D075EC30
4D075EC37
4F033AA00
4F033BA03
4F033DA01
4F033EA02
4F033MA00
4F033NA01
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA12
4F041BA13
4F041BA34
4F041CB44
4F041CB54
(57)【要約】
【課題】流体噴射吐出装置、流体噴射吐出ヘッドの製造方法、及び流体噴射吐出ヘッドから吐出される流体のプルーム特徴を改善する方法。
【解決手段】流体噴射吐出装置は、カートリッジ本体と、カートリッジ本体に設けられた流体噴射吐出カートリッジとを含む。流体噴射吐出カートリッジは、流体と、流体噴射吐出カートリッジに取り付けられた吐出ヘッドとを含む。吐出ヘッドは、複数の流体吐出器と、複数の流体吐出器に関連付く複数の流体吐出ノズルを有するノズルプレートとを含む。複数の流体吐出ノズルのうちの少なくとも1つはノズルプレートにより定義される面に対する直交軸流経路を有し、複数の流体吐出ノズルのうちの少なくとも1つはノズルプレートにより定義される面に対する角度付軸流経路を有する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジ本体と、
前記カートリッジ本体に取り付けられた流体吹出ノズルと、
前記カートリッジ本体に設けられた、流体を含み且つ吐出ヘッドが取り付けられた流体噴射吐出カートリッジと
を含み、
前記吐出ヘッドが、複数の流体吐出器と、前記複数の流体吐出器に関連付く複数の流体吐出ノズルを有するノズルプレートとを含み、
前記複数の流体吐出ノズルのうちの少なくとも1つが前記ノズルプレートにより定義される面に対する直交軸流経路を有し、前記複数の流体吐出ノズルのうちの少なくとも1つが前記ノズルプレートにより定義される前記面に対する角度付軸流経路を有する、
流体噴射吐出装置。
【請求項2】
前記角度付軸流経路が、第1のノズルプレート層に取り付けられた第2のノズルプレート層により提供される、
請求項1に記載の流体噴射吐出装置。
【請求項3】
前記第1のノズルプレート層が、5~30ミクロンの範囲の厚さを有する、
請求項2に記載の流体噴射吐出装置。
【請求項4】
前記第2のノズルプレート層が、5~30ミクロンの範囲の厚さを有する、
請求項2に記載の流体噴射吐出装置。
【請求項5】
前記第1のノズルプレート層が、前記吐出ヘッドのためのフロー特徴層に積層される、
請求項2に記載の流体噴射吐出装置。
【請求項6】
前記第1のノズルプレート層と前記第2のノズルプレート層が、積層フォトレジスト材料層を含む、
請求項2に記載の流体噴射吐出装置。
【請求項7】
複数の流体吐出器を有する半導体基板を提供することと、
前記半導体基板に流体フロー層を施すことと、
前記流体フロー層において流体チャネルと流体チャンバとを画像形成及び現像することと、
半導体基板に流体供給ビアをエッチングすることと、
前記流体フロー層に第1のノズルプレート層を施すことと、
第1の複数のノズル孔を提供するため、前記第1のノズルプレート層を画像形成及び現像することと、
前記第1のノズルプレート層に第2のノズルプレート層を施すことと、
第2の複数のノズル孔を提供するため、前記第2のノズルプレート層を画像形成及び現像することであって、前記第2の複数のノズル孔の少なくとも一部が前記第1の複数のノズル孔からオフセットされることと
を含む、
吐出ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記第1のノズルプレート層が、5~30ミクロンの範囲の厚さを有する、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のノズルプレート層が、5~30ミクロンの範囲の厚さを有する、
請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のノズルプレート層が、前記流体フロー層に積層される、
請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のノズルプレート層が、前記第1のノズルプレート層に積層される、
請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記オフセットした第2の複数のノズル孔が、前記第2のノズルプレート層により定義される面に対する流体液滴の角度付放出を提供する、
請求項7に記載の方法。
【請求項13】
流体噴射吐出ヘッドから吐出される流体のプルーム特徴を改善するための方法であって、
吐出ヘッド基板上の流体フロー層に第1のノズルプレート層を施すことと、
第1の複数のノズル孔を提供するため、前記第1のノズルプレート層を画像形成及び現像することと、
前記第1のノズルプレート層に第2のノズルプレート層を施すことと、
第2の複数のノズル孔を提供するため、前記第2のノズルプレート層を画像形成及び現像することであって、少なくとも前記第2の複数のノズル孔の一部が前記第1の複数のノズル孔からオフセットされていることと、
前記第1のノズルプレート層及び前記第2のノズルプレート層を介して前記流体噴射吐出ヘッドから流体を吐出することと
を含む、方法。
【請求項14】
前記第1のノズルプレート層が、5~30ミクロンの範囲の厚さを有する、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のノズルプレート層が、5~30ミクロンの範囲の厚さを有する、
請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のノズルプレート層が、前記流体フロー層に積層される、
請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のノズルプレート層が、前記第1のノズルプレート層に積層される、
請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体ミスト液滴を送達するための流体噴射吐出装置に関するものであり、特に、流体噴射吐出装置のための改変された流体噴射プルーム特徴に関する。
【背景技術】
【0002】
流体吐出装置は、基板上にインクを吐出するよう設計及び使用されている。しかし、流体吐出装置の新たな使用が発展し続けている。例えば、流体吐出装置は、点鼻、経口、経肺、点眼、及び創傷ケアの応用といった、薬剤送達のためのベイパー生成装置のために用いられることができ、潤滑剤や香水といった様々な非水性流体を吐出するために用いられることができる。上記の応用のうちの多くは、流体吐出装置から液滴ミストが吐出されることを要する。しかし、従来の流体吐出装置は基板に向かって直線的に流体液滴を吐出するよう設計されている。流体液滴のミストを提供するために流体吐出装置を用いることは、従来の流体吐出装置の設計とは相反するものである。
【0003】
例えば、鼻腔スプレー装置は鼻腔内に注入される流体のミストを提供する。鼻腔スプレー装置は患者に薬剤を送達するための重要な方法となっている。このような装置は、点滴又は注射による薬剤の投与よりも利便性が高い。また、鼻腔スプレー装置は、薬剤の経口投与と比較し、薬剤のより高い生物学的利用能も提供する。経口投与される薬剤の吸収と比較し、スプレー装置により送達される薬剤は直接血流に進入して効果がより即時的となることから、スプレー装置からの薬剤の吸収は迅速である。
【0004】
図1は、人の鼻腔10の解剖学的構造の、縮尺通りでない、断面図である。脳12の一部が鼻腔10の上に示される。脳12と篩板16との間には、嗅球14が配置されている。嗅粘膜18は篩板16の下にある。鼻腔はまた、上鼻甲介20と、中鼻甲介22と、呼吸器粘膜24と、下鼻甲介26とを含む。物体28は口蓋を表す。薬剤ミストの注入は、鼻孔30と扁平上皮32とを通って鼻腔10に進入する。鼻腔スプレー装置を用いた薬剤の適切な血流への送達を達成するためには、薬剤が高度に血管形成された呼吸器粘膜へ送達されなければならない。高度に血管形成された2つの領域は、嗅部と呼吸部である。呼吸部は、薬剤吸収に利用可能な表面積を増加させる鼻甲介を含む。
【0005】
鼻腔10内の薬物の沈着のためには、より小さく、より低速な液滴が最適であると考えられる。慣性の大きい液滴は、直線的に移動して目標とされた位置のみに着地する傾向にある。慣性の小さい液滴は、空気抵抗及び気流に影響されて、より均一な薬剤送達範囲のために鼻腔全体にわたって漂う可能性が高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
堆積範囲を向上させることのできる薬剤送達のためのスプレー装置のもう1つの側面は、液滴のプルーム角である。より広いプルーム角はより大きなミスト形成を提供し、このため薬剤送達のより好ましい到達範囲を提供すると考えられる。鼻腔を介した薬剤送達のための従来の方法には、医用滴びん、スプレーチップ付きのマルチスプレーボトル、スプレーチップ付きの単回投与シリンジ、及び乾燥粉末システムが含まれる。従って、従来の薬剤送達装置は典型的に鼻腔へ特定の薬剤を送達するよう設計されており、各装置はより多様な薬剤を鼻腔経路で送達するよう適合されることができない。鼻腔薬剤送達のための従来の方法の多くは、流体のミストの鼻腔への注入を加圧容器に依存している。従って、薬剤送達装置は典型的に特定の薬剤のために設計されており、異なる薬剤を投与するよう適合されることができない。
【0007】
流体のミストを送達するための様々な装置が利用可能であるにもかかわらず、様々な薬剤を、ある範囲の速度、流体吐出回数、及びプルーム角で送達するよう調整することのできる流体ミスト吐出装置のニーズが取り残されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記を鑑み、本発明の1つの実施形態は、流体噴射吐出装置、流体噴射吐出ヘッドの製造方法、そして流体噴射吐出ヘッドから吐出される流体のプルーム特徴を改善する方法を提供する。流体噴射吐出装置は、カートリッジ本体と、カートリッジ本体に設けられた流体噴射吐出カートリッジとを含む。流体噴射吐出カートリッジは、流体と、流体噴射吐出カートリッジに取り付けられた吐出ヘッドとを含む。吐出ヘッドは、複数の流体吐出器と、複数の流体吐出器に関連付く複数の流体吐出ノズルを有するノズルプレートとを含む。複数の流体吐出ノズルのうちの少なくとも1つは、ノズルプレートにより定義される面に対する直交軸流経路を有し、複数の流体吐出ノズルのうちの少なくとも1つは、ノズルプレートにより定義される面に対する角度付軸流経路を有する。
【0009】
もう1つの実施形態において、吐出ヘッドの製造方法を提供する。該方法は、複数の流体吐出器を有する半導体基板を提供することを含む。流体フロー層が半導体基板に施される。流体フロー層において流体チャネルと流体チャンバが画像形成されて現像される。半導体基板に流体供給ビアがエッチングされる。第1のノズルプレート層が流体フロー層に施される。第1の複数のノズル孔を提供するため、第1のノズルプレート層が画像形成されて現像される。第2のノズルプレート層が第1のノズルプレート層に施される。第2の複数のノズル孔を提供するため、第2のノズルプレート層が画像形成されて現像され、第2の複数のノズル孔のうちの少なくとも一部は第1の複数のノズル孔からオフセットされる。
【0010】
もう1つの実施形態は、流体吐出ヘッドから吐出される流体のプルーム特徴を改善するための方法を提供する。該方法は、第1のノズルプレート層を吐出ヘッド基板上の流体フロー層に施すことと、第1の複数のノズル孔を提供するため、第1のノズルプレート層を画像形成及び現像することと、第2のノズルプレート層を第1のノズルプレート層に施すことと、第2の複数のノズル孔を提供するため、第2のノズルプレート層を画像形成及び現像することであって、第2の複数のノズル孔のうちの少なくとも一部が第1の複数のノズル孔からオフセットされることと、第1及び第2のノズルプレート層を介し流体噴射吐出ヘッドから流体を吐出することと含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、第1のノズルプレート層と第2のノズルプレート層は、積層フォトレジスト材料層を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、第1のノズルプレート層は、吐出ヘッドのためのフロー特徴層に積層される。
【0013】
いくつかの実施形態において、第1のノズルプレート層は、約5~約30ミクロンの範囲の厚さを有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、第2のノズルプレート層は、約5~約30ミクロンの範囲の厚さを有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、角度付軸流経路は、第1のノズルプレート層に取り付けられた第2のノズルプレート層により提供される。
【0016】
いくつかの実施形態において、オフセットされたノズル孔の部分は、第2のノズルプレート層により定義された面に対する流体液滴の角度付けた放出を提供する。
【0017】
ここで説明される装置の利点は、装置を異なる流体特徴を有する多様な流体に用いることが可能なことである。装置は、直交及び角度付流体流路を有する流体吐出器から流体を吐出するため、交互又は同時に流体吐出器を作動させることにより、様々なプルーム角を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、人の鼻腔及び頭蓋骨の一部の、縮尺通りでない、断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の1つの実施形態による薬剤送達装置の、縮尺通りでない、断面図である。
【
図3】
図3は、吐出ヘッドからの液滴吐出により生成される流体噴射流及び液滴プルームを示す、吐出装置の概略図である。
【
図4】
図4は、先行技術の吐出ヘッドの、縮尺通りでない、概略断面図である。
【
図5】
図5は、半導体基板上のフロー特徴層の詳細を示す、先行技術の吐出ヘッド及びノズルプレートの、縮尺通りでない、平面図である。
【
図6】
図6は、本発明による吐出ヘッドの一部の、縮尺通りでない、概略断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の1つの実施形態による吐出ヘッドを製造方法の概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の1つの実施形態による吐出ヘッドを製造方法の概略図である。
【
図9】
図9は、本発明の1つの実施形態による吐出ヘッドを製造方法の概略図である。
【
図10】
図10は、本発明の1つの実施形態による吐出ヘッドを製造方法の概略図である。
【
図11】
図11は、第1及び第2のノズルプレート層を通るオフセットノズル孔を示す、ノズルプレートの一部の、縮尺通りでない、平面図である。
【
図12】
図12は、
図7~10に図示された方法により製造された吐出ヘッドの、縮尺通りでない、概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の目的のため、下記用語を定義する:
a)プルームとは、空気抵抗及び気流の影響を受け、より均一な到達範囲のために鼻腔全体にわたり漂う可能性が高い低慣性の液滴のランダムに方向づけられたミストを意味する。
【0020】
b)プルーム角とは、プルーム中のランダムに方向づけられたミストの円錐形のボリュームの角度の尺度である。
【0021】
c)プルーム高とは、流体吐出ヘッドの出口からプルームの総移動距離までを測定した、プルーム中の液滴のミストの全高の尺度である。
【0022】
d)流体噴射長とは、吐出ヘッドの出口からプルーム角の頂点まで吐出された高慣性液滴の長さの尺度である。
【0023】
e)バーストとは、個別のノズルから液滴が吐出される回数として定義される。流体のバーストは、関連付くノズルを介し流体を吐出するために十分な大きさの一連の電圧パルスにより流体吐出器が発射されたときに起こる。
【0024】
f)バースト長とは、バースト毎に各流体吐出器が発射される合計回数として定義される。
【0025】
g)バースト遅延とは、個別のバーストの間の時間量として定義される。
【0026】
h)オフセットノズル孔とは、第1のノズルプレート層におけるノズル孔の中心が、隣接する第2のノズルプレート層におけるノズル孔の中心から所定量オフセットされていることを意味する。
【0027】
流体噴射吐出装置100の図示を、
図2において縮尺通りでない断面図にて表す。該装置は、流体吹出ノズル104が取り付けられたカートリッジ本体102を含む。カートリッジ本体102内に流体噴射吐出カートリッジ106が設けられる。流体噴射吐出カートリッジ106は、装置100により分注すべき流体を含む。ロジックボード108がカートリッジ本体102内に設けられ、ロジックボードコネクタ110を介して流体噴射吐出カートリッジ106上の吐出ヘッド112に電気接続される。以下により詳細に説明するように、吐出ヘッド112は、複数の流体吐出ノズルと、関連付く流体吐出器とを含む。どの流体吐出器を作動させるか制御することにより吐出ヘッドから吐出される流体のプルーム特徴を改変するために、吐出ヘッド112を制御するよう制御アルゴリズムを実行するため、ロジックボード108上又は吐出ヘッド112上にはプロセッサ114が設けられる。カートリッジ本体102は、吐出ヘッド112に電気を提供するため、ロジックボード108と電気接続された充電式電池116を含んでよい。電源スイッチ118が装置100を起動させるために用いられる。異なる薬液との使用のためにプロセッサを再プログラムするため、USB入力120も含まれてよい。ユーザによるオンデマンドで液滴ミストの送達を開始するため、作動ボタン122が用いられてよい。
【0028】
多様な吐出ヘッド112が上述した装置100で用いられてよい。従って、吐出ヘッド112は、サーマル噴射吐出ヘッド、バブル噴射吐出ヘッド、又は圧電噴射吐出ヘッドから選択されてよい。各上記吐出ヘッドは必要に応じて流体の噴霧を生成でき、以下で説明するように、様々な流体プルーム特徴を提供するようプログラムされることができる。
【0029】
紙といった基板に到達するよう2~3mmを直線にて液滴を吐出するよう設計された従来のインクジェット吐出ヘッドとは異なり、ここで説明する装置100は、流体液滴を更に気流中にミストとして吐出するよう設計される。流体噴射吐出装置100が鼻腔スプレー装置として用いられるとき、流体液滴のミストは鼻腔の粘膜領域に到達することが好ましい。
図3は、比較的高速な流体噴射流204と、周囲空気流を漂う流体ミストの低速プルーム206とを形成するよう流体を吐出するための吐出ヘッド202を有する、流体噴射吐出装置200の概略図である。プルーム高PHとプルーム角PA,並びに流体噴射流長JLといった、プルーム206の特徴は、吐出ヘッド202が如何に動作されるかに影響され得る。例えば、より幅広いプルーム206は、液滴が吐出ヘッド202から吐出されるときの液滴間の衝突による結果であり得る。プルーム206に影響するもう1つの特徴は、吐出ヘッド202からの液滴の飛沫同伴である。高速液滴は吐出ヘッド202に垂直な空気流を形成する傾向にあり、これは液滴を吐出ヘッド202からより遠くへ引き離すよう、吐出ヘッド202により吐出される後続の液滴を巻き込む。従って、空気飛沫同伴は流体噴射流204とプルーム206の両方に影響を及ぼす可能性がある。
【0030】
理論的考察に縛られることを望まずとも、ノズルプレートにより定義される面に対する流体液滴角度がプルーム角(PA)に影響を与える可能性があると考えられる。角度付流体液滴は、空気流中で他の流体液滴と相互作用すると考えられる。異なる角度付軌道の流体液滴の相互作用は、より広いプルーム角をもたらす。より広いプルーム角は、より広い目標領域上への流体液滴到達のための、より大きなミスト形成を提供すると考えられる。
【0031】
図4を参照し、フロー特徴層304に取り付けられた厚さTを有する単一層ノズルプレート302を有する吐出ヘッド300の概略断面図を表す。フロー特徴層302は、半導体基板310の流体供給ビア308から流体チャンバ312へと流体を導くための流体フローチャネル306を含む。流体チャンバ312は、ノズルプレート302のノズル孔316を介して流体を吐出するための流体吐出器314を含む。ノズル孔316を通る流路を、ノズルプレート302の表面320により定義される面に直交する矢印318により示す。
【0032】
吐出ヘッドの平面図を、流体供給ビア308の両側に設けられた複数のノズル孔316を表す
図5に図示する。流体吐出器は、上述したようにミスト形成のための流体液滴を提供するため、同時に、順に、互い違いに、又は所定のグループにおいて作動されることができる。たとえ周波数、パルス幅、バースト長、又はバースト遅延といった流体吐出器パラメータが改変されたとしても、従来の流体吐出ヘッドのためのこれらパラメータの改変範囲は所望のプルーム特徴を得るには十分でない可能性がある。
【0033】
従って、本発明は、複数のノズル孔を含む吐出ヘッドを提供し、ノズル孔の少なくとも1つが直交軸流経路を有し、ノズル孔の少なくとも1つが角度付軸流経路を有する。本発明による吐出ヘッド454を
図6に表す。角度付軸流経路(矢印436)を有する1以上のノズル孔422/432と、直交軸流経路(矢印438)を有する1以上のノズル孔434とを組み合わせることにより、吐出ヘッドから吐出された液滴間の相互作用が増加し、これによって、より広いプルーム角を生成する。直交軸流ノズル434と角度付軸流ノズル422/432は、互いに隣接するか、流体供給ビア406の対向する側に位置することができ、空気流中の流体液滴間の増加された相互作用を提供するため、同時に、順に、互い違いに、又は所定のグループにて作動されてよい。
【0034】
本発明による吐出ヘッドは、
図7に示すように、半導体基板404に取り付けられたフロー特徴層402に第1のノズルプレート層400を施すことにより製造される。フロー特徴層402は、半導体基板404に流体供給ビア406を形成する前に半導体基板404にスピンコート又は積層された、ネガ型フォトレジスト材料といったフォトイメージアブル材料である。フロー特徴層402は、流体供給ビア406から流体吐出器412を含む流体チャンバ410へと流体を導くための流体フローチャネル408を含み、約10~約60ミクロンの範囲の厚さを有する。フロー特徴層402において流体チャンバ410と流体フローチャネル408が画像形成されて現像され、半導体基板404に流体供給ビア406がエッチングされると、第1のノズルプレート層400がフロー特徴層402に積層される。第1のノズルプレート層400は、約5~約30ミクロンの範囲の厚さを有してよく、ネガ型フォトレジスト材料といったフォトイメージアブル材料であてよい。
【0035】
処理の次のステップは、
図8に示すように、矢印420により示される紫外線(UV)光といった化学線を用いて第1のノズルプレート層400に第1の軸流経路長を有するノズル孔を画像形成するため、非透明領域416と透明領域418とを有するマスク414が用いられる。第1のノズルプレート層400にて画像形成を行った後、ノズル孔422を提供するため第1のノズルプレート層が現像される。
【0036】
図9において、第2のノズルプレート層424が第1のノズルプレート層400に積層される。第1のノズルプレート層400のように、第2のノズルプレート層424は約5~約30ミクロンの範囲の厚さを有するネガ型フォトレジスト材料であってよい。次いで、非透明領域428と透明領域430とを有するマスク426が、第2のノズルプレート層424にノズル孔を画像形成するために用いられる(
図10)。
図11に示すように、第1のノズルプレート層400のノズル孔422の中心は、第2のノズルプレート層424のノズル孔424の中心からオフセットされている。ただし、第1のノズルプレート層400と第2のノズルプレート層424の両方におけるいくつかのノズル孔434の中心は、オフセットがないよう一致している。
図12に示すように、オフセットノズル孔422/432は、矢印436により示されるような、ある角度で流体をノズル孔422/432から吐出させる。
図12はノズル孔434も示しており、流体は矢印438により表されるようにノズルプレート400と424との組合せにより定義される面に対して直交に吐出される。
図13と14は、ノズル孔432/422及び434の拡大図である。
図13における角度440は、ノズルプレート層400と424により定義される面442に対し約45°~約89°の範囲であってよい。
図14において、角度444は面442に対し90°である。
【0037】
第1のノズルプレート層400及び第2のノズルプレート層424を製造するために用いられ得るフォトレジスト材料は、典型的に光酸発生剤を含み、多官能エポキシ化合物、二官能エポキシ化合物、比較的高分子量のポリヒドロキシエーテル、接着増強剤、脂肪族ケトン溶媒、及び任意的に疎水性剤、のうちの1以上を含むよう配合されてよい。本発明の目的のため、「二官能エポキシ」は、分子内にエポキシ官能基が2つのみであるエポキシ化合物及び材料を意味する。「多官能エポキシ」は、分子内にエポキシ官能基が2つよりも多いエポキシ化合物及び材料を意味する。
【0038】
本発明によるフォトレジスト製剤を製造するためのエポキシ成分は、ポリフェノールのグリシジルエーテルといった芳香族エポキシドから選択されてよい。例示的な多官能エポキシ樹脂としては、約190~約250の範囲のエポキシドグラム当量を有し、130℃での粘度が約10~約60ポアズの範囲のノボラックエポキシ樹脂といった、フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルである。
【0039】
多官能エポキシ成分は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定して約3,000~約5,000の重量平均分子量、及び3を超え、好ましくは約6~約10である平均エポキシド基官能を有する。フォトレジスト製剤中の多機能エポキシ樹脂の量は、乾燥したフォトレジスト層の重量に基づき約30~約50重量%の範囲であってよい。
【0040】
二官能エポキシ化合物は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル―3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、及びビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルを含む、二官能エポキシ化合物から選択されてよい。
【0041】
例示的な二官能エポキシ化合物としては、約1000より大きいエポキシ当量を有するビスフェノール-A/エピクロロヒドリンエポキシ樹脂である。「エポキシド当量」は、1グラム相当のエポキシドを含む樹脂のグラム数である。二官能エポキシ成分の重量平均分子量は、典型的に、例えば約2800~約3500重量平均分子量といった、2500ダルトンよりも上である。フォトレジスト製剤中の二官能エポキシ成分の量は、硬化した樹脂の重量に基づき約30~約95重量%の範囲であってよい。
【0042】
例示的な光酸発生剤には、VA族元素のオニウム塩、VIA族元素のオニウム塩、及び芳香族ハロニウム塩から選択されることのできる芳香族錯体塩といった、カチオンを生成することのできる化合物又は化合物の混合物から選択されてよい。芳香族錯塩は、紫外線又は電子ビーム照射にさらされると、エポキシドとの反応を開始する酸部分を生成することができる。光酸発生剤は、ここで説明されるフォトレジスト製剤中において、硬化した樹脂の重量に基づき約5~約15重量%の範囲の量で存在してよい。
【0043】
活性光線で照射されたときプロトン酸を生成する化合物が光酸発生剤として用いられよく、芳香族ヨードニウム錯塩と芳香族スルホニウム錯塩を含むが、これに限定されない。例としては、ジ-(t-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスファート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスファート、[4-(オクチルオキシ)フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムトリフラート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4’-ビス[ジフェニルスルホニウム]ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’-ビス[ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニウム]ジフェニルスルフィドビス-ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’-ビス[ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニウム]ジフェニルスルフィドビス-ヘキサフルオロホスフェート、7-[ジ(p-トリル)スルホニウム]-2-イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロホスフェート、7-[ジ(p-トリル)スルホニオ-2-イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、7-[ジ(p-トリル)スルホニウム]-2-イソプロピルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニウムジフェニルスルフィドヘキサフルオロホスフェート、フェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニウムジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネート、4-tert-ブチルフェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニウムジフェニルスルフィドヘキサフルオロホスフェート、4-tert-ブチルフェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニウムジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネート、4-tert-ブチルフェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニウムジフェニルスルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等を含む。
【0044】
フォトレジスト製剤の調製に用いるための溶媒は、非光反応性である溶媒である。非光反応性溶媒には、γ-ブチロラクトン、炭素数1~6のアセテート、テトラヒドロフラン、低分子量ケトン、これらの混合物等を含むが、これに限定されない。非光反応性溶媒は、フォトレジスト製剤の総重量に基づき、約40~約60重量%といった、約20~約90重量%の範囲の量でノズルプレート層400と424を提供するために用いられる製剤混合物に存在する。非光反応性溶媒は、典型的に、硬化した樹脂中に残留せず、このため樹脂の硬化ステップの前又は硬化ステップ間に取り除かれる。
【0045】
フォトレジスト製剤は、シラン化合物といった接着増強剤の有効量を任意的に含んでよい。フォトレジスト製剤の成分と適合性のあるシラン化合物は、典型的に、多官能エポキシ化合物、二官能エポキシ化合物、及び光開始剤からなる群から選択された少なくとも1つと反応が可能である官能基を有する。そのような接着増強剤は、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランといった、3-(グアニジニル)プロピルトリメトキシシラン及びグリシドキシアルキルトリアルコキシシランといった、エポキシド官能基を有するシランであってよい。使用されるとき、接着増強剤は、硬化した樹脂の総重量に基づき、約1.0~約1.5重量%といった、約0.5~約2重量%の範囲の量で存在してよく、そこに含まれる全ての範囲を含む。ここで使用される接着増強剤は、フォトレジスト材料のフィルム形成及び接着特性を補助するフォトレジスト組成物に可溶な有機材料を意味すると定義される。
【0046】
ノズルプレート層のためのフォトレジスト製剤に用いることができるもう1つの任意的な成分には、疎水性剤を含む。用いられ得る疎水性剤には、シランやシロキサンといった材料を含むシリコンを含む。従って、疎水性剤は、ヘプタデカフルオロデカニルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、t-ブチルメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ナトリウムメチルシリコネート、ビニルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシルシリル)プロピル)エチレンジアミンポリメチルメトキシシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチル水素シロキサン、及びジメチルシロキサンから選択されてよい。フォトレジスト層400と424における疎水性剤の量は、乾燥した樹脂の総重量に基づき、約1.0~約1.5重量%といった、約0.5~約2重量%の範囲であってよく、そこに含まれる全ての範囲を含む。
【0047】
上記説明はフォトレジスト材料製のノズルプレート層400と424を提供しているが、第1及び第2のノズルプレート層はフォトレジスト材料層に限定されない。ポリイミド材料といった他の材料が、上述したような第1のノズルプレート層400と第2ノズルプレート層424及びこれらのノズル孔を提供するために用いられてもよい。
【0048】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のため、特に明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される量、百分率又は比率を表す全ての数値及び他の数値は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。従って、そうでないと示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明により得ることが求められる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、そして特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも言及された有効数字の数を考慮し、そして通常の丸め手法を適用することにより、解釈されるべきである。
【0049】
特定の実施形態について説明したが、出願人又は他の当業者には、現在予測していない、又は予測できない、代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物が生じうる。従って、提出された添付の特許請求の範囲及び補正された特許請求の範囲は、そのようなすべての代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物を包含することを意図している。
【符号の説明】
【0050】
10:鼻腔
12:脳
14:脳の一部、嗅球
16:篩板
18:嗅粘膜
20:上鼻甲介
22:中鼻甲介
24:呼吸器粘膜
26:下鼻甲介
28:口蓋
30:鼻孔
32:扁平上皮
100:流体噴射吐出装置
102:カートリッジ本体
104:流体吹出ノズル
106:流体噴射吐出カートリッジ
108:ロジックボード
110:ロジックボードコネクタ
112:吐出ヘッド
114:プロセッサ
116:充電式電池
118:電源スイッチ
120:USB入力
122:作動ボタン
200:流体噴射吐出装置
202:吐出ヘッド
204:流体噴射流
206:プルーム
300:吐出ヘッド
302:ノズルプレート
304:フロー特徴層
306:流体フローチャネル
308:流体供給ビア
310:半導体基板
312:流体チャンバ
314:流体吐出器
316:ノズル孔
318:矢印
320:ノズルプレートの表面
400:第1のノズルプレート層
402:フロー特徴層
404:半導体基板
406:流体供給ビア
408:流体フローチャネル
410:流体チャンバ
412:流体吐出器
414:マスク
416:非透明領域
418:透明領域
420:矢印
422:ノズル孔
424:第2のノズルプレート層
426:マスク
428:非透明領域
430:透明領域
432、434:ノズル孔
436、438:矢印
440、444:角度
442:面
454:吐出ヘッド
JL:流体噴射流長
PA:プルーム角
PH:プルーム高
T:厚さ