(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161867
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用分散液、及びそれを用いた非水電解質二次電池用電極用組成物、非水電解質二次電池用電極、非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20221014BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062795
(22)【出願日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2021066730
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡部 寛人
(72)【発明者】
【氏名】井上 茂紀
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA03
5H050CA04
5H050CA05
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA20
5H050CA21
5H050CA25
5H050CA29
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB15
5H050CB20
5H050CB22
5H050CB29
5H050DA10
5H050DA18
5H050EA08
5H050HA01
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】高い分散性を有する非水電解質二次電池用分散液の提供。優れた電池抵抗を発現可能な非水電解質二次電池用電極用組成物、並びに、該組成物を用いてなる、電池特性に優れる非水電解質二次電池用電極及び非水電解質二次電池の提供。
【解決手段】上記課題は、カーボン材料と、分散剤と、カーボネート系溶媒とを含み、カーボン材料のBET比表面積をXm2/g、カーボン材料100質量部に対する分散剤の含有量をY質量部とした場合に、Y/(X×100)の値が0.0001以上、0.006以下の範囲である非水電解質二次電池用分散液によって解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン材料と、分散剤と、カーボネート系溶媒とを含む非水電解質二次電池用分散液であって、
前記カーボン材料のBET比表面積をXm2/g、前記カーボン材料100質量部に対する前記分散剤の含有量をY質量部とした場合に、Y/(X×100)の値が0.0001以上、0.006以下の範囲である、非水電解質二次電池用分散液。
【請求項2】
前記分散剤が、ノニオン性樹脂型分散剤である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用分散液。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用分散液と、活物質と、を含む、非水電解質二次電池用電極用組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の非水電解質二次電池用電極用組成物を用いて形成された、非水電解質二次電池用電極。
【請求項5】
請求項4に記載の非水電解質二次電池用電極を備える、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に用いられるカーボン分散液、及びそれを用いた電極用組成物、電極、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の普及、携帯機器の小型軽量化及び高性能化に伴い、高いエネルギー密度を有する二次電池と、その高容量化が求められている。このような背景の下、高エネルギー密度、高電圧という特徴から、非水系電解液を用いる非水電解質二次電池として、特にリチウムイオン二次電池が多くの機器に使用されている。
【0003】
このような二次電池の分野において、例えば、特許文献1~3には、電解液又は電解液の溶剤を含む合材スラリー、及び該合材スラリーを集電体に塗工して、完全に乾燥させず正極及び負極を作製することが記載されており、特許文献1には、分散剤を用いて活物質を電解液に分散させることが記載されている。これにより、従来に比べ、樹脂量の低減、非吸湿溶媒による電池抵抗の低減、及び乾燥工程レスによる生産工程の削減、が可能となり、高容量化及び低コスト化の二次電池を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-68118号公報
【特許文献2】特開2019-40665号公報
【特許文献3】特開2017-188453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の合材スラリーは、分散剤の量が本願範囲でないため、電極の電子抵抗が高くなり電池特性が十分でないという課題がある。また、特許文献2及び3に記載の合材スラリーは、分散剤を用いておらず、合材スラリーの分散安定性及び電池特性が十分ではないという課題がある。
本発明が解決しようとする課題は、高い分散性を有する非水電解質二次電池用分散液を提供することにある。また本発明が解決しようとする課題は、優れた電池特性を発現可能な非水電解質二次電池用電極用組成物、並びに、該組成物を用いてなる、電池特性に優れる非水電解質二次電池用電極及び非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カーボン材料と、分散剤と、カーボネート系溶媒とを含む非水電解質二次電池用分散液であって、前記カーボン材料のBET比表面積をXm2/g、前記カーボン材料100質量部に対する前記分散剤の含有量をY質量部とした場合に、Y/(X×100)の値が0.0001以上、0.006以下の範囲である、非水電解質二次電池用分散液に関する。
【0007】
本発明は、前記分散剤が、ノニオン性樹脂型分散剤である、上記非水電解質二次電池用分散液に関する。
【0008】
本発明は、上記非水電解質二次電池用分散液と、活物質と、を含む、非水電解質二次電池用電極用組成物に関する。
【0009】
本発明は、上記非水電解質二次電池用電極用組成物を用いて形成された、非水電解質二次電池用電極に関する。
【0010】
本発明は、上記非水電解質二次電池用電極を備える、非水電解質二次電池に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、電解液又は電解液溶剤中において高い分散性を有する非水電解質二次電池用分散液を提供することができる。また本発明により、優れた電池特性を発現可能な非水電解質二次電池用電極用組成物、並びに、該組成物を用いてなる、電池特性に優れる非水電解質二次電池用電極及び非水電解質二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の非水電解質二次電池用分散液は、カーボン材料と、分散剤と、カーボネート系溶媒とを含み、前記カーボン材料のBET比表面積をXm2/g、前記カーボン材料100質量部に対する前記分散剤の含有量をY質量部とした場合に、Y/(X×100)の値が0.0001以上、0.006以下の範囲であることを特徴とする。
カーボン材料の比表面積と分散剤の含有量とが上記関係を満たすことで、分散剤は分散液中で遊離すること少なく、カーボン材料の表面に吸着する。そのため、優れた分散安定性が実現でき、貯蔵安定性に優れる分散液を得ることができる。また、カーボン材料表面に分散剤が過剰に吸着することがないため、導電パスが阻害されず、電極の電子抵抗を低く抑えることができ、該分散液を用いた電極を備える電池は、優れた電池特性を発揮できる。
また、本発明の非水電解質二次電池用分散液は、電解液や電解液溶剤となるカーボネート系溶媒中にカーボン材料を分散させているため、該分散液を用いて形成された電極に含まれるカーボン材料や活物質表面が電解液に馴染み易く、カーボン材料同士の間隙や粒子の細孔内部にまで電解液が浸透し易い。これにより、電極中のイオンの拡散を阻害しにくいため、電極のイオン抵抗を低減することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書において、非水電解質二次電池用分散液を「分散液」、塗膜を「電極膜」という場合がある。
【0013】
<カーボン材料>
本発明に用いるカーボン材料は、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されず、例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ミディアムサーマルカーボンブラック等)、活性炭、黒鉛、ハードカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、グラフェン系炭素材料(グラフェン、グラフェンナノプレートレット等)、ナノポーラスカーボン、炭素繊維を用いることができる。これらのカーボン材料は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0014】
[カーボンブラック]
上記カーボンブラックとしては、例えば、気体若しくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料とするケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させるチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックが挙げられる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等を使用してもよい。
これらカーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0015】
カーボンブラックは、比表面積が大きいほど、カーボンブラック粒子同士の接触点が増え電極の内部抵抗を下げるのに有利となるため好ましい。カーボンブラックの比表面積は、JISZ8830:2013に準拠したガス吸着法により求めることができる。
窒素の吸着量から求められるカーボンブラックのBET比表面積は、好ましくは20m2/g以上、より好ましくは50m2/g以上、さらに好ましくは100m2/g以上である。
カーボンブラックのBET比表面積は、電極膜中の導電パスの形成の観点から、好ましくは、1500m2/g以下である。
【0016】
[カーボンナノチューブ]
上記カーボンナノチューブは、平面的なグラファイトを円筒状に巻いた形状を有するものであり、一層のグラファイトが巻かれた構造を有する単層カーボンナノチューブ、二又は三以上の層のグラファイトが巻かれた構造を有する多層カーボンナノチューブのいずれでもよく、単層と多層とが混在するものであってもよい。
また、カーボンナノチューブの側壁はグラファイト構造でなくともよく、例えば、アモルファス構造を有する側壁を備えるカーボンナノチューブを用いることもできる。
【0017】
カーボンナノチューブの形状は限定されない。かかる形状としては、針状、円筒チューブ状、魚骨状(フィッシュボーン又はカップ積層型)、及びコイル状を含む様々な形状が挙げられ、円筒チューブ状のカーボンナノチューブを乾式処理して得られる板状又はプレートレット状の2次凝集体であってもよい。本実施形態においてカーボンナノチューブの形状は、好ましくは針状、又は円筒チューブ状である。
カーボンナノチューブは、単独の形状、又は2種以上の形状の組合せであってもよく、針状、又は円筒チューブ状のものを含むことが好ましい。
【0018】
カーボンナノチューブの形態は特に制限されず、例えば、グラファイトウィスカー、フィラメンタスカーボン、グラファイトファイバー、極細炭素チューブ、カーボンチューブ、カーボンフィブリル、カーボンマイクロチューブ及びカーボンナノファイバーが挙げられる。カーボンナノチューブは、これらの単独の形態、又は二種以上を組み合わせた形態を有していてもよい。
【0019】
カーボンナノチューブの平均外径は、好ましくは3nm以上25nm以下であり、より好ましくは5nm以上20nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上15nm以下である。カーボンナノチューブの平均外径が上記範囲であると、後述する活物質の表面がカーボンナノチューブで被覆されやすくなり、電極膜の導電性や密着性が向上する。
【0020】
ハードカーボンは、乱雑な結晶子の配列を有しており、高温で焼結しても結晶子の平面的な配列が起こり難く、難黒鉛化炭素とも呼ばれるものである。ハードカーボンとしては、例えば、ガラス状炭素、セルロース炭、木炭、砂糖炭、コールタール炭が挙げられる。
【0021】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製のケッチェンブラックEC-300J、EC-600JD、ライオナイトEC-200L等;三菱化学社製のファーネスブラック#2350、#2600、#3050B、#3030B、#3230B、#3400B等;デンカ社製のデンカブラックHS-100、FX-35等;が挙げられる。
【0022】
市販のカーボンナノチューブとしては、例えば、昭和電工社製VGCF-H、VGCF-X等;名城ナノカーボン社製カーボンナノチューブ;NTP社製NTP3003、NTP3021、NTP3121、NTP8012、NTP8022、NTP9012、NTP9112等;JEIO社製10B、6A;OCSiAl社製TUBALL等;が挙げられる。
【0023】
市販の黒鉛としては、例えば、日本黒鉛工業社製のCMX、UP-5、UP-10、UP-20、UP-35N、CSSP、CSPE、CSP、CP、CB-150、CB-100、ACP、ACP-1000、ACB-50、ACB-100、ACB-150、SP-10、SP-20、J-SP、SP-270、HOP、GR-60、LEP、F#1、F#2、F#3、CGC-20、CGC-50、CGB-20、CGB-50、PAG-60、PAG-80、PAG-120、PAG-5、HAG-10W、HAG-150等;伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50等;中越黒鉛社製のCX-3000、FBF、BF、CBR、SSC-3000、SSC-600、SSC-3、SSC、CX-600、CPF-8、CPF-3、CPB-6S、CPB、96E、96L、96L-3、90L-3、CPC、S-87、K-3、CF-80、CF-48、CF-32、CP-150、CP-100、CP、HF-80、HF-48、HF-32、SC-120、SC-80、SC-60、SC-32、RA-3000、RA-15、RA-44、GX-600、G-6S、G-3、G-150、G-100、G-48、G-30、G-50等;が挙げられる。
【0024】
市販のグラフェン系炭素としては、例えば、XGSciences社製グラフェンナノプレートレットxGnP-C-300、xGnP-C-500、xGnP-C-750、xGnP-M-5、xGnP-M-15、xGnP-M-25、xGnP-H-5、xGnP-H-15、xGnP-H-25等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
<分散剤>
本実施形態の分散剤は、カーボン材料を分散安定化できるものであれば特に限定されず、例えば、界面活性剤、樹脂型分散剤、顔料誘導体を使用することができる。
【0026】
[界面活性剤]
界面活性剤は主に、アニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性に分類され、カーボン材料の分散に要求される特性に応じて、適宜好適な分散剤を、好適な配合量で使用することができる。
【0027】
[樹脂型分散剤]
本明細書における樹脂型分散剤は、重量平均分子量が500以上であり、塩基性官能基を有する樹脂である塩基性樹脂型分散剤、酸性官能基を有する樹脂である酸性樹脂型分散剤、塩基性官能基及び酸性官能基を有する樹脂である両性樹脂型分散剤、ノニオン性樹脂であるノニオン性樹脂型分散剤が挙げられる。
【0028】
塩基性樹脂型分散剤としては、環状を含むアミノ基又は4級アンモニウム塩を有する樹脂が挙げられ、上記アミノ基は、その一部若しくは全てが中和されていてもよい。
このような樹脂型分散剤としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等の重合性単量体の単独重合物、又は他の重合性単量体との共重合物、及びそれらの酸中和物が挙げられる。
【0029】
酸性樹脂型分散剤としては、カルボキシ基、スルホ基又はリン酸基を有する樹脂が挙げられ、上記の酸性官能基は、その一部若しくは全てが中和されていてもよい。
このような樹脂型分散剤としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等のカルボキシ基を有する重合性単量体;ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホ基を有する重合性単量体;モノ(2-アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等のリン酸基を有する重合性単量体;の単独重合物、又は他の重合性単量体との共重合物、及びそれらのアルカリ中和物が挙げられる。
【0030】
両性樹脂型分散剤としては、前記塩基性骨格と前記酸性骨格を共に含有するものが挙げられ、スチレン-マレイン酸-N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの共重合物等を用いることができる。
【0031】
ノニオン性樹脂型分散剤は、前記塩基性樹脂型分散剤、酸性樹脂型分散剤、両性樹脂型分散剤以外の樹脂を指し、好ましくは水溶性樹脂である。
このようなノニオン性樹脂型分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体、ポリアクリルアミド、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリアルキレングリコール、セルロース誘導体(セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、シアノエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)が挙げられる。
【0032】
樹脂型分散剤は、好ましくはノニオン性樹脂型分散剤であり、より好ましくはポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体である。
【0033】
樹脂型分散剤の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上であり、より好ましくは5,000以上であり、さらに好ましくは20,000以上である。重量平均分子量が上記範囲であると分散体の安定性や電池特性の向上に繋がるため好ましい。
【0034】
[顔料誘導体]
顔料誘導体としては、例えば、塩基性官能基を有する顔料誘導体、酸性官能基を有する顔料誘導体、塩基性官能基及び酸性官能基の両方を有する顔料誘導体が挙げられる。
上記官能基によってカーボン材料の表面に作用又は吸着できるものであれば、その骨格は特に限定されないが、電子伝導性が重要となる電池性能の観点から、好ましくは、アントラキノン誘導体、アクリドン誘導体、トリアジン誘導体である。
即ち、好適な塩基性官能基を有する顔料誘導体として、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、塩基性官能基を有するトリアジン誘導体等を用いることができ、好適な酸性官能基を有する顔料誘導体として、酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、酸性官能基を有するアクリドン誘導体、酸性官能基を有するトリアジン誘導体等を用いることができる。
【0035】
本発明における分散剤は、カーボネート系溶剤との相溶性と分散安定性の観点から、好ましくは樹脂型分散剤であり、より好ましくはノニオン系樹脂である。
【0036】
また、本発明の非水電解質二次電池用分散液は、さらに無機塩基及び無金属塩を含んでもよい。
無機塩基及び無機金属塩としては、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属の少なくとも一方を有する化合物であることが好ましく、詳しくは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、バナジウム酸塩、モリブデン酸塩、ニオブ酸塩、並びにホウ酸塩等が挙げられる。中でも容易にカチオンを供給できる観点から、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩化物、水酸化物、炭酸塩が好ましい。
アルカリ金属の水酸化物は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物は、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが挙げられる。アルカリ金属の炭酸塩は、例えば、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが挙げられる。特に好ましくは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムである。
【0037】
また、本発明の非水電解質二次電池用分散液は、さらに、消泡剤を含んでもよい。
消泡剤は、市販の消泡剤、湿潤剤、親水性有機溶剤水溶性有機溶剤等、消泡効果を有するものであれば任意に用いることができ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような消泡剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アセチレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、プロピレングリコール、その他グリコール類等のアルコール系;ジエチレングリコールラウレート、グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノラウレート、天然ワックス等の脂肪酸エステル系;ポリオキシアルキレンアミド、アクリレートポリアミン等のアミド系;リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等のリン酸エステル系;アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等の金属セッケン系;動植物油、胡麻油、ひまし油等の油脂系;灯油、パラフィン等の鉱油系;ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン、フルオロシリコーン油等のシリコーン系;が挙げられる。
【0038】
<カーボネート系溶媒>
カーボネート系溶媒は、特に制限されず、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートが挙げられる。
これらのカーボネート系溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、カーボネート系溶媒と互いに混ざり合う溶剤を1種以上加えて使用してもよい。
【0039】
<非水電解質二次電池用分散液>
本発明の非水電解質二次電池用分散液は、カーボン材料のBET比表面積をXm2/g、カーボン材料100質量部に対する分散剤の含有量をY質量部とした場合に、Y/(X×100)の値が0.0001以上、0.006以下の範囲であることが重要であり、上記範囲とすることで、高濃度、低粘度、かつ長期保存安定性が良好な非水電解質二次電池用分散液を得ることができる。
Y/(X×100)の値は、更に良好な分散液や電池特性を得る観点から、好ましくは0.00015以上、より好ましくは0.0006以上である。また、好ましくは0.005以下であり、より好ましくは0.002以下である。好適な範囲は0.0001以上、0.005以下であり、より好ましくは0.00015以上、0.005以下であり、さらに好ましくは0.0006以上、0.002以下である。
上記好適な範囲とすることで、カーボンブラック分散液の低粘度化が可能となり、高濃度で分散性と貯蔵安定性に優れた分散液を容易に得ることができる。
そして、上記の範囲においては、電極のイオン・電子抵抗をより低く抑えることができ、良好な電池特性の発現できる。
【0040】
本発明の非水電解質二次電池用分散液は、非水電解質二次電池用分散液の質量を基準とするカーボン材料の含有率を0.5質量%以上3.0質量%以下とした場合における粘度が、10,000mPa・s未満であることが好ましい。上記粘度は、B型粘度計を用いて50rpmで測定した値である。
【0041】
また、本実施形態の非水電解質二次電池用分散液を得るには、カーボン材料を溶媒中に分散させる処理を行うことが好ましい。かかる処理を行うために使用される分散装置は特に限定されず、顔料分散等に通常用いられている分散機を使用することができる。
このような分散機としては、例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類;ホモジナイザー(BRANSON社製AdvancedDigitalSonifer(登録商標)、MODEL450DA、エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等、シルバーソン社製「アブラミックス」等)類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、コロイドミル(PUC社製「PUCコロイドミル」、IKA社製「コロイドミルMK」)類、コーンミル(IKA社製「コーンミルMKO」等)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS-5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;その他ロールミル;が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本実施形態の非水電解質二次電池用分散液の累積粒径D50は、好ましくは100~10,000nmであり、より好ましくは100~5,000nmである。上記累積粒径D50は、粒度分布計(マイクロトラック・ベル株式会社製、MT3000)を用いて測定することができる。
【0043】
本実施形態の非水電解質二次電池用分散液中のカーボン材料の含有率は、非水電解質二次電池用分散液の質量を基準として、好ましくは0.1~60質量%であり、より好ましくは0.2~40質量%であり、さらに好ましくは0.5~20質量%である。
【0044】
本実施形態の非水電解質二次電池用分散液中の分散剤の含有率は、上述のY/(X×100)の値が本願の範囲内となる量であればよく、カーボン材料の質量を基準として、好ましくは0.1~100質量%であり、より好ましくは0.5~80質量%であり、さらに好ましくは1~50質量%である。
【0045】
<非水電解質二次電池用電極用組成物>
本実施形態の非水電解質二次電池用電極用組成物は、上記非水電解質二次電池用分散液に、さらに活物質を含むものである。
【0046】
[活物質]
本発明における活物質とは、電池反応の基となる材料のことである。活物質は起電力から正極活物質と負極活物質に分けられる。
【0047】
(正極活物質)
正極活物質としては、特に限定はされないが、例えば、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物;導電性高分子;を使用することができる。
上記金属化合物としては、例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物が挙げられ、具体的には、MnO、V2O5、V6O13、TiO2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等を用いることができる。
上記導電性高分子としては、例えば、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェンが挙げられる。
また、上記の金属化合物と、導電性高分子とを混合して用いてもよい。
【0048】
(負極活物質)
負極活物質としては、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能なものであれば特に限定されず、例えば、金属Li、金属Liとの合金であるスズ合金やシリコン合金等の鉛合金等の合金系、LiXFe2O3やLiXFe3O4、LiXWO2(xは0<x<1の数である)、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレンやポリ-p-フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボン、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。
これら負極活物質は、1種又は複数を組み合わせて使用することもできる。
【0049】
本実施形態の非水電解質二次電池用分散液に含まれるカーボン材料をそのまま負極活物質として使用することも可能である。
【0050】
負極活物質としては、シリコン合金やケイ素酸リチウム等のシリコンを含む負極活物質(以下、シリコン系負極活物質)が好ましい。
このようなシリコン系負極活物質としては、例えば、二酸化珪素を炭素で還元して作製される冶金グレードシリコン;冶金グレードシリコンを酸処理や一方向凝固などで不純物を低減した工業グレードシリコン;シリコンを反応させて得られたシランから作製される高純度の単結晶、多結晶、アモルファスなど結晶状態の異なる高純度シリコン;工業グレードシリコンをスパッタ法やEB蒸着(電子ビーム蒸着)法などで高純度にすると同時に、結晶状態や析出状態を調整したシリコン;が挙げられる。また、シリコン系負極活物質として、シリコンと酸素の化合物である酸化珪素;シリコンと各種合金及びそれらの結晶状態を急冷法などで調整したシリコン化合物;を用いてもよい。
中でも、外側がカーボン皮膜で被覆された、珪素ナノ粒子が酸化珪素中に分散した構造を有するシリコン系負極活物質が好ましい。
【0051】
本発明では負極活物質として、シリコン系負極活物質に加えて、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末を使用することが好ましい。中でも、シリコン系負極活物質と、人造黒鉛や天然黒鉛等の炭素質粉末とを組み合わせて使用することが好ましい。
【0052】
シリコン系負極活物質の配合率は、人造黒鉛あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末の質量を基準として、好ましくは3~50質量%であり、より好ましくは5~25質量%である。
【0053】
活物質のBET比表面積は、好ましくは0.1~10m2/gであり、より好ましくは
0.2~5m2/gであり、さらに好ましくは0.3~3m2/gである。
また、活物質の平均粒子径は、好ましくは0.5~50μmであり、より好ましくは2~20μmである。本明細書でいう活物質の平均粒子径とは、活物質を電子顕微鏡で測定した粒子径の平均値である。
【0054】
[電解質]
本発明の非水電解質二次電池用電極用組成物は、用途に応じて電解質を含んでもよい。
電解質としては、カーボネート系溶剤に溶解しイオンが移動可能なものであれば限定されず、従来公知の様々なものを使用することができる。例えば、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)3C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、又はLiBPh4(ただし、Phはフェニル基である)等のリチウム塩を含むものが挙げられるが、これらに限定されず、ナトリウム塩やカルシウム塩を含むものも使用できる。
【0055】
[バインダー]
本発明の非水電解質二次電池用電極用組成物は、用途に応じてバインダーを含んでもよい。バインダーは、カーボン材料等の物質間を結着する役割に担うものである。
バインダーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体又は共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂;スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、共重合体を用いてもよい。
【0056】
<非水電解質二次電池用電極用組成物の製造方法>
本実施形態の電極用組成物は、従来公知の方法で製造することができ、例えば、非水電解質二次電池用分散液に活物質を添加する方法、非水電解質二次電池用分散液に活物質を添加した後、バインダーを添加する方法が挙げられる。
中でも、非水電解質二次電池用分散液に活物質を加えた後、分散させる処理を行うことが好ましい。かかる処理を行うために使用される分散装置は特に限定されず、上述の<非水電解質二次電池用分散液>の記載を援用できる。
【0057】
電極用組成物中の活物質の量は、電極用組成物の質量を基準として、好ましくは20~85質量%であり、より好ましくは30~75質量%であり、さらに好ましくは40~70質量%である。
【0058】
電極用組成物中のカーボン材料の量は、活物質の質量を基準として、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.02~5質量%であり、さらに好ましくは0.03~1質量%である。
【0059】
電極用組成物がバインダーを含む場合、電極用組成物中のバインダーの量は、活物質の質量を基準として、好ましくは0.5~10質量%であり、より好ましくは0.5~5質量%である。
【0060】
本実施形態の電極用組成物の固形分濃度は、好ましくは30~90質量%であり、より好ましくは30~80質量%であり、さらに好ましくは40~75質量%である。
【0061】
<非水電解質二次電池用電極>
本発明の非水電解質二次電池用電極は、上述の非水電解質二次電池用電極用組成物を用いて形成されなるものであり、例えば、集電体上に電極用組成物を塗工することで形成することができる。本明細書では、電極用組成物から形成される層を、電極膜、塗工膜、合材層と略基する場合がある。
【0062】
[集電体]
集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池に適したものを適宜選択することができる。集電体の材質としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス等の金属や合金が挙げられる。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したもの、穴あき箔状のもの、メッシュ状のものを使用してもよい。
【0063】
集電体上に電極用組成物を塗工する方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。このような方法としては、例えば、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、静電塗装法が挙げられる。
【0064】
非水電解質二次電池用電極の製造方法としては、電極用組成物を集電体に塗工した後に、乾燥工程を含んでもよい。乾燥工程を含む場合、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
しかし、本発明においては、乾燥工程を含まない方が、乾燥工程削減による生産工程の低減や、電極中における電解質となるイオンの拡散がし易くなり電池特性の向上に繋がるため好ましい。
【0065】
また、非水電解質二次電池用電極の製造方法としては、電極用組成物を集電体に塗工し、必要に応じて乾燥工程を経た後に、平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行ってもよい。電極合材層の厚みは、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
【0066】
<非水電解質二次電池>
本発明の非水電解質二次電池は、上記非水電解質二次電池用電極を備えるものである。非水電解質二次電池の構成は特に制限されず、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。非水電解質二次電池は通常、正極及び負極と、電解質、セパレーター等を備えるものであって、正極又は負極の少なくとも一方が、本発明の非水電解質二次電池用電極であればよい。
【0067】
本発明の非水電解質二次電池用電極を正極として用いる場合、集電体上に、正極活物質を含む本発明の電極用組成物を塗工して電極膜を作製したものを使用することができる。
本発明の非水電解質二次電池用電極を負極として用いる場合、集電体上に、負極活物質を含む本発明の電極用組成物を塗工して電極膜を作製したものを使用することができる。
【0068】
非水電解質二次電池が備える電解質としては、上述した<非水電解質二次電池用電極用組成物>の[電解質]に記載したものを使用できる。電解質は非水系の溶媒に溶解して、電解液として使用することが好ましい。
【0069】
電解質は、電解質を含まない電極用組成物を塗工し、電極膜を作製後、非水電解質二次電池を組み立てる際に注入してもよいし、電解質を含む電極用組成物を塗工し電極膜を作製し、非水電解質二次電池を組み立てる際に注入しなくてもよいし、電解質を含む電極用組成物を塗工し電極膜を作製し、非水電解質二次電池を組み立てる際に更に注入してもよい。
【0070】
非水系の溶媒としては、特に限定はされないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、及びγ-オクタノイックラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,2-メトキシエタン、1,2-エトキシエタン、及び1,2-ジブトキシエタン等のグライム類;メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;アセトニトリル等のニトリル類;が挙げられる。
これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0071】
本実施形態の非水電解質二次電池は、セパレーターを含むことが好ましい。セパレーターとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びこれらに親水性処理を施したものが挙げられる。上記の中でもセパレータの孔径を制御し多孔質化したもの使用が好ましい。
【実施例0072】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
【0073】
実施例及び比較例で用いた化合物を以下に例示する。
<カーボン材料>
・黒鉛:J-CPB(日本黒鉛工業社製)、比表面積8m2/g
・CNT:JENOTUBE10B(JEIO社製)、比表面積250m2/g
・CB:Li-400(デンカ社製)、比表面積39m2/g
・VGCF:VGCF-H(昭和電工社製)、比表面積15m2/g
<樹脂型分散剤>
・PVP-K15:ポリビニルピロリドンK-15(富士フィルム和光純薬社製)(Mw15,000)
・PVP-K30:ポリビニルピロリドンK-30(富士フィルム和光純薬社製)(Mw40,000)
・BYK191:DISPERBYK-191(ビックケミージャパン社製)(Mw≧40,000)
・PAN:ポリアクリロニトリル(合成例1)(Mw45,000)
・H-NBR:ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体(Mw≧200,000)
・BL-10:ポリビニルブチラール エスレックBL-10(積水化学工業社製)(Mw15,000)
・BL-S:ポリビニルブチラール エスレックBL-S(積水化学工業社製)(Mw23,000)
・BL-5Z:ポリビニルブチラール エスレックBL-5Z(積水化学工業社製)(Mw32,000)
・ETOHOCEL4:エチルセルロース誘導体 ETOHOCEL4(日新化成社製)(Mw44,000)
・Joncryl611:酸性樹脂型分散剤 ジョンクリル611(BASF社製)(Mw8,100)
<カーボネート系溶剤>
・EC:エチレンカーボネート(キシダ化学社製)
・PC:プロピレンカーボネート(キシダ化学社製)
・EMC:エチルメチルカーボネート(キシダ化学社製)
・DEC:ジエチルカーボネート(キシダ化学社製)
<負極活物質>
・SiO:一酸化珪素(株式会社大阪チタニウムテクノロジー社製、SILICONMONOOXIDE)
<正極活物質>
・NCM:ニッケル系正極材(BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同社製、HED(登録商標)NCM-111 1100)
【0074】
[重量平均分子量(Mw)]
重量平均分子量は、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。装置は、HLC-8320GPC(東ソー社製)を用い、分離カラムを3本直列に繋ぎ、充填剤には順に東ソー社製「TSK-GELSUPERAW-4000」、「AW-3000」、及び「AW-2500」を用い、オーブン温度40℃、溶離液として30mMトリエチルアミン及び10mMのLiBrのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を用い、流速0.6ml/minで測定した。サンプルは上記溶離液からなる溶媒に1質量%の濃度で調製し、20μL注入した。
【0075】
<分散剤の合成>
(合成例1)ポリアクリロニトリルの合成
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、アセトニトリル100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱して、アクリロニトリル90.0部、アクリル酸10、0部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(日油社製;V-65)を5.0部の混合物を3時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに70℃で1時間反応させた後、V-65を0.5部添加し、さらに70℃で1時間反応を続けた。その後、不揮発分測定にて転化率が98%超えたことを確認し、減圧濃縮してアセトニトリルを除去し、ノニオン性の樹脂型分散剤であるポリアクリロニトリル(PAN)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は45,000であった。
【0076】
<非水電解質二次電池用分散液の調製>
[実施例1-1]
アルゴンガス置換したグローブボックス内で、ガラス瓶に、PC/EC溶媒(1:1(容量比))89.6部、分散剤(PVP-K15)0.4部を入れ、充分に混合溶解した後、カーボン材料(人造黒鉛)10部を加えた。次いで、メディアとして1.25mmφジルコニアビーズを200部加え、瓶を密閉した後、ペイントシェーカーで2時間分散し、分散液(1)を得た。
【0077】
[実施例1-2~1-24、比較例1-1~1-3]
表1に示す配合組成に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、分散液(2)~(27)を得た。なお、混合溶媒における比率は、それぞれPC/EC溶媒(1:1(容量比)、EMC/EC溶媒(3:2(容量比))、DEC/EC溶媒(1:1(容量比))である。
【0078】
<非水電解質二次電池用分散液の評価>
得られた分散液について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
[分散安定性]
分散安定性は、得られた分散液について、50℃で10日間静置して保存した前後の粘度の値から変化率を算出し、以下の基準で評価した。変化の少ないものほど安定性が良好である。粘度値の測定は、E型粘度計(東機産業社製)を用いて、分散液温度25℃、ローター回転速度50rpmの条件で行った。
S:変化率が50%未満(非常に良好)
A:変化率が50%以上、100%未満(良好)
B:変化率が100%以上、200%未満(使用可能)
C:変化率が200%以上(使用不可)
【0080】
【0081】
<負極活物質を含む非水電解質二次電池用電極用組成物の調製>
[実施例2-1]
アルゴンガス置換したグローブボックス内で、分散液(1)25部、負極活物質である一酸化珪素(株式会社大阪チタニウムテクノロジー社製、SILICONMONOOXIDE、SiO 1.3C 5μm)を22.5部、上記分散液(1)の製造に用いたカーボネート系溶媒(PC/EC溶媒)2.5部、カーボネート系溶媒中のLi濃度が1MとなるようにLiPF6を混合容器に仕込み、ディスパーで充分に混合し、電極用組成物(1)を得た。
【0082】
[実施例2-2~13、比較例2-1]
分散液と溶媒とを、表2に示す分散液及び該分散液の製造に用いたカーボネート系溶媒に変更した以外は、実施例2-1と同様にして、電極用組成物(2)~(13)、(20)を得た。
【0083】
[実施例2-14]
アルゴンガス置換したグローブボックス内で、分散液(14)18.75部、負極活物質である一酸化珪素(株式会社大阪チタニウムテクノロジー社製、SILICONMONOOXIDE、SiO 1.3C 5μm)を24.25部、上記分散液(14)に使用したカーボネート系溶媒7部、カーボネート系溶媒中のLi濃度が1MとなるようにLiPF6を混合容器に仕込み、ディスパーで充分に混合し、電極用組成物(14)を得た。
【0084】
[実施例2-15~19、比較例2-2、2-3]
分散液及び溶媒を、表2に示す種類と配合量に変更した以外は、実施例2-14と同様にして、電極用組成物(15)~(19)、(21)、(22)を得た。
【0085】
<正極活物質を含む非水電解質二次電池用電極用組成物の調製>
[実施例3-1]
アルゴンガス置換したグローブボックス内で、分散液(9)18.75部、正極活物質(BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社製、HED(登録商標)NCM-111
1100)を24.25部、上記分散液(14)に使用したカーボネート系溶媒7部、カーボネート系溶媒中のLi濃度が1MとなるようにLiPF6を混合容器に仕込み、ディスパーで充分に混合し、電極用組成物(23)を得た。
【0086】
[実施例3-2~11、比較例3-1、3-2]
分散液及び溶媒を、表2に示す種類と配合量に変更した以外は、実施例3-1と同様にして、電極用組成物(24)~(35)を得た。
【0087】
<非水電解質二次電池用電極用組成物の評価>
得られた電極用組成物について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0088】
[電池特性評価(負極)]
電極用組成物(1)~(22)を、集電体となる直径9mm、厚み20μmの銅箔上に、電極の理論容量(SiOと黒鉛の合計)が既定の値(mAh)になるように電極用組成物を滴下した後、固形分濃度が1.5倍になるように減圧下加熱乾燥して負極合材層を作製し、作用極とした。一方、金属リチウム箔(厚み0.15mm)を対極とした。
作用極及び対極の間に電解液(エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを容量比1:1:1で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を十分に浸み込ませた多孔質ポリプロピレン不織布からなるセパレーターを挿入積層し、二極密閉式金属セルを組み立てた。セルの組み立ては、アルゴンガス置換したグローブボックス内で行った。
得られたセルを25℃の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工株式会社製、SM-8)を用いて充放電測定を行った。充電レート0.2Cにて充電終止電圧0Vで定電流定電圧充電(0.025Cのカットオフ電流)を行った後、放電レート0.2Cにて、放電終止電圧1.5Vで定電流放電を行った。1Cは理論容量を1時間で放電する電流値とした。
実施例2-1の放電容量を基準とした相対値(%)を求め、以下の基準で評価した。
A:相対値が100%を超える(非常に良好)
B:相対値が80%を超え、100%以下(良好)
C:相対値が80%以下(使用不可)
【0089】
[電池特性評価(正極)]
電極用組成物(23)~(35)を、集電体となる直径9mm、厚み20μmの銅箔上に、電極の理論容量が既定の値(mAh)になるように電極用組成物を滴下した後、固形分濃度が1.5倍になるように減圧下加熱乾燥して正極合材層を作製し、作用極とした。一方、金属リチウム箔(厚み0.15mm)を対極とした。
作用極及び対極の間に電解液(エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを容量比1:1:1で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を十分に浸み込ませた多孔質ポリプロピレン不織布からなるセパレーターを挿入積層し、二極密閉式金属セルを組み立てた。セルの組み立ては、アルゴンガス置換したグローブボックス内で行った。
得られたセルを25℃の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工株式会社製、SM-8)を用いて充放電測定を行った。充電レート0.2Cにて充電終止電圧4.3Vで定電流定電圧充電(0.025Cのカットオフ電流)を行った後、放電レート0.2Cにて、放電終止電圧3.0Vで定電流放電を行った。1Cは理論容量を1時間で放電する電流値とした。
実施例3-5の放電容量を基準とした相対値(%)を求め、以下の基準で評価した。
A:相対値が100%を超える(非常に良好)
B:相対値が80%を超え、100%以下(良好)
C:相対値が80%以下(使用不可)
【0090】
【0091】
表1及び表2より、本発明の分散液を使用した実施例は、比較例と比較して、分散安定性が良好であり、かつ、負極・正極の電池特性についても良好な結果であった。これはカーボン材料に対する分散剤の量が過少な場合は、分散安定性が悪く電極が不均一となり、カーボン材料に対する分散剤量が過剰にある場合は、電極のバルク抵抗やイオン抵抗が高くなり、電池特性が悪化したためと考えられる。