(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161882
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】水密性の舶用電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/308 20210101AFI20221014BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20221014BHJP
H01M 50/102 20210101ALI20221014BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20221014BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20221014BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20221014BHJP
H01M 50/317 20210101ALI20221014BHJP
B63H 20/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H01M50/308
H01M10/48 301
H01M50/102
H01M50/249
H01M10/04 Z
H01M50/477
H01M50/317 101
B63H20/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022063958
(22)【出願日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】63/172,895
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/383,979
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519374287
【氏名又は名称】ブランズウィック コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ゴンリング,スティーブン ジェイ.
【テーマコード(参考)】
5H011
5H012
5H021
5H028
5H030
5H040
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011BB03
5H012BB08
5H012CC10
5H012GG07
5H021AA01
5H021HH06
5H028AA05
5H028HH08
5H028HH09
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF31
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H040AA37
5H040AS04
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY08
5H040NN03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エネルギーを船舶の負荷に供給するように構成された舶用電池システムを提供する。
【解決手段】本舶用電池システムは、主筐体本体312と、密閉された電池体積を画定するために主筐体本体に取り外し可能に結合されている補助筐体本体314とを備える。補助筐体本体は、密閉された電池体積内の温度の上昇に応答して圧力調節措置を行うように構成されている。本舶用電池システムは、密閉された電池体積内に配置された電池をさらに備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主筐体本体と、
密閉された電池体積を画定するために前記主筐体本体に結合された補助筐体本体であって、前記密閉された電池体積内の温度の上昇に応答して圧力調節措置を行うように構成された補助筐体本体と、
前記密閉された電池体積内に配置された電池と
を備える、エネルギーを船舶の負荷に供給するように構成された舶用電池システム。
【請求項2】
前記圧力調節措置は前記密閉された電池体積を拡大させるための空気袋の拡大を含む、請求項1に記載の舶用電池システム。
【請求項3】
前記空気袋は前記主筐体本体および前記補助筐体本体内に配置されており、前記空気袋および前記主筐体本体は前記電池を完全に封入するように構成されている、請求項2に記載の舶用電池システム。
【請求項4】
前記圧力調節措置はピストンの摺動を含む、請求項1に記載の舶用電池システム。
【請求項5】
前記ピストンは、前記密閉された電池体積を拡大させるために前記ピストンの前記摺動によって圧縮されるように構成されたバネに結合されている、請求項4に記載の舶用電池システム。
【請求項6】
前記主筐体本体は第1の電池体積を画定し、
前記補助筐体本体は第2の電池体積を画定し、かつ
前記第1の電池体積および前記第2の電池体積を合わせたものは最大の密閉された電池体積を含む、
請求項1に記載の舶用電池システム。
【請求項7】
前記密閉された電池体積内の温度情報を検出するように構成された温度センサと、
前記密閉された電池体積内の圧力情報を検出するように構成された圧力センサと、
前記温度センサおよび前記圧力センサに結合された制御装置であって、
前記温度センサから前記温度情報を受信し、
前記圧力センサから前記圧力情報を受信し、かつ
前記温度情報および前記圧力情報と期待される温度情報および期待される圧力情報との比較に基づいて筐体破損を検出する
ように構成されている制御装置と、
をさらに備える、請求項1に記載の舶用電池システム。
【請求項8】
前記制御装置はさらに、筐体破損の検出に応答して筐体破損緩和措置を行うように構成されている、請求項7に記載の舶用電池システム。
【請求項9】
前記補助筐体本体は前記主筐体本体に取り外し可能に結合されている、請求項1に記載の舶用電池システム。
【請求項10】
前記密閉された電池体積内に配置された乾燥剤をさらに備える、請求項1に記載の舶用電池システム。
【請求項11】
前記補助筐体本体の側壁に形成された通気開口部をさらに備え、前記通気開口部は、前記密閉された電池体積の拡大および収縮を容易にするように構成されている、請求項1に記載の舶用電池システム。
【請求項12】
前記通気開口部は、前記通気開口部を通る空気の流れを許可し、かつ前記通気開口部を通る流体の流れを防止するように構成された膜を備える、請求項11に記載の舶用電池システム。
【請求項13】
前記密閉された電池体積内の圧力が圧力安全閾値を超えた場合に開放するように構成された圧力逃し弁をさらに備える、請求項1に記載の舶用電池システム。
【請求項14】
電池と、
主筐体本体と、
前記主筐体本体に取り外し可能に結合されている補助筐体本体と
を備え、
前記電池は前記主筐体本体および前記補助筐体本体内の密閉された電池体積内に完全に封入されており、かつ
前記密閉された電池体積内の温度の上昇により前記補助筐体本体内で前記密閉された電池体積を拡大させて前記密閉された電池体積内の圧力の上昇を補償する、
エネルギーを船舶の負荷に供給するように構成された舶用電池システム。
【請求項15】
前記補助筐体本体内で移動可能なピストンをさらに備え、
前記密閉された電池体積内の温度の前記上昇により前記ピストンを前記補助筐体本体内で摺動させて前記密閉された電池体積を拡大させる、
請求項14に記載の舶用電池システム。
【請求項16】
前記主筐体本体および前記補助筐体本体内に配置された空気袋をさらに備え、
前記密閉された電池体積内の温度の前記上昇により前記空気袋を前記補助筐体本体内で膨張させて前記密閉された電池体積を拡大させる、
請求項14に記載の舶用電池システム。
【請求項17】
舶用電池のための電池管理システムにおいて、主筐体本体および補助筐体本体を備える舶用電池のための電池筐体内の密閉された電池体積内に位置している圧力センサから圧力情報を受信する工程と、
前記電池管理システムにおいて前記密閉された電池体積内に位置している温度センサから温度情報を受信する工程と、
前記電池管理システムにおいて前記圧力情報および前記温度情報を比較する工程と、
前記電池管理システムにおいて前記圧力情報および前記温度情報の比較に基づいて前記密閉された電池体積において筐体破損が生じているか否かを決定する工程と
を含む、エネルギーを船舶の負荷に供給するように構成された舶用電池を動作させるための方法。
【請求項18】
筐体破損の検出に応答して筐体破損緩和措置を行う工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記筐体破損緩和措置は、ユーザに前記補助筐体本体を前記主筐体本体から切り離し、かつ交換用補助筐体本体を前記主筐体本体に結合することを促すためのメッセージを送信することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
筐体破損が生じていると決定することは、前記温度情報における上昇が前記圧力情報の対応する上昇を生じさせていないという決定に基づいている、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月9日に出願された米国仮出願第63/172,895号の優先権および利益を主張するものであり、この仮出願の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は船舶のための電池システムに関し、特に、不都合な舶用電池状態を検出および緩和するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
米国特許第9,630,686号は耐圧性エネルギーシステムを開示している。この耐圧性エネルギーシステムは耐圧性空洞と、船に電力を供給するように構成された、耐圧性空洞に封入されたエネルギーシステムとを備えていてもよい。このエネルギーシステムは、1つ以上の電池セルと、耐圧性のプログラム可能な管理回路とを備えていてもよい。耐圧性空洞には鉱油などの電気的に不活性な液体が充填されていてもよい。いくつかの実施形態では、電気的に不活性な液体は、耐圧性空洞の外部の圧力に対して正圧に維持されていてもよい。このエネルギーシステムは、耐圧性空洞内部の圧力をある範囲の圧力以内に維持するように構成された圧抜きシステムをさらに備えていてもよい。耐圧性空洞は水の浸入を防止するために密閉されていてもよい。
【0004】
米国特許第8,980,455号は、ガス放出および防爆安全弁を備えたリチウムイオン電池であって、ケーシングおよび電池コアを備えたリチウムイオン電池を開示している。ケーシングは熱カバーによって密閉された開口部を備え、その上には安全弁が配置されている。安全弁は安全カバーおよび圧力フィルタを備える。安全カバーの中央部分は貫通孔を含む。圧力フィルタは安全カバーの中央部分に貼り付けられており、数多くの孔を有する。安全カバーおよび熱カバーは一緒に掛止されている。本発明は複数の利点を提供する。第1に、経年劣化問題を有しない単純化された構造が電池の安全性および信頼性を高める。第2に、動作中に電池の内圧が特定の閾値に達した場合にガスが排出されて、電池ケーシングの破裂を回避する。第3に、電池の向上した性能により電池のサイクル寿命が大きく延びる。
【0005】
米国特許出願公開第2018/0013115号は、舶用電池を収容するようにサイズ決めされたポッドであって、舶用電池のための空洞および開放された上部を有するポッドと、ポッドの開放された上部の少なくとも耐水閉鎖のための蓋であって、空洞および開放された底部を有し、かつポッドに着脱自在に取り付け可能である蓋と、開放された底部に隣接する蓋に着脱自在に取り付けられた床であって、軽量のモータ式船舶のための制御を保持するように構成された床とを有する電池ケースを提供する工程を含む、軽量のモータ式船舶上で使用される電池を収容するための方法を開示している。
【0006】
上記特許および特許出願公開はそれら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0007】
本概要は、以下の発明を実施するための形態においてさらに説明されている選択された概念を紹介するために提供されている。本概要は、特許請求されている主題の重要または必須の特徴を特定するためのものでもなければ、特許請求されている主題の範囲を限定するのを助けるものとして使用されるものでもない。
【0008】
本開示の一実施形態によれば、エネルギーを船舶の負荷に供給するように構成された舶用電池システムが提供される。本舶用電池システムは主筐体本体と、密閉された電池体積を画定するために主筐体本体に取り外し可能に結合されている補助筐体本体とを備える。補助筐体本体は、密閉された電池体積内の温度の上昇に応答して圧力調節措置を行うように構成されている。
【0009】
本開示の別の実施形態によれば、船舶のための舶用電池システムが提供される。本舶用電池システムは、電池と、主筐体本体と、主筐体本体に取り外し可能に結合されている補助筐体本体と、主筐体本体および補助筐体本体内に配置されている空気袋とを備える。電池は、密閉された電池体積内に主筐体本体および空気袋によって完全に封入されている。密閉された電池体積内の温度の上昇により、空気袋を補助筐体本体内で拡大させて密閉された電池体積内の圧力の上昇を補償する。
【0010】
本開示の別の実施形態によれば、船舶のための舶用電池システムが提供される。本舶用電池システムは、電池と、主筐体本体と、主筐体本体に取り外し可能に結合されている補助筐体本体と、補助筐体本体内に配置されたピストンとを備える。電池は、密閉された電池体積内に主筐体本体および補助筐体本体によって完全に封入されており、密閉された電池体積内の温度の上昇によりピストンを補助筐体本体内で摺動させ、かつ密閉された電池体積を拡大させて密閉された電池体積内の圧力の上昇を補償する。
【0011】
本開示のさらに別の実施形態によれば、エネルギーを船舶の負荷に供給するように構成された舶用電池を動作させるための方法が提供される。本方法は、舶用電池のための電池管理システムにおいて、舶用電池のための電池筐体内の密閉された電池体積内に位置している圧力センサから圧力情報を受信する工程を含む。電池筐体は、主筐体本体と補助筐体本体とを備える。本方法は、密閉された電池体積内に位置している温度センサから温度情報を受信する工程と、圧力情報および温度情報を比較する工程と、圧力情報および温度情報の比較に基づいて密閉された電池体積において筐体破損が生じているか否かを決定する工程とをさらに含む。
【0012】
以下の図を参照しながら本開示について説明する。同様の特徴および同様の構成要素を参照するために、図全体を通して同じ番号が使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の例示的な実施形態に係る電動舶用推進システムを備える船舶を示すブロック図である。
【
図2】
図1の電動舶用推進システムで使用することができる密閉型電池筐体を示すブロック図である。
【
図3】
図1の電動舶用推進システムで利用することができる拡大可能な空気袋を備えた密閉型電池筐体を示すブロック図である。
【
図4】
図1の電動舶用推進システムで利用することができるピストンアセンブリを備えた密閉型電池筐体を示すブロック図である。
【
図5】
図2~
図4に示されている密閉型電池筐体における圧力および温度の相関を示すプロットである。
【
図6】
図2~
図4に示されている密閉型電池筐体における筐体破損を検出および緩和するためのプロセスのフローチャートである。
【
図7】
図2~
図4に示されている密閉型電池筐体における筐体破損を検出するための別のプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書では、簡潔性、明確性および理解のために特定の用語が使用されている。そのような用語は便宜のためにのみ使用されており、広く解釈されることが意図されているため、先行技術の要件を超えてそこから不必要な限界が推定されるものではない。
【0015】
船の電動化ならびに電動推進システムおよび電気エネルギー貯蔵のためのリチウムイオン電池技術の適用により、従来の内燃機関や液体燃料貯蔵とは異なるいくつかの危険が生じる。液体有機電解質を含む現在の技術のリチウムイオン(Liイオン)電池が水と接触した場合に、さらなる危険が生じる。本発明者は、船乗りは開水面におり、かつ/または電池の発火の場合または他の危険な電池事象において安全な位置に到達することができない場合があるため、船舶上の電池状態および現在の技術のリチウムイオン電池を用いた他の船舶関連の電気エネルギー貯蔵に関して特定の問題が生じる場合があることに気づいた。また湿気および塩を含む環境は長い電池寿命に不利であるため、船舶用途でのLiイオン電池は特定のリスク状態にある。従って本発明者は、密閉された電池区画を有する舶用電池システムならびに船舶用途における電池式電動駆動システムの潜在的な危険の検出および緩和を提供する監視方法の必要性に気づいた。この革新的な概念は、船舶産業以外の幅広い電池用途にも適用可能である。
【0016】
図1は、Liイオン電池パックなどの貯蔵システム16によって電力が供給される電動舶用推進システム2の一実施形態を示す。図示されている実施形態では、電動舶用推進システム2は、船外舶用ドライブのカウル50内に収容されているような、その中に収容されている電動モータ4を有する船外舶用ドライブ3を備える。当業者であれば、本開示を考慮して舶用推進システム2が船内ドライブまたは船尾ドライブなどの他の種類の電動舶用ドライブを備えていてもよいことを理解するであろう。電動舶用ドライブ3は、プロペラ10を回転させることにより船舶1を推進させるように構成された電動モータ4を有する。モータ4は例えば、ブラシレスDCモータなどのブラシレス電動モータであってもよい。他の実施形態では、電動モータはDCブラシ付きモータ、ACブラシレスモータ、ダイレクトドライブ、永久磁石同期モータ、誘導モータ、または電力を回転運動に変換するあらゆる他の装置であってもよい。特定の実施形態では、関連技術においてよく知られているように、電動モータ4は回転子および固定子を備える。
【0017】
電動モータ4は電力貯蔵システム16に電気的に接続されており、それによって電力が供給される。電力貯蔵システム16は電動モータ4に電力を供給するためのエネルギーを貯蔵しており、電動モータ4が使用中でない場合に陸電への接続などによって充電可能である。様々なLiイオン電池パック構成などの様々な電力貯蔵システム16が当該技術分野で知られており、電動舶用ドライブに電力を供給するのに適している。図示されている例では、大きい電圧出力を提供するためにひと揃いすなわち1群のセルモジュール18が直列に接続されている。例えば電池システムは、それぞれが50Vの貯蔵部である4~7個のセルモジュールなどの複数のセルモジュール18を備えていてもよく、これらは高い電圧出力を提供するために直列に配置されていてもよい。各セルモジュール18すなわち貯蔵部は複数の電池セルからなる。
【0018】
電力貯蔵システム16は、電力貯蔵システム16の側面を監視および/または制御するように構成された電池管理システム(BMS)60をさらに備えていてもよい。例えばBMS60は、一体化された管理モジュール(IMM)などの電力貯蔵システム16の中もしくは上にある1つ以上のセンサ、すなわち電池パック筐体(
図2~
図4を参照)内の1つ以上の位置において温度を感知するように構成された1つ以上の温度センサ、当該筐体内の1つ以上の位置において圧力を感知するように構成された1つ以上のパック内圧センサ、水の浸入を感知するか当該筐体の外面において水を感知するように構成された水センサ、筐体内の湿度を感知するように構成された湿度センサおよび電気分解が生じていることを示すガス(例えば水素ガス)の存在を感知するように構成された電気分解ガスセンサから入力を受信してもよい。本システムは、電池の健康状態を決定し、かつセンサ測定値のいずれか1つ以上に基づいて危険な状態を認識するように構成されている。BMS60はさらに、電力貯蔵システム16内の各電池セルおよび/または各セルモジュール18の電圧、電流および温度に関する情報を受信するなど、電力貯蔵システム16内の電流、電圧および/または他のセンサからの情報を受信するように構成されていてもよい。
【0019】
図示されている実施形態では、推進制御モジュール(PCM)である中央制御装置12は、CANバスなどの通信リンク34を介してモータ制御装置14と通信する。またこの制御装置は、いくつかの実施形態では制御装置12、14、20間の通信のために利用されるものと同じ通信リンクであっても別個の通信リンクであってもよい通信リンクを介して、ユーザインタフェースシステム35内の1つ以上のユーザインタフェース装置から入力を受信し、かつ/またはそれと通信する。ユーザインタフェース装置は例示的な実施形態では、スロットルレバー38およびディスプレイ40を含む。様々な実施形態では、ディスプレイ40は例えば、ウィスコンシン州フォンデュラクのMercury Marine社製VesselView(商標)などの船内管理システムの一部であってもよい。ユーザインタフェースシステム35は操舵輪36も含んでもよく、これはいくつかの実施形態では舶用ドライブ3の操舵制御を実行するために制御装置12とも通信していてもよく、この構成はよく知られており、典型的には半自動操舵構成と呼ばれる。図示されている実施形態では、操舵輪36は手動の操舵構成であり、ここでは操舵輪36は操舵ケーブル37によって舶用ドライブ3を操舵する操舵アクチュエータに接続されている。
【0020】
各電動モータ4は、その固定子巻線などへの電動モータへの電力を制御するように構成されたモータ制御装置14に関連づけられていてもよい。モータ制御装置14は、モータによって出力されたトルク、モータ4の回転速度および方向ならびにモータ4によって供給されて利用される入力電流、電圧および電力を制御するなど、電動モータ4の機能および出力を制御するように構成されている。1つの構成では、電気エネルギーを電動モータに入力して回転子の回転を誘導および制御するモータ制御装置14は、導線15を介して固定子巻線に供給される電流を制御する。センサは、モータ4に供給される電流および電圧を含む電力を感知するように構成されていてもよい。モータ制御装置14は、モータ4を制御するための要求を満たすために適当な電流および/または電圧を供給するように構成されている。例えばスロットルレバー38などの舵柄入力装置におけるオペレータ要求に基づくような要求入力は、中央制御装置12からモータ制御装置14において受信してもよい。
【0021】
次に
図2を参照すると、密閉型電池筐体200が示されている。密閉型電池筐体200は、
図1に示されているセルモジュール18のいずれかに組み込まれていてもよい。密閉型電池筐体200は、密閉された電池体積204の境界を画定する筐体本体202を備えることが示されている。様々な実施形態では、筐体本体202は金属(例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、鋼)、プラスチックまたは複合材料から作製されていてもよい。筐体本体202は、所望の筐体不浸透性を達成し、かつ密閉された電池体積204内に密閉環境を提供するために、様々なシーリングガスケットおよび/または不浸透性コーティングをさらに備えていてもよい。
【0022】
1つ以上の電池セル(図示せず)が密閉された電池体積204内に位置決めされていてもよく、電池セルの典型的な構成要素の全て、すなわちカソード、アノード、電解質およびセパレータを備えていてもよい。例示的な実施形態では、電池セルは、カソード材料として利用されるインターカレートされたリチウム化合物およびアノード材料として利用されるグラファイトを含む。
【0023】
温度センサ206および圧力センサ208は、電池筐体200の側壁に結合されていることが示されている。温度センサ206は、密閉された電池体積204内の温度情報(例えば温度測定値)を検出するように構成されている。温度センサ206は、任意の好適な種類の温度センサ(例えば、熱電対、測温抵抗体(RTD)、サーミスタおよび半導体ベースの集積回路)であってもよく、特に限定されない。圧力センサ208は、密閉された電池体積204内の圧力情報(例えば圧力測定値)を検出するように構成されている。圧力センサ208は任意の好適な種類の圧力センサであってもよく、特に限定されない。例示的な実施形態では、圧力センサ208は、密閉された電池体積204内の絶対圧を測定するように構成されている。
図5および
図6を参照しながら以下にさらに詳細に説明されているように、温度センサ206および圧力センサ208を同時に利用して密閉された電池体積204における破損を検出してもよい。
【0024】
電池筐体200は、密閉された筐体体積204内に位置している乾燥剤210を備えることがさらに示されている。Liイオン電池は一般に湿度制御された環境で製造されるが、乾燥剤210の存在により、製造プロセス中に密閉された筐体体積204の中に入り込むあらゆる混入した水が吸収および/または吸着されるのを保証することができる。乾燥剤210は、電池筐体200が保守されるあらゆる時または密閉された筐体体積204が破損したあらゆる時に交換して、これらのプロセス中に入り込むあらゆる水分を除去してもよい。乾燥剤210の特性は特に限定されない。例えば様々な実施形態では、乾燥剤210はシリカゲル、モレキュラーシーブ(ゼオライト)または活性化アルミナを含んでもよい。
【0025】
電池筐体200は圧力逃し弁212をさらに備える。圧力逃し弁212は、公称条件下で閉鎖されたままにあり、かつ密閉された筐体体積204内の圧力安全閾値を超えた場合に密閉された筐体体積204内から空気を排出して破局的なハウジングの故障を防止するために開放されるように構成されている。いくつかの実施形態では、圧力逃し弁212は、それが開放位置にある場合に空気が圧力逃し弁212を通って流れるのを許可するが、水が圧力逃し弁212を通って密閉された筐体体積204の中に浸入するのを許可しない膜を備える。
図6を参照しながら以下にさらに詳細に説明されているように、圧力センサ208から受信した圧力情報に基づいて、BMS60および/または中央制御装置12は、圧力逃し弁212が誤作動しているか否かを検出し、かつ故障が検出された場合に適当な緩和措置を行うように構成されていてもよい。
【0026】
次に
図3を参照すると、拡大可能な空気袋システムを備えた密閉型電池筐体300が示されている。密閉型電池筐体300は
図1に示されているセルモジュール18のいずれかに組み込まれていてもよい。
図2に示されている筐体200とは対照的に、密閉型電池筐体300は、主筐体本体302および補助筐体本体314の両方を備えることが示されている。主筐体本体302は第1の電池体積304を画定しており、補助筐体本体314は第2の電池体積324を画定している。以下にさらに詳細に説明されているように、電池筐体300内に配置された1つ以上の電池セルに利用可能な最大の密閉された体積は、第1の電池体積304と第2の電池体積324を合わせたものである。
【0027】
例示的な実施形態では、補助筐体本体314は主筐体本体302に取り外し可能に結合されている。主筐体本体302と補助筐体本体314との結合は、好適な密閉結合機構、例えばネジ接続、o-リングシールを有するオス型およびメス型コネクタなどを用いて達成してもよい。いくつかの実施形態では、補助筐体本体314は、主筐体本体302に直接結合されていてなくてもよい。代わりに、補助筐体本体314は主筐体本体302から離れて位置していてもよく、本体302、314は管または導管によって接続されていてもよい。本発明者は、補助筐体本体314を主筐体本体302から切り離すのを可能にすることにより、密閉型電池筐体300の保守性が向上することに気づいた。例えば筐体破損が生じた場合に、電池を保守するために補助筐体本体314を主筐体本体302から切り離してもよい。補助筐体本体314は新しいまたは修理された補助筐体本体314と交換することもできる。このようにして、電池システムは保守可能であり、密閉型電池筐体300の寿命を延ばすことができる。
【0028】
拡大可能な空気袋316は、少なくとも部分的に補助筐体本体314内に位置していることが示されている。様々な実施形態では、密閉型電池筐体300内に配置された電池セルが主筐体本体302および空気袋316によって封入されるように、空気袋316は主筐体本体302の中に延在していてもよい。
図3に示すように、電池セルの動作前および/または電池筐体300が低温もしくは適温環境内に位置している場合に、空気袋316を収縮させるか部分的にのみ膨張させてもよい。しかし密閉された主電池体積304内に位置決めされている電池セルがセルの動作または環境温度の上昇により高温になるにつれて、電気分解ガス318が主筐体本体302内に蓄積する。この電気分解ガス318は、補助筐体本体314内で空気袋316を第2の電池体積324によって表されている最大体積まで膨張させる。言い換えると、空気袋316は拡大して補助筐体本体314の体積324全体を実質的に満たす。空気袋316が補助筐体本体314内で膨張するにつれて、空気袋316は第2の電池体積324内に位置している空気322に取って代わり、この空気は通気開口部320から筐体本体314の外に押し出される。例示的な実施形態では、通気開口部320は、空気322が通気開口部320を通って流れるのを許可するが水が補助筐体本体314内に浸入するのを許可しない膜を備える。
【0029】
空気袋316は、電気分解ガスの蓄積により膨張するのに十分な程に可撓性であり、かつ破損による故障に耐えるのに十分な程に強度のあるどんな材料から作製されていてもよい。
【0030】
密閉型電池筐体300は、温度センサ306、圧力センサ308、乾燥剤310および圧力逃し弁312を備えることがさらに示されている。これらの構成要素のそれぞれは、
図2に示されており、かつそれを参照しながら上に説明されているセンサ206、208、乾燥剤210および圧力逃し弁212と同一または実質的に同様であってもよい。乾燥剤310は主筐体本体302内に位置決めされていることが示されているが、他の実施形態では、乾燥剤310は補助筐体本体314内に位置していてもよい。なおさらなる実施形態では、主筐体本体302および補助筐体本体314の両方が乾燥剤310を備える。
【0031】
次に
図4を参照すると、ピストンシステムを備えた密閉型電池筐体400が示されている。密閉型電池筐体400は
図1に示されているセルモジュール18のいずれかに組み込まれていてもよい。
図3に示されている筐体300と同様に、密閉型電池筐体400は、第1の電池体積404を画定する主筐体本体402および第2の電池体積424を画定する補助筐体本体414の両方を備えることが示されている。補助筐体本体414は、任意の好適な結合機構を用いて主筐体本体402に取り外し可能に結合されている。このようにして補助筐体本体414は、筐体破損または補助筐体本体414内の構成要素の故障の場合に保守または交換することができる。
【0032】
補助筐体本体414は、矢印422によって示されているように水平に移動するように構成されている摺動可能なピストン416を備えることが示されている。例示的な実施形態では、ピストン416は一般に円板状であり、ピストン416を超える空気の流れを防止し、かつ電池セルのために密閉された体積を提供するために、Oリングシールまたはガスケット430がピストン416の外周の周りに位置していてもよい。ピストン416は、電池セルの動作前および/または電池筐体400が低温もしくは適温環境内に位置している場合に、ピストン416を主筐体本体402に向かって付勢するように構成されているバネ418に結合されている。セルの動作または環境温度の上昇によりセルが高温になるにつれて、電気分解ガス426が主筐体本体402内に蓄積する。電気分解ガス426はバネ418を圧縮し、このようにしてピストン416を外側に摺動させ、電池セルを封入するために使用される密閉された体積を増加させる。バネ418によって提供されるバネ力は、ピストン416を主筐体本体402に向かって付勢し、かつガス426によってピストン416に加えられる力に対抗するように作用するので、バネ418に関連するバネ定数または剛性は、密閉された電池体積の内圧に対してかなりの効果を有することができる。言い換えると、比較的高いバネ定数を有するバネ418は、比較的低いバネ定数と比較した場合にバネ418を圧縮し、かつ電池セルに利用可能な体積を拡大させるために、ガス426によってピストン416に加えられる力よりも大きい力を必要とする。
【0033】
ピストン416が補助筐体本体414内を外側に移動するにつれて、ピストン416は空気428に取って代わり、この空気は通気開口部420を通って筐体本体414から押し出される。例示的な実施形態では、通気開口部420は、空気428が通気開口部420を通って流れるのを許可するが、水が補助筐体本体414の中に浸入するのを許可しない膜を備える。
【0034】
図3に示されている電池筐体300と同様に、密閉型電池筐体400は温度センサ406、圧力センサ408、乾燥剤410および圧力逃し弁412を備えることがさらに示されている。これらの構成要素のそれぞれは、
図2に示されており、かつそれを参照しながら上に説明されているセンサ206、208、乾燥剤210および圧力逃し弁212と同一または実質的に同様であってもよい。乾燥剤410は補助筐体本体414内に位置決めされていることが示されているが、他の実施形態では、乾燥剤410は主筐体本体402内に位置していてもよい。なおさらなる実施形態では、主筐体本体402および補助筐体本体414の両方が乾燥剤410を含む。
【0035】
図5は、密閉型電池筐体200、300、400のセンサ(すなわち、温度センサ206、306、406、圧力センサ208、308、408)によって収集された理想的な温度および圧力データを相関させるプロット500を示す。水平軸502は筐体の密閉部分の内部の温度を摂氏で表すことが示されており、垂直軸504は筐体の密閉部分の内部の圧力を重量ポンド毎平方インチ(psi)で表すことが示されている。
【0036】
線506は、
図2に示されている電池筐体200の挙動を示す。筐体内部の-20℃の最小温度では、筐体内部の圧力は約12.5psiの最小圧力である。データ506は100℃の最大温度および約18.5psiの最大圧力までの線形関係を示す。
【0037】
線分508および510は、
図3に示されている空気袋システムを備えた電池筐体300の挙動を示す。具体的には、線分508は空気袋316が膨張する際の筐体300の挙動を示し、線分510は空気袋316が完全に拡大した際の挙動を示す。図示のように、空気袋膨張期間中に、たとえ筐体内部の温度が上昇しているとしても(すなわち、-20℃から40℃へ)、電池内部の圧力はそれに対応して上昇せず、12.5psiの最小圧力のままである。これは、電気分解ガス318の拡大に適応する空気袋316によって提供される体積の増加によるものであり、そうでなければ筐体300内の圧力は上昇する。しかし空気袋316が完全に拡大したら、電気分解ガス318は拡大し続け、100℃の最大温度で筐体300内の圧力を約15.5psiの最大圧力まで上昇させる。
【0038】
図5に示すように、圧力上昇期間中に(線分510として示されている)、筐体300内の圧力は、筐体200内の圧力(線分506として示されている)とおよそ同じ速度で上昇する。注目すべきことに、筐体300の最大圧力は、どんな圧力緩和機構も備えていない筐体200が受ける最大圧力よりも低い。圧力上昇期間中に(線分510として示されている)、筐体300における筐体破損の検出(
図6を参照しながら以下にさらに詳細に説明されている)が生じる場合がある。例えば筐体300内のセンサ306、308から圧力および温度情報を受信する制御装置が、温度が40℃超であり、かつ圧力がそれに対応して12.5psi超に上昇していないと決定した場合、制御装置は、ディスプレイ40(
図1に示されている)に警告を表示すること、および/または電池を停止することを含む筐体破損緩和措置を行ってもよい。
【0039】
線512および514は、
図4に示されているピストンシステム400を備えた電池筐体の挙動を示す。具体的には、線512は比較的より高いバネ定数を有するバネ418を備えた電池筐体400を示し、線514は、比較的より低いバネ定数を有するバネ418を備えた電池筐体400を示す。従って、より高いバネ定数を有する筐体400はより高い最大圧力(約16psi)を受け、より低いバネ定数を有する筐体400はより低い最大圧力(約14psi)を受ける。注目すべきことに、筐体400の両方の実施形態が圧力緩和機構を備えていない筐体200よりも低い最大圧力を受ける。さらに空気袋システムを備えた筐体300とは対照的に、ピストンシステムを備えた筐体400は、温度範囲全体を通した圧力と温度との期待される線形相関により、温度範囲全体に及ぶ筐体破損の検出を可能にする。
【0040】
次に
図6を参照すると、筐体破損または圧力逃し弁故障状態を検出するためのプロセス600が示されている。本開示の例示的な実施形態によれば、プロセス600は少なくとも部分的に、
図1に示されているBMS60または中央制御装置12によって行われてもよい。簡潔性のために、BMS60のみを参照しながらプロセス600について以下に説明する。
【0041】
プロセス600は工程602で開始することが示されており、ここではBMS60は温度センサ(例えば、温度センサ206、306、406)から温度情報を受信する。工程604では、BMS60は、圧力センサ(例えば、圧力センサ208、308、408)から圧力情報を受信する。いくつかの実施形態では、BMS60は、指定された時間間隔で温度情報および圧力情報を受信する(例えば、5秒ごとに温度センサ206からの1回の温度測定値および圧力センサ208からの1回の圧力測定値)。他の実施形態では、BMS60は、センサから圧力および温度測定値をほぼ連続的に受信する。
【0042】
工程606では、BMS60は、筐体破損状態が生じているか否かを決定する。
図5に示すように、ほとんどの状況で、適切に密閉された電池筐体では圧力測定値と温度測定値との間に正の線形相関が存在する(注:密閉型電池筐体300について、本明細書にはこの正相関に対する例外が線分508によって示されており、ここでは空気袋316の膨張期間により温度の上昇中に対応する圧力上昇が生じない)。
【0043】
工程606においてBMS60が、温度および圧力情報が筐体破損状態が生じていることを示していると決定した場合、プロセス600は工程608に進んでもよく、BMS60は筐体破損緩和措置を行ってもよい。筐体破損により水の浸入が生じる可能性があり、次いで熱暴走事象に至る可能性があるので、本発明者は水の浸入前に筐体破損の存在をユーザに警告するという利点に気づいた。いくつかの実施形態では、筐体破損緩和措置は、BMS60がユーザ装置(例えばディスプレイ40)に表示される電池筐体破損を示すメッセージを(例えば中央制御装置12に)送信することを含んでもよい。このメッセージは可能であれば、ユーザに電池を点検および保守することを促してもよい。例えば、電池のユーザ点検により筐体破損が補助筐体本体内で生じていることを明らかにし、修復または完全な交換のためにユーザに補助筐体本体を切り離すことを促してもよい。さらなる実施形態では、BMS60は、影響を受けている電池を電力貯蔵システム16から切断してもよい。筐体破損の深刻度は、期待される温度および圧力値と受信した温度および圧力情報との間の誤差に基づいて決定してもよい。いくつかの実施形態では、BMS60が両方の措置を行ってもよい。BMS60が1回以上の筐体破損緩和措置を行ったら、プロセス600は工程602に戻る。
【0044】
工程606に戻ると、BMS60が温度および圧力情報が筐体破損状態が生じていることを示していると決定しない場合には、プロセス600は工程610に進む。工程610ではBMS60は、圧力センサ(例えば、圧力センサ208、308、408)から受信した圧力情報に基づいて圧力安全閾値を超えているか否かを決定する。電池筐体内の圧力安全閾値を超えている場合、これは圧力逃し弁(例えば、圧力逃し弁212、312、412)における故障を示してもよく、BMS60は工程612において圧力逃し弁故障緩和措置を行ってもよい。いくつかの実施形態では、故障緩和措置はBMS60がユーザ装置(例えばディスプレイ40)に表示される圧力逃し弁故障を示すメッセージを送信することを含んでもよい。圧力センサからの圧力情報が電池への差し迫った損傷を示すのに十分な程に高い場合、BMS60は影響を受けている電池を電力貯蔵システム16から切断しもよい。BMS60が1回以上の圧力逃し弁故障緩和措置を行ったら、BMS60が温度および圧力センサから圧力および温度情報を受信し続けている場合、プロセス600は工程602に戻ることによって完結する。
【0045】
次に
図7を参照すると、筐体破損または圧力逃し弁故障状態を検出するためのプロセス700が示されている。いくつかの実施形態では、プロセス700は
図6に示されているプロセス600の工程606中に行われる。本開示の例示的な実施形態によれば、プロセス700は少なくとも部分的に、
図1に示されているBMS60または中央制御装置12によって行われてもよい。簡潔性のために、BMS60のみを参照しながらプロセス700について以下に説明する。
【0046】
プロセス700は工程702で開始し、ここではBMS60は許容可能な圧力偏差を受信または検索する。許容可能な圧力偏差は、故障が検出される前に圧力測定値が所与の温度の期待される値または理想的な値から逸脱し得る量を指す(例えば、
図5のプロット500に示されているデータ)。許容可能な圧力偏差は電池の特性に基づいて異なってもよく、あるいはオペレータによって構成可能であってもよい。いくつかの実施形態では、許容可能な圧力偏差は圧力値の形態であり、例えば±0.5psiまたは±1.0psiである。他の実施形態では、許容可能な圧力偏差は割合の形態であり、例えば±10%または±15%である。
【0047】
工程704では、BMS60は測定された温度値について期待される圧力測定値を検索する。測定された温度値はプロセス600の工程602において温度センサ(例えば、温度センサ206、306、406)から受信してもよい。期待される圧力測定値は理想的なデータに基づいている。例えば
図5を参照すると、電池筐体が空気袋システム(例えば電池筐体300)を備え、かつ温度センサ306が測定された温度が60℃を示す場合、期待される圧力値は13.5psiである。従って許容可能な圧力偏差が±10%である場合、許容可能な圧力範囲は12.15psi~14.85psiである。
【0048】
工程706では、BMS60は、測定された圧力が期待される範囲の下限よりも低いか否かを決定する。測定された圧力値は、プロセス600の工程604において圧力センサ(例えば、圧力センサ208、308、408)から受信してもよい。上の例に戻ると、工程706は測定された圧力値が12.15psi未満である場合に満たされる。次いで筐体破損状態が検出された場合、プロセス700は工程708に進む。
図6の工程608を参照しながら上に説明されているように、筐体破損状態の検出により筐体破損緩和措置を行うようにBMS60を促してもよい。
【0049】
工程706においてBMS60が、測定された圧力が圧力範囲の下限よりも低くないと決定した場合、プロセス700は工程710に進み、ここではBMS60は、測定された圧力が期待される範囲の上限よりも高いか否かを決定する。上の例に戻ると、工程710は測定された圧力値が14.85psi超である場合に満たされる。次いで故障状態が検出された場合、プロセス700は工程712に進む。期待される値よりも高い測定された圧力値が受信されるような故障状態の例としては、空気袋316が適切に膨張できないこと、またはピストン416が補助筐体本体414内を摺動できないことが挙げられる。あるいは、別の故障モードによって高い圧力が引き起こされる場合がある。工程712における故障状態の検出に応答してBMS60は、ユーザ装置(例えばディスプレイ40)に表示される警告または故障警報メッセージを(例えば中央制御装置12に)送信してもよく、かつ/または影響を受けている電池を電力貯蔵システム16から切断してもよい。しかしBMS60が工程710において測定された圧力が圧力範囲の上限よりも高くないと決定した場合、測定された圧力は期待される圧力範囲内であり、プロセス700は工程702に戻ることによって終了する。
【0050】
本開示では簡潔性、明確性および理解のために特定の用語を使用してきた。そのような用語は便宜のためにのみ使用されており、広く解釈されることが意図されているため、先行技術の要件を超えてそこから不必要な限界が暗示されるものではない。本明細書に記載されている異なるシステムおよび方法は、単独または他のシステムおよび装置との組み合わせで使用してもよい。添付の特許請求の範囲内で様々な均等物、代替物および修正が可能である。
【外国語明細書】