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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161935
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】プラズマを用いた薄膜形成装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/509 20060101AFI20221014BHJP
   C23C 16/30 20060101ALI20221014BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20221014BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20221014BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C23C16/509
C23C16/30
C23C16/455
H01L21/31 C
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022124486
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】303034908
【氏名又は名称】村田 正義
(72)【発明者】
【氏名】村田正義
(57)【要約】
【課題】
プラズマCVDによる高品質の非晶質シリコン膜、微結晶シリコン膜及びシリコン系絶縁膜等の形成に際し、イオン衝撃を抑制したVHFプラズマCVD装置又はホローカソード効果を活用したプラズマCVD装置が用いられる。しかしながら、従来装置では基板をプラズマに晒すことから、イオン衝撃の影響は避けられないという問題がある。この問題を解決可能なプラズマCVD装置を提供すること。
【解決手段】
非接地電極と前記非接地電極を内包する溝を備えた接地電極の間で水素プラズマを生成し、前記両電極の間から流出する水素プラズマと、前記接地電極と基板保持台の間に配置されたシランガス噴出孔から噴出するシランガスを接触混合して、「SiH+H→SiH+H」という反応を主体にして基板にシリコン系薄膜を形成するという構成を有することを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気系を備えた反応容器と、少なくともシランガス又は有機シランガスを含む第1原料ガスと少なくとも水素又は酸素ガスを含む第2原料ガスを空間的に分離して前記反応容器に導入する原料ガス導入手段と、前記反応容器の内部に配置されて基板を保持する主面を有する基板保持台と、前記第2原料ガスをプラズマ化する電気的に非接地の第1電極と電気的に接地の第2電極から成るプラズマ生成電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に高周波電圧を印加する高周波電源と、を具備し、前記プラズマ生成電極でプラズマ化された前記第2原料ガスと前記プラズマ生成電極でプラズマ化されない前記第1原料ガスを接触させることによりシリコン系薄膜を形成するプラズマを用いた薄膜形成装置であって、
前記第2電極は、前記基板保持台の主面と平行に延在する複数の溝を備え、且つ前記基板保持台の主面に対向して配置され、
前記第1電極は、前記第2電極の前記複数の溝と同じ個数の棒状又は板状の金属体で形成され、且つ前記第1電極はそれぞれ前記第2電極が備える各前記溝の中に包み込まれるように配置されるとともに、
前記第1原料ガスは、前記第2電極と前記基板保持台の主面との間に配置された第1原料ガス管に設けられた第1原料ガス噴出孔から噴出し、
前記第2原料ガスは、前記第2電極の各前記溝の底面に設けられた第2原料ガス噴出孔から噴出するという構造を有することを特徴とするプラズマを用いた薄膜形成装置。
【請求項2】
前記第1電極は、断面形状が矩形又は円形又は楕円形であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマを用いた薄膜形成装置。
【請求項3】
前記第1電極と前記第2電極により生成される電界の主たる方向は、前記基板保持台の主面と平行な方向であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一つに記載のプラズマを用いた薄膜形成装置。
【請求項4】
前記第2電極が備える複数の溝がそれぞれに有する各開口は、開口率が略20%~80%であるメッシュ金属で覆われることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のプラズマを用いた薄膜形成装置。
【請求項5】
前記第2原料ガスは、水素ガスにジボラン(B)ガス又はホスフイン(PH)ガスが添加された混合ガスであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のプラズマを用いた薄膜形成装置。
【請求項6】
前記第1原料ガスは、シランガス又は有機シランに少なくともアンモニア(NH)ガスが混合されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のプラズマを用いた薄膜形成装置。
【請求項7】
前記第1原料ガスは、有機シリコン化合物であるテトラエトキシシラン(TEOS),メチルトリエトキシシラン(MTEOS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)及びトリスジメチルアミノシラン(TMDMAS)から選び、前記第2原料は、水素ガス、酸素ガス、炭酸ガス及び窒素ガスから少なくとも一つを選ぶことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のプラズマを用いた薄膜形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを利用して基板の表面にシリコン系薄膜を形成するプラズマを用いた薄膜形成装置に関する。また、BまたはP等の不純物(ドーパント)を含む半導体膜を形成するプラズマを用いた薄膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘテロ接合型(SHJ型)太陽電池、液晶デイスプレイ用TFT、有機EL及び各種半導体デバイス等における光電変換膜、絶縁膜、パッシベーション膜あるいはバリア膜等の形成には、プラズマCVD装置が活用されている。プラズマCVD装置は、一般に、基板を保持することが可能な電気的に接地された接地電極と、該接地電極と対向するように配置された非接地の非接地電極とを備えた平行平板型電極を備えている。
しかしながら、従来の平行平板型電極を用いたプラズマCVD装置は、各種薄膜形成への応用において、原料ガスに、一般にシラン(SiH)ガスを用いることから、例えば、非特許文献1に記載されているように、SiHラジカルが発生し、気相中で「SiH+SiH→Si」という反応が起こり粉(パウダー及びナノ粒子とも呼ばれる)を発生し、且つ基板表面でSiHが膜中に組み込まれる結果、得られる薄膜を高品質化することが困難であることが、知られている。また、基板がプラズマに晒されることから、基板表面に堆積される薄膜はイオンダメージ(イオン衝撃)の影響を受けること、が知られている。
上記SiHの発生及び基板へのイオン衝撃は、得られる膜の品質に悪い影響を与えることから、一般的な応用において、問題視される。
上記SiHの発生及び基板へのイオン衝撃という問題を解決するアイデイアとして、反応容器にシラン(SiH)ガスと水素ガスを空間的に分離して供給し、該水素ガスのみをプラズマ化し、それをプラズマ化されていないSiHと接触混合して、「SiH+H→SiH+H」という反応を発生させ、主として、SiHラジカルを用いたシリコン系薄膜を形成する装置が、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1には次のことが記載されている。即ち、内部圧力を調整可能なチャンバー内にプラズマ製膜手段を設けてプラズマ化学蒸着により基板上に原料ガスの薄膜を形成するプラズマ処理装置であって、前記プラズマ製膜手段が、内部空間に水素ガスを導入する水素ガス流路が形成されて基板搬送方向と直交する方向に長尺な中空箱形の正電極と、内部空間にプラズマ生成領域を形成するとともに前記正電極を収納設置して前記基板と対向配置された中空箱形の負電極と、前記負電極の外部に形成されて前記原料ガスを前記基板上に供給するガス出口を備えている原料ガス流路と、前記基板と対向する前記正電極の面に設けた前記水素ガスのガス出口と、前記基板と対向する前記負電極の面に設けた水素ラジカルの出口開口とを具備し、前記正電極内に導入した前記水素ガスに高周波電界を印加して前記水素ガスがプラズマ状態に励起された前記水素ラジカルを生成し、前記ガス出口から供給される前記原料ガスと前記出口開口から供給される前記水素ラジカルとを前記負電極外のプラズマのない空間で反応させて前記基板上に製膜するように構成したことを特徴とするプラズマ処理装置。
特許文献2には次のことが記載されている。即ち、 成膜室内に基板ステージとプラズマ電極とが対向して配設され、前記プラズマ電極にシランガスと水素ガスとを供給するとともに高周波電圧を印加してプラズマを生成し、前記基板ステージに保持された基板上に微結晶シリコン薄膜を形成する薄膜形成装置において、 前記成膜室の外部から前記プラズマ電極に供給される前記シランガスを前記基板上に吹出させるシランガス供給手段と、前記成膜室の外部から前記プラズマ電極に供給される前記水素ガスを水素プラズマにして、前記シランガス供給手段から吹出される前記シランガスに接触させるように前記基板上に吹出させて、前記シランガスをプラズマ化させる水素ガス供給手段と、を備え、前記シランガス供給手段は、接地電位にされ、外部から供給される前記シランガスを貯留するシランガス貯留室と、前記シランガス貯留室の前記基板ステージ側に設けられ、前記シランガスを前記基板ステージ側に吹出させる複数の筒状のシランガス吹き出し口と、を有し、前記水素ガス供給手段は、前記シランガス吹き出し口の形成位置に対応して開口が設けられた導電性の平板状部材からなり、前記シランガス供給手段と接触しないように前記シランガス吹き出し口に外挿され、高周波電圧が印加される電極板と、外部から供給される前記水素ガスを前記シランガス貯留室の側面を通って、前記電極板と前記シランガス貯留室との間の空間まで運ぶ水素ガス流通経路と、を有することを特徴とする薄膜形成装置。
【0004】
他方、有機シリコン化合物であるテトラエトキシシラン(TEOS),メチルトリエトキシシラン(MTEOS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)及びトリスジメチルアミノシラン(TMDMAS)等から選ばれる有機シリコン化合物を原料ガスとして用いる有機プラズマCVD装置では、該有機シリコン化合物のプラズマによる分解が過剰となり、基板に形成されるシリコン系薄膜の中にC成分が混入し、該薄膜の高品質化が困難であることが知られている。即ち、従来の平行平板型電極を用いたプラズマCVD装置の応用において、有機シリコン化合物を原料ガスとするプラズマCVDによる薄膜の高品質形成が困難視されている。そのため、有機シリコン化合物を用いるプラズマCVD装置の応用分野においても、従来の平行平板型電極に代わる新規プラズマ生成装置の創出が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4576190
【特許文献2】特許4906822
【0006】
【非特許文献1】白藤立、プラズマCVDの化学反応工学、高温学会誌、第37巻、第6号(2011年11月)、281-288
【非特許文献2】成田政隆、横山拓也、市川幸美、プラズマCVD窒化膜の組成制御技術、富士時報、Vol.78、No.4(2005)、312-315
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来装置では次に示す問題がある。即ち、特許文献1に記載の装置は、イオンダメージを抑制し、かつ、大面積均一化の製膜を目指しているが、製膜に際し基板を移動させるという手段を採用していることから、用途が限定されるという問題がある。
特許文献2に記載の装置は、イオンダメージを抑制し、高品質の微結晶シリコン膜の形成を可能としている。しかしながら、プラズマ生成手段に製作困難な複雑な構造を有する電極を採用していることから、大面積基板を対象とする応用では、例えば、1mx1m級以上の大面積基板を対象とする応用では、装置製作に多大の労力と時間を必要とし、製造コストが高くなるという問題がある。
従来技術の問題解決のためには、基板をプラズマに晒さない状態で、かつ、該基板にイオン衝撃を与えず、且つ多量のH原子及び多量のSiHラジカルを発生可能で、且つ装置製造コストが安価な新規のプラズマを用いた薄膜形成装置の創出が望まれる。
他方、有機シリコン化合物を原料とする有機プラズマCVD装置を用いた酸化シリコン薄膜及び窒化シリコン薄膜等の高品質化に関し、C成分の膜への混入のない新規のプラズマを用いた薄膜形成装置の創出が望まれる。
上記のような課題を鑑みて、本発明は、上記課題を解消可能なプラズマを用いた薄膜形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、 排気系を備えた反応容器と、少なくともシランガス又は有機シランガスを含む第1原料ガスと少なくとも水素又は酸素ガスを含む第2原料ガスを空間的に分離して前記反応容器に導入する原料ガス導入手段と、前記反応容器の内部に配置されて基板を保持する主面を有する基板保持台と、前記第2原料ガスをプラズマ化する電気的に非接地の第1電極と電気的に接地の第2電極から成るプラズマ生成電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に高周波電圧を印加する高周波電源と、を具備し、前記プラズマ生成電極でプラズマ化された前記第2原料ガスと前記プラズマ生成電極でプラズマ化されない前記第1原料ガスを接触させることによりシリコン系薄膜を形成するプラズマを用いた薄膜形成装置であって、
前記第2電極は、前記基板保持台の主面と平行に延在する複数の溝を備え、且つ前記基板保持台の主面に対向して配置され、前記第1電極は、前記第2電極の前記複数の溝と同じ個数の棒状又は板状の金属体で形成され、且つ前記第1電極はそれぞれ前記第2電極が備える各前記溝の中に包み込まれるように配置されるとともに、 前記第1原料ガスは、前記第2電極と前記基板保持台の主面との間に配置された第1原料ガス管に設けられた第1原料ガス噴出孔から噴出し、前記第2原料ガスは、前記第2電極の各前記溝の底面に設けられた第2原料ガス噴出孔から噴出するという構造を有することを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記第1電極の断面形状は、矩形又は円形又は楕円形であることを特徴とする。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、前記第1電極と前記第2電極により生成される電界の主たる方向は、前記基板保持台の主面と平行な方向であることを特徴とする。
第4の発明は、第1の発明から第3の発明のいずれか一つの発明において、前記第2電極が備える複数の溝がそれぞれに有する各開口は、開口率が略20%~80%であるメッシュ金属で覆われることを特徴とする。
第5の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれか一つの発明において、前記第2原料ガスは、水素ガスにジボラン(B)ガス又はホスフイン(PH)ガスが添加された混合ガスであることを特徴とする。
第6の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれか一つの発明において、前記第1原料ガスは、シランガス又は有機シランに少なくともアンモニア(NH)ガスが混合されることを特徴とする。
第7の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれか一つの発明において、前記第1原料ガスは、有機シリコン化合物であるテトラエトキシシラン(TEOS),メチルトリエトキシシラン(MTEOS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)及びトリスジメチルアミノシラン(TMDMAS)から選ばれ、前記第2原料は、水素ガス、酸素ガス、炭酸ガス及び窒素ガスから少なくとも一つが選ばれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記課題を解決可能という効果を奏する。即ち、本発明によるプラズマを用いた薄膜形成装置は、第1原料のシランガスと第2原料の水素ガスを空間的に分離して反応容器に導入し、第1原料のプラズマ化手段により前記第1原料のみをプラズマ化し、該プラズマの発生領域の外部へ該プラズマを流出し、該水素プラズマ流とプラズマ化されていない前記第2原料のシランガスの噴流を基板保持台に載置された基板の近傍の領域で接触させることにより、「SiH+H→SiH+H」という反応を促進させ、SiHラジカルを前駆体とする膜を形成することが可能である。即ち、SiHラジカルの発生が無く、且つイオンダメージの無い状態で製膜が可能である。
その結果、基板へイオン衝撃を与えない高品質のシリコン系薄膜の形成が可能である。また、装置の構造はシンプルであり、安価に製造可能である。
本発明は、第1原料にシランガスとアンモニアの混合ガスを選び、第2原料に水素ガスを選定することにより、液晶デイスプレイ用TFT及び各種電子デバイスの絶縁膜及びパッシベーション膜の高品質化にも貢献可能である。また、本発明は第1原料にシリコン含有の有機化合物を選び、第2原料に水素ガス、酸素ガス及び窒素ガスを少なくとも一つ選ぶことにより、液晶デイスプレイ用TFT及び各種電子デバイスの絶縁膜及びパッシベーション膜の高品質化にも貢献可能である。
即ち、本発明の装置は、従来装置では困難であるイオンダメージの無い膜形成が可能なプラズマを用いた薄膜形成装置を安価な製造コストで提供することが可能である。
本発明によるプラズマを用いた薄膜形成装置は、ヘテロ接合型(SHJ型)太陽電池、液晶デイスプレイ及び各種半導体デバイス等の分野において、高品質のシリコン系半導体膜、絶縁膜及びパッシベーション膜等を形成可能なプラズマを用いた薄膜形成装置として応用可能であり、製品製造コストの低減及び性能向上への貢献度は著しく大きい、と言える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の主要部の構成を示す模式的斜視図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の構成部材である第2電極の構造を示す模式的斜視図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の構成部材である第1電極の構成を示す模式的断面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の第1電極と第2電極間に生成される電界の模式図である。
図5図5は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の第1電極と第2電極から成るプラズマ生成領域を示す断面図である。
図6図6は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置のシランガス(第1原料ガス)とプラズマ化された水素ガス(第2原料ガス)の接触領域を示す断面図である。
図7図7は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の構成部材である断面形状が円形の第1電極の模式的斜視図である。
図8図8は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置のプラズマ生成領域を示す断面図である。
図9図9は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置のシランガス(第1原料ガス)とプラズマ化された水素ガス(第2原料ガス)の接触領域を示す断面図である。
図10図10は、本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の構成部材である断面形状が楕円形の第1電極の模式的斜視図である。
図11図11は、本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置のプラズマ生成領域を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同様の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更可能である。また、以下に示す図面は、説明の便宜上、各部材の縮尺が、実際と異なる場合がある。また、各図面間においても、縮尺が、実際と異なる場合がある。
【0012】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の構成について、図1図6を参照して、説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の主要部の構成を示す模式的斜視図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の構成部材である第2電極の構造を示す模式的斜視図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の構成部材である第1電極の構成を示す模式的断面図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の第1電極と第2電極間に生成される電界の模式図である。図5は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の第1電極と第2電極から成るプラズマ生成領域を示す断面図である。図6は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置のシランガス(第1原料ガス)とプラズマ化された水素ガス(第2原料ガス)の接触領域を示す断面図である。
【0013】
本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置は、図1図6に示されるように、 排気系を備えた反応容器50と、少なくともシランガスを含む第1原料ガスと少なくとも水素ガスを含む第2原料ガスを空間的に分離して前記反応容器に導入する原料ガス導入手段5、10と、基板を保持する主面を有する基板保持台60と、前記第2原料ガスをプラズマ化する電気的に非接地の第1電極1aと電気的に接地の第2電極2から成るプラズマ生成電極1a、2と、前記第1電極1aと前記第2電極2との間に高周波電圧を印加する高周波電源70と、を具備し、前記プラズマ生成電極1a、2でプラズマ化された前記第2原料ガスと前記プラズマ生成電極でプラズマ化されない前記第1原料ガスを接触させることによりシリコン系薄膜を形成するプラズマを用いた薄膜形成装置であって、
前記第2電極2は、前記基板保持台60の主面60aと平行に延在する複数の溝2aを備え、且つ前記基板保持台60の主面60aに対向して配置され、前記第1電極1aは、前記第2電極2の前記複数の溝2aと同じ個数の板状の金属体で形成され、且つ前記第1電極1aはそれぞれ前記第2電極2が備える各前記溝2aの中に包み込まれるように配置されるとともに、前記第1原料ガスは、前記第2電極2と前記基板保持台60の主面60aとの間に配置された第1原料ガス管5に設けられた第1原料ガス噴出孔5aから噴出し、前記第2原料ガスは、前記第2電極の各前記溝の底面に設けられた第2原料ガス噴出孔3から噴出するという構造を有することを特徴とする。
【0014】
先ず、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の構成を、図1図6を参照して説明する。
反応容器50は、内部を高真空状態に保てることが可能であり、不純物を発生しない真空容器であり、図示しない真空ポンプに接続された排気口51a、51bを備えている。排気口51a、51bは、それぞれ図示しない真空ポンプと組み合わせて稼働させることにより、反応容器50の内部を所定の真空度に真空引きすることが可能である。
基板保持台60は、反応容器50の所定の場所に、例えば、底面に配置される。基板保持台60は、主面60aを有し、該主面60aで基板61と接し、保持する。基板61の温度は、基板保持台60の内部に設けられた図示しない基板ヒータにより所定の温度に制御される。
基板61は、基板搬入搬出用バルブ62を開閉することにより、大気側から基板保持台60の主面60aに搬入、載置され、目的とする膜を形成した後、大気側へ搬出される。
【0015】
反応容器50には、後述の第1電極1aと第2電極2が組み合わせて配置される。第1電極1aと第2電極2の間に、後述の高周波電源70の電圧が印加されて、後述の第2原料ガスがプラズマ化される。
第2電極2は、図1図3図4及び図6に示されるように、基板保持台60の主面60aに対向して配置され、かつ、前記主面60aと平行に延在する複数の溝2aを備えている。複数の溝2aは、図2に示されるように、断面形状がU字型である。複数の溝2aは、図2に示されるように、それぞれ、2つの側面2bと、1つの底面2cと、2つの端
面2dと、1つの開口2eとから構成される。
前記溝2aの底面2cには、後述の第2原料ガスを噴出する第2原料ガス噴出孔3が形成される。そして、前記溝2aの端面2dには、後述の第1電極1aの支持部材1acを支持する溝端面の穴7a、7bが形成される。
第2電極2は、第2電極支持棚板53を介して、反応容器50に固定される。第2電極2は、電気的に反応容器50と導通であり、接地される。第2電極2は、後述の第1電極1a及び高周波電源70等と組み合わせて用いることにより、第2原料ガスをプラズマ化する。
前記複数の溝2aの個数、寸法は任意に選べる。ここでは、例えば、個数は3個、寸法は、深さ25mm、幅15mm、長さ1,100mmとする。
本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置を応用するに際し、例えば、基板サイズが1mx1mの場合、それに応じて、前記複数の溝の個数を、例えば、65個とし、隣り合う溝の間の第2電極の厚みを2mm、その長さを1,100mmとし、後述の第1電極1a(個数65個)と組み合わせて用いられる。即ち、基板サイズが増大した場合には、後述の第1電極1a及び前記複数の溝2aの個数及びその長さを増大させることにより対応できる。
【0016】
第1電極1aは、図1図3図6に示されるように、断面形状が矩形の平板状の金属板が用いられる。第1電極1aは、図1図3図6に示されるように、第2電極2が備える溝2aの中に包み込まれるように配置される。そして、第1電極1aは、図3に示されているように、第1電極1aの両端部に断面積が異なる第1電極支持部材1acが連結され、図2図示の第2電極2の溝端面の穴7a、7bに電気絶縁部材81a、81bを介して支持される。なお、第1電極1aと第1電極支持部材1acは電気的及び構造強度的に連結されている。
なお、第1電極1aの断面が矩形であるので、一様な強さの電界を発生させることが容易に可能であり、且つ水素ガスの滞留時間を長くする必要が生じた際に、電極の幅を広く設計すれば良いというメリットがある。ただし、角を有することから局所放電が起こる恐れがある。
第1電極支持部材1acの端部に給電点79a、79bを設ける。給電点79a、79bには、後述するように、高周波電源70の出力電圧が印加される。
第1電極1aと第2電極2の間の距離は、プラズマ生成条件を考慮して決められる。即ち、第1電極1aと第2の電極2の間に生成される第2原料ガスのプラズマ生成条件は、主として、第1電極1aと第2の電極2の間隔dと圧力pと印加される高周波電圧Vに依存する。ここでは、パッシェンの法則に従って、パッシェン曲線の最小値の領域に設定する。例えば、pd積が、略133Pa・cm~1333Pa・cmを満たす値を選ぶ。ここでは、例えば、第1電極1aと第2の電極2の側面2bの間隔d=0.5cm、圧力p=133Pa~1333Paとする。
第1電極1aと第2の電極2の間に生成される電界の大部分は、図4に電気力線Aで示されるように、基板保持台60の主面60aに平行な方向を向いている。即ち、第1電極1aと第2の電極2の間に生成される主たる電界の方向は基板保持台60の主面60aに平行な方向を向いている。これは、第1電極1aと第2の電極2の間に生成される電子及びイオンに働く電気力は基板保持台60の主面60aに平行な方向を向いていることを意味し、第1電極1aと第2の電極2の間に生成される水素プラズマ中のイオンが基板61を直撃しないことを意味している。なお、電子及びイオンの濃度勾配に基づく拡散による基板61の方向への移動はあるが、基板61にダメージを与える電気エネルギーはない、と考えられる。
ここでは、第1電極の寸法を、例えば、厚み5mm、幅15mm、長さ1,000mmとする。
【0017】
第1原料ガスは、目的とする膜種によって選ばれる。例えば、100%シランガス、又は水素ガスとシランガスの混合ガス、又は希ガスとシランガスの混合ガスである。ここでは、例えば、100%シランガスとする。第1原料ガスは、図示しない第1原料ガス源から図示しない第1原料ガスのマスフローコントローラで所定の流量を制御され、第1原料ガス導入管5を介して、第1原料ガス噴出孔5aから噴出する。
ここで、第1原料ガス噴出孔5aから噴出する第1原料ガスを、図6に示されるように第1原料ガス噴出流13と呼ぶ。
第2原料ガスは、目的とする膜種によって選ばれる。例えば、水素ガス、又は水素ガスとジボランガス(B)の混合ガス、又は水素ガスとホスフインガス(PH)の混合ガスである。ここでは、例えば、水素ガスとする。第2原料ガスは、図示しない第2原料ガス源から図示しない第2原料ガスのマスフローコントローラで所定の流量を制御され、第2原料ガス導入管10及び第2原料ガス分散箱11を介して、第2原料ガス噴出孔3から噴出する。
なお、第1原料ガス及び第2原料ガスは、空間的に分離され、それぞれ、第1原料ガス噴出孔5a及び第2原料ガス噴出孔3から、反応容器50に導入される。
第1原料ガス噴出孔5a及び第2原料ガス噴出孔3は、直径略0.4mm~略1mmの円形に形成される。ここでは、0.8mmとする。なお、第1及び第2原料ガス噴出孔5a、3の直径を略1mm以上にすると、ガスの噴出量の空間分布が不均一に成り、それを略1mm以下にすると、空間分布は均一になるが、孔加工に際し多大の労力と費用が発生する。前記孔直径0.8mmはガスの噴出量の空間分布が均一であり、製作加工費を抑制できることで妥当な数値と言える。
【0018】
第1電極1a及び第2電極2の間には、図1及び図3に示されるように、高周波電源70の出力電圧が整合器71及び電力分配器72等を介して印加される。高周波電源70の出力電圧を第1電極1a及び第2電極2の間に印可する方法は、任意に選んで良い。ここでは、例えば、第1電極1aの両端部に設けられた給電点79a、79bに後述の高周波電源70の出力電圧を印加する。
高周波電源70の周波数は、13.56MHz、又は、VHF帯域(30MHz~300MHz)から選ぶことができる。ここでは、例えば、13.56MHzとする。なお、周波数13.56MHzを選ぶ理由は、高周波電源が低コストで入手できることによる。なお、13.56MHzで生成されるプラズマ密度に比べて高い密度のプラズマ生成を必要とする場合は、例えば、VHF帯域の60MHzを選ぶ。
高周波電源70の出力は、図1及び図3に示されるように、大気用同軸ケーブル71aを介して整合器71に伝送され、整合器71の出力は大気用同軸ケーブル71bを介して電力分配器72へ伝送される。電力分配器72は2分配器であり、入力された電力を等分配して、大気用同軸ケーブル73a、73bを介して、それぞれ、真空装置用電流導入端子75a、75bに供給する。
真空装置用電流導入端子75aに伝送された高周波電源70の出力電圧は、真空用同軸ケーブル76a、真空用導線77a及び給電点79aを介して、第1電極1aに印加される。なお、真空用同軸ケーブル76aの給電点79a側の端部の外皮導線は固定金具80aにより第2電極2に接続固定される。
真空装置用電流導入端子75bに伝送された高周波電源70の出力電圧は、真空用同軸ケーブル76b、真空用導線77b及び給電点79bを介して、第1電極1aに印加される。なお、真空用同軸ケーブル76bの給電点79b側の端部の外皮導線は固定金具80bにより第2電極2に接続固定される。
【0019】
第1電極1aと第2電極2の間に水素ガスが導入された状態で、第1電極1aの給電点79a、79bに高周波電源70の電圧が印加されると、図4及び図5に示されるように、第1電極1aと第2電極2の間に強い電界が発生し、水素プラズマ15a、15bが生成される。水素プラズマ15a、15bの強さは、電力の大きさに依存するが、通常、プラズマ密度1010~1011個/cm、シース厚み略1mm~2.5mmのプラズマが生成される。
第1電極1aと第2電極2の間に発生する主たる電界の方向は、図4に示されるように、基板保持台60の主面60aに平行な方向を向いている。即ち、第1電極1aと第2電極2の間に発生するイオンの主たる移動方向は基板保持台60の主面60aに平行であり、基板61を直撃する方向を向いていない。即ち、第1電極1aと第2電極2の間からその外への電界Aに基づくプラズマの漏洩はほとんどない。したがって、第1電極1aと第2電極2の間に発生するイオンが基板保持台60の主面60aに載置された基板61を直撃する、という現象は発生しない。なお、電子及びイオンの濃度勾配に基づく拡散による基板61の方向への移動はあるが、基板61にダメージを与える電気エネルギーはない、と考えられる。
図5及び図6に示される水素プラズマ15a、15bでは、プラズマ15a、15bの中の電子eが水素分子に衝突して、次の反応が発生する。
+e→ H+H+e
第1電極1aと第2電極2の間に生成された高密度で低電子温度の水素プラズマ15a、15bに含まれるH原子及び水素ガスは、電気的に中性であるので、第1電極1aと第2電極2の間に発生する主たる電界による拘束が無く前記第2原料ガス噴出孔3から供給される水素ガスの流れに押されて、前記溝2aの開口2eから外部へ流出する。
ここで、前記溝2aの開口2eから外部へ流出するH原子及び水素ガスの流れを、図6に示されるように、水素プラズマ流12aと呼ぶ。第2電極2と基板保持台60の主面60aの間の空間を、図6に示されるように、水素プラズマ流12aと第1原料ガス噴出流13の接触領域17aと呼ぶ。
ここで、第1電極1aと第2電極によるプラズマ発生の特徴、即ち、作用と効果であるが、前記第1電極1aと第2電極2による水素プラズマ生成において、発生する主たる電界の方向が基板保持台60の主面60aに平行であり、水素プラズマ流12aは前記第1電極1aと第2電極2の主たる電界と直交する方向へ流出することから、基板保持台60の主面60aに載置された基板61へ直接的に突入するイオンの発生を抑制することが可能である。即ち、基板61に影響を与えるイオン衝撃を無くすという作用がある。これは、従来の装置では困難なイオンダメージの無い膜形成が可能であることを、意味している。
【0020】
次に、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の動作について、図1図6を参照して説明する。なお、説明の便宜上、微結晶シリコン膜の形成を例にとり、以下説明する。
先ず、反応室50の基板搬入搬出バルブ62を開いて、基板61を基板保持台60の主面60aに載置する。次に、基板搬入搬出バルブ62を閉じた後、図示しない真空ポンプにより、排気口51a及び排気口51bを介して、反応室50内部を所定の真空度にする。
その後、図示しない水素ガス源から図示しない水素ガスのマスフローコントローラで所定の流量を制御された水素ガスを、第2原料ガス導入管10及び第2原料ガス分散箱11を介して、第2原料ガス噴出孔3から噴出する。そして、図示しないシランガス源から図示しないシランガスのマスフローコントローラで所定の流量を制御されたシランガスを、第1原料ガス導入管5を介して、第1原料ガス噴出孔5aから噴出する。
ここでは、水素ガスとシランガスの流量比を100倍、即ち、水素ガスの流量/シランガスの流量=100、とする。
次に、図示しない排気バルブ制御装置により図示しない排気バルブの開閉度を制御し、反応容器50の内部圧力を、略133Pa~略1333Paに保つ。なお、反応容器50の真空引きに用いる真空ポンプと製膜時に用いる真空ポンプは、異なるものを別々に用いてもよい。ここでは、例えば、500Paに設定し、維持する。
ここで、第2電極2と基板保持台60の間に存在するガスの排気の流れを、図6に示されるように、排気流16と呼ぶ。
【0021】
次に、高周波電源70の出力電圧を、大気用同軸ケーブル71a、整合器71、大気用同軸ケーブル71b、電力分配器72、大気用同軸ケーブル73a、73b、真空装置用電流導入端子75a、75b、真空用同軸ケーブル76a、76b、真空用導線77a、77b及び給電点79a、79bを介して、第1電極1aに印加する。
高周波電源70の出力電圧が、第1電極1aと第2電極2の間に印加されると、図4図5に示されるように、電界Aにより水素プラズマ15a、15bが発生する。
なお、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置では、一対の電極1a、2で生成される水素プラズマ15a、15bの外側(即ち、電界が発生しない領域)に基板が載置されるので、水素プラズマ15a、15bによるイオン衝撃が避けられる。即ち、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置によれば、従来の装置では困難なイオンダメージの無い膜形成が可能である。
【0022】
第1電極1aと第2電極2の間に生成される水素プラズマ15a、15bの内部では、水素分子と電子の衝突により反応式(1)に示す反応が発生じ、多量のH原子が生成される。その一部分は、水素プラズマ流12aとして下流へ移動する。
+e→ H+H+e 反応式(1)
基板61が載置された基板保持台60と第2電極2に挟まれた領域において、水素プラズマ流12aとシランガス噴出流13(第1原料ガス噴出流)を接触混合すると、反応式(2)に示す反応が発生する。
SiH+H→ SiH+H 反応式(2)
接触領域17aにおいて、SiHラジカルは発生しない。SiHラジカルは非晶質シリコン膜及び微結晶シリコン膜等のシリコン系薄膜を形成するに際し、膜形成の高品質の前駆体である。
即ち、基板近傍に存在するガス種とラジカル種が、SiH4、SiH、HおよびHであり、且つプラズマイオン衝撃がない状態であるので、高品質の非晶質シリコン膜及び微結晶シリコン膜等のシリコン系薄膜が形成される。
なお、従来は、粗悪膜の要因であるSiHラジカルとイオン衝撃が存在する状態での膜形成が行われているので、高品質化が困難であり高品質化に限界があった。
ここでは、プラズマ生成に用いられる第1電極1aと第2電極2の電界は、基板保持台60に載置された基板61に及ばないことから、基板61へのプラズマイオン衝撃は発生しない。
その結果、基板近傍における気相反応は、反応式(2)が主たる反応となる。即ち、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置では、主としてSiHラジカル及びH原子の作用により高品質の微結晶シリコン膜が基板61の上に堆積する。
【0023】
次に、微結晶シリコン膜の厚みは該プラズマ生成時間に比例するので、高周波電源70の出力を第1電極1aと第2電極2の間に印加後から所定の時間が経過した時点で、高周波電源70の出力をゼロにする。
製膜時間は、予め取得されたデータに基づいて決められる。ここでは、1分~30分、例えば5分とする。なお、製膜時間は、電極間隔、基板温度、シランガスの流量、水素ガスの流量、圧力、電力等の関係に係わるデータを、予め把握し、そのデータを基に決められる。
目的とする微結晶シリコン膜の製膜が終了後、上記水素ガス及びシランガスの供給を停止し、反応容器50内部を、一旦、高い真空度に真空引きする。その後、反応容器50を大気条件に戻す。反応容器50が大気条件に戻された後、基板搬入搬出バルブ62を開とし、基板61を取り出す。
【0024】
本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置では、上述の通り、第1電極1aと第2電極2が発生する主たる電界の方向が基板保持台61の主面60aと平行の方向を向くように配置され、且つ第1電極1aと第2電極2が発生する主たる電界の影響が及ばぬ領域に基板が配置され、且つ膜形成の主要なラジカル種(SiH、H)をイオン衝撃が無い状態で基板61へ供給することが可能である。図6に示される接触領域17aにおいて、水素プラズマ流12aとシランランガス噴出流(第1原料ガス噴出流)13は多量のSiHラジカルを生成し、基板61に高品質の微結晶シリコン膜を形成する。
即ち、第2電極2は、基板保持台61の主面60aと平行に延在する複数の溝2aを備え、且つ基板板保持台61の主面60aに対向して配置され、第1電極1aは、第2電極2の複数の溝2aと同じ個数の板状の金属体で形成され、且つ第1電極1aは、それぞれ第2電極2が備える各溝2aの中に包み込まれるように配置されるとともに、第1原料ガスは、第2電極2と基板保持台60の主面60aとの間に配置された第1原料ガス管5に設けられた第1原料ガス噴出孔5aから噴出し、第2原料ガスは、第2電極2の各前記溝の底面2cに設けられた第2原料ガス噴出孔3から噴出するという構造を有することを特徴とする。
その結果、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置は、従来装置では困難であるイオンダメージの無い膜形成が可能である。
本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置は、ヘテロ接合型(SHJ型)太陽電池、液晶デイスプレイ及び各種半導体デバイ等の分野において、高品質の非晶質シリコン膜及び微結晶シリコン膜を高速で製膜可能なプラズマCVD装置として応用可能であり、製品製造コストの低減及び性能向上への貢献度は著しく大きい、と言える。
【0025】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置について、図7図9を参照して、説明する。図2も参照する。
図7は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の構成部材である断面形状が円形の第1電極の模式的斜視図である。図8は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置のプラズマ生成領域を示す断面図である。図9は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置のシランガス(第1原料ガス)とプラズマ化された水素ガス(第2原料ガス)の接触領域を示す断面図である。
本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の構成の特徴は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置における第1電極1a(断面形状が矩形)に代えて、断面形状が円形である第1電極1bを用いることである。そして、第2電極の開口2eに金属製メッシュ19を設置したことである。第1電極1bと金属製メッシュ19以外は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置と同様である
【0026】
符号1bは断面形状が円形の第1電極である。断面形状が円形の第1電極1bは、図7に示されるように、断面形状が円形の棒状の金属体で形成される。断面形状が円形の第1電極1bは、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置と同様に、図2図示の第2の電極2と組み合わせて用いられる。
なお、第1電極1bの断面が円形であるので、該電極1bと第2電極2との間に発生する電界は非一様な電界分布となり、強い電界が発生するので、Hラジカルの発生が容易に可能というメリットがある。
断面形状が円形の第1電極1bは、図7図8及び図9に示されるように、断面形状が円形の棒状の金属体が用いられる。断面形状が円形の第1電極1bは、図8及び図9に示されるように、第2電極2が備える溝2aの中に包み込まれるように配置される。そして、断面形状が円形の第1電極1bは、図7に示されるように、該第1電極1bの両端部に断面積が異なる第1電極支持部材1bcが連結され、電気絶縁部材81a、81bを介して図2図示の第2電極の溝端面の穴7a、7bに支持される。なお、断面形状が円形の第1電極1bと第1電極支持部材1bcは電気的及び構造強度的に連結されている。
【0027】
断面形状が円形の第1電極1bと第2電極2の間の距離は、プラズマ生成条件を考慮して決められる。即ち、断面形状が円形の第1電極1bと第2の電極2の間に生成される第2原料ガスのプラズマ生成条件は、主として、第1電極1bと第2の電極2の間隔dと圧力pと印加される高周波電圧Vに依存する。ここでは、パッシェンの法則に従って、パッシェン曲線の最小値の領域に設定する。例えば、pd積が、略133Pa・cm~1333Pa・cmを満たす値を選ぶ。ここでは、例えば、第1電極1aと第2の電極2の側面2bの間隔d=0.5cm、圧力p=133Pa~1333Paとする。
ここでは、断面形状が円形の第1電極1bの寸法を、例えば、直径10mm、長さ1,000mmとする。
ここで、第1電極1bと第2電極2の間に生成される水素プラズマの中で発生するHラジカルを含み第2電極2の開口2eの外へ流れ出る水素ガスを、図9に示されるように、水素プラズマ流12bと呼ぶ。
【0028】
符号19は金属製メッシュである。金属製メッシュ19は、第2電極2の溝2aの開口2eを塞ぐように設置される。金属製メッシュ19はプラズマを遮蔽する作用がある。
金属製メッシュ19は、例えば、スポット溶接で第2電極2に固定される。金属製メッシュ19は、開口率20%~80%、線径略0.1mm~略1mmから選ぶ。線径が略0.1mmより小さい場合、機械的強度が弱く、金属製メッシュ19を設置する作業の際に破損する恐れがあり、線径1mm以上であれば、開口率の選定に制約が生じるので好ましくない。また、開口率20%以下であれば、水素プラズマの流れが抑制され、開口率80%以上であればプラズマを遮蔽する作用が弱くなるので、好ましくない。
金属製メッシュ19は、図8及び図9に示されるように、第2電極2の溝2aの開口2eを塞ぐように設置され、断面形状が円形の第1電極1bと第2電極2間に生成される水素プラズマ15c、15d、15eの中の電子及びイオンを電気的に遮蔽する作用を有する。水素プラズマ15c、15d、15eの中の電気的に中性であるHラジカルの大部分は金属製メッシュ19に遮蔽されること無く、金属製メッシュ19を通過することが可能である。
ここで、第2電極2と基板保持台60の主面60aの間の空間を、図9に示されるように、水素プラズマ流12bと第1原料ガス流13bの接触領域17bbと呼ぶ。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の動作について、図7図8及び図9を参照して説明する。ここでは、基板61に形成する膜種を、例えば、液晶デイスプレイ用TFTのゲート絶縁膜のSiNxの場合につて説明する。第1原料として、シランガスとアンモニア(NH)を用い、第2原料として水素を用いる。
先ず、反応室50の基板搬入搬出バルブ62を開いて、基板61を基板保持台60の主面60aに載置する。次に、基板搬入搬出バルブ62を閉じた後、図示しない真空ポンプにより、排気口51a及び排気口51bを介して、反応室50内部を所定の真空度にする。
その後、図示しない水素ガス源から図示しない水素ガスのマスフローコントローラで所定の流量を制御された水素ガスを、第2原料ガス導入管10及び第2原料ガス分散箱11を介して、第2原料ガス噴出孔3から噴出する。そして、図示しないシランガス源及びアンモニア源からそれぞれ、図示しないシランガス及びアンモニアガスのマスフローコントローラで所定の流量を制御されたシランガス及びアンモニアを、第1原料ガス導入管5を介して、第1原料ガス噴出孔5aから噴出する。ここで、第1原料ガス噴出孔5aから噴出するシランガスとアンモニアガスの混合ガス流を第1原料ガス流13bと呼ぶ。
ここでは、水素ガスと、シランガス及びアンモニアガスの流量比を略50倍、即ち、水素ガスの流量/シランガスの流量/アンモニアの流量=50/1/1、とする。
次に、図示しない排気バルブ制御装置により図示しない排気バルブの開閉度を制御し、反応容器50の内部圧力を、略133Pa~略1333Paに保つ。なお、反応容器50の真空引きに用いる真空ポンプと製膜時に用いる真空ポンプは、異なるものを別々に用いてもよい。ここでは、例えば、500Paに設定し、維持する。
ここで、第2電極2と基板保持台60の間に存在するガスの排気の流れを、図9に示されるように、排気流16と呼ぶ。
【0030】
次に、高周波電源70の出力電圧を、大気用同軸ケーブル71a、整合器71、大気用同軸ケーブル71b、電力分配器72、大気用同軸ケーブル73a、73b、真空装置用電流導入端子75a、75b、真空用同軸ケーブル76a、76b、真空用導線77a、77b及び給電点79a、79bを介して、断面形状が円形の第1電極1bに印加する。
高周波電源70の出力電圧が、断面形状が円形の第1電極1bと第2電極2の間に印加されると、図8図9に示されるように、水素プラズマ15c、15d、15eが発生する。水素プラズマ15c、15d、15eのプラズマ密度は、略1010~1011個/cmである。
本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置は、一対の電極1b、2で生成される水素プラズマ15c、15d、15eの外側(即ち、電界が発生しない領域)に基板が載置され、且つ金属製メッシュ19のプラズマ遮蔽効果によりイオンが遮断されるので、水素プラズマ15c、15d、15eによる基板61へのイオン衝撃が避けられる。即ち、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置によれば、従来の装置では困難なイオンダメージの無い膜形成が可能である。
なお、従来装置では、プラズマ生成のための一対の電極の間(即ち、電界の中)に基板が載置されるので、該プラズマによるイオン衝撃は避けられないという致命的な欠点がある。
【0031】
断面形状が円形の第1電極1bと第2電極2の間に生成される水素プラズマ15c、15d、15eの内部では、水素分子と電子の衝突により反応式(1)に示す反応が発生し、多量のH原子が生成される。その一部分は、水素プラズマ流12bとして下流へ移動する。
+e→ H+H+e 反応式(1)
基板61が載置された基板保持台60と第2電極2に挟まれた領域において、即ち、図9に示される折衝領域17bbにおいて、水素プラズマ流12bと第1原料ガス噴出流13bが接触混合すると、反応式(2)、反応式(3)及び反応式(4)に示す反応が発生する。
SiH+H→ SiH+H 反応式(2)
NH+H→ NH+H 反応式(3)
SiH+NH→ SiH(NH)+H 反応式(4)
SiHラジカル、NHラジカル及びラジカルは、例えば、非特許文献2に示されているように、窒化シリコン膜を形成するに際し、膜形成の高品質の前駆体である。即ち、基板近傍に存在するガス種とラジカル種が、SiH(NH)、SiH4、SiH、NH、NH、HおよびHであり、且つプラズマイオン衝撃がない状態であるので、高品質の窒化シリコン膜が形成される。
なお、従来装置では、粗悪膜の要因であるSiHラジカルとイオン衝撃が存在する状態での膜形成が行われているので、高品質化が困難であり高品質化に限界があった。
ここでは、プラズマ生成に用いられる断面形状が円形の第1電極1bと第2電極2の電界は、基板保持台60に載置された基板61に及ばないことから、基板61へのプラズマイオン衝撃は発生しない。更に、金属製メッシュ19によって水素プラズマ15c、15d、15eの中の電子及びイオンが遮蔽されることから、基板保持台60に載置された基板61にイオン衝撃を与えない。
その結果、基板近傍における気相反応は、上記反応式(2)及び(3)が主たる反応となる。即ち、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置では、主としてSiHラジカル、NHラジカル及びH原子の作用により高品質のSiNx膜が基板61の上に堆積する。
【0032】
次に、窒化シリコン膜の厚みは該プラズマ生成時間に比例するので、高周波電源70の出力を断面形状が円形の第1電極1bと第2電極2の間に印加後から所定の時間が経過した時点で、高周波電源70の出力をゼロにする。
製膜時間は、予め取得されたデータに基づいて決められる。ここでは、1分~30分、例えば5分とする。なお、製膜時間は、電極間隔、基板温度、シランガスの流量、アンモニアの流量、水素ガスの流量、圧力、電力等の関係に係わるデータを、予め把握し、そのデータを基に決められる。
目的とする窒化シリコン膜の製膜が終了後、上記水素ガス、シランガス及びアンモニガスの供給を停止し、反応容器50内部を、一旦、高い真空度に真空引きする。その後、反応容器50を大気条件に戻す。反応容器50が大気条件に戻された後、基板搬入搬出バルブ62を開とし、基板61を取り出す。
【0033】
本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置では、上述の通り、断面形状が円形の第1電極1bと第2電極2が発生する主たる電界の方向が基板保持台61の主面60aと平行の方向を向くように配置され、且つ金属製メッシュ19を配置し、水素プラズマ15c、15d、15eの中の電子及びイオンを遮蔽することから、膜形成の主要なラジカル種であるSiH、NH、SiH(NH)、Hをイオン衝撃が無い状態で基板61へ供給することが可能である。
その結果、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置は、従来装置では困難であるイオンダメージの無い膜形成が可能である。
本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置は、液晶デイスプレイ用TFT及び各種半導体デバイ等の分野において、高品質の窒化シリコン膜を高速で製膜可能なプラズマCVD装置として応用可能であり、製品製造コストの低減及び性能向上への貢献度は著しく大きい、と言える。
【0034】
ところで、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置のシリコン系薄膜形成への応用例として、基板61に形成する膜種を、液晶デイスプレイ用TFTのゲート絶縁膜として用いられるSiNx膜の形成を説明したが、これに限定されることなく、第1の原料として、有機シリコン化合物であるテトラエトキシシラン(TEOS),メチルトリエトキシシラン(MTEOS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)及びトリスジメチルアミノシラン(TMDMAS)から選び、第2原料として、水素ガス、酸素ガス、炭酸ガス及び窒素ガスから少なくとも一つを選ぶことにより、例えば、SiO膜、SiNx膜及びSiON膜を形成することが可能である。
第2原料に水素ガスと酸素ガスを選んだ場合、プラズマ生成領域から第2電極2の開口2eを介して外側へ流出されるプラズマ流れには、多量のOHラジカルが含まれているので、第1原料の前記有機シリコン化合物に含まれるCH基はOHラジカルと反応して、CH、H、HO等になって、反応容器50から外部へ排出される。その結果、基板61の表面にはC成分、H成分を含まない緻密で高品質の膜が形成される。
【0035】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置について、図10及び図11を参照して、説明する。図2も参照する。
図10は、本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の構成部材である断面形状が楕円形の第1電極の模式的斜視図である。図11は、本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置のプラズマ生成領域を示す断面図である。
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の構成の特徴は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置における断面形状が円形の第1電極1bに代えて、断面形状が楕円形である第1電極1cを用いることである。なお、第2電極の開口2eに設置する金属製メッシュ19を取り外し、該金属製メッシュ19がない状態で用いても良い。
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の構成は、断面形状が楕円形である第1電極1c以外は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置と同様である。
【0036】
符号1cは断面形状が楕円形の第1電極である。断面形状が楕円形の第1電極1cは、図10に示されるように、断面形状が楕円形の棒状の金属体で形成される。断面形状が楕円形の第1電極1cは、本発明の第1及び第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置と同様に、図2図示の第2の電極2と組み合わせて用いられる。
なお、第1電極1cの断面が楕円形であるので、一様な強さの電界を発生させることが容易に可能であり、且つ水素ガスの滞留時間を長くする必要が生じた際に、電極の幅を広く設計すれば良いというメリットがある。また、角が無い形状であることから、局所放電発生の恐れが無いというメリットがある。
断面形状が楕円形の第1電極1cは、図10及び図11に示されるように、断面形状が楕円形の棒状の金属体で形成される。断面形状が楕円形の第1電極1cは、図11に示されるように、第2電極2が備える溝2aの中に包み込まれるように配置される。
そして、断面形状が楕円形の第1電極1cは、図10に示されるように、該第1電極1cの両端部に断面積が異なる第1電極支持部材1bcが連結され、図2図示の第2電極の溝端面の穴7a、7bに電気絶縁部材81a、81bを介して支持される。なお、断面形状が楕円形の第1電極1cと第1電極支持部材1bcは電気的及び構造強度的に連結されている。
【0037】
高周波電源70の出力電圧が、断面形状が楕円形の第1電極1cと第2電極2の間に印加されると、図11に示されるように、水素プラズマ18a、18bが発生する。水素プラズマ18a、18bのプラズマ密度は、通常のプラズマと同様に、1010~1011個/cm程度である。
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置では、一対の電極1c、2で生成されるプラズマ18a、18bの外側(即ち、電界が発生しない領域)に基板が載置されるので、水素プラズマ18a、18bによるイオン衝撃が避けられる。即ち、本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置によれば、従来の装置では困難なイオンダメージの無い膜形成が可能である。
水素プラズマ18a、18bの一部分は、図11図示のプラズマ流12cとなって、基板61の方へ流出する。プラズマ流12cに含まれるH原子は、第1原料ガス噴出孔5aから噴出する第1原料噴出流13bと反応し、各種ラジカルを生成し、基板61に堆積する。
【0038】
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の動作については、上述の本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の場合と同様である。
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の場合、第1電極1cの断面構造が楕円形であることから、断面構造が円形である第1電極1bを採用する本発明の第2の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置の場合と比べて、水素プラズマ(第2原料ガスのプラズマ)の生成領域の容積が大きくなり、多量のHラジカルの形成が可能というメリットがある。本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置と、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置を比較した場合、水素プラズマ(第2原料ガスのプラズマ)の生成領域の作用及び効果は、ほぼ同様であると、考えられる。
【0039】
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置では、上述の通り、断面形状が楕円形である第1電極1cと第2電極2が発生する主たる電界の方向が基板保持台61の主面60aと平行の方向を向くように配置され、且つ金属製メッシュ19を配置し、水素プラズマ18a、18bの中の電子及びイオンを遮蔽することから、膜形成の主要なラジカル種(SiH、H等)をイオン衝撃が無い状態で基板61へ供給することが可能である。
その結果、本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置は、従来装置では困難であるイオンダメージの無い膜形成が可能である。
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置は、ヘテロ接合型(SHJ型)太陽電池、液晶デイスプレイ及び各種半導体デバイ等の分野において、高品質のシリコン系薄膜を形成可能なプラズマCVD装置として応用可能であり、製品製造コストの低減及び性能向上への貢献度は著しく大きい、と言える。
【符号の説明】
【0040】
1a、1b、1c・・・第1電極、
2・・・第2電極、
2a・・・溝
2b・・・溝の側面、
2c・・・溝の底面、
2d・・・溝の端面、
2e・・・溝の開口、
3・・・水素ガス噴出孔(第2原料ガス噴出孔)、
5・・・シランガス導入管(第1原料導入管)、
5a・・・シランガス噴出孔(第1原料噴出孔)、
7a、7b・・・溝端面の穴、
12a、12b,12c・・・水素プラズマ流、
13・・・シランガス噴出流、
15a、15b、15c、15d、15e・・・水素プラズマ、
16・・・排気流、
17a・・・水素プラズマ流とシランガスの接触領域、
18a、18b・・・水素プラズマ、
50・・・反応容器、
60・・・基板保持台、
60a・・・基板保持台の主面、
61・・・基板、
70・・・高周波電源、
71・・・整合器、
72・・・電力分配器、
75a・・・真空装置用電流導入端子、
79a、79b・・・給電点。
図1
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