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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161947
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】被膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20221014BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221014BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20221014BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B05D7/24 303E
B05D7/24 302P
B05D7/00 L
E04F13/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126768
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2018107252の分割
【原出願日】2018-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡本 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】橋本 悠介
(57)【要約】
【課題】既存被膜の凹凸模様や多色模様を活かしつつ、既存被膜に起因する変色、ひび割れ等の劣化の進行を抑制し、長期にわたり美観性を保持することができる被膜形成方法を提供する。
【解決手段】本発明は、基材上に設けられた既存被膜面に対し、第1被覆材及び第2被覆材を塗付して新設被膜を形成する被膜形成方法であって、上記既存被膜面は、凹凸模様及び/または多色模様を有するものであり、上記第1被覆材及び第2被覆材は、それぞれ、炭素数3以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)を、樹脂構成成分中に20重量%以上含む樹脂成分を含有し、可視光透過性を有し、紫外線透過率が30%以下である被膜を形成するものであり、上記第2被覆材は、樹脂ビーズを含むものであり、上記第1被覆材の顔料体積濃度は、上記第2被覆材の顔料体積濃度よりも小であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に設けられた既存被膜面に対し、第1被覆材第2被覆材を順に塗付して新設被膜を形成する被膜形成方法であって、
上記既存被膜面は、凹凸模様及び/または多色模様を有するものであり、
上記第1被覆材及び第2被覆材は、それぞれ、
炭素数3以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)を、樹脂構成成分中に20重量%以上含む樹脂成分を含有し、
可視光透過性を有し、紫外線透過率が30%以下である被膜を形成するものであり、
上記第2被覆材は、樹脂ビーズを含むものであり、
上記第1被覆材の顔料体積濃度は、上記第2被覆材の顔料体積濃度よりも小である
ことを特徴とする被膜形成方法。
【請求項2】
上記第1被覆材の顔料体積濃度が0%以上3%未満であることを特徴とする請求項1記載の被膜形成方法。
【請求項3】
上記第2被覆材の顔料体積濃度が3%以上50%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の被膜形成方法。
【請求項4】
上記第1被覆材及び第2被覆材は、それぞれ、
上記炭素数3以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)として、炭素数3以上のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を含むものであり、
上記(A)成分中に占める上記(a1)成分の重量比をrとすると、
第1被覆材における樹脂成分のr(r)は、第2被覆材における樹脂成分のr(r)よりも大である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の被膜形成方法。
【請求項5】
上記新設被膜の膜厚が30μm以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の被膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な被膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物や土木構造物の外装等においては、種々の基材に対し、その基材の保護、色彩付与等の目的で、各種被覆材によって被膜が形成されている。このような被膜面は、美観性等の観点から、凹凸模様や多色模様が付与されていることがある。但し、このような被膜面は、屋外において長期にわたり曝露されると、太陽光、降雨等の影響によって劣化する傾向がある。具体的には、変色、ひび割れ等が引き起こされるおそれがある。そのため、このような劣化が生じた被膜面(既存被膜面)については、塗り替えを行う必要が生じてくる。
【0003】
これに対し、近年では、既存被膜面の塗り替えを行い、美観性の向上化、基材の長寿命化等を図ろうとする動きがある。例えば、特許文献1には、窯業外壁材塗装層表面の劣化部分を研磨した後、透明コーティング剤を塗付して、元の色調を復元させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-227138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような既存被膜面のうち、凹凸模様を有するものについては、凹凸形状等に応じて、太陽光の当たり方、水の流れ方や滞留の程度等が、部分的に異なることとなる。そのため、太陽光や水による負荷が大きな部分では、劣化が進行しやすくなり、局所的に変色、ひび割れ等が引き起こされるおそれがある。また、多色模様を有する被膜面では、色調によって耐久性に差異にある場合、相対的に耐久性が不十分な色調の領域において、同様の劣化が生じるおそれがある。
【0006】
このような既存被膜面に対しては、上記特許文献に記載されるような方法で塗り替えを行っても、既存被膜面の劣化の進行を十分に抑制することができず、塗り替えの効果が得られ難い場合がある。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、既存被膜の凹凸模様や多色模様を活かしつつ、既存被膜に起因する変色、ひび割れ等の劣化の進行を抑制し、長期にわたり美観性を保持することができる被膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため、本発明者は鋭意検討の結果、凹凸模様及び/または多色模様を有する既存被膜面に対し、特定の被覆材を塗付して被膜を形成する被膜形成方法に想到し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.基材上に設けられた既存被膜面に対し、第1被覆材第2被覆材を順に塗付して新設被膜を形成する被膜形成方法であって、
上記既存被膜面は、凹凸模様及び/または多色模様を有するものであり、
上記第1被覆材及び第2被覆材は、それぞれ、
炭素数3以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)を、樹脂構成成分中に20重量%以上含む樹脂成分を含有し、
可視光透過性を有し、紫外線透過率が30%以下である被膜を形成するものであり、
上記第2被覆材は、樹脂ビーズを含むものであり、
上記第1被覆材の顔料体積濃度は、上記第2被覆材の顔料体積濃度よりも小である
ことを特徴とする被膜形成方法。
2.上記第1被覆材の顔料体積濃度が0%以上3%未満であることを特徴とする1.記載の被膜形成方法。
3.上記第2被覆材の顔料体積濃度が3%以上50%以下であることを特徴とする1.または2.に記載の被膜形成方法。
4.上記第1被覆材及び第2被覆材は、それぞれ、
上記炭素数3以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)として、炭素数3以上のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を含むものであり、
上記(A)成分中に占める上記(a1)成分の重量比をrとすると、
第1被覆材における樹脂成分のr(r)は、第2被覆材における樹脂成分のr(r)よりも大である
ことを特徴とする1.~3.のいずれか記載の被膜形成方法。
5.上記新設被膜の膜厚が30μm以上であることを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の被膜形成方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の被膜形成方法によれば、既存被膜の凹凸模様や多色模様を活かしつつ、既存被膜に起因する変色、ひび割れ等の劣化の進行を抑制し、長期にわたり美観性を保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
本発明は、基材上に設けられた既存被膜面(凹凸模様及び/または多色模様を有する既存被膜面)に対し、特定の被覆材を塗付して新設被膜を形成する被膜形成方法である。
【0013】
このような既存被膜面に対し、従来の透明コーティング剤によって塗り替えを行っても、元来劣化しやすい部分では、変色、ひび割れ等の進行を抑制することは困難であり、ひび割れについては、既存被膜面に生じていた微細なひび割れが経時的に進行してしまうおそれもある。このようなひび割れは、塗り替え後の被膜にも波及しやすく、そうすると新設被膜による美観性、遮水性等が損われ、基材の長寿命化等の点においても十分な効果が得られ難くなる。
【0014】
これに対し、本発明では、既存被膜面の凹凸模様や多色模様を活かしつつ、既存被膜面に起因する変色、ひび割れ等の劣化の進行を抑制し、長期にわたり美観性を保持することができ、基材の長寿命化等を図ることも可能となる。このような効果は、本発明の特定新設被膜によって、太陽光や水への耐性が十分に付与されること等によって奏されるものと考えられる。
【0015】
本発明では、基材上に設けられた既存被膜面を塗装対象とする。このような既存被膜面としては、例えば、建築物、土木構造物等の基材表面に形成されたものが挙げられ、特に、太陽光や水等の影響を受けやすい外装面(外壁、屋根等)に形成されたものが好適である。基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、板状基材等が挙げられる。このうち、板状基材としては、例えば、セメントボード、押出成形板、スレート板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、金属系サイディングボード、窯業系サイディングボード、セラミック板、珪酸カルシウム板、プラスチックボード、硬質木片セメント板、塩ビ押出サイディングボード、合板等が挙げられる。本発明は、基材が板状基材である場合に、特に有用である。
【0016】
既存被膜面が複数の板状基材で構成される場合、板状基材どうしの継ぎ目は、シーリング材、乾式目地材等の目地材等が充填されたものであってもよい。このうちシーリング材としては、例えば、シリコーン系シーリング材、変性シリコーン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材、変性ポリサルファイド系シーリング材、アクリルウレタン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、SBR系シーリング材、ブチルゴム系シーリング材等が挙げられる。
【0017】
既存被膜面は、凹凸模様及び/または多色模様を有するものである。このような既存被膜は、1種または2種以上のコーティング剤によって形成されたものである。コーティング剤としては、着色ないし無着色、あるいは不透明ないし透明等の種々のものが使用でき、例えば、酢酸ビニル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等から選ばれる1種以上の樹脂を含むもの等が挙げられる。既存被膜面は、1層または2層以上の被膜であり、例えば、着色被膜層、透明被膜層等が積層されたものであってもよい。
【0018】
凹凸模様としては、種々のものが挙げられ、例えばタイル調模様、レンガ調模様、石目調模様、岩石調模様、木目調模様、幾何学的模様、縞模様、格子模様、水玉模様、砂壁模様、ゆず肌模様、さざ波模様等の他、動植物等をデザイン化した図形模様等が挙げられる。具体的に、凹凸模様を正面から見たときの凸部の形状としては、例えば正方形、長方形、円形、楕円形、三角形、菱形、多角形、不定形等の形状が挙げられる。また、凹凸模様における凸部の断面形状としては、例えば台形、正方形、長方形、半円形、波形、階段形、三角形、山形、不定形等が挙げられる。凹凸模様における凹部は、平坦で目地を形成するもの等であってもよい。凹部と凸部との高低差は、各々の部位で一定であっても相違していてもよいが、好ましくは20mm以下、より好ましくは1~15mm程度である。このような凹凸模様は、基材、既存被膜のいずれか一方または両方に付されたものであればよい。
【0019】
多色模様は、少なくとも2色以上の色彩が視認可能な状態で混在する模様であり、例えば、2色以上の斑点が混在する模様、背景色上に斑点(1色または2色以上)が散在する模様、2色以上に塗り分けられた模様(例えば、島状模様、線状模様、タイル調模様、レンガ調模様、石目調模様、岩石調模様、木目調模様、幾何学的模様、縞模様、格子模様、ランダム模様等)等が挙げられる。このような多色模様は、例えば、各種印刷手法(インクジェット印刷等)で形成されたものであってもよいし、石材調仕上塗材、多彩模様塗料等の装飾性コーティング剤によって形成されたものであってもよい。
【0020】
本発明は、上述のような既存被膜面が経年劣化した際の塗り替え方法(改装方法)として、好ましく適用できる。経年劣化の程度は、特に限定されるものではないが、壁面として概ね5年以上(さらには8年以上)使用されたものは、本発明の対象として好適である。新設被膜の形成前には、必要に応じ、既存被膜面の洗浄や部分補修等を行うことができる。既存被膜面がシーリング材等の目地材を有する場合、既存の目地材をそのまま残しておいてもよいが、新設被膜の形成前に新たな目地材を打設することもできるし、既存の目地材の表面に塗装等の処理を施すこともできる。
【0021】
本発明では、上述のような既存被膜面に対し、第1被覆材と第2被覆材を塗付して新設被膜を形成する。本発明における第1被覆材及び第2被覆材は、いずれも、炭素数3以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)(以下「(A)成分」ともいう)を、樹脂構成成分中に20重量%以上含む樹脂成分を含有する。そして、第1被覆材及び第2被覆材は、いずれも、可視光透過性を有し、紫外線透過率が30%以下である被膜を形成するものである。このような第1被覆材及び第2被覆材(以下、両方を総称して単に「被覆材」ともいう)の共通事項について、まず説明する。
【0022】
本発明における被覆材は、樹脂成分を含有し、当該樹脂成分は、樹脂構成成分として、炭素数3以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)を含む。このような樹脂成分は、結合材として作用するものであり、(A)成分によって、主に水への耐性を付与することができる。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとを併せて(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。
【0023】
(A)成分におけるアルキル基の形態としては、例えば、直鎖状、分岐状、環状等が挙げられる。(A)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸t-ペンチル、(メタ)アクリル酸1-エチルプロピル、(メタ)アクリル酸2-メチルブチル、(メタ)アクリル酸3-メチルブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルブチル、(メタ)アクリル酸2-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸4-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。これらの中でも、(A)成分としては、炭素数4以上(より好ましくは4以上8以下)のアルキル基を有するものが好適である。
【0024】
樹脂構成成分中の(A)成分の比率は20重量%以上、好ましくは25~99重量%、より好ましくは30~98重量%である。(A)成分が上記比率であれば、水に対する耐性等を高めることができ、変色、ひび割れ等の劣化抑制、美観性保持等の効果を得ることが可能となる。なお、本発明において、「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0025】
本発明の被覆材では、樹脂構成成分中の(A)成分として、炭素数3以上のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)(以下「(a1)成分」ともいう)を含むことが好ましい。このような(a1)成分としては、そのアルキル部分が、直鎖状または分枝状のアルキル基(環状を除く)であって、主鎖(最も長い炭素直鎖)の炭素数が3以上であるものが使用できる。樹脂成分が(a1)成分を含むものであれば、水に対する耐性に加え、ひび割れ防止性をいっそう高めることができ、遮水性、美観性保持、基材長寿命化等の点でより好適である。
【0026】
(a1)成分は、アルキル部分に炭素数3以上のアルキル主鎖を有する。(a1)成分のアルキル部分は、このようなアルキル主鎖を有する限り、種々の側鎖(例えば、アルキル主鎖よりも少ない炭素数のアルキル基等)を有するものであってもよい。(a1)成分としては、上述の(A)成分のうち、このような条件を満たすものが使用でき、例えば、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸1-エチルプロピル、(メタ)アクリル酸t-ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-メチルブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸3-メチルブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸2-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸4-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。これらの中でも、(a1)成分としては、アルキル部分に炭素数4以上(より好ましくは4以上8以下)のアルキル主鎖を有するものが好適である。
【0027】
(a1)以外の(A)成分(以下「(a2)成分」ともいう)としては、例えば、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0028】
(A)成分中に占める(a1)成分の重量比は「r」として表すことができる。この「r」は、下記式にて算出される値である。
[式] r={樹脂構成成分中の(a1)成分の重量}/{樹脂構成成分中の(A)成分の重量}
【0029】
樹脂構成成分としては、(A)成分を除くその他のモノマー(以下「(B)成分」ともいう)を含むことができる。(B)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、あるいは、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ピリジン系モノマー、水酸基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、フッ素含有モノマー、芳香族モノマー、紫外線吸収性基含有モノマー、光安定性基含有モノマー等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。(B)成分の構成比率は、樹脂構成成分中に、好ましくは80重量%以下(より好ましくは1~75重量%、より好ましくは2~70重量%)である。なお、本発明において、モノマーとは、重合性不飽和二重結合を有する化合物である。
【0030】
本発明において、上記(B)成分として、紫外線吸収性基含有モノマー、及び/または光安定性基含有モノマーを含む態様は、本発明の効果向上の点で好ましいものである。紫外線吸収性基含有モノマーは、紫外線吸収性基と重合性不飽和二重結合を有する化合物であり、紫外線吸収性基としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収性基、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性基、トリアジン系紫外線吸収性基、サリチレート系紫外線吸収性基等が挙げられる。光安定性基含有モノマーは、光安定性基と重合性不飽和二重結合を有する化合物であり、光安定性基としては、例えば、ピペリジル基等が挙げられる。
【0031】
このような樹脂成分は、例えば、(A)成分(好ましくは(a1)成分を含む)と、必要に応じ(B)成分を含むモノマー群を重合すること等によって製造できる。樹脂成分の形態としては、例えば、水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂等、あるいはこれらを複合したもの等が挙げられる。このうち水分散性樹脂は、1段ないし多段(2段、または3段以上)の乳化重合法等によって製造することができる。これらは架橋反応性を有するものであってもよく、また1液型、2液型等のいずれであってもよい。
【0032】
本発明における被覆材は、可視光透過性を有する被膜を形成するものである。これにより、透明性を有する被膜を形成することができ、既存被膜面の色調(多色模様等)を活かした仕上りを得ることが可能となる。この可視光透過性は、既存被膜面が視認できる程度であればよい。
【0033】
可視光透過性の程度は、可視光透過率で示すことができる。可視光透過率は、好ましくは10%以上、より好ましくは10~100%、さらに好ましくは15~90%である。なお、可視光透過率は、膜厚30μmの被膜について、波長580nmの光の透過率を、分光光度計を用いて測定した値(被膜なし(空気)の場合を透過率100%とする)である。
【0034】
本発明における被覆材は、紫外線透過率が30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは0~15%である被膜を形成するものである。本発明では、紫外線透過率が上記範囲内であることにより、太陽光に対する耐性等を高めることができ、変色、ひび割れ等の劣化抑制、美観性保持等の効果を得ることが可能となる。なお、紫外線透過率は、膜厚30μmの被膜について、波長350nmの光の透過率を、分光光度計を用いて測定した値(被膜なし(空気)の場合を透過率100%とする)である。
【0035】
このような紫外線透過率を得る手段としては、例えば、
(1)紫外線吸収性基を有する樹脂成分を含有する被覆材を使用する。
(2)紫外線吸収剤を含有する被覆材を使用する。
(3)紫外線遮蔽性粉体を含む被覆材を使用する。
等が挙げられる。これらの手段は、単独で採用してもよいし、組み合わせて採用してもよい。
【0036】
上記(1)では、例えば、(B)成分として紫外線吸収性基含有モノマーを含む樹脂成分を使用すればよい。樹脂構成成分中における紫外線吸収性基含有モノマーの比率は、好ましくは0.05~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%である。
【0037】
上記(2)における紫外線吸収剤(重合性不飽和二重結合を有する化合物を除く)としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤等が挙げられる。このうち、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ステアリルオキシベンゾフェノン等が挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシアルキルエステル、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニル誘導体、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルの反応生成物、2,4-ビス「2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。紫外線吸収剤の混合比率は、樹脂成分100重量部に対し、好ましくは0.05~10重量部、より好ましくは0.1~5重量部である。
【0038】
上記(3)における紫外線遮蔽性粉体としては、紫外線を吸収及び/または反射する性能を有するものが使用でき、例えば、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、リン酸亜鉛等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。紫外線遮蔽性粉体の平均粒子径は、好ましくは1~200nmである。上記(3)においては、可視光透過性が確保できる範囲内で、紫外線遮蔽性粉体の混合比率を設定することが望ましい。
【0039】
本発明における被覆材は、上記成分以外に、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内において、必要に応じ、公知の添加剤、例えば、骨材、色粒、染料、増粘剤、湿潤剤、凍結防止剤、造膜助剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤、密着性付与剤、低汚染化剤、親水化剤、撥水剤、架橋剤、硬化促進剤、触媒等を含むものであってもよい。
【0040】
本発明では、既存被膜面に対し、このような被覆材(第1被覆材及び第2被覆材)を塗付(塗装)することにより、新設被膜を形成する。すなわち、既存被膜面に対し、第1被覆材と第2被覆材を順に塗付して新設被膜を形成する。本発明では、第1被覆材を塗付し、その被膜を乾燥させた後に、第2被覆材を塗付することが望ましい。第1被覆材、第2被覆材としては、上述の条件を満たすものが使用できる。このような新設被膜は透明なものであり、可視光透過性を有する。
【0041】
本発明では、第1被覆材として、その顔料体積濃度が、第2被覆材の顔料体積濃度よりも小であるものを使用する。すなわち、第1被覆材としては、相対的に顔料体積濃度が小さいもの、第2被覆材としては、相対的に顔料体積濃度が大きいものを使用する。本発明では、このような態様の第1被覆材及び第2被覆材を用いることにより、既存被膜面に起因するひび割れ等の劣化の進行を十分に抑制することができ、美観性保持、基材長寿命化等の効果を高めることができる。また、艶が低減された落ち着きのある仕上外観を得ることができ、その仕上外観の美観性を長期にわたり保持することができる。なお、本発明における顔料体積濃度は、乾燥被膜中に含まれる顔料の体積百分率であり、被覆材を構成する樹脂成分及び顔料の配合量から、計算により求められる値である。
【0042】
このような顔料体積濃度の条件を満たす被覆材は、被覆材中の顔料濃度を調整することにより得られる。被覆材に混合する顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料等が挙げられる。上述の紫外線遮蔽性粉体も顔料として使用できる。
【0043】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(べんがら)、モリブデートオレンジ、黄色酸化鉄、群青、コバルトグリーン、鉄クロム複合酸化物、マンガンビスマス複合酸化物、マンガンイットリウム複合酸化物、マンガン鉄コバルト複合酸化物等の無機系着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンツイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機系着色顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、メタリック顔料等の機能性顔料が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0044】
体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、タルク、マイカ、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、あるいは寒水石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、ガラス粉砕物、樹脂粉砕物等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。このうち、体質顔料としては樹脂ビーズを含むものである。樹脂ビーズとしては、例えば、ウレタン樹脂ビーズ、アクリルビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリプロピレンビーズ、ポリメタクリル酸メチルビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリアクリロニトリルビーズ、ナイロンビーズ、スチレンアクリルビーズ、シリコンビーズ、フッ素ビーズ、セルロースビーズ、塩化ビニルビーズ、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)樹脂ビーズ等が挙げられる。樹脂ビーズとしては、中実品が好適である。
【0045】
体質顔料の平均粒子径は、好ましくは0.5~30μm、より好ましくは1~20μmである。体質顔料の屈折率は、好ましくは1.3~1.7、より好ましくは1.35~1.65である。このような体質顔料の使用は、被膜の透明性確保、仕上外観の美観性向上等の点で好ましいものである。なお、平均粒子径は、光散乱法によって測定される値であり、屈折率は、アッベ屈折計を用いて測定される値である。
【0046】
第1被覆材の顔料体積濃度は、0%以上3%未満であり、好ましくは0~2%、さらに好ましくは0~1%である。第1被覆材については、顔料体積濃度が上記範囲内となるように、着色顔料及び/または体質顔料を含むことができる。第1被覆材については、顔料を含まない(すなわち顔料体積濃度0%)の態様も好適である。第1被覆材の顔料体積濃度の上限が上記値であることにより、透明性を確保しつつ、ひび割れの抑制等において十分な効果を得ることができる。
【0047】
第2被覆材の顔料体積濃度は、3~50%であり、好ましくは5~40%、より好ましくは8~30%である。第2被覆材については、顔料体積濃度が上記範囲内となるように、着色顔料及び/または体質顔料を含むことができる。本発明では特に、第2被覆材が、少なくとも体質顔料を含むことが望ましい。第2被覆材における着色顔料の顔料体積濃度は、好ましくは0~3%、より好ましくは0~2%、さらに好ましくは0~1%である。第2被覆材における体質顔料の顔料体積濃度は、好ましくは3~50%、より好ましくは5~40%、さらに好ましくは8~30%である。第2被覆材では、着色顔料、体質顔料がそれぞれ上記顔料体積濃度の範囲内であることにより、透明性を確保しつつ、落ち着きのある仕上外観が得られやすく、さらに、ひび割れの抑制等において十分な効果を得ることができる。
【0048】
本発明では、第1被覆材、第2被覆材として、それぞれの樹脂成分が異なるものを使用することができる。この場合、第1被覆材における樹脂成分のr(以下「r」ともいう)は、第2被覆材における樹脂成分のr(以下「r」ともいう)よりも大であることが望ましい。すなわち、r-r>0を満たすことが望ましい。このような態様の樹脂成分を含む第1被覆材と第2被覆材を使用することにより、既存被膜面に起因する変色、ひび割れ等の劣化の進行を十分に抑制することができ、既存被膜面への密着性等も向上する。さらに、美観性保持、基材長寿命化等の効果を高めることもできる。なお、r、rは、それぞれ下記式1、下記式2にて算出される値である。
[式1] r={第1被覆材における樹脂構成成分中の(a1)成分の重量}/{第1被覆材における樹脂構成成分中の(A)成分の重量}
[式2] r={第2被覆材における樹脂構成成分中の(a1)成分の重量}/{第2被覆材における樹脂構成成分中の(A)成分の重量}
【0049】
上記式で表わされるrは、好ましくは0.1~1.0、より好ましくは0.2~0.9、さらに好ましくは0.3~0.85、特に好ましくは0.4~0.8であり、rは、好ましくは0.05~0.8、より好ましくは0.1~0.6、さらに好ましくは0.15~0.55、特に好ましくは0.2~0.5である。rとrとの差(r-r)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05~0.5、さらに好ましくは0.08~0.4、特に好ましくは0.1~0.3である。このような場合、上述の効果を十分に得ることが可能となる。
【0050】
このような第1被覆材及び第2被覆材の積層によって形成される新設被膜の膜厚は、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは60μm以上、特に好ましくは65μm超、最も好ましくは70μm以上である。膜厚の下限が上記範囲内であることにより、新設被膜に、太陽光や水への耐性が十分に付与され、既存被膜面に起因する変色、ひび割れ等の劣化抑制、長期にわたる美観性保持等の点で好適である。新設被膜の膜厚の上限は特に限定されないが、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。膜厚の上限が上記範囲内であれば、既存被膜面の凹凸模様等を活かした仕上りを得ることができる。なお、本発明における膜厚は、乾燥膜厚のことである。
【0051】
第1被覆材の被膜と第2被覆材の被膜との膜厚比{(第1被覆材の被膜の膜厚):(第2被覆材の被膜の膜厚)}は、好ましくは80:20~20:80、より好ましくは70:30~30:70、さらに好ましくは65:35~35:65である。このような態様であることにより、既存被膜面に起因する変色、ひび割れ等の抑制、既存被膜面への密着性向上化、長期にわたる美観性保持等の点において、十分な効果を得ることができる。
【0052】
第1被覆材、第2被覆材は、それぞれ複数回塗り重ねることができる。また、第1被覆材に該当する被覆材を2種以上塗り重ねたり、第2被覆材に該当する被覆材を2種以上塗り重ねたりすることも可能である。例えば、無色透明型、着色透明型等、色調が異なる2種以上を塗り重ねることができる。塗り重ねを行う際には、適宜インターバルを設け、被膜を乾燥させることもできる。このような場合、塗り重ね後の膜厚が上記条件を満たすことが望ましい。
【0053】
各被覆材の塗付においては、公知の塗装器具を用いることができる。塗装器具としては、例えば、スプレー、ローラー、刷毛等を使用することができる。各被覆材の塗付け量、塗り重ね数等は、最終的な膜厚が上記範囲内となるように設定することが望ましい。第1被覆材、第2被覆材の塗付け量は、それぞれ、好ましくは0.05~0.4kg/m2、より好ましくは0.08~0.3kg/m2である。各被覆材の塗り重ね数は、好ましくは1~3回である。塗装時には、各被覆材を必要に応じ適宜希釈することもできる。各被覆材塗付後の乾燥は、常温(好ましくは0~50℃、より好ましくは5~45℃)で行えばよく、必要に応じ加熱することもできる。
【実施例0054】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0055】
被覆材として、以下のものを用意した。
【0056】
・被覆材1:水分散性樹脂1{シクロヘキシルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・メチルメタクリレート・紫外線吸収性基含有モノマー・光安定性基含有モノマー・アクリル酸(重量比20:52:23:2:2:1)の乳化重合体、樹脂構成成分中(A)成分72重量%、r=0.72}、増粘剤、造膜助剤、消泡剤、及び水の混合物。可視光透過率61%、紫外線透過率5%。顔料体積濃度0%。
【0057】
・被覆材2:水分散性樹脂2{シクロヘキシルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・メチルメタクリレート・紫外線吸収性基含有モノマー・光安定性基含有モノマー・アクリル酸(重量比25:30:40:2:2:1)の乳化重合体、樹脂構成成分中(A)成分55重量%、r=0.55}、増粘剤、造膜助剤、消泡剤、及び水の混合物。可視光透過率62%、紫外線透過率4%。顔料体積濃度0%。
【0058】
・被覆材3:水分散性樹脂2{シクロヘキシルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・メチルメタクリレート・紫外線吸収性基含有モノマー・光安定性基含有モノマー・アクリル酸(重量比25:30:40:2:2:1)の乳化重合体、樹脂構成成分中(A)成分55重量%、r=0.55}、増粘剤、造膜助剤、消泡剤、体質顔料(ポリメタクリル酸メチルビーズ)、及び水の混合物。可視光透過率25%、紫外線透過率4%。顔料体積濃度18%。
【0059】
・被覆材4:水分散性樹脂3{シクロヘキシルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・メチルメタクリレート・紫外線吸収性基含有モノマー・光安定性基含有モノマー・アクリル酸(重量比32:18:45:2:2:1)の乳化重合体、樹脂構成成分中(A)成分50重量%、r=0.36}、増粘剤、造膜助剤、消泡剤、及び水の混合物。可視光透過率62%、紫外線透過率5%。顔料体積濃度0%。
【0060】
・被覆材5:水分散性樹脂3{シクロヘキシルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・メチルメタクリレート・紫外線吸収性基含有モノマー・光安定性基含有モノマー・アクリル酸(重量比32:18:45:2:2:1)の乳化重合体、樹脂構成成分中(A)成分50重量%、r=0.36}、増粘剤、造膜助剤、消泡剤、体質顔料(ポリメタクリル酸メチルビーズ)、及び水の混合物。可視光透過率25%、紫外線透過率5%。顔料体積濃度18%。
【0061】
・被覆材6:水分散性樹脂4{シクロヘキシルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・メチルメタクリレート・紫外線吸収性基含有モノマー・光安定性基含有モノマー・アクリル酸(重量比46:4:45:2:2:1)の乳化重合体、樹脂構成成分中(A)成分50重量%、r=0.08}、増粘剤、造膜助剤、消泡剤、体質顔料(ポリメタクリル酸メチルビーズ)、及び水の混合物。可視光透過率25%、紫外線透過率6%。顔料体積濃度18%。
【0062】
・被覆材7:水分散性樹脂5{シクロヘキシルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・メチルメタクリレート・光安定性基含有モノマー・アクリル酸(重量比25:30:42:2:1)の乳化重合体、樹脂構成成分中(A)成分55重量%、r=0.55}、増粘剤、造膜助剤、消泡剤、水、及びトリアジン系紫外線吸収剤(樹脂成分100重量部に対し0.3重量部)の混合物。可視光透過率60%、紫外線透過率25%。顔料体積濃度0%。
【0063】
・被覆材8:水分散性樹脂6{シクロヘキシルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・メチルメタクリレート・光安定性基含有モノマー・アクリル酸(重量比32:18:47:2:1)の乳化重合体、樹脂構成成分中(A)成分50重量%、r=0.36}、増粘剤、造膜助剤、消泡剤、体質顔料(ポリメタクリル酸メチルビーズ)、水、及びトリアジン系紫外線吸収剤(樹脂成分100重量部に対し0.3重量部)の混合物。可視光透過率27%、紫外線透過率24%。顔料体積濃度18%。
【0064】
・被覆材9:水分散性樹脂2{シクロヘキシルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・メチルメタクリレート・紫外線吸収性基含有モノマー・光安定性基含有モノマー・アクリル酸(重量比25:30:40:2:2:1)の乳化重合体、樹脂構成成分中(A)成分55重量%、r=0.55}、増粘剤、造膜助剤、消泡剤、着色顔料、及び水の混合物。可視光透過率22%、紫外線透過率4%。顔料体積濃度0.4%。
【0065】
・被覆材10:水分散性樹脂7{シクロヘキシルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・メチルメタクリレート・紫外線吸収性基含有モノマー・光安定性基含有モノマー・アクリル酸(重量比10:8:77:2:2:1)の乳化重合体、樹脂構成成分中(A)成分18重量%、r=0.44}、増粘剤、造膜助剤、消泡剤、及び水の混合物。可視光透過率60%、紫外線透過率5%。顔料体積濃度0%。
【0066】
・被覆材11:水分散性樹脂7{シクロヘキシルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・メチルメタクリレート・紫外線吸収性基含有モノマー・光安定性基含有モノマー・アクリル酸(重量比10:8:77:2:2:1)の乳化重合体、樹脂構成成分中(A)成分18重量%、r=0.44}、増粘剤、造膜助剤、消泡剤、体質顔料(ポリメタクリル酸メチルビーズ)、及び水の混合物。可視光透過率25%、紫外線透過率5%。顔料体積濃度18%。
【0067】
・被覆材12:水分散性樹脂8{シクロヘキシルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・メチルメタクリレート・アクリル酸(重量比10:8:81:1)の乳化重合体、樹脂構成成分中(A)成分18重量%、r=0.44}、増粘剤、造膜助剤、消泡剤、及び水の混合物。可視光透過率59%、紫外線透過率55%。顔料体積濃度0%。
【0068】
なお、顔料体積濃度の算出において、水分散性樹脂の比重は、いずれも1.0とした。ポリメタクリル酸メチルビーズの比重は1.2とした。
【0069】
(実施例1)
既存被膜面として、屋外曝露により劣化した窯業系サイディングボート(表面にタイル調の凹凸模様を有し、凹部には黒色のアクリル系樹脂被膜、凸部には褐色のアクリル系樹脂被膜、全体にアクリルシリコン系樹脂透明被膜を有するもの)を用意した。この既存被膜面の全面に対し、第1被覆材として被覆材1を乾燥膜厚(表1では「膜厚」と表記。以下同様。)が38μmとなるようにスプレー塗装し、3時間乾燥後、第2被覆材として被覆材3を乾燥膜厚が38μmとなるようにスプレー塗装し、7日間乾燥養生することにより、試験体を作製した。なお、塗装ないし養生の工程は、すべて標準状態(気温23℃、相対湿度50%)下で行った。
【0070】
[試験I]
上記方法で得られた試験体について、JIS K5600-5-6に準じた碁盤目テープ法にて密着性を評価した。評価基準は、「A:欠損部面積が10%未満」、「B:欠損部面積が10%以上30%未満」、「C:欠損部面積が30%以上50%未満」、「D:欠損部面積が50%以上」とした。試験結果を表1に示す。
【0071】
[試験II]
上記方法で得られた試験体について、促進耐候性試験機としてアイスーパーUVテスター(岩崎電気株式会社製)を用い、光照射6時間・結露2時間(計8時間)を1サイクルとして60サイクルまで促進試験を行った。この際、20サイクル終了時点、40サイクル終了時点、及び60サイクル終了時点での試験体表面の外観変化(ひび割れの状態)を観察するとともに、促進前後の色差を測定した。外観変化については、「A:変化なし」、「D:ひび割れが進行」とする4段階(優;A>B>C>D;劣)にて評価した。また、色差については、「A:色差1未満」、「B:色差1以上3未満」、「C:色差3以上10未満」、「D:色差10以上」として評価した。試験結果を表1に示す。
【0072】
(実施例2)
第1被覆材として被覆材2、第2被覆材として被覆材5を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0073】
(実施例3)
第1被覆材として被覆材4、第2被覆材として被覆材5を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0074】
(実施例4)
第1被覆材として被覆材4、第2被覆材として被覆材3を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0075】
(実施例5)
第1被覆材として被覆材4、第2被覆材として被覆材6を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0076】
(実施例6)
第1被覆材として被覆材7、第2被覆材として被覆材8を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0077】
(実施例7)
第1被覆材及び第3被覆材の乾燥膜厚がそれぞれ12μmとなるように塗装した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0078】
(実施例8)
第1被覆材として被覆材9、第2被覆材として被覆材5を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0079】
(比較例1)
第1被覆材として被覆材10、第2被覆材として被覆材11を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0080】
(比較例2)
第1被覆材として被覆材11、第2被覆材として被覆材10を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0081】
(比較例3)
第1被覆材、第2被覆材として、それぞれ被覆材12を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0082】
[試験III]
実施例1~8の試験体について6か月間屋外曝露を行い、試験体表面の汚れ等による外観変化を観察し、汚れの程度が軽微であったものを「A」とする4段階(優;A>B>C>D;劣)で評価した。試験結果を表1に示す。
【0083】
【表1】