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特開2022-161951樹脂組成物、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161951
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20221014BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20221014BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20221014BHJP
   C08K 5/357 20060101ALI20221014BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20221014BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221014BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20221014BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C08L63/00
C08K5/3415
C08K5/29
C08K5/357
C08K5/10
C08K3/013
C08G59/18
H05K1/03 610H
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127010
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2018214201の分割
【原出願日】2018-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 賢司
(72)【発明者】
【氏名】大石 凌平
(57)【要約】
【課題】低誘電正接でかつスミア除去性に優れ、かつ、導体層との間で優れた密着強度を有する硬化物を形成することが可能な樹脂組成物;当該樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物を含むプリント配線板;及び当該プリント配線板を含む半導体装置の提供。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)マレイミド化合物、(C)成分、及び、(E-1)活性エステル系硬化剤を含み、(B)成分が、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素鎖を含むマレイミド化合物であり、(C)成分が、(C-1)ベンゾオキサジン化合物及び(C-2)カルボジイミド化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)マレイミド化合物、(C)成分、及び、(E-1)活性エステル系硬化剤を含み、
(B)成分が、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素鎖を含むマレイミド化合物であり、
(C)成分が、(C-1)ベンゾオキサジン化合物及び(C-2)カルボジイミド化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である、
樹脂組成物。
【請求項2】
(B)成分が、下記一般式(B-I)で表される、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
【請求項3】
一般式(B-I)中、Lは、酸素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数6~24のアリーレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルキレン基、炭素原子数が5以上のアルキル基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分が、下記一般式(B-II)で表される、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化2】
【請求項5】
一般式(B-II)中、Aはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の環状のアルキレン基;置換基を有していてもよいベンゼン環を有する2価の基;置換基を有していてもよいフタルイミド環を有する2価の基;又は置換基を有していてもよいピロメリット酸ジイミド環を有する2価の基を表す、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上20質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(C)成分が、下記一般式(C-I)で表されるベンゾオキサジン化合物を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化3】
【請求項8】
一般式(C-I)中、Rはアリーレン基、アルキレン基、酸素原子、又はこれらの2以上の組み合わせからなるk価の基である、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
一般式(C-I)中、lは0を表す、請求項7又は8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
(C)成分が、下記式(C-II)で表される構造を含有するカルボジイミド化合物を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化4】
【請求項11】
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上30質量%以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
(D)無機充填材を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
(D)成分が、アミノシランで表面処理されている、請求項12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上95質量%以下である、請求項12又は13に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
プリント配線板の絶縁層形成用である、請求項1~14のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
支持体と、該支持体上に設けられた請求項1~15のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、プリント配線板。
【請求項18】
請求項17に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、当該樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物を含むプリント配線板;及び当該プリント配線板を含む半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。ビルドアップ方式による製造方法では、一般に、絶縁層は樹脂組成物を硬化させて形成される。
【0003】
上記絶縁層形成用の樹脂組成物又は樹脂フィルムとして、マレイミド化合物を含む樹脂組成物又は樹脂フィルムが提案されている(例えば、特許文献1~4)。
【0004】
具体的には、特許文献1には、融点が40℃以下であるマレイミド化合物、エポキシ化合物、シアン酸エステル化合物及び無機充填材を含有する熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、球状の無機充填材とを混合する工程を備える製造方法によって得られるミリ波レーダー用印刷配線板製造用樹脂フィルムが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、エポキシ樹脂、イミダゾール系硬化促進剤及びマレイミド化合物を含む液状エポキシ樹脂組成物が開示されている。
【0007】
特許文献4には、マレイミド化合物を熱硬化性樹脂として用い得ることが開示されている。また、特許文献4には、リン含有ベンゾオキサジン化合物を難燃剤として用い得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-010964号公報
【特許文献2】特開2017-125128号公報
【特許文献3】特開2018-070668号公報
【特許文献4】特開2011-144361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年は、プリント配線板における省力化をますます促進する観点から、絶縁層形成用の樹脂組成物の硬化物には、誘電正接が低いことが求められている。しかしながら、本発明者の研究の結果、樹脂組成物に含ませるマレイミド化合物の種類によっては、近年求められている誘電正接の低さを満たすことができないことが判明した。
【0010】
さらに、本発明者の研究の結果、誘電正接が低くなるように組成が調整された樹脂組成物を、硬化させた後にビアホールを形成した場合、スミア除去性に劣る場合があることが判明した。ここで、スミアとは、加工後に生じる残渣をいう。スミア除去性に劣ると、ビアホール周囲における導通信頼性が確保できないため、結果として、当該樹脂組成物を用いて得られるプリント配線板における接続信頼性も劣ることとなる。また、スミア除去性に劣ると、近年の回路デザイン、特には、微細化及び高密度化された配線に対応することができず、やはり、プリント配線板における接続信頼性が劣ることとなる。
【0011】
また、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層は、導体層とも接するため、導体層(例えば、めっき、下地層としての銅箔)との間で良好な密着強度を有することが求められており、密着強度のさらなる向上が実現できることが望ましい。これにより、種々の回路デザインにも対応できるようになることが期待される。
【0012】
本発明の課題は、低誘電正接でかつスミア除去性に優れ、かつ、導体層との間で優れた密着強度を有する硬化物を形成することが可能な樹脂組成物;当該樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物を含むプリント配線板;及び当該プリント配線板を含む半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の課題を達成すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物が、所定のマレイミド化合物と所定の成分とを含有することで、低誘電正接でかつスミア除去性に優れ、かつ、導体層との間で優れた密着強度を有する硬化物を形成することが可能な樹脂組成物を提供することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)マレイミド化合物、及び、(C)成分を含み、(B)成分が、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素鎖を含むマレイミド化合物であり、(C)成分が、(C-1)ベンゾオキサジン化合物及び(C-2)カルボジイミド化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である、
樹脂組成物。
[2] (B)成分が、下記一般式(B-I)で表される、[1]に記載の樹脂組成物。
【化1】
[3] 一般式(B-I)中、Lは、酸素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数6~24のアリーレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルキレン基、炭素原子数が5以上のアルキル基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基である、[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (B)成分が、下記一般式(B-II)で表される、[1]に記載の樹脂組成物。
【化2】
[5] 一般式(B-II)中、Aはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の環状のアルキレン基;置換基を有していてもよいベンゼン環を有する2価の基;置換基を有していてもよいフタルイミド環を有する2価の基;又は置換基を有していてもよいピロメリット酸ジイミド環を有する2価の基を表す、[4]に記載の樹脂組成物。
[6] (B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上20質量%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] (C)成分が、下記一般式(C-I)で表されるベンゾオキサジン化合物を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化3】
[8] 一般式(C-I)中、Rはアリーレン基、アルキレン基、酸素原子、又はこれらの2以上の組み合わせからなるk価の基である、[7]に記載の樹脂組成物。
[9] 一般式(C-I)中、lは0を表す、[7]又は[8]に記載の樹脂組成物。
[10] (C)成分が、下記式(C-II)で表される構造を含有するカルボジイミド化合物を含む、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化4】
[11] (C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上30質量%以下である、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12] (D)無機充填材を含む、[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13] (D)成分が、アミノシランで表面処理されている、[12]に記載の樹脂組成物。
[14] (D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上95質量%以下である、[12]又は[13]に記載の樹脂組成物。
[15] プリント配線板の絶縁層形成用である、[1]~[14]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[16] 支持体と、該支持体上に設けられた[1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
[17] [1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物を含む、プリント配線板。
[18] [17]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低誘電正接でかつスミア除去性に優れ、かつ、導体層との間で優れた密着強度を有する硬化物を形成することが可能な樹脂組成物;当該樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物を含むプリント配線板;及び当該プリント配線板を含む半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、プリント配線板の一例を模式的に示した一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の樹脂組成物、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置について詳細に説明する。
【0018】
[1.樹脂組成物]
以下、本発明の実施形態に係る樹脂組成物について詳細に説明する。
【0019】
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)マレイミド化合物、及び、(C)成分を含み、(B)成分が、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかを含み、(C)成分が、(C-1)ベンゾオキサジン化合物及び(C-2)カルボジイミド化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である。
【0020】
エポキシ樹脂を含む樹脂組成物が、(B)成分と、(C)成分とを含有することで、低誘電正接でかつスミア除去性に優れ、かつ、導体層との間で優れた密着強度を有する硬化物を形成することが可能な樹脂組成物を提供することができるようになる。
【0021】
樹脂組成物は、(A)~(C)成分の他に必要に応じて、(D)無機充填材、(E)硬化剤、(F)硬化促進剤、(G)任意の添加剤を含んでいてもよい。以下、本発明の樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0022】
<(A)エポキシ樹脂>
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含む。(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
(A)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、樹脂組成物は、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ともいう。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(「固体状エポキシ樹脂」ともいう。)を組み合わせて含むことが好ましい。液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族系液状エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系固体状エポキシ樹脂がより好ましい。本発明において、芳香族系のエポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環を有するエポキシ樹脂を意味する。
【0024】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ZX-1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ESN-475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(A)成分として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:1~1:20の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)樹脂シートの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)樹脂シートの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる等の効果が得られる。上記i)~iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:1~1:15の範囲がより好ましく、1:1~1:10の範囲がさらに好ましい。
【0027】
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0028】
(A)成分のエポキシ当量は、好ましくは50~5000g/eq.、より好ましくは50~3000g/eq.、さらに好ましくは80~2000g/eq.、さらにより好ましくは110~1000g/eq.である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0029】
(A)成分の重量平均分子量は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0030】
<(B)マレイミド化合物>
樹脂組成物は、(B)成分として、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素鎖を含むマレイミド化合物を含有する。(B)マレイミド化合物は、下記式(1)で表されるマレイミド基を分子中に含有する化合物である。
【0031】
【化5】
【0032】
(B)マレイミド化合物は、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素基を含む。この炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素鎖を含むマレイミド化合物は、そのような炭化水素鎖を含まないマレイミド化合物に比べて、樹脂組成物の硬化物の誘電正接の値を低くすることができる傾向にある。
【0033】
さらに、マレイミド基を分子中に含有する化合物は、アルカリ溶液に溶解しやすいので、樹脂組成物が(B)成分を含有することにより、通常スミア除去性に優れた硬化物を得ることができる。
【0034】
炭素原子数が5以上のアルキル基、及び炭素原子数が5以上のアルキレン基は炭素鎖が長いことから、通常は、疎水性を示す。よって、(B)マレイミド化合物は高湿環境下において劣化しにくく、例えばHAST試験後でも絶縁層の破壊を伴う層間剥離を抑制することができる。この結果、樹脂組成物が(B)成分を含有することにより、導体層(特にはめっきにより形成された導体層)との間で高い密着性を有する絶縁層を得ることできるようになる。ここで、密着性とは、互いに隣接する第1の物体及び第2の物体間の密着強度をいい、第1の物体の表面上に第2の物体を形成した場合の密着強度であってもよいし、第2の物体の表面上に第1の物体を形成した場合の密着強度であってもよい。密着強度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0035】
また、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素鎖を含むマレイミド化合物は、その長い炭素鎖の作用により、分子構造が柔軟であるという傾向を示す。よって、そのような炭化水素鎖を含まないマレイミド化合物及びアリーレン基を主要な構成に含むマレイミド化合物に比べて低い最低溶融粘度を達成することができる。最低溶融粘度は、動的粘弾性法により溶融粘度を測定することで求めることができる。例えば、動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」)を使用し、樹脂組成物の樹脂組成物層から採取した1gの試料について、直径18mmのパラレルプレートを使用して、行うことができる。測定条件として、開始温度60℃から200℃まで、昇温速度5℃/分、測定温度間隔2.5℃、振動1Hz/degを設定し、得られた溶融粘度の測定値から、最低溶融粘度を求めることができる。
【0036】
炭素原子数が5以上のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。また、(B)成分のマレイミド化合物は、炭素原子数が5以上のアルキル基を、炭素原子数が5以上のアルキレン基の置換基として有していてもよい。
【0037】
炭素原子数が5以上のアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルキレン基とは、環状のアルキレン基のみからなる場合と、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基が結合した環状のアルキレン基からなる場合との両方を含む概念である。このようなアルキレン基としては、例えば、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0038】
(B)マレイミド化合物において、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基は、マレイミド基の窒素原子に直接結合していることが好ましい。ここで、「直接」とは、マレイミド基の窒素原子とアルキル基又はアルキレン基との間に他の基がないことをいう。これにより、密着性を特に良好とすることができる。
【0039】
(B)マレイミド化合物は、硬化物と導体層との間で高い密着性を有する絶縁層を得る観点から、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の両方を含むことが好ましい。
【0040】
炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。互いに結合して形成された環としては、例えば、シクロヘキサン環等が挙げられる。
【0041】
炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基は、置換基を有していなくてもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-6アルキル基、-N(C1-10アルキル基)、C1-10アルキル基、C6-10アリール基、-NH、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO等が挙げられる。ここで、「Cp-q」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp~qであることを表す。例えば、「C1-10アルキル基」という表現は、炭素原子数1~10のアルキル基を示す。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。
【0042】
上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0043】
(B)マレイミド化合物の1分子当たりのマレイミド基の数は、1個でもよいが、好ましくは2個以上であり、好ましくは10個以下、より好ましく6個以下、特に好ましくは3個以下である。1分子当たり2個以上のマレイミド基を有する(B)マレイミド化合物を用いることにより、導体層との間でより高い密着性を有する絶縁層を得ることができる。
【0044】
(B)マレイミド化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(B)マレイミド化合物は、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素基を含んでいればよいが、硬化物の性能を向上させる観点、特には導体層との間でより高い密着性を有する絶縁層を得る観点から、下記一般式(B-I)で表されるマレイミド化合物であることが好ましい。
【化6】
【0046】
Rは、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。Rは、上記した炭素原子数が5以上のアルキレン基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0047】
Lは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NR-(Rは水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基)、酸素原子、硫黄原子、C(=O)NR-、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及びこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基等が挙げられる。フタルイミド由来の2価の基とは、フタルイミドから誘導される2価の基を表し、具体的には一般式(2)で表される基である。ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基とは、ピロメリット酸ジイミドから誘導される2価の基を表し、具体的には一般式(3)で表される基である。式中、「*」は結合手を表す。
【化7】
【0048】
アルキレン基としては、炭素原子数1~50のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~45のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~40のアルキレン基が特に好ましい。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチルエチレン基、シクロヘキシレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0049】
アルケニレン基としては、炭素原子数2~20のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~15のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~10のアルケニレン基が特に好ましい。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニレン基としては、例えば、メチルエチレニレン基、シクロヘキセニレン基、ペンテニレン基、へキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等が挙げられる。
【0050】
アルキニレン基としては、炭素原子数2~20のアルキニレン基が好ましく、炭素原子数2~15のアルキニレン基がより好ましく、炭素原子数2~10のアルキニレン基が特に好ましい。このアルキニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキニレン基としては、例えば、メチルエチニレン基、シクロヘキシニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基等が挙げられる。
【0051】
アリーレン基としては、炭素原子数6~24のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~18のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~14のアリーレン基がさらに好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらにより好ましい。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。
【0052】
2価の連結基であるアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、及びアリーレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、一般式(B-I)中のRが表す炭素原子数が5以上のアルキル基が有していてもよい置換基と同様であり、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。
【0053】
これらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基としては、例えば、アルキレン基、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる2価の基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる2価の基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる2価の基;等が挙げられる。これらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基は、それぞれの基の組み合わせにより縮合環等の環を形成してもよい。また、これらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基は、繰り返し単位数が1~10の繰り返し単位であってもよい。
【0054】
中でも、一般式(B-I)中のLとしては、酸素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数6~24のアリーレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルキレン基、炭素原子数が5以上のアルキル基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基であることが好ましい。中でも、Lとしては、アルキレン基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-アリーレン基-アルキレン基-アリーレン基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン-ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基がより好ましい。
【0055】
(B)マレイミド化合物は、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素基を含んでいればよいが、硬化物の性能を向上させる観点、特には導体層との間でより高い密着性を有する絶縁層を得る観点から、下記一般式(B-II)で表されるマレイミド化合物であることが好ましい。一般式(B-II)で表されるマレイミド化合物は、上記一般式(B-I)で表されるマレイミド化合物に代わるマレイミド化合物であってもよいし、上記一般式(B-I)で表されるマレイミド化合物に包含されるマレイミド化合物であってもよい。
【0056】
【化8】
【0057】
R’は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。R’は、一般式(B-I)中のRと同一であり得る。
【0058】
Aは、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。但し、Aが直鎖状のアルキレン基のみからなるアルキレン基である場合は除く。Aがアルキレン基を表す場合、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも環状、即ち置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の環状のアルキレン基が好ましい。その炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このようなアルキレン基としては、例えば、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0059】
置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基における芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環、芳香族複素環等が挙げられ、ベンゼン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環が好ましい。即ち、芳香環を有する2価の基としては、置換基を有していてもよいベンゼン環を有する2価の基、置換基を有していてもよいフタルイミド環を有する2価の基、置換基を有していてもよいピロメリット酸ジイミド環を有する2価の基が好ましい。芳香環を有する2価の基としては、例えば、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;等が挙げられる。上記アリーレン基及びアルキレン基は、一般式(B-I)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0060】
Aが表す、アルキレン基及び芳香環を有する2価の基は置換基を有していてもよい。置換基としては、一般式(B-I)中のRが表す炭素原子数が5以上のアルキル基が有していてもよい置換基と同様である。
【0061】
Aが表す基の具体例としては、以下(4)~(6)の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化9】
【化10】
【0062】
nは、1~15の整数を表し、1~10の整数が好ましい。
【0063】
一般式(B-I)又は(B-II)で表されるマレイミド化合物は、一般式(B-III)で表されるマレイミド化合物であることが好ましい。これに代えて、一般式(B-II)で表されるマレイミド化合物は、一般式(B-IV)で表されるマレイミド化合物であることも好ましい。
【化11】
【0064】
は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。Rは、一般式(B-I)中のRが表す炭素原子数が5以上のアルキレン基と同一であり、ヘキサトリアコンチレン基が好ましい。
【0065】
は、それぞれ独立に、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基を表す。アリーレン基、アルキレン基は、一般式(B-I)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様であり、好ましい範囲も同様である。Rとしては、これらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基又は酸素原子であることが好ましい。
【0066】
これらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基としては、酸素原子、アリーレン基、及びアルキレン基の組み合わせが挙げられる。これらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基の具体例としては、以下(7)の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化12】
【0067】
は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。Rは、一般式(B-I)中のRが表す炭素原子数が5以上のアルキレン基と同一であり、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が好ましく、オクチレン基がより好ましい。
【0068】
は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。Rは、一般式(B-II)中のAが表す芳香環を有する2価の基と同一であり、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基が好ましく、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基がより好ましい。上記アリーレン基及びアルキレン基は、一般式(B-I)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0069】
が表す基の具体例としては、例えば以下(8)の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化13】
【0070】
は、それぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。Rは、上記した炭素原子数が5以上のアルキル基と同一であり、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が好ましく、ヘキシル基、オクチル基がより好ましい。
【0071】
n1は、1~15の整数を表し、1~10の整数が好ましい。n2は0~10の整数を表し、1~8の整数が好ましい。n3は、それぞれ独立に0~4の整数を表し、1~3の整数が好ましく、2がより好ましい。
【0072】
(B)マレイミド化合物の具体例としては、以下の(9)~(12)の化合物を挙げることができる。但し、(B)マレイミド化合物はこれら具体例に限定されるものではない。式(9)、(10)、(11)中、n9、n10、n11は1~10の整数を表す。
【化14】
【化15】
【0073】
(B)マレイミド化合物の具体例としては、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-1500」(式(9)の化合物)、「BMI-1700」(式(10)の化合物)、「BMI-3000」、「BMI-3000J」(式(11)の化合物)、「BMI-689」(式(12)の化合物)、等が挙げられる。
【0074】
(B)マレイミド化合物の分子量としては、導体層との密着性を向上させる観点から、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは400以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは80000以下、さらに好ましくは60000以下である。
【0075】
(B)マレイミド化合物の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。(B)成分の含有量の下限を斯かる範囲内にすることにより、絶縁層と導体層との密着性及びスミア除去性により優れた硬化物を得ることが可能となる。上限は、不揮発成分換算で(A)成分の含有量よりも少ないことが好ましく、例えば、20質量%以下、16質量%以下、10質量%以下又は6質量%以下とし得る。(B)成分の含有量の上限を斯かる範囲内にすることにより、誘電正接の値を十分に低くすることができ、また、めっき、特には銅めっきとの間の密着強度を十分に確保することができる。
【0076】
<(C)成分>
本実施形態では、(C)成分は、(C-1)ベンゾオキサジン化合物及び(C-2)カルボジイミド化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である。なお、(C-1)ベンゾオキサジン化合物と、(C-2)カルボジイミド化合物とを併用してもよい。
【0077】
(C)成分を含むことにより、樹脂組成物の硬化物の性能を向上させることができる。ここで、硬化物の性能は、スミア除去性の良好さ、誘電正接の低さ、及び、導体層との間の密着強度の高さの性能群から選択される1種以上の性能であることが好ましく、より好ましくは、スミア除去性の良好さ及び導体層との間の密着強度の高さの2つの性能である。さらに好ましくは、導体層が、少なくとも、硬化物上にめっき処理により形成されるめっき(例:銅めっき)及び硬化物上に圧着により積層される薄膜(例:下地層としての銅)の双方を含む。通常、圧着により積層される薄膜は、めっきよりも基材に対する密着強度が低いことから、特に好ましくは、(C)成分は、硬化物と当該硬化物上に圧着により積層される薄膜との間の密着強度を向上させる。なお、(C)成分を、(A)成分及び(B)成分を含む樹脂組成物において、(C)成分を含むことにより、(C)成分を含まない場合よりも向上した性能を有する硬化物を形成可能な成分と考えてもよいし、(A)成分及び(C)成分を含む樹脂組成物において、(B)成分を含むことにより、(B)成分を含まない場合よりも向上した性能を有する硬化物を形成可能な成分と考えてもよいし、又は、(A)成分を含む樹脂組成物において、(B)成分及び(C)成分を含むことにより、それら(B)成分及び(C)成分を含まない場合よりも優れた性能を有する硬化物を形成可能な成分(すなわち(B)成分とともに硬化物の性能を向上させる成分)であると考えてもよい。また、(C)成分は、樹脂組成物の性能を向上させることができる。一例を挙げると、(C)成分は、樹脂組成物のポットライフを十分な時間(例えば1日以上)で維持する性能を有し、具体的には、樹脂組成物中において(B)成分とともに存在しても樹脂組成物のゲル化が十分な時間にわたって認められない。
【0078】
<(C-1)ベンゾオキサジン化合物>
樹脂組成物は、(C-1)ベンゾオキサジン化合物を含有する。(C-1)ベンゾオキサジン化合物は、後述する実施例において例証されているとおり、(A)成分及び(B)成分を含む樹脂組成物において、(C)成分を含むことにより、(C)成分を含まない場合に比べて当該樹脂組成物の硬化物の性能及び樹脂組成物の性能を向上させることが確認された成分のうちの一つである。具体的には、(C-1)ベンゾオキサジン化合物は、(A)成分を含む樹脂組成物において(B)成分と併用することにより、(C-1)成分を用いない場合に比べて、十分な時間(例えば1日以上)のポットライフを維持することができ、また、硬化物については、誘電正接の低い値を維持することができ、スミア除去性を良好なまま維持することができ、めっき密着性をより向上させることができ、下地密着性を大幅に向上させることができる。
【0079】
(C-1)ベンゾオキサジン化合物は、下記式(13)で表されるベンゾオキサジン環を分子中に有する化合物である。
【化16】
【0080】
(C-1)ベンゾオキサジン化合物の1分子あたりのベンゾオキサジン環の数は、硬化物の性能、特には密着性を向上させる観点から、好ましくは1個以上、より好ましくは2個以上であり、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下である。
【0081】
(C-1)ベンゾオキサジン化合物は、ベンゾオキサジン環に加えて芳香環を有することが好ましい。ベンゾオキサジン環に加えて芳香環を有することにより、通常、耐熱性が向上するので、より高温環境下での環境試験後であっても高い密着性を維持できることができる。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環などが挙げられ、ベンゼン環が好ましい。また、芳香環の数は、上記の硬化物の性能、特には密着性を向上させる観点から、好ましくは1個以上、より好ましくは2個以上であり、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下である。
【0082】
(C-1)ベンゾオキサジン化合物としては、下記一般式(C-I)で表されるベンゾオキサジン化合物が好ましい。
【化17】
【0083】
は、k価の基を表す。このような基としては、アリーレン基、アルキレン基、酸素原子、又はこれらの2以上の組み合わせからなるk価の基であることが好ましく、アリーレン基又は2以上の組み合わせからなるk価の基であることがより好ましく、2以上の組み合わせからなるk価の基であることがさらに好ましい。
【0084】
アリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~15のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~12のアリーレン基がさらに好ましい。アリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基等が挙げられ、フェニレン基が好ましい。
【0085】
アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基の具体例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基などが挙げられ、メチレン基が好ましい。
【0086】
2以上の組み合わせからなるk価の基としては、例えば、1以上のアリーレン基と1以上の酸素原子とが結合した基、1以上のアリーレン基と1以上のアルキレン基とが結合した基、1以上のアルキレン基と1以上の酸素原子とが結合した基、1以上のアリーレン基と1以上のアルキレン基と1以上の酸素原子とが結合した基等が挙げられ、1以上のアリーレン基と1以上の酸素原子とが結合した基、1以上のアリーレン基と1以上のアルキレン基とが結合した基が好ましい。2以上の組み合わせからなるk価の基の具体例としては、以下式(14)~(17)で表される2価の基を挙げることができる。式(14)~(17)中、「*」は結合手を表す。
【0087】
【化18】
【0088】
アリーレン基及びアルキレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-6アルキル基、-N(C1-6アルキル基)、C1-6アルキル基、C6-10アリール基、-NH、-CN、-C(O)O-C1-6アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO等が挙げられる。「C1-6アルキル基」という表現は、炭素原子数1~6のアルキル基を示す。
【0089】
上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0090】
は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、又はアリール基を表す。アルキル基は、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がさらに好ましい。アリール基は、炭素原子数6~20のアリール基が好ましく、炭素原子数6~15のアリール基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がさらに好ましい。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。置換基としては、上記アリーレン基が有していてもよい置換基と同様である。
【0091】
kは2~4の整数を表し、2~3の整数が好ましく、2がより好ましい。lは0~4の整数を表し、0~3の整数が好ましく、0がより好ましい。
【0092】
一般式(C-I)で表されるベンゾオキサジン化合物は、本発明の所期の効果を得る観点から、下記一般式(18)及び一般式(19)で表されるベンゾオキサジン化合物の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0093】
【化19】
【0094】
一般式(18)で表されるベンゾオキサジン化合物は、式(20)及び式(21)で表されるベンゾオキサジン化合物の少なくともいずれかであることが好ましく、式(19)で表されるベンゾオキサジン化合物は、式(22)で表されるベンゾオキサジン化合物であることが好ましい。
【0095】
【化20】
【0096】
(C-1)成分としては、一般式(C-I)で表されるベンゾオキサジン化合物に属する化合物1種類を単独で用いてもよく、2種類以上の混合物を用いてもよい。例えば、式(20)で表されるベンゾオキサジン化合物と、式(21)で表されるベンゾオキサジン化合物の混合物を(C-1)成分として用いる場合、モル比(式(20):式(21))は、1:10~10:1が好ましく、2:8~8:2がより好ましく、5:5~7:3がより好ましい。質量比(式(20):式(21))は1:10~10:1が好ましく、2:8~8:2がより好ましく、5:5~7:3がより好ましい。モル比又は質量比を斯かる範囲内にすることにより、硬化物の性能、特には硬化物と導体層との間の密着性を向上させることができる。
【0097】
(C-1)ベンゾオキサジン化合物の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」;昭和高分子社製の「HFB2006M」等が挙げられる。
【0098】
(C-1)ベンゾオキサジン化合物の分子量としては、密着性を向上させる観点から、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは400以上であり、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下、さらに好ましくは500以下である。
【0099】
(C-1)ベンゾオキサジン化合物の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。上限は、不揮発成分換算で(A)成分の含有量よりも少ないことが好ましく、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下又は3質量%以下である。(C-1)成分の含有量を斯かる範囲内にすることにより、硬化物の性能、特には硬化物と導体層との間の密着性を向上させることができる。本実施形態において、(C)成分の含有量は、樹脂組成物が(C-2)成分を含まない場合、(C-1)成分の含有量であり、樹脂組成物が(C-2)成分を含む場合、(C-1)成分の含有量と(C-2)成分の含有量の和である。
【0100】
<(C-2)カルボジイミド化合物>
樹脂組成物は、(C-2)カルボジイミド化合物を含有する。(C-2)カルボジイミド化合物は、後述する実施例において例証されているとおり、(A)成分及び(B)成分を含む樹脂組成物において、(C)成分を含むことにより、(C)成分を含まない場合に比べて当該樹脂組成物の硬化物の性能及び樹脂組成物の性能を向上させることが確認された成分のうちの一つである。具体的には、(C-2)カルボジイミド化合物は、(A)成分を含む樹脂組成物において(B)成分と併用することにより、(C-2)成分を用いない場合に比べて、十分な時間(例えば1日以上)のポットライフを維持することができ、また、硬化物については、誘電正接の低い値を維持することができ、スミア除去性を良好なまま維持することができ、めっき密着性をより向上させることができ、下地密着性を大幅に向上させることができる。
【0101】
(C-2)カルボジイミド化合物は、1分子中にカルボジイミド基(-N=C=N-)を1個以上有する化合物である。(C-2)カルボジイミド化合物としては、1分子中にカルボジイミド基を2個以上有する化合物が好ましい。(C-2)カルボジイミド化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
好ましくは、(C-2)カルボジイミド化合物は、下記式(C-II)で表される構造を含有する。
【0103】
【化21】
【0104】
Xで表されるアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~6、1~4、又は1~3である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。該アルキレン基の好適な例としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基が挙げられる。
【0105】
Xで表されるシクロアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、さらに好ましくは3~6である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。該シクロアルキレン基の好適な例としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基が挙げられる。
【0106】
Xで表されるアリーレン基は、芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子を2個除いた基である。該アリーレン基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14、さらにより好ましくは6~10である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。該アリーレン基の好適な例としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基が挙げられる。
【0107】
Xで表されるアルキレン基、シクロアルキレン基又はアリール基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基及びアシルオキシ基が挙げられる。置換基として用いられるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換基として用いられるアルキル基、アルコキシ基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、その炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~6、1~4、又は1~3である。置換基として用いられるシクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、さらに好ましくは3~6である。置換基として用いられるアリール基は、芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子を1個除いた基であり、その炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14、さらにより好ましくは6~10である。置換基として用いられるアリールオキシ基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14、さらにより好ましくは6~10である。置換基として用いられるアシル基は、式:-C(=O)-Rで表される基(式中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。)をいう。Rで表されるアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、その炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~6、1~4、又は1~3である。Rで表されるアリール基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14、さらにより好ましくは6~10である。置換基として用いられるアシルオキシ基は、式:-O-C(=O)-Rで表される基(式中、Rは上記Rと同じ意味を表す。)をいう。中でも、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、及びアシルオキシ基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0108】
式(C-II)中、mは1~5の整数を表す。硬化物の性能、特には導体層との密着性を向上させる観点から、mは、好ましくは1~4、より好ましくは2~4、さらに好ましくは2又は3である。
【0109】
式(C-II)中、Xが複数存在する場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。好適な一実施形態において、少なくとも1つのXは、アルキレン基又はシクロアルキレン基であり、これらは置換基を有していてもよい。
【0110】
硬化物の性能、特には導体層との密着性を向上させる観点から、(C-2)カルボジイミド化合物の重量平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは600以上、さらに好ましくは700以上、さらにより好ましくは800以上、特に好ましくは900以上又は1000以上である。また、良好な相溶性を得る観点から、(C-2)カルボジイミド化合物の重量平均分子量の上限は、好ましくは5000以下、より好ましくは4500以下、さらに好ましくは4000以下、さらにより好ましくは3500以下、特に好ましくは3000以下である。(C-2)カルボジイミド化合物の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定することができる。(C-2)カルボジイミド化合物がイソシアネート基を含む化合物を材料として重合により製造される場合、その数平均分子量は、密着性を向上させる観点から、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、さらに好ましくは1500以上であり、好ましくは30000以下、より好ましくは25000以下である。(C-2)カルボジイミド化合物の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。重量平均分子量及び数平均分子量の測定に際し、(C-2)カルボジイミド化合物の末端のイソシアネート基を所定の化合物でキャップすることが好ましい。
【0111】
なお、(C-2)カルボジイミド化合物は、その製法に由来して、分子中にイソシアネート基(-N=C=O)を含有する場合がある。良好な保存安定性を示す樹脂組成物を得る観点、ひいては所期の特性を示す絶縁層を実現する観点から、(C-2)カルボジイミド化合物中のイソシアネート基の含有量(「NCO含有量」ともいう。)は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、さらにより好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下又は0.5質量%以下である。
【0112】
(C-2)カルボジイミド化合物は、市販品を使用してもよい。市販のカルボジイミド化合物としては、例えば、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-02B、V-03、V-04K、V-07及びV-09、ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P、P400、及びハイカジル510が挙げられる。
【0113】
(C-2)カルボジイミド化合物の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。上限は、不揮発成分換算で(A)成分の含有量よりも少ないことが好ましく、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下又は3質量%以下である。(C-2)成分の含有量を斯かる範囲内にすることにより、硬化物の性能、特には硬化物と導体層との間の密着性を向上させることができる。本実施形態において、(C)成分の含有量は、樹脂組成物が(C-1)成分を含まない場合、(C-2)成分の含有量であり、樹脂組成物が(C-1)成分を含む場合、(C-1)成分の含有量と(C-2)成分の含有量の和である。
【0114】
<(D)無機充填材>
本実施形態において、樹脂組成物は、(D)無機充填材を含有し得る。(D)無機充填材の材料は無機化合物であれば特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球状シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
(D)無機充填材の市販品としては、例えば、新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
【0116】
通常、(D)無機充填材は、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。(D)無機充填材の平均粒径は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは2.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。また、(D)無機充填材の平均粒径が前記の範囲にあることにより、通常は、樹脂組成物層の回路埋め込み性を向上させたり、絶縁層の表面粗さを小さくしたりできる。
【0117】
(D)無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、(D)無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、(D)無機充填材を超音波によりメチルエチルケトン中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-500」、島津製作所社製「SALD-2200」等を使用することができる。
【0118】
(D)無機充填材の比表面積は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1m/g以上、より好ましくは2m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定できる。
【0119】
(D)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。表面処理剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
表面処理剤による表面処理の程度は、(D)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。(D)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、(D)無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
【0121】
(D)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の(D)無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された(D)無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて(D)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0122】
(D)無機充填材の含有量は、熱膨張率を低くする観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上、さらにまた好ましくは60質量%以上又は65質量%以上である。上限は、特に限定されないが、例えば95質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、又は、75質量%以下とし得る。無機充填材を多く配合すると、硬化物と導体層との間の密着力が低下することが知られているが、本発明においては(D)無機充填材を多く配合したとしても密着力の低下を効果的に抑制できる。
【0123】
<(E)硬化剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、(E)硬化剤を含んでいてもよい。(E)硬化剤は、一般に、樹脂組成物用の硬化剤の名称で入手可能なものである。但し、本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分及び(C)成分を含んでおり、ここで、(B)成分はラジカル反応開始剤の有無によらず熱により(A)成分と反応することができ、その結果、樹脂組成物は硬化剤を含まなくても熱硬化するので、本実施形態に係る樹脂組成物は、(E)硬化剤を必ずしも含む必要はない。よって、(E)成分は任意に添加される成分であり、先述の必須成分である(C)成分とは明確に区別される。(E)成分としての硬化剤は、通常、(A)エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。このような(E)硬化剤としては、例えば、(E-1)活性エステル系硬化剤、(E-2)フェノール系硬化剤、(E-3)ナフトール系硬化剤、及び(E-4)シアネートエステル系硬化剤などが挙げられる。また、硬化剤は1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を併用してもよい。
【0124】
(E-1)活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いることができる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
【0125】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0126】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0127】
(E-1)活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0128】
(E-1)活性エステル系硬化剤の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」、「EXB-8150-60T」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0129】
(E-2)フェノール系硬化剤及び(E-3)ナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、絶縁層と導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
【0130】
(E-2)フェノール系硬化剤及び(E-3)ナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」「SN375」;DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」;等が挙げられる。
【0131】
(E-4)シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。(E-4)シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0132】
上述した中でも、本発明の所期の効果を顕著に得る観点では、(E)硬化剤としては、(E-1)活性エステル系硬化剤及び(E-2)フェノール系硬化剤から選択される1種以上の硬化剤を用いることが好ましい。(E-1)活性エステル系硬化剤を用いる場合、(E)硬化剤100質量%に対する(E-1)活性エステル系硬化剤の量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。(E-1)活性エステル系硬化剤の量が前記の範囲にあることにより、本発明の所期の効果を顕著に得ることができ、特に樹脂組成物の硬化物の誘電率を効果的に下げることができる。(E-2)フェノール系硬化剤を用いる場合、(E)硬化剤100質量%に対する(E-2)フェノール系硬化剤の量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。(E-2)フェノール系硬化剤の量が前記の範囲にあることにより、本発明の所期の効果を顕著に得ることができ、特に樹脂組成物の硬化物の誘電率を効果的に下げることができる。
【0133】
樹脂組成物における(E)硬化剤の量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0134】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、(E)硬化剤の活性基数は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1以下である。ここで、「(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「(E)硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(E)硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合の(E)硬化剤の活性基数が前記範囲にあることにより、本発明の所期の効果を顕著に得ることができ、更に通常は、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
【0135】
<(F)硬化促進剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、(F)硬化促進剤(触媒)を含んでいてもよい。(F)硬化促進剤を用いることにより、樹脂組成物を硬化させる際に硬化を促進できる。
【0136】
(F)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、過酸化物系硬化促進剤が挙げられる。中でも、アミン系硬化促進剤及び過酸化物系硬化促進剤が特に好ましい。(F)硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0137】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネートが挙げられる。中でも、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0138】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが挙げられる。中でも、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0139】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物;及び、イミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体;が挙げられる。中でも、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0140】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」が挙げられる。
【0141】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニドが挙げられる。中でも、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0142】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。
【0143】
過酸化物系硬化促進剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0144】
過酸化物系硬化促進剤としては、市販品を用いることができ、例えば、日油社製の「パークミル D」が挙げられる。
【0145】
(F)硬化促進剤を用いる場合、樹脂組成物における(F)硬化促進剤の量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
【0146】
<(G)任意の添加剤>
一実施形態において、樹脂組成物は、さらに必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、溶媒等の分散媒、難燃剤、有機充填材、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、着色剤、並びに熱可塑性樹脂等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0147】
難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。ホスファゼン化合物の具体例としては、例えば、大塚化学社製の「SPH-100」、「SPS-100」、「SPB-100」「SPE-100」、伏見製薬所社製の「FP-100」、「FP-110」、「FP-300」、「FP-400」等が挙げられ、ホスファゼン化合物以外の難燃剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三光社製の「HCA-HQ」、大八化学工業社製の「PX-200」等が挙げられる。
【0148】
有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル日本社製の「EXL2655」、アイカ工業社製の「AC3401N」、「AC3816N」等が挙げられる。
【0149】
<製造方法>
上述した樹脂組成物は、上述した成分を混合することにより製造することができる。混合に際し、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または撹拌してもよい。樹脂組成物は、例えば(G)有機溶剤を含むことにより、樹脂ワニスとして得ることができる。
【0150】
<樹脂組成物の物性、用途>
本実施形態に係る樹脂組成物を200℃で90分間熱硬化させた硬化物は、誘電正接(Df)の値が低いという特性を示す。具体的には、誘電正接の値は、好ましくは0.0040未満、より好ましくは0.0035以下、より好ましくは0.0031以下である。誘電正接(Df)の値は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0151】
樹脂組成物を200℃で90分間熱硬化させた硬化物は、スミア除去性に優れるという特性を示す。即ち、前記の硬化物にビアホールを形成しても、ビアホール底部の最大スミア長が5μm以下である絶縁層をもたらす。スミア除去性は、後述する実施例に記載の方法で評価できる。
【0152】
樹脂組成物を200℃で90分間熱硬化させた硬化物は、導体層(例えば、めっき及び圧着により形成された薄膜)との間で優れた密着性を有するという特性を示す。具体的には、めっき(銅めっき)との間の密着強度の値は、好ましくは0.340kgf/cm以上、より好ましくは0.400kgf/cm以上、さらに好ましくは0.420kgf/cm超である。圧着により形成された薄膜(銅箔)との間の密着強度の値は、好ましくは0.510kgf/cm以上、より好ましくは0.650kgf/cm以上、さらに好ましくは0.680kgf/cm以上である。めっき密着性及び下地密着性は、後述する実施例に記載の方法で評価できる。密着強度は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0153】
本発明の樹脂組成物は、低誘電正接でかつスミア除去性に優れ、かつ、導体層との間で優れた密着強度を有する硬化物をもたらすことができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物は、部品埋め込み性に良好な絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。
【0154】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の樹脂組成物を含む樹脂組成物層を含む。
【0155】
樹脂組成物層は、本発明の樹脂組成物以外に、本発明の効果を大きく損なわない限りにおいて、任意の材料を含んでいてもよく、例えば、ガラスクロス等のシート状の補強部材を含んでいてもよい。ただし、樹脂組成物層がシート状の補強部材を含むと樹脂組成物層の厚みが増大する傾向にあることから、厚みを小さくする観点からは、樹脂組成物層は、シート状の補強部材を含まないことが好ましく、例えば、樹脂組成物層は、樹脂組成物のみから構成される。なお、先述の硬化物の特性は、シート状の補強部材を含まない樹脂組成物の樹脂組成物層を硬化することで得られる硬化物の特性である。
【0156】
樹脂組成物層の厚さは、絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは、70μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上等とし得る。
【0157】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0158】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0159】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0160】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0161】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0162】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0163】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0164】
樹脂シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0165】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0166】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0167】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0168】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物を含む。硬化物はプリント配線板における絶縁層として機能する。絶縁層は、例えば、プリント配線板において後述する回路基板上に設けられる。また、絶縁層は、例えば、プリント配線板の第1の導体層と第2の導体層との間に設けられ、この場合、第1の導体層と第2の導体層とを絶縁する(導体層は配線層ということがある)。
【0169】
第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚みは、好ましくは70μm未満であり、より好ましくは40μm未満であり、プリント配線板の薄型化の観点からは好ましくは6μm以下、より好ましくは5.5μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。下限については特に限定されないが0.1μm以上等とし得る。第1導体層と第2の導体層との間隔(第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚み)とは、図1に一例を示したように、第1の導体層1の主面11と第2の導体層2の主面21間の絶縁層3の厚みt1のことをいう。第1及び第2の導体層は絶縁層を介して隣り合う導体層であり、主面11及び主面21は互いに向き合っている。
【0170】
なお、絶縁層全体の厚みt2は、樹脂組成物層の厚みと配線パターンに応じて定まり、好ましくは70μm以下であり、より好ましくは40μm以下であり、プリント配線板の薄型化の観点からは、好ましくは15μm以下、より好ましくは13μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。下限については特に限定されないが、通常、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上等とし得る。
【0171】
プリント配線板は、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0172】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用し得る。
【0173】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0174】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0175】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0176】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0177】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0178】
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。
【0179】
樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0180】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~200℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~90分間とすることができる。
【0181】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
【0182】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(II)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。この場合、それぞれの導体層間の絶縁層の厚み(図1のt1)は上記範囲内であることが好ましい。
【0183】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0184】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0185】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上等とし得る。また、粗化処理後の絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)は、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上等とし得る。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0186】
工程(V)は、導体層を形成する工程である。内層基板に導体層が形成されていない場合、工程(V)は第1の導体層を形成する工程であり、内層基板に導体層が形成されている場合、該導体層が第1の導体層であり、工程(V)は第2の導体層を形成する工程である。
【0187】
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0188】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0189】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0190】
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0191】
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0192】
本発明の樹脂組成物又は本発明の樹脂シートの樹脂組成物層は、部品埋め込み性が良好である傾向にあることから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。部品内蔵回路板は公知の製造方法により作製することができる。
【0193】
本発明の樹脂シートを用いて製造されるプリント配線板は、樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物である絶縁層と、絶縁層に埋め込まれた埋め込み型配線層と、を備える態様であってもよい。
【0194】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0195】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0196】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0197】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例0198】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0199】
[実施例1]
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX-1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量169)10部、及び、ナフトール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ESN-475V」、エポキシ当量約330)50部を、ソルベントナフサ(商品名「IP150」)70部に撹拌しながら加熱溶解させた。これを室温にまで冷却し、(A)エポキシ樹脂の溶解組成物を調製した。
【0200】
この(A)エポキシ樹脂の溶解組成物に、(E-2)フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151、不揮発成分50%の2-メトキシプロパノール溶液)10部、(E-1)活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB-8150-60T」、活性基当量約230、不揮発成分60質量%のトルエン溶液)60部、メチルエチルケトン(MEK)10部に(C)成分としてのベンゾオキサジン化合物A(JFEケミカル社製「ODA-BOZ」;活性基当量310)10部を溶解させたベンゾオキサジン化合物溶液A、メチルエチルケトン(MEK)1.35部に(F)硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.15部を溶解させた溶液、(D)無機充填材としての、アミノシラン(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.77μm、比表面積5.9m/g、アドマテックス社製「SO-C2」)300部、及び、MEK10部に(B)マレイミド化合物A(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-689」)10部を溶解させたマレイミド化合物溶液Aを混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。
【0201】
支持体として、離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、前記の樹脂ワニスを、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが25μmとなるように均一に塗布した。その後、樹脂ワニスを80℃~120℃(平均100℃)で4分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。
【0202】
[実施例2]
実施例1において、マレイミド化合物溶液Aを、MEK10部に(B)マレイミド化合物B(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-1500」)10部を溶解させたマレイミド化合物溶液Bに変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを製造した。
【0203】
[実施例3]
実施例1において、マレイミド化合物溶液Aを、MEK10部に(B)マレイミド化合物C(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-1700」)10部を溶解させたマレイミド化合物溶液Cに変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを製造した。
【0204】
[実施例4]
実施例1において、マレイミド化合物溶液Aを、MEK10部に(B)マレイミド化合物D(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-3000J」)10部を溶解させたマレイミド化合物溶液Dに変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを製造した。
【0205】
[実施例5]
実施例1において、ベンゾオキサジン化合物溶液Aを、(C)成分としてのカルボジイミド化合物A(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)20部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを製造した。
【0206】
[実施例6]
実施例5において、マレイミド化合物溶液Aを、マレイミド化合物溶液Bに変更した。以上の事項以外は、実施例5と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを製造した。
【0207】
[実施例7]
実施例5において、マレイミド化合物溶液Aを、マレイミド化合物溶液Cに変更した。以上の事項以外は、実施例5と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを製造した。
【0208】
[実施例8]
実施例5において、マレイミド化合物溶液Aを、マレイミド化合物溶液Dに変更した。以上の事項以外は、実施例5と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを製造した。
【0209】
[比較例1]
実施例1において、マレイミド化合物溶液Aを用いず、かつ、(D)成分の量を280部に変えた。以上の事項以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを製造した。
【0210】
[比較例2]
実施例1において、マレイミド化合物溶液Aを、アノン(1-シクロヘキサノン)20部に(B)対比成分としてのマレイミド化合物E(ケイ・アイ化成社製「BMI-70」:ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン)10部を溶解させたマレイミド化合物溶液Eに変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを製造した。
【0211】
[比較例3]
実施例5において、マレイミド化合物溶液Aを用いず、かつ、(D)成分の量を280部に変えた。以上の事項以外は、実施例5と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを製造した。
【0212】
[比較例4]
実施例5において、マレイミド化合物溶液Aを、マレイミド化合物溶液Eに変更した。以上の事項以外は、実施例5と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを製造した。
【0213】
[比較例5]
実施例5において、ベンゾオキサジン化合物溶液Aを用いず、かつ、(D)成分の量を280部に変更した。以上の事項以外は、実施例5と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを製造した。
【0214】
[比較例6]
実施例1において、マレイミド化合物溶液A及びベンゾオキサジン化合物溶液Aを用いず、かつ、(D)成分の量を280部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを製造した。
【0215】
[評価方法]
上述した実施例及び比較例で得た樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物を、下記の方法によって評価した。
【0216】
<誘電正接(Df)の測定>
(硬化物の評価サンプルの作製)
実施例及び比較例で得た樹脂シートの樹脂組成物層を200℃で90分間熱処理して硬化させ、支持体を剥離することで、樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物フィルムを得た。この硬化物フィルムを長さ80mm、幅2mmに切り出し、評価サンプルを得た。
【0217】
(測定)
この評価サンプルについて、測定装置(アジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製「HP8362B」)を用いた空洞共振摂動法により、測定周波数10GHz、測定温度23℃にて誘電正接(Df)を測定した。3本の試験片について測定を行い、平均値を算出し、結果を表1に示した。
【0218】
<スミア除去性の評価>
(1)内装基板の下地処理:
内層基板として、表面に銅箔を有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック社製「R1515A」)を用意した。この内層基板の表面の銅箔を、マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)を用いて、銅エッチング量1μmにてエッチングして、粗化処理を行った。その後、190℃にて30分乾燥を行った。
【0219】
(2)樹脂シートの積層・硬化:
上述した実施例及び比較例で得た樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が前記の内層基板と接合するように、内層基板の両面にラミネートした。このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより、実施した。
次いで、ラミネートされた樹脂シートを、大気圧下、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間、熱プレスして平滑化した。さらにこれを、100℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱した。これにより、樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を得た。
【0220】
(3)ビアホール形成:
ビアメカニクス社製COレーザー加工機(LK-2K212/2C)を使用し、周波数2000Hzでパルス幅3μ秒、出力0.95W、ショット数3の条件で、内層基板の一方の面にある絶縁層を加工して、絶縁層表面におけるトップ径(直径)が50μm、絶縁層底面における直径が50μmのビアホールを形成した。さらにその後支持体を剥離し、回路基板を得た。
【0221】
(4)粗化処理
回路基板の絶縁層表面を、膨潤液であるアトテックジャパン社のスエリングディップ・セキュリガントPに60℃で10分間浸漬した。次に、回路基板の絶縁層表面を、粗化液であるアトテックジャパン社のコンセントレート・コンパクトP(KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で25分間浸漬した。最後に、回路基板の絶縁層表面を、中和液であるアトテックジャパン社のリダクションソリューション・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。
【0222】
(5)ビアホール底部の残渣評価
3つのビアホールの底部の周囲を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、得られた画像からビアホール底部の壁面からの最大スミア長を測定し、以下の基準で評価した。結果を表1に示した。
○:最大スミア長が5μm未満(すなわち、3つのビアホールのいずれにもスミア長が5μm以上のものがなく、スミア除去性が良好である)
×:最大スミア長が5μm以上(すなわち、3つのビアホールの少なくとも1つにスミア長が5μm以上のものがあり、スミア除去性に劣る)
【0223】
<めっき密着性及び下地密着性の評価>
<<評価基板の調製>>
(1)内層回路基板の下地処理
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック(株)製「R1515A」)の両面を、マイクロエッチング剤(メック(株)製「CZ8101」)に浸漬し1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。
【0224】
(2)樹脂シートの積層
実施例及び比較例で作製した樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター((株)名機製作所製「MVLP-500」)を用いて、樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより実施した。
【0225】
(3)樹脂組成物層の硬化
積層した接着フィルムを、200℃にて90分間熱硬化して、内層回路基板の両面上に硬化物(絶縁層)を形成した。その後、樹脂シートから支持体を剥離した。
【0226】
(4)粗化処理
絶縁層が形成された内層回路基板を、膨潤液(アトテックジャパン(株)「スエリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル含有の水酸化ナトリウム水溶液)に60℃で10分間浸漬し、次いで粗化液(アトテックジャパン(株)「コンセントレート・コンパクトP」、過マンガン酸カリウム濃度60g/L、水酸化ナトリウム濃度40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬し、最後に中和液(アトテックジャパン(株)「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸ヒドロキシルアミン水溶液)に40℃で5分間浸漬した。次いで、80℃で30分間乾燥させた。得られた基板を「評価基板A」と称する。
【0227】
(5)めっき導体層の形成
セミアディティブ法に従って、評価基板Aの表面にめっき導体層(第2導体層)を形成した。具体的には、評価基板Aを、PdClを含む無電解めっき用溶液に40℃にて5分間浸漬し、次いで無電解銅めっき液に25℃にて20分間浸漬した。得られた評価基板Aを、150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後、硫酸銅電解めっきを施し、30μmの厚さでめっき導体層を形成した。めっき導体層を形成した評価基板Aを、190℃にて60分間アニール処理した。得られた基板を「評価基板B」と称する。
【0228】
<<めっき密着性の測定>>
評価基板Bのめっき導体層(第2導体層)に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具で掴み、室温(25℃)中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重[kgf/cm(N/cm)]を測定した。測定には、引っ張り試験機((株)TSE製「AC-50C-SL」)を使用した。結果を表1に示した。
【0229】
<<下地密着性の測定>>
(1)銅箔の下地処理
三井金属鉱山(株)製「3EC-III」(電界銅箔、35μm)の光沢面をマイクロエッチング剤(メック(株)製「CZ8101」)に浸漬して銅表面に粗化処理(Ra値=1μm)を行い、防錆処理(CL8300)を施した。この銅箔をCZ銅箔という。さらに、130℃のオーブンで30分間加熱処理した。
【0230】
(2)銅箔の積層と絶縁層形成
上記<評価基板の調製>の「(2)樹脂シートの積層」と同様の操作を行い、内層回路基板の両面に樹脂シートが積層された基板を用意した。その後、当該基板から、両面にある支持体を剥離し、双方の樹脂組成物層を露出させた。それらの樹脂組成物層上に、「3EC-III」のCZ銅箔の処理面を、上記<評価基板の調製>の「(2)樹脂シートの積層」と同様の条件で、積層した。そして、190℃、90分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成することで、サンプルを作製した。
【0231】
(3)銅箔引き剥がし強さ(下地密着性)の測定
作製したサンプルを150×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれて、銅箔の一端を剥がしてつかみ具((株)TSE製「AC-50C-SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重[kgf/cm(N/cm)]をJIS C6481に準拠して測定した。結果を表1に示した。
【0232】
<ポットライフの評価>
実施例及び比較例の樹脂シートを作成するにあたり調製した樹脂ワニスのうちの100ml(ミリリットル)を室温、暗所にて1日間放置し、その後、当該樹脂ワニスにゲル化が認められるかどうかを目視により確認した。
当該確認の結果、ゲル化が認められた場合には、ポットライフが「×」(不良)と評価し、ゲル化が認められなかった場合には、ポットライフが「○」(良)と評価した。
【0233】
[結果]
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表1に示す。下記の表1において、各成分の量は、不揮発成分換算量を表す。また、下記の表1において、略称の意味は、下記のとおりである。なお、表1中の(D)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の百分率[質量%]を示す。
【0234】
【表1】
【0235】
<検討>
表1から分かるように、実施例と比較例の対比から、実施例においては、低誘電正接でかつスミア除去性に優れ、かつ、導体層との間で優れた密着強度を有する硬化物を形成することが可能な樹脂組成物が提供できることが分かった。また、実施例においては、ポットライフが良好であることも分かった。さらに、実施例に係る樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物を含むプリント配線板;及び当該プリント配線板を含む半導体装置を提供することも可能となることが分かった。
【0236】
なお、実施例1~8において、(D)成分、(E)成分、及び(F)成分のいずれか又は全部を含有しない場合であっても、また、(D)成分の含有量を変更した場合であっても、程度に差はあるものの上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。
【0237】
また、実施例1~4において、さらにカルボジイミド化合物を含む場合、及び実施例5~8において、さらにベンゾオキサジン化合物を含む場合であっても、程度に差はあるものの上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。
【0238】
さらに、実施例1~8において、さらに(B’)成分を含む場合であっても本願発明の効果を損なう傾向にあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。ただし、(B’)成分の含有量は、(B)成分の含有量よりも少ないことが好ましい。
【符号の説明】
【0239】
1 第1の導体層
11 第1の導体層の主面
2 第2の導体層
21 第2の導体層の主面
3 絶縁層
t1 第1導体層と第2の導体層との間隔(第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚み)
t2 絶縁層全体の厚み
図1