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特開2022-161955情報処理装置、情報処理方法、及びサーバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161955
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びサーバ
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/23 20180101AFI20221014BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20221014BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20221014BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20221014BHJP
   H04W 4/46 20180101ALI20221014BHJP
【FI】
H04W76/23
G08G1/09 F
G08G1/09 H
G01C21/26 B
H04W92/18
H04W4/46
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127248
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2021513010の分割
【原出願日】2019-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 光範
(57)【要約】
【課題】将来の通信環境を判定することを可能にする。
【解決手段】情報処理装置は、移動体が将来走行する第1将来位置を取得し、他の移動体が将来走行する第2将来位置を取得し、他の移動体との現在の通信環境を判定し、第1将来位置及び第2将来位置に基づいて、現在の通信環境を補正し、補正後の現在の通信環境に基づいて、他の移動体との将来の通信環境を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、前記移動体と他の移動体との通信を行う通信部と、前記通信部によって行われる前記通信を制御するコントローラとを備える情報処理装置であって、
前記コントローラは、
前記移動体が将来走行する第1将来位置を取得し、
前記他の移動体が将来走行する第2将来位置を取得し、
前記他の移動体から受信した信号に基づいて、前記他の移動体との現在の通信環境を判定し、
取得した前記第1将来位置及び前記第2将来位置に基づいて、前記現在の通信環境を補正し、
補正後の前記現在の通信環境に基づいて、前記他の移動体との将来の通信環境を判定する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記移動体が将来走行する第1将来経路及び前記他の移動体が将来走行する第2将来経路を取得し、
取得した前記第1将来経路における、前記移動体の将来の第1将来位置を予測し、
取得した前記第2将来経路における、前記他の移動体の将来の第2将来位置を予測し、
予測した前記第1将来位置及び前記第2将来位置に基づいて、前記現在の通信環境を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1将来位置及び前記第2将来位置によって特定される、将来における前記移動体及び前記他の移動体との相対距離に基づいて、前記現在の通信環境を補正する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1将来位置及び前記第2将来位置を直線に結んだ直線経路と、前記移動体から前記他の移動体までの道路上の経路を、前記移動体が将来走行する第1将来経路及び前記他の移動体が将来走行する第2将来経路に沿って結んだ道なり経路のそれぞれについて、前記他の移動体との将来の通信環境を判定する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記第1将来位置及び前記第2将来位置が含まれる地図情報を取得し、
前記移動体が将来走行する第1将来経路、前記他の移動体が将来走行する第2将来経路、前記第1将来位置、及び前記第2将来位置のうち、少なくともいずれか一つに応じた前記地図情報に基づいて、前記他の移動体との将来の通信環境を判定する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
道路上または道路周辺の物体を検出するセンサをさらに備え、
前記コントローラは、前記移動体が将来走行する第1将来経路、前記他の移動体が将来走行する第2将来経路、前記第1将来位置、及び前記第2将来位置のうち、少なくともいずれか一つに応じて、前記センサによって検出された前記物体に基づいて、前記他の移動体との将来の通信環境を判定する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記移動体が将来、前記他の移動体に送信するデータ量、または、前記他の移動体から受信するデータ量を取得し、
判定した前記将来の通信環境において、前記データ量を送信または受信することが可能か否かを判定する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記通信部は、携帯通信網に用いられる通信規格に準拠した通信を用いて、前記他の移動体と直接通信を行う
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記通信環境は、少なくとも受信強度、移動速度、及び多重反射のいずれかの1つの特性を含む
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記コントローラは、
判定した前記将来の通信環境を示す情報を前記他の移動体へ送信し、
判定した前記将来の通信環境に応じて、通信先を、前記他の移動体から他の機器へと切り替える
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
道路上または道路周辺の物体を検出するセンサをさらに備え、
前記コントローラは、
前記地図情報から取得した情報、または前記センサによって検出された前記物体に基づいて、前記他の移動体と直接通信を行うことが困難な第1エリアを特定する
ことを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記センサによって検出される範囲に交差点、カーブまたは勾配変曲点のいずれかが含まれる場合、前記コントローラは、前記第1エリアから、前記交差点、前記カーブまたは前記勾配変曲点のいずれかを基準とした所定領域を除外することによって第2エリアを特定する
ことを特徴とする請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
移動体に搭載され、前記移動体と他の移動体との通信を行う通信部と、前記通信部によって行われる前記通信を制御するコントローラとを備える情報処理装置の情報処理方法であって、
前記移動体が将来走行する第1将来位置を取得し、
前記他の移動体が将来走行する第2将来位置を取得し、
前記他の移動体から受信した信号に基づいて、前記他の移動体との現在の通信環境を判定し、
取得した前記第1将来位置及び前記第2将来位置に基づいて、前記現在の通信環境を補正し、
補正後の前記現在の通信環境に基づいて、前記他の移動体との将来の通信環境を判定する
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項14】
移動しない固定の通信装置を経由した移動体及び他の移動体の間接通信を行うサーバであって、
前記移動体が将来走行する第1将来位置を取得し、
前記他の移動体が将来走行する第2将来位置を取得し、
前記他の移動体から受信した信号に基づいて、前記移動体と前記他の移動体との現在の通信環境を判定し、
取得した前記第1将来位置及び前記第2将来位置に基づいて、前記現在の通信環境を補正し、
補正後の前記現在の通信環境に基づいて、前記移動体と前記他の移動体との将来の通信環境を判定する
ことを特徴とするサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の位置、速度などの車両データを示す通信パケットを複数の車両間で送受信する方法が知られている(特許文献1)。このような複数の車両間での送受信は、車車間通信と呼ばれる。特許文献1に記載された発明は、車車間通信における通信品質が許容レベル以上である場合には、狭域送信周期よりも長い広域送信周期を採用し、通信品質が許容レベル未満である場合には、狭域送信周期と等しい値又はそれよりも小さい値の第2広域送信周期を採用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/159240号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車車間通信(直接通信)で通信が可能であったとしても、その後の経路における建物、大型車両などの影響によって、電波の強度が弱くなったり、データが届かなくなるおそれがある。特許文献1には、通信環境が悪化した場合に、周波数を切り替えることが記載されているものの、将来の通信環境を判定していない。そのため、特許文献1に記載された発明は、将来、通信環境が悪化した後に、その悪化具合に応じて対処することになるため、必要データがタイムリーに受け取れず、運転支援や自動運転の余裕が少なくなってしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、将来の通信環境を判定することが可能な情報処理装置、情報処理方法、及びサーバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、移動体が将来走行する第1将来位置を取得し、他の移動体が将来走行する第2将来位置を取得し、他の移動体との現在の通信環境を判定し、第1将来位置及び第2将来位置に基づいて、現在の通信環境を補正し、補正後の現在の通信環境に基づいて、他の移動体との将来の通信環境を判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、将来の通信環境を判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る通信ネットワークの全体概略図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る車両及びサーバの概略構成図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る走行シーンの一例を説明する図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係る車両及びサーバの動作例を説明するフローチャートである。
図5図5は、本発明の第1実施形態に係る車両及びサーバの動作例を説明するフローチャートである。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係る車両及びサーバの概略構成図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係る走行シーンの一例を説明する図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る車両及びサーバの動作例を説明するフローチャートである。
図9図9は、本発明の第2実施形態に係る車両及びサーバの動作例を説明するフローチャートである。
図10図10は、本発明の第2実施形態の変形例1に係る走行シーンの一例を説明する図である。
図11図11は、本発明の第2実施形態の変形例2に係る走行シーンの一例を説明する図である。
図12図12は、本発明の第2実施形態の変形例3に係る走行シーンの一例を説明する図である。
図13図13は、本発明の第2実施形態の変形例4に係る走行シーンの一例を説明する図である。
図14図14は、本発明の第2実施形態の変形例5に係る走行シーンの一例を説明する図である。
図15図15は、本発明の第3実施形態に係る車両及びサーバの概略構成図である。
図16図16は、本発明の第3実施形態に係る車両及びサーバの動作例を説明するフローチャートである。
図17図17は、本発明の第3実施形態に係る車両及びサーバの動作例を説明するフローチャートである。
図18図18は、本発明の第3実施形態に係る車両及びサーバの動作例を説明するフローチャートである。
図19図19は、本発明のその他の実施形態に係る車両及びサーバの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0011】
図1を参照して本実施形態に係る通信ネットワークの全体概略を説明する。図1に示すように、本実施形態に係る通信ネットワークには、車両Aと、車両Bと、基地局300と、携帯電話網310と、サーバ400が含まれる。
【0012】
車両A(移動体)は、通信機能を有する通信部100を備える。車両B(他の移動体)は、通信機能を有する通信部200を備える。通信部100及び通信部200は、例えばアンテナ及びモデム、アプリケーションプロセッサ、メモリ等である。通信部100及び通信部200は、基地局300及び携帯電話網310を介してサーバ400と通信する。基地局300は、移動しない固定の通信装置であり、携帯電話網310をカバーするアクセスポイントである。また、通信部100及び通信部200は、基地局300及びサーバ400を経由して互いに通信することが可能である。基地局300及びサーバ400を経由した、通信部100と通信部200との通信を、以下では間接通信と定義する。本実施形態において、間接通信は、携帯電話網310、インターネット網上のサーバを用いて行われる。サーバ配置はこれに限定されず、その他の無線通信方式(例えば、Wifiホットスポットや携帯電話網内閉域ネットワーク上のサーバ等)が用いられてもよい。
【0013】
さらに、通信部100と通信部200とは、基地局300及びサーバ400を経由することなく、直接的に通信することも可能である。このような、基地局300及びサーバ400を経由しない通信を、以下では直接通信と定義する。なお、直接通信は、車車間通信と表現されてもよい。本実施形態では、車両A及び車両Bは、直接通信または間接通信によって、車両(車両A、車両B、その他の車両も含む)、道路情報などに関する複数のデータを共有する。複数のデータには、位置情報、速度情報、進行方向に関するデータなどが含まれる。直接通信は、基地局300及びサーバ400を経由しないため、低遅延、かつ簡易な構成で相手方へデータを送信することができる。間接通信は、直接通信では送ることができない大きなデータや一定時間情報が変わらずに繰り返し送る際に用いられる。また、間接通信は、直接通信できない場合に用いられる。
【0014】
車両A及び車両Bは、自動運転機能を有する車両でもよく、自動運転機能を有しない車両でもよい。また、車両A及び車両Bは、自動運転と手動運転とを切り替えることが可能な車両でもよい。本実施形態では、車両A及び車両Bは、自動運転機能を有する車両として説明する。
【0015】
次に、図2を参照して、車両A、車両B、及びサーバ400の構成例について説明する。
【0016】
まず、車両Aの構成例について説明する。
【0017】
図2に示すように、車両Aは、上述した通信部100と、GPS受信機101と、コントローラ110とを備える。なお、通信部100、GPS受信機101、及びコントローラ110は、まとめて情報処理装置と表現されてもよい。
【0018】
GPS受信機101は、人工衛星からの電波を受信することにより、地上における車両Aの位置情報を検出する。GPS受信機101が検出する車両Aの位置情報には、緯度情報、経度情報、及び時刻情報が含まれる。GPS受信機101は、検出した車両Aの位置情報をコントローラ110に出力する。なお、車両Aの位置情報を検出する方法は、GPS受信機101に限定されない。例えば、オドメトリと呼ばれる方法を用いて位置を推定してもよい。オドメトリとは、車両Aの回転角、回転角速度に応じて車両Aの移動量及びと移動方向を求めることにより、車両Aの位置を推定する方法である。なお、GPS(Global Positioning System)は、GNSS(Global Navigation Satellite System)の一部である。
【0019】
コントローラ110は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータには、情報処理装置として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、情報処理装置が備える複数の情報処理回路として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって情報処理装置が備える複数の情報処理回路を実現する例を示すが、もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。コントローラ110は、複数の情報処理回路の一例として、通信制御部111を備える。
【0020】
通信制御部111は、通信環境に基づいて、通信方式を制御する。本実施形態において、通信環境は、受信強度、移動速度、多重反射、チャネル利用率及び自動削除率の少なくとも1つの特性を含む。移動速度とは、車両A及び車両Bの車速を意味する。チャネル利用率は、他の車両や歩行者の端末等の他の機器と通信している利用率を示す。自動削除率は、所定のチャネル利用率を超えた際にデータを間引く比率を示す。通信制御部111は、通信環境が良好でない場合、直接通信から間接通信に切り替える。通信制御部111は、通信環境判定部403によって判定された通信環境を用いるが、これに限定されない。通信制御部111は、通信環境を判定する機能を備えてもよい。そして、通信制御部111は、自ら判定した通信環境を用いて通信方式を制御してもよい。
【0021】
通信部100は、車両Aの周囲に車両Aの現在の位置情報、走行計画情報など含む車両A位置データをブロードキャスト送信する。ブロードキャスト送信には、直接通信方式が用いられる。直接通信方式は、例えばIEEE 802.11pに準拠したDSRC方式(周波数:5.9GHz帯)、あるいは3GPP Release14以降の仕様に準拠したセルラV2X方式である。現在の位置情報とは、車両の位置を示す緯度、経度と、当該位置を取得した際の時間を関連付けたデータである。走行計画情報とは、車両の将来位置に対して車速が関連付けられた車速計画データと、将来の走行経路データとを含む走行計画データである。将来の走行経路データは、予め設定された目的地まで走行する走行道路のルート情報でもよいし、車速計画データに基づいて将来位置(緯度、経度)と通過予定時刻が関連付けられたデータであってもよい。例えば、走行計画情報は、SAE2735(Dedicated Short Range Communications (DSRC) Message Set Dictionary)のメッセージに準拠したデータに対して、車速計画データを追加したデータである。ブロードキャスト送信される車両A位置データの例を表1に示す。車両A位置データは、ヘッダ及びコンテンツデータを含むパッケージデータとして、通信部100より送信され、車両Bの通信部200により受信され、または、基地局300を経由してサーバ400の将来経路取得部401により取得される。
【0022】
表1に示すように、車両A位置データのヘッダには、送信元である車両Aの識別番号と、コンテンツデータに含まれるコンテンツの種別を示す識別情報(例えば、現在の位置情報、走行計画情報を示す識別用のID)が格納される。コンテンツデータには、緯度、経度とこれらの情報を取得した時間を関連付けたデータである現在の位置情報、および走行計画情報とが格納される。これらのヘッダ及びコンテンツデータは、車両Aのコントローラ110によって、GPS受信機101及び各種センサ102から取得したデータ及びコントローラ110に備えるメモリに予め記録されたデータに基づいて生成され、車両A位置データが生成される。
【0023】
【表1】
【0024】
次に、車両Bの構成例について説明する。
【0025】
図2に示すように、車両Bは、上述した通信部200と、GPS受信機201と、コントローラ220とを備える。なお、通信部200、GPS受信機201、及びコントローラ220は、まとめて情報処理装置と表現されてもよい。
【0026】
GPS受信機201の機能は、GPS受信機101の機能と同様である。コントローラ220は、コントローラ110と同様に、CPU、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。コントローラ220は、複数の情報処理回路の一例として、通信制御部221を備える。通信制御部221の機能は、通信制御部111の機能と同じである。
【0027】
通信部200は、車両Aの通信部100より送信された、車両A位置データを受信し、受信した車両A位置データをデータ受信部222に出力する。データ受信部222は、通信部200から車両A位置データを取得する。通信部200が、車両A位置データを受信したということは、車両Aと車両Bとの間で直接通信が確立したことを意味する。よって、通信制御部221は、通信部200が車両A位置データを受信した場合、車両Aの現在の位置情報、車両Aの走行計画情報を含む車両A位置データ、及び車両Aとの間で直接通信が確立したことを示す信号などを、サーバ400に送信する。このとき、通信制御部221は、表1に示すパッケージデータの通り、車両Bの現在の位置情報、車両Bの走行計画情報を含む車両B位置データも合わせてサーバ400に送信する。
【0028】
サーバ400は、コントローラ110と同様に、CPU、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。サーバ400は、複数の情報処理回路の一例として、将来経路取得部401と、位置予測部402と、通信環境判定部403と、を備える。
【0029】
将来経路取得部401は、基地局300経由で受信した車両A位置データ及び車両B位置データに基づいて、車両A及び車両Bそれぞれについて、現在の位置、走行計画情報を取得する。将来経路取得部401は、車両Bの通信部200から送信されたこれらのデータを受信して取得してもよいし、車両Aの通信部100から送信された車両Aの位置データ(車両Aの現在の位置情報、走行計画情報)を受信し、車両Bの通信部200から送信された車両Bの位置データ(車両Bの現在の位置情報、走行計画情報)を受信する構成としてもよい。更には、サーバ400が過去に受信しメモリに記憶された走行計画情報を読み出してもよいし、車両A及び車両Bのそれぞれに走行計画情報を要求して受信する構成としてもよい。将来経路取得部401は、取得した走行計画情報を位置予測部402に出力する。
【0030】
位置予測部402は、車両Bから取得した車両A及び車両Bの位置情報と、将来経路取得部401から取得した走行計画情報に基づいて、将来における車両A及び車両Bの将来位置を予測する。例えば、位置予測部402は、予測された車両A及び車両Bの将来位置に基づいて、将来の車両Aに対する車両Bの相対位置及び相対距離を予測する。位置予測部402は、予測した位置関係を通信環境判定部403に出力する。
【0031】
通信環境判定部403は、位置予測部402によって予測された将来の車両A及び車両Bの位置関係に基づいて、車両Aと車両Bとの間における将来の通信環境を判定する。また、通信環境判定部403は、直接通信で送信が可能なデータ量を推定する。データ量の推定には、他の車両や歩行者等が通信している状況を示すチャネル利用率及び所定のチャネル利用率を超えた際にデータを間引く比率を示すデータ自動削除率が用いられる。これらのチャネル利用率及びデータ自動削除率は、例えばSAEJ2945/1等に適用されている。
【0032】
(通信環境判定方法)
次に、図3を参照して、通信環境判定部403によって判定される、通信環境判定の一例について説明する。
【0033】
通信環境判定部403は、車両A及び車両Bの位置関係に基づいて、電波強度を推定する。電波強度とは電波の強さを示す指標である。なお、電波強度は受信強度と表現される場合もある。車両A及び車両Bの位置関係の一例について、図3を参照して説明する。図3に示すシーンにおいて、車両Aは、一車線道路を直進している。車両Bは、片側3車線道路の中央車線を直進している。車両Aが走行している道路と、車両Bが走行している道路は交差する。車両A及び車両Bは、交差点から500m手前の地点を40km/hで走行している。車両Aの位置座標を(Xa、Ya)とし、車両Bの位置座標を(Xb、Yb)とした場合、車両Aと車両Bとの直線上の距離D(以下単に距離Dと称する)は、式1で表される。なお、位置座標(Xa、Ya)、(Xb、Yb)を初期位置とする。
【0034】
【数1】
【0035】
車両A及び車両Bが将来走行する経路は、将来経路取得部401によって取得される。図3に示すシーンでは、車両A及び車両Bが将来走行する経路は、直進経路である。位置予測部402は、将来経路取得部401によって取得された経路に基づいて、将来における車両A及び車両Bの位置関係を予測する。車両A及び車両Bは、40km/hで走行しているため、車両A及び車両Bが交差点に接近するにしたがい、距離Dは、徐々に短くなる。距離Dは、初期位置で最大値となり、交差点付近で最小値となる。距離Dに応じて、つまり、車両A及び車両Bの位置関係に応じて電波強度は変化する。そこで、通信環境判定部403は、距離Dの最大値から最小値までの距離ごとに、電波強度の減衰を評価する。距離ごとの電波強度の減衰を、以下では距離減衰と呼ぶ場合がある。なお、距離Dの最小値は、ゼロに設定されてもよい。電波強度の減衰の評価には、式2が用いられる。
【0036】
【数2】
【0037】
ここで、Pt[dBm]は、送信機の実行輻射電力であり、一般に法規上の空中線電力上限値で定められる。Gr[dB]は、受信機のゲインである。λ[m]は、搬送波周波数の波長である。πは、円周率である。
【0038】
一般に、道路面と車両のアンテナの高さが異なるために路面反射波と直接通信波とが重なり合う。このため受信電力が、道路面からアンテナまでの距離に応じて大きく変動する現象が知られている。通信環境判定部403は、この現象を、式3及び式4を用いて評価する。
【0039】
【数3】
【0040】
【数4】
【0041】
ここで、htは、車両Aのアンテナの高さである。車両Aの位置情報にhtが含まれる場合はその値が用いられる。車両Aの位置情報にhtが含まれない場合、かつ車両Aが大型車両である場合、車両Aの高さに基づき、例えばhtは3.5mと設定される。これら以外の場合はセダンタイプの一般的な高さに基づき、例えばhtは1.55mと設定される。なお、大型車両は、例えば、トラック、バスなどである。なお、車両Aが大型車両であるか否かは、車両Aが車両Bに送信するデータに含まれてもよい。
【0042】
hrは、車両Bのアンテナの高さである。hrの設定についてはhtと同様であるため、説明を省略する。また、上記の式2~式4を用いた評価方法は、一般に知られているため、説明を省略する。
【0043】
電波強度を推定した後、通信環境判定部403は、通信部200の送受信データレートに応じた最低受信感度Pr_min[dBm]について評価を行い、送受信データレートで通信可能な距離範囲を評価する。具体的には、通信環境判定部403は、距離ごとに通信部200の受信強度を評価する。距離Dの解析間隔は、例えばITS周波数(5.9GHz帯)が用いられる場合、無線の中心周波数と受信電界強度の変動要因(大地反射の2波モデル)で生じる変曲点に基づいて、1mに設定される。つまり、距離ごととは、一例として、1mごとを意味する。
【0044】
経路のすべての地点(以下、全区間を称する場合がある)において受信強度が、最低受信電力の10倍より高い場合、通信環境判定部403は、全区間で直接通信が可能と判定する。最低受信電力とは、通信に必要な受信品質を確保できる最小の受信電力を指す。あるいは、全区間において受信強度が、平均受信電力の10倍より高い場合、通信環境判定部403は、全区間で直接通信が可能と判定してもよい。経路の一部の地点(以下、一部の区間を称する場合がある)において受信強度が、受信感度以下の場合、通信環境判定部403は、一部の区間で直接通信は困難と判定する。なお、一部の区間において受信強度が受信感度以下となる場合、該当する区間が記録される。
【0045】
このように通信環境判定部403は、距離ごとに受信強度を評価した結果、全区間で受信強度が閾値を上回る場合、全区間で直接通信が可能と判定する。また、受信強度が、閾値以下となる区間があった場合、通信環境判定部403は、その区間では直接通信は困難と判定する。これにより、通信環境判定部403は、偶然に直接通信の初期接続が実現した場合、あるいは路面反射等の影響で急に減衰が発生する場合を想定し、相手方が通信しなくなったのか、一時的に通信が途絶えただけなのか判別できる。なお、閾値は、受信感度と定義されてもよい。
【0046】
次に、図4~5に示すフローチャートを参照して、車両A、車両B、及びサーバ400の動作例について説明する。
【0047】
ステップS101について、車両Aは、GPS受信機101を用いて車両Aの位置情報を検出する。処理はステップS105に進み、車両Aは、ステップS101で検出された位置情報を車両Aの周囲にブロードキャスト送信する。
【0048】
処理はステップS107に進み、車両Bは、車両Aからデータを受信する。処理はステップS109に進み、車両Bは、GPS受信機201を用いて車両Bの位置情報を検出する。処理はステップS111に進み、車両Bは、車両Aの位置情報、車両Bの位置情報、及び車両Aとの間で直接通信が確立したことを示す信号などを、サーバ400に送信する。
【0049】
処理はステップS113に進み、サーバ400は、車両Bからデータを受信する。処理は、ステップS115に進み、サーバ400は、車両A及び車両Bの走行計画情報を取得する。ステップS117に進み、サーバ400は、ステップS115で取得された走行計画情報に基づいて、将来における車両A及び車両Bの位置関係を予測する。処理はステップS119に進み、サーバ400は、距離ごとに受信強度を評価する。
【0050】
処理はステップS121に進み、全区間で受信強度が閾値を上回る場合(ステップS121でYes)、サーバ400は、全区間で直接通信が可能と判定する(ステップS123)。一方、受信強度が、閾値以下となる区間があった場合(ステップS121でNo)、サーバ400は、その区間では直接通信は困難と判定する。
【0051】
(作用・効果)
第1実施形態によれば、車両Aが将来走行する第1将来位置を取得し、車両Bが将来走行する第2将来位置を取得し、車両Bから受信した信号に基づいて、車両Bとの現在の通信環境を判定し、取得した第1将来位置及び第2将来位置に基づいて、現在の通信環境を補正し、補正後の現在の通信環境に基づいて、車両Bとの将来の通信環境を判定する。第1実施形態によれば、車両Aと車両Bとの間で直接通信が最初に確立した時点で、その後の将来走行する経路に基づき直接通信の維持が可能か否かが判定される。将来、直接通信が維持できるならば、直接通信で位置情報などが共有されるため、例えば、自動運転支援に係る計画を策定することが可能になる。また、必要な情報が届かない可能性を予め検出できるため、他の通信手段(例えば携帯電話網310を経由した間接通信)への接続を準備することが可能となる。これにより、必要なタイミングで必要な情報がやりとりできるようになる。また、従来技術のような直接通信を切断してから間接通信に切り替える際に発生する初期接続時間を解消できる。また、直接通信が安定する場合に不要な携帯電話網310経由の間接通信の接続を保持する必要がなくなるので、携帯電話網を経由したデータ通信量、車載器(コントローラ110)の計算処理負荷などを低減できる。
【0052】
なお、第1実施形態において、車両Aが将来走行する第1将来経路及び車両Bが将来走行する第2将来経路を取得し、取得した第1将来経路における、車両Aの将来の第1将来位置を予測し、取得した第2将来経路における、車両Bの将来の第2将来位置を予測し、予測した第1将来位置及び第2将来位置に基づいて、現在の通信環境を補正してもよい。
【0053】
(第2実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態において、車両Aは、センサ102を備える。また、車両Bは、センサ202を備える。また、サーバは、道路情報取得部404と、遮へい物判定部405とを備える。第1実施形態と重複する構成については符号を引用してその説明は省略する。以下、相違点を中心に説明する。
【0054】
センサ102は、車両Aに搭載され、車両Aの情報及び車両Aの周囲の物体を検出する。例えば、センサ102は、道路上または道路周辺の物体を検出する。センサ102は、複数のセンサで構成される。例えば、センサ102は、車輪速センサ、操舵角センサ、ジャイロセンサなどを含む。これらのセンサにより、車両Aの速度、操舵角などが検出される。また、センサ102は、カメラ、ライダ、レーダ、ミリ波レーダ、レーザレンジファインダ、ソナーなどを含む。これらのセンサにより、車両Aの周囲の物体として、他車両(車両Bも含まれる)、バイク、自転車、歩行者を含む移動物体、及び、障害物、落下物、駐車車両を含む静止物体、道路の形状、道路構造物や道路周囲の建造物が検出される。具体的な検出データとして、車両Aの周囲に他車両が存在する場合、他車両の識別番号、位置、速度、種類(車種)、高さ、進行方向、過去の走行軌跡、過去の走行軌跡に基づく将来の軌跡などが検出される。また上記センサにより検知された車両周囲の形状を三次元上の点の集合で表現した三次元データを生成してもよい。センサ102によって検出されたこれらの車両Aの周囲の物体に関するオブジェクトデータは、通信部100を介して、車両Bの通信部200及び基地局300を介してサーバ400の将来経路取得部に送信される。オブジェクトデータの例を表2に示す。表2に示す通り、オブジェクトデータのヘッダには、例えば、物体を検知した車両の識別番号、車両が物体の検知に用いたセンサ情報、コンテンツデータに含まれるコンテンツ種別を示す識別情報が格納される。センサ情報には、例えば、センサの識別情報(製造者名、モデル名、センサの種別)、センサの車両への取り付け形態(車両に対する相対的な向き、センサ仕様(解像度、分解能、視野角など)、センサの認識状態(計測精度)に関するデータが含まれる。コンテンツパックに含まれるコンテンツ種別を示す識別情報には、例えば、検知した物体(例えば、歩行者、駐車車両、障害物など)の識別するためのデータが含まれる。
【0055】
【表2】
【0056】
通信部200が受信した、センサ102によって検出された車両Aのオブジェクトデータは、車両Bの記憶装置(図示省略)に格納される。
【0057】
センサ202は、車両Bに搭載され、車両Bの情報及び車両Bの周囲の物体を検出する。センサ202の機能は、センサ102と同様のため、説明を省略する。コントローラ220は、センサ202によって検出されたデータに基づいて、表2に示すパッケージデータとして、車両Bのオブジェクトデータを生成し、通信部200を介して、サーバ400に送信され、サーバ400の将来経路取得部が取得する。また、同様に車両Bのコントローラ220は、車両Bのオブジェクトデータを通信部200を介して車両Aに送信し、車両Aの通信部100にてこれを受信する構成としてもよい。また、車両Bの記憶装置に格納された、センサ102によって検出された車両Aのオブジェクトデータも通信部200を介して、サーバ400に送信される。
【0058】
道路情報取得部404は、地図情報(道路構造、道路の車線数、道路上の建造物などを含む)、渋滞情報、近隣の駐車場の空き状況、事故情報、工事情報、信号情報などを取得する。道路情報取得部404は、これらの情報を車両Bから取得してもよく、インターネット上のクラウドから取得してもよい。車両Bは、これらの情報をV2I(VEHICLE TO INFRASTRUCTURE)によって取得して、サーバ400に提供することができる。V2Iとは、車両と、道路に設置された通信設備との間で情報をやり取りする技術であり、路車間通信と呼ばれることがある。なお、車両Aによって検出された情報に、これらの情報が含まれてもよい。道路情報取得部404は、取得した情報を遮へい物判定部405に出力する。
【0059】
遮へい物判定部405は、道路情報取得部404から地図情報などを取得する。また、遮へい物判定部405は、位置予測部402から、将来における車両A及び車両Bの位置関係を取得する。遮へい物判定部405は、センサ102及びセンサ202によって検出されたデータを取得する。遮へい物判定部405は、将来における車両A及び車両Bの位置の取りうる組合せについて、直線経路を算出する。将来における車両A及び車両Bの位置の取りうる組合せとは、車両A及び車両Bが走行経路にしたがって走行した場合の距離(例えば、1m)ごとの位置の組合せを言う。すなわち、遮へい物判定部405は、距離Dの最大値から最小値までの距離ごとに、直線経路を算出する。直線経路とは、車両Aと車両Bとを直線に結んだ経路である。よって、本実施形態において直線経路は、道路以外の領域に重なる場合もある。遮へい物判定部405は、算出した直線経路上に建物があるか否かを判定する。
【0060】
また、遮へい物判定部405は、車両Aと車両Bとの道なり経路を算出する。車両Aと車両Bとの道なり経路とは、車両Aから車両Bまでの道路上の経路を、車両A及び車両Bの走行経路に沿って結んだ経路である。遮へい物判定部405は、道なり経路上に大型車両が存在するか否かを判定する。遮へい物判定部405は、判定結果を通信環境判定部403に出力する。
【0061】
通信環境判定部403は、遮へい物判定部405から取得した情報に基づいて、現在の通信環境を補正する。具体的には、通信環境判定部403は、建物、大型車両の存在に基づいて現在の電波強度を補正し、現在の通信環境を補正する。そして、通信環境判定部403は、補正後の現在の通信環境に基づいて将来の通信環境を判定する。
【0062】
(通信環境補正方法)
次に、図7を参照して、現在の通信環境の補正方法の一例を説明する。図7に示すシーンにおいて、車両Aの速度などは図3と同じである。図7図3と異なる点は、建物500が存在することと、車両Bの前方に先行車Cが存在することである。
【0063】
図7に示すように、車両Aの位置が初期位置(Xa、Ya)、車両Bの位置が初期位置(Xb、Yb)である場合、遮へい物判定部405は、車両Aと車両Bとを直線に結んだ直線経路10を算出する。車両A及び車両Bは、40km/hで走行しているため、車両A及び車両Bは交差点に徐々に接近する。車両A及び車両Bが走行経路にしたがって走行した場合の所定距離(例えば、1m)ごとに、遮へい物判定部405は直線経路を算出する。図7では、一例として、車両Aが位置(Xa1、Ya1)に、車両Bが位置(Xb1、Yb1)に居るときの直線経路11が示される。直線経路10上には、建物500は存在しないが、直線経路11上には、建物500は存在する。直線経路11上に建物500が存在することは、遮へい物判定部405によって判定される。建物500の場所については、地図情報を参照すれば得られる。このように、遮へい物判定部405は、地図情報と、車両A及び車両Bの位置関係に基づいて、将来の直線経路上に建物500が存在するか否かを判定する。なお、建物500は、車両A及び車両Bの経路の外(道路の外)に存在する建物である。
【0064】
図7に示すように、車両Bの前方には、先行車Cが存在する。先行車Cは、車両A及び車両Bより大きい大型車両として説明する。車両A及び車両Bは、普通自動車である。先行車Cが大型車両か否かは、センサ102またはセンサ202の検出結果から判定することができる。例えば、センサ102またはセンサ202の検出結果から、先行車Cの高さが車両A及び車両Bの高さより高いことが判明すれば、先行車Cは大型車両であると判定される。図7に示すように、先行車Cは、道なり経路12上に存在する。道なり経路12上に先行車Cが存在することは、遮へい物判定部405によって判定される。より詳しくは、遮へい物判定部405は、センサ102またはセンサ202から取得したデータに基づいて、道なり経路12上に先行車Cが存在すると判定する。なお、建物500及び先行車Cを検出する理由は、建物500及び先行車Cによって直接通信に用いられる電波が遮断される可能性があるからである。なお、遮へい物判定部405は、建物500の存在、及び先行車Cの存在を通信環境判定部403に出力する。
【0065】
通信環境判定部403は、遮へい物判定部405から取得した情報に基づいて、現在の通信環境を補正する。現在の通信環境とは、図7に示すシーンにおいては、車両A及び車両Bが初期位置に居るときの通信環境を指す。車両Aの将来の位置(Xa1、Ya1)と、及び車両Bの将来の位置(Xb1、Yb1)とを直線に結んだ直線経路11上に建物500が存在すると判定された場合、通信環境判定部403は、直接通信の経路として、道なり経路12を選択し、距離減衰に対し遮へい物減衰率を乗算する。本実施形態において、直接通信は、直線経路に沿って行われる場合、道なり経路に沿って行われる場合、あるいは、両方の経路を用いて行われる場合を想定する。例えば、車両A及び車両Bが初期位置に居るとき、直接通信は、直線経路に沿って行われてもよい。
【0066】
距離減衰に対し遮へい物減衰率を乗算することの具体例として、通信環境判定部403は、推定電波強度に対し30dB(10^-3)を乗算する。この値(30dB)は、直接通信の利用可否を予測するための一例であり、特に限定されるものではない。直接通信の利用可否を予測するための値については、下記の文献を参照されたい。Recommendation ITU-R P.1411-6 (02/2012)(https://www.itu.int/dms_pubrec/itu-r/rec/p/R-REC-P.1411-6-201202-S!!PDF-E.pdf)
【0067】
推定電波強度とは、第1実施形態で説明したように、通信環境判定部403によって推定された電波強度である。
【0068】
また、図7に示すシーンでは道なり経路12において、大型車両(先行車C)が検出されているため、通信環境判定部403は、推定電波強度に対し12.5dB(約10^-1)を乗算する。この値(12.5dB)も、直接通信の利用可否を予測するための一例であり、特に限定されるものではない。直接通信の利用可否を予測するための値については、下記の文献を参照されたい。3GPP TR37.885 “study on evaluation methodology of new Vehicle-to-Everything V2X use case for LTE and NR”, 2018
【0069】
本実施形態において、道なり経路12上に大型車両が存在することは、車両Aまたは車両Bが将来走行する経路上に大型車両が存在することを意味する。
【0070】
遮へい物減衰率とは、上記の30dB、12.5dBである。現在の通信環境を補正するとは、推定電波強度に対し遮へい物減衰率を乗算することを意味する。遮へい物減衰率が乗算された後の推定電波強度を、以下では補正後の推定電波強度と呼ぶ。通信環境判定部403は、距離ごとに補正後の推定電波強度を評価する。通信環境判定部403は、全区間で補正後の推定電波強度が閾値を上回る場合、全区間で直接通信が可能と判定する。また、補正後の推定電波強度が、閾値以下となる区間があった場合、通信環境判定部403は、その区間では直接通信は困難と判定する。閾値は、第1実施形態で用いた閾値と同じである。
【0071】
なお、道なり経路12上で先行車Cが検出された場合に乗算される12.5dBは、30dBが乗算された値に乗算される。なお、道なり経路12上で先行車Cが検出されなかった場合は、30dBのみ乗算された値に基づいて、将来の通信環境が判定される。なお、直線経路11上に建物500が存在せず、かつ、道なり経路12上で先行車Cが検出された場合、12.5dBのみ乗算された値に基づいて、将来の通信環境が判定される。
【0072】
このように、通信環境判定部403は、現在の通信環境を補正し、補正後の現在の通信環境に基づいて将来の通信環境を判定する。これにより、予め通信環境が悪化した場合に備えることができる。
【0073】
次に、図8~9に示すフローチャートを参照して、車両A、車両B、及びサーバ400の動作例について説明する。ただし、ステップS201、205~219の処理は、図4~5に示すステップS101、105~119に示す処理と同様であるため、説明を省略する。
【0074】
ステップS203において、車両Aは、車両Bと共有するデータを検出する。車両Bと共有するデータとは、車両Aの位置情報、速度情報、進行方向に関する情報である。なお、車両Aの位置情報は、ステップS201で検出されている。車両Bと共有するデータには、他車両の識別番号、位置、速度、種類(車種)、高さ、進行方向、過去の走行軌跡、過去の走行軌跡に基づく将来の軌跡なども含まれる。
【0075】
処理はステップS221に進み、サーバ400は、距離Dの最大値から最小値までの距離ごとに、直線経路を算出する。次にサーバ400は、直線経路上に建物(遮へい物)が存在するか否か判定する。直線経路上に建物が存在する場合(ステップS221でYes)、処理はステップS223に進み、サーバ400は、直接通信の経路として道なり経路を選択し、推定電波強度に対し30dBを乗算する。直線経路上に建物が存在しない場合(ステップS221でNo)、及びステップS223の後は、ステップS225に処理が進む。ステップS225において、サーバ400は、道なり経路上に大型車両が存在するか否か判定する。
【0076】
道なり経路上に大型車両が存在する場合(ステップS225でYes)、処理はステップS227に進み、サーバ400は、推定電波強度に対し12.5dBを乗算する。道なり経路上に大型車両が存在しない場合(ステップS225でNo)、及びステップS227の後は、ステップS229に処理が進む。ステップS229において、全区間で推定電波強度が閾値を上回る場合(ステップS229でYes)、サーバ400は、全区間で直接通信が可能と判定する(ステップS231)。一方、推定電波強度が、閾値以下となる区間があった場合(ステップS229でNo)、サーバ400は、その区間では直接通信は困難と判定する。
【0077】
(作用・効果)
第2実施形態によれば、サーバ400は、車両Aまたは車両Bから、車両A及び車両Bが将来走行する経路(第1将来経路、第2将来経路)を取得する。なお、サーバ400は、車両Aが将来走行する経路を車両Aから取得し、車両Bが将来走行する経路を車両Bから取得してもよい。サーバ400は、車両Bから受信した信号に基づいて、車両Aと車両Bとの現在の通信環境を判定する。また、サーバ400は、車両A及び車両Bが将来走行する経路における、車両A及び車両Bの将来の位置(第1将来位置、第2将来位置)を予測する。図7に示すように、車両A及び車両Bの走行経路、進行方向、速度が判明すれば、所定距離ごとの車両A及び車両Bの将来の位置が、予測される。サーバ400は、予測した車両A及び車両Bの将来の位置に基づいて、現在の通信環境を補正する。そして、サーバ400は、補正後の現在の通信環境に基づいて、車両Aと車両Bとの将来の通信環境を判定する。また、サーバ400は、判定した将来の通信環境を車両A及び車両Bに通知してもよい。これにより、車両A及び車両Bは、予め通信環境が悪化した場合に備えることができる。例えば、車両A及び車両Bは、直接通信を切断する前に予め間接通信へ接続しておくことができる。これにより、直接通信から間接通信へ切り替えた際の初期接続に要する時間が少なくなるため、スムーズなデータの共有が実現する。
【0078】
また、サーバ400は、車両A及び車両Bの将来の位置によって特定される、将来における車両Aと車両Bとの相対距離に基づいて、現在の通信環境を補正してもよい。これにより、車両A及び車両Bは、相手との距離の変化に基づいて予め通信環境が悪化した場合に備えることができる。
【0079】
また、サーバ400は、車両A及び車両Bの将来の位置を直線に結んだ直線経路と、車両Aから車両Bまでの道路上の経路を、車両A及び車両Bの走行経路に沿って結んだ道なり経路のそれぞれについて、車両Aと車両Bとの将来の通信環境を判定する。例えば、直線経路上に建物が存在すると判定された場合、サーバ400は、推定電波強度に対し30dB(10^-3)を乗算して、現在の通信環境を補正する。そして、サーバ400は、補正後の現在の通信環境に基づいて、車両Aと車両Bとの将来の通信環境を判定する。また、道なり経路上に大型車両が存在すると判定された場合、サーバ400は、推定電波強度に対し12.5dBを乗算して、現在の通信環境を補正する。そして、サーバ400は、補正後の現在の通信環境に基づいて、車両Aと車両Bとの将来の通信環境を判定する。このように、直線経路と道なり経路の2種類の経路について、電波を遮断しうるオブジェクトの影響を評価する。これにより、車両A及び車両Bは、予め通信環境が悪化した場合に備えることができる。
【0080】
また、サーバ400は、車両A及び車両Bが将来走行する経路が含まれる地図情報を取得する。そして、サーバ400は、車両Aが将来走行する経路、車両Bが将来走行する経路、車両Aの将来の位置、及び車両Bの将来の位置のうち、少なくともいずれか一つに応じた地図情報に基づいて、車両Aと車両Bとの将来の通信環境を判定する。サーバ400は、車両Aが将来走行する経路、車両Bが将来走行する経路、車両Aの将来の位置、及び車両Bの将来の位置のうち、少なくともいずれか一つを取得することができる。サーバ400は、取得した情報と地図情報とを突き合わせることにより、車両A及び車両Bが将来走行する経路において、電波を遮断しうる建物が存在するか否か判定することができる(図7参照)。これにより、サーバ400は、車両A及び車両Bが将来走行する経路において、電波を遮断しうる建物の影響を評価し、現在の通信環境を補正する。そして、サーバ400は、補正後の現在の通信環境に基づいて、車両Aと車両Bとの将来の通信環境を判定する。これにより、車両A及び車両Bは、予め通信環境が悪化した場合に備えることができる。
【0081】
また、サーバ400は、センサ102またはセンサ202によって検出されたデータを取得する。センサ102またはセンサ202によって検出されたデータには、道なり経路上に存在する大型車両のデータが含まれる。サーバ400は、車両A及び車両Bが将来走行する経路において、電波を遮断しうる大型車両の影響を評価する。なお、建物が静的なオブジェクトであるのに対し、大型車両は動的なオブジェクトである。つまり、サーバ400は、静的なオブジェクト及び動的なオブジェクトのそれぞれについて、影響を評価することができる。これにより、サーバ400は、車両Aと車両Bとの将来の通信環境を精度よく判定することができる。
【0082】
また、サーバ400は、車両Aが将来、車両Bに送信するデータ量、または、車両Bから受信するデータ量を取得してもよい。サーバ400は、判定した将来の通信環境において、取得したデータ量を送信または受信することが可能か否かを判定してもよい。判定した将来の通信環境において、取得したデータ量を送信または受信することができないことが判明すれば、車両A及び車両Bは、予め通信環境が悪化した場合に備えることができる。例えば、車両A及び車両Bは、直接通信を切断する前に予め間接通信へ接続しておくことができる。
【0083】
(第2実施形態の変形例1)
上述した例では、直接通信に用いられる電波を遮断しうるオブジェクトとして、建物500及び先行車C(大型車両)について説明したが、これに限定されない。例えば、電波を遮断しうるオブジェクトには山間部が含まれる。山間部について、図10を参照して説明する。
【0084】
図10に示すように、遮へい物判定部405は、地図情報から山間部601を取得する。山間部601は、車両A及び車両Bの周囲に存在する。遮へい物判定部405は、車両Aの進行方向に対し山間部601に接する見切り線を設定する。図10に示すシーンにおいて、見切り線から山間部601側の領域を遮へい領域と呼ぶ。図10に示すシーンにおいて、車両Bは、遮へい領域に存在する。この場合、車両Bは山間部601によって遮へいされていると判定される。車両Bが山間部601によって遮へいされているとは、車両Aと車両Bとの直接通信が困難なことを意味する。なお、遮へい物判定部405は、計算を効率化するため、見切り線と交わる道路上の交点602を算出し、車両Aから見て交点602より遠方に車両Bが存在する場合、車両Bは遮へいされていると判定してもよい。なお、見切り線の範囲は、無線周波数の回折効果に基づいて、例えばITS周波数(5.9GHz帯)の場合、約5度である。なお、山間部601は、センサ102またはセンサ202によって検出されてもよい。
【0085】
このように、遮へい物判定部405は、地図情報から取得した情報(山間部601)、またはセンサ102またはセンサ202によって検出された物体(山間部601)に基づいて、車両Aと車両Bとが直接通信を行うことが困難な第1エリア(遮へい領域)を特定する。これにより、遮へい物判定部405は、車両Aから見て電波が届く限界点を超えた領域は一律に直接通信が困難と判定することができるため、計算量が低減される。
【0086】
なお、センサ102、またはセンサ202によって検出される範囲に交差点、カーブまたは勾配変曲点のいずれかが含まれる場合、遮へい物判定部405は、第1エリアから、交差点、カーブまた勾配変曲点のいずれかを基準とした所定領域を除外することによって第2エリアを特定してもよい。これにより、遮へい物判定部405は、車両Aから見て電波が届く限界点を超えた領域は一律に直接通信が困難と判定することができるため、計算量が低減される。
【0087】
(第2実施形態の変形例2)
遮へい領域は、山間部601によって形成されるものに限定されない。例えば、図11に示すように道なり経路に凸型の勾配が存在する場合にも遮へい領域は形成されうる。
【0088】
図11に示すシーンにおいて、遮へい物判定部405は、地図情報を用いて車両Aの位置における斜度を取得する。遮へい物判定部405は、取得した斜度に沿った見切り線を設定する。遮へい物判定部405は、設定した見切り線の鉛直方向下側の領域を遮へい領域と判定する。図11に示すシーンにおいて、車両Bは、遮へい領域に存在するため、車両Aと車両Bとの直接通信が困難である。なお、見切り線の範囲は、変形例1と同様に、約5度である。
【0089】
(第2実施形態の変形例3)
また、遮へい領域は、図12に示すように、道なり経路の先に勾配が存在する場合にも形成されうる。
【0090】
図12に示すシーンにおいて、遮へい物判定部405は、地図情報を用いて車両Aの位置における道路基準面を取得する。遮へい物判定部405は、取得した道路基準面を見切り線として設定する。遮へい物判定部405は、設定した見切り線の鉛直方向下側の領域を遮へい領域と判定する。図12に示すシーンにおいて、車両Bは、遮へい領域に存在するため、車両Aと車両Bとの直接通信が困難である。なお、見切り線の範囲は、変形例1と同様に、約5度である。
【0091】
(第2実施形態の変形例4)
遮へい領域は、大型車両によって形成される場合もありうる。
【0092】
図13に示すように、車両Aの前方に大型車両Cが存在する場合、遮へい物判定部405は、車両Aの位置と、センサ102の検出範囲から見切り線を設定する。なお、見切り線は、センサ102の死角を形成する線であってもよい。遮へい物判定部405は、設定した見切り線に対し、大型車両C側の領域を遮へい領域と判定する。図13に示すシーンにおいて、車両Bは、遮へい領域に存在するため、車両Aと車両Bとの直接通信が困難である。なお、見切り線の範囲は、変形例1と同様に、約5度である。
【0093】
(第2実施形態の変形例5)
図7に示した例では、センサ102またはセンサ202によって、道なり経路上に大型車両(先行車C)が検出されたが、道なり経路上の大型車両の存在を判定する方法は、これに限定されない。例えば、遮へい物判定部405は、渋滞情報が検出された場合、道なり経路上に大型車両あり、と判断してもよい。理由は、渋滞が発生している場合、大型車両が統計値で10~25%程度走行していることが判明しているからである。
【0094】
また、図14に示すように、車両A及び車両Bが低車速で走行している場合に、遮へい物判定部405は道なり経路上に大型車両あり、と判断してもよい。ここで低車速とは、規制速度よりも25%以上低い速度をいう。ただし車両Aと車両Bとの間に交差点またはカーブがある場合、遮へい物判定部405は低車速情報を用いず、渋滞情報のみを用いる。
【0095】
なお、車両Bが、車両Aとは異なる車両から位置情報を受信し、そのメッセージ内部に大型車両情報が含まれ、かつ車両Aと車両Bとの間に大型車両がいる場合にも、遮へい物判定部405は道なり経路12上に大型車両あり、と判断してもよい。
【0096】
(第3実施形態)
次に、図15を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態において、車両Aは、データ生成部112を備える。また、車両Bは、データ受信部222を備える。第2実施形態と重複する構成については符号を引用してその説明は省略する。以下、相違点を中心に説明する。
【0097】
データ生成部112は、車両Bに送信するデータを生成する。データ生成部112が生成するデータには、オーバーヘッド、車両Aの現在の位置情報を含む車両情報、センサデータなどが含まれる。以下では、データ生成部112が生成するデータはメッセージと表現される場合がある。オーバーヘッドには、メッセージID、車両Aの固有の一時的なID、車両Aの認証コードなどが含まれる。車両情報には、車両Aの現在の位置情報の他に、車両Aの速度情報、進行方向に関する情報などが含まれる。センサデータとは、センサ102によって検出されるデータである。センサデータには、他車両の識別番号、位置、速度、種類(車種)、高さ、進行方向、過去の走行軌跡、過去の走行軌跡に基づく将来の軌跡などが含まれる。メッセージの送信周期は、特に限定されないが、例えば、10Hzに設定される。データ生成部112は、生成したデータを通信部100に出力する。なお、データ生成部112は、エンターテイメント情報を含ませてもよい。
【0098】
データ受信部222は、データ生成部112によって生成されたデータのフォーマットを予め記憶しておき、データを解釈して保存する機能を有する。
【0099】
第3実施形態において、車両A及び車両Bは、直接通信を行うことが可能な場合は、直接通信を行う。一方、車両A及び車両Bは、直接通信を行うことが困難な場合は、間接通信を行う。ここで間接通信の一例について説明する。第3実施形態において、サーバ400は、ユニキャスト通信もしくはブロードキャスト通信を用いる。ユニキャスト通信の場合、モビリティサービス事業者が予めサーバ400を用意し、予め車両Aの既知の代表IPアドレスにアクセスする。サーバ400は、車両Aが所定場所(例えば、交差点)を通過するまでに必要な時間分の計算リソース、車両Aと車両Bとのアクセス情報(電話番号、IPアドレス、車両固有の一時ID(V2V通信で用いるID)、認証用コード(公開鍵など)、現在位置情報を通知する。モビリティサービス事業者は、車両Aに対して車両Bがアクセス可能なIPアドレスと公開鍵などを発行する。この方式により、限られたユーザのみの情報授受をサポートできるので、サーバ400経由で広域情報を扱う場合にも秘匿性が保たれ、かつサーバ400を使用するユーザが限定されるので費用徴収などが行いやすくなる。
【0100】
また、間接通信の他の例として、エリアを限定したブロードキャスト通信を用いる場合を説明する。公共交通インフラ事業者が予めサーバ400を用意し、予め車両Aの既知の代表IPアドレスにアクセスする。サーバ400は、車両A及び車両Bの現在の位置、走行計画情報、他のアクセス可能な車両の情報提供、配信が可能な他のサーバのIPアドレス、ポート番号、認証情報などを取得する。この方式は、広範なユーザがアクセス可能なため、公開可能と各車両が判断した情報が、様々な車両から入手することが可能である。このようなサーバ400のアクセス情報が、車両Aへ通知される。
【0101】
次に、図16~18に示すフローチャートを参照して、車両A、車両B、及びサーバ400の動作例について説明する。ただし、ステップS301、305~323の処理は、図4~5に示すステップS101、105~123に示す処理と同様であるため、説明を省略する。
【0102】
ステップS325において、一部の区間で直接通信を行うことが困難であると判定されているため、処理はステップS327に進む。ステップS327において、サーバ400は、車両A及び車両Bへサーバ400に接続するためのアクセス情報を通知する。
【0103】
処理はステップS329及び331に進み、車両A及び車両BはS327で取得したアクセス情報に基づいて、サーバ400へ接続を要求する。処理はステップS333に進み、サーバ400は接続を受理し、車両A及び車両Bに必要な通信用プログラムを配信する。なお、サーバ400との接続に必要な通信用プログラムは、予め車両A及び車両Bに格納されていてもよい。また、サーバ400は、試験信号を送受信し、接続の確立を確認する。接続の確立が確認された後、サーバ400は、待機モードになる。
【0104】
処理はステップS335、337に進み、車両A及び車両Bは、直接通信が可能な区間では直接通信を行う。ステップS339、341において、車両A及び車両Bは、直接通信を行う。ステップS335、337、339、341の後、処理はステップS343に進む。
【0105】
ステップS343において、サーバ400は、車両Aと車両Bが、直接通信が可能なエリアに居るか否かを判定する。直接通信が可能なエリアとは、例えば、第1実施形態で説明したように、受信強度が閾値を上回るエリアである。車両Aと車両Bが、直接通信が可能なエリアに居る場合(ステップS343でYes)、一連の処理は終了する。車両Aと車両Bが、直接通信が可能なエリアに居ない場合(ステップS343でNo)、処理はステップS345に進む。
【0106】
ステップS345において、サーバ400は、車両Aの通信部100及び車両Bの通信部200において、直接通信の電力変動が最小電力を下回る傾向が観測されたか否かを判定する。10Hzごとに計測されている直接通信の電力について、ビル等が立ち並ぶアーバンキャニオン環境、道路面などによる多重反射の影響で波の重なり合うと、定在波が発生する場合がある。定在波が発生した場合、直接通信の電力変動が最小電力を下回る場合がある。直接通信の電力変動が最小電力を下回った場合、通信の変調率が下りデータ通信レートが落ち込むために必要なデータを受信しきれなくなるおそれがある。直接通信の電力変動が最小電力を下回る場合(ステップS345でYes)、処理はステップS347に進み、サーバ400は、車両Aと車両Bが直接通信が困難なエリアに進入したか否かを判定する。直接通信が可能なエリアとは、例えば、第1実施形態で説明したように、受信強度が閾値以下となるエリアである。
【0107】
車両Aと車両Bが、直接通信が困難なエリアに進入した場合(ステップS347でYes)、サーバ400は、常時接続モードとなるよう試験信号を発信し、車両A及び車両Bと接続したか否かを判定する。サーバ400が、車両A及び車両Bと接続した場合(ステップS349でYes)、処理はステップS351に進み、車両Aは、通信部100及び通信部200のどちらか一方の受信電力量が10dBより少ないことを確認する。なお、10dBは一例であり、これに限定されない。車両Aは、最低スループット(帯域10MHzで1メッセージあたり300バイト程度分)を直接通信で車両Bに送信する。最低スループットには、車両Aの位置情報などの最低限の基本メッセージが含まれる。車両Aは残りのデータをサーバ400を介して車両Bへ送信する。その後、処理はステップS353に進む。通信部100及び通信部200の受信電力量が10dB以上であり、受信継続時間が10秒程度継続し、かつ、将来の走行エリアにおいて直接通信が困難なエリアが推定されていない場合(ステップS353でYes)、車両A及び車両Bは直接通信に切り替える。このとき、サーバ400との接続は維持される。
【0108】
(作用・効果)
第3実施形態によれば、将来の通信環境が判定され、送信すべきデータ量を直接通信で送信可能か否か判定される。送信すべきデータ量を直接通信で送信できない場合、車両A及び車両Bは、直接通信を切断する前に予め間接通信へ接続しておくことができる。これにより、直接通信から間接通信へ切り替えた際の初期接続に要する時間が少なくなるため、スムーズなデータの共有が実現する。
【0109】
上述の実施形態に記載される各機能は、1または複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理回路は、また、記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や回路部品等の装置を含む。
【0110】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0111】
上述した実施例では、通信環境の判定、通信環境の補正などはサーバ400によって実施されるが、これに限定されない。例えば、図19に示すように、通信環境の判定、通信環境の補正の作成などは、車両Aによって実施されてもよい。図19に示すように、車両Aのコントローラ110が備える将来経路取得部114、位置予測部115、道路情報取得部116、遮へい物判定部117、及び通信環境判定部118の各機能は、図6に示す将来経路取得部401、位置予測部402、道路情報取得部404、遮へい物判定部405、及び通信環境判定部403の各機能と同様である。
【0112】
車両Aが、現在の通信環境を補正し、補正後の現在の通信環境に基づいて、車両Aと車両Bとの将来の通信環境を判定した場合、車両Aは、将来の通信環境を示す情報を車両Bに送信してもよい。また、車両Aは、判定した将来の通信環境に応じて、通信先を、車両Bから他の機器(例えば、サーバ400)へと切り替えてもよい。これにより、直接通信から間接通信へ切り替えた際の初期接続に要する時間が少なくなるため、スムーズなデータの共有が実現する。
【0113】
なお、通信環境の判定、通信環境の補正などは、車両Bによって実施されてもよい。あるいは、通信環境の判定、通信環境の補正などは、携帯電話網上のモバイルエッジコンピュータによって実施されてもよく、インターネット上のサーバによって実施されてもよい。
【0114】
本実施形態において、直接通信には、携帯通信網に用いられる通信規格に準拠した通信が用いられる。これにより、新たな通信規格を作成する場合と比較して、コストが低減する。
【0115】
通信環境は、少なくとも受信強度、移動速度、及び多重反射のいずれかの1つの特性を含む。
【符号の説明】
【0116】
100 通信部
101 GPS受信機
102 センサ
110 コントローラ
111 通信制御部
112 データ生成部
114 将来経路取得部
115 位置予測部
116 道路情報取得部
117 遮へい物判定部
118 通信環境判定部
200 通信部
201 GPS受信機
202 センサ
220 コントローラ
221 通信制御部
222 データ受信部
300 基地局
310 携帯電話網
400 サーバ
401 将来経路取得部
402 位置予測部
403 通信環境判定部
404 道路情報取得部
405 遮へい物判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2022-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、移動体が将来走行する第1将来位置を取得し、
他の移動体が将来走行する第2将来位置を取得し、地図情報から取得した情報、または道路上または道路周辺の物体を検出するセンサによって検出された前記物体に基づいて、他の移動体との将来の通信環境を判定する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、前記移動体と他の移動体との通信を行う通信部と、前記通信部によって行われる前記通信を制御するコントローラとを備える情報処理装置であって、
前記コントローラは、
前記移動体が将来走行する第1将来位置を取得し、
前記他の移動体が将来走行する第2将来位置を取得し、
地図情報から取得した情報、または道路上または道路周辺の物体を検出するセンサによって検出された前記物体に基づいて、前記他の移動体との将来の通信環境を判定する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記第1将来位置及び前記第2将来位置が含まれる地図情報を取得し、
前記移動体が将来走行する第1将来経路、前記他の移動体が将来走行する第2将来経路、前記第1将来位置、及び前記第2将来位置のうち、少なくともいずれか一つに応じた前記地図情報に基づいて、前記他の移動体との将来の通信環境を判定する
ことを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項3】
道路上または道路周辺の物体を検出するセンサをさらに備え、
前記コントローラは、
前記地図情報から取得した情報、または前記センサによって検出された前記物体に基づいて、前記他の移動体と直接通信を行うことが困難な第1エリアを特定する
ことを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記センサによって検出される範囲に交差点、カーブまたは勾配変曲点のいずれかが含まれる場合、前記コントローラは、前記第1エリアから、前記交差点、前記カーブまたは前記勾配変曲点のいずれかを基準とした所定領域を除外することによって第2エリアを特定する
ことを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記地図情報から取得した情報、または前記物体は、山間部、勾配のいずれかを含む遮へい物である
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
移動体に搭載され、前記移動体と他の移動体との通信を行う通信部と、前記通信部によって行われる前記通信を制御するコントローラとを備える情報処理装置の情報処理方法であって、
前記移動体が将来走行する第1将来位置を取得し、
前記他の移動体が将来走行する第2将来位置を取得し、
地図情報から取得した情報、または道路上または道路周辺の物体を検出するセンサによって検出された前記物体に基づいて、前記他の移動体との将来の通信環境を判定する
ことを特徴とする情報処理方法。