(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161956
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びサーバ
(51)【国際特許分類】
H04W 76/23 20180101AFI20221014BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20221014BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20221014BHJP
H04W 92/18 20090101ALI20221014BHJP
H04W 72/10 20090101ALI20221014BHJP
H04W 4/46 20180101ALI20221014BHJP
【FI】
H04W76/23
G01C21/26 B
G08G1/09 F
G08G1/09 H
H04W92/18
H04W72/10
H04W4/46
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127251
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2021513011の分割
【原出願日】2019-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 光範
(57)【要約】
【課題】スムーズなデータの共有を実現する。
【解決手段】情報処理装置は、移動体及び他の移動体が将来走行する位置情報と、将来走行する位置情報に応じた、将来における直接通信の通信環境情報と、移動体が将来、他の移動体に送信するデータ量情報、または、他の移動体から受信するデータ量情報とに基づいて、直接通信により、データ量を送信する、または受信することが可能か否かを判定し、直接通信により、データ量情報に係るデータ量を送信する、または受信することができないと判定した場合、直接通信及び間接通信の少なくともいずれかについて、移動体と他の移動体との通信計画情報を作成し、他の移動体に通信計画情報を送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、前記移動体と他の移動体との直接通信、または移動しない固定の通信装置を経由した、前記移動体と他の移動体との間接通信を行う通信部と、前記通信部によって行われる前記直接通信及び前記間接通信を制御するコントローラとを備える情報処理装置であって、
前記コントローラは、
前記移動体及び前記他の移動体が将来走行する位置情報と、前記将来走行する位置情報に応じた、将来における前記直接通信の通信環境情報と、前記移動体が将来、前記他の移動体に送信するデータ量情報、または、前記他の移動体から受信するデータ量情報とに基づいて、前記直接通信により、前記データ量情報に係るデータ量を送信する、または受信することが可能か否かを判定し、
前記直接通信により、前記データ量を送信する、または受信することができないと判定した場合、前記直接通信及び前記間接通信の少なくともいずれかについて、前記移動体と前記他の移動体との通信計画情報を作成し、
前記他の移動体に前記通信計画情報を送信する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記通信環境情報は、受信強度、移動速度、多重反射、チャネル利用率または自動削除率チャネル利用率のいずれか1つを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記移動体の周囲の複数のデータを取得するセンサをさらに備え、
前記他の移動体に送信するデータ量には、前記センサによって取得された前記複数のデータが含まれ、
前記コントローラは、前記複数のデータの中から優先度に基づいて、前記直接通信を優先的に選択して前記通信計画情報を作成する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記複数のデータは、道路上または道路周辺の物体に関するデータであり、
前記コントローラは、前記物体が交差点に到達する到達時間、前記物体と前記他の移動体との相対距離、前記物体と前記他の移動体との相対速度、前記物体の種類、交差点の交通規則のうち、少なくとも1つに応じて、前記優先度を決定する
ことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記他の移動体に送信するデータ量のうち、前記直接通信により送信することが可能なデータ量または前記直接通信により送信することが不可能なデータ量を特定し、
前記直接通信により送信することが可能なデータを前記直接通信により送信する通信計画情報または前記直接通信により送信することが不可能なデータを前記間接通信により送信する通信計画情報を作成する
ことを特徴とする請求項3または4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記将来における前記直接通信の通信環境のうち、所定の基準を満たさない期間を特定し、
前記所定の基準を満たさない期間のみ、前記直接通信から前記間接通信に切り替える前記通信計画情報を作成する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
チャネルの多重化の検知または予測に基づいて、前記コントローラは、前記直接通信から前記間接通信に切り替えるための前記通信計画情報を作成する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記他の移動体から、前記通信計画情報に係る通信計画の可否に関するデータを受信する
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
移動体に搭載され、前記移動体と他の移動体との直接通信、または移動しない固定の通信装置を経由した、前記移動体と他の移動体との間接通信を行う通信部と、前記通信部によって行われる前記直接通信及び前記間接通信を制御するコントローラとを備える情報処理装置の情報処理方法であって、
前記移動体及び前記他の移動体が将来走行する位置情報と、前記将来走行する位置情報に応じた、将来における前記直接通信の通信環境情報と、前記移動体が将来、前記他の移動体に送信するデータ量情報、または、前記他の移動体から受信するデータ量情報とに基づいて、前記直接通信により、前記データ量情報に係るデータ量を送信する、または受信することが可能か否かを判定し、
前記直接通信により、前記データ量を送信する、または受信することができないと判定した場合、前記直接通信及び前記間接通信の少なくともいずれかについて、前記移動体と前記他の移動体との通信計画情報を作成し、
前記他の移動体に前記通信計画情報を送信する
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項10】
移動しない固定の通信装置を経由した移動体及び他の移動体の間接通信を行うサーバであって、
前記移動体及び前記他の移動体が将来走行する位置情報と、前記将来走行する位置情報に応じた、直接通信の通信環境情報と、前記移動体が将来、前記他の移動体に送信するデータ量情報、または、前記他の移動体が将来、前記移動体に送信するデータ量情報とに基づいて、前記直接通信により、前記データ量情報に係るデータ量を送信する、または受信することが可能か否かを判定し、
前記直接通信により、前記データ量を送信する、または受信することができないと判定した場合、前記直接通信及び前記間接通信の少なくともいずれかについて、前記移動体と前記他の移動体との通信計画情報を作成し、
前記移動体及び他の移動体に前記通信計画情報を送信し、
前記直接通信は、前記固定の通信装置を経由せずに、前記移動体と前記他の移動体との間で実施される
ことを特徴とするサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の位置、速度などの車両データを示す通信パケットを複数の車両間で送受信する方法が知られている(特許文献1)。このような複数の車両間での送受信は、車車間通信と呼ばれる。特許文献1に記載された発明は、車車間通信における通信品質が許容レベル以上である場合には、狭域送信周期よりも長い広域送信周期を採用し、通信品質が許容レベル未満である場合には、狭域送信周期と等しい値又はそれよりも小さい値の第2広域送信周期を採用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車車間通信(直接通信)で通信が可能であったとしても、その後の経路によっては電波の強度が弱くなったり、渋滞具合によっては通信品質が低下したりするおそれがある。このような場合、直接通信でデータを送受信することが難しくなる。特許文献1に記載された発明は、直接通信でデータを送受信することが難しい場合、間接通信に切り替える。しかしながら、例えば、直接通信から間接通信へ切り替えた際の初期接続に時間を要する場合、スムーズなデータの共有が妨げられるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、スムーズなデータの共有が実現する情報処理装置、情報処理方法、及びサーバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、移動体及び他の移動体が将来走行する位置情報と、将来走行する位置情報に応じた、将来における直接通信の通信環境情報と、移動体が将来、他の移動体に送信するデータ量情報、または、他の移動体から受信するデータ量情報とに基づいて、直接通信により、データ量情報に係るデータ量を送信する、または受信することが可能か否かを判定し、直接通信により、データ量を送信する、または受信することができないと判定した場合、直接通信及び間接通信の少なくともいずれかについて、移動体と他の移動体との通信計画情報を作成し、他の移動体に通信計画情報を送信する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スムーズなデータの共有が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る通信ネットワークの全体概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る車両及びサーバの概略構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係るデータ量の推定方法の一例を説明する図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る走行シーンの一例を説明する図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態に係る通信環境の一例を説明する図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1実施形態に係る通信環境の一例を説明する図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1実施形態に係る直接通信で送信が可能なデータ量の一例を説明する図である。
【
図8】
図8は、本発明の第1実施形態に係る車両及びサーバの動作例を説明するフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の第1実施形態に係る車両及びサーバの動作例を説明するフローチャートである。
【
図10】
図10は、本発明の第2実施形態に係る車両及びサーバの概略構成図である。
【
図11】
図11は、本発明の第2実施形態に係る走行シーンの一例を説明する図である。
【
図12】
図12は、本発明の第2実施形態に係る車両及びサーバの動作例を説明するフローチャートである。
【
図13】
図13は、本発明の第2実施形態に係る車両及びサーバの動作例を説明するフローチャートである。
【
図14】
図14は、本発明の第2実施形態に係る車両及びサーバの動作例を説明するフローチャートである。
【
図15】
図15は、本発明の第3実施形態に係る車両及びサーバの概略構成図である。
【
図16】
図16は、本発明の第3実施形態に係る走行シーンの一例を説明する図である。
【
図17】
図17は、本発明の第3実施形態に係る優先度の一例を説明する図である。
【
図18】
図18は、本発明のその他の実施形態に係る車両及びサーバの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
【0011】
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0012】
図1を参照して本実施形態に係る通信ネットワークの全体概略を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る通信ネットワークには、車両Aと、車両Bと、基地局300と、携帯電話網310と、サーバ400が含まれる。
【0013】
車両A(移動体)は、通信機能を有する通信部100を備える。車両B(他の移動体)は、通信機能を有する通信部200を備える。通信部100及び通信部200は、例えばアンテナ、モデム、アプリケーションプロセッサ、メモリ等からなる。通信部100及び通信部200は、基地局300及び携帯電話網310を介してサーバ400と通信する。基地局300は、移動しない固定の通信装置であり、携帯電話網310をカバーするアクセスポイントである。また、通信部100及び通信部200は、基地局300及びサーバ400を経由して互いに通信することが可能である。基地局300及びサーバ400を経由した、通信部100と通信部200との通信を、以下では間接通信と定義する。本実施形態において、間接通信は、携帯電話網310、インターネット及びサーバ400を用いて行われるが、これに限定されず、その他の無線通信方式(例えば、WiFiホットスポット及びWiFiネットワーク上のサーバや携帯電話網上閉域におけるサーバ等)が用いられてもよい。
【0014】
さらに、通信部100と通信部200とは、基地局300及びサーバ400を経由することなく、直接的に通信することも可能である。このような、基地局300及びサーバ400を経由しない通信を、以下では直接通信と定義する。なお、直接通信は、車車間通信と表現されてもよい。本実施形態では、車両A及び車両Bは、直接通信または間接通信によって、車両(車両A、車両B、その他の車両も含む)、道路情報などに関する複数のデータを共有する。複数のデータには、位置情報、速度情報、進行方向に関するデータなどが含まれる。直接通信は、基地局300及びサーバ400を経由しないため、低遅延、かつ簡易な構成で相手方へデータを送信することができる。間接通信は、直接通信では送ることができない大きなデータや一定時間情報が変わらずに繰り返し送る際に用いられる。また、間接通信は、直接通信できない場合に用いられる。
【0015】
車両A及び車両Bは、自動運転機能を有する車両でもよく、自動運転機能を有しない車両でもよい。また、車両A及び車両Bは、自動運転と手動運転とを切り替えることが可能な車両でもよい。本実施形態では、車両A及び車両Bは、自動運転機能を有する車両として説明する。
【0016】
次に、
図2を参照して、車両A、車両B、及びサーバ400の構成例について説明する。
【0017】
まず、車両Aの構成例について説明する。
【0018】
図2に示すように、車両Aは、上述した通信部100と、GPS受信機101と、センサ102と、コントローラ110とを備える。なお、通信部100、GPS受信機101、センサ102、及びコントローラ110は、まとめて情報処理装置と表現されてもよい。
【0019】
GPS受信機101は、人工衛星からの電波を受信することにより、地上における車両Aの位置情報を検出する。GPS受信機101が検出する車両Aの位置情報には、緯度情報、経度情報、及び時刻情報が含まれる。GPS受信機101は、検出した車両Aの位置情報をコントローラ110に出力する。なお、車両Aの位置情報を検出する方法は、GPS受信機101に限定されない。例えば、オドメトリと呼ばれる方法を用いて位置を推定してもよい。オドメトリとは、車両Aの回転角、回転角速度に応じて車両Aの移動量及びと移動方向を求めることにより、車両Aの位置を推定する方法である。なお、GPS(Global Positioning System)は、GNSS(Global Navigation Satellite System)の一部である。
【0020】
センサ102は、車両Aに搭載され、車両Aの情報及び車両Aの周囲の物体を検出する。例えば、センサ102は、道路上または道路周辺の物体を検出する。センサ102は、複数のセンサで構成される。例えば、センサ102は、車輪速センサ、操舵角センサ、ジャイロセンサなどを含む。これらのセンサにより、車両Aの速度、操舵角などが検出される。また、センサ102は、カメラ、ライダ、レーダ、ミリ波レーダ、レーザレンジファインダ、ソナーなどを含む。これらのセンサにより、車両Aの周囲の物体として、他車両(車両Bも含まれる)、バイク、自転車、歩行者を含む移動物体、及び、障害物、落下物、駐車車両を含む静止物体が検出される。具体的な検出データとして、車両Aの周囲に他車両が存在する場合、他車両の識別番号、位置、速度、種類(車種)、高さ、進行方向、過去の走行軌跡、過去の走行軌跡に基づく将来の軌跡などが検出される。センサ102は、検出したデータをコントローラ110に出力する。
【0021】
コントローラ110は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータには、情報処理装置として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、情報処理装置が備える複数の情報処理回路として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって情報処理装置が備える複数の情報処理回路を実現する例を示すが、もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。コントローラ110は、複数の情報処理回路の一例として、通信制御部111と、データ生成部112を備える。
【0022】
通信制御部111は、通信環境に基づいて、通信方式を制御する。本実施形態において、通信環境は、受信強度、移動速度、多重反射、チャネル利用率及び自動削除率の少なくとも1つの特性を含む。移動速度とは、車両A及び車両Bの車速を意味する。チャネル利用率は、他の車両や歩行者の端末等の他の機器と通信している利用率を示す。自動削除率は、所定のチャネル利用率を超えた際にデータを間引く比率を示す。通信制御部111は、通信環境が良好でない場合、直接通信から間接通信に切り替える。通信制御部111は、通信環境判定部404によって判定された通信環境を用いるが、これに限定されない。通信制御部111は、通信環境を判定する機能を備えてもよい。そして、通信制御部111は、自ら判定した通信環境を用いて通信方式を制御してもよい。
【0023】
データ生成部112は、車両Bに送信するデータを生成する。データ生成部112が生成するデータには、オーバーヘッド、車両Aの現在の位置情報を含む車両情報、センサデータなどが含まれる。以下では、データ生成部112が生成するデータはメッセージと表現される場合がある。オーバーヘッドには、メッセージID、車両Aの固有の一時的なID、車両Aの認証コードなどが含まれる。車両情報には、車両Aの現在の位置情報の他に、車両Aの速度情報、進行方向に関する情報などが含まれる。センサデータとは、センサ102によって検出されるデータである。センサデータには、上述したように、他車両の識別番号、位置、速度、種類(車種)、高さ、進行方向、過去の走行軌跡、過去の走行軌跡に基づく将来の軌跡などが含まれる。メッセージの送信周期は、特に限定されないが、例えば、10Hzに設定される。データ生成部112は、生成したデータを通信部100に出力する。
【0024】
通信部100は、車両Aの周囲に車両Aの現在の位置情報、走行計画情報、センサにより検知したオブジェクトデータなど含むデータパッケージがブロードキャスト送信する。ブロードキャスト送信には、直接通信方式が用いられる。直接通信方式は、例えばIEEE 802.11pに準拠したDSRC方式(周波数:5.9GHz帯)、あるいは3GPP Release14以降の仕様に準拠したセルラV2X方式である。現在の位置情報とは、車両の位置を示す緯度、経度と、当該位置を取得した際の時間を関連付けたデータである。走行計画情報とは、車両の将来位置に対して車速が関連付けられた車速計画データと、将来の走行経路データとを含む走行計画データである。将来の走行経路データは、予め設定された目的地まで走行する走行道路のルート情報でもよいし、車速計画データに基づいて将来位置(緯度、経度)と通過予定時刻が関連付けられたデータであってもよい。例えば、走行計画情報は、SAE2735(Dedicated Short Range Communications (DSRC) Message Set Dictionary)のメッセージに準拠したデータに対して、車速計画データを追加したデータである。ブロードキャスト送信される車両A位置データの例を表1に示す。車両A位置データは、ヘッダ及びコンテンツデータを含むパッケージデータとして、通信部100より送信され、車両Bの通信部200により受信され、または、基地局300を経由してサーバ400の将来経路取得部401により取得される。
【0025】
表1に示すように、車両A位置データのヘッダには、送信元である車両Aの識別番号と、コンテンツデータに含まれるコンテンツの種別を示す識別情報(例えば、現在の位置情報、走行計画情報を示す識別用のID)が格納される。コンテンツデータには、緯度、経度とこれらの情報を取得した時間を関連付けたデータである現在の位置情報、走行計画情報及び車両の通信環境とが格納される。通信環境には、受信強度、移動速度(車両の移動速度及び車両の通信先車両の移動速度)、多重反射、チャネル利用率および自動削除率が含まれる。これらのヘッダ及びコンテンツデータは、車両Aのコントローラ110によって、GPS受信機101及び各種センサ102から取得したデータ及びコントローラ110に備えるメモリに予め記録されたデータに基づいて生成され、車両A位置データが生成される。
【0026】
【0027】
次に、車両Bの構成例について説明する。
【0028】
図2に示すように、車両Bは、上述した通信部200と、GPS受信機201と、コントローラ220とを備える。なお、通信部200、GPS受信機201、及びコントローラ220は、まとめて情報処理装置と表現されてもよい。
【0029】
GPS受信機201の機能は、GPS受信機101の機能と同様である。コントローラ220は、コントローラ110と同様に、CPU、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。コントローラ220は、複数の情報処理回路の一例として、通信制御部221と、データ受信部222を備える。通信制御部221の機能は、通信制御部111の機能と同じである。
【0030】
通信部200は、車両Aの通信部100より送信された、車両A位置データを受信し、受信した車両A位置データをデータ受信部222に出力する。データ受信部222は、通信部200から車両A位置データを取得する。通信部200が、車両A位置データを受信したということは、車両Aと車両Bとの間で直接通信が確立したことを意味する。よって、通信制御部221は、通信部200が車両A位置データを受信した場合、車両Aの現在の位置情報、車両Aの走行計画情報を含む車両A位置データ、及び車両Aとの間で直接通信が確立したことを示す信号などを、サーバ400に送信する。このとき、通信制御部221は、表1に示すパッケージデータの通り、車両Bの現在の位置情報、車両Bの走行計画情報を含む車両B位置データも合わせてサーバ400に送信する。なお、データ受信部222は、データ生成部112によって生成されたデータのフォーマットを予め記憶しておき、データを解釈して保存する機能を有する。
【0031】
サーバ400は、コントローラ110と同様に、CPU、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。サーバ400は、複数の情報処理回路の一例として、将来経路取得部401と、位置予測部402と、データ量推定部403と、通信環境判定部404と、可否判定部405と、通信計画生成部406とを備える。
【0032】
将来経路取得部401は、基地局300経由で受信した車両A位置データ及び車両B位置データに基づいて、車両A及び車両Bそれぞれについて、現在の位置、走行計画情報を取得する。将来経路取得部401は、車両Bの通信部200から送信されたこれらのデータを受信して取得してもよいし、車両Aの通信部100から送信された車両Aの位置データ(車両Aの現在の位置情報、走行計画情報)を受信し、車両Bの通信部200から送信された車両Bの位置データ(車両Bの現在の位置情報、走行計画情報)を受信する構成としてもよい。更には、サーバ400が過去に受信しメモリに記憶された走行計画情報を読み出してもよいし、車両A及び車両Bのそれぞれに走行計画情報を要求して受信する構成としてもよい。将来経路取得部401は、取得した走行計画情報を位置予測部402に出力する。
【0033】
位置予測部402は、車両Bから取得した車両A及び車両Bの位置情報と、将来経路取得部401から取得した走行計画情報に基づいて、将来における車両A及び車両Bの将来位置を予測する。例えば、位置予測部402は、予測された車両A及び車両Bの将来位置に基づいて、将来の車両Aに対する車両Bの相対位置及び相対距離を予測する。位置予測部402は、予測した位置関係を通信環境判定部404に出力する。
【0034】
データ量推定部403は、車両Aが車両Bに直接通信で送信したデータ量について、1秒間当たりのデータ量の推定を行う。具体的には、データ量推定部403は、1秒間当たりに、どの程度のデータ量が送信されたのか推定する。データ量推定部403は、推定したデータ量を通信環境判定部404に出力する。
【0035】
通信環境判定部404は、位置予測部402によって予測された将来の車両A及び車両Bの位置関係に基づいて、車両Aと車両Bとの間における将来の通信環境を判定する。また、通信環境判定部404は、データ量推定部403によって推定されたデータ量のうち、直接通信で送信が可能なデータ量を推定する。データ量の推定には、他の車両や歩行者等が通信している状況を示すチャネル利用率及び所定のチャネル利用率を超えた際にデータを間引く比率を示すデータ自動削除率が用いられる。これらのチャネル利用率及びデータ自動削除率は、例えばSAEJ2945/1等に適用されている。
【0036】
可否判定部405は、データ量推定部403によって推定されたデータ量と、通信環境判定部404によって推定されたデータ量とを比較する。可否判定部405は、比較結果に基づいて、データ量推定部403によって推定されたデータ量の全てを直接通信で送信可能か否かを判定する。可否判定部405は、判定結果を通信計画生成部406に出力する。
【0037】
通信計画生成部406は、可否判定部405から取得した判定結果に基づいて、車両Aが車両Bに送信するデータ量のうち、直接通信により送信することが可能なデータ量と、直接通信により送信することが不可能なデータ量とを特定する。そして、通信計画生成部406は、直接通信により送信することが可能なデータ量を直接通信により送信する通信計画と、直接通信により送信することが不可能なデータ量を間接通信により送信する通信計画を作成する。また、通信計画生成部406は、作成した通信計画を車両A及び車両Bに送信する。
【0038】
(データ量推定方法)
次に、
図3を参照して、データ量推定部403によって推定される、データ量の推定方法の一例について説明する。
【0039】
図3に示すように、車両Aが車両Bに直接通信で送信したデータ量には、オーバーヘッド、車両Aの現在の位置情報を含む車両情報、車両Aの過去の走行軌跡及び走行計画情報、周囲のオブジェクトの認識情報、センサデータが含まれる。
【0040】
車両Aの現在の位置情報を含む車両情報には、車両Aの速度情報、進行方向に関する情報などが含まれる。周囲のオブジェクトの認識情報には、車両A(センサ102)が認識した、車両Aの周囲の他車両の台数(
図3に示す例では11台)が含まれる。センサデータには、8つのデータが含まれる。8つのデータとは、他車両の識別番号、位置、速度、種類(車種)、高さ、進行方向、過去の走行軌跡、過去の走行軌跡に基づく将来の軌跡である。
【0041】
データ量推定部403は、データコンテナの内部情報から
図3に示すデータの単位量を推定する。例えばデータ単位量について、オーバーヘッドが200bytes、車両Aの現在の位置情報を含む車両情報が40bytes、車両Aの過去の走行軌跡に関する情報及び走行計画情報が600bytes、周囲のオブジェクトの認識情報が600bytes、センサデータが3Mbytesと推定される。
【0042】
そして、データ量推定部403は、推定したデータ単位量に基づいて、1秒間当たりの最大データ量を推定する。例えば、車両Aの周囲に車両Bを含めて11台の車両が存在し、センサ102によって取得されるデータの種類が、8種類である場合、1秒間当たりの最大データ量は、
図3に示すように、24Mbytes+7,440bytesであると推定される。
【0043】
(通信環境判定方法)
次に、
図4~5を参照して、通信環境判定部404によって判定される、通信環境判定の一例について説明する。
【0044】
通信環境判定部404は、車両A及び車両Bの位置関係に基づいて、電波強度を推定する。電波強度とは電波の強さを示す指標である。車両A及び車両Bの位置関係の一例について、
図4を参照して説明する。
図4に示すシーンにおいて、車両Aは、一車線道路を直進している。車両Bは、片側3車線道路の中央車線を直進している。車両Aが走行している道路と、車両Bが走行している道路は交差する。車両A及び車両Bは、交差点から500m手前の地点を40km/hで走行している。車両Aの位置座標を(Xa、Ya)とし、車両Bの位置座標を(Xb、Yb)とした場合、車両Aと車両Bとの直線上の距離D(以下単に距離Dと称する)は、式1で表される。なお、位置座標(Xa、Ya)、(Xb、Yb)を初期位置とする。
【0045】
【0046】
車両A及び車両Bが将来走行する経路は、将来経路取得部401によって取得される。
図4に示すシーンでは、車両A及び車両Bが将来走行する経路は、直進経路である。位置予測部402は、将来経路取得部401によって取得された経路に基づいて、将来における車両A及び車両Bの位置関係を予測する。車両A及び車両Bは、40km/hで走行しているため、車両A及び車両Bが交差点に接近するにしたがい、距離Dは、徐々に短くなる。距離Dは、初期位置で最大値となり、交差点付近で最小値となる。距離Dに応じて、つまり、車両A及び車両Bの位置関係に応じて電波強度は変化する。そこで、通信環境判定部404は、距離Dの最大値から最小値までの距離ごとに、電波強度の減衰を評価する。なお、距離Dの最小値は、ゼロに設定されてもよい。電波強度の減衰の評価には、式2が用いられる。
【0047】
【0048】
ここで、Pt[dBm]は、送信機の実行輻射電力であり、一般に法規上の空中線電力上限値で定められる。Gr[dB]は、受信機のゲインである。λ[m]は、搬送波周波数の波長である。πは、円周率である。
【0049】
一般に、道路面と車両のアンテナの高さが異なるために路面反射波と直接通信波とが重なり合う。このため受信電力が、道路面からアンテナまでの距離に応じて大きく変動する現象が知られている。通信環境判定部404は、この現象を、式3及び式4を用いて評価する。
【0050】
【0051】
【0052】
ここで、htは、車両Aのアンテナの高さである。車両Aの位置情報にhtが含まれる場合はその値が用いられる。車両Aの位置情報にhtが含まれない場合、かつ車両Aが大型車両である場合、車両Aの高さに基づき、例えばhtは3.5mと設定される。これら以外の場合はセダンタイプの一般的な高さに基づき、例えばhtは1.55mと設定される。なお、大型車両は、例えば、トラック、バスなどである。なお、車両Aが大型車両であるか否かは、車両Aが車両Bに送信するデータに含まれてもよい。
【0053】
hrは、車両Bのアンテナの高さである。hrの設定についてはhtと同様であるため、説明を省略する。また、上記の式2~式4を用いた評価方法は、一般に知られているため、説明を省略する。
【0054】
電波強度を推定した後、通信環境判定部404は、通信部200の送受信データレートに応じた最低受信感度Pr_min[dBm]について評価を行い、送受信データレートで通信可能な距離範囲を評価する。具体的には、通信環境判定部404は、距離ごとに通信部200の受信強度を評価する。距離Dの解析間隔は、例えばITS周波数(5.9GHz帯)が用いられる場合、無線の中心周波数と受信電界強度の変動要因(大地反射の2波モデル)で生じる変曲点に基づいて、1mに設定される。つまり、距離ごととは、一例として、1mごとを意味する。
【0055】
評価結果を
図5に示す。
図5に示すように、通信環境は、環境レベル1~5に分類される。環境レベル1は、通信環境がもっとも良いことを意味し、環境レベル5は、通信環境がもっとも悪いことを意味する。経路のすべての地点(以下、全区間を称する場合がある)において受信強度が、受信感度の10倍より高い場合、環境レベル1に分類される。より詳しくは、受信強度が、最低受信電力の10倍より高い場合、環境レベル1に分類される。最低受信電力とは、通信に必要な受信品質を確保できる最小の受信電力を指す。
【0056】
また、全区間において受信強度が、受信感度の10倍より高い場合、環境レベル2に分類される。より詳しくは、受信強度が、平均受信電力の10倍より高い場合、環境レベル2に分類される。また、全区間において受信強度が、受信感度と同等、もしくは受信感度の10倍程度である場合、環境レベル3に分類される。
【0057】
経路の一部の地点(以下、一部の区間を称する場合がある)において受信強度が、受信感度と同等の場合、環境レベル4に分類される。また、一部の区間において受信強度が、受信感度以下の場合、環境レベル5に分類される。環境レベル1~3では、全区間で直接通信が可能である。一方、環境レベル4~5では、一部の区間で直接通信は困難である。なお、一部の区間において受信強度が受信感度以下となる場合、該当する区間が記録される。
【0058】
このように通信環境判定部404は、距離ごとに受信強度を評価した結果、全区間で受信強度が閾値を上回る場合、全区間で直接通信が可能と判定する。これにより、通信環境判定部404は、偶然に直接通信の初期接続が実現した場合、あるいは路面反射等の影響で急に減衰が発生する場合を想定し、相手方が通信しなくなったのか、一時的に通信が途絶えただけなのか判別できる。また、通信環境判定部404は、通信方式の変調方式が受信強度に応じて直接通信に切り替えられる可能性を推定し、環境レベル1では環境レベル3(例えば、変調方式QPSK)に対し変調効率が約16倍(64QAM)、環境レベル2に対し変調効率が約8倍(16QAM)と判定する。なお、閾値は、受信感度と定義されてもよい。
【0059】
また、通信環境判定部404は、直接通信で送信が可能なデータ量を推定する。具体的には、
図5に示すように、通信環境判定部404は、通信環境が環境レベル1であり、かつ周波数拡張が基準帯域幅に対して2倍である場合、データ転送見込み量は9,600バイトと算出する。
【0060】
次に、通信環境判定部404は、チャネル利用率(Channel Busy Rate)と、データ自動削除率に基づき、データ削減見込率を推定する。一般に直接通信ではチャネル利用率をV2X(Vehicle to Everything communication)で設定された基準の30~70%となるようコントロールされる。詳しくは、下記の文献を参照されたい。SAE J2945/1, Correction on congestion control for V2X sidelink communication in TS 36.321
【0061】
V2Xで設定された基準を超えた分のメッセージは、間引きされる。メッセージの間引きは、2つの指標の計測によって行われる。一つは、チャネル利用率の計測であり、もう一つはシーケンシャルなメッセージ受信監視(1秒間)に基づくメッセージ抜け計測である。
【0062】
まず、チャネル利用率の計測について説明する。通信環境判定部404は、車両Aの通信部100及び車両Bの通信部200に基づいて、チャネル利用率の現在状況を測定する。通信環境判定部404は、測定したチャネル利用率に応じて、現在の削減見込率をそれぞれ求める。通信環境判定部404は、チャネル利用率の悪い方の結果を採用する。次に、通信環境判定部404は、将来の経路上の混雑状況を推定する。具体的には、通信環境判定部404は、経路上で車両A及び車両Bのどちらかの前方に先行車が居る場合は混雑する可能性があると推定し、環境レベルを1つ下げて通信環境が悪くなると推定する(
図6参照)。
【0063】
次に、データ自動削除率について説明する。車両Aの通信環境が良好でない場合、メッセージは間引いて送信される。通信環境判定部404は、V2Vメッセージのカウンタ監視に基づいて、データ削除傾向を計測する。1~3回の間引きが1秒平均で発生したことを計測した場合、削減見込率を1/3と設定する。通信環境判定部404は、1秒間でメッセージがまったく届かないことを検出した場合は削除率を100%と設定する。また、通信環境判定部404は、5秒平均で間引き率がばらつく場合には2/3程度が削除されるものと設定する。
【0064】
通信環境判定部404は、例えば、
図6に示すようにチャネル利用率の計測値が18%で、その後混雑見込みがない場合は削減見込率を1/2とする。また、通信環境判定部404は、例えば、メッセージの間引きが1回あったことを検出し、その後混雑見込みがない場合は削減見込率を1/3とする。結果、全区間でデータ見込み量は、9,600×1/2×1/3で1,600bytesとなる。通信環境判定部404は、この1,600bytesが直接通信で送信が可能なデータ量と推定する。通信環境判定部404は、推定値(1,600bytes)を、可否判定部405へ出力する。
【0065】
可否判定部405は、データ量推定部403によって推定されたデータ量と、通信環境判定部404によって推定されたデータ量とを比較する。可否判定部405は、比較結果に基づいて、データ量推定部403によって推定されたデータ量の全てを直接通信で送信可能か否かを判定する。
図3で説明したように、データ量推定部403によって推定されたデータ量は、24Mbytes+7,440bytesである。一方、通信環境判定部404によって推定されたデータ量は、1,600bytesである。したがって、可否判定部405は、データ量推定部403によって推定されたデータ量の全てを直接通信で送信することはできないと判定する。可否判定部405は、判定結果を通信計画生成部406に出力する。
【0066】
通信計画生成部406は、可否判定部405から取得した判定結果に基づいて、車両Aが車両Bに送信するデータ量のうち、直接通信により送信することが可能なデータ量と、直接通信により送信することが不可能なデータ量とを特定する。本実施形態において、直接通信により送信することが可能なデータ量は、1,600bytesであり、直接通信により送信することが不可能なデータ量は、24Mbytes+5,840bytesである。通信計画生成部406は、直接通信により送信することが可能なデータ量を直接通信により送信する通信計画と、直接通信により送信することが不可能なデータ量を間接通信により送信する通信計画を作成する。
【0067】
また、通信計画生成部406は、優先度が高いデータほど、直接通信が選択されるように通信計画を作成する。車両Aは、1,600bytesのデータを直接通信で送信できるため、通信計画生成部406は、優先度が高いデータを選択して1,600bytes分のデータを作成する。優先度が高いデータについて、
図7を参照して説明する。本実施形態において、
図7に示すオーバーヘッドの優先度が一番高く、センサデータの優先度が一番低い。つまり、オーバーヘッドからセンサデータに向かって優先度が低くなる。
【0068】
オーバーヘッドと、車両Aの現在の位置情報を含む車両情報と、車両Aの過去の走行軌跡に関する情報及び走行計画情報とを足すと、
図7に示すように、840bytesとなる。よって、これらのデータは、直接通信で送ることができる。したがって、通信計画生成部406は、これらのデータが直接通信で送信されるように通信計画を作成する。直接通信により送信することが可能なデータ量の残りは、760bytesである。よって、他車両1台分の認識情報(600bytes)は、直接通信で送ることができる。以上より、通信計画生成部406は、オーバーヘッドと、車両Aの現在の位置情報を含む車両情報と、車両Aの過去の走行軌跡に関する情及び走行計画情報と、他車両1台分の認識情報が直接通信で送信されるように通信計画を作成する。つまり、直接通信で送信されるデータ量は、1,440bytesとなる。
図7に示すように、通信計画生成部406は、残りのデータ量(24Mbytes+6,000bytes)については間接通信で送信されるように通信計画を作成する。そして、通信計画生成部406は、作成した通信計画を、車両A及び車両Bに送信する。これにより、車両A及び車両Bは、直接通信を切断する前に予め間接通信へ接続しておくことができるため、スムーズなデータの共有が実現する。
【0069】
次に、
図8~9に示すフローチャートを参照して、車両A、車両B、及びサーバ400の動作例について説明する。
【0070】
ステップS101について、車両Aは、GPS受信機101を用いて車両Aの位置情報を検出する。処理はステップS103に進み、車両Aは、車両Bと共有するデータを検出する。車両Bと共有するデータとは、車両Aの位置情報、速度情報、進行方向に関する情報である。なお、車両Aの位置情報は、ステップS101で検出されている。車両Bと共有するデータには、他車両の識別番号、位置、速度、種類(車種)、高さ、進行方向、過去の走行軌跡、過去の走行軌跡に基づく将来の軌跡なども含まれる。処理はステップS105に進み、車両Aは、ステップS101及びステップS103で検出されたデータを車両Aの周囲にブロードキャスト送信する。
【0071】
処理はステップS107に進み、車両Bは、車両Aからデータを受信する。処理はステップS109に進み、車両Bは、GPS受信機201を用いて車両Bの位置情報を検出する。処理はステップS111に進み、車両Bは、車両Aの位置情報、車両Bの位置情報、及び車両Aとの間で直接通信が確立したことを示す信号などを、サーバ400に送信する。
【0072】
処理はステップS113に進み、サーバ400は、車両Bからデータを受信する。処理は、ステップS115に進み、サーバ400は、車両A及び車両Bの走行計画情報を取得する。ステップS117に進み、サーバ400は、ステップS115で取得された走行計画情報に基づいて、将来における車両A及び車両Bの位置関係を予測する。処理はステップS119に進み、サーバ400は、車両Aが車両Bに直接通信で送信したデータ量について、1秒間当たりのデータ量の推定を行う。本実施形態では、1秒間当たりの最大データ量は、
図3に示すように、24Mbytes+7,440bytesであると推定される。
【0073】
処理はステップS121に進み、サーバ400は、ステップS117で予測された将来の車両A及び車両Bの位置関係に基づいて、車両Aと車両Bとの間における将来の通信環境を判定する。この結果、通信環境は、
図5に示すように、環境レベル1~5に分類される。また、サーバ400は、ステップS119で推定されたデータ量のうち、直接通信で送信が可能なデータ量(上限値)を推定する。この推定には、チャネル利用率及びデータ自動削除率が用いられる。
【0074】
処理は、ステップS125に進み、サーバ400は、ステップS119で推定されたデータ量と、ステップS123で推定されたデータ量とを比較する。サーバ400は、比較結果に基づいて、ステップS119で推定されたデータ量の全てを直接通信で送信可能か否かを判定する。ステップS119で推定されたデータ量の全てを直接通信で送信可能である場合(ステップS125でYes)、車両A及び車両Bは引き続き直接通信を行う。
【0075】
一方、ステップS119で推定されたデータ量の全てを直接通信で送信することが不可能な場合(ステップS125でNo)、処理はステップS127に進み、サーバ400は、車両Aが車両Bに送信するデータ量のうち、直接通信により送信することが可能なデータ量と、直接通信により送信することが不可能なデータ量とを特定する。そしてサーバ400は、直接通信により送信することが可能なデータ量を直接通信により送信する通信計画と、直接通信により送信することが不可能なデータ量を間接通信により送信する通信計画を作成する。さらにサーバ400は、優先度が高いデータほど、直接通信が選択されるように通信計画を作成する。
【0076】
処理はステップS129に進み、サーバ400は、ステップS127で作成された通信計画を車両A及び車両Bに送信する。処理はステップS131、S133に進み、車両A及び車両Bは、通信計画を受信する。処理はステップS135、S137に進み、車両A及び車両Bは、通信計画に基づいて通信を行う。
【0077】
(作用・効果)
第1実施形態によれば、将来の通信環境が判定され、送信すべきデータ量を直接通信で送信可能か否か判定される。判定結果に基づいて、直接通信及び間接通信のそれぞれについて通信計画が作成され、車両A及び車両Bに通信計画が送信される。これにより、車両A及び車両Bは、直接通信を切断する前に予め間接通信へ接続しておくことができる。これにより、直接通信から間接通信へ切り替えた際の初期接続に要する時間が少なくなるため、スムーズなデータの共有が実現する。また、車両Aと車両Bとの間で直接通信が確立したとき、その後の将来走行する経路において、直接通信が維持できるか否か判定される。将来、直接通信が維持できるならば、直接通信で位置情報などが共有されるため、例えば、自動運転支援に係る計画を余裕もって策定することが可能になる。
【0078】
また、本実施形態によれば、複数のデータの中から優先度が高いデータほど、直接通信が選択されるように通信計画が作成される。上述したように、直接通信は、低遅延、かつ簡易な構成で相手方へデータを送信することができるため、優先度が高いデータの共有が高速化する。
【0079】
また、本実施形態によれば、車両Bに送信するデータ量のうち、直接通信により送信することが可能なデータ量と、直接通信により送信することが不可能なデータ量とが特定される。そして、直接通信により送信することが可能なデータ量を直接通信により送信する通信計画と、直接通信により送信することが不可能なデータ量を間接通信により送信する通信計画が作成される。早めに共有したいデータを直接通信で送ることができ、残りのデータを間接通信で送ることができる。
【0080】
(第2実施形態)
次に、
図10を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なるのは、サーバ400が、道路情報取得部407と混雑推定部408をさらに備えることである。第1実施形態と重複する構成については符号を引用してその説明は省略する。以下、相違点を中心に説明する。
【0081】
道路情報取得部407は、地図情報(道路構造、道路の車線数、道路上の建造物などを含む)、渋滞情報、近隣の駐車場の空き状況、事故情報、工事情報、信号情報などを取得する。道路情報取得部407は、これらの情報を車両Bから取得してもよく、インターネット上のクラウドから取得してもよい。車両Bは、これらの情報をV2I(VEHICLE TO INFRASTRUCTURE)によって取得して、サーバ400に提供することができる。V2Iとは、車両と、道路に設置された通信設備との間で情報をやり取りする技術であり、路車間通信と呼ばれることがある。さらに車両Bは、V2Iを用いて先行車に関する情報を取得することもできる。なお、車両Bは図示しないセンサを用いて先行車に関する情報を取得してもよい。また、車両Bは図示しないセンサを用いて、車両Bの周囲の車両が車線変更するか否かを検出することができる。例えば、車両Bは、周囲の車両の方向指示器の点灯の有無を検出することにより、車線変更の有無を検出することができる。なお、車両Aによって検出された情報に、これらの情報が含まれてもよい。道路情報取得部407は、取得した情報を混雑推定部408に出力する。
【0082】
混雑推定部408は、道路情報取得部407から取得した情報に基づいて、車両A及び車両Bが将来走行する経路の混雑を推定する。この点について
図11を参照して説明する。
図11に示す例では、車両Bが将来走行する経路の混雑について説明するが、車両Aについても同様である。
図11に示すように、車両Bの前方に先行車Cが存在し、かつ車両Bの速度が規定速度より遅い場合、車両Bが将来走行する経路は混雑すると推定される。あるいは、
図11に示すように、車両Bが将来走行する経路上の信号500が赤である場合、車両Bが将来走行する経路は混雑すると推定される。あるいは、車両Bが将来走行する経路上の近隣の駐車場が満車である場合、車両Bが将来走行する経路は混雑すると推定される。あるいは、車両Bが将来走行する経路上で渋滞情報が検出された場合、車両Bが将来走行する経路は混雑すると推定される。あるいは、車両Bが将来走行する経路上で事故情報もしくは工事情報が検出された場合、車両Bが将来走行する経路は混雑すると推定される。あるいは、車両Bが将来走行する経路上において、他車両の車線変更が検出された場合、車両Bが将来走行する経路は混雑すると推定される。混雑推定部408は、推定結果を通信環境判定部404に出力する。
【0083】
通信環境判定部404は、混雑推定部408から取得した情報に基づいて、チャネル利用率計測結果を補正する。補正方法の一例として、通信環境判定部404は、車線数と、混雑度と、車載器の普及率とに基づいて、チャネル利用率計測結果を補正する。本実施形態において、車載器とは、通信部100及び通信部200のような直接通信あるいは間接通信を行うための機器である。補正式は、交差点までの距離/(車頭時間×車速)×車線数×普及率、と表現される。
図11に示すシーンにおいて、次のことを仮定する。すなわち、車両Bから交差点までの距離は400m、現在のチャネル利用率は10%、車頭時間は3秒、車両Bの車速は40km/h、車線数は3車線、車両Bの周囲の車両の台数は46台、車載器の普及率は50%、と仮定する。この仮定を上記補正式に適用すると、補正後のチャネル利用率は23%となる。したがって、通信環境判定部404は、通信環境を環境レベル2に変更する(
図5参照)。なお、チャネル利用率は、車両1台あたりの1ミリ秒のチャネルを占有した場合を想定する。また、補正後のチャネル利用率が、現在のチャネル利用率よりも小さい場合は現在のチャネル利用率が用いられる。普及率のデータ生成は、既知の統計値あるいはクラウドサーバ上からの動向、過去のデータ通信状況に基づく推定等によって行われてもよい。
【0084】
次に、
図12~14に示すフローチャートを参照して、車両A、車両B、及びサーバ400の動作例について説明する。ただし、ステップS201~221、223~237の処理は、
図8~9に示すステップS101~121、123~137に示す処理と同様であるため、説明を省略する。
【0085】
ステップS221aにおいて、サーバ400は、車両Bの速度が規定速度より遅いか否か判定する。車両Bの速度が規定速度より遅い場合(ステップS221aでYes)、処理はステップS221bに進む。一方、車両Bの速度が規定速度である場合(ステップS221aでNo)、処理はステップS221cに進む。ステップS221bにおいて、サーバ400は、車両Bの前方に先行車Cが存在するか否かを判定する。車両Bの前方に先行車Cが存在する場合(ステップS221bでYes)、処理はステップS221hに進む。一方、車両Bの前方に先行車Cが存在しない場合(ステップS221bでNo)、処理はステップS221cに進む。
【0086】
ステップS221cにおいて、サーバ400は、車両Bが将来走行する経路上の信号500が青か否かを判定する。車両Bが将来走行する経路上の信号500が青である場合(ステップS221cでYes)、処理はステップS221dに進む。一方、車両Bが将来走行する経路上の信号500が赤である場合(ステップS221cでNo)、処理はステップS221hに進む。ステップS221dにおいて、サーバ400は、車両Bが将来走行する経路上の近隣の駐車場に空きがあるか否かを判定する。駐車場に空きがある場合(ステップS221dでYes)、処理はステップS221eに進む。一方、駐車場が満車である場合(ステップS221dでNo)、処理はステップS221hに進む。
【0087】
ステップS221eにおいて、サーバ400は、車両Bが将来走行する経路上に渋滞情報があるか否かを判定する。渋滞情報がある場合(ステップS221eでYes)、処理はステップS221fに進む。一方、渋滞情報がない場合(ステップS221eでNo)、処理はステップS221hに進む。ステップS221fにおいて、サーバ400は、車両Bが将来走行する経路上に事故情報もしくは工事情報があるか否かを判定する。事故情報もしくは工事情報がある場合(ステップS221fでYes)、処理はステップS221gに進む。一方、渋滞情報がない場合(ステップS221fでNo)、処理はステップS221hに進む。
【0088】
ステップS221gにおいて、サーバ400は、車両Bが将来走行する経路上において、他車両が車線変更するか否かを判定する。他車両が車線変更する場合(ステップS221gでYes)、処理はステップS223に進む。一方、他車両が車線変更しない場合(ステップS221gでNo)、処理はステップS221hに進む。処理がステップS221hに進んだということは、車両Bが将来走行する経路は混雑すると推定されたことを意味する。よって、ステップS221hにおいて、サーバ400は、車線数と、混雑度と、車載器の普及率とに基づいて、チャネル利用率計測結果を補正する。その後、処理はステップS223に進む。
【0089】
(作用・効果)
このように、通信環境判定部404は、混雑の推定結果に基づいてチャネル利用率を補正することにより、精度よく通信環境を判定することができる。
【0090】
(第3実施形態)
次に、
図15を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態が第2実施形態と異なるのは、車両Aが、送信順決定部113をさらに備えることである。第2実施形態と重複する構成については符号を引用してその説明は省略する。以下、相違点を中心に説明する。
【0091】
送信順決定部113は、車両Bに送信するデータの送信順を決定する。具体的には、
図16に示すように、送信順決定部113は、車両Bから交差点までの距離、車両Bの速度などに基づいて、車両Aが検出した周囲オブジェクトの情報の中から、車両Bにとって注意を要する情報の優先度を決定する。そして、送信順決定部113は、優先度の高いデータから順番に送信することを決定する。通信部100は、送信順決定部113によって決定された順番で車両Bにデータを送信する。なお、優先度が高いデータほど、直接通信が選択されてもよい。周囲オブジェクトとは、
図16に示すように、車両Aの前方を走行する先行車C、先々行車Dである。周囲オブジェクトの情報とは、先行車C及び先々行車Dの位置情報、速度情報などである。
【0092】
送信順の決定方法の一例として、交差点に到着する時間(以下、到達予想時間と称する)を用いることができる。例えば、
図16に示すように、先行車Cは交差点から350m手前の地点を40km/hで走行し、先々行車Dは交差点から150m手前の地点を50km/hで走行し、車両Bは交差点から400m手前の地点を45km/hで走行していると仮定する。なお、車両B、先行車C、及び先々行車Dの位置情報、速度情報などは、予め車両Aによって検出されているものとする。この場合、到達予想時間は、式5で表される。
【0093】
[数5]
到達予想時間=物体から交差点までの距離/物体の速度・・・(5)
【0094】
送信順決定部113は、到達予想時間が早い物体のデータから先に送信することを決定する。ここで、上記式5により、先行車Cの到達予想時間は約32秒、先々行車Dの到達予想時間は約11秒となる。よって、先々行車Dは、先行車Cより先に交差点に到着する。よって、送信順決定部113は、先々行車D、先行車Cの順でデータを送信する。つまり、送信順決定部113は、先々行車Dのほうが先行車Cより優先度が高いと判断する。
【0095】
また、送信順決定部113は、物体と車両Bとの相対距離に基づいて、データの優先度を決定してもよい。具体的には、送信順決定部113は、物体と車両Bとの相対距離が短いほど、優先度を高くしてもよい。例えば、
図16に示すように、先々行車Dと車両Bとの相対距離は、550mであり、先行車Cと車両Bとの相対距離は、750mである。この場合、送信順決定部113は、先々行車Dのほうが先行車Cより優先度が高いと判断する。
【0096】
また、送信順決定部113は、物体と車両Bとの相対速度に基づいて、データの優先度を決定してもよい。相対速度の基準は、物体でもよく車両Bでもよい。送信順決定部113は、物体と車両Bとの相対速度が早いほど、優先度を高くしてもよい。例えば、
図16に示す例では、先々行車Dと車両Bとが対向しているため、先々行車Dと車両Bとの相対速度は、95km/hとなる。同様に、先行車Cと車両Bも対向しているため、先行車Cと車両Bとの相対速度は、85km/hとなる。この場合、送信順決定部113は、先々行車Dのほうが先行車Cより優先度が高いと判断する。
【0097】
また、送信順決定部113は、物体の種類に基づいて、データの優先度を決定してもよい。例えば、
図16に示す先々行車Dがバス、トラックなどの大型車両であり、
図16に示す先行車Cが普通自動である場合、送信順決定部113は、先々行車Dのほうが先行車Cより優先度が高いと判断する。
【0098】
また、送信順決定部113は、交差点の交通規則及び交錯可能性に基づいて、データの優先度を決定してもよい。具体的には、送信順決定部113は、交差点の交通規則及び交錯可能性に基づいて、優先度を5段階(レベル1~レベル5)で評価する。優先度は、レベル1がもっとも高く、レベル5がもっとも低い。詳細について、
図17を参照して説明する。
図17は、
図16に示すシーンを用いる。
【0099】
図17に示すように、車両Bが対向道路上を走行しており、交差点を右折する場合、かつ、車両A、先行車C、及び先々行車Dが交差点を直進する場合、車両Bは交差点において非優先側となる。車両Bは、先々行車Dまたは先行車Cと交錯する可能性がある。したがって、送信順決定部113は、先行車C、及び先々行車Dのデータの優先度は、レベル1と判断する。
【0100】
一方、車両Bが対向道路上を走行しており、交差点を右折する場合、かつ、車両A、先行車C、及び先々行車Dも交差点を右折する場合、車両Bが、先々行車Dまたは先行車Cと交錯する可能性はほぼない。したがって、送信順決定部113は、先行車C、及び先々行車Dのデータの優先度は、レベル5と判断する。同様に送信順決定部113は、交差点における交錯可能性、及び交差点での優先、非優先に基づいて、優先度を決定する。送信順決定部113は、優先度が高いデータほど、直接通信が選択されるように決定する。
図17に示す例では、送信順決定部113は、例えば、優先度がレベル1またはレベル2と判断した場合、先々行車D及び先行車Cのデータが直接通信が選択されるように決定する。
【0101】
このように、送信順決定部113は、物体(先行車C及び先々行車D)が交差点に到達する時間、物体と車両Bとの相対距離、物体と車両Bとの相対速度、物体の種類、交差点の交通規則のうち、少なくとも1つに応じて、優先度を決定する。そして、送信順決定部113は、優先度が高いデータほど、直接通信が選択されるように決定する。これにより、優先度が高いデータの共有が高速化する。
【0102】
上述の実施形態に記載される各機能は、1または複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理回路は、また、記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や回路部品等の装置を含む。
【0103】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0104】
サーバ400の通信環境判定部404は、将来における直接通信の通信環境のうち、所定の基準を満たさない期間を特定してもよい。所定の基準とは、直接通信が困難であることを示す指標であり、例えば
図5に示すように、受信強度が通信部100の受信感度以下となる場合である。そして、通信環境判定部404は、所定の基準を満たさない期間のみ、直接通信から間接通信に切り替えるための通信計画を作成してもよい。これにより、通信環境が悪化した場合のみ直接通信から間接通信に切り替えることができ、通信環境に応じたスムーズなデータの共有が実現する。
【0105】
また、通信環境判定部404は、チャネルの多重化が検知された場合、直接通信から間接通信に切り替えるための通信計画を作成してもよい。これにより、チャネルの多重化が検知された場合のみ直接通信から間接通信に切り替えることができ、通信環境に応じたスムーズなデータの共有が実現する。
【0106】
また、サーバ400は、少なくとも車両A及び車両Bの一方から通信計画の可否に関するデータを受信してもよい。通信計画の可否に関するデータとは、通信計画にしたがって、直接通信から間接通信へ切り替えることができたか否かに関するデータである。通信計画の可否に関するデータを受信することにより、一方の車載器の処理を共用できる。
【0107】
なお、上述した実施例では、通信環境の判定、通信計画の作成などはサーバ400によって実施されるが、これに限定されない。例えば、
図18に示すように、通信環境の判定、通信計画の作成などは、車両Aによって実施されてもよい。
図18に示すように、車両Aのコントローラ110が備える将来経路取得部114、位置予測部115、データ量推定部116、通信環境判定部117、可否判定部118、及び通信計画生成部119の各機能は、
図2に示す将来経路取得部401、位置予測部402、データ量推定部403、通信環境判定部404、可否判定部405、通信計画生成部406の各機能と同様である。
【0108】
すなわち、コントローラ110は、移動体及び他の移動体が将来走行する位置情報と、将来走行する位置情報に応じた、将来における直接通信の通信環境情報と、移動体が将来、他の移動体に送信するデータ量情報、または、他の移動体から受信するデータ量情報とに基づいて、直接通信により、データ量情報に係るデータ量を送信する、または受信することが可能か否かを判定し、直接通信により、データ量を送信する、または受信することができないと判定した場合、直接通信及び間接通信の少なくともいずれかについて、移動体と他の移動体との通信計画情報を作成し、他の移動体に通信計画情報を送信することができる。通信計画情報とは、通信計画に係る情報である。上述した通信計画は、通信計画情報と読み替えられてもよい。データ量情報とは、データ量に係る情報である。また、通信環境情報は、受信強度、移動速度、多重反射、チャネル利用率または自動削除率チャネル利用率のいずれか1つを含む。
【0109】
また、コントローラ110は、複数のデータの中から優先度に基づいて、直接通信を優先的に選択して通信計画情報を作成することができる。また、コントローラ110は、他の移動体に送信するデータ量のうち、直接通信により送信することが可能なデータ量または直接通信により送信することが不可能なデータ量を特定し、直接通信により送信することが可能なデータを直接通信により送信する通信計画情報または直接通信により送信することが不可能なデータを間接通信により送信する通信計画情報を作成することができる。また、コントローラ110は、チャネルの多重化の検知または予測に基づいて、直接通信から間接通信に切り替えるための通信計画情報を作成することができる。
【0110】
図18に示す車両Aのコントローラ110は、将来における直接通信の通信環境のうち、所定の基準を満たさない期間を特定してもよい。そして、車両Aのコントローラ110は、所定の基準を満たさない期間のみ、直接通信から間接通信に切り替えるための通信計画を作成してもよい。また、車両Aのコントローラ110は、チャネルの多重化が検知された場合、直接通信から間接通信に切り替えるための通信計画を作成してもよい。また、車両Aのコントローラ110は、車両Bから通信計画の可否に関するデータを受信してもよい。
【0111】
なお、通信環境の判定、通信計画の作成などは、車両Bによって実施されてもよい。あるいは、通信環境の判定、通信計画の作成などは、携帯電話網上のモバイルエッジコンピュータによって実施されてもよく、インターネット上のサーバによって実施されてもよい。
【符号の説明】
【0112】
100 通信部
101 GPS受信機
102 センサ
110 コントローラ
111 通信制御部
112 データ生成部
113 送信順決定部
114 将来経路取得部
115 位置予測部
116 データ量推定部
117 通信環境判定部
118 可否判定部
119 通信計画生成部
200 通信部
201 GPS受信機
220 コントローラ
221 通信制御部
222 データ受信部
300 基地局
310 携帯電話網
400 サーバ
401 将来経路取得部
402 位置予測部
403 データ量推定部
404 通信環境判定部
405 可否判定部
406 通信計画生成部
407 道路情報取得部
408 混雑推定部
【手続補正書】
【提出日】2022-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、移動体及び他の移動体が将来走行する位置情報に基づいて、直接通信により他の移動体に送信するデータ量を特定し、データ量を送信する、または受信することができないと判定した場合、直接通信及び間接通信の少なくともいずれかについて、移動体と他の移動体との通信計画情報を作成し、他の移動体に通信計画情報を送信する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、前記移動体と他の移動体との直接通信、または移動しない固定の通信装置を経由した、前記移動体と他の移動体との間接通信を行う通信部と、前記通信部によって行われる前記直接通信及び前記間接通信を制御するコントローラとを備える情報処理装置であって、
前記コントローラは、
前記移動体及び前記他の移動体が将来走行する位置情報に基づいて、前記直接通信により前記他の移動体に送信するデータ量を特定し、前記データ量を送信する、または受信することができないと判定した場合、前記直接通信及び前記間接通信の少なくともいずれかについて、前記移動体と前記他の移動体との通信計画情報を作成し、
前記他の移動体に前記通信計画情報を送信する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記他の移動体に送信するデータ量のうち、前記直接通信により送信することが可能なデータ量または前記直接通信により送信することが不可能なデータ量を特定し、
前記直接通信により送信することが可能なデータを前記直接通信により送信する通信計画情報または前記直接通信により送信することが不可能なデータを前記間接通信により送信する通信計画情報を作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記他の移動体から、前記通信計画情報に係る通信計画の可否に関するデータを受信する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記通信計画情報は、直接通信により送信することが可能なデータ量を直接通信により送信する通信計画と、直接通信により送信することが不可能なデータ量を間接通信により送信する通信計画を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
移動体に搭載され、前記移動体と他の移動体との直接通信、または移動しない固定の通信装置を経由した、前記移動体と他の移動体との間接通信を行う通信部と、前記通信部によって行われる前記直接通信及び前記間接通信を制御するコントローラとを備える情報処理装置の情報処理方法であって、
前記移動体及び前記他の移動体が将来走行する位置情報に基づいて、前記直接通信により前記他の移動体に送信するデータ量を特定し、前記データ量を送信する、または受信することができないと判定した場合、前記直接通信及び前記間接通信の少なくともいずれかについて、前記移動体と前記他の移動体との通信計画情報を作成し、
前記他の移動体に前記通信計画情報を送信する
ことを特徴とする情報処理方法。