(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161987
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】アスベスト除去装置、アスベスト除去システム及びアスベスト除去方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20221014BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
E04G23/02 Z
E04G23/08 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129416
(22)【出願日】2022-08-15
(62)【分割の表示】P 2022073174の分割
【原出願日】2019-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】522294202
【氏名又は名称】株式会社日本環境エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】野口 茂一
(57)【要約】
【課題】使用する液体を抑制して、建築物に付着したアスベストを除去することができるようにしたアスベスト除去装置、アスベスト除去システム及びアスベスト除去方法を提供する。
【解決手段】アスベスト除去装置1は、建築物(壁面W)に付着したアスベスト層Aを覆うことで閉鎖空間Sを形成するケーシング11と、アスベスト層Aを剥離するための液体(水)をミストとして閉鎖空間S内に噴射する1個以上のノズル12と、を備えている。ケーシング11は、ノズル12に液体を供給するための液体供給ホース16を接続する供給用接続口116と、閉鎖空間S内で壁面Wから剥離して粉砕されたアスベストとミストとが合体した汚染物を閉鎖空間S内から排出するための汚染物排出ホース19を接続する排出用接続口119と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に付着したアスベスト層を覆うことで閉鎖空間を形成するケーシングと、前記アスベスト層を剥離するための液体をミストとして前記閉鎖空間内に噴射する1個以上のノズルと、を備え、
前記ケーシングは、
前記ノズルに前記液体を供給するための液体供給ホースを接続する供給用接続口と、
前記閉鎖空間内で前記建築物から剥離して粉砕されたアスベストが前記ミストに付着した汚染物を前記閉鎖空間内から排出するための汚染物排出ホースを接続する排出用接続口と、
を備えているアスベスト除去装置。
【請求項2】
前記供給用接続口に接続される液体供給ホースと、
前記排出用接続口に接続される汚染物排出ホースと、
を備えている、
請求項1に記載のアスベスト除去装置。
【請求項3】
前記ノズルをケーシング内で回転させるノズルヘッドを備えている、
請求項1又は2に記載のアスベスト除去装置。
【請求項4】
前記ノズルは、回転する前記ノズルヘッドの中心からそれぞれの方向に複数個配置され、中心からのそれぞれのノズルまでの距離が異なっている、
請求項3に記載のアスベスト除去装置。
【請求項5】
前記液体をミストにするための高圧エアを前記ノズルに供給するためのエアホースを接続するエアホース接続口と、
前記高圧エアの圧力を弱めるための排気ポートと、
を備えている、
請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載のアスベスト除去装置。
【請求項6】
前記ノズルから噴射されるミストの圧力は、100~300MPaである、
請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載のアスベスト除去装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちいずれか一項に記載のアスベスト除去装置と、前記排出用接続口から排出された前記汚染物を貯留し、汚染物中の不純物が下層に沈殿及び上層に浮上して、不純物を含まない循環水が中間層に分離する貯水槽と、を備え、
前記貯水槽に貯留された循環水を前記液体供給ホースによって前記アスベストを剥離するための液体として使用するアスベスト除去システム。
【請求項8】
建築物に付着したアスベストをケーシングによって覆い、閉鎖空間を形成する工程と、
前記アスベスト層を建築物から剥離するためのミストを前記閉鎖空間内に噴射する工程と、
前記閉鎖空間内で建築物から剥離して粉砕されたアスベストが前記ミストに付着した汚染物を前記閉鎖空間内から排出する工程と、
を含むアスベスト除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に付着したアスベストを除去するためのアスベスト除去装置、アスベスト除去システム及びアスベスト除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種建築物の壁面や屋根、梁などには、耐火性や断熱性、防音性などの特性が良好なアスベストが付着されていた。建築物を解体するに際して、アスベストが予め除去される。アスベストは、非常に軽量であるため、飛散しやすい。アスベストは、肺癌や肺線維症、中皮腫などの疾患の原因となる。したがって、アスベストが飛散しないようにして、アスベストを壁面などから除去できるようにしたアスベスト除去装置が種々提供されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ウォータジェットによってアスベストを効率よく回収するアスベスト除去装置が記載されている。このアスベスト除去装置は、吸引手段とノズルとを備えている。吸引手段は、筺体と吸引ホースとを備えている。
【0004】
筺体は、内部空間を有する箱型形状である。筺体の枠状の底部は、アスベスト層を形成した建築物の壁面などの構造物に宛がわれる。筺体の底部と隣り合う前面側の下端部には、アスベスト導入口が設けられている。吸引ホースは、筺体の底部と隣り合う後面に接続され、筐体内の内部空間内を排気しながら内部空間内を負圧に保つ。ノズルは、筐体のアスベスト導入口に向けてウォータジェットを噴射する。
【0005】
ノズルから噴射されたウォータジェットは、水圧によってアスベスト層を粉砕すると同時に、粉砕されたアスベストをアスベスト導入口から内部空間内へ押し込む。粉砕されたアスベスト及びアスベストの粉砕に利用した水は、内部空間内に吸い込まれ、吸引ホースによって内部空間外へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたアスベスト除去装置は、ウォータジェットによってアスベスト層を粉砕する。このアスベスト除去装置は、多量の水を使用し、余剰水を含み、多量の排水を生じさせる。排水中に含まれるアスベストは、濾過装置によって濾過され、除去される。排水量が膨大であると、濾過装置が大掛かりとなり、広い作業スペースが必要となる。特に都心においては、大掛かりな濾過装置を設置できなかったり、広い作業スペースを確保できなかったりする。なお、アスベストを除去するため、薬品を水で希釈化した処理材を使用する場合があるが、本願では水や処理剤を含めて主として液体という。
【0008】
本発明は、使用する液体を抑制して、建築物に付着したアスベストを除去することができるようにしたアスベスト除去装置、アスベスト除去システム及びアスベスト除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るアスベスト除去装置は、建築物に付着したアスベストを覆うことで閉鎖空間を形成するケーシングと、前記アスベスト層を剥離するための液体をミストとして前記閉鎖空間内に噴射する1個以上のノズルと、を備え、前記ケーシングは、前記ノズルに前記液体を供給するための液体供給ホースを接続する供給用接続口と、前記閉鎖空間内で前記建築物から剥離して粉砕されたアスベストが前記ミストに付着した汚染物を前記閉鎖空間内から排出するための汚染物排出ホースを接続する排出用接続口と、を備えている。
【0010】
本発明に係るアスベスト除去装置の一態様は、前記供給用接続口に接続される液体供給ホースと、前記排出用接続口に接続される汚染物排出ホースと、を備えている。
【0011】
本発明に係るアスベスト除去装置の他態様は、前記ノズルを前記ケーシング内で回転させるノズルヘッドを備えている。
この場合において、前記ノズルは、回転する前記ノズルヘッドの中心からそれぞれの方向に複数個配置され、中心からのそれぞれのノズルまでの距離が異なっている。
【0012】
本発明に係るアスベスト除去装置の別の他態様は、前記液体をミストにするための高圧エアを前記ノズルに供給するためのエアホースを接続するエアホース接続口と、前記高圧エアの圧力を弱めるための排気ポートと、を備えている。
【0013】
本発明に係るアスベスト除去装置のさらに別の他態様として、前記ノズルから噴射されるミストの圧力は、100~300MPaである。
【0014】
本発明に係るアスベスト除去システムは、本発明に係るいずれかのアスベスト除去装置と、前記排出用接続口から排出された前記汚染物を貯留し、汚染物中の不純物が下層に沈殿及び上層に浮上して、不純物を含まない循環水が中間層に分離する貯水槽と、を備え、
前記貯水槽に貯留された循環水を前記液体供給ホースによって前記アスベストを剥離するための液体として使用する。
【0015】
本発明に係るアスベスト除去方法は、建築物に付着したアスベスト層をケーシングによって覆い、閉鎖空間を形成する工程と、前記アスベスト層を建築物から剥離するためのミストを前記閉鎖空間内に噴射する工程と、前記閉鎖空間内で前記建築物から剥離して粉砕されたアスベストが前記ミストに付着した汚染物を前記閉鎖空間内から排出する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、使用する液体を抑制して、建築物に付着したアスベストを除去することができるようにしたアスベスト除去装置、アスベスト除去システム及びアスベスト除去方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のアスベスト除去装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明のアスベスト除去装置の一実施形態を示す側面図である。
【
図3】本発明のアスベスト除去装置の一実施形態を示す正面図である。
【
図4】本発明のアスベスト除去装置の一実施形態を示す背面図である。
【
図5】本発明のアスベスト除去システムの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のアスベスト除去装置、アスベスト除去システム及びアスベスト除去方法の一実施形態について、
図1ないし
図5を参照しながら説明する。
図1は、本発明のアスベスト除去装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2は、本発明のアスベスト除去装置の一実施形態を示す側面図である。
図3は、本発明のアスベスト除去装置の一実施形態を示す正面図である。
図4は、本発明のアスベスト除去装置の一実施形態を示す背面図である。
図5は、本発明のアスベスト除去システムの一実施形態を示す概略図である。
【0019】
まず、アスベスト除去装置1の概要について説明する。
図1ないし
図4に示すように、アスベスト除去装置1は、壁面や屋根、梁など(以下、「壁面W」として説明する。)の各種建築物Wに付着したアスベスト層A(
図2参照)を覆うことで閉鎖空間S(
図4参照)を形成するケーシング11と、アスベスト層Aを壁面Wから剥離するための水や処理剤などの液体(以下、「水」として説明する。)をミストとして閉鎖空間S内に噴射する1個以上のノズル12と、を備えている。
【0020】
アスベスト除去装置1は、ノズル12に水を供給するための液体供給ホース16をさらに備えている。アスベスト除去装置1は、閉鎖空間S内で壁面Wから剥離して粉砕されアスベストがミストに付着した汚染物を前記閉鎖空間Sから排出するための汚染物排出ホース19をさらに備えている。
【0021】
以下、アスベスト除去装置1について詳細に説明する。ケーシング11は、アスベスト除去装置1が壁面Wに付着したアスベスト層Aを除去するとき(使用状態)においてアスベスト層Aに向き合う円盤状の基盤部111と、使用状態において基盤部111の外周縁からアスベスト層Aの方へ突出する円環状の周壁部112とを備えている。ケーシング11には、さらに、一対の棒状のハンドル113と、閉鎖空間Sの内外を気密及び水密に遮蔽するブラシ114と、3個以上のアジャスタ115と、を備えている。
【0022】
図1ないし
図3に示すように、一対のハンドル113は、基盤部111から離れてハ字状に配置される。各ハンドル113は、一対の棒状の支持具113aによって固定されている。各支持具113aは、基端部が周壁部112に固定され、先端部が基盤部111よりも突出し、ハンドル113を固定する。一対のハ字状のハンドル113は、使用状態において、幅狭側が上側に位置し、幅広側が下側に位置するように配置される。
【0023】
ブラシ114は、ケーシング11の周壁部112の端縁から環状に突出し、撓曲できるように柔軟性を有している。使用状態において、ブラシ114の先端部が壁面Wに付着したアスベスト層Aに密着することで、閉鎖空間Sの気密性及び水密性が維持される。アスベスト層Aがボルト付きの梁などに付着し、壁面Wにボルトなどの頭部が突出していても、ブラシ114が撓曲することで、閉鎖空間Sは、気密性及び水密性が維持される。
【0024】
アジャスタ115は、ブラシ114の先端部がアスベスト層Aに密着するようにアスベスト層Aからのケーシング11の位置を調整する。アジャスタ115は、ケーシング11の周壁部112に固定されたL字型のブラケット115aと、ケーシング11の周壁部112に沿うようにブラケット115aに取り付けられた軸状部材115bとを備えている。軸状部材115bの基端側は、ブラケット115aに対して固定位置が調整できるように雄ネジが形成されている。雄ネジは、ナット115cによってブラケット115aに固定される。軸状部材115bの先端側は、アスベスト層Aに点接触するように曲面状に形成されている。例えば、軸状部材115bの先端部に回転し、先端部のみ露出するボールを装備し、アスベスト層A上をスムーズに移動できるようにしてもよい。
【0025】
液体供給ホース16から水がノズル12に供給される。そのため、ケーシング11の基盤部111の中心に液体供給ホース16の供給用接続口116が設けられている。液体供給ホース16と供給用接続口116とは、ロータリージョイントによって接続され、液体供給ホース16の接続部が搖動できるようにされている。液体供給ホース16は、可撓性を有している。
【0026】
液体供給ホース16から供給された水は、ノズル12によってミストとして噴射される。
図4に示すように、複数個のノズル12は、ケーシング11内で回転する棒状のノズルヘッド121に取り付けられる。液体供給ホース16の供給用接続口116とノズル12とが連通するように、ノズルヘッド121内には管路(図示せず)が設けられている。
【0027】
ノズルヘッド121は、その中心が基盤部111の中心に回転自在に軸支される。ノズル12は、例えばノズルヘッド121の中心からそれぞれの先端側に3個ずつ合計6個装着される。ただし、中心からのそれぞれのノズル12までの距離が異なり、ノズルヘッド121が回転したときに、ミストがアスベスト層Aに対して6重円を描くように噴射される。
【0028】
ノズル12からミストが噴射されるようにするため、ケーシング11の基盤部111は、高圧のエアを供給するためのエアホース17を接続するエアホース接続口117を備えている。エアホース接続口117とノズル12とが連通するように、ノズルヘッド121内に管路(図示せず)が設けられている。したがって、ノズルヘッド121内には、水が流れる管路と、高圧の空気が流れる管路とが設けられている。ケーシング11の基盤部111は、エアホース接続口117に隣接して排気ポート118を備えている。排気ポート118は、ミストの生成に使われなかった高圧の空気のみが逃がされる。なお、エアホース17から供給される高圧のエアは、ノズルヘッド121を回転させる動力源としても使用される。
【0029】
ミストは、スイッチ15が押されることで、噴射するようにされている。スイッチ15が押されると、ノズルヘッド121が回転する。
図3に示すように、スイッチ15は、各ハンドル113の中央部に設けられる。両ハンドル113のスイッチ15がともに押されることで、水が液体供給ホース16からノズル12に供給され、高圧の空気がエアホース17からノズル12に供給され、ノズル12内で高圧の水と高圧の空気とが衝突し、水が微細化され、多数の水の微粒子を含むミストが形成され、ノズル12から100~300MPa程度の圧力(高圧)で噴射される。
【0030】
高圧に噴射されたミストは、壁面Wに付着したアスベスト層Aに吹き付けられる。このアスベスト層Aは、壁面Wから剥離し、粉砕され、粉々のアスベストになる。粉々のアスベストがミストに付着し、泥のように澱んだような濃い液体のような汚染物(図示せず)となる。この汚染物は、閉鎖空間S内から汚染物排出ホース19によって排出される。ケーシング11の周壁部112には、汚染物排出ホース19を接続する排出用接続口119が備えられている。排出用接続口119は、使用状態において、下側から導出されるような位置に設けられる。汚染物排出ホース19は、液体供給ホース16よりも大径で、柔軟性に富む蛇腹ホースである。
【0031】
次に、アスベスト除去装置1を含むアスベスト除去システムについて説明する。
図5に示すように、アスベスト除去システムは、アスベスト除去装置1以外に、貯水槽2と、バキューム装置3と、水タンク4と、高圧ポンプ5と、エアコンプレッサ6と、処理装置7と、吸水ホース29を備えている。
【0032】
アスベスト除去装置1と貯水槽2との間には、バキューム装置3が設置されている。アスベスト除去装置1とバキューム装置3との間と、バキューム装置3と貯水槽2との間に汚染物排出ホース19が配備される。この汚染物排出ホース19によって、閉鎖空間S内の汚染物が貯水槽2に貯留される。
【0033】
貯水槽2内では、貯留された汚染物中の重い不純物が下層に沈殿し、軽い不純物が上層に浮上して、不純物を含まない循環水が中間層に分離する。アスベストを含む不純物は、処理装置7に移され、アスベストが除去される。循環水は、吸水ホース29によって汲み取られる。吸水ホース29の上流端が貯水槽2の上側から沈め込まれてもよいし、貯水槽2の中間層に連通する吸水ホース29の接続口を設け、この接続口に吸水ホース29を接続してもよい。循環水は、吸水ホース29によって、水タンク4に供給される。
【0034】
水タンク4には、水道水と循環水とが貯留される。水タンク4には、循環水だけでなく水道水が補給される。高圧ポンプ5は、水タンク4に貯留された水(循環水を含む。)をノズル12まで届くように水タンク4に隣接して設置される。エアコンプレッサ6は、エアホース17によって高圧エアをノズル12に供給するため、エアホース17の上流端が接続される。
【0035】
ここで、アスベスト除去方法について説明する。作業者Mがアスベスト除去装置1のハンドル113を掴み、アジャスタ115の先端部を壁面Wに付着したアスベスト層Aに宛がう。この状態において、ブラシ114の先端部がアスベスト層Aに密着する。作業者Mが各ハンドル113に設けられた各スイッチ15をともに押すことで、液体供給ホース16に水が吸い込まれ、エアホース17に高圧の空気が吸い込まれ、ノズル12から高圧のミストが噴射される。余分な高圧の空気は、排気ポート118から排気される。
【0036】
同時にノズルヘッド121が高圧の空気によって回転する。複数個のノズル12は、各ノズル12に異なる距離で反対方向に向けられたノズルヘッド121に配置されている。したがって、ミストは、閉鎖空間S内で面状になってアスベスト層Aに向けて噴射される。アスベスト層Aは、高圧のミストが噴射されることで、壁面Wから剥離し、粉砕され、粉々のアスベストとなる。
【0037】
このアスベストは、閉鎖空間S内でミストと入り混じる。アスベストがミストに付着することで、泥のように澱んだ濃い液体のような汚染物が生成される。閉鎖空間S内には、ミストが噴射されることで、余剰水が生成されない。汚染物は、閉鎖空間S内から汚染物排出ホース19へ排出される。
【0038】
作業者Mがケーシング11を壁面Wに沿って徐々に移動することで、壁面Wに付着したアスベスト層Aは、広範囲に除去される。ケーシング11が移動するときにブラシ114が撓曲する。したがって、閉鎖空間Sの気密性及び水密性が維持され、粉々になったアスベストや汚染物が閉鎖空間S内からケーシング11周辺に漏出しない。したがって、作業者Mは、アスベストを吸い込まない。
【0039】
汚染物排出ホース19内に排出された汚染物は、貯水槽2に貯留される。汚染物は、貯水槽2内で、重い不純物が下層に沈殿し、軽い不純物が上層に浮上して、不純物を含まない循環水が中間層に分離する。アスベストを含む不純物は、処理装置7で処理される。アスベストを含まなくなった処理水は、排水される。
【0040】
不純物を含まない循環水は、水タンク4に貯留される。水タンク4に貯留された循環水は、吸水ホース29によって水タンク4に貯留され、ノズル12から噴射されるミストの原水とされる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形改良等は本発明に含まれるものである。
【0042】
例えば、前記実施形態におけるアスベスト除去装置1では、複数のノズル12がノズルヘッド121に装着され、ケーシング11内で回転するとした。しかし、アスベスト除去装置1は、ノズルヘッド121を備えず、ノズル12がケーシング11内に多数配備されるようにしてもよいし、ミストを広範囲に噴射するノズル12を1個のみ装着してもよい。また、複数のノズル12がノズルヘッド121に装着される場合であっても、等間隔に配置されてもよい。
【0043】
前記実施形態では、ミストがノズル12から100~300MPa程度の圧力(高圧)で噴射されるとした。しかし、例えばノズル12から処理剤など含む液体が噴射される場合や、アスベスト層Aが剥離しやすい場合や、逆にアスベスト層Aが強力に付着している場合にあっては、この圧力の範囲外でミストが噴射されるようにしてもよい。
【0044】
前記実施形態では、ハンドル113がハ字状に一対備えられるとした。しかし、ハンドル113は、U字状に構成してもよいし、U字状のハンドル13は、その両端側の間隔が広くなるようにしてもよい。また、前記実施形態では、スイッチ15がボタンのように図示された。しかし、スイッチ15は、レバーのように構成されたものでもよい。
【0045】
前記実施形態におけるアスベスト除去システムでは、循環水を分離する貯水槽2を備えた。しかし、アスベスト除去システムは、汚染物排出ホース19から排出された汚染物を全て処理装置7で処理し、循環水を利用しないようにしてもよい。
【0046】
以上まとめると、本発明が適用されるアスベスト除去装置1は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用されるアスベスト除去装置1は、
建築物Wに付着したアスベスト層Aを覆うことで閉鎖空間Sを形成するケーシング11と、前記アスベスト層Aを剥離するための液体をミストとして前記閉鎖空間S内に噴射する1個以上のノズル12と、を備え、
前記ケーシング11は、
前記ノズル12に前記液体を供給するための液体供給ホース16を接続する供給用接続口116と、
前記閉鎖空間S内で前記建築物Wから剥離しして粉砕されたアスベストが前記ミストに付着した汚染物を前記閉鎖空間S内から排出するための汚染物排出ホース19を接続する排出用接続口119と、
を備えている。
【0047】
本アスベスト除去装置1によれば、ミストが閉鎖空間S内でノズル12から噴射され、アスベスト層Aを建築物Wから剥離し、粉砕されたアスベストがミストに付着し、汚染物として排出用接続口119に接続された汚染物排出ホース19から排出されるため、液体の使用量を抑制し、余剰水が生じないようにすることができる。したがって、本アスベスト除去装置は、都心などスペースがない場所などでも使用することができる。
【0048】
本発明に係るアスベスト除去装置1の一態様は、
前記供給用接続口116に接続される液体供給ホース16と、
前記排出用接続口119に接続される汚染物排出ホース19と、
を備えている。
【0049】
本アスベスト除去装置1によれば、供給用接続口116に接続された液体供給ホース16から水などの液体が供給されてノズル12からミストを噴射することができ、排出用接続口119に接続された汚染物排出ホース19から汚染物を排出することができる。
【0050】
本発明に係るアスベスト除去装置1の他態様は、
前記ノズル12を前記ケーシング11内で回転させるノズルヘッド121を備えている。
この場合において、前記ノズル12は、回転する前記ノズルヘッド121の中心からそれぞれの方向に複数個配置され、中心からのそれぞれのノズル12までの距離が異なっていてもよい。
【0051】
本アスベスト除去装置1によれば、ノズル12がケーシング11内で回転することで、ミストが面状にアスベスト層Aに向けて噴射される。また、ノズルヘッド121の中心から各ノズル12までの距離が、異なっていることにより、噴射されるミストに隙間ができないようにすることができる。
【0052】
本発明に係るアスベスト除去装置1の別の他態様は、
前記液体をミストにするための高圧エアを前記ノズル12に供給するためのエアホース17を接続するエアホース接続口117と、
前記高圧エアの圧力を弱めるための排気ポート118と、
を備えている。
【0053】
本アスベスト除去装置1によれば、エアホース接続口117と排気ポート118とが備えられることにより、ミストの圧力を調整することができる。
【0054】
本発明に係るアスベスト除去装置1のさらに別の他態様として、
前記ノズル12から噴射されるミストの圧力は、100~300MPaである。
【0055】
本アスベスト除去装置1よれば、ノズル12から噴射されるミストの圧力が100~300MPaとされることにより、作業者Mに大きな負担が掛からないようにアスベストを除去することができる。
【0056】
本発明に係るアスベスト除去システムは、
本発明に係るいずれかのアスベスト除去装置1と、前記排出用接続口119から排出された前記汚染物を貯留し、汚染物中の不純物が下層に沈殿及び上層に浮上して、不純物を含まない循環水が中間層に分離する貯水槽2と、を備え、
前記貯水槽2に貯留された循環水を前記液体供給ホース16によって前記アスベスト層Aを剥離するための液体として使用する。
【0057】
本アスベスト除去システムによれば、貯水槽2に貯留された循環水を、アスベスト層Aを建築物Wから剥離するための液体として使用することにより、ミストの水源である水の使用量を減らす、すなわち、節水することができる。
【0058】
本発明に係るアスベスト除去方法は、
建築物Wに付着したアスベスト層Aをケーシング11によって覆い、閉鎖空間Sを形成する工程と、
前記アスベスト層Aを建築物Wから剥離するためのミストを前記閉鎖空間S内に噴射する工程と、
前記閉鎖空間S内で建築物Wから剥離しして粉砕されたアスベストが前記ミストに付着した汚染物を前記閉鎖空間S内から排出する工程と、
を含む。
【0059】
本アスベスト除去方法によれば、ミストが噴射されてアスベスト層Aを建築物Wから剥離することができるため、液体の使用量を抑制し、排水量を低減し、作業スペースを最小限にすることができる。したがって、本アスベスト除去方法は、作業スペースに制約がある都心においても使用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1・・・・アスベスト除去装置
11・・・ケーシング
111・・基盤部
112・・周壁部
113・・ハンドル
114・・ブラシ
116・・供給用接続口
117・・エアホース接続口
118・・排気ポート
119・・排出用接続口
12・・・ノズル
121・・ノズルヘッド
16・・・液体供給ホース
17・・・エアホース
19・・・汚染物排出ホース
2・・・・貯水槽
A・・・・アスベスト層
S・・・・閉鎖空間
W・・・・壁面(建築物)
【手続補正書】
【提出日】2022-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に付着したアスベスト層を覆うことで閉鎖空間を形成するケーシングと、前記アスベスト層を剥離するための液体をミストとして前記閉鎖空間内に噴射する1個以上のノズルと、を備え、
前記ケーシングは、
前記ノズルに前記液体を供給するための液体供給ホースを接続する供給用接続口と、
前記閉鎖空間内で前記建築物から剥離して粉砕されたアスベストが前記ミストに付着した汚染物を前記閉鎖空間内から排出するための汚染物排出ホースを接続する排出用接続口と、
前記ミストの圧力を調整する圧力調整機構と、
を備えているアスベスト除去装置。
【請求項2】
前記供給用接続口に接続される液体供給ホースと、
前記排出用接続口に接続される汚染物排出ホースと、
を備えている、
請求項1に記載のアスベスト除去装置。
【請求項3】
前記ノズルをケーシング内で回転させるノズルヘッドを備えている、
請求項1又は2に記載のアスベスト除去装置。
【請求項4】
前記ノズルは、回転する前記ノズルヘッドの中心に対して、それぞれの方向に複数個非対称に夫々配置され、中心からのそれぞれのノズルまでの距離が異なっている、
請求項3に記載のアスベスト除去装置。
【請求項5】
前記ノズルから噴射されるミストの圧力は、100~300MPaである、
請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載のアスベスト除去装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載のアスベスト除去装置と、前記排出用接続口から排出された前記汚染物を貯留し、汚染物中の不純物が下層に沈殿及び上層に浮上して、不純物を含まない循環水が中間層に分離する貯水槽と、を備え、
前記貯水槽に貯留された循環水を前記液体供給ホースによって前記アスベストを剥離するための液体として使用するアスベスト除去システム。