(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161992
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】癌治療のための修飾抗体-アルブミンナノ粒子複合体
(51)【国際特許分類】
A61K 47/64 20170101AFI20221014BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20221014BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20221014BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221014BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20221014BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221014BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20221014BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221014BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221014BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221014BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20221014BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221014BHJP
【FI】
A61K47/64
A61K9/51
A61K31/337
A61K39/395 M
A61K47/42
A61P35/00
A61K47/69
A61K9/14
C07K19/00
C07K16/46
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022131006
(22)【出願日】2022-08-19
(62)【分割の表示】P 2019506143の分割
【原出願日】2017-08-04
(31)【優先権主張番号】62/371,668
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/409,830
(32)【優先日】2016-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511281899
【氏名又は名称】マヨ ファウンデーション フォー メディカル エデュケーション アンド リサーチ
【氏名又は名称原語表記】MAYO FOUNDATION FOR MEDICAL EDUCATION AND RESEARCH
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スヴェトミール エヌ. マルコヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ウェンディー ケイ. ネヴァラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン トーマス バターフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ジョセフ ナゥアー
(57)【要約】
【課題】標的薬物送達のための細胞傷害性効果を保持する抗体癌治療薬を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、アルブミン結合性モチーフを含まない(例えばアルブミン及び/又はアルブミン結合パクリタキセルナノ粒子とは複合体を形成しないか或いは所望の程度までは複合体を形成しない)抗体であって、本明細書に記載の1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された抗体に関する。別の態様では、本開示は、アルブミン結合性モチーフを含み、本明細書に記載の1以上の追加のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された抗体に関する。かかる抗体としては、特に限定されないが、リツキシマブ、トラスツズマブ、ベバシズマブ及びムロモナブが挙げられる。一実施形態では、本発明は、1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾抗体の製造方法に関する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療のための修飾抗体-アルブミンナノ粒子複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
化学療法は、メラノーマを始めとする多くの種類の癌に対する全身療法のよりどころである。大半の化学療法薬は腫瘍細胞に対してわずかな選択性しかなく、健全な増殖細胞に対する毒性が高いことがあり(Allen TM. (2002) Cancer 2:750-763)、用量の減量さらには治療の中断さえ必要とされることがある。理論的には、化学療法の毒性の問題を克服するとともに薬効を改善する一つの方法は、腫瘍細胞で選択的に発現(又は過剰発現)されるタンパク質に特異的な抗体を用いて化学療法薬を腫瘍にターゲティングし、もって化学療法薬の生体分布を変化させて、腫瘍に届く薬の量を増やし、健全な組織への影響を減らすことである。しかし、30年間に及ぶ研究にもかかわらず、治療に関連して特異的ターゲティングが成功した例はほとんどない。
【0003】
従来の抗体依存性化学療法(ADC)は、毒性薬物をターゲティング抗体に合成プロテアーゼ切断性リンカーを介して結合させて設計される。このようなADC療法の有効性は、標的細胞が抗体に結合する能力、リンカーが切断される能力及び毒性薬物が標的細胞に取り込まれる能力に依存する。Schrama, D. et al. (2006) Nature reviews. Drug discovery 5:147-159参照。
【0004】
抗体標的化学療法(antibody-targeted chemotherapy)は、ターゲティング能と、多様な細胞障害性薬物と、潜在的に低減した毒性を伴う治療能力の向上との組合せをもたらすので、従来の療法よりも優れていると期待されていた。広範な研究にもかかわらず、臨床的に有効な抗体標的化学療法は未だ判然としない。大きなネックとなっているのは、抗体と化学療法薬の間のリンカーの不安定性、抗体に結合したときの化学療法薬の腫瘍毒性の低下、並びにコンジュゲートが腫瘍細胞に結合及び侵入できないことである。さらに、これらの治療法では抗体-薬物コンジュゲートのサイズを制御できなかった。
【0005】
従来の治療薬よりも信頼性があって改善された抗腫瘍活性をもたらすべく、標的薬物送達のための細胞傷害性効果を保持する抗体癌治療薬が当技術分野で依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
治療用抗体及びアルブミン結合パクリタキセルナノ粒子(アルブミン結合パクリタキセルとも呼ばれる;例えば、アブラキサン(登録商標)、ABX)の製造の独特な態様では、ベバシズマブ、トラスツズマブ及びリツキシマブを含むヒト化治療用モノクローナル抗体はABXに高い親和性で結合して、ABX内の化学療法薬であるパクリタキセルを腫瘍に特異的にターゲティングする能力を与える。さらに、ベバシズマブでコートされたABX(AB160)は、ヒトメラノーマのマウスモデルにおいて、ABX単独よりも有効であった。
【0007】
ただし、すべての抗体がアルブミン(又はABX)と望ましい程度に結合してナノ粒子を形成するわけではないと考えられる。そこで、本開示の一態様は、アルブミン結合性モチーフを含まない(例えばアルブミン及び/又はアルブミン結合パクリタキセルナノ粒子とは複合体を形成しないか或いは所望の程度までは複合体を形成しない)抗体であって、本明細書に記載の1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された抗体に関する。別の態様では、本開示は、アルブミン結合性モチーフを含み、本明細書に記載の1以上の追加のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された抗体に関する。かかる抗体としては、特に限定されないが、リツキシマブ、トラスツズマブ、ベバシズマブ及びムロモナブが挙げられる。一実施形態では、本発明は、1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾抗体の製造方法に関する。
【0008】
別の態様では、本開示は、抗体結合性モチーフを含まない(例えば抗体と複合体を形成してナノ粒子複合体を形成しないか或いは所望の程度までは複合体を形成しない)担体タンパク質であって、本明細書に記載の1以上の抗体結合性モチーフを含むように修飾された担体タンパク質に関する。一態様では、本開示は、抗体結合性モチーフを含み、本明細書に記載の1以上の追加の抗体結合性モチーフを含むように修飾された担体タンパク質(例えばアルブミン)に関する。一実施形態では、本発明は、1以上の抗体結合性モチーフを含むように修飾された修飾担体タンパク質の製造方法に関する。
【0009】
本開示は、本明細書に記載の修飾抗体及び/又は担体タンパク質を含むナノ粒子複合体であって、好ましくはパクリタキセルを含むナノ粒子複合体にも関する。一実施形態では、本発明の態様は、ナノ粒子複合体の製造方法に関する。別の実施形態では、本発明は、例えば癌の治療に、ナノ粒子複合体を使用する方法に関する。
【0010】
理論に縛られるものではないが、アルブミンとのパクリタキセルの相互作用は、アルブミンに対する抗体の親和性を高めて、ナノ粒子複合体の形成を可能にすると考えられる。担体タンパク質と抗体のナノ粒子は、パクリタキセルなしで、癌その他の疾患の治療に有益となり得る。したがって、本開示は、修飾担体タンパク質及び/又は抗体(又は他の抗原結合剤、例えば融合タンパク質)を含む複合体であって、パクリタキセルを含まず、追加の治療薬を含んでいても含んでいなくてもよいものに関する。理論に束縛されることを望むものではないが、担体タンパク質への抗体結合性モチーフの追加及び/又は抗体(又は結合剤)へのアルブミン結合性モチーフの追加は、担体タンパク質-抗体の結合を増大させ、パクリタキセルの非存在下でのナノ粒子の形成を可能にすると考えられる。
【0011】
一実施形態では、本発明は、1以上の抗体結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する担体タンパク質、各々の抗体が抗原結合性ドメインを有する複数の抗体、及び任意的に治療薬を含むナノ粒子複合体であって、インビボで抗原に対する結合特異性を有するナノ粒子複合体に関する。
【0012】
一実施形態では、本発明は、アルブミン、1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する抗体又は融合タンパク質であって抗原結合性ドメインを有する抗体又は融合タンパク質、及び任意的に治療薬を含むナノ粒子複合体であって、インビボで抗原に対する結合特異性を有するナノ粒子複合体に関する。
【0013】
一実施形態では、本発明は、1以上の抗体結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する担体タンパク質、1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する抗体又は融合タンパク質であって抗原結合性ドメインを有する抗体又は融合タンパク質、及び任意的に治療薬を含むナノ粒子複合体であって、インビボで抗原に対する結合特異性を有するナノ粒子複合体に関する。
【0014】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載のナノ粒子複合体を含む組成物に関する。
【0015】
一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号3、配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列を含む。
【0016】
一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列を含む。
【0017】
一実施形態では、治療薬はパクリタキセルである。
【0018】
一実施形態では、複合体は1μm未満の平均サイズを有する。一実施形態では、ナノ粒子複合体は約90nm~約800nmの平均サイズを有する。一実施形態では、ナノ粒子複合体は約90nm~約400nmの平均サイズを有する。一実施形態では、ナノ粒子複合体は約90nm~約200nmの平均サイズを有する。一実施形態では、ナノ粒子複合体は約100nm~約800nmの平均サイズを有する。一実施形態では、ナノ粒子複合体は約100nm~約400nmの平均サイズを有する。一実施形態では、ナノ粒子複合体は約100nm~約200nmの平均サイズを有する。
【0019】
一実施形態では、アルブミン-治療薬と抗体との比は10:1~10:30である。一実施形態では、各々のナノ粒子複合体は約100~約1000個の抗体を含む。一実施形態では、各々のナノ粒子複合体は約100~約800個の抗体を含む。
【0020】
一実施形態では、アルブミンはヒト血清アルブミンである。一実施形態では、ヒト血清アルブミンは組換えヒト血清アルブミンである。
【0021】
一実施形態では、ナノ粒子複合体は凍結乾燥されている。一実施形態では、ナノ粒子複合体を含む組成物は凍結乾燥されている。一実施形態では、凍結乾燥ナノ粒子複合体又は組成物は、水溶液中で再構成したときに、インビボでの抗原結合(認識)能力が残存しているナノ粒子複合体を含む。
【0022】
一実施形態では、担体タンパク質は、アルブミン、オボアルブミン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン由来ポリペプチド、グリアジン、レグミン、ゼイン、大豆タンパク質、乳タンパク質又は乳清タンパク質である。一実施形態では、担体タンパク質はアルブミンである。一実施形態では、アルブミンは、追加の抗体結合性モチーフを含むように修飾されている。
【0023】
一実施形態では、抗体又は融合タンパク質は、非共有結合によって担体タンパク質と会合している。一実施形態では、抗体又は融合タンパク質は、抗体結合性モチーフ及び/又はアルブミン結合性モチーフを介して担体タンパク質と会合している。一実施形態では、パクリタキセルは、非共有結合によって担体タンパク質と会合している。一実施形態では、抗体又は融合タンパク質は、抗体結合性モチーフを介して担体タンパク質と非共有結合的に会合している。一実施形態では、抗体又は融合タンパク質は、アルブミン結合性モチーフを介して担体タンパク質と非共有結合的に会合している。
【0024】
一実施形態では、修飾担体タンパク質の少なくともサブセットは、2以上の抗体結合性モチーフを含む。一実施形態では、修飾抗体又は融合タンパク質の少なくともサブセットは、2以上のアルブミン結合性モチーフを含む。
【0025】
一実施形態では、組成物は薬学的に許容される添加物をさらに含む。
【0026】
一態様では、本発明は、1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する修飾抗体に関する。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のポリペプチド配列を含む。一実施形態では、本修飾抗体は、非修飾ポリペプチド配列を有する抗体よりもアルブミンに対して高い親和性を有する。
【0027】
一態様では、本発明は、1以上の抗体結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する修飾担体タンパク質に関する。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号3、配列番号4又は配列番号5のポリペプチド配列を含む。一実施形態では、本修飾担体タンパク質は、非修飾ポリペプチド配列を有する担体タンパク質よりも抗体に対して高い親和性を有する。
【0028】
一態様では、本発明は、ナノ粒子複合体の製造方法であって、アルブミンを、1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する抗体と、ナノ粒子複合体を形成する条件下で、一緒にすることを含む方法に関する。一実施形態では、担体タンパク質又はナノ粒子複合体を治療薬と一緒にする。一実施形態では、治療薬はパクリタキセルである。
【0029】
一態様では、ナノ粒子複合体の製造方法であって、1以上の抗体結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する担体タンパク質を抗体と共にインキュベートすることを含む方法が開示される。一実施形態では、担体タンパク質はアルブミンである。一実施形態では、担体タンパク質又はナノ粒子複合体を治療薬と一緒にする。一実施形態では、治療薬はパクリタキセルである。一態様では、抗体は、1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する修飾抗体である。
【0030】
一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号3、配列番号4又は配列番号5のポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列を含む。
【0031】
一態様では、修飾抗体の製造方法であって、当該方法が、ポリペプチド配列を有する抗体を用意し、アルブミン結合性モチーフを含むように該ポリペプチド配列を修飾することを含んでおり、修飾抗体が、修飾前の抗体よりもアルブミンとの結合に関して高い親和性を有する、方法が開示される。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、修飾前のポリペプチド配列はアルブミン結合性モチーフを含んでいない。
【0032】
一態様では、修飾担体タンパク質の製造方法であって、当該方法が、ポリペプチド配列を有する担体タンパク質を用意し、抗体結合性モチーフを含むように該ポリペプチド配列を修飾することを含んでおり、修飾担体タンパク質が、修飾前の担体タンパク質よりも抗体との結合に関して高い親和性を有する、方法が開示される。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号3、配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、担体タンパク質は、アルブミン、オボアルブミン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン由来ポリペプチド、グリアジン、レグミン、ゼイン、大豆タンパク質、乳タンパク質又は乳清タンパク質である。一実施形態では、修飾前のポリペプチド配列は抗体結合性モチーフを含んでいない。
【0033】
一態様では、患者の癌を治療する方法であって、当該方法が、本明細書に記載の修飾抗体及び/又は修飾担体タンパク質を含むナノ粒子複合体の治療有効量を患者に投与することを含んでおり、該癌が抗原を発現する方法が開示される。一実施形態では、組成物は静脈内投与される。一実施形態では、組成物は直接注射又は灌流によって腫瘍に投与される。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
ナノ粒子複合体を含む組成物であって、該ナノ粒子複合体の各々が、
1以上の抗体結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する担体タンパク質、
各々の抗体が抗原結合性ドメインを有する複数の抗体、及び
任意的に治療薬
を含んでおり、該ナノ粒子複合体がインビボで抗原に対する結合特異性を有する、組成物。
(項目2)
ナノ粒子複合体を含む組成物であって、該ナノ粒子複合体の各々が、
アルブミン、
1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する抗体又は融合タンパク質であって、抗原結合性ドメインを有する抗体又は融合タンパク質、及び
任意的に治療薬
を含んでおり、該ナノ粒子複合体がインビボで抗原に対する結合特異性を有する、組成物。
(項目3)
ナノ粒子複合体を含む組成物であって、該ナノ粒子複合体の各々が、
1以上の抗体結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する担体タンパク質、
1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する抗体又は融合タンパク質であって、抗原結合性ドメインを有する抗体又は融合タンパク質、及び
任意的に治療薬
を含んでおり、該ナノ粒子複合体がインビボで抗原に対する結合特異性を有する、組成物。
(項目4)
前記抗体結合性モチーフが、配列番号3、配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の組成物。
(項目5)
前記抗体結合性モチーフが、配列番号3、配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列を含む、項目3に記載の組成物。
(項目6)
前記アルブミン結合性モチーフが、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列を含む、項目2に記載の組成物。
(項目7)
前記アルブミン結合性モチーフが、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列を含む、項目3に記載の組成物。
(項目8)
前記抗体結合性モチーフが、配列番号3、配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列に対して約80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目1又は項目3に記載の組成物。
(項目9)
前記アルブミン結合性モチーフが、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列に対して約80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目2又は項目3に記載の組成物。
(項目10)
前記治療薬がパクリタキセルである、項目1乃至項目7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目11)
前記複合体が1μm未満の平均サイズを有する、項目1乃至項目7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目12)
前記ナノ粒子複合体が約100nm~約800nmの平均サイズを有する、項目11に記載の組成物。
(項目13)
アルブミン-治療薬と抗体との比が10:1~10:30である、項目1乃至項目7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目14)
前記ナノ粒子複合体の各々が、約100~約1000個の抗体を含む、項目1乃至項目7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目15)
前記アルブミンがヒト血清アルブミンである、項目1乃至項目7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目16)
凍結乾燥されている、項目1乃至項目7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目17)
前記担体タンパク質が、アルブミン、オボアルブミン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン由来ポリペプチド、グリアジン、レグミン、ゼイン、大豆タンパク質、乳タンパク質又は乳清タンパク質である、項目1乃至項目7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目18)
前記抗体又は融合タンパク質が、非共有結合によって前記担体タンパク質と会合している、項目1乃至項目7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目19)
前記抗体又は融合タンパク質が、前記抗体結合性モチーフ及び/又は前記アルブミン結合性モチーフを介して前記担体タンパク質と会合している、項目18に記載の組成物。
(項目20)
パクリタキセルが、非共有結合によって前記担体タンパク質と会合している、項目1乃至項目7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目21)
前記抗体又は融合タンパク質が、前記抗体結合性モチーフを介して前記担体タンパク質と非共有結合的に会合している、項目1、項目3乃至項目5及び項目7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目22)
前記抗体又は融合タンパク質が、前記アルブミン結合性モチーフを介して前記担体タンパク質と非共有結合的に会合している、項目2、項目3及び項目5乃至項目7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目23)
前記修飾担体タンパク質の少なくともサブセットが、2以上の抗体結合性モチーフを含む、項目1、項目3乃至項目5及び項目7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目24)
前記修飾抗体又は融合タンパク質の少なくともサブセットが、2以上のアルブミン結合性モチーフを含む、項目2、項目3及び項目5乃至項目7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目25)
薬学的に許容される添加物をさらに含む、項目1乃至項目24のいずれか1項に記載の組成物。
(項目26)
ナノ粒子複合体の製造方法であって、アルブミンを、1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する抗体と、ナノ粒子複合体を形成する条件下で、一緒にすることを含む、方法。
(項目27)
担体タンパク質又はナノ粒子複合体を治療薬と一緒にする、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記治療薬がパクリタキセルである、項目27に記載の方法。
(項目29)
ナノ粒子複合体の製造方法であって、1以上の抗体結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する担体タンパク質を抗体と共にインキュベートすることを含む方法。
(項目30)
前記担体タンパク質がアルブミンである、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記担体タンパク質又はナノ粒子複合体を治療薬と一緒にする、項目29に記載の方法。
(項目32)
前記治療薬がパクリタキセルである、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記抗体が、1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する、項目29に記載の方法。
(項目34)
前記抗体結合性モチーフが、配列番号3、配列番号4又は配列番号5のポリペプチド配列を含む、項目29乃至項目33のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
前記アルブミン結合性モチーフが、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列を含む、項目26乃至項目33のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
患者の癌を治療する方法であって、当該方法が項目1乃至項目7のいずれか1項に記載のナノ粒子組成物の治療有効量を該患者に投与することを含んでおり、該癌が前記抗原を発現する、方法。
(項目37)
1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する抗体。
(項目38)
前記アルブミン結合性モチーフが、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のポリペプチド配列を含む、項目37に記載の抗体。
(項目39)
非修飾ポリペプチド配列を有する抗体よりも、アルブミンに対する高い親和性を有する、項目37又は項目38に記載の抗体。
(項目40)
1以上の抗体結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する担体タンパク質。
(項目41)
前記抗体結合性モチーフが、配列番号3、配列番号4又は配列番号5のポリペプチド配列を含む、項目40に記載の担体タンパク質。
(項目42)
非修飾ポリペプチド配列を有する担体タンパク質よりも、抗体に対する高い親和性を有する、項目40又は項目41に記載の担体タンパク質。
(項目43)
修飾された抗体の製造方法であって、当該方法が、ポリペプチド配列を有する抗体を用意すること、そしてアルブミン結合性モチーフを含むように該ポリペプチド配列を修飾することを含んでおり、該修飾された抗体が、修飾前の抗体よりも、アルブミンとの結合に関して高い親和性を有する、方法。
(項目44)
前記アルブミン結合性モチーフが、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列を含む、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記ポリペプチド配列が、修飾前はアルブミン結合性モチーフを含んでいない、項目43又は項目44に記載の方法。
(項目46)
修飾担体タンパク質の製造方法であって、当該方法が、ポリペプチド配列を有する担体タンパク質を用意すること、そして抗体結合性モチーフを含むように該ポリペプチド配列を修飾することを含んでおり、該修飾担体タンパク質が、修飾前の担体タンパク質よりも、抗体との結合に関して高い親和性を有する、方法。
(項目47)
前記抗体結合性モチーフが、配列番号3、配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列を含む、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記担体タンパク質が、アルブミン、オボアルブミン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン由来ポリペプチド、グリアジン、レグミン、ゼイン、大豆タンパク質、乳タンパク質又は乳清タンパク質である、項目46又は項目47に記載の方法。
(項目49)
前記ポリペプチド配列が、修飾前は抗体結合性モチーフを含んでいない、項目46又は項目47に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1A】
図1Aは、蛍光標識したリツキシマブ(緑色)をアブラキサン(登録商標)と共にインキュベーションした後に形成されたナノ粒子のImageStream(登録商標)画像を示す。
【
図1B】
図1Bは、非標識リツキシマブと非標識アブラキサン(ABX)(左図)、蛍光標識(*)リツキシマブと非標識ABX(中図)又は蛍光標識リツキシマブと蛍光標識ABX(右図)からなるAR160のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図1C】
図1Cは、AR160を、微粒子画分(AR160;青色)、100キロダルトン(KD)超のタンパク質(>100KD;赤色)及び100KD未満のタンパク質(<100KD;緑色)に分離した後の各画分に存在するパクリタキセルの量を示すグラフである。各画分中のパクリタキセル濃度をHPLCで求めたところ、パクリタキセルの約69.2%が微粒子中にあり、残りのパクリタキセルは100kD(30.5%)超のタンパク質中にあった。100kD以上の画分でウエスタンブロットを行ったところ、リツキシマブ、パクリタキセル及びアルブミンは約200kDのバンドに共存していた。
【
図2A】
図2Aは、PE抗ヒトCD19(左図)、蛍光AR160(中図)又はその両方(右図)と共にインキュベートしたDaudi細胞のフローサイトメトリー分析を示す。Daudi細胞は、CD19、AR160又は両方に対して約75%陽性であった。
【
図2B】
図2Bは、CD19(赤色)及び蛍光AR160(緑色)の両方で標識した、
図2Aと同じ実験で得られたDaudi細胞のImageStream画像を示す。
【
図2C】
図2Cは、10mgのABXを表示量のリツキシマブ(RIT)と共にインキュベートし、NanoSight(Malvern Instruments社(英国ウスターシャー))によってサイズ分布を分析したときの各サイズの粒子濃度を示すグラフである。表は、サイズ分布(平均、10パーセンタイル、50パーセンタイル及び90パーセンタイル)を示す。
【
図3】
図3は、通常の点滴静注用生理食塩水中でのAR160のインビトロ安定性を示すグラフである。AR160の臨床グレードの標品を、室温で様々な期間(0時間、1時間、2時間、4時間、6時間及び24時間)通常の生理食塩水中に曝露した。各インキュベーションの最後に、粒子のNanoSight分析を行って粒子数とそのサイズ分布(平均、10パーセンタイル、50パーセンタイル及び90パーセンタイル)を評価した。対照として各時点においてABXを単独で分析した。
【
図4A】
図4Aは、ヒトAB型血清中でのABXの安定性を示すグラフである。30×10
8個の粒子をヒトAB型血清に添加して、60分間インキュベートした。AB型血清に添加して5、15、30及び60分後に、粒子サイズ及び数を決定した。生理食塩水中のABXを対照として使用した。
【
図4B】
図4Bは、ヒトAB型血清中でのAR160の安定性を示すグラフである。30×10
8個の粒子をヒトAB型血清に添加して、60分間インキュベートした。AB型血清に添加して5、15、30及び60分後に、粒子サイズ及び数を決定した。生理食塩水中のABXを対照として使用した。
【
図4C】
図4Cは、AB型血清中でインキュベーションした後のAR160(実線)に対するABX(点線)の粒子数を示すグラフである。
【
図5A】
図5A~5Fは、アイソタイプ対照抗体(
図5A)、未処理(
図5B)、リツキシマブ(
図5C)、アブラキサン(登録商標)(
図5D)、AR160(
図5E)又生理食塩水中で24時間インキュベートしておいたAR160(
図5F)で前処理し、次いで蛍光標識抗ヒトCD20抗体で標識したDaudi細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図6】
図6は、記載されたパクリタキセル濃度で、EdU及びABX、AR160、生理食塩水中で24時間インキュベートしておいたAR160(ARD160 240時間)又はリツキシマブで一晩処理した後のDaudi細胞の増殖レベルを示すグラフである。増殖レベルは、細胞をFITC標識抗EdUで染色することによって決定した。増殖指数は、未処理の陽性対照に対して正規化することによって算出した。
【
図7A-E】
図7A~7Gは、生理食塩水(
図7A)、12mg/kg(
図7B)若しくは18mg/kg(
図7C)のリツキシマブ、30mg/kg(
図7D)若しくは45mg/kg(
図7E)のアブラキサン(登録商標)、又は30mg/kgのAR160(
図7F)若しくは45mg/kg(
図7G)のAR160で処置したマウスにおける経時的な腫瘍体積を表す。ABX及びAR160の投与量はパクリタキセルを基準にした。
図7Hは、
図7A~7Gのデータに基づくベースライン腫瘍体積のパーセント変化率を表す。
【
図8】
図8は、
図7A~7Hに示す実験で得られたマウスの生存を示すKaplan-Meier曲線を表す。表は、各コホートにおけるマウスの平均生存期間(日数)を示す。
【
図9A】
図9Aは、蛍光標識ABX単独、対照抗体(AB IgG)を有するABX又はAR160で処置したマウス腫瘍内の薬物沈着を示すためIVIS Spectrum蛍光をオーバーレイした写真である。ABXをAlexaFluor 750で標識し、次いで陰性対照としてのIVIG又はリツキシマブ(AR160)のいずれかに結合させ、IVIS Spectrum(Perkin Elmer社製)を用いて各腫瘍中のABXの濃度を蛍光法で定量した。
【
図9B】
図9Bは、
図9Aに示す動物の腫瘍で得られた蛍光を示すグラフである。腫瘍(
図9Aの不規則な境界の領域)及びバックグラウンドとして各マウスの背中の遠位領域(
図9Aの円)に対して関心領域(ROI)を作成した。腫瘍ROIから各マウスのバックグラウンドROIを減算し、得られた放射効率をグラフにした。
【
図9C】
図9Cは、AR160で処置する24時間前に1%、10%又は100%用量のリツキシマブで前処理したマウス腫瘍内の薬物沈着を示すためIVIS Spectrum蛍光をオーバーレイした写真である。
【
図9D】
図9Dは、
図9Cに示す動物の腫瘍で得られた蛍光を示すグラフである。腫瘍(
図9Cの不規則な境界の領域)及びバックグラウンドとして各マウスの背中の遠位領域(
図9Aの円)に対して関心領域(ROI)を作成した。腫瘍ROIから各マウスのバックグラウンドROIを減算し、得られた放射効率をグラフにした。
【
図10】
図10は、実験室で製造したAR160(AR160)対薬局で製造した3つのバッチ(AR160 p1、p2又はp3)のサイズ分析のグラフである。サイズ(nm単位の直径)は、平均サイズ、10パーセンタイルd(0.1)、50パーセンタイルd(0.5)。90パーセンタイルd(0.9)として表す。各標品中の粒子数も併せて決定した(×10
8/mL)。
【
図11A-F】
図11A~11Hは、アイソタイプ対照抗体(
図11A)、未処理(
図11B)、アブラキサン(登録商標)(
図11C)、リツキシマブ(
図11D)、実験室で製造したAR160(
図11E)又は薬局で製造した3つのAR160バッチの各々(
図11F~11H)で前処理し、次いで蛍光標識抗ヒトCD20抗体で標識したDaudi細胞のフローサイトメトリー分析を表す。
図11Iは、記載されたパクリタキセル濃度で、EdU及びABX、AR160又は薬局で製造した3つのAR160バッチの各々で一晩処理した後のDaudi細胞の増殖レベルのグラフである。増殖レベルは、細胞をFITC標識抗EdUで染色することによって決定した。増殖指数は、未処理の陽性対照に対する正規化によって計算した。
【
図12A-F】
図12Aは、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))とHSAペプチド4(配列番号3)との結合を表す。
図12Bは、ムロモナブ(ムロモナブ-CD3又はAKT3;ORTHOCLONE OKT3(登録商標)とも呼ばれる)とHSAペプチド4との結合を表す。
図12Cは、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))とHSAペプチド4との結合を表す。
図12Dは、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))とHSAペプチド13(配列番号4)との結合を表す。
図12Eは、トラスツズマブとHSAペプチド13との結合を表す。
図12Fは、リツキシマブとHSAペプチド13との結合を表す。
【
図12G-K】
図12Gは、ベバシズマブとHSAペプチド40(HSAアミノ酸455~472;配列番号5)との結合を表す。
図12Hは、トラスツズマブとHSAペプチド40との結合を表す。
図12Iは、ムロモナブとHSAペプチド40との結合を表す。
図12Jは、リツキシマブとHSAペプチド40との結合を表す。
図12Kは、各HSAペプチドのアミノ酸配列並びに各HSAペプチドに対する各抗体の親和性を示す。
【
図13A-B】
図13Aは、ベバシズマブペプチド(BEVペプチド1;アミノ酸111~125;配列番号7)とHSAペプチド40との結合を表す。
図13Bは、ベバシズマブ可変ペプチド1(配列番号7)とHSAとの結合を表す。
【
図13C-D】
図13Cは、ベバシズマブ可変ペプチド2(配列番号6)とHSAとの結合を表す。
図13Dは、リツキシマブ可変ペプチド1(配列番号9)とHSAとの結合を表す。
【
図13E-G】
図13Eは、トラスツズマブ可変ペプチド1(配列番号11)とHSAとの結合を表す。
図13Fは抗体を表す図である。青い小さな四角は、アルブミン-パクリタキセル複合体のアルブミンに結合してナノ粒子を形成するベバシズマブ及びリツキシマブ上のおおよその位置を示す。大きな四角は、ベバシズマブ(配列番号1)及びリツキシマブ(配列番号2)の可変部配列を示す。各々のアルブミン結合配列に下線を付して青(ベバシズマブ;配列番号8)及び赤(リツキシマブ;配列番号10)で示す。
図13Gは、
図13A~
図13Eで用いたペプチドの幾つかの配列を、ベバシズマブと比較したときの単一アミノ酸変化(赤色)及び予測されるベータシート構造(下線付き)の分析と共に示す。
【
図14A-B】
図14Aは、リツキシマブとのナノ粒子形成に対するHSAペプチド40の競合の効果を表す。ABX(5mg/mL)を、ペプチドなし(赤色バー)、対照ペプチド(HSAペプチド10;緑色バー)又はHSAペプチド40(紫色バー)のいずれかの共存下で、リツキシマブ(2mg/mL)と共にインキュベートした。ペプチドは、抗体量に比して10倍モル過剰で添加した。直径は1:200希釈でMalvern Nanosizerを用いて測定した。
図14Bは、ベバシズマブとのナノ粒子形成に対するHSAペプチド40の競合の効果を表す。ABX(10mg/mL)を、ペプチドなし(赤色バー)、対照ペプチド(HSAペプチド10;緑色バー)、HSAペプチド13(紫色バー)、HSAペプチド40(青色バー)又はBEVペプチド12(オレンジ色バー)のいずれかの共存下で、ベバシズマブ(4mg/mL)と共にインキュベートした。ペプチドは、抗体量に比して10倍モル過剰で添加した。直径は1:200希釈でMalvern Nanosizerを用いて測定した。
【
図14C-D】
図14Cは、リツキシマブとABXとの複合体形成に対するHSAペプチド4の競合の効果を示す。得られた平均粒子サイズは96nm(±23nm)であった。
図14Dは、リツキシマブとABXとの複合体形成に対するHSAペプチド13の競合の効果を示す。得られた平均粒子サイズは180nm(±26nm)であった。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明を読了すれば、本発明を様々な代替的実施形態及び代替的用途で如何に実施すればよいか当業者には明らかになろう。ただし、本明細書には本発明の様々な実施形態がすべて記載されているわけではない。本明細書に記載された実施形態は例示のためのものであり、限定のためのものではない。したがって、様々な代替実施形態に関する発明の詳細な説明は、本発明の技術的範囲を以下に開示されたものに限定するものと解釈すべきではない。
【0036】
本発明を開示するに当たり、以下に記載される態様は特定の組成物に限定されるものではなく、かかる組成物の製造方法又はその使用方法は当然ながら変更し得ることを理解されたい。本明細書で用いる用語は専ら特定の態様を説明することを目的としたものであり、限定的なものではないことも理解すべきである。
【0037】
本発明の詳細な説明は、専ら読者の便宜のために様々な欄に分けられているが、いずれかの欄に記載された開示内容は他の欄の開示内容と組合せることができる。本明細書では、読者の便宜のために表題又は副題を用いることがあるが、それらは本発明の技術的範囲に影響を及ぼすことを意図するものではない。
【0038】
定義
別途定義しない限り、本明細書で用いる技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解する通りの意味を有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる幾つかの用語については、以下の意味を有するものと定義される。
【0039】
本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明することを目的としたものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書では単数形で記載されたものであっても、文脈から別途明らかでない限り、複数系の場合も含む。
【0040】
「任意的に」とは、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象又は状況が起こる場合と起こらない場合とを包含する。
【0041】
「約」という用語が、範囲を含めて、温度、時間、量、濃度その他の数値の前に用いられている場合、±10%、±5%、±1%、又はそれらの間の部分範囲又は中間値で変動し得る近似値を示す。好ましくは、用量に関して用いられる「約」という用語は、用量が±10%変動し得ることを意味する。
【0042】
「含む」とは、組成物及び方法が記載された要素を含んでいるが、その他の要素を除外するものではないことを意味する。「から本質的になる」とは、組成物及び方法の定義に用いられる場合、記載された目的に関して組合せに本質的重要性をもつ他の要素を除外することを意味する。したがって、本明細書で定義された要素から本質的になる組成物は、特許請求の範囲に記載された発明の基本的かつ新規な特徴に実質的な影響を与えない他の材料又はステップを除外するものではない。「からなる」とは、痕跡量を超える他の成分及び実質的な方法ステップを除外することを意味する。これらの移行句の各々によって定義される実施形態は、本発明の技術的範囲に属する。
【0043】
本明細書で用いる「ナノ粒子」という用語は、少なくとも1つの寸法が5μm未満である粒子をいう。静脈内投与のような好ましい実施形態では、ナノ粒子は1μm未満である。直接投与の場合、ナノ粒子はもっと大きい。大きな粒子であっても明示的に本発明の想定内である。
【0044】
粒子の集団において、個々の粒子のサイズは平均の周りで分布している。したがって、母集団の粒子サイズは平均値で表すことができるし、パーセンタイルで表すこともできる。D50は、粒子の50%がその粒子サイズ未満に属する粒子サイズである。粒子の10%はD10値よりも小さく、粒子の90%はD90よりも小さい。明らかでない場合、「平均」サイズはD50に等しい。
【0045】
本明細書で用いる「担体タンパク質」という用語は、抗体又は融合タンパク質を運搬する機能を担うタンパク質をいう。本開示の抗体又は融合タンパク質は、担体タンパク質に可逆的に結合できる。担体タンパク質の非限定的な例については、以下でさらに詳しく説明する。
【0046】
本明細書で用いる「コア」という用語は、ナノ粒子の中心部分又は内側部分をいい、担体タンパク質、担体タンパク質と治療薬又は他の薬剤若しくは薬剤の組合せからなることができる。
【0047】
「緩衝剤」という用語は、凍結乾燥前に溶液のpHを許容範囲内に維持する薬剤を包含し、コハク酸塩(ナトリウム又はカリウム)、ヒスチジン、リン酸塩(ナトリウム又はカリウム)、Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、ジエタノールアミン、クエン酸塩(ナトリウム)などを挙げることができる。一実施形態では、本発明の緩衝液は、約5.5~約6.5の範囲のpHを有し、好ましくは約6.0のpHを有する。pHをこの範囲に制御する緩衝剤の例としては、コハク酸塩(コハク酸ナトリウムなど)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩その他の有機酸緩衝剤が挙げられる。
【0048】
「医薬製剤」という用語は、活性成分を有効にすることができる形態の標品であって、製剤が投与される被験体に対して毒性である追加成分を含まない標品をいう。
【0049】
「薬学的に許容される」添加物(ビヒクル、添加剤)は、用いられる有効成分の有効量を与えるために対象哺乳動物に適切に投与できるものである。
【0050】
本明細書で用いる「治療薬」という用語は、治療に有用な薬物、例えば、病状、生理学的状態、症状又は病因の治療、寛解又は軽減のための薬物或いはそれらの評価又は診断のための薬物を意味する。治療薬は、非限定的な例として、可視化のための放射性同位体その他の分子、或いは抗癌剤、例えば化学療法薬又は放射線療法薬を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、1種以上の治療薬又は複数の種類の薬剤を組成物から明示的に除外することができる。
【0051】
本明細書で用いる「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分(すなわち、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子)をいう。この用語は、2本の免疫グロブリン重鎖と2本の免疫グロブリン軽鎖からなる抗体、並びに全長抗体及びその一部分を含む様々な形態も指し、例えば、免疫グロブリン分子、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、シングルドメイン抗体(dAb)、diabody、多特異性抗体、二重特異性抗体、抗イディオタイプ抗体、二重特異性抗体、これらの機能的に活性なエピトープ結合断片、二機能性ハイブリッド抗体(例えばLanzavecchia et al., Eur. J. Immunol. 17, 105 (1987))及び単鎖(例えばHuston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85, 5879-5883 (1988)及びBird et al., Science 242, 423-426 (1988)、これらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。)が挙げられる。(全般には、Hood et al., Immunology, Benjamin, N.Y., 2ND ed. (1984);Harlow and Lane, Antibodies. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988);Hunkapiller and Hood, Nature, 323, 15-16 (1986)を参照されたい。これらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。)。抗体はどのような種類(例えばIgG、IgA、IgM、IgE又はIgD)のものであってもよい。好ましくは、抗体はIgGである。抗体は、ヒト以外のもの(例えばマウス、ヤギその他の動物由来のもの)、完全にヒトのもの、ヒト化されたもの又はキメラであってもよい。
【0052】
本明細書で用いる「融合タンパク質」という用語は、2以上のドメインを有するタンパク質であって、一方のドメインがあるタンパク質に由来し、他方のドメインが異なるタンパク質に由来するものをいう。アフリベルセプト(ZALTRAP(商標))は、結腸直腸癌の治療薬としてFDAから承認された融合タンパク質である。トレバナニブ(AMG386、Amgen社)及びAPG101(APOCEPT、Apogenix社)を始めとする、癌の治療のための他の融合タンパク質も知られている。幾つかの実施形態では、融合タンパク質はFc融合タンパク質である。
【0053】
本明細書で用いる「凍結乾燥」という用語は、乾燥すべき材料(例えばナノ粒子)をまず凍結してから、真空環境中での昇華によって氷又は凍結溶媒を除去するプロセスをいう。保存時の凍結乾燥品の安定性を高めるため、予備凍結乾燥製剤に添加物を配合してもよい。幾つかの実施形態では、担体タンパク質、抗体若しくは融合タンパク質及び/又は治療薬は別個に凍結乾燥される。他の実施形態では、担体タンパク質、抗体又は融合タンパク質及び/又は治療薬を最初に混合してから凍結乾燥する。凍結乾燥試料はさらに追加の添加物を含んでもよい。抗体-アルブミン-パクリタキセルナノ粒子複合体の凍結乾燥は、例えば米国特許第9446148号に記載されており、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0054】
「治療」という用語は、ヒト患者のような対象における病気又は疾患(例えば癌)の治療を包含し、(i)病気又は疾患の抑制、すなわち病気又は疾患の進行の停止、(ii)病気又は疾患の緩和、すなわち病気又は疾患の後退、(iii)病気又は疾患の増悪の遅延、及び/又は(iv)病気又は疾患の1以上の症状の抑制、緩和又は増悪遅延を包含する。
【0055】
細胞/細胞集団に関して「死滅させる」という用語は、その細胞/細胞集団の死をもたらす任意の種類の操作を包含する。
【0056】
本明細書において、ナノ粒子のコアに関していう「外面」という用語は、コアの外側にあるコアの部分をいう。幾つかの実施形態では、結合剤(例えば抗体又は融合タンパク質)は外面と会合している。
【0057】
本明細書で用いる「抗体特異性を保持しながら」という記載は、アルブミンと会合した抗体が、標的であるエピトープを認識(結合)し続けることを示す。抗体特異性は、大きなナノ粒子の状況及び/又はインビボでのナノ粒子の解離又は部分的解離後も保持されることがある。
【0058】
本明細書で用いる「同一性」又は「類似性」という用語は、2つのペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性をいう。参照ポリペプチド配列との「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、2つの配列をアライメントさせ、必要に応じて、最大のパーセント配列同一性を達成するためにギャップを導入した後の候補配列において、保存的置換は配列同一性の一部として一切考慮せずに、参照ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一であるアミノ酸残基の百分率として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するためのアライメントは、当技術分野の慣用技術に属する様々な方法で、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公衆に利用可能なコンピューターソフトウェアを用いて、達成できる。当業者であれば、比較すべき配列の全長にわたって最大アライメントを達成するのに必要とされるアルゴリズムを始めとして、配列のアライメントのための適切なパラメーターを決定することができる。
【0059】
ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド領域(又はポリペプチド又はポリペプチド領域)が別の配列とある割合(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%)の「配列同一性」又は「類似性」を有するとは、アライメントした状態で、2つの配列を比較したときにその割合の塩基(又はアミノ酸)が同一であることを意味する。こうしたアライメント及びパーセント配列同一性は、例えばAusubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biologyに記載されているものなど、当技術分野で公知のソフトウェアプログラムを用いて決定することができる。生物学的に等価なポリヌクレオチドは、上記で特定したパーセント配列同一性を有し、同一又は類似の生物学的活性を有するポリペプチドをコードするものである。
【0060】
本明細書に記載された修飾担体タンパク質又は修飾結合剤(例えば抗体)についていう「修飾」という用語は、記載されたポリペプチド配列がタンパク質(又は他の分子)に追加されていることを示すことがある。例えば、修飾抗体は、未修飾抗体には存在しないアルブミン結合性モチーフを含むように修飾(遺伝子操作、改変、変異導入)された抗体、或いは既に存在していたアルブミン結合性モチーフに加えてアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された抗体とし得る。一実施形態では、モチーフは、タンパク質に存在する1以上のアミノ酸を変化(変異)させることによって追加し得る。一実施形態では、モチーフは、モチーフ配列をタンパク質(又は他の分子)に挿入することによって追加し得る。一実施形態では、モチーフは、モチーフ配列をタンパク質(又は他の分子)に共有結合させることによって追加し得る。
【0061】
さらに、本明細書で用いる幾つかの用語については、以下でさらに具体的に定義される。
【0062】
修飾結合剤
一態様では、本発明は、1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する修飾抗体に関する。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のポリペプチド配列を含む。一実施形態では、修飾抗体はアルブミンに結合する(アルブミンに結合することができる)。一実施形態では、修飾抗体は、未修飾ポリペプチド配列を有する抗体よりもアルブミンに対して高い親和性を有する。
【0063】
一態様では、修飾抗体の製造方法であって、当該方法が、ポリペプチド配列を有する抗体を用意し、アルブミン結合性モチーフを含むように該ポリペプチド配列を修飾することを含む方法が開示される。一実施形態では、修飾抗体は、修飾前の抗体よりもアルブミンとの結合に関して高い親和性を有する。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、修飾前のポリペプチド配列はアルブミン結合性モチーフを含んでいない。
【0064】
一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号6のポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号6のポリペプチド配列に対して70%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号6のポリペプチド配列に対して80%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号6のポリペプチド配列に対して85%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号6のポリペプチド配列に対して90%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号6のポリペプチド配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のアミノ酸残基を含む配列番号6の切断型ポリペプチド配列を含む。
【0065】
一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号7のポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号7のポリペプチド配列に対して70%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号7のポリペプチド配列に対して80%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号7のポリペプチド配列に対して85%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号7のポリペプチド配列に対して90%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号7のポリペプチド配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のアミノ酸残基を含む配列番号7の切断型ポリペプチド配列を含む。
【0066】
一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号8のポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号8のポリペプチド配列に対して70%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号8のポリペプチド配列に対して80%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号8のポリペプチド配列に対して85%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号8のポリペプチド配列に対して90%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号8のポリペプチド配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17又は18個のアミノ酸残基を含む配列番号8の切断型ポリペプチド配列を含む。
【0067】
一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号9のポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号9のポリペプチド配列に対して70%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号9のポリペプチド配列に対して80%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号9のポリペプチド配列に対して85%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号9のポリペプチド配列に対して90%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号9のポリペプチド配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19個のアミノ酸残基を含む配列番号9の切断型ポリペプチド配列を含む。
【0068】
一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号10のポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号10のポリペプチド配列に対して70%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号10のポリペプチド配列に対して80%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号10のポリペプチド配列に対して85%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号10のポリペプチド配列に対して90%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号10のポリペプチド配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17又は18個のアミノ酸残基を含む配列番号10の切断型ポリペプチド配列を含む。
【0069】
一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号11のポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号11のポリペプチド配列に対して70%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号11のポリペプチド配列に対して80%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号11のポリペプチド配列に対して85%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号11のポリペプチド配列に対して90%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号11のポリペプチド配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19個のアミノ酸残基を含む配列番号11の切断型ポリペプチド配列を含む。
【0070】
一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号12のポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号12のポリペプチド配列に対して70%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号12のポリペプチド配列に対して80%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号12のポリペプチド配列に対して85%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号12のポリペプチド配列に対して90%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号12のポリペプチド配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態ではアルブミン結合性モチーフは、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19個のアミノ酸残基を含む配列番号12の切断型ポリペプチド配列を含む。
【0071】
一態様では、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアルブミン結合性モチーフは、参照配列に対する置換(例えば保存的置換)、挿入又は欠失を含む。幾つかの実施形態では、かかる配列を含むアルブミン結合性モチーフは、アルブミンに結合する能力を保持する。幾つかの実施形態では、かかる配列を含むアルブミン結合性モチーフは、該モチーフが結合剤(例えば抗体又は融合タンパク質)に挿入されたときもアルブミンに結合する能力を保持する。
【0072】
アルブミン結合性モチーフは抗体の任意の領域に追加することができる。幾つかの態様では、アルブミン結合性モチーフは抗体のFc部分に追加される。幾つかの態様では、アルブミン結合性モチーフは抗体のFab部分に追加される。幾つかの実施形態では、アルブミン結合性モチーフは抗体の片方又は両方の重鎖に追加される。幾つかの実施形態では、アルブミン結合性モチーフは抗体の片方又は両方の可変部に追加される。幾つかの実施形態では、アルブミン結合性モチーフは抗体の片方又は両方の軽鎖に追加される。好ましくは、アルブミン結合性モチーフは、抗体の三次構造又は四次構造に実質的に影響しない抗体の領域に追加される。さらに好ましくは、アルブミン結合性モチーフは、抗体の抗原結合能に実質的に影響しない抗体の領域に追加される。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは抗体のアミノ末端領域に追加される。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは抗体のカルボキシ末端領域に追加される。
【0073】
一実施形態では、複数のアルブミン結合性モチーフが結合剤の同じ領域に(例えば互いに隣接して又は約1~約30アミノ酸以内の間隔で)追加される。一実施形態では、複数のアルブミン結合性モチーフが結合剤の異なる領域に(例えば約30アミノ酸を超える間隔及び/又は別々のポリペプチド上に)追加される。
【0074】
好ましくは、結合剤は抗体である。幾つかの実施形態では、抗体は非治療用及び非内因性ヒト抗体である。幾つかの実施形態では、抗体はキメラ抗体、非内在性ヒト抗体、ヒト化抗体又は非ヒト抗体である。抗体については本明細書でさらに定義される。
【0075】
一実施形態では、抗体は公知の治療用抗体である。本発明で修飾して使用することが想定される抗体としては、限定されるものではないが、リツキシマブ、トラスツズマブ、ベバシズマブ、アレムツズマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、イブリツモマブ、イピリムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ゲムツズマブ、トシツモマブ、ムロモナブ又はこれらのバイオシミラー(バイオ後続品)。アルブミン結合部位を含む抗体については、1以上の追加のアルブミン結合性モチーフを追加して修飾抗体を形成することができる。
【0076】
一態様では、本発明は、単離アルブミン結合性モチーフに関する。一実施形態では、単離アルブミン結合性モチーフは、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のポリペプチド配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。一実施形態では、単離アルブミン結合性モチーフはアルブミンに結合する能力を保持する。一実施形態では、単離アルブミン結合性モチーフは抗体結合性モチーフに結合する能力を保持する。一実施形態では、単離アルブミン結合性モチーフは配列番号3、配列番号4又は配列番号5のポリペプチド配列を有するペプチド或いはそれらの変異体に結合する能力を保持する。一態様では、本発明は、例えば結合剤又はその他のアルブミンに結合する分子を作るための、単離アルブミン結合性モチーフ又はその変異体の使用に関する。
【0077】
抗体を含むペプチド配列の修飾及び生産は、現在公知の方法又は将来開発されるものを含めた任意の適切な方法によって行うことができる。本開示はさらに、本明細書に記載の修飾抗体のポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列、並びにそれらのポリヌクレオチド配列を含む細胞(例えばCHO又はHEK細胞)又は非ヒト動物(例えばマウス)に関する。
【0078】
修飾担体タンパク質
一態様では、本発明は、1以上の抗体結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する修飾担体タンパク質に関する。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号3、配列番号4又は配列番号5のポリペプチド配列を含む。一実施形態では、修飾担体タンパク質は、非修飾ポリペプチド配列を有する担体タンパク質よりも抗体に対して高い親和性を有する。
【0079】
一態様では、修飾担体タンパク質の製造方法であって、当該方法が、ポリペプチド配列を有する担体タンパク質を用意し、抗体結合性モチーフを含むように該ポリペプチド配列を修飾することを含む方法が開示される。一実施形態では、修飾担体タンパク質は、修飾前の担体タンパク質よりも抗体との結合に関して高い親和性を有する。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号3、配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、担体タンパク質は、アルブミン、オボアルブミン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン由来ポリペプチド、グリアジン、レグミン、ゼイン、大豆タンパク質、乳タンパク質又は乳清タンパク質である。一実施形態では、修飾前のポリペプチド配列は抗体結合性モチーフを含んでいない。
【0080】
幾つかの実施形態では、担体タンパク質は、アルブミン、ゼラチン、エラスチン(トポエラスチンを含む)又はエラスチン由来ポリペプチド(例えばα-エラスチン及びエラスチン様ポリペプチド(ELP))、グリアジン、レグミン、ゼイン、大豆タンパク質(例えば分離大豆タンパク質(SPI))、乳タンパク質(例えばβ-ラクトグロブリン(BLG)及びカゼイン)又は乳清タンパク質(例えば乳清タンパク質濃縮物(WPC)及び乳清タンパク質分離物(WPI))。好ましい実施形態では、担体タンパク質はアルブミンである。好ましい実施形態では、アルブミンは卵白(オボアルブミン)、ウシ血清アルブミン(BSA)などである。さらにさらに好ましい態様では、担体タンパク質はヒト血清アルブミン(HSA)である。幾つかの実施形態では、担体タンパク質は組換えタンパク質(例えば組換えHSA)である。幾つかの実施形態では、担体タンパク質は、米国食品医薬品局(FDA)によって承認された一般に安全と認められる(GRAS;generallyregarded as safe)添加物である。
【0081】
一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号3のポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号3のポリペプチド配列に対して70%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号3のポリペプチド配列に対して80%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号3のポリペプチド配列に対して85%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号3のポリペプチド配列に対して90%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号3のポリペプチド配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17個のアミノ酸残基を含む配列番号3の切断型ポリペプチド配列を含む。
【0082】
一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号4のポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号4のポリペプチド配列に対して70%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号4のポリペプチド配列に対して80%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号4のポリペプチド配列に対して85%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号4のポリペプチド配列に対して90%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号4のポリペプチド配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17個のアミノ酸残基を含む配列番号4の切断型ポリペプチド配列を含む。
【0083】
一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号5のポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号5のポリペプチド配列に対して70%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号5のポリペプチド配列に対して80%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号5のポリペプチド配列に対して85%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号5のポリペプチド配列に対して90%以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号5のポリペプチド配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17個のアミノ酸残基を含む配列番号5の切断型ポリペプチド配列を含む。
【0084】
一態様では、配列番号3、配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する抗体結合性モチーフは、参照配列に対する置換(例えば保存的置換)、挿入又は欠失を含む。幾つかの実施形態では、かかる配列を含む抗体結合性モチーフは抗体に結合する能力を保持する。幾つかの態様では、かかる配列を含む抗体結合性モチーフは、該モチーフが担体タンパク質に挿入されたときも抗体に結合する能力を保持する。
【0085】
抗体結合性モチーフは、担体タンパク質の任意の領域に追加することができる。好ましくは、抗体結合性モチーフは、担体タンパク質の三次構造又は四次構造に実質的に影響しない。一実施形態では、抗体結合性モチーフは、担体タンパク質のアミノ末端領域に追加される。一実施形態では、抗体結合性モチーフは、担体タンパク質のカルボキシ末端領域に追加される。
【0086】
一実施形態では、複数の抗体結合性モチーフが、担体タンパク質の同じ領域に(例えば互いに隣接して又は約1~約30アミノ酸以内の間隔で)追加される。一実施形態では、複数の抗体結合性モチーフが担体タンパク質の異なる領域に(例えば約30アミノ酸を超える間隔で)追加される。
【0087】
一実施形態では、本発明は単離抗体結合性モチーフに関する。一実施形態では、単離抗体結合性モチーフは、配列番号3、配列番号4又は配列番号5のポリペプチド配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。一実施形態では、単離抗体結合性モチーフは、抗体に結合する能力を保持する。一実施形態では、単離抗体結合性モチーフは、アルブミン結合性モチーフに結合する能力を保持する。一実施形態では、単離抗体結合性モチーフは配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のポリペプチド配列を有するペプチド或いはそれらの変異体に結合する能力を保持する。一態様では、本発明は、例えば担体タンパク質又はその他の抗体と結合する分子を作るための、単離抗体結合性モチーフ又はその変異体の使用に関する。
【0088】
担体タンパク質を含むペプチド配列の修飾及び生産は、現在公知の方法又は将来開発されるものを含めた任意の適切な方法によって行うことができる。本開示はさらに、本明細書に記載の修飾担体タンパク質のポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列、並びにそれらのポリヌクレオチド配列を含む細胞(例えばCHO又はHEK細胞)又は非ヒト動物(例えばマウス)に関する。
【0089】
ペプチド変異体
特定の実施形態では、本発明で提供される抗体結合性モチーフ及びアルブミン結合性モチーフのアミノ酸配列変異体が想定される。例えば、該モチーフ(又は該モチーフを含むタンパク質)の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望まれることがある。モチーフのアミノ酸配列変異体は、モチーフをコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって或いはペプチド合成によって調製することができる。かかる修飾には、例えば、モチーフのアミノ酸配列の残基の欠失及び/又は挿入及び/又は置換が挙げられる。幾つかの実施形態では、最終構築物が所望の特性(例えば抗体結合特性又はアルブミン結合特性)を有することを条件として、最終構築物に到達するため欠失、挿入及び置換の任意の組合せを行うことができる。
【0090】
ある態様では、1以上のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。保存的置換を、以下の表1に「好ましい置換」という見出しの下に示す。さらに実質的な変更を、表1の「置換の例」という見出しの下に示すとともに、アミノ酸側鎖の分類に関連して以下でさらに説明する。アミノ酸置換を目的の抗体に導入して、生成物を所望の活性(例えば保持/改善された抗原結合性、減少した免疫原性、又は改善されたADCC若しくはCDC)についてスクリーニングすればよい。
【0091】
【0092】
アミノ酸は、共通する側鎖の性質に従って分類することができる。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0093】
非保存的置換は、これらの分類の一つに属するものを別の分類のものに交換することを伴う。
【0094】
ある実施形態では、その変更によってモチーフが抗体(抗体結合性モチーフの場合)又はアルブミン(アルブミン結合性モチーフの場合)と結合する能力が実質的に低下しない限り、モチーフ内で置換、挿入又は欠失が生じてもよい。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば本明細書で規定する保存的置換)をなすことができる。
【0095】
一実施形態では、変異体は、所定の位置に1~5個のアミノ酸置換を有する。一実施形態では、変異体は、所定の位置に1~5個のアミノ酸欠失を有する。一実施形態では、変異体は、所定の位置に1~10のアミノ酸挿入を有する。一実施形態では、変異体は、カルボキシ末端領域及び/又はアミノ末端領域に追加された1個以上(例えば1~200個)のアミノ酸を有する。
【0096】
一実施形態では、アルブミン結合性モチーフ変異体は、アルブミンに結合する能力を保持する。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフ変異体は抗体結合性モチーフに結合する能力を保持する。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフ変異体は、配列番号3、配列番号4又は配列番号5のポリペプチド配列を有するペプチド或いはそれらの変異体に結合する能力を保持する。
【0097】
一実施形態では、抗体結合性モチーフ変異体は抗体に結合する能力を保持する。一実施形態では、抗体結合性モチーフ変異体は、アルブミン結合性モチーフに結合する能力を保持する。一実施形態では、抗体結合性モチーフ変異体は、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のポリペプチド配列を有するペプチド或いはそれらの変異体に結合する能力を保持する。
【0098】
変異導入の標的となり得る抗体の残基又は領域を同定するための有用な方法は、Cunningham and Wells (1989) Science, 244:1081-1085に記載されているように「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれる。この方法では、残基又は複数の標的残基の群(例えばarg、asp、his、lys及びgluなどの荷電残基)を同定し、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えばアラニン又はポリアラニン)で置換して、抗原との抗体の相互作用が影響を受けるか否かを調べる。最初の置換に対して機能的感受性を示したアミノ酸位置に追加の置換を導入してもよい。その代わりに又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を用いて抗体と抗原との接触点を同定する。アルブミン-抗体複合体の結晶構造も同様に抗体とアルブミンとの接触点を同定するのに使用し得る。このような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的にしてもよいし、除去してもよい。変異体は、それらが所望の特性を含むか否かを決定するためにスクリーニングし得る。
【0099】
アミノ酸配列挿入は、1残基から100残基以上のポリペプチドに至る長さのアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合部、並びに1個は複数のアミノ酸残基の配列内挿入を包含する。
【0100】
修飾ナノ粒子複合体
本開示は、抗体結合性モチーフを含む担体タンパク質、アルブミン結合性モチーフを含む抗体又は他のタンパク質、及び任意的に治療薬を含むナノ粒子複合体及びナノ粒子組成物に関する。担体タンパク質及び抗体の一方又は両方は、抗体結合性モチーフ及び/又はアルブミン結合性モチーフの1以上を含むように修飾される。
【0101】
一実施形態では、本発明は、1以上の抗体結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する担体タンパク質、各々の抗体が抗原結合性ドメインを有する複数の抗体、及び任意的に治療薬を含むナノ粒子複合体であって、インビボで抗原に対する結合特異性を有するナノ粒子複合体に関する。
【0102】
一実施形態では、本発明は、アルブミン、1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する抗体又は融合タンパク質であって抗原結合性ドメインを有する抗体又は融合タンパク質、及び任意的に治療薬を含むナノ粒子複合体であって、インビボで抗原に対する結合特異性を有するナノ粒子複合体に関する。
【0103】
一実施形態では、本発明は、1以上の抗体結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する担体タンパク質、1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する抗体又は融合タンパク質であって抗原結合性ドメインを有する抗体又は融合タンパク質、及び任意的に治療薬を含むナノ粒子複合体であって、インビボで抗原に対する結合特異性を有するナノ粒子複合体に関する。
【0104】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載のナノ粒子複合体を含む組成物に関する。
【0105】
一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号3、配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗体結合性モチーフは配列番号3、配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0106】
一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、アルブミン結合性モチーフは、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0107】
一実施形態では、治療薬はパクリタキセルである。
【0108】
一実施形態では、複合体は1μm未満の平均サイズを有する。一実施形態では、ナノ粒子複合体は約90nm~約800nmの平均サイズを有する。一実施形態では、ナノ粒子複合体は約90nm~約400nmの平均サイズを有する。一実施形態では、ナノ粒子複合体は約90nm~約200nmの平均サイズを有する。一実施形態では、ナノ粒子複合体は約100nm~約800nmの平均サイズを有する。一実施形態では、ナノ粒子複合体は約100nm~約400nmの平均サイズを有する。一実施形態では、ナノ粒子複合体は約100nm~約200nmの平均サイズを有する。サイズは、上下限を含め、これらの範囲内の任意の値又は部分範囲とし得る。
【0109】
一実施形態では、アルブミン-治療薬と抗体との比は10:1~10:30である。比率は、上下限を含め、この範囲内の任意の値又は部分範囲とし得る。一実施形態では、各々のナノ粒子複合体は約100~約1000個の抗体を含む。一実施形態では、各々のナノ粒子複合体は約100~約800個の抗体を含む。抗体の数は、上下限を含め、これらの範囲内の任意の値又は部分範囲とし得る。
【0110】
一実施形態では、アルブミンはヒト血清アルブミンである。一実施形態では、ヒト血清アルブミンは組換えヒト血清アルブミンである。
【0111】
一実施形態では、ナノ粒子複合体は凍結乾燥される。一実施形態では、ナノ粒子複合体を含む組成物は凍結乾燥される。一実施形態では、凍結乾燥複合体又は組成物は、水溶液中で再構成したときに、インビボで抗原に結合(認識/結合)する能力が残っているナノ粒子複合体を含む。
【0112】
一実施形態では、担体タンパク質は、アルブミン、オボアルブミン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン由来ポリペプチド、グリアジン、レグミン、ゼイン、大豆タンパク質、乳タンパク質又は乳清タンパク質である。一実施形態では、担体タンパク質はアルブミンである。一実施形態では、アルブミンは、追加の抗体結合性モチーフを含むように修飾される。
【0113】
一実施形態では、抗体又は融合タンパク質は、非共有結合によって担体タンパク質と会合している。一実施形態では、抗体又は融合タンパク質は、抗体結合性モチーフ及び/又はアルブミン結合性モチーフを介して担体タンパク質と会合している。一実施形態では、パクリタキセルは、非共有結合によって担体タンパク質と会合している。一実施形態では、抗体又は融合タンパク質は、抗体結合性モチーフを介して担体タンパク質と非共有結合的に会合している。一実施形態では、抗体又は融合タンパク質は、アルブミン結合性モチーフを介して担体タンパク質と非共有結合的に会合している。
【0114】
一実施形態では、修飾担体タンパク質の少なくともサブセットは、2以上の抗体結合性モチーフを含む。一実施形態では、修飾抗体又は融合タンパク質の少なくともサブセットは、2以上のアルブミン結合性モチーフを含む。
【0115】
一実施形態では、組成物は薬学的に許容される添加物をさらに含む。
【0116】
幾つかの態様では、化学療法薬は担体タンパク質と会合している。幾つかの実施形態では、複合体は治療量以下の量のパクリタキセルをさらに含む。
【0117】
幾つかの実施形態では、化学療法薬の有効量は、約100mg/m2、約105mg/m2、約110mg/m2、約115mg/m2、約120mg/m2、約125mg/m2、約130mg/m2、約135mg/m2、約140mg/m2、約145mg/m2、約150mg/m2、約155mg/m2、約160mg/m2、165mg/m2、約170mg/m2、約175mg/m2、約180mg/m2、約185mg/m2、約190mg/m2、約195mg/m2又は約200mg/m2の化学療法薬からなる量から選択される。
【0118】
なお、治療薬(すなわち、化学療法薬)は、ナノ粒子の内側、外側表面又はその両方に位置し得る。ナノ粒子は、2種以上の異なる治療薬、例えば、2種類の治療薬、3種類の治療薬、4種類の治療薬、5種類の治療薬又はそれ以上を含んでいてもよい。さらに、ナノ粒子は、ナノ粒子の内側及び外側に同一又は異なる治療薬を含んでいてもよい。
【0119】
一態様では、ナノ粒子中の化学療法薬(例えばパクリタキセル)の量は、ナノ粒子の形成を可能にするのに十分である。抗体-アルブミンナノ粒子複合体の形成のための治療量以下の量のパクリタキセルの使用は、例えば2016年9月6日出願の米国仮特許出願第62/384119号に記載されており、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0120】
一実施形態では、ナノ粒子複合体に存在するパクリタキセルの量は、ナノ粒子複合体に安定性をもたらすことができる最小量以上である。一実施形態では、ナノ粒子複合体に存在するパクリタキセルの量は、タンパク質担体に対する1種以上の治療薬の親和性をもたらすことができる最小量以上である。一実施形態では、ナノ粒子複合体に存在するパクリタキセルの量は、1種以上の治療薬とタンパク質担体との複合体形成を促進することができる最小量以上である。一実施形態では、ナノ粒子複合体の担体タンパク質とパクリタキセルとの重量比は約9:1超である。一実施形態では、重量比は、約10:1超、約11:1超、約12:1超、約13:1超、約14:1超、約15:1超、約16:1超、約17:1超、約18:1超、約19:1超、約20:1超、約21:1超、約22:1超、約23:1超、約24:1超、約25:1超、約26:1超、約27:1超、約28:1超、約29:1超又は約30:1超である。一実施形態では、パクリタキセルの量は、ナノ粒子複合体に安定性をもたらすことができる最小量に等しい。一実施形態では、パクリタキセルの量は、タンパク質担体に対する1種以上の治療薬の親和性をもたらすことができる最小量以上である。一実施形態では、パクリタキセルの量は、1種以上の治療薬とタンパク質担体との複合体形成を促進することができる最小量以上である。これらの実施形態のいずれにおいても、パクリタキセルの量は、パクリタキセルの治療量未満とすることができる。換言すると、その量は、治療効果をもたらすために規定又は想定される量(例えば癌を効果的に治療するための化学療法量など)よりも少なくてもよい。
【0121】
一実施形態では、ナノ粒子組成物に存在するパクリタキセルの量は、水溶液で再構成したときに約5mg/mL未満である。一実施形態では、ナノ粒子組成物に存在するパクリタキセルの量は、水溶液で再構成したときに約4.54mg/mL未満、約4.16mg/mL未満、約3.57mg/mL未満、約3.33mg/mL未満、約3.12mg/mL未満、約2.94mg/mL未満、約2.78mg/mL未満、約2.63mg/mL未満、約2.5mg/mL未満、約2.38mg/mL未満、約2.27mg/mL未満、約2.17mg/mL未満、約2.08mg/mL未満、約2mg/mL未満、約1.92mg/mL未満、約1.85mg/mL未満、約1.78mg/mL未満、約1.72mg/mL未満又は約1.67mg/mL未満である。
【0122】
幾つかの実施形態では、抗体、アプタマー、治療薬又はそれらの組合せは明示的に除外される。
【0123】
ある場合には、本明細書に記載の複合体は、1μm未満の平均直径を有するように設計できる。例えば、1μm未満の平均直径を有する複合体が形成されるように、適切な濃度の担体タンパク質及び抗体(又は他の結合剤)を使用することができる。ある場合には、本発明で提供される複合体は、0.1μm~1μm(例えば0.1μm~0.95μm、0.1μm~0.9μm、0.1μm~0.8μm、0.1μm~0.7μm、0.1μm~0.6μm、0.1μm~0.5μm、0.1μm~0.4μm、0.1μm~0.3μm、0.1μm~0.2μm、0.2μm~1μm、0.3μm~1μm、0.4μm~1μm、0.5μm~1μm、0.2μm~0.6μm、0.3μm~0.6μm、0.2μm~0.5μm又は0.3μm~0.5μm)の平均直径を有することができる。0.1μm~0.9μmの平均直径を有する本発明で提供される複合体は、哺乳動物の体内に存在する癌その他の疾患を治療するために全身的(例えば静脈内)に投与することができる。
【0124】
ある場合には、本発明で提供される複合体は、該複合体の60%超(例えば65%超、70%超、75%超、80%超、90%超、95%超又は99%超)が0.1μm~0.9μm(例えば0.1μm~0.95μm、0.1μm~0.9μm、0.1μm~0.8μm、0.1μm~0.7μm、0.1μm~0.6μm、0.1μm~0.5μm、0.1~0.4μm、0.1μm~0.3μm、0.1μm~0.2μm、0.2μm~1μm、0.3μm~1μm、0.4μm~1μm、0.5μm~1μm、0.2μm~0.6μm、0.3μm~0.6μm、0.2μm~0.5μm又は0.3μm~0.5μm)の直径を有する。直径0.1μm~0.9μmの複合体を60%超(例えば65%超、70%超、75%超、80%超、90%超、95%超又は99%超)有する本発明で提供される複合体は、哺乳動物の体内に存在する関連抗原を発現する癌その他の疾患を治療するために全身的(例えば静脈内)に投与することができる。
【0125】
一態様では、ナノ粒子組成物の平均粒子サイズは、約1μm未満である。一態様では、ナノ粒子組成物の平均粒子サイズは約90nm~約1μm(例えば約90nm~約800nm、約90nm~約700nm、約90nm~約600nm、約90nm~約500nm、約90nm~約400nm、約90nm~約300nm、約90nm~約200nm又は約90nm~約180nm)である。想定される値は、上下限を含め、これらの範囲内の任意の値、部分範囲又は範囲を包含する。
【0126】
好ましい態様では、本明細書に記載されたサイズ及びサイズ範囲は、再構成した凍結乾燥ナノ粒子組成物の粒子サイズに関する。すなわち、凍結乾燥ナノ粒子を水溶液(例えば水、PBS、その他の薬学的に許容される添加物、緩衝液など)に再懸濁した後の粒子サイズ又は平均粒子サイズは本明細書に記載された範囲内にある。
【0127】
一態様では、ナノ粒子の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%は、再構成組成物中で単一ナノ粒子として存在する。すなわち、ナノ粒子の約50%未満、40%未満、30%未満等々しか二量化又はオリゴマー化されない。幾つかの実施形態では、組成物中のナノ粒子の二量化の割合は、個数基準で、20%未満、10%未満、好ましくは5%未満である。
【0128】
幾つかの実施形態では、ナノ粒子のサイズは、結合剤に対する担体タンパク質の量(例えば比率)を調整することによって制御できる。ナノ粒子のサイズ及びサイズ分布も重要である。本発明のナノ粒子は、それらのサイズに応じて異なる挙動を呈することがある。大きなサイズでは、凝集塊が血管を塞ぎかねない。したがって、ナノ粒子の凝集は、組成物の性能及び安全性に影響を与えかねない。一方、大きな粒子は、特定の条件下(例えば静脈内投与しない場合)で治療効果が高まることがある。
【0129】
一態様では、ナノ粒子複合体は、ナノ粒子の表面に非共有結合した約100~約1000個の結合剤を含む。一態様では、ナノ粒子複合体は、ナノ粒子の表面に非共有結合した約200~約1000個の結合剤を含む。一態様では、ナノ粒子複合体は、ナノ粒子の表面に非共有結合した約300~約1000個の結合剤を含む。一態様では、ナノ粒子複合体は、ナノ粒子の表面に非共有結合した約400~約1000個の結合剤を含む。一態様では、ナノ粒子複合体は、ナノ粒子の表面に非共有結合した約500~約1000個の結合剤を含む。一態様では、ナノ粒子複合体は、ナノ粒子の表面に非共有結合した約600~約1000個の結合剤を含む。一態様では、ナノ粒子複合体は、ナノ粒子の表面に非共有結合した約200~約800個の結合剤を含む。一態様では、ナノ粒子複合体は、ナノ粒子の表面に非共有結合した約300~約800個の結合剤を含む。好ましい実施形態では、ナノ粒子複合体は、ナノ粒子の表面に非共有結合した約400~約800個の結合剤を含む。想定される値は、上下限を含め、これらの範囲内の任意の値又は部分範囲を包含する。
【0130】
一実施形態では、結合剤は腫瘍抗原に結合する(腫瘍抗原に特異的である)。一実施形態では、結合剤は、α-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、メラノーマ関連抗原(MAGE)、チロシナーゼ、HER2、HER3、CD3、CD19、CD20、CD33、CD47、CD274、CD279、CD30、CD52、PD-1、PD-L1、CTLA4、GD2、VEGF、BCR-ABL、NY-ESO-1、MAGE-1、MAGE-3、SSX2、メランA、EGFR、CD38又はRANKリガンドに結合する。これらは抗原の例示にすぎず、限定的なものではない。
【0131】
修飾ナノ粒子複合体の製造方法
一態様では、本発明は、ナノ粒子複合体の製造方法であって、アルブミンを、1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する抗体と、ナノ粒子複合体を形成する条件下で、一緒にすることを含む方法に関する。一実施形態では、担体タンパク質又はナノ粒子複合体を治療薬と一緒にする。一実施形態では、治療薬はパクリタキセルである。
【0132】
一態様では、ナノ粒子複合体の製造方法であって、1以上の抗体結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する担体タンパク質を抗体と共にインキュベートすることを含む方法が開示される。一実施形態では、担体タンパク質はアルブミンである。一実施形態では、担体タンパク質又はナノ粒子複合体を治療薬と一緒にする。一実施形態では、治療薬はパクリタキセルである。一態様では、抗体は、1以上のアルブミン結合性モチーフを含むように修飾された修飾ポリペプチド配列を有する修飾抗体である。
【0133】
一態様では、ナノ粒子複合体は、担体タンパク質又は担体タンパク質-治療薬粒子を結合剤と、約10:1~約10:30の担体タンパク質粒子又は担体タンパク質-治療薬粒子/結合剤比で接触させることによって形成される。一実施形態では、上記比は約10:2~約10:25である。一実施形態では、上記比は約10:2~約1:1である。好ましい実施形態では、上記比は約10:2~約10:6である。特に好ましい実施形態では、上記比は約10:4である。想定される比は、上下限を含め、これらの範囲内の任意の値、部分範囲又は範囲を包含する。
【0134】
一実施形態では、ナノ粒子の形成に使用される溶液その他の液体媒体の量が特に重要である。担体タンパク質(又は担体タンパク質-治療薬)及び抗体の過度に希釈された溶液中ではナノ粒子は形成されない。過度に濃縮された溶液は、組織化されていない凝集物を生じる。幾つかの実施形態では、使用される溶液(例えば滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水)の量は約0.5mLの溶液~約20mLの溶液である。幾つかの実施形態では、担体タンパク質の量は約1mg/mL~約100mg/mLである。幾つかの実施形態では、結合剤の量は約1mg/mL~約30mg/mLである。例えば、幾つかの実施形態では、担体タンパク質:結合剤:溶液の比は、1mLの溶液(例えば生理食塩水)中、約9mgの担体タンパク質(例えばアルブミン)と4mgの結合剤(例えば抗体(例えばBEV))である。ある量の治療薬(例えばタキソール)も担体タンパク質に添加することができる。例えば、1mLの溶液中、4mgの結合剤(例えば抗体、Fc融合分子又はアプタマー)及び9mgの担体タンパク質に1mgのタキソール(10mgの担体タンパク質-治療薬)を添加することができる。典型的な静注用バッグを例えば約1リットルの溶液と共に使用する場合、1mLで使用する場合と比較して1000倍量の担体タンパク質/担体タンパク質-治療薬及び抗体を使用する必要がある。そのため、本発明のナノ粒子は、標準的な静注用バッグ内では形成することはできない。さらに、各成分を本発明の治療量で標準的な静注用バッグに加えても、それらの成分が自己集合してナノ粒子を形成することはない。
【0135】
一実施形態では、担体タンパク質又は担体タンパク質-治療薬粒子は、約4~約8のpHを有する溶液中で結合剤と接触させる。一実施形態では、担体タンパク質又は担体タンパク質-治療薬粒子は、約4のpHを有する溶液中で結合剤と接触させる。一実施形態では、担体タンパク質又は担体タンパク質-治療薬粒子は、約5のpHを有する溶液中で結合剤と接触させる。一実施形態では、担体タンパク質又は担体タンパク質-治療薬粒子は、約6のpHを有する溶液中で結合剤と接触させる。一実施形態では、担体タンパク質又は担体タンパク質-治療薬粒子は、約7のpHを有する溶液中で結合剤と接触させる。一実施形態では、担体タンパク質又は担体タンパク質-治療薬粒子は、約8のpHを有する溶液中で結合剤と接触させる。例えば、担体タンパク質又は担体タンパク質-治療薬粒子は、約5~約7のpHを有する溶液中で結合剤と接触させる。
【0136】
一実施形態では、担体タンパク質粒子又は担体タンパク質-治療薬粒子を、約5℃~約60℃の温度或いは上下限を含めて、この範囲内の任意の範囲、部分範囲又は値の温度で、結合剤と共にインキュベートする。好ましい態様では、担体タンパク質粒子又は担体タンパク質-治療薬粒子を、約23℃~約60℃の温度で結合剤と共にインキュベートする。一実施形態では、担体タンパク質粒子又は担体タンパク質-治療薬粒子を室温で結合剤と共にインキュベートする。
【0137】
理論に縛られるものではないが、ナノ粒子複合体の安定性は、少なくとも部分的には、ナノ粒子複合体が形成される温度及び/又はpH、並びに溶液中の各成分(すなわち、担体タンパク質、結合剤及び任意的に治療薬)の濃度に依存すると考えられる。
【0138】
一般に、担体タンパク質、化学療法薬及び結合剤の任意の適切な組合せを本明細書に記載の通り使用することができる。例えば、適量の担体タンパク質(例えば化学療法薬と共に)及び適量の結合剤を同じ容器内で一緒に混合することができる。この混合物は、癌患者に投与する前に、適温(例えば室温、5℃~60℃、23℃~60℃、15℃~30℃、15℃~25℃、20℃~30℃又は20℃~25℃)で所定期間(例えば約30分間或いは約5~約60分間、約5~約45分間、約15~約60分間、約15~約45分間、約20~約400分間又は約25~約35分間)インキュベートすることができる。
【0139】
ある場合には、化学療法薬を含む担体タンパク質ナノ粒子を結合剤と接触させて、患者に投与するまで保存される複合体を形成することができる。例えば、組成物を、本明細書に記載の通り形成して、患者に投与されるまの期間(例えば数日又は数週間)保存することができる。
【0140】
幾つかの実施形態では、化学療法薬は、アビラテロン、ベンダムスチン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、カバジタキセル、シスプラチン、クロラムブシル、ダサチニブ、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エルロチニブ、エトポシド、エベロリムス、ゲフィチニブ、イダルビシン、イマチニブ、ヒドロキシウレア、イマチニブ、ラパチニブ、リュープロレリン、メルファラン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ネダプラチン、ニロチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パゾパニブ、ペメトレキセド、ピコプラチン、ロミデプシン、サトラプラチン、ソラフェニブ、ベムラフェニブ、スニチニブ、テニポシド、トリプラチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチン及びシクロホスファミドからなる群から選択される。
【0141】
他の化学療法薬を含むアブラキサン(登録商標)及びアルブミン粒子の両方が、米国特許第7758891号、同第7820788号、同第7923536号、同第8034375号、同第8138229号、同第8268348号、同第8314156号、同第8853260号及び同第9101543号に開示されており、その各々の開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。さらに、担体タンパク質、化学療法薬、抗体コンジュゲート又はそれらの組合せは、PCT/US2015/054295及び米国特許出願公開第2014/0178486号に開示されており、その各々の開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0142】
凍結乾燥
本発明の凍結乾燥組成物は、安定剤、緩衝剤などの存在下又は非存在下での、標準的な凍結乾燥技術によって調製される。驚くべきことに、これらの条件はナノ粒子の比較的脆弱な構造を変化させない。さらに、これらのナノ粒子は凍結乾燥時にそれらのサイズ分布を保持し、さらに重要なことに、あたかも新たに調製したかのように実質的に同じ形態及び比率でインビボ投与(例えば静脈内送達)のために再構成し得る。
【0143】
製剤
一態様では、ナノ粒子組成物は全身送達、例えば静脈内投与用に製剤化される。
【0144】
一態様では、ナノ粒子組成物は、腫瘍への直接注射用に製剤化される。直接注射は、腫瘍部位又はその近傍への注射、腫瘍への灌流などを包含する。ナノ粒子組成物は全身投与されないので、ナノ粒子組成物は腫瘍への直接注射用に製剤化され、任意の平均粒子サイズを含んでいてもよい。理論に縛られるものではないが、大きな粒子(例えば500nm超、1μm超など)は、腫瘍内に固定化される可能性が高く、そのため有益な効果が高まると考えられる。
【0145】
別の態様では、本発明で提供される化合物と1種以上の薬学的に許容される添加物とを含む組成物が本明細書で提供される。
【0146】
一般に、本発明で提供される化合物は、許容される投与様式のいずれかによって患者に投与するために製剤化することができる。様々な製剤及び薬物送達システムが当技術分野で利用できる。例えば、Gennaro, A.R., ed. (1995) Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing Co.参照。
【0147】
一般に、本発明で提供される化合物は、医薬組成物として、以下の経路:経口、全身(例えば経皮、鼻腔内又は坐剤)又は非経口(例えば筋肉内、静脈内又は皮下)投与のいずれかによって投与される。
【0148】
組成物は、一般に、本発明の化合物と1種以上の薬学的に許容される添加物との組合せからなる。許容される添加物は非毒性であり、投与を助長し、本発明に係る化合物の治療効果に悪影響を及ぼさない。かかる添加物は、固体、液体、半固体、或いはエアロゾル組成物の場合には当業者が一般に入手し得る気体添加物とし得る。
【0149】
固体医薬添加物としては、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルクなどが挙げられる。液体及び半固体添加物は、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、並びに石油、動物、植物又は合成起源のものを始めとする各種の油、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などから選択し得る。液体担体、特に注射液用の液体担体としては、水、生理食塩水、水性デキストロース及びグリコールが挙げられる。他の適切な医薬添加物及びそれらの製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, edited by E. W. Martin (Mack Publishing Company, 18th ed., 1990)に記載されている。
【0150】
本発明の組成物は、所望に応じて、活性成分を含有する1以上の単位用量剤形を含むパック又はディスペンサー装置で提供し得る。かかるパック又は装置は、例えば、ブリスターパックのように金属若しくはプラスチック箔、又はバイアルのようにガラス及びゴム栓を備えていてもよい。パック又はディスペンサー装置には、投与のための説明書を添付してもよい。また、本発明の化合物を適合性の医薬担体中に製剤化してなる組成物を調製し、適切な容器に入れ、所定の状態の治療に関するラベルを貼付してもよい。
【0151】
修飾ナノ粒子複合体の使用方法
本明細書に記載のナノ粒子複合体は、哺乳動物の癌細胞及び/又は腫瘍の治療に有用である。好ましい実施形態では、哺乳動物はヒト(すなわちヒトの患者)である。好ましくは、凍結乾燥ナノ粒子組成物を投与前に再構成する(水性添加物中に懸濁する)。
【0152】
一態様では、癌細胞を処置するための方法であって、細胞を有効量のナノ粒子複合体と接触させること及び癌細胞の治療のための本明細書に記載の免疫療法を含む方法が提供される。癌細胞の処置としては、増殖の減少、細胞の死滅、細胞の転移の予防などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
本明細書に記載の複合体を得るには適切な方法を用いればよい。本明細書に記載の複合体を哺乳動物に投与するには適切な方法を用いればよい。例えば、担体タンパク質/結合剤/化学療法薬複合体を含む組成物は、注射(例えば皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射又は髄腔内注射)によって投与できる。
【0154】
本明細書に記載のナノ粒子複合体、組成物及び方法によって治療することができる癌又は腫瘍としては、胆道癌;膠芽腫及び髄芽腫を含む脳腫瘍;乳癌;子宮癌;卵管癌;子宮頸癌;絨毛癌;大腸癌;膀胱癌;子宮内膜癌;膣癌;外陰癌;食道癌;口腔癌;胃癌;腎臓癌;急性リンパ性白血病及び骨髄性白血病を含む血液腫瘍;多発性骨髄腫;エイズ関連白血病及び成人T細胞白血病リンパ腫;ボーエン病及びパジェット病を含む上皮内腫瘍;肝癌(肝細胞癌);肺癌;頭頸部癌又は口腔癌(口、喉、食道、鼻咽頭、顎、扁桃、鼻、唇、唾液腺、舌など);ホジキン病及びリンパ球性リンパ腫を含むリンパ腫;神経芽細胞腫;神経内分泌腫瘍;扁平上皮癌を含む口腔癌;副腎癌;肛門癌;血管肉腫;虫垂癌;胆管癌;骨癌;カルチノイド腫瘍;軟部肉腫;横紋筋肉腫;眼癌;上皮細胞、間質細胞、生殖細胞及び間葉細胞から発生するものを含む卵巣癌及び卵管癌;胆嚢癌;膵癌;前立腺癌;直腸癌;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫及び骨肉腫を含む肉腫;メラノーマ、カポジ肉腫、基底細胞癌及び扁平上皮癌を含む皮膚癌;胚性腫瘍(セミノーマ、非セミノーマ[奇形腫、絨毛癌])、間質性腫瘍及び胚細胞性腫瘍を含む精巣癌;陰茎癌;血管内皮腫;消化器癌;尿管癌;尿道癌;脊髄癌;下垂体癌;原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫;甲状腺癌(甲状腺腺癌及び髄様癌を含む);並びに腺癌及びウィルムス腫瘍を含む腎臓癌が挙げられるが、これらに限定されない。重要な実施形態では、癌又は腫瘍として、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、リンパ腫、多発性骨髄腫及びメラノーマが挙げられる。
【0155】
本発明で提供する複合体を含む組成物を哺乳動物に投与する前に、そのが癌又は関連抗原を発現する疾患を有するか否かを決定するためにその哺乳動物を検査してもよい。哺乳動物が癌又は関連抗原を発現する疾患を有するか否かを決定するには適切な方法を用いればよい。例えば、標準的な診断技術を用いて哺乳動物(例えばヒト)を同定することができる。ある場合には、組織生検を収集及び分析して、哺乳動物が特定の抗原を発現する癌又は疾患を有するか否かを判定することができる。
【0156】
哺乳動物が疾患又は癌を有すると同定されると、本発明で提供される複合体を含む組成物をその哺乳動物に投与することができる。例えば、複合体を含む組成物は、腫瘍の外科的切除に先だって又はその代わりに投与することができる。ある場合には、本発明で提供される複合体を含む組成物は、腫瘍の切除後に投与することができる。
【0157】
ある特定の哺乳動物が特定の量に反応しないときは、その量を例えば2倍に増加させることができる。この高い濃度が投与された哺乳動物を、治療に対する反応性及び毒性症状の両方についてモニターし、それに応じて調整を行ってもよい。有効量は、治療に対する哺乳動物の反応に応じて、一定のまま保つこともできるし、スライド式又は可変用量として調整することもできる。特定の用途に用される実際の有効量には、様々な要因が影響する可能性がある。例えば、投与頻度、治療期間、複数の治療薬の併用、投与経路及び癌又は疾患の重症度によって、投与される実際の有効量の増減が必要とされることがある。
【0158】
本発明で提供される複合体を含む組成物は、所望の結果(例えば無増悪生存期間(progression-freesurvival)の延長)を達成するのに有効な、適切な量及び適切な頻度で、適切な期間にわたって哺乳動物に投与し得る。ある場合には、本発明で提供される組成物は、癌又は疾患を有する哺乳動物に、癌又は疾患の増悪率(progressionrate)を5%、10%、25%、50%、75%、100%又はそれ以上減少させるために投与することができる。例えば、それ以上の癌の進行が認められなくなるまで増悪率を低下させることができる。
【0159】
癌の増悪率の低下の有無を判断するために、適切な方法を用いることができる。例えば、癌の増悪率は、様々な時点で組織を撮像して、癌細胞の存在量を求めることによって評価することができる。様々な時点で決定した組織内の癌細胞の量を比較することによって増悪率を決定することができる。本明細書に記載された治療の後、増悪率を別の時間間隔で再度決定することもできる。ある場合には、治療後の癌のステージを判定して、治療前のステージと比較することによって、増悪率が低下したか否かを判定することができる。
【0160】
ある場合には、本発明で提供される組成物は、未治療の癌を有する対応哺乳動物の無増悪生存期間中央値又は投与前に複合体を形成することなく担体タンパク質、化学療法薬及び結合剤で治療した癌を有する対応哺乳動物の無増悪生存期間中央値と比較して、無増悪生存期間が増加(例えば5%、10%、25%、50%、75%、100%又はそれ以上)する条件下で、癌を有する哺乳動物に投与することができる。ある場合には、本発明で提供される組成物は、癌を有する対応哺乳動物に担体タンパク質、化学療法薬、担体タンパク質/化学療法薬ナノ粒子(結合剤なし)又は結合剤単独を投与したときの無増悪生存期間中央値と比較して、無増悪生存期間を5%、10%、25%、50%、75%、100%又はそれ以上増加させるために癌を有する哺乳動物に投与することができる。無増悪生存期間は、いかなる期間(例えば1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月又はそれ以上)で測定してもよい。
【0161】
ある場合には、本発明で提供される複合体を含む組成物は、哺乳動物の集団の8週間無増悪生存率が、本明細書に記載の複合体を含む組成物が投与されていない対応哺乳動物の集団で観察されるものよりも65%以上(例えば66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%又はそれ以上)大きくなる条件下で哺乳動物に投与することができる。ある場合には、組成物は、哺乳動物の集団の無増悪期間(timeto progression)中央値が150日以上(例えば少なくとも155日、160日、163日、165日又は170日)となる条件下で、癌を有する哺乳動物に投与することができる。
【0162】
本発明で提供される複合体を含む組成物の有効量は、哺乳動物に対して有意な毒性を生じることなく、結合剤によって認識される抗原を発現する癌若しくは疾患の増悪率(progressionrate)の低下、無増悪生存率の増加又は無増悪期間中央値の増加をもたらすいずれかの量とすることができる。ある特定の哺乳動物が特定の量に反応しないときは、その量を例えば2倍に増加させることができる。この高い濃度が投与された哺乳動物を、治療に対する反応性及び毒性症状の両方についてモニターし、それに応じて調整を行ってもよい。有効量は、治療に対する哺乳動物の反応に応じて、一定のまま保つこともできるし、スライド式又は可変用量として調整することもできる。特定の用途に用される実際の有効量には、様々な要因が影響する可能性がある。例えば、投与頻度、治療期間、複数の治療薬の併用、投与経路及び癌又は疾患の重症度によって、投与される実際の有効量の増減が必要とされることがある。
【0163】
投与の頻度は、哺乳動物に対して有意な毒性を生じることなく、癌若しくは疾患の増悪率の低下、無増悪生存率の増加又は無増悪期間中央値の増加をもたらすいずれかの頻度とすることができる。例えば、投与頻度は、1月に約1回~約3回、1月に約2回~約6回又は2月に約1回~約3回とし得る。投与頻度は、一定のままであってもよいし、治療期間中に変えてもよい。本発明で提供される組成物での治療の過程は、休息期間を含んでいてもよい。例えば、2週間の投与期間とそれに続く2週間の休止期間で組成物を投与することができ、かかる投与計画を複数回繰り返すことができる。有効量と同様に、特定の用途に用いられる実際の投与頻度には様々な要因が影響する可能性がある。例えば、有効量、治療期間、複数の治療薬の併用、投与経路及び癌又は疾患の重症度によって、投与頻度の増減が必要とされることがある。
【0164】
本発明で提供される組成物の投与のための有効期間は、哺乳動物に対して有意な毒性を生じることなく、癌若しくは疾患の増悪率の低下、無増悪生存率の増加又は無増悪期間中央値の増加をもたらすいずれかの期間とし得る。例えば、有効期間は数日から数週間、数ヶ月又は数年まで変動し得る。一般に、癌又は疾患の治療のための有効期間は、数週間乃至数ヶ月の範囲とすることができる。ある場合には、有効期間は、個々の哺乳動物が生存している期間とすることができる。特定の治療に使用される実際の有効期間には、様々な要因が影響する。例えば、有効期間は、投与頻度、有効量、複数の治療薬の併用、投与経路及び癌又は疾患の重症度によって変動することがある。
【0165】
本発明で提供される担体タンパク質/化学療法薬/結合剤複合体を含む組成物は、任意の適切な形態とし得る。例えば、本発明で提供される組成物は、溶液又は粉末の形態とすることができ、注射用懸濁液を作るための希釈剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。組成物は、限定されるものではないが、薬学的に許容されるビヒクルを始めとする追加成分を含んでいてもよい。薬学的に許容されるビヒクルとしては、例えば、生理食塩水、水、乳酸、マンニトール又はこれらの組合せが挙げられる。
【0166】
本発明で提供される組成物を哺乳動物に投与した後、哺乳動物をモニターして癌又は疾患が治療されたか否かを判定することができる。例えば、哺乳動物を治療後に評価して、癌又は疾患の増悪率の低下(例えば停止)の有無を判定することができる。本明細書に記載の通り、増悪及び生存率の評価には任意の方法を用いることができる。
【0167】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と共に説明してきたが、以上の説明は例示を目的としたものであり、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の技術的範囲を限定するものではない。その他の態様、利点及び変更は添付の特許請求の範囲の技術的範囲に属する。
【実施例0168】
当業者には明らかであろうが、本明細書に記載する粒子の製造及び使用に関する説明は専ら例示を目的としたものであり、本開示はこのような例示によって限定されるものではない。
【0169】
本明細書で用いる略語は、通常の科学的意味を有する。別途記載しない限り、温度はすべて℃である。本明細書において、以下に示す用語は、別途定義しない限り、以下の意味を有する。
【表2】
【0170】
実施例1:リツキシマブ-アルブミン-パクリタキセルナノ粒子複合体の調製及び特徴
AR160ナノ粒子複合体を調製するために、アブラキサン(登録商標)(ABX;Celgene社(米国ニュージャージー州サミット))とリツキシマブ(Genentech社(米国カリフォルニア州サンフランシスコ))を(別途記載しない限り)それぞれ10mg/mL及び4mg/mLで混合し、室温で30分間インキュベートした。
【0171】
リツキシマブはアブラキサン(登録商標)(ABX)に高い親和性で結合し、解離定数はピコモル濃度域にある。4mg/mLのリツキシマブを10mg/mLのABXと混合すると、160nmのナノ粒子AR160が形成される。AR160ナノ粒子を視覚化するため、リツキシマブをAlexaFluor 488で標識し、10mg/mLのABXと共にインキュベートした。標識リツキシマブを含むAR160ナノ粒子を、Amnis ImageStreamフローサイトメーターを用いて視覚化した(
図1A)。
【0172】
ABXとのリツキシマブの結合を調べるため、AR160分子のフローサイトメトリー分析を行った。ABX及びリツキシマブを、製造元のプロトコルに従ってAlexa-fluor 488(Thermo Scientific社(米国イリノイ州ロックフォード))で標識した。Alexa-fluor 488を1mgのタンパク質と共に室温で60分間インキュベートし、結合しなかった標識をサイズ排除カラムによって標識タンパク質から分離した。非標識ABXと非標識リツキシマブ又は非標識ABXと標識リツキシマブ又は標識ABXと標識リツキシマブを用いて、上述の通りAR160複合体を調製した。フローサイトメトリーデータを
図1Bに示すが、このデータはABXとリツキシマブとの相互作用を示す。
【0173】
遠心した微粒子、100kD超のタンパク質及び100kD未満のタンパク質を含むAR160画分のパクリタキセル含有量を定量した。AR160は上述の通り調製した。10000rpmで2回の遠心分離工程で微粒子を遠心沈殿させた。パクリタキセルの約70%がAR160微粒子と共に残り、残りの30%のほとんどは100kDを超えるタンパク質と共にあり、ごくわずかな割合(0.3%)のパクリタキセルが100kD未満のタンパク質画分中に存在していた(
図1C、左図)。
【0174】
100kDを超えるタンパク質画分の内容物を確認するため、パクリタキセル、リツキシマブ及びヒトアルブミンの染色によってウエスタンブロット分析を行った。上清中のタンパク質複合体を変性し、次いでSDS-PAGEゲルクロマトグラフィーで分離した。次いでタンパク質をPVDF膜に移し、アルブミンについては1:10000希釈のウサギ抗ヒトアルブミン(Cell Signaling社(米国マサチューセッツ州ダンバース))で、パクリタキセルについては1:10000希釈のウサギ抗タキソール(AbCam社(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ))で、リツキシマブについては1:500希釈のラット抗リツキシマブHRP(Bio-rad社(米国カリフォルニア州ハーキュリーズ))でウエスタンブロットした。1:2000希釈のヤギ抗ウサギIgG HRP(Cell Signaling社(米国マサチューセッツ州ダンバース))をアルブミン及びタキソールに対する二次抗体として使用した。タンパク質はECL基質(Thermo Scientific社(米国イリノイ州ロックフォード))によって視覚化した。
【0175】
アルブミン、抗体及びパクリタキセルは約200kDのバンド内に共存しており(
図1C、右図)、これは160nm粒子が、抗体と共に腫瘍ターゲティング能力を有する複数の機能単位に解離し、200kD高分子種内に細胞障害性薬物を保持していることを示唆する。
【0176】
実施例2:膜結合CD20へのリツキシマブ-アルブミン-パクリタキセルナノ粒子複合体の結合
AR160が膜結合CD20に結合するか否かを決定するため、Daudi細胞をPE抗ヒトCD19及びAR160(ABXをAlexa fluor 488で標識し、リツキシマブでコートしたもの)で染色した。散布図は、Daudi細胞の集団が、PE抗ヒトCD19で染色したときは75%陽性、蛍光標識AR160で染色したときは75%陽性、PE抗ヒトCD19とAlexa fluor 488タグ付けAR160の両方で染色したときは約74%二重陽性であることを示しており、AR160がDaudi細胞に結合することを示唆している(
図2A)。染色Daudi細胞は、Amnis ImageStreamでのイメージングフローサイトメトリーによっても視覚化した(
図2B)。
【0177】
PE抗ヒトCD19及びCD20は、BD Pharmingen社(米国ニュージャージー州フランクリンレイクス)から購入した。Daudi細胞を、Alexa-fluor 488 AR 160、PE抗ヒトCD19及びPE抗ヒトCD20と4℃で30分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液(0.5%BSA及び0.1%Naアジドを含む1×PBS)で2回洗浄した。Guavaフローサイトメーター(Millipore社(米国マサチューセッツ州ビレリカ))で細胞を流し、データを収集した。フローサイトメトリーデータは、GuavaSoftソフトウェア(Millipore社(米国マサチューセッツ州ビレリカ))を用いて分析し、AR160+、CD19+及びCD20+細胞の百分率を計数した。Alexa-fluor 488標識ABX及びPE抗ヒトCD19/Alexa-fluor 488 AR160標識Daudi細胞の共焦点写真には、Amnis ImageStream(Millipore社(米国マサチューセッツ州ビレリカ))を用いた。データの解析及び写真の収集には、Inspireソフトウェア(Millipore社(米国マサチューセッツ州ビレリカ))を用いた。
【0178】
実施例3:リツキシマブ-アルブミン-パクリタキセルナノ粒子複合体のサイズ及び安定性
様々な量のリツキシマブを用いて形成されたナノ粒子複合体のサイズを決定するため、10mgのABXを0mg、2mg、4mg、6mg、8mg又は10mgのリツキシマブと共にインキュベートした。サイズの測定にはMalvern Nanosight(Malvern社(英国ウスターシャー))を用いた。粒子を1:200に希釈し、カメラレベル9及び捕捉検出閾値16を用いて粒子サイズ及び数を決定した。Nanosightは、粒子サイズ及び濃度を得るのに光散乱及びブラウン運動を利用する。得られたサイズを
図2Cに示す。
【0179】
粒子形成に対するインキュベーション中のpHレベルの影響を調べるため、AR160ナノ粒子をインキュベーションpH3、7又は9で実施例1に記載の通り形成し、解離定数(Kd)を決定した。pH3で形成したナノ粒子複合体のKdは4.4×10-10であり、pH7で形成したナノ粒子複合体のKdは3.9×10-9であり、pH9で形成したナノ粒子複合体のKdは2.5×10-8であった。これらのデータは、混合条件のpHを変えるとABX/リツキシマブ結合の強さに影響を与えることを示している。
【0180】
ABX単独と対比したAR160の安定性を、Nanosight技術を用いて評価した。ABX及びAR160を記載のように調製し、生理食塩水中室温で0~6時間及び24時間静置し、各時点で粒子の量及びサイズを測定した(
図3)。ABX単独の粒子数は4.23×10
8であったのに対して、AR160は0~24時間で19.1~23.5×10
8粒子の範囲であった。ABXの平均サイズは90nmであり、0~24時間で127~133nmの平均サイズを有していたAR160よりも格段に小さかった。さらに、インキュベーション時間を通して粒子の数及びサイズが同じままであったことから示唆されるように、AR160のサイズは24時間を通して安定であった。ABXはインキュベーション期間中に不安定になり、ABXの粒子サイズ及び数の測定が困難であったため、時間0のデータのみを示す(
図3)。
【0181】
血清中でのAR160の安定性をABXと対比して評価するため、ABX及びAR160の同数(30×10
8)の粒子をヒトAB型血清に添加した。室温で5、15、30及び60分間インキュベートした後の残存粒子数を定量した(
図4A及び
図4B)。5、15、30及び60分の各時点で、それぞれ、ABX単独(11、6.6、4.2及び5.2×10
8)よりも多数のAR160粒子(19、16、11及び10×10
8)が測定された(
図4C)。さらに、ABXの粒子数は、わずか15分間インキュベートしただけで、血清を基準とするベースラインに戻ったが、AR160の粒子数は、60分間のインキュベーションを通して血清単独よりも高いままであった(
図4C)。
【0182】
実施例4:リツキシマブ-アルブミン-パクリタキセルナノ粒子複合体は、Daudi細胞への抗CD20抗体の結合を防止する。
AR160複合体中のリツキシマブのリガンド結合能を調べた。CD20+Daudi細胞をリツキシマブ(
図5C)、ABX(
図5D)、AR160(
図5E)又は24時間経過AR160(
図5F)と共にインキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、PE-マウス抗ヒトCD20で染色し、フローサイトメトリーで計数した。アイソタイプ対照(6.2%陽性;
図5A)及びPEマウス抗ヒトCD20(83.6%陽性;
図5B)をそれぞれ陰性対照及び陽性対照として用いた。結果は、リツキシマブ及びAR160が、その後の抗ヒトCD20抗体の結合を阻害することを示しており、リツキシマブが単独でかつAR160複合体内においても抗CD20抗体の結合を阻害することを示唆している。ABX単独では抗体の結合を阻害しなかったが、これは、AR160粒子中のリツキシマブがそのリガンド結合特性を特異的に保持していることを示している。
【0183】
実施例5:リツキシマブ-アルブミン-パクリタキセルナノ粒子複合体の毒性
AR160中のパクリタキセルがその抗増殖能力を維持していることを確認するため、CD20+Daudi細胞でのインビトロ毒性アッセイにおいて、ABX及びリツキシマブ単独、AR160、及び試験の24時間前に調製しておいたAR160を試験した。細胞増殖の測定は、チミジンアナログのEdUを用いて行い、これをFITCコンジュゲート抗EdUを用いて検出し、フローサイトメトリーによって計数した。パクリタキセルを含有するすべての薬物でIC50が約25μg/mLであったのに対して、リツキシマブ単独では毒性が認められなかった(
図6)。従って、パクリタキセルの毒性はAR160内においても損なわれていない。
【0184】
ヒトB細胞リンパ腫株Daudi(ATCC(米国バージニア州マナサス))は、1%ペニシリン、ストレプトマイシン及びグルタミン(PSG)及び10%FBSを含むRPMI中で培養した。細胞を採取し、24ウェルプレートに1ウェル当たり0.2×106細胞で播種した。細胞を、パクリタキセル濃度0~200μg/mLのABX単独若しくはAR160又はリツキシマブ(0~200μg/mL)に37℃及び5%CO2で一晩曝露した。増殖の測定には、Click-iT EdU(Molecular Probes社(米国オレゴン州ユージーン))キットを利用した。簡単に説明すると、10mM EdUをウェルに添加して、細胞及びABX、リツキシマブ又はAR160と共に一晩インキュベートした。細胞を1%サポニンで膜透過処理し、取り込まれたEdUをFITC結合抗体で標識した。増殖指数は、各処理で得られたFITC陽性細胞を未処理EdU標識細胞の最大増殖率で除算することによって決定した。
【0185】
実施例6:リツキシマブ-アルブミン-パクリタキセルナノ粒子複合体のインビボ試験
腫瘍に対する有効性を試験するために、5×106個のDaudiヒトリンパ腫細胞を胸腺欠損ヌードマウス(Harlan Sprague Dawley社(米国インディアナ州インディアナポリス))の右側腹部に移植した。腫瘍が約800mm3の大きさに達したときに、マウスを無作為化し、マウス背側尾静脈への100μlの静脈内注射によって生理食塩水、RIT(12mg/kg;Rit12)、RIT(18mg/kg;Rit18)、ABX(30mg/kg;ABX30)、ABX(45mg/kg;ABX45)、AR160(12mg/kgのRIT及び30mg/kgのRITを含むもの;AR160 30)又はAR160(18mg/kgのRIT及び45mg/kgのABXを含むもの;AR160 45)で処置した。腫瘍の大きさを週2~3回モニターし、腫瘍の体積を式(長さ×幅2)/2によって計算した。腫瘍の大きさがマウスの体重の10%又は約2500mm3に等しくなったときにマウスを屠殺した。ベースラインからの10日目の変化を以下の通り計算した:[(処置日の腫瘍サイズ-10日目の腫瘍サイズ)/治療日の腫瘍サイズ]×100。Kaplan-Meier曲線を作成し、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software社(米国カリフォルニア州ラホヤ))を用いて生存率期間中央値を計算した。
【0186】
10日目までに、AR160 45処置群(17/17)のマウスはすべて腫瘍反応を示し、AR160 30処置群の94.1%(16/17)のマウスが完全な腫瘍反応を示したのに対して、ABX45、ABX30、RIT18、RIT12及び生理食塩水処置群で応答したマウスは、それぞれ、7/14(50%)、3/7(42.8%)、1/4(25%)、0/7(0%)及び0/5(0%)であった(
図7A~7G)。各群において10日目に生存していたマウスの百分率は、生理食塩水、RIT12、RIT18、ABX30、ABX45、AR160 30及びAR160 45の群で、それぞれ、0%、12%、38%、43%、71%、92%及び100%であった(
図7H)。他のすべての群と比較したAR160 45群におけるベースライン腫瘍サイズからの変化率は有意であった:生理食塩水及びRIT12に対してp<0.0001、RIT18に対してp=0.0003、ABX30に対してp=0.0054、ABX45に対してp=0.0098、及びAR160 30に対してp=0.003。生理食塩水、RIT12、RIT18、ABX30、ABX45及びAR160 30で処置したマウスの生存期間中央値がそれぞれ9日、8日、10.5日、12日、16日及び53.5日であったのに対して、AR160 45で処置したマウスの生存期間中央値は、すべてのマウスを屠殺した90日でも定義できないままであった(
図8)。AR160 45群の生存期間中央値は、生理食塩水、RIT12、RIT18、ABX30、ABX45群のマウスよりも有意に高かった(p<0.0001)が、2つのAR160群間の差は有意ではなかった(p=0.0715)。
【0187】
インビボイメージングのため、SAIVI抗体標識キット(Thermo Scientific社(米国イリノイ州ロックフォード))からのプロトコールに従って、アブラキサン粒子をAlexaFluor 750色素で標識した。色素及び粒子溶液を室温で60分間インキュベートし、次いで精製カラムに通して未結合の標識を除去した。標識粒子を、Amicon Ultra遠心分離フィルター(Millipore社(米国マサチューセッツ州ビレリカ))を用いて14.54mgパクリタキセル/mLの濃度に濃縮した。アブラキサンを、それぞれ濃度10mg/mL及び4mg/mLのIVIG(CSL Berhingh社(米国ペンシルバニア州キングオブプルシア))又はリツキシマブ(Genentech社(米国カリフォルニア州サンフランシスコ))と共に30分間インキュベートした。Malvern Nanosight(Malvern社(英国ウスターシャー))で粒子サイズをチェックしてAR160の形成を確認した。マウスに、100mgの2mg/mLの標識アブラキサン、IgGと共にインキュベートしたアブラキサン(ABIgG)又はAR160を注射した。注射して6、24、48及び72時間後に、Perkin Elmer IVIS Spectrum(Perkin Elmer社(米国マサチューセッツ州ウォルサム))を用いてマウスをイメージングした。蛍光イメージングは、710/760の励起/発光スペクトルで行い、Living Imageソフトウェア(Perkin Elmer社(米国マサチューセッツ州ウォルサム))を用いて関心領域(ROI)を適用した。設定ROIによって決定した腫瘍領域内の平均放射効率の尺度によって腫瘍送達を決定した。Abraxane、Abx+IgG及びAR160と比較して、粒子の安定性の向上が測定に与える影響を除外するためにバックグラウンドROIを用いた。マウス背部の関心領域(ROI)を用いてバックグラウンド蛍光を測定し、腫瘍ROIの蛍光測定値から減算した。
【0188】
各マウスについてバックグラウンドを減算した後、AR160を投与したマウスではABX単独及びABX結合IgGと比較して19.1%の増加が検出されたが(
図9A及び
図9B)、リンパ腫を標的とする抗体であるリツキシマブを添加すると腫瘍部位での化学療法薬の沈着が増加することを示唆している。さらに、AR160処置マウスにおけるABXの腫瘍沈着の増加が抗体-リガンド媒介性であることを示すために、蛍光標識AR160を注射する24時間前に、AR160中での投与量の1%(0.12mg/kg)、10%(1.2mg/kg)及び100%(12mg/kg)のリツキシマブでマウスを前処置した。AR160注射して24時間後にマウスをイメージングした(
図9C)。AR160単独を注射したマウスは腫瘍内に高レベルの蛍光標識AR160を有していたが、漸増量のリツキシマブで前処理すると腫瘍内の標識AR160量が減少した(
図9D)。まとめると、これらのデータは、ABX単独と比較して腫瘍部位で標識AR160レベルが増加し、こうした腫瘍での薬物沈着の増加はリツキシマブのCD20リガンド特異性によって媒介されることを示唆している。
【0189】
実施例7:薬局製リツキシマブ-アルブミン-パクリタキセルナノ粒子複合体と実験室製複合体との比較
実験室で決定した条件下で、AR160の3つのバッチを薬局で調製した(AR160 p1、p2及びp3)。これらをABX単独及び実験室で調製したAR160(AR160)と比較し、NanoSightによるサイズ分布、並びに各標品中の粒子数について分析した(
図10)。AR160のサイズ及び粒子数は、調製方法にかかわらず、同様であった。
【0190】
AR160複合体中のリツキシマブのリガンド結合能を、実施例4に記載したように評価した。薬局で製造した各バッチは、実験室製AR160と同様に、Daudi細胞との抗CD20抗体の結合を防止した(
図11A~
図11I)。
【0191】
実施例8:ヒト血清アルブミンの抗体結合性モチーフの決定
Biacore表面プラズモン共鳴技術を利用して、様々な抗体(リツキシマブ、トラスツズマブ、ベバシズマブ及びムロモナブ)とアルブミンとの結合部位がどこにあるかを調べた。アルブミンペプチドライブラリーを各々6アミノ酸残基のオーバーラップを含む18アミノ酸残基ペプチドを用いて構築し、CM5チップ上に固定したリツキシマブに対して各アルブミンペプチドを泳動させた。ペプチドをHBS-EPプラス泳動バッファー中に5~10mg/mLで懸濁した。水不溶性ペプチドは10%DMSO(Sigma-Aldrich社(米国ミズーリ州セントルイス))中に溶解させた。リツキシマブはアミンカップリングによってBiacore CM5(GE Healthcare社(米国イリノイ州))チップ上に固定化した。Biacore X-100(GE Healthcare社(米国イリノイ州シカゴ))を用いて、固定化リツキシマブ上でアルブミンペプチドライブラリーをスクリーニングした。120秒の曝露時間で1~50μg/mLからペプチドをスクリーニングした。Biacore X100ソフトウェアを用いて結合キネティクスを決定した。
【0192】
ペプチドをHBS泳動緩衝液中50、25、10、5、2.5、1.25μg/mLで泳動した。Biacore Evaluation Softwareによって解離定数を求めた。HSAペプチド4(配列番号3)、HSAペプチド13(配列番号4)及びHSAペプチド40(配列番号5)の3種類のアルブミンペプチドが抗体に結合することが認められた(
図12A~
図12J)。解離定数(Kd)を
図12Kに示す。興味深いことに、ペプチド40は、多くの薬物に結合する公知の疎水性結合部位である十分に特徴付けられたSudlowサイトIIにマッピングされる。Diana, F.J., Veronich, K. & Kapoor, A.L. Binding of nonsteroidal anti-inflammatory agents and their effect on binding of racemic warfarin and its enantiomers to human serum albumin. J Pharm Sci 78, 195-199 (1989);Sudlow, G., Birkett, D.J. & Wade, D.N. The characterization of two specific drug binding sites on human serum albumin. Mol Pharmacol 11, 824-832 (1975)参照。
【0193】
実施例9:複数の抗体のアルブミン結合性モチーフの決定
Biacore表面プラズモン共鳴技術は、HSAペプチド4、13又は40に結合するリツキシマブ、トラスツズマブ、ベバシズマブ又はムロモナブ上の部位の決定にも利用した(
図13A~13E)。ベバシズマブ(配列番号1)及びリツキシマブ(配列番号2)の両方について、結合部位が位置する重鎖の可変部の配列を
図13Fに示す。興味深い19アミノ酸領域をベバシズマブ(配列番号8-WYFDVWGQGTLVTVSSAST)及びリツキシマブ(配列番号10-WYFNVWGAGTTVTVSAAST)について下線を付して示すが、これらは約80%の同一性がある。
図13Gは、HSAに結合する各抗体由来の配列を示す。興味深いことに、ムロモナブはHSAペプチド4及び40には結合したが、ムロモナブペプチドは全長HSAタンパク質には結合しなかった。
【0194】
上述のように、4mg/mLのリツキシマブを10mg/mLのABXと共にインキュベートすると、NanoSightで測定して、ABX単独の80nmのサイズが、リツキシマブがABXに結合したときの約110nmにシフトする。アルブミン結合性ペプチドを競合アッセイに用いて、それらがAR160の形成に干渉するか否かを調べた。簡単に説明すると、10mg/mlのABXを4mg/mlのリツキシマブ及び10モル過剰の対照ペプチド(HSA10)、HSAペプチド40又はペプチドなし(AR160対照)と共に30分間インキュベートした。すべての粒子でサイズ測定及び計数のためインキュベーション後、Malvern Nanosight(Malvern社(英国ウスターシャー))を利用した。粒子を1:200に希釈し、カメラレベル9及び捕捉検出閾値16を用いて粒子サイズ及び数を決定した。
【0195】
ABX単独では77nmのサイズを有していたが、ABXにリツキシマブが結合すると100nmの粒子が得られた。アルブミン結合性ペプチド(ペプチド40)をABX及びリツキシマブとのインキュベーションに添加すると、得られたナノ粒子は、ABX単独のサイズに相当する70nmであったのに対して、非結合性対照ペプチドでは、この実験におけるAR160のサイズ(109nm)に相当する100nmの粒子が得られた(
図14A)。これらのデータは、HSAペプチド40がAR160の形成を効果的に阻害したことを示唆している。結合性ペプチド4及び13で得られた結果は、さらに不均質なナノ粒子集団を呈し、リツキシマブに対する親和性が低いこれら2種類のアルブミンペプチドが、AR160の形成を不完全に阻止したことを示唆している(
図14C及び
図14D)。
【0196】
ベバシズマブを用いて同様の実験を行った(
図14B)。結果は、HSAペプチド40又はBevペプチド1(配列番号7)の添加が、ABXとの抗体複合体形成の指標となる粒子サイズの30nm増大を防ぐことを示しており、両方のペプチドが抗体-アルブミン結合に干渉することを示している。