(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162032
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】作業機、及び作業機の制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20221014BHJP
E02F 3/43 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
E02F9/24 H
E02F3/43 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132565
(22)【出願日】2022-08-23
(62)【分割の表示】P 2018009182の分割
【原出願日】2018-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】特許業務法人安田岡本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀井 啓司
(57)【要約】
【課題】アーム及び作業具をブームの姿勢によらずブーム側へ十分に寄せれるようにする。
【解決手段】作業機は、ブームをブーム基準位置から遠ざける方向に回動させる場合に、アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置が変化してもバケットの先端部の回動軌道とブームシリンダとの最短距離である軌道最短距離が所定値に保たれるようにブームの回動位置に応じて設定する制御装置を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、基端部が機体に第1回転軸回りに回動可能に枢支されたブームと、ブームを第1回転軸回りに回動させるブームシリンダと、基端部がブームの先端部に第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回動可能に枢支されたアームと、アームを第2回転軸回りに回動させるアームシリンダと、アームの先端部に第1回転軸と平行な第3回転軸回りに回動可能に枢支された作業具と、ブームの第1回転軸回りの回動位置を検出するブームセンサと、アームの第2回転軸回りの回動位置を検出するアームセンサとを備え、ブームシリンダがブームの一方面側に配置され、アームシリンダがブームの他方面側に配置された作業機であって、
アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置が変化しても、作業具の先端部の第3回転軸回りの回動軌道とブームシリンダとの最短距離である軌道最短距離が、所定値に保たれるようにブームの回動位置に応じて設定する制御装置を備えている作業機。
【請求項2】
制御装置は、アームシリンダのストローク可能範囲を、ブームをブーム基準位置から遠ざかる方向に回動させるほど長く設定する請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
制御装置は、ブームをブーム基準位置に近づける方向に回動させる場合であって、アームシリンダのストロークを一定にしたままブームを回動させると軌道最短距離が所定値未満になる場合に、アームシリンダを動作させて軌道最短距離が所定値以上になる位置までアームを回動させる請求項1または2に記載の作業機。
【請求項4】
作業具の第3回転軸回りの回動位置が所定位置よりも当該作業具の先端部がブームシリンダ側に配置される第1範囲であるかブームシリンダから遠い側に配置される第2範囲であるかを検出する作業具センサを備え、
制御装置は、アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、作業具の回動位置が第1範囲である場合にはブームの回動位置が変化しても軌道最短距離が所定値になるようにブームの回動位置に応じて設定し、作業具の回動位置が第2範囲である場合にはブームの回動位置が変化しても軌道最短距離が所定値よりも短い第2所定値になるようにブームの回動位置に応じて設定する請求項1~3のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項5】
機体と、基端部が機体に第1回転軸回りに回動可能に枢支されたブームと、ブームを第1回転軸回りに回動させるブームシリンダと、基端部がブームの先端部に第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回動可能に枢支されたアームと、アームを第2回転軸回りに回動させるアームシリンダと、アームの先端部に第1回転軸と平行な第3回転軸回りに回動可能に枢支された作業具と、ブームの第1回転軸回りの回動位置を検出するブームセンサと、アームの第2回転軸回りの回動位置を検出するアームセンサと、作業具の第3回転軸回りの回動位置が所定位置よりも当該作業具の先端部がブームシリンダ側に配置される第1範囲であるかブームシリンダから遠い側に配置される第2範囲であるかを検出する作業具センサとを備え、ブームシリンダがブームの一方面側に配置され、アームシリンダがブームの他方面側に配置された作業機であって、
第1回転軸とブームの基端部側に設けられ且つブームシリンダを回動可能に枢支する第4回転軸とを結ぶ第1直線と、ブームシリンダの延伸方向に平行な直線である第2直線とが直角となるブームの回動位置をブーム基準位置とし、作業具の先端部の第3回転軸回りの回動軌道とブームシリンダとの最短距離を軌道最短距離とすると、
アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置によらず、作業具の回動位置が第1範囲である場合には軌道最短距離がブーム基準位置において所定値になる固定範囲に設定し、作業具の回動位置が第2範囲である場合に
は、軌道最短距離がブーム基準位置において所定値よりも短い第2所定値になる固定範囲に設定する制御装置を備えている作業機。
【請求項6】
制御装置は、軌道最短距離が所定値よりも小さく、且つ作業具が第2範囲にある状態から作業具を第1範囲に近づく方向へ回動させる場合に、作業具シリンダのストローク可能範囲を作業具の先端部が第1範囲側に入らない範囲に制限する請求項4または5に記載の作業機。
【請求項7】
機体と、基端部が機体に第1回転軸回りに回動可能に枢支されたブームと、ブームを第1回転軸回りに回動させるブームシリンダと、基端部がブームの先端部に第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回動可能に枢支されたアームと、アームを第2回転軸回りに回動させるアームシリンダと、アームの先端部に第1回転軸と平行な第3回転軸回りに回動可能に枢支された作業具と、ブームの第1回転軸回りの回動位置を検出するブームセンサと、アームの第2回転軸回りの回動位置を検出するアームセンサと、作業具の第3回転軸回りの回動位置を検出する作業具センサとを備え、ブームシリンダがブームの一方面側に配置され、アームシリンダがブームの他方面側に配置された作業機であって、
アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置が変化しても作業具の先端部とブームシリンダとの最短距離である先端距離が所定値に保たれるようにブームの回動位置と作業具の回動位置とに応じて設定する制御装置を備えている作業機。
【請求項8】
制御装置は、作業具を当該作業具の先端部がブームシリンダに近づく方向に回動させる場合であって、アームシリンダのストロークを一定にしたまま作業具を回動させると先端距離が所定値未満になる場合に、アームシリンダを動作させて先端距離が所定値以上になる位置までアームを回動させる請求項7に記載の作業機。
【請求項9】
制御装置は、ブームをブーム基準位置に近づける方向に回動させる場合であって、作業具の回動位置を一定にしたままブームを回動させると先端距離が所定値未満になる場合に、アームシリンダを動作させて先端距離が所定値以上になる位置までアームを回動させる請求項7または8に記載の作業機。
【請求項10】
制御装置は、アームシリンダをブーム基準位置におけるストローク可能範囲を超えてストロークさせる場合に、アームシリンダの動作速度を制限する請求項1~9のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項11】
機体と、基端部が機体に第1回転軸回りに回動可能に枢支されたブームと、ブームを第1回転軸回りに回動させるブームシリンダと、基端部がブームの先端部に第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回動可能に枢支されたアームと、アームを第2回転軸回りに回動させるアームシリンダと、アームの先端部に第1回転軸と平行な第3回転軸回りに回動可能に枢支された作業具と、ブームの第1回転軸回りの回動位置を検出するブームセンサと、アームの第2回転軸回りの回動位置を検出するアームセンサとを備え、ブームシリンダがブームの一方面側に配置され、アームシリンダがブームの他方面側に配置された作業機の制御方法であって、
アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置が変化しても、作業具の先端部の第3回転軸回りの回動軌道とブームシリンダとの最短距離である軌道最短距離が、所定値に保たれるようにブームの回動位置に応じて設定する方法。
【請求項12】
機体と、基端部が機体に第1回転軸回りに回動可能に枢支されたブームと、ブームを第1回転軸回りに回動させるブームシリンダと、基端部がブームの先端部に第1回転軸と平
行な第2回転軸回りに回動可能に枢支されたアームと、アームを第2回転軸回りに回動させるアームシリンダと、アームの先端部に第1回転軸と平行な第3回転軸回りに回動可能に枢支された作業具と、ブームの第1回転軸回りの回動位置を検出するブームセンサと、アームの第2回転軸回りの回動位置を検出するアームセンサと、作業具の第3回転軸回りの回動位置が所定位置よりも当該作業具の先端部がブームシリンダ側に配置される第1範囲であるかブームシリンダから遠い側に配置される第2範囲であるかを検出する作業具センサとを備え、ブームシリンダがブームの一方面側に配置され、アームシリンダがブームの他方面側に配置された作業機の制御方法であって、
第1回転軸とブームの基端部側に設けられ且つブームシリンダを回動可能に枢支する第4回転軸とを結ぶ第1直線と、ブームシリンダの長手方向の両端部を結ぶ第2直線とが直角となるブームの回動位置をブーム基準位置とし、作業具の先端部の第3回転軸回りの回動軌道とブームシリンダとの最短距離を軌道最短距離とすると、
アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置によらず、作業具の回動位置が第1範囲である場合には軌道最短距離がブーム基準位置において所定値になる固定範囲に設定し、作業具の回動位置が第2範囲である場合には軌道最短距離がブーム基準位置において所定値よりも短い第2所定値になる固定範囲に設定する方法。
【請求項13】
機体と、基端部が機体に第1回転軸回りに回動可能に枢支されたブームと、ブームを第1回転軸回りに回動させるブームシリンダと、基端部がブームの先端部に第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回動可能に枢支されたアームと、アームを第2回転軸回りに回動させるアームシリンダと、アームの先端部に第1回転軸と平行な第3回転軸回りに回動可能に枢支された作業具と、ブームの第1回転軸回りの回動位置を検出するブームセンサと、アームの第2回転軸回りの回動位置を検出するアームセンサと、作業具の第3回転軸回りの回動位置を検出する作業具センサとを備え、ブームシリンダがブームの一方面側に配置され、アームシリンダがブームの他方面側に配置された作業機の制御方法であって、
アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置が変化しても作業具の先端部とブームシリンダとの最短距離である先端距離が所定値に保たれるようにブームの回動位置と作業具の回動位置とに応じて設定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、バックホー等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された作業機が知られている。
特許文献1に開示された作業機は、機体と、機体に装着されたブームと、ブームに揺動自在に支持されたアームと、アームの先端部に設けられたバケットとを備えたバックホーである。この作業機では、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダの伸縮によってそれぞれブーム、アーム、バケットを揺動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているような従来の作業機では、アームシリンダのストローク可能範囲は、バケットとブームシリンダとが衝突しないように、ブームシリンダがブームの下面から最もアーム側に離れる位置を基準位置とし、この基準位置においてバケットとブームシリンダとが衝突しないように設定されている。
しかしながら、アームシリンダのストローク可能範囲を上記の基準位置において設定される範囲で一定にすると、ブームを基準位置から離れる方向に回動させた場合にブームシリンダとバケットとの距離が基準位置におけるブームシリンダとバケットとの距離よりも広がる。このため、ブームの姿勢によってはアーム及びバケットをブーム側へ十分に寄せることができず、最小旋回半径が大きくなる場合があるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、アーム及び作業具をブームの姿勢によらずブーム側へ十分に寄せることのできる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る作業機は、機体と、基端部が前記機体に第1回転軸回りに回動可能に枢支されたブームと、前記ブームを前記第1回転軸回りに回動させるブームシリンダと、基端部が前記ブームの先端部に前記第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回動可能に枢支されたアームと、前記アームを前記第2回転軸回りに回動させるアームシリンダと、前記アームの先端部に前記第1回転軸と平行な第3回転軸回りに回動可能に枢支された作業具と、ブームの第1回転軸回りの回動位置を検出するブームセンサと、アームの第2回転軸回りの回動位置を検出するアームセンサとを備え、前記ブームシリンダが前記ブームの一方面側に配置され、前記アームシリンダが前記ブームの他方面側に配置された作業機であって、前記アームを前記ブームに近づける側への前記アームシリンダのストローク可能範囲を、前記ブームの回動位置が変化しても、前記作業具の先端部の前記第3回転軸回りの回動軌道と前記ブームシリンダとの最短距離である軌道最短距離が、所定値に保たれるように前記ブームの回動位置に応じて設定する制御装置を備えている。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、アーム及び作業具をブームの姿勢によらずブーム側へ十分に寄せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】ブームがブーム基準位置S1である場合の作業機の側面図である。
【
図4】アームシリンダのストロークを一定に保ったままブームをブーム基準位置S1から上方に回動させた状態の作業機の側面図である。
【
図5】作業具の回動軌道とブームシリンダとの距離を基準距離で一定に保つようにアームシリンダのストローク可能範囲をブームの回動位置に応じて変更しながらブームをブーム基準位置S1から上方に回動させた状態の作業機の側面図である。
【
図6】
図5の状態からアームシリンダのストロークを一定に保ったままブームをブーム基準位置に近づける方向に回動させた状態の作業機の側面図である。
【
図7】アームシリンダのストローク可能範囲をバケットの先端部とブームシリンダとの距離が基準距離以上になるように設定する方法を示す作業機の側面図である。
【
図8】バケットの回動位置が所定位置よりも先端部がブームシリンダ側に配置される第1範囲であるか、ブームシリンダから遠い側(ダンプ側)に配置される第2範囲であるかの判定方法を示す作業機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について説明する。
(1-1.作業機1の全体構成)
図1は、本実施形態に係る作業機1の概略側面図である。本実施形態では、作業機1として旋回作業機であるバックホーを例示する。
【0010】
図1に示すように、作業機1は、機体(旋回台)2と、走行装置3と、作業装置4とを備えている。機体2上にはキャビン5が搭載されている。キャビン5の室内には、運転者(オペレータ)が着座する運転席(座席)6が設けられている。
本実施形態においては、作業機1の運転席6に着座した運転者の前側(
図1の矢印A1方向)を前方、運転者の後側(
図1の矢印A2方向)を後方、運転者の左側を左方、運転者の右側を右方として説明する。また、
図1に示すように、前後方向K1に直交する方向である水平方向を機体幅方向(機体2の幅方向)として説明する。
【0011】
図1に示すように、走行装置3は、機体2を走行可能に支持する装置である。走行装置3は、油圧モータ(油圧アクチュエータ)あるいは電動モータ等で構成された走行モータ11によって駆動される。なお、本実施形態ではクローラ式の走行装置3を用いているが、これに限らず、ホイール式等の走行装置を用いてもよい。
走行装置3の前部には、ドーザ装置7が装着されている。ドーザ装置7は、図示しないドーザシリンダ(油圧アクチュエータ)を伸縮することによりブレード(排土板)74を昇降(上げ下げ)させることができる。
【0012】
機体2は、走行装置3上に旋回ベアリング8を介して旋回軸心X1回りに旋回可能に支持されている。旋回軸心X1は、旋回ベアリング8の中心を通る上下方向に延伸する軸心である。機体2には、原動機が搭載されている。原動機は、ディーゼルエンジンである。なお、原動機は、ガソリンエンジン、LPGエンジン又は電動モータであってもよいし、エンジン及び電動モータを有するハイブリッド型であってもよい。
【0013】
機体2は、旋回軸心X1回りに旋回する旋回基板9を有する。旋回基板9は、鋼板等から形成されており、機体2の底部を構成する。原動機は、この旋回基板9に搭載されている。旋回基板9の上面の中央側には、補強部材である縦リブ9L,9Rが前部から後部にわたって設けられている。
機体2の後部には、ウエイト10が設けられている。
【0014】
機体2の前部には、作業装置4を支持する支持体20が設けられている。支持体20は、支持ブラケット20Aと、スイングブラケット20Bとを有している。支持ブラケット20Aは、縦リブ9L,9Rの前部に固定され、機体2から前方に突出状に設けられている。支持ブラケット20Aの前部(機体2から突出した部分)には、スイング軸21を介してスイングブラケット20Bが縦軸回りに揺動可能に取り付けられている。したがって、スイングブラケット20Bは、機体幅方向K2に(スイング軸21を中心として水平方向に)回動可能である。
【0015】
スイングブラケット20Bには、本体22の上部に設けられた筒状の第1枢支部23と、本体22の下部に設けられた筒状の第2枢支部24とが形成されている。
作業装置4は、ブーム装置30と、アーム装置40と、作業具装置50とを有している。ブーム装置30は、ブーム31と、ブームシリンダ32とを有している。ブーム31は、スイングブラケット20Bの第1枢支部23の機体幅方向K2に延伸する横軸(第1回転軸)35を介して揺動自在(回動自在)に支持された基部31Aと、アーム41を揺動自在に支持する先端部31Bと、基部31Aと先端部31Bとの間に設けられた中間部31Cとを有している。中間部31Cは長手方向に沿って長尺状であって、中途部で下方に屈曲している。中間部31Cにおける屈曲部の一方側(下部側)には下部ブラケット33が設けられ、中間部31Cにおける屈曲部の他方側(上部側)には上部ブラケット34が設けられている。
【0016】
ブームシリンダ32は、ブーム31を揺動(回動)させる伸縮可能な油圧シリンダであり、筒状のシリンダ部32Aと、一端側がシリンダ部32Aに対して摺動可能に挿入されたロッド32Bとを備えている。なお、ブームシリンダ32におけるアーム41側(下部側)の面に、ロッド32B及び/又はシリンダ部32Aに対する他の物体の接触を防止するガード部材(シリンダガード)を備えていてもよい。ブームシリンダ32の基端部は、第2枢支部24の横軸(第4回転軸)36に揺動自在に支持され、ブームシリンダ32の先端部は、下部ブラケット33の横軸37に揺動自在に支持されている。したがって、ブーム装置30(ブーム31)は、第1枢支部23に横軸35の周りに回動可能であり、当該ブーム装置30(ブーム31)は上又は下方向に揺動自在である。
【0017】
アーム装置40は、アーム41と、アームシリンダ42とを有している。アーム41は、長手方向に沿って長尺状である。アーム41の基端部は、横軸(第2回転軸)43を介してブーム31の先端部31Bに揺動自在に支持されている。また、アーム41の基端部の上面側には、上部ブラケット44が設けられている。
アームシリンダ42は、アーム41を揺動させる伸縮可能な油圧シリンダである。アームシリンダ42の基端部は、ブーム31の上部ブラケット34の横軸38に揺動自在に支持され、アームシリンダ42の先端部は、上部ブラケット44の横軸46に揺動自在に支持されている。したがって、アーム装置40(アーム41)は、ブーム31に横軸43の周りに回動可能であり、当該アーム装置40(アーム41)は、上又は下方向に揺動自在である。
【0018】
作業具装置50は、作業具としてのバケット51と、作業具シリンダとしてのバケットシリンダ52とを有している。バケット51は、横軸(第3回転軸)57を介してアーム41の先端部に揺動自在に支持されている。バケット51とアーム41の先端部との間にはリンク機構53が設けられている。
バケットシリンダ52は、バケット51を揺動させる伸縮可能な油圧シリンダで構成されている。バケットシリンダ52の基端部は、アーム41の上部ブラケット44の横軸48に揺動自在に支持され、バケットシリンダ52の先端部は、リンク機構53の横軸56に揺動自在に支持されている。したがって、作業具装置50(バケット51)は、アーム41の先端側にスクイ動作及びダンプ動作可能に設けられている。スクイ動作とは、バケット51の先端部58をブーム31に近づける方向(スクイの方向)に揺動させる動作であり、例えば、土砂等を掬う場合の動作である。また、ダンプ動作とは、バケット51の先端部58をブーム31から遠ざける方向(ダンプの方向)に揺動させる動作であり、例えば、掬った土砂等を落下(排出)させる場合の動作である。
【0019】
作業機1は、バケット51に代えて或いは加えて、油圧アクチュエータにより駆動可能な他の作業具(油圧アタッチメント)を装着することが可能である。他の作業具としては、油圧ブレーカ、油圧圧砕機、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等が例示できる。
(1-2.作業機1における油圧系・制御系の構成)
図2は、作業装置4を作動させる作業機1の油圧システムを示した図である。
【0020】
図2に示すように、作業機1の油圧システムは、ブーム制御弁71と、アーム制御弁72と、バケット制御弁73と、制御装置60と、操縦装置19L,19Rと、ブーム角度センサ91と、アーム角度センサ92と、作業具角度センサ93とを有している。
ブーム制御弁71、アーム制御弁72及びバケット制御弁73は、それぞれ油路を介して、ブームシリンダ32、アームシリンダ42、バケットシリンダ52に接続されている。また、ブーム制御弁71、アーム制御弁72及びバケット制御弁73には、それぞれ油路を介して、作動油を吐出する油圧ポンプP1が接続されている。
【0021】
ブーム制御弁71、アーム制御弁72及びバケット制御弁73は、例えば、電磁式の3位置切換弁である。
具体的には、ブーム制御弁71は、第1ソレノイド71D及び第2ソレノイド71Eを励磁又は消磁することによって、第1位置71A、第2位置71B、第3位置71Cに切換可能である。ブーム制御弁71が第1位置71Aに切り換わると、ブームシリンダ32への作動油の供給、排出によって、当該ブームシリンダ32が伸長し、ブーム31は上昇する方向に揺動する。一方、ブーム制御弁71が第2位置71Bに切り換わると、ブームシリンダ32への作動油の供給、排出によって、当該ブームシリンダ32が収縮し、ブーム31は下降する方向に揺動する。
【0022】
アーム制御弁72は、第1ソレノイド72D及び第2ソレノイド72Eを励磁又は消磁することによって、第1位置72A、第2位置72B、第3位置72Cに切換可能である。アーム制御弁72が第1位置72Aに切り換わると、アームシリンダ42への作動油の供給、排出によって、当該アームシリンダ42が伸長し、アーム41は、アーム41は後方且つ下方に向けて揺動する。一方、アーム制御弁72が第2位置72Bに切り換わると、アームシリンダ42への作動油の供給、排出によって、当該アームシリンダ42が収縮し、前方且つ上方に向けて揺動する。
【0023】
バケット制御弁73は、第1ソレノイド73D及び第2ソレノイド73Eを励磁又は消磁することによって、第1位置73A、第2位置73B、第3位置73Cに切換可能である。バケット制御弁73が第1位置73Aに切り換わると、バケットシリンダ52への作動油の供給、排出によって、当該バケットシリンダ52が伸長し、バケット51はスクイの方向に揺動する。一方。バケット制御弁73が第2位置73Bに切り換わると、バケットシリンダ52への作動油の供給、排出によって、当該バケットシリンダ52が収縮し、バケット51はダンプの方向に揺動する。
【0024】
制御装置60は、ブーム制御部61、アーム制御部62、及びバケット制御部63を備えており、ブーム制御弁71、アーム制御弁72及びバケット制御弁73の切換動作を制
御する。すなわち、制御装置60は、ブーム31、アーム41及びバケット51の動作を制御する。制御装置60は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、コンピュータを用いてソフトウェアによって実現してもよい。後者の場合、上記コンピュータは、制御装置60の各機能を実現するソフトウェアであるプログラムおよび作業機1に関する各種データがコンピュータで読み取り可能に記録された記録媒体と、上記プログラムの命令を実行するCPU(Central Processing Unit)等の演算回路と、上記プログラムおよび各種データを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、演算回路が上記プログラムを上記記録媒体から
読み取って実行することにより、制御装置60の機能が実現される。
【0025】
制御装置60には、操作時にオペレータが把持する操縦装置19L、19Rが接続されている。操縦装置19L、19Rは、それぞれ運転席6の近傍に設けられている。操縦装置19L、19Rは、それぞれ操作レバー15と、ポジションセンサ16とを有している。操作レバー15は、中立位置から、前、後、右、左に揺動自在であり、ポジションセンサ16は、操作レバー15の前、後、右、左の中立位置からの揺動量(操作量)を検出する。
【0026】
例えば、オペレータが操縦装置19Rの操作レバー15を前又は後に揺動させると、前又は後に揺動させた際の揺動量が制御装置60に入力される。制御装置60は、操作レバー15の揺動方向及び揺動量に応じて、第1ソレノイド71D及び第2ソレノイド71Eを励磁又は消磁することで、ブーム制御弁71の切換を行う。また、オペレータが操縦装置19Lの操作レバー15を前又は後に揺動させると、前又は後に揺動させた際の揺動量が制御装置60に入力される。制御装置60は、操作レバー15の揺動方向及び揺動量に応じて、第1ソレノイド72D及び第2ソレノイド72Eを励磁又は消磁することで、アーム制御弁72の切換を行う。また、オペレータが操縦装置19Rの操作レバー15を左又は右に揺動させると、左又は右に揺動させた際の揺動量が制御装置60に入力される。制御装置60は、操作レバー15の揺動方向及び揺動量に応じて、第1ソレノイド73D及び第2ソレノイド73Eを励磁又は消磁することで、バケット制御弁73の切換を行う。
【0027】
また、制御装置60には、ブーム31の揺動角度θ2(回動位置)を検出するブーム角度センサ91と、アーム41の揺動角度θ3(回動位置)を検出するアーム角度センサ92と、アーム41の先端部に対するバケット51の横軸57の周りの揺動角度θ4(回動位置)を検出する作業具角度センサ93とを備えている。本実施形態では、ブーム角度センサ91、アーム角度センサ92、及び作業具角度センサ93としてポテンショメータを用いているが、これに限らず、他の角度センサを用いてもよく、あるいは、ブームシリンダ32、アームシリンダ42、及びバケットシリンダ52のストローク(伸長位置)を検出し、その検出結果からブーム31、アーム41、及びバケット51の揺動角度を算出するようにしてもよい。
【0028】
(1-3.アームシリンダの動作制御)
(1-3-1.基準距離L1の設定)
次に、作業機1におけるアームシリンダ42の動作制御について説明する。まず、ブーム装置30(ブーム31)がブーム基準位置S1である状態におけるアームシリンダ42のストローク可能範囲の設定方法について説明する。
【0029】
図3に示すように、制御装置60(アーム制御部62)は、ブーム装置30(ブーム31)がブーム基準位置S1である状態においてブーム装置30とバケット51の先端部58との距離がブーム装置30とバケット51の先端部58との干渉を回避するための基準距離(所定値)L1になるようにアームシリンダ42の伸長範囲(アーム41をブームシリンダ32に近づける側へのストローク可能範囲)を設定する。基準距離L1の値は、デフォルトで設定された固定値であってもよく、任意に変更可能であってもよい。
【0030】
ブーム基準位置S1とは、アームシリンダ42のストロークを一定に保ったままブーム31を横軸35廻りに回動させた場合にバケット51の先端部58の横軸57回りの回動軌道M3とブームシリンダ32との最短距離である軌道最短距離が最小値になるブーム31の回動位置である。換言すれば、ブーム基準位置S1は、ブームシリンダ32とブーム31の下面31Dとの距離が最も離れるブーム位置(ブーム角度)である。
【0031】
なお、本実施形態では、ブーム基準位置S1では、スイングブラケット20Bにおいて、ブーム31の基端部を揺動自在に支持する第1枢支部23の横軸35の中心とブームシリンダ32の基端部を揺動自在に支持する第2枢支部24の横軸36の中心とを結ぶ第1直線M1と、横軸36の中心を通り且つブームシリンダ32の延伸方向(軸線方向)に平行な直線である第2直線M2とのなす角θ1が略直角になる。
【0032】
制御装置(アーム制御部62)60は、上述したように、ブーム基準位置S1における軌道最短距離が基準距離L1になるように、アームシリンダ42の伸長可能範囲を設定する。すなわち、制御装置(アーム制御部62)60は、ブーム31がブーム基準位置S1である状態において、バケット51を揺動させたときの先端部58の回動軌道M3の中で最もブーム装置30(ブームシリンダ32)に近い近接点P10と、ブーム装置30(ブームシリンダ32)との距離である軌道最短距離が、基準距離L1になるようにアームシリンダ42のストローク可能範囲を設定する。
【0033】
なお、本実施形態では、基準距離L1を80mmに設定しているが、この値に限定されない。基準距離L1は、ブームシリンダ32とバケット51との接触を適切に防止できる範囲内でできるだけ短い距離になるように設定すればよく、例えば、50mm以上120mm以下の範囲内で設定されることが好ましく、60mm以上100mm以下の範囲内で設定されることがより好ましい。
【0034】
本実施形態では、アームシリンダ42はブーム基準位置S1において軌道最短距離を基準距離L1よりも短くする方向に更に伸長可能な余裕があるが、軌道最短距離が基準距離L1未満にならないように制御装置(アーム制御部62)60がアームシリンダ42のストローク可能範囲(伸長可能範囲)を制限する。これにより、
図3に示すように、ブーム31がブーム基準位置S1である場合には、バケット51を揺動させても、当該バケット51の先端部58は、ブーム装置30(ブームシリンダ32)に接触しないようになっている。
【0035】
(1-3-2.ブーム基準位置から遠ざかる方向への動作時)
次に、ブーム31をブーム基準位置S1から遠ざかる方向に動作させる場合のアームシリンダ42の動作制御について説明する。
図4は、ブーム基準位置S1で軌道最短距離が基準距離L1になるようにアームシリンダ42を伸長させた状態から、アームシリンダ42のストロークを一定に保ったままブーム31を上方に揺動させる従来の制御を行った場合のブーム揺動位置S2を示している。この状態では、バケット51の先端部58の回動軌道M3と、ブームシリンダ32との軌道最短距離L2は基準距離L1よりも増加する。
【0036】
これに対して、本実施形態では、アーム制御部62(制御装置60)は、ブーム31をブーム基準位置S1から遠ざかる方向に回動させた場合に、アームシリンダ42のストローク可能範囲(アーム41をブーム31に近づける側へのストローク可能範囲)を、ブーム31の回動位置に応じて、バケット51の先端部58の回動軌道M3とブームシリンダ32との最短距離である軌道最短距離が基準距離L1に保たれるように設定する。
【0037】
具体的には、オペレータが操縦装置19Rによりブーム31を動作させるように操作した場合、ブーム制御部61は、オペレータの操作に応じてブーム31を動作させる。また、アーム制御部62は、ブーム角度センサ91によるブーム31の回動位置の検出結果と、予め記憶している、ブーム31の回動位置と軌道最短距離を基準距離L1にするためのアームシリンダ42のストローク可能範囲との関係に基づいて、アームシリンダ42のストローク可能範囲を設定する。
【0038】
より詳細には、アーム制御部62は、ブーム角度センサ91から入力されたブーム31の揺動角度θ2(回動位置)とオペレータによるブーム31の回動操作方向とを参照し、ブーム31をブーム基準位置S1から遠ざける方向の操作であるか否かを判断する。そして、アーム制御部62は、ブーム31をブーム基準位置S1から遠ざける方向の操作であると判断した場合、ブーム31の回動位置と軌道最短距離を基準距離L1にするためのアームシリンダ42のストローク可能範囲との関係を示すテーブル又は関数を参照し、参照結果に基づいてアームシリンダ42のストローク可能範囲を設定する。
【0039】
これにより、例えば、上述したブーム揺動位置S2において、オペレータが操縦装置19Lによりアーム41をブームシリンダ32へ近づける方向に操作した場合、
図5に示すように、軌道最短距離が基準距離L1に一致する位置までアームシリンダ42の伸長が許容される。すなわち、
図4に示した従来の制御を行った場合のアームシリンダ42の最大長をL10、
図5に示した本実施形態の制御を行った場合のアームシリンダ42の最大長をL11とすると、L11>L10になる。
【0040】
その結果、
図5に示すように、アーム41及びバケット51をブーム31の姿勢によらずブーム31側へ十分に寄せることのでき、作業装置4の前後方向の長さLbを、アームシリンダ42のストローク可能範囲をブーム基準位置S1と同じ一定値に保った場合の長さLa(
図4参照)よりも短くすることができる。
なお、
図4及び
図5には、ブーム31をブーム基準位置S1から上方に回動させた場合の例を示しているが、アーム制御部62(制御装置60)は、ブーム31をブーム基準位置S1から下方に回動させた場合にも同様の制御を行う。すなわち、制御装置60は、ブーム31をブーム基準位置S1から下方に遠ざける方向に揺動させる場合に、アームシリンダ42のストローク可能範囲(アーム41をブーム31に近づける側へのアームシリンダ42のストローク可能範囲)を、ブーム31の回動位置に応じて、バケット51の先端部58の回動軌道M3とブームシリンダ32との最短距離である軌道最短距離が基準距離L1に保たれるように設定する。これにより、ブーム31をブーム基準位置S1よりも下げ方向に回動させた場合であっても、バケット51の先端部58をドーザ装置7のブレード74に近接あるいは当接する位置まで寄せることができる。したがって、土砂等をバケット51とドーザ装置7のブレード74とで掬い取る作業(いわゆる塵取り作業)を容易に行うことができる。
【0041】
(1-3-3.ブーム基準位置に近づく方向への動作時)
次に、ブーム31をブーム基準位置S1に近づける方向に動作させる場合のアームシリンダ42の動作制御について説明する。
図6は、アームシリンダ42のストローク可能範囲をブーム揺動位置S2で設定したアームシリンダ42のストローク可能範囲で一定に保ったまま、ブーム揺動位置S2から当該ブーム揺動位置S2よりもブーム基準位置S1に近いブーム揺動位置S3へブーム31を回動させた状態を示している。すなわち、
図6は、アームシリンダ42の最大長L12を、ブーム揺動位置S2(
図5参照)で設定したアームシリンダ42の最大長L11で一定に設定したまま(L12=L11)、ブーム揺動位置S2からブーム揺動位置S3へブーム31を回動させた状態を示している。
【0042】
図6に示したように、ストローク可能範囲をブーム揺動位置S2で設定した範囲に保ったままブーム31をブーム基準位置S1に近づけると、ブームシリンダ32がバケット51の先端部58の回動軌道M3内に入り、ブームシリンダ32とバケット51の先端部58とが干渉してしまう場合がある。
これに対して、本実施形態では、アーム制御部62(制御装置60)が、ブーム31をブーム基準位置S1に近づく方向へ回動させる場合であって、アームシリンダ42を動作させずにブーム31のみを動作させるとブームシリンダ32とバケット51の先端部58の回動軌道M3との最短距離である軌道最短距離が基準距離L1未満になる場合に、アームシリンダ42を動作させてバケット51の先端部58がブームシリンダ32から遠ざかる方向にアーム41を退避させる。
【0043】
具体的には、オペレータが操縦装置19Rによりブーム31を動作させるように操作した場合、ブーム制御部61は、オペレータの操作に応じてブーム31を動作させる。また、アーム制御部62は、ブーム角度センサ91から入力されたブーム31の揺動角度θ2(回動位置)とオペレータによるブーム31の回動操作方向とを参照し、ブーム31をブーム基準位置S1に近づける方向の操作であるか否かを判断する。
【0044】
そして、アーム制御部62は、ブーム31をブーム基準位置S1に近づける方向の操作であると判断した場合、ブーム角度センサ91によるブーム31の回動位置の検出結果とアーム角度センサ92によるアーム41の回動位置の検出結果とに基づいて、アームシリンダ42を動作させずにブーム31のみを動作させると軌道最短距離が基準距離L1未満になるか否かを判断する。そして、基準距離L1未満になると判断した場合、アーム制御部62は、軌道最短距離が基準距離L1になるまでアームシリンダ42を動作(収縮)させてバケット51の先端部58がブームシリンダ32から遠ざかる方向にアーム41を退避させる。すなわち、アーム制御部62は、ブーム31の回動位置とアーム41の回動位置との関係を示すテーブル又は関数を参照して軌道最短距離を基準距離L1にするためのアームシリンダ42のストローク量(収縮量)を特定し、特定したストローク量に応じてアームシリンダ42を動作させる。これにより、ブームシリンダ32とバケット51との干渉を防止することができる。
【0045】
(1-3-4.電子クッション)
また、アーム制御部62は、アームシリンダ42をブーム基準位置S1で設定したストローク可能範囲を超えて伸長させる場合に、ストローク可能範囲内で伸長させるときよりもアームシリンダ42の動作速度を制限する電子クッション制御を行う。具体的には、アーム制御部62は、ブーム基準位置S1から遠ざかる方向にブーム31を回動させた状態でアームシリンダ42をブーム基準位置S1で設定したストローク可能範囲よりも伸長させる場合に、アーム制御弁72の受圧部(パイロット受圧部)に供給するパイロット圧を低下させる。これにより、アームシリンダ42のストローク可能範囲の設定状況によらず、ストローク可能範囲の終端部におけるアームシリンダ42の動作速度を容易に制限することができる。
【0046】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1と同じ機能を有する部材については同じ符号を付し、その説明を省略する。
実施形態1では、ブーム31の回動位置に応じてアームシリンダ42のストローク可能範囲を設定する実施例について説明した。これに対して、本実施形態では、ブーム31の回動位置とバケット51の回動位置とに基づいてアームシリンダ42のストローク可能範囲を設定する。
【0047】
(2-1.アームシリンダのストローク可能範囲の初期設定)
まず、アーム制御部62は、ブーム角度センサ91によるブーム31の揺動角度θ2(回動位置)の検出結果、アーム角度センサ92によるアーム41の揺動角度θ3(回動位置)の検出結果、及び作業具角度センサ93によるバケット51の揺動角度θ4(回動位置)の検出結果に基づいて、現在の揺動姿勢におけるバケット51の先端部58とブームシリンダ32との距離である先端距離を算出する。そして、アーム制御部62は、アームシリンダ42のストローク可能範囲(アーム41をブーム31に近づける側へのストローク可能範囲)を、
図7に示すように、算出した先端距離が基準距離L1になる位置までストローク可能に設定する。これにより、
図7に示すように、アームシリンダ42の最大長L13を、バケット51の揺動角度θ4に応じて、実施形態1においてブーム揺動位置S2(
図5参照)で設定したアームシリンダ42の最大長L11よりも長く設定し、アーム41及びバケット51をブーム31側へ実施形態1よりもさらに寄せることができきる。
【0048】
(2-2.ブーム基準位置から遠ざかる方向への動作時)
アーム制御部62は、ブーム31をブーム基準位置S1から遠ざかる方向に回動させた場合、アームシリンダ42のストローク可能範囲を、ブーム31、アーム41、及びバケット51の揺動角度(回動位置)に応じて、バケット51の先端部58とブームシリンダ32との距離である先端距離が基準距離L1に保たれるように設定する。
【0049】
具体的には、オペレータが操縦装置19Rによりブーム31をブーム基準位置S1から遠ざかる方向に動作させるように操作した場合、ブーム制御部61は、オペレータの操作に応じてブーム31を動作させる。また、アーム制御部62は、ブーム角度センサ91、アーム角度センサ92、及び作業具角度センサ93によるブーム31、アーム41、及びバケット51の回動位置の検出結果と、予め記憶している、バケット51の先端部58とブームシリンダ32との距離である先端距離を基準距離L1にするためのアームシリンダ42のストローク可能範囲との関係を示すテーブル又は関数とに基づいて、アームシリンダ42のストローク可能範囲を設定する。
【0050】
これにより、バケット51の揺動姿勢(回動位置)を考慮してアームシリンダ42のストローク可能範囲を設定することで、実施形態1よりもさらにアーム41及びバケット51をブーム31側へ寄せることができる。
(2-3.ブーム基準位置に近づける方向への動作時)
アーム制御部62は、ブーム31をブーム基準位置S1に近づく方向へ回動させる場合であって、アームシリンダ42を動作させずにブーム31のみを動作させるとブームシリンダ32とバケット51の先端部58との距離である先端距離が基準距離L1未満になる場合に、アームシリンダ42を動作させてバケット51の先端部58がブームシリンダ32から遠ざかる方向にアーム41を退避させる。
【0051】
具体的には、オペレータが操縦装置19Rによりブーム31をブーム基準位置S1に近づける方向に動作させるように操作した場合、ブーム制御部61は、オペレータの操作に応じてブーム31を動作させる。また、アーム制御部62は、ブーム角度センサ91によるブーム31の回動位置の検出結果と、アーム角度センサ92によるアーム41の回動位置の検出結果と、作業具角度センサ93によるバケット51の回動位置の検出結果とに基づいて、アームシリンダ42及びバケット51を動作させずにブーム31を動作させると先端距離が基準距離L1未満になるか否かを判断する。そして、基準距離L1未満になると判断した場合、アーム制御部62は、先端距離が基準距離L1になるまでアームシリンダ42を動作(収縮)させてバケット51の先端部58がブームシリンダ32から遠ざかる方向にアーム41を退避させる。すなわち、アーム制御部62は、ブーム31の回動位置、アーム41の回動位置、及びバケット51の回動位置とアームシリンダ42のストロ
ークと先端距離との関係を示すテーブル又は関数を参照して先端距離を基準距離L1にするためのアームシリンダ42のストローク量(収縮量)を特定し、特定したストローク量に応じてアームシリンダ42を動作させる。これにより、ブームシリンダ32とバケット51との干渉を防止することができる。
【0052】
(2-4.バケットの動作時)
アーム制御部62は、バケット51がブームシリンダ32に近づく方向へ回動させる場合であって、アームシリンダ42を動作させずにバケット51を動作させると先端距離が基準距離L1未満になる場合に、アームシリンダ42を動作させてバケット51の先端部58がブームシリンダ32から遠ざかる方向にアーム41を退避させる。
【0053】
具体的には、オペレータが操縦装置19Rによりバケット51をブームシリンダ32に近づける方向に動作(スクイ動作)させるように操作した場合、バケット制御部63は、オペレータの操作に応じてバケット51を動作させる。また、アーム制御部62は、ブーム角度センサ91によるブーム31の回動位置の検出結果と、アーム角度センサ92によるアーム41の回動位置の検出結果と、作業具角度センサ93によるバケット51の回動位置の検出結果とに基づいて、アームシリンダ42を動作させずにバケット51を動作させると先端距離が基準距離L1未満になるか否かを判断する。そして、基準距離L1未満になると判断した場合、アーム制御部62は、先端距離が基準距離L1になるまでアームシリンダ42を動作(収縮)させてバケット51の先端部58がブームシリンダ32から遠ざかる方向にアーム41を退避させる。すなわち、アーム制御部62は、ブーム31の回動位置、アーム41の回動位置、及びバケット51の回動位置とアームシリンダ42のストロークと先端距離との関係を示すテーブル又は関数を参照して先端距離を基準距離L1にするためのアームシリンダ42のストローク量(収縮量)を特定し、特定したストローク量に応じてアームシリンダ42を動作させる。これにより、ブームシリンダ32とバケット51との干渉を防止することができる。なお、ブーム31及びバケット51の同時操作(複合操作)が行われた場合にも、アーム制御部62は、同様の方法により、必要に応じてアームシリンダ42を動作させてバケット51の先端部58がブームシリンダ32から遠ざかる方向にアーム41を退避させる。
【0054】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上述した実施形態と同じ機能を有する部材については同じ符号を付し、その説明を省略する。
実施形態1では、バケット51の回動位置にかかわらず、ブーム31の回動位置に応じてアームシリンダ42のストローク可能範囲を設定する実施例について説明した。これに対して、本実施形態では、ブーム31の回動位置とバケット51の回動位置とに基づいて、アームシリンダ42のストローク可能範囲をブーム31の回動位置に応じて設定するか、あるいはブーム31の回動位置によらず一定にするかを切り替える。
【0055】
まず、アーム制御部62は、作業具角度センサ93によるバケット51の揺動角度θ4(回動位置)の検出結果に基づいて、現在のバケット51の回動位置が、バケット51が所定位置に配置されている場合(
図8参照)よりも先端部58がブームシリンダ32側(クラウド側)に配置される第1範囲であるか、ブームシリンダ32側から遠い側(ダンプ側)に配置される第2範囲であるかを判断する。上記の所定位置は、特に限定されるものではなく、例えば、操縦装置19Rを中立位置にした場合のバケット51の回動位置に設定してもよく、バケット51の先端部58がアーム41の軸線(横軸43の中心と横軸57の中心とを通る直線)上に配置される位置であってもよく、バケット51の先端部58の回動可能範囲の中央位置に設定してもよい。
【0056】
そして、アーム制御部62は、現在のバケット51の回動位置が第1範囲(所定位置よ
りもクラウド側)であると判断した場合、アームシリンダ42のストローク可能範囲を、上述した実施形態1と同様の方法によりブーム31の回動位置に応じて設定する。
また、アーム制御部62は、現在のバケット51の回動位置が第2範囲(所定位置よりもダンプ側)であると判断した場合、アームシリンダ42のストローク可能範囲を、ブーム基準位置S1において軌道最短距離が基準距離L1よりも短い第2所定値となるストローク可能範囲で一定に設定する。その結果、
図8に示すように、現在のバケット51の回動位置が第2範囲である場合、アームシリンダ42の最大長L14を、実施形態1においてブーム揺動位置S2(
図5参照)で設定したアームシリンダ42の最大長L11よりも長く設定し、アーム41及びバケット51をブーム31側へ実施形態1よりもさらに寄せることができる。
【0057】
これにより、バケット51がブームシリンダ32に接触することを防止するとともに、アーム41及びバケット51をブーム31の姿勢によらずブーム31側へ十分に寄せることができる。
また、バケット制御部63は、現在のバケット51の回動位置が第2範囲(所定位置よりもダンプ側)にある状態からバケット51のクラウド操作(バケット51の先端部58をブームシリンダ32側へ回動させる動作)が行われた場合、バケット51の回動可能範囲を所定位置までに設定し、バケット51の回動位置が所定位置に達するとバケット51の動作を停止させる。これにより、バケット51の先端部58がブームシリンダ32に当接することを確実に防止できる。
【0058】
なお、アーム制御部62が、現在のバケット51の回動位置が第1範囲(所定位置よりもクラウド側)であると判断した場合、アームシリンダ42のストローク可能範囲を、ブーム31の回動位置によらず、ブーム基準位置S1において軌道最短距離が基準距離L1となるストローク可能範囲で一定に設定するようにしてもよい。これにより、バケット51が第1範囲にある場合にはバケット51がブームシリンダ32に接触することを確実に防止でき、且つ第2範囲にある場合には従来よりもアーム41及びバケット51をブーム31の姿勢によらずブーム31側へ十分に寄せることができる。
【0059】
〔実施形態4〕
本発明のさらに他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上述した実施形態と同じ機能を有する部材については同じ符号を付し、その説明を省略する。
実施形態3では、ブーム31の回動位置とバケット51の回動位置とに基づいて、アームシリンダ42のストローク可能範囲をブーム31の回動位置に応じて設定するか、あるいはブーム31の回動位置によらず一定にするかを切り替える構成について説明した。これに対して、本実施形態では、アームシリンダ42のストローク可能範囲を、ブーム31の回動位置とは無関係に、バケット51の回動位置に応じて設定する。
【0060】
まず、アーム制御部62は、作業具角度センサ93によるバケット51の揺動角度θ4(回動位置)の検出結果に基づいて、現在のバケット51の回動位置が第1範囲であるか、第2範囲であるかを判断する。第1範囲および第2範囲の設定方法は実施形態3と同様である。そして、アーム制御部62は、現在のバケット51の回動位置が第1範囲(所定位置よりもクラウド側)であると判断した場合、アームシリンダ42のストローク可能範囲を、ブーム31の回動位置によらず、ブーム基準位置S1において軌道最短距離が基準距離(所定値)L1になる固定範囲に設定する。
【0061】
また、アーム制御部62は、現在のバケット51の回動位置が第2範囲(所定位置よりもダンプ側)であると判断した場合、アームシリンダ42のストローク可能範囲を、ブーム基準位置S1において軌道最短距離が基準距離L1よりも短い第2所定値となる固定範囲に設定する。その結果、
図8に示すように、現在のバケット51の回動位置が第2範囲
である場合、アームシリンダ42の最大長L14を、実施形態1においてブーム揺動位置S2(
図5参照)で設定したアームシリンダ42の最大長L11よりも長く設定し、アーム41及びバケット51をブーム31側へ実施形態1よりもさらに寄せることができる。
【0062】
これにより、バケット51がブームシリンダ32に接触することを防止するとともに、アーム41及びバケット51をブーム31の姿勢によらずブーム31側へ十分に寄せることができる。
また、バケット制御部63は、現在のバケット51の回動位置が第2範囲(所定位置よりもダンプ側)にある状態からバケット51のクラウド操作(バケット51の先端部58をブームシリンダ32側へ回動させる動作)が行われた場合、バケット51の回動可能範囲を所定位置までに設定し、バケット51の回動位置が所定位置に達するとバケット51の動作を停止させる。これにより、バケット51の先端部58がブームシリンダ32に当接することを確実に防止できる。
【0063】
〔まとめ〕
以上のように、本発明の一態様にかかる作業機1は、機体と、基端部が前記機体に第1回転軸回りに回動可能に枢支されたブームと、前記ブームを前記第1回転軸回りに回動させるブームシリンダと、基端部が前記ブームの先端部に前記第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回動可能に枢支されたアームと、前記アームを前記第2回転軸回りに回動させるアームシリンダと、前記アームの先端部に前記第1回転軸と平行な第3回転軸回りに回動可能に枢支された作業具とを備え、前記ブームシリンダが前記ブームの一方面側に配置され、前記アームシリンダが前記ブームの他方面側に配置された作業機であって、前記第1回転軸と前記ブームの基端部側に設けられ且つ前記ブームシリンダを回動可能に枢支する第4回転軸とを結ぶ第1直線と、前記ブームシリンダの延伸方向に平行な直線である第2直線とが直角となるブームの回動位置をブーム基準位置とすると、前記ブームを前記ブーム基準位置から遠ざける方向に回動させる場合に、前記アームを前記ブームに近づける側への前記アームシリンダのストローク可能範囲を、前記ブームの回動位置が変化しても、前記作業具の先端部の前記第3回転軸回りの回動軌道と前記ブームシリンダとの最短距離である軌道最短距離が、所定値に保たれるように前記ブームの回動位置に応じて設定する制御装置を備えている。
【0064】
上記の構成によれば、アームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置が変化しても軌道最短距離が所定値に保たれるようにブームの回動位置に応じて設定することにより、アーム及び作業具をブームの姿勢によらずブーム側へ十分に寄せることができる。
また、前記制御装置は、前記アームシリンダのストローク可能範囲を、前記ブームを前記ブーム基準位置から遠ざかる方向に回動させるほど長く設定してもよい。
【0065】
上記の構成によれば、アーム及び作業具をブームの姿勢によらずブーム側へ十分に寄せることができる。
また、前記ブームの前記第1回転軸回りの回動位置を検出するブームセンサと、前記アームの前記第2回転軸回りの回動位置を検出するアームセンサとを備え、前記制御装置は、前記ブームを前記ブーム基準位置に近づける方向に回動させる場合であって、前記アームシリンダのストロークを一定にしたまま前記ブームを回動させると前記軌道最短距離が前記所定値未満になる場合に、前記アームシリンダを動作させて前記軌道最短距離が前記所定値以上になる位置まで前記アームを回動させてもよい。
【0066】
上記の構成によれば、作業具がブームシリンダに接触することを適切に防止できる。
また、前記作業具の前記第3回転軸回りの回動位置が所定位置よりも当該作業具の先端部が前記ブームシリンダ側に配置される第1範囲であるか前記ブームシリンダから遠い側
に配置される第2範囲であるかを検出する作業具センサを備え、前記制御装置は、前記アームを前記ブームに近づける側への前記アームシリンダのストローク可能範囲を、前記作業具の回動位置が前記第1範囲である場合には前記ブームの回動位置が変化しても前記軌道最短距離が前記所定値になるように前記ブームの回動位置に応じて設定し、前記作業具の回動位置が前記第2範囲である場合には前記ブームの回動位置が変化しても前記軌道最短距離が前記所定値よりも短い第2所定値になるように前記ブームの回動位置に応じて設定してもよい。
【0067】
また、本発明の他の態様にかかる作業機は、機体と、基端部が前記機体に第1回転軸回りに回動可能に枢支されたブームと、前記ブームを前記第1回転軸回りに回動させるブームシリンダと、基端部が前記ブームの先端部に前記第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回動可能に枢支されたアームと、前記アームを前記第2回転軸回りに回動させるアームシリンダと、前記アームの先端部に前記第1回転軸と平行な第3回転軸回りに回動可能に枢支された作業具と、前記作業具の前記第3回転軸回りの回動位置が所定位置よりも当該作業具の先端部が前記ブームシリンダ側に配置される第1範囲であるか前記ブームシリンダから遠い側に配置される第2範囲であるかを検出する作業具センサを備え、前記ブームシリンダが前記ブームの一方面側に配置され、前記アームシリンダが前記ブームの他方面側に配置された作業機であって、前記第1回転軸と前記ブームの基端部側に設けられ且つ前記ブームシリンダを回動可能に枢支する第4回転軸とを結ぶ第1直線と、前記ブームシリンダの延伸方向に平行な直線である第2直線とが直角となるブームの回動位置をブーム基準位置とし、前記作業具の先端部の前記第3回転軸回りの回動軌道と前記ブームシリンダとの最短距離を軌道最短距離とすると、前記アームを前記ブームに近づける側への前記アームシリンダのストローク可能範囲を、前記ブームの回動位置によらず、前記作業具の回動位置が前記第1範囲である場合には前記軌道最短距離が前記ブーム基準位置において所定値になる固定範囲に設定し、前記作業具の回動位置が前記第2範囲である場合には、前記軌道最短距離が前記ブーム基準位置において前記所定値よりも短い第2所定値になる固定範囲に設定する制御装置を備えている。
【0068】
上記の各構成によれば、簡単な構成で、作業具がブームシリンダに接触することを適切に防止するとともに、アーム及び作業具をブームの姿勢によらずブーム側へ十分に寄せることができる。
また、前記制御装置は、前記軌道最短距離が前記所定値よりも小さく、且つ前記作業具が前記第2範囲にある状態から前記作業具を前記第1範囲に近づく方向へ回動させる場合に、前記作業具シリンダのストローク可能範囲を前記作業具の先端部が前記第1範囲側に入らない範囲に制限してもよい。
【0069】
上記の構成によれば、作業具がブームシリンダに接触することを適切に防止できる。
また、本発明のさらに他の態様にかかる作業機は、機体と、基端部が前記機体に第1回転軸回りに回動可能に枢支されたブームと、前記ブームを前記第1回転軸回りに回動させるブームシリンダと、基端部が前記ブームの先端部に前記第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回動可能に枢支されたアームと、前記アームを前記第2回転軸回りに回動させるアームシリンダと、前記アームの先端部に前記第1回転軸と平行な第3回転軸回りに回動可能に枢支された作業具と、前記作業具の前記第3回転軸回りの回動位置を検出する作業具センサとを備え、前記ブームシリンダが前記ブームの一方面側に配置され、前記アームシリンダが前記ブームの他方面側に配置された作業機であって、前記第1回転軸と前記ブームの基端部側に設けられ且つ前記ブームシリンダを回動可能に枢支する第4回転軸とを結ぶ第1直線と、前記ブームシリンダの延伸方向に平行な直線である第2直線とが直角となるブームの回動位置をブーム基準位置とすると、前記ブームを前記ブーム基準位置から遠ざける方向に回動させる場合に、前記アームを前記ブームに近づける側への前記アームシリンダのストローク可能範囲を、前記ブームの回動位置が変化しても前記作業具の先端部と前記ブームシリンダとの最短距離である先端距離が所定値に保たれるように前記ブームの回動位置と前記作業具の回動位置とに応じて設定する制御装置を備えている。
【0070】
上記の構成によれば、アームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置が変化しても軌道最短距離が所定値に保たれるようにブームの回動位置と作業具の回動位置とに応じて設定することにより、アーム及び作業具をブームの姿勢によらずブーム側へ十分に寄せることができる。
また、前記制御装置は、前記作業具を当該作業具の先端部が前記ブームシリンダに近づく方向に回動させる場合であって、前記アームシリンダのストロークを一定にしたまま前記作業具を回動させると前記先端距離が前記所定値未満になる場合に、前記アームシリンダを動作させて前記先端距離が前記所定値以上になる位置まで前記アームを回動させてもよい。
【0071】
上記の構成によれば、作業具がブームシリンダに接触することを適切に防止できる。
また、前記制御装置は、前記ブームを前記ブーム基準位置に近づける方向に回動させる場合であって、前記作業具の回動位置を一定にしたまま前記ブームを回動させると前記先端距離が前記所定値未満になる場合に、前記アームシリンダを動作させて前記先端距離が前記所定値以上になる位置まで前記アームを回動させてもよい。
【0072】
上記の構成によれば、作業具がブームシリンダに接触することを適切に防止できる。
また、前記制御装置は、前記アームシリンダを前記ブーム基準位置におけるストローク可能範囲を超えてストロークさせる場合に、前記アームシリンダの動作速度を制限してもよい。
上記の構成によれば、アームシリンダのストローク可能範囲の端部付近においてアームシリンダの動作速度を低下させることにより、アームの動作が急激に停止することで振動や衝撃が生じることを防止できる。
【0073】
また、本発明の一態様にかかる作業機の制御方法では、第1回転軸とブームの基端部側に設けられ且つブームシリンダを回動可能に枢支する第4回転軸とを結ぶ第1直線と、ブームシリンダの延伸方向に平行な直線である第2直線とが直角となるブームの回動位置をブーム基準位置とすると、ブームをブーム基準位置から遠ざける方向に回動させる場合に、アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置が変化しても、作業具の先端部の第3回転軸回りの回動軌道とブームシリンダとの最短距離である軌道最短距離が、所定値に保たれるようにブームの回動位置に応じて設定している。
【0074】
また、本発明の他の態様にかかる作業機の制御方法では、第1回転軸とブームの基端部側に設けられ且つブームシリンダを回動可能に枢支する第4回転軸とを結ぶ第1直線と、ブームシリンダの長手方向の両端部を結ぶ第2直線とが直角となるブームの回動位置をブーム基準位置とし、作業具の先端部の第3回転軸回りの回動軌道とブームシリンダとの最短距離を軌道最短距離とすると、アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置によらず、作業具の回動位置が第1範囲である場合には軌道最短距離がブーム基準位置において所定値になる固定範囲に設定し、作業具の回動位置が第2範囲である場合には軌道最短距離がブーム基準位置において所定値よりも短い第2所定値になる固定範囲に設定している。
【0075】
また、本発明のさらに他の態様にかかる作業機の制御方法では、第1回転軸とブームの基端部側に設けられ且つブームシリンダを回動可能に枢支する第4回転軸とを結ぶ第1直線と、ブームシリンダの延伸方向に平行な直線である第2直線とが直角となるブームの回動位置をブーム基準位置とすると、ブームをブーム基準位置から遠ざける方向に回動させ
る場合に、アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置が変化しても作業具の先端部とブームシリンダとの最短距離である先端距離が所定値に保たれるようにブームの回動位置と作業具の回動位置とに応じて設定している。
【0076】
上述した各作業機に備えられる制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを制御装置の各部として動作させることにより、制御装置をコンピュータにて実現させるプログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に含まれる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、上述した各実施形態を適宜組み合わせて得られる実施形態も本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1 作業機
2 機体
4 作業装置
7 ドーザ装置
19L 操縦装置
19R 操縦装置
30 ブーム装置
31 ブーム
32 ブームシリンダ
35 横軸(第1回転軸)
43 横軸(第2回転軸)
50 作業具装置
51 バケット
52 バケットシリンダ
57 横軸(第3回転軸)
58 先端部
60 制御装置
61 ブーム制御部
62 アーム制御部
63 バケット制御部
91 ブーム角度センサ
92 アーム角度センサ
93 作業具角度センサ
S1 ブーム基準位置
S2,S3 揺動姿勢
L1 基準距離
L2 軌道最短距離L2
M3 回動軌道
θ2 ブームの揺動角度
θ3 アームの揺動角度
θ4 バケットの揺動角度