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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162034
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】口腔疾患の予防又は治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20221014BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 31/343 20060101ALI20221014BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20221014BHJP
   A23G 3/42 20060101ALN20221014BHJP
   A23G 4/10 20060101ALN20221014BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q11/00
A61P1/02
A61K31/343
A23L33/10
A23G3/42
A23G4/10
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022132594
(22)【出願日】2022-08-23
(62)【分割の表示】P 2020567022の分割
【原出願日】2018-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュンホン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】サンファ・イ
(57)【要約】
【課題】天然化合物を含む、口腔疾患の予防又は治療用組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、う蝕、歯周疾患、歯痛、知覚過敏、口臭を予防又は改善する効果を有する医薬部外品組成物に関する。本発明の組成物は、う蝕及び歯周疾患誘発細菌に対する抗菌活性に優れ、痛み及び炎症マーカーであるPGE2を濃度依存的に抑制し、歯肉炎発症抑制効果、知覚過敏症状抑制効果及び口臭除去効果に優れ、う蝕、歯周疾患、知覚過敏及び口臭からなる群から選択される少なくとも1つの口腔疾患の予防又は改善用医薬部外品組成物としての活用度が高い。また、本発明の組成物は、薬学的組成物及び食品組成物として有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクラレオリド(Sclareolide)またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む口腔疾患の予防または改善用医薬部外品組成物。
【請求項2】
前記口腔疾患はう蝕である、請求項1に記載の医薬部外品組成物。
【請求項3】
前記う蝕は、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)により発症するものである、請求項2に記載の医薬部外品組成物。
【請求項4】
前記口腔疾患は歯周疾患である、請求項1に記載の医薬部外品組成物。
【請求項5】
前記歯周疾患は、歯周炎又は歯肉炎である、請求項4に記載の医薬部外品組成物。
【請求項6】
前記歯周疾患は、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)により発症するものである、請求項4に記載の医薬部外品組成物。
【請求項7】
前記口腔疾患は歯痛である、請求項1に記載の医薬部外品組成物。
【請求項8】
前記口腔疾患は知覚過敏である、請求項1に記載の医薬部外品組成物。
【請求項9】
前記口腔疾患は口臭である、請求項1に記載の医薬部外品組成物。
【請求項10】
前記医薬部外品は口腔用である、請求項1に記載の医薬部外品組成物。
【請求項11】
前記医薬部外品組成物の剤形は、歯磨き粉、口腔洗浄剤、口腔清浄剤、ガム、キャンディー類、口腔スプレー、口腔用軟膏剤、口腔用ワニス、マウスウォッシュ及び歯茎マッサージクリームからなる群から選択される少なくとも1つの剤形である、請求項10に記載の医薬部外品組成物。
【請求項12】
スクラレオリド(Sclareolide)またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む口腔疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項13】
スクラレオリド(Sclareolide)またはその食品学的に許容可能な塩を有効成分として含む口腔疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項14】
スクラレオリド(Sclareolide)またはその許容可能な塩を有効成分として含む口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然化合物を有効成分として含む、口腔疾患の予防又は治療用組成物に関し、より詳細には、う蝕、歯周疾患、歯痛、知覚過敏、口臭を予防又は改善する効果を有する医薬部外品組成物に関する。また、本発明は、天然化合物を有効成分として含む薬学的組成物、食品組成物及び口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
健康な歯は五福の一つと言われるほどに生活の質を決定する重要な要素である。口腔疾患のうちう蝕(dental cavities, 虫歯)と歯周疾患(periodontal disease, 歯周病)は、世界的に発症率の高い疾患であり、痛み、咀嚼機能障害、歯周組織の破壊、口臭、知覚過敏などの様々な臨床症状を誘発し、歯牙喪失を招く主な要因として知られており、食生活の変化により口腔疾患の原因要素がさらに増加している現状である。
【0003】
ヒトの口腔には約600~800種以上の微生物が存在することが知られており、これらの微生物は唾液に含まれるリゾチーム(lysozyme)などの酵素により制御されている。しかし、栄養分と水分が豊富な口腔環境は微生物が成長しやすい条件を有し、舌や歯垢(dental plaque)は微生物の好適な生息場所となる。このような微生物の一部は日和見病原菌であり、う蝕、歯周疾患、知覚過敏(象牙質知覚過敏症)などの疾患及び口臭の原因となる。
【0004】
歯垢内に生息してう蝕、歯周疾患、口臭及び知覚過敏を誘発する口腔病原菌の増殖を抑制する方法として抗菌剤の使用があり、口腔病原菌に対する殺菌及び静菌作用を有する抗生剤を含む各種抗菌製剤が虫歯、歯周疾患、歯髄及び歯根端感染の抑制及び治療剤として開発されている。
【0005】
しかし、抗生剤は、人体における全身的な副作用と共に口腔内の耐性菌の出現及び菌交代症(superinfection)を誘発するので、長期的な使用が困難であり、単に治療剤としてのみ用いられるという欠点がある。また、口腔洗浄に用いられる抗菌製剤としては、サンギナリン(Sanguinarine)、リステリン(Listerine)、ペルオキシド(Peroxide)、クロルヘキシジン(Chlorhexidine)などが挙げられるが、サンギナリンは、口腔内での細菌に対する効果が不明であり、歯周疾患に対する治療効果も不明であるだけでなく、価格も高いという欠点があり、リステリンは、アルコールが主成分であるので僅かな静菌作用があるが、実際の口腔内では一時的な効果を発揮するだけで、長期間使用すると組織に危害を及ぼすという欠点がある。さらに、近年、美白効果のために添加されているペルオキシドは、細菌に対する毒性があるが、それと同時に人体の組織にも毒性を示すので、安全性に問題があるだけでなく、時には細菌においてペルオキシドに対する耐性菌が出現することもある。さらに、クロルヘキシジンは、歯垢形成の抑制と共に歯周疾患の予防及び治療剤として従来の製剤のうち最も優れていることが知られているが、組織に対する刺激、組織の着色及び変性を誘発し、特に刺激的な味や匂いが強いという問題があるだけでなく、菌交代症を誘発することがあり、発癌性があるので、妊娠婦においては使用が制限されるなど、治療や予防の目的で長期間用いることができないという欠点がある。
【0006】
さらに、化学反応により人為的に合成された化合物は、細胞毒性を示したり、人体に蓄積されるなどの副作用が発生することがあるので、安全性の面から、副作用が発生する可能性の低い天然化合物の薬理活性についての研究が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、このような副作用に対する恐れがなく、う蝕、歯周疾患、歯痛、知覚過敏、口臭などの口腔疾患の予防及び改善効果に優れる天然素材を見出すために研究を重ねてきた。その結果、人体に安全で安心して用いることのできる天然化合物がう蝕及び歯周疾患誘発細菌に対する抗菌効果、PGE2抑制効果による歯痛緩和効果、歯肉炎発症抑制効果、知覚過敏抑制効果及び口臭除去効果を発揮することを解明し、それを活用した医薬部外品組成物、薬学的組成物、食品組成物及び口腔用組成物を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、天然化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、口腔疾患の予防又は改善用医薬部外品組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、天然化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、口腔疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、天然化合物又はその食品学的に許容される塩を有効成分として含む、口腔疾患の予防又は改善用食品組成物を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、天然化合物又はその許容される塩を有効成分として含む、口腔用組成物を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の天然化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む医薬部外品組成物は、口腔疾患の予防又は改善効果に優れる。具体的には、本発明の組成物は、う蝕及び歯周疾患誘発細菌に対する抗菌活性に優れ、痛み及び炎症マーカーであるPGE2を濃度依存的に抑制し、歯肉炎発症抑制効果、知覚過敏症状抑制効果及び口臭除去効果に優れ、う蝕、歯周疾患、知覚過敏及び口臭からなる群から選択される少なくとも1つの口腔疾患の予防又は改善用医薬部外品組成物としての活用度が高い。また、本発明の天然化合物を含む組成物は、薬学的組成物及び食品組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一態様は、前記課題を解決し、前記目的を達成するために、天然化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、口腔疾患の予防又は改善用医薬部外品組成物を提供する。
【0014】
本発明の他の態様は、天然化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、口腔疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0015】
本発明のさらに他の態様は、天然化合物又はその食品学的に許容される塩を有効成分として含む、口腔疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0016】
本発明のさらに他の態様は、天然化合物又はその許容される塩を有効成分として含む、口腔用組成物を提供する。
【0017】
本発明においては、天然化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む医薬部外品組成物を提供する。
【0018】
前記「天然化合物」とは、微生物、植物、動物などの生物から直接作製され、それから抽出、分離又は精製できる物質を意味し、前記天然化合物の具体例として、アルビフロリン(Albiflorin)、アストラガロシドI(Astragaloside I)、ブラシノリド(Brassinolide)、エレウテロシドE(Eleutheroside E)、ゲンチオピクリン(Gentiopicrin)、グラミン(Gramine)、リエンシニン(Liensinine)、マクラントイジンB(Macranthoidin B)、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(Neohesperidin dihydrochalcone)、オバクノン(Obacunone)、オキシソホカルピン(Oxysophocarpine)、スクラレオリド(Sclareolide)、ソホリコシド(Sophoricoside)、スウェロシド(Sweroside)、シネフリン(Synephrine)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
【化1】
【0020】
本発明における前記アルビフロリン(Albiflorin)は、化学式1で表され、分子式C232811、分子量408.4を有する有機化合物である。
【0021】
【化2】
【0022】
本発明における前記アストラガロシドI(Astragaloside I)は、化学式2で表され、分子式C457216、分子量869.0を有する有機化合物である。
【0023】
【化3】
【0024】
本発明における前記ブラシノリド(Brassinolide)は、化学式3で表され、分子式C2848、分子量480.6を有する有機化合物である。
【0025】
【化4】
【0026】
本発明における前記エレウテロシドE(Eleutheroside E)は、化学式4で表され、分子式C344618、分子量742.7を有する有機化合物である。
【0027】
【化5】
【0028】
本発明における前記ゲンチオピクリン(Gentiopicrin)は、化学式5で表され、分子式C1620、分子量356.3を有する有機化合物である。
【0029】
【化6】
【0030】
本発明における前記グラミン(Gramine)は、化学式6で表され、分子式C1114、分子量174を有する有機化合物である。
【0031】
【化7】
【0032】
本発明における前記リエンシニン(Liensinine)は、化学式7で表され、分子式C3742、分子量610.7を有する有機化合物である。
【0033】
【化8】
【0034】
本発明における前記マクラントイジンB(Macranthoidin B)は、化学式8で表され、分子式C6510632、分子量1399.5を有する有機化合物である。
【0035】
【化9】
【0036】
本発明における前記ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(Neohesperidin dihydrochalcone)は、化学式9で表され、分子式C283615、分子量612.5を有する有機化合物である。
【0037】
【化10】
【0038】
本発明における前記オバクノン(Obacunone)は、化学式10で表され、分子式C2530、分子量455を有する有機化合物である。
【0039】
【化11】
【0040】
本発明における前記オキシソホカルピン(Oxysophocarpine)は、化学式11で表され、分子式C1522、分子量262.4を有する有機化合物である。
【0041】
【化12】
【0042】
本発明における前記スクラレオリド(Sclareolide)は、化学式12で表され、分子式C1626、分子量250.3を有する有機化合物である。
【0043】
【化13】
【0044】
本発明における前記ソホリコシド(Sophoricoside)は、化学式13で表され、分子式C212010、分子量432を有する有機化合物である。
【0045】
【化14】
【0046】
本発明における前記スウェロシド(Sweroside)は、化学式14で表され、分子式C1622、分子量358.3を有する有機化合物である。
【0047】
【化15】
【0048】
本発明における前記シネフリン(Synephrine)は、化学式15で表され、分子式C13NO、分子量167.2を有する有機化合物である。
【0049】
本発明における前記化合物の取得方法は、特に限定されるものではなく、当該技術分野で公知の方法で化学的に合成してもよく、市販の物質を用いてもよい。
【0050】
本発明の前記化合物は、溶媒和の形態だけでなく、非溶媒和(unsolvated)の形態で存在してもよい。本発明の前記化合物は、結晶又は無定形の形態で存在してもよく、これら全ての物理的形態が本発明に含まれる。
【0051】
本発明の一態様は、前記天然化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、口腔疾患の予防又は改善用医薬部外品組成物を提供する。
【0052】
また、具体的には、本発明は、前記天然化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、う蝕、歯周疾患(歯周炎又は歯肉炎)、歯痛、知覚過敏及び口臭からなる群から選択される少なくとも1つの口腔疾患の予防又は改善用医薬部外品組成物を提供する。
【0053】
前記「天然化合物」については前述した通りである。
【0054】
本発明における「口腔疾患」とは、口腔領域において発生する様々な疾患を意味し、前記口腔領域とは、前方の唇から後方の口峡において咽頭に連結される口の中の空間を意味する。本発明における前記口腔疾患は、口腔に発生する疾患であればその病症に関係なく全て含まれる概念であり、前記口腔疾患としては、例えばう蝕、歯周疾患(歯周炎又は歯肉炎)、歯痛、知覚過敏、口臭などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本発明における「う蝕(dental cavities)」とは、歯面に生息する細菌による感染性疾患であり、虫歯ともいい、歯の硬組織が侵食されて欠損する症状を示す。具体的には、歯の上部表面を覆い、象牙質を保護する乳白色の半透明で硬い物質を琺瑯質又はエナメル質というが、口の中に生息する口腔病原菌により砂糖、デンプンなどが分解されて酸が生成され、それにより歯の琺瑯質が損傷して虫歯が生じることを意味する。う蝕が生じる主な原因としては、歯の表面に生成された細菌膜である歯垢(dental plaque, プラーク)が挙げられるが、唾液が歯に粘りのある薄膜を形成し、その上に連鎖状球菌の一種であるストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)菌、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)などの口腔微生物が付着してバイオフィルム(biofilm)を形成することにより歯垢(dental plaque, プラーク)が生成され、フソバクテリウム(Fusobacterium)によりさらに厚くなる。本発明におけるう蝕の原因菌は、う蝕を引き起こす原因菌であればその種類に関係なく全て含まれ、具体的にはストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・サングイニス(Streptococcus sanguinis)、ストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)、ストレプトコッカス・ラッティ(Streptococcus ratti)、ストレプトコッカス・クリセティ(Streptococcus criceti)、ストレプトコッカス・アンギノサス(Streptococcus anginosus)及び乳酸菌からなる群から選択される少なくとも1種の菌であり、より具体的にはストレプトコッカス・ミュータンスである。
【0056】
前記ストレプトコッカス・ミュータンスは、連鎖状球菌の一種でグラム陽性菌であり、虫歯菌とも呼ばれる。前記ストレプトコッカス・ミュータンスは、歯の表面でのみ増殖するが、生後30カ月前後までは乳歯が完成していない。よって、この時期までは、幼児期以降のようなミュータンス菌の増殖は困難である。幼児期に大人の口からミュータンス菌が感染することなく、口の中に他の口腔細菌が定着すると、既にバランスが取れている口腔内の生態系にミュータンス菌が新たに侵入することは困難であり、幼児期以降、一生を通じて虫歯にかかる確率が大幅に低くなる。既に大人の口から原因菌に感染した場合は、歯磨きを頻繁に行い、口の中を清潔に維持することが虫歯の予防に役立つ。しかし、一度ミュータンス菌が口腔内に定着すると、ミュータンス菌の撲滅は不可能である。
【0057】
本発明の一実施例において、ストレプトコッカス・ミュータンスを塗抹した培地に本発明の前記天然化合物を含むディスクを接種し、その後生育阻止円の大きさを測定した結果、前記化合物を含む実験群の生育阻止円の直径が10.0mm以上であり、ストレプトコッカス・ミュータンスに対して非常に優れた抗菌活性を示したので、前記天然化合物を含む組成物はう蝕の予防又は改善用途に有用であることが確認された(表2)。
【0058】
本発明における「歯周疾患(periodontal disease)」とは、歯を支えている歯肉、歯周靱帯及び骨組織に炎症が生じる疾患であり、一般に歯周病ともいい、疾患の程度によって歯肉炎(gingivitis)と歯周炎(periodontitis)に分けられる。比較的軽く、回復が速い状態の歯周疾患であって、歯茎、すなわち軟組織に限定される状態を歯肉炎といい、その炎症が歯茎と歯槽骨の周辺まで進んだものを歯周炎という。歯肉(歯茎)と歯の間にはV字状の間隙があるが、その溝(sulcus)の歯茎線の下側を口腔病原菌が攻撃すると、炎症刺激源であるリポ多糖(Lipopolysaccharide, LPS)が放出されることにより、歯茎が腫れて出血する炎症が形成され、歯周靱帯と隣接組織が損傷する。歯周炎が進むと、歯周靱帯や歯槽骨にまで損傷を与え、最終的には歯を喪失する。タンパク質、ビタミンなどの栄養不足、妊娠や糖尿病などによるホルモン障害、喫煙、後天性免疫不全症候群(AIDS)などが疾患を悪化させることがある。また、歯周疾患の他の原因として、歯垢及び歯石が挙げられる。本発明における歯周疾患の原因菌には、歯周疾患を引き起こす原因菌であればその種類に関係なく全て含まれ、具体的にはアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、タンネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)、トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)及びフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)からなる群から選択される少なくとも1種の菌であり、より具体的にはポルフィロモナス・ジンジバリスである。
【0059】
前記ポルフィロモナス・ジンジバリスは、バクテロイデス(Bacteroide)の類縁菌の一種でグラム陰性菌であり、嫌気性菌である。前記ポルフィロモナス・ジンジバリスは、歯周疾患が発生した口腔内に見られ、その他胃腸の上部、呼吸器及び結腸にも見られる。慢性歯周疾患の患者においては、前記菌のコラゲナーゼ酵素によりコラーゲンが分解される。前記菌は、歯肉線維芽細胞に侵入し、高濃度の抗生剤下でも生存することができる。また、前記菌は、歯肉上皮細胞に侵入して長時間生存することができる。
【0060】
本発明の一実施例において、ポルフィロモナス・ジンジバリスを塗抹した培地に本発明の前記天然化合物を含むディスクを接種し、その後生育阻止円の大きさを測定した結果、前記化合物を含む実験群の生育阻止円の直径が10.0mm以上であり、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対して非常に優れた抗菌活性を示したので、前記化合物を含む組成物は歯周疾患の予防又は改善用途に有用であることが確認された(表2)。
【0061】
また、本発明の一実施例において、歯肉炎症を有する実験対象者を選択して臨床実験を行った結果、前記化合物を含む実験群歯磨き粉を用いた実験群の歯肉炎症抑制効果が優れ、6カ月経過しても正常出血状態を維持し、歯肉炎症抑制効果を持続したので、前記天然化合物を含む組成物は歯肉炎を含む歯周疾患の予防又は改善用途に有用であることが確認された(表4)。
【0062】
本発明における「歯痛」とは、甘い食べ物、非常に冷たい食べ物、非常に熱い食べ物などを食べたときに歯に痛みを感じることを意味するが、一般には、歯自体の痛みだけでなく、歯を顎の骨に固定している歯周組織の痛みも含まれる。通常は、噛むときに痛みが生じ、歯茎が腫れて不快な匂いのする分泌物が出る。歯痛は、原因疾患によって多少異なる痛みが見られる。具体的には、う蝕の場合は、初期には痛みがないが、次第に進行して歯の中の神経まで達すると痛みが現れ、埋伏歯がある場合は、歯の周辺組織の炎症により痛みが誘発され、歯が潰れたり、ひびが入った場合は、冷たい食べ物に触れたり、強く噛んだときに歯が広がって神経に刺激を与えて痛みが生じる。歯髄炎の場合は、初期には冷たい食べ物が触れたときに痛みを感じ、進行すると熱い食べ物に触れたときに痛みを感じ、さらに炎症が進行して歯髄組織が壊死すると冷たい食べ物や熱い食べ物に対する反応がなくなり、歯根端(歯の根の先)の炎症による痛みが生じる。
【0063】
本発明の一実施例において、痛み及び炎症マーカーとして知られるPGE2の抑制効果を確認した結果、本発明の前記天然化合物を含む実験群で濃度依存的にPGE2を抑制する効果を発揮することが確認された(表5)。
【0064】
本発明における「知覚過敏」とは、知覚過敏象牙質(hypersensitive dentine)を意味し、知覚過敏症状とは、象牙質知覚過敏症(dentine hyperesthesia)を意味する。知覚過敏症状は、露出した歯の象牙質部分が冷たい空気や刺激的な食べ物などに触れたときに敏感に感じられる歯のしみであり、歯周疾患を有する成人の60~98%に症状が現れる。知覚過敏症状は、誤った歯磨き習慣、過度な咬合力、酸の溶解による歯茎への歯の食い込み、口腔衛生状態の不良、歯周治療、修復治療、酸性化による歯の溶解により現れる。知覚過敏症状の根本的な原因として、歯の象牙質に存在する多くの細管が外部に露出することが挙げられ、露出により全ての刺激をそのまま歯髄内の神経に伝達するので、同じ刺激に対しても普段より敏感に反応して痛みが誘発される。知覚過敏症状は、軽い症状から激しく持続的な痛みまで様々であるが、歯の特性上、再生されないので、鎮痛剤や消炎剤などの服用は歯のしみの根本的な解決策にはならない。知覚過敏症状は、歯全体に全般的に現れることもあり、上顎や下顎、右側や左側など、特定部位に限定されて現れることもある。多く発症する部位は、原因によって異なるが、主に犬歯、小臼歯であり、最もひどく痛みが現れる部位は、90%以上が歯茎と歯の境界部分である歯頚部である。
【0065】
本発明の一実施例において、知覚過敏象牙質を有する実験対象者を選択して臨床実験を行った結果、本発明の前記化合物を含む実験群歯磨き粉を用いた実験群の知覚過敏症状抑制効果が優れ、前記天然化合物を含む組成物は知覚過敏の予防又は改善用途に有用であることが確認された(表7)。
【0066】
本発明における「口臭」とは、口腔及び隣接器官に由来する匂いを意味し、口臭の85~90%が口腔に由来し、特に舌の後側に由来する。口臭の主な成分は揮発性硫黄化合物であるが、揮発性硫黄化合物の総量の90%がシステインから生成される硫化水素(hydrogen sulfide)と、メチオニンから生成されるメチルメルカプタン(methyl mercaptan)及びジメチルスルフィド(dimethyl sulfide)である。これらの成分は、主に嫌気性細菌が分泌するタンパク質酵素により生成され、舌の後側が最も重要な生息地となる。この部位は、唾液による洗浄作用が行われにくく、多くの小さな陥没があるので、細菌が生息し続ける場所となる。嫌気性細菌による揮発性硫黄化合物の生成が口臭の原因として最も重要であるが、その他、う蝕、歯周炎、口腔乾燥症などの口腔疾患によっても発生する。口臭の発生には各種嫌気性細菌が関与しており、口臭発生の原因菌としては、例えば様々な種類の多量の酵素を分泌するポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0067】
本発明の一実施例において、う蝕のない実験対象者を対象に臨床実験を行った結果、本発明の前記天然化合物を含む実験群歯磨き粉を用いた実験群の口臭除去効果が優れ、前記化合物を含む組成物は口臭の予防又は改善用途に有用であることが確認された(表8)。
【0068】
本発明の医薬部外品組成物は、口腔用医薬部外品を含んでもよい。本発明の医薬部外品組成物に含まれる成分は、前記有効成分以外に、口腔用医薬部外品組成物に通常用いられる成分を有効成分として含んでもよく、例えば研磨剤、湿潤剤、結合剤、起泡剤、甘味剤、防腐剤、薬効成分、香味剤、色素、溶剤、増白剤、可溶化剤又はpH調整剤を含んでもよい。
【0069】
本発明の口腔用医薬部外品組成物は、当該技術分野で通常製造されるいかなる剤形に製造してもよく、例えば歯磨き粉、口腔洗浄剤、口腔清浄剤、ガム、キャンディー類、口腔スプレー、口腔用軟膏剤、口腔用ワニス、マウスウォッシュ、歯茎マッサージクリームなどの剤形を有してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0070】
一例として、本発明の口腔用医薬部外品組成物が歯磨き粉の剤形である場合、湿潤剤、研磨剤、結合剤、起泡剤、香味剤、甘味剤、着色剤、保存剤、薬効成分、溶剤、pH調整剤などを含んでもよい。
【0071】
前記湿潤剤は、歯磨剤の成分中の粉末がペースト状になるようにし、歯磨剤が空気中で固まることを防止するためのものであり、グリセリン、ソルビット液、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどを単独で又は2種以上を混合して組成物の総重量の1~60重量%、具体的には10~50重量%になるように用いる。
【0072】
前記起泡剤は、歯磨剤を口腔内に拡散させて清掃効果を向上させ、界面活性剤として作用して口腔汚染を洗浄するものであり、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤を単独で又は2種以上を混合して組成物の総重量の0.5~10重量%、具体的には0.5~5重量%になるように用いる。
【0073】
前記結合剤は、歯磨剤中の粉末と液体成分間の分離を防止するものであり、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガムなどを単独で又は2種以上を混合して組成物の総重量の0.1~5重量%、具体的には0.3~2重量%になるように用いる。
【0074】
前記研磨剤は、歯の表面を傷つけることなく歯の表面の付着物を除去し、歯本来の光沢が出るようにするものであり、炭酸カルシウム(CaCO)、第二リン酸カルシウム(CaHPO,CaHPO・2HO)、無水ケイ酸(SiO・2HO)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、ピロリン酸カリウム、炭酸マグネシウムなどを単独で又は2種以上を混合して組成物の総重量の1~60重量%、具体的には10~50重量%になるように用いる。
【0075】
前記香味剤は、歯磨き粉に爽快感と香りを加え、使用感を向上させるためのものであり、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、メントールなどを単独で又は2種以上を混合して組成物の総重量の1~60重量%、具体的には0.01~5重量%になるように用いる。
【0076】
前記甘味剤は、歯磨剤の原料による不快な味を除去し、清涼感をよくするためのものであり、サッカリン酸、アスパルテーム、キシリトール、グリチルリチン酸などを単独で又は2種以上を混合して組成物の総重量の1~60重量%、具体的には0.01~5重量%になるように用いる。
【0077】
薬効成分は、う蝕予防、歯周疾患予防、歯痛予防、知覚過敏予防、口臭除去などの効果のためのものであり、フッ化物、塩化亜鉛、クロルヘキシジン、アミノカプロン酸、トラネキサム酸、塩化セチルピリジニウム、塩化ピリドキシン、トリクロサン、酢酸トコフェロール、モノフルオロリン酸ナトリウムなどを単独で又は2種以上を混合して用いる。本発明においては、前記化合物を追加の薬効成分として用いる。
【0078】
本発明の口腔用医薬部外品組成物は、単独で又は組み合わせて用いることもでき、本発明以外の他の口腔用医薬部外品組成物と組み合わせて用いることもできる。
【0079】
本発明の他の態様は、前記天然化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む薬学的組成物を提供する。また、具体的には、本発明は、前記天然化合物を有効成分として含む、う蝕、歯周疾患(歯周炎又は歯肉炎)、歯痛、知覚過敏及び口臭からなる群から選択される少なくとも1つの口腔疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。前記天然化合物、口腔疾患、う蝕、歯周疾患、歯痛、知覚過敏及び口臭については前述した通りである。
【0080】
本発明の薬学的組成物は、口腔疾患を予防、治療するための通常の方法により、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、エアゾール剤、滅菌注射溶液などの形態に剤形化することができる。
【0081】
経口用固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、これらの固形製剤は、少なくとも1つの賦形剤、例えばデンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混合して調製されてもよい。また、通常の賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤も用いられる。経口用液体製剤には、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが含まれ、通常用いられる通常の希釈剤である水、流動パラフィン以外にも種々の賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが用いられる。
【0082】
非経口用製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物性油、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどが用いられる。
【0083】
また、本発明の薬学的組成物は、担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含んでもよい。担体、賦形剤又は希釈剤としては、ラクトース、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素などの鉱油などが用いられる。
【0084】
本発明による薬学的組成物の具体的な投与量は、製剤化方法、患者の状態、体重、性別、年齢、疾患の程度、薬物の形態、投与経路及び期間、排泄速度、反応感度などの要因に応じて当業者であれば様々に選択することができ、投与量及び回数は、いかなる面においても本発明を限定するものではない。
【0085】
本発明の薬学的組成物は、ラット、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物に様々な経路で投与することができる。投与におけるあらゆる方法が可能であるが、例えば経口、静脈、筋肉又は皮下注射により投与することができる。
【0086】
本発明のさらに他の態様は、前記天然化合物又はその食品学的に許容される塩を有効成分として含む食品組成物を提供する。また、具体的には、本発明は、前記化合物を有効成分として含む、う蝕、歯周疾患(歯周炎又は歯肉炎)、歯痛、知覚過敏及び口臭からなる群から選択される少なくとも1つの口腔疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。前記天然化合物、口腔疾患、う蝕、歯周疾患、歯痛、知覚過敏及び口臭については前述した通りである。前記食品組成物は、機能性食品の形態で用いられてもよいが、これに限定されるものではない。
【0087】
本発明の食品組成物に含まれる前記天然化合物又はその食品学的に許容される塩は、前記化合物を含む動植物、その抽出物、その分画物又はその加工物の形態で含まれてもよい。また、前記組成物は、有効成分以外に、食品学的に許容される食品補助添加剤を含んでもよい。
【0088】
本発明における「食品補助添加剤」とは、食品に補助的に添加する構成要素を意味し、各剤形の機能性食品を製造する際に添加されるものであり、当業者が適宜選択して用いることができる。食品補助添加剤の例としては、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成風味剤や天然風味剤などの風味剤、着色剤及び充填剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド、増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などが挙げられるが、前記例に本発明の食品補助添加剤の種類が限定されるものではない。
【0089】
本発明の食品組成物には機能性食品が含まれてもよい。本発明における「機能性食品」とは、人体に有用な機能性を有する原料や成分を用いて、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、液剤、丸剤などの形態に製造及び加工した食品を意味する。ここで、「機能性」とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節するか、生理学的作用などの保健用途に有用な効果を与えることを意味する。本発明の機能性食品は、当該技術分野で通常用いられる方法により製造することができ、その製造時には当該技術分野で通常添加する原料及び成分を添加して製造することができる。また、前記機能性食品の剤形も、機能性食品として認められる剤形であれば限定されるものではない。本発明の食品組成物は、様々な形態の剤形に製造することができ、一般薬品とは異なり、食品を原料とするので、薬品の長期服用時に発生し得る副作用などがないという利点があり、携帯性に優れるので、本発明の機能性食品は、口腔疾患を予防又は改善する補助剤として摂取することができる。
【0090】
本発明の機能性食品が用いられる形態には制限がなく、通常の意味の食品が全て含まれ、健康機能食品などの当該技術分野で公知の用語と混用されてもよい。また、本発明の機能性食品は、当業者の選択により食品に含まれ得る好適な他の補助成分や公知の添加剤を混合して製造することができる。添加できる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類をはじめとする乳製品、各種スープ、清涼飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合剤などが挙げられ、本発明による前記化合物を主成分として作製した汁、茶、ゼリー、ジュースなどに添加することにより製造することができる。また、動物用の飼料として用いられる食品も含まれる。
【実施例0091】
以下、実施例及び実験例を挙げて本発明の構成及び効果をより詳細に説明する。これらの実施例及び実験例はあくまで本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらの実施例及び実験例に限定されるものではない。
【0092】
実験例1:う蝕及び歯周炎の原因菌に対する抗菌効果
化学式1~15の化合物のう蝕及び歯周炎に対する予防又は治療効果を確認するために、抗菌活性実験を行った。口腔病原菌生育抑制効果を確認するために、う蝕の代表的な誘発細菌であるストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)と、歯周疾患の代表的な誘発細菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)を用いて、ペーパーディスク検査法により抗菌力テストを行った。
【0093】
前記各口腔病原菌の活性を表1の最適培養条件で増加させ、その後各菌の最適培地で約4~6時間培養して培養液の濁度がMacfarland turbidity No.0.5(1.5×10)になるようにし、前記各口腔病原菌0.1mlを平板培地に均等に塗抹した。その後、滅菌したペーパーディスク(Whatman no.5 paper, 8mm diameter)に化学式1~15の化合物をそれぞれ10mg/discの濃度で接種し、1時間吸収乾燥させた。次に、前記各口腔病原菌の最適温度で24~48時間培養し、その後生育阻止円の大きさ(直径mm)を測定した。その結果を表2に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
表2から分かるように、無処理群と比較すると、化学式1~15の化合物で処理した群は、前記2種の口腔病原菌に対する生育阻止円の直径が9.5mm以上であり、ストレプトコッカス・ミュータンス及びポルフィロモナス・ジンジバリスに対する非常に優れた抗菌活性を示した。よって、化学式1~15の化合物はう蝕又は歯周疾患の予防又は治療用途に有用であることが分かった。
【0097】
実験例2:歯肉炎発症抑制効果
化学式1~15の化合物の歯肉炎に対する予防又は治療効果を確認するために、実験対象群を選択して臨床実験を行った。
【0098】
まず、歯磨き粉を製造する際に一般に用いられるカルボキシメチルセルロースナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、コロイド状二酸化ケイ素、シリカ類、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ドジシン、甘味剤、芳香剤、着色剤などを用いて対照群歯磨き粉を作製し、前記対照群歯磨き粉に化学式1~15の化合物のいずれかの化合物を0.01重量%含有させて実験群歯磨き粉を作製した。
【0099】
実験対象者を選択するために、歯並びが良く、欠損歯のない歯肉炎症患者を対象に、年令別に30才から50才まで10才毎に男女各30人に精密な口腔検診を行い、次いで120人の実験対象群を選択してそれを60人ずつに分け、歯肉炎症治療効果に対する臨床実験を次のように行った。
【0100】
具体的には、実験対象群を対照群と実験群に分け、対照群には前記対照群歯磨き粉を食後2時間経過した時点に1日3回用いるように教育し、実験群には前記実験群歯磨き粉を前記対照群と同一時間に1日3回用いるように教育した。その後、歯口清掃を行って初期歯肉炎指数を点数化し、対照群には前記対照群歯磨き粉を、実験群には前記実験群歯磨き粉を使用させ、1週間、1カ月、3カ月及び6カ月経過後に口腔検診を行って歯肉炎指数を検査した。歯肉炎指数の測定方法は、歯周プローブ(periodontal probe)を歯肉溝内に挿入して力を加えない状態で各歯の周囲に沿って探針し、30秒経過後に出血した状態を測定し、表3に示す基準で点数化した。その結果を表4に示す。
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
表4から分かるように、対照群と比較すると、化学式1~15の化合物のいずれかの化合物を含む歯磨き粉を用いた実験群は、6カ月経過後も正常出血状態を維持しており、歯肉炎症抑制効果が持続していた。よって、化学式1~15の化合物は歯肉炎の予防又は治療用途に有用であることが分かった。
【0104】
実験例3:痛み及び炎症マーカーであるPGE2の抑制効果
化学式1~15の化合物の歯痛に対する予防又は治療効果を確認するために、痛み及び炎症マーカーとして知られるPGE2の抑制効果を確認した。
【0105】
まず、10%FBSを含むDMEM培地にマクロファージを1.5×10cells/mlの濃度で接種し、37℃、5%COの条件にて、24 well plateで24時間培養した。次に、炎症誘導刺激源であるLPS 1μg/mlと各濃度の化学式1~15の化合物で処理して24時間追加培養し、その後PGE2 ELISA assay kit(Thermo SCIENTIFIC)により、上清を用いて化学式1~15の化合物の各濃度におけるPGE2抑制能を分析した(表5)。
【0106】
【表5】
【0107】
表5から分かるように、LPSのみで処理した群と比較すると、化学式1~15の化合物は、全て濃度依存的にPGE2抑制効果を発揮することが確認され、歯痛の予防及び治療効果に優れることが確認された。
【0108】
実験例4:知覚過敏抑制効果
化学式1~15の化合物の知覚過敏に対する予防又は治療効果を確認するために、実験対象者を選択して臨床実験を行った。臨床実験において用いた対照群歯磨き粉及び実験群歯磨き粉は、実験例2の歯磨き粉と同様にそれぞれ作製した。
【0109】
実験対象者は、知覚過敏象牙質を有する人であって、この実験への参加に同意した志願者40人であった。全実験対象歯は80本であった。また、実験対象者のうち男性は20人、女性は20人であり、年齢は20才から50才であった。実験対象者に歯磨き粉の内容物が分からないようにし、全実験期間は2週間とした。
【0110】
実験は、温度刺激を加えて実験対象者の反応を測定する方法で行った。実験を行う前に、予め各実験対象者の知覚過敏象牙質の過敏部位をチェックし、歯がしみる部位に約5℃の冷水をスポイトで滴下して表6に示す基準で評点しておき、その後対照群には前記対照群歯磨き粉を、実験群には前記実験群歯磨き粉を2週間にわたって1日3回使用させ、2週間経過後に再び約5℃の冷水をスポイトで滴下して評点した。統計処理は、実験前と2週間後の刺激点数を対応標本T検定(paired Student-t test)で検定した。温度刺激に対する2週間後の反応点数を表7に示す。
【0111】
【表6】
【0112】
【表7】
【0113】
表7から分かるように、対照群と比較すると、化学式1~15の各化合物を含む歯磨き粉を用いた実験群は、2週間経過後に知覚過敏現象が抑制された。よって、化学式1~15の化合物は知覚過敏の予防又は治療用途に有用であることが分かった。
【0114】
実験例5:口臭除去効果
化学式1~15の化合物の口臭に対する予防又は治療効果を確認するために、実験対象者を選択して臨床実験を行った。臨床実験において用いた対照群歯磨き粉及び実験群歯磨き粉は、実験例2の歯磨き粉と同様にそれぞれ作製した。
【0115】
実験対象者としてう蝕のない男女50人を選定し、前記対照群歯磨き粉及び実験群歯磨き粉を用いて交差試験(Cross-over test)を行った。市販のニンニク粉を水に分散させて24時間放置し、その後希釈してハリメーター(Halimeter)での測定値が700ppb以上になるようにし、その希釈液を口臭誘発源として用いた。実験対象者にニンニク粉希釈液15mlで30秒間うがいをさせ、1分後にハリメーターで口臭の程度を測定し、その後対照群には前記対照群歯磨き粉を、実験群には前記実験群歯磨き粉をそれぞれ使用させて30秒~1分間歯磨きをさせた。歯磨き後1分、5分、30分経過時にハリメーターで口臭の程度を測定し、口臭抑制が持続されるかを測定した。その結果を表8に示す。
【0116】
【表8】
【0117】
表8から分かるように、対照群と比較すると、化学式1~15の各化合物を含む歯磨き粉を用いた実験群は、歯磨き後1分経過時に約95%以上口臭が除去され、歯磨き後30分経過時にも口臭除去率が80%以上であり、はるかに優れた口臭除去効果を示した。よって、化学式1~15の化合物は口臭予防又は治療用途に有用であることが分かった。
【外国語明細書】