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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162043
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】火災受信機
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20221014BHJP
   H04M 9/00 20060101ALI20221014BHJP
   H04M 11/04 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
G08B17/00 L
H04M9/00 F
H04M11/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132872
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2018160429の分割
【原出願日】2018-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】平田 篤
(72)【発明者】
【氏名】田之畑 直希
(57)【要約】
【課題】非常電話盤の機能を兼ね備え、コストアップおよび設置スペースの増加を抑制することのできる火災受信機を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る火災受信機は、保守電話と接続可能な構成を備えた火災受信機であって、外部機器に接続された非常電話子機との間で通話を行うための非常電話親機をさらに備えるものであり、非常電話が設置された非常電話盤を設置する必要をなくすことができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守電話と接続可能な構成を備えた火災受信機であって、
外部機器に接続された非常電話子機との間で通話を行うための非常電話親機
をさらに備える火災受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常電話による通話機能を備える火災受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災の要因となる煙の発生、温度上昇、ガス漏れ等を監視する火災報知設備に用いられる火災受信機は、防災センター、管理室などに設置されている。火災受信機は、火災監視区域ごとに設置されている1以上の端末機器から信号を受信することで、火災発生の有無を判断している。
【0003】
また、従来は、非常電話が設置された非常電話盤も、火災受信機とともに、防災センター、管理室などに設置されている。そして、非常電話盤に設けられた非常電話は、例えば消火栓BOXに設けられた非常電話子機との間で通話が行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-171832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1に係る従来技術は、防災センター、管理室などにおいて、非常電話が設置された非常電話盤と、火災受信機とを、別々に設置する必要があった。すなわち、従来技術では、非常電話による通話機能を実現するためには、非常電話盤と火災受信機とを別々に用意する必要があった。このため、その分コストアップするとともに、設置スペースもそれぞれの分を用意する必要があった。
【0006】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、非常電話盤の機能を兼ね備え、コストアップおよび設置スペースの増加を抑制することのできる火災受信機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る火災受信機は、保守電話と接続可能な構成を備えた火災受信機であって、外部機器に接続された非常電話子機との間で通話を行うための非常電話親機をさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、火災受信機が非常電話親機を備え、非常電話子機と通話可能な構成を備えている。この結果、非常電話盤の機能を兼ね備え、コストアップおよび設置スペースの増加を抑制することのできる火災受信機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る火災報知設備の全体構成図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る火災受信機の機能ブロック図である。
図3】本発明の実施の形態1において、3つのイベントが重複して検出された場合を表示した画面例を示す図である。
図4】非常電話盤と、従来の火災受信機とを備え、非常電話による通話を行う従来の火災報知設備の全体構成図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る火災受信機に非常電話による通話機能を付加した構成を示す第1の説明図である。
図6】本発明の実施の形態1に係る火災受信機に非常電話による通話機能を付加した構成を示す第2の説明図である。
図7】本発明の実施の形態1に係る、非常電話を用いた通話機能を備えた火災受信機の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る火災受信機の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0011】
実施の形態1.
まず始めに、非常電話による通話機能以外の火災受信機の機能について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る火災報知設備の全体構成図である。図1に示す火災報知設備は、火災受信機10と、4台の端末機器20(1)~20(4)と、中継器30とを備えて構成されている。ここで、2台の端末機器20(1)、20(2)、および中継器30は、火災受信機10と直接接続されている。また、2台の端末機器20(3)、20(4)は、中継器30に直接接続されており、この中継器30を介して火災受信機10と接続されている。なお、端末機器20、中継器30の個数は、この図1の例に限定されるものではない。
【0012】
図1に示した火災報知設備は、いわゆるR型火災報知設備である。従って、4台の端末機器20(1)~20(4)は、測定結果、感知結果等をアナログ信号として出力し、火災受信機10側で、これらのアナログ信号の受信結果に基づいて、火災の有無を判定している。
【0013】
また、端末機器20の代表例としては、以下のような光電アナログ感知器および熱アナログ感知器が挙げられる。
・光電アナログ感知器
火災監視区域において、投光部から照射された光が、煙の影響を受けて減光され、受光部で受光されることで、煙の発生をアナログ値として検出できる煙感知器、あるいは、投光部から照射された光が煙の粒子によって散乱した散乱光を受光部が受光することで、煙の発生をアナログ値として検出できる煙感知器に相当する。
・熱アナログ感知器
火災監視区域において、熱をアナログ値として検出できる熱感知器に相当する。
【0014】
また、火災監視区域における周辺状況を計測できる端末機器として、気温、気圧、湿度、COガス等を計測する計測器を用いることもできる。
【0015】
さらに、以下のような各種センサを、端末機器として使用することも可能である。
・圧力センサ
消火システムの配管経路中に圧力センサを接続し、配管内圧力を監視することで、スプリンクラー放出などの状態を知ることができる。
【0016】
また、4-20mAの電流計測を行う中継器を介することで、業界標準となっている4-20mAの電流計測に対応している市販のセンサ類を、端末機器20として自由に接続することが可能となる。このセンサ類の具体例としては、ガスセンサ、炎センサが挙げられる。
【0017】
また、ボタンが押されることで、火災が発生したことを通報する発信機を、端末機器20として使用することも可能である。すなわち、本実施の形態1で用いられる端末機器20は、火災受信機10が火災発生の有無を判断するために用いられる火災関連情報を送信情報として送信するものである。そして、送信情報は、上述したような各種の感知結果情報、計測結果情報、操作結果情報等を含んで構成されることとなる。
【0018】
なお、端末機器20による検出結果は、リアルタイムに得られる現在値ばかりでなく、一定期間にわたる時系列データをトレンド履歴として、火災受信機に表示させることが考えられる。そして、このようなトレンドデータを表示できる機能を持たせることで、誤発報の原因をより早急に突き止めることが可能になる。
【0019】
たとえば、圧力センサの検出結果が、時系列データのトレンド履歴として残っていれば、一気に圧力が抜けたのか、徐々に圧力が抜けたのかなどの現象を、事後に検証することが可能となる。
【0020】
端末機器20としてガスセンサを用いる場合には、検出結果の時系列データとして得られたガス濃度のトレンド履歴を、事後において検証するために活用することができる。同様に、端末機器20として炎センサを用いる場合には、検出結果の時系列データとして得られた炎の大きさのトレンド履歴を、事後において検証するために活用することができる。
【0021】
さらに、端末機器20として差動式熱感知器を用いて気圧を検出する場合には、急激な気圧の低下により、誤発報となってしまう場合が考えられる。このような場合にも、検出結果の時系列データとして得られた気圧のトレンド履歴を参照することで、差動式熱感知器の非火災報の原因究明を行うことができる。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態1に係る火災受信機10の機能ブロック図である。なお、図1において示した複数の端末機器20(1)~20(4)は、図2においては、単に複数の端末機器20として図示されている。そして、複数の端末機器20としては、上述したような種々の感知器、計測器が考えられ、所望の火災監視区域に設置することができる。
【0023】
図2に示した火災受信機10は、受信部11、記憶制御部12、火災判定部13、表示制御部14、操作制御部15、記憶部16、報知部17、表示部18、および操作部19の各機構を備えて構成されている。なお、受信部11、記憶制御部12、火災判定部13、表示制御部14、および操作制御部15の機能は、1つの制御部によって、まとめて実施することも可能である。
【0024】
受信部11は、各端末機器20から送信情報として出力されたアナログ信号をあらかじめ決められたサンプリング間隔で取得し、さらに、アナログ/デジタル変換を行ってデジタル値を生成する。なお、サンプリング間隔は、すべての端末機器20で共通の値である必要はなく、計測すべき物理量、火災監視区域などに応じて、個別に適切な値を設定することができる。
【0025】
記憶制御部12は、受信部11で生成された、それぞれの端末機器20による検出結果のデジタル値を、順次、記憶部16に記憶させる。この際、記憶制御部12は、あらかじめ決められた一定時間分の時系列データが、記憶部16内に残るように、記憶データの更新を行っていく。たとえば、10個のデータが一定時間内に得られる時系列データについては、記憶制御部12は、最新の10個のデータが記憶部16内に記憶されるように、時系列データの更新処理を行うこととなる。従って、順次更新処理が行われることで、記憶部16内には、直近の所定期間における最新の計測値の遷移状態が、記憶されていくこととなる。
【0026】
火災判定部13は、記憶部16内に記憶されている最新の時系列データまたは最新のリアルタイムデータに基づいて、火災が発生したか否かを判定する。さらに、火災判定部13は、火災が発生したと判断した場合には、報知部17を介して、火災発生状況を報知することができる。なお、この火災判定部13による判定処理は、従来技術と同じであり、詳細な説明は、省略する。
【0027】
表示制御部14は、記憶部16に記憶されている、各端末機器の検出履歴である時系列データに基づいて、端末機器の検出結果を、表示部18の画面上に表示させる表示制御を行う。
【0028】
なお、火災判定部13により火災が発生したと判断された場合には、記憶制御部12は、更新処理を継続する一方で、火災が発生したと判断した時刻直前の所定時間分のデータを、別途保存させておくことができる。これにより、記憶部16内には、火災が発生したと判断した時点を最新データとするトレンド履歴が、通常の更新処理されたデータとは別に保持されることとなる。この結果、表示制御部14による表示制御を行うことで、火災が発生したと判断した時点を最新データとする時系列データを容易に表示させることができ、誤発報の原因を早急に突き止めることが可能となる。
【0029】
また、表示制御部14は、火災判定部13により3つ以上のイベントが重複して発生したと判定された場合には、イベントの属性に応じて個別設定された背景色を用いて、3つ以上のイベントを1画面内に表示させることができる。この機能の詳細については、図3を用いて後述する。
【0030】
操作制御部15は、操作部19を介してオペレータにより入力される操作入力を読み取り、操作入力に応じた処理を実行する。ここで、図1に示したような火災報知設備において、オペレータは、発生したイベントに応じて適切な操作を実行し、火災情報の報知、消火作業の指示等を迅速に行うことが要求される。
【0031】
本実施の形態1に係る火災受信機10は、ある時間帯において、複数の端末機器から火災が発生したと判定される情報(以下、このような情報をイベントと称す)を重複して受信した場合に、オペレータに対して重複して発生した複数のイベントを提供し、かつ、オペレータが複数のイベントのいずれも確実に認識でき、見落とすおそれを抑制できる表示機能を備えている。
【0032】
より具体的には、本実施の形態1に係る火災受信機は、ある時間帯において重複して発生したイベントが存在する場合に、オペレータが重複発生したイベントのすべてを認識でき、いずれかを見落とすおそれを抑制できる表示機能を有している。そこで、具体的な表示機能について、画面例を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
<画面例:3つのイベントが重複して検出された場合の画面表示>
図3は、本発明の実施の形態1において、3つのイベントが重複して検出された場合を表示した画面例を示す図である。
【0034】
図3における画面表示エリアは、上段の情報表示エリア110と、下段の操作表示エリア120とに大別される。情報表示エリア110には、第1イベント111と、第2イベント112と、第3イベント113とが、ある時間帯で重複して発生した際の表示例が示されている。具体的には、この図3では、以下の3つのイベントが重複した場合を例示している。
【0035】
第1イベント111:火災判定部13が、1台の発信機から発報情報を受信し、火災発生情報の1つとして判定し、火災が発生した旨を表示したもの。
第2イベント112:火災判定部13が、1台の防火ダンパから防火ダンパが閉鎖した情報を受信し、かつ、1台の消火ポンプが起動した情報を受信し、火災発生情報の1つとして判定し、端末装置が作動した旨を表示したもの。
第3イベント113:火災判定部13が、1台のガス漏れ検知器からの検出情報を受信し、火災発生情報の1つとして判定し、ガス漏れ警報が発生した旨を表示したもの。
【0036】
また、操作表示エリア120は、左側の文字表示エリア120Aと、右側のイラスト表示エリア120Bを含んでいる。
【0037】
図3に示した画面例1において、表示制御部14は、重複発生した第1イベント111と、第2イベント112と、第3イベント113とを、1画面内で識別表示させている。特に、表示制御部14は、具体的な発生内容あるいは作動内容を、発生場所とともに、文字により表示部18に識別表示させている。この結果、複数のイベントが重複して発生した場合に、オペレータがいずれかのイベントを見落とすおそれを抑制することのできる火災受信機を実現できる。
【0038】
なお、表示制御部14は、重複して発生した複数のイベントを表示する際に、第1イベント111と、第2イベント112と、第3イベント113とを、文字色あるいは背景色を異ならせることで識別表示させることもできる。単に複数のイベントを同時に表示させるだけではなく、個々のイベントを色識別表示させることで、複数のイベントが重複して発生した場合にも、オペレータがいずれかのイベントを見落とすおそれをさらに抑制することができる。
【0039】
また、イベントの種類に応じて、文字色あるいは背景色をあらかじめ特定しておくことも可能である。例えば、第1イベントのように、火災が発生した旨を示すイベントは、背景色を赤色とし、第2イベントのように、端末装置が作動した旨を示すイベントは、背景色を青色とし、第3イベントのように、ガス漏れ警報が発生した旨を示すイベントは、背景色を黄色とする、といったように、各イベントの属性に応じて背景色パターンを特定しておくことが考えられる。これにより、複数のイベントが重複して発生した場合にも、オペレータがいずれかのイベントを見落とすおそれを抑制することができるとともに、オペレータは、背景色パターンに基づいて、イベントの属性を容易に識別することが可能となる。
【0040】
次に、非常電話盤300の機能を火災受信機10に組み込む手法について説明する。
図4は、非常電話盤300と、従来の火災受信機200とを備え、非常電話による通話を行う従来の火災報知設備の全体構成図である。図4に示すように、従来の火災報知設備では、外部機器に相当する例えば消火栓BOX400に設けられた非常電話子機400aとの通話を行うために、非常電話310aが設置された非常電話盤操作部310を有する非常電話盤300を、火災受信機200とは別に設置する必要があった。従って、非常電話盤300を設けることで、コストアップおよび設置スペースの増加を招いていた。
【0041】
そこで、本実施の形態1では、非常電話盤300による非常電話を用いた通話機能を、図1図2に示した火災受信機10に組み込む構成を実現しており、以下に詳細に説明する。
【0042】
図5は、本発明の実施の形態1に係る火災受信機10に、非常電話を用いた通話機能を付加した構成を示す第1の説明図である。図5に示すように、火災受信機10には、非常電話親機10aが新たに設置されている。さらに、火災受信機10と消火栓BOX400とは、火災受信機10側の非常電話親機10aと、消火栓BOX400側の非常電話子機400aとの間で音声通話を可能とするために、非常電話用中継器50を介して相互接続されている。
【0043】
図6は、本発明の実施の形態1に係る火災受信機10に、非常電話を用いた通話機能を付加した構成を示す第2の説明図である。非常電話子機400aから着信があった際の、火災受信機10側の動作について、この図6を用いて詳細に説明する。
【0044】
非常電話子機400aからの発信信号は、非常電話用中継器50を介して、火災受信機10内の通信部11aにより、受信される。なお、通信部11aについては、図7において後述する。そして、通信部11aは発信信号を受信した場合には、非常電話子機400aからの着信情報として、火災受信機10内の表示制御部14に通知する。その結果、表示制御部14は、火災受信機10の画面表示エリア内に、図6の左側に示すような表示を行う。
【0045】
具体的には、上段の情報表示エリア110には、非常電話子機400aから着信があったことを知らせる着信情報が表示され、下段の操作表示エリア120には、非常電話子機400aとの通話を行うための、非常電話親機10aの具体的な操作ガイダンスが表示される。
【0046】
従って、オペレータは、火災受信機10に装備された非常電話親機10aを用いて、非常電話用中継器50を介して、非常電話子機400aとの間で、容易に音声通話を行うことができる。このようにして、非常電話盤300の機能を兼ね備え、コストアップおよび設置スペースの増加を抑制することのできる火災受信機10を実現することができる。
【0047】
図7は、本発明の実施の形態1に係る、非常電話を用いた通話機能を備えた火災受信機10の機能ブロック図である。先の図2に示した機能ブロック図と比較すると、図7に示した火災受信機10は、受信部11の代わりに、通信部11aを備えている。ここで、通信部11aは、複数の端末機器20のそれぞれから火災関連情報を受信する受信機能と、非常電話親機10aと非常電話子機400aとの間での通話を実現する通信制御の機能とを兼ね備えている。
【0048】
火災受信機10には、施工時およびメンテナンス時に作業員が使用する保守電話も接続可能な構成となっている。保守電話は、発信機等、現場側に設けられた電話ジャックに保守電話用の受話器の電話プラグを差し込むと、火災受信機10が呼び出し音を出力する。ここで、オペレータが火災受信機10に設けられた電話ジャックに保守電話用の受話器の電話プラグを差し込むと現場側と通話が可能となる。従って、非常電話盤300の機能を火災受信機10に組み込む場合には、保守電話が着信した際の呼び出し音と、非常電話が着信した際の呼び出し音とを識別することが重要となる。
【0049】
さらに、火災受信機10には、非常電話子機400aからの着信以外に、端末機器20等からの火災発生情報が重複して届くことが考えられる。従って、火災受信機10に重複して受信された複数の情報を、いかに識別して報知するかも重要となる。そこで、以下に、情報が重複した際の報知処理について、具体例をもとにして詳細に説明する。
【0050】
<具体例1:非常電話と保守電話との着信識別について>
火災受信機10は、非常電話子機400aからの着信音と、保守電話からの着信音を異なる音として、報知部17から報知させることで、両者の着信識別を行うことができる。例えば、保守電話から着信があった場合には「プルルル」といった警報音を出力し、非常電話子機400aから着信があった場合には「ピロリロ」といった警報音を出力することが一例として挙げられる。
【0051】
<具体例2:3つ以上のイベントが同時発生した際に、優先順位を考慮して報知処理を行う場合について>
3つ以上のイベントが同時発生した場合には、あらかじめ決められている優先順位に従って、上位2つのイベントについては、警報音を用いた報知+音声を用いた報知を行い、他のイベントについては音声を用いた報知のみを行うことが考えられる。このような報知処理を行うことで、警報音を用いた報知が3つ以上重複してしまう状態を回避できるとともに、音声を用いた報知、および文字情報の表示は、すべてのイベントに対して実施することが可能となる。
【0052】
例えば、優先順位が高い順に、以下の3つのイベント1~イベント3が重複して発生した場合を考える。
イベント1:火災確定
警報音を用いた報知 「ピー」
音声を用いた報知 「火災が発生しました。現場を確認してください。」
イベント2:非常電話着信
警報音を用いた報知 「ピロリロ」
音声を用いた報知 「非常電話を着信しました。」
イベント3:ガス漏れ
警報音を用いた報知 「ピピピピ」
音声を用いた報知 「ガス漏れが発生しました。現場を確認してください。」
【0053】
これらの3つのイベント1~イベント3が重複発生した場合には、警報音を用いた報知に関しては、イベント1の「ピー」、およびイベント2の「ピロリロ」が実行され、イベント3の「ピピピピ」という警報音を用いた報知が省略される。
【0054】
一方、音声を用いた報知は、イベント1~イベント3のすべてが行われるとともに、情報表示エリア110に文字情報が表示されることとなる。なお、イベント1、イベント2の警報音を用いた報知が停止されることで、イベント3に関する「ピピピピ」という警報音を用いた報知を実行させることができる。この場合、「ピー」、「火災が発生しました。現場を確認してください。」、「ピロリロ」、「非常電話を着信しました。」、「ガス漏れが発生しました。現場を確認してください。」、の順に警報音と音声が繰り返される。
【0055】
<具体例3:端末装置の作動あるいは防火設備の作動等、重要度が下がるイベントについて>
具体例2で示したイベント1~イベント3に加えて、以下のようなイベント4~イベント6が重複して発生した場合を考える。
イベント4:防火戸作動
警報音を用いた報知 「ブー」
音声を用いた報知 「防火戸が作動しました。現場を確認してください。」
イベント5:防火シャッター作動
警報音を用いた報知 「ブー」
音声を用いた報知 「防火シャッターが作動しました。現場を確認してください。」
イベント6:端末装置の作動
警報音を用いた報知 「ブー」
音声を用いた報知 「端末装置が作動しました。現場を確認してください。」
【0056】
これらの3つのイベント4~イベント6は、イベント1~イベント3と比較すると、優先順位が低く、重要度が下がるイベントとしてあらかじめ決められているとする。この場合には、イベント4~イベント6に関しては、警報音を用いた報知および音声を用いた報知のいずれも実行しないようにすることができる。
【0057】
この場合も、「ピー」、「火災が発生しました。現場を確認してください。」、「ピロリロ」、「非常電話を着信しました。」、「ガス漏れが発生しました。現場を確認してください。」、の順に警報音と音声が繰り返されることになる。このとき、イベント4~イベント6は、イベント1~イベント3とともに情報表示エリア110に表示されるようにしてもよいし、オペレータが画面送り操作を行うことで表示されるようにしてもよい。
【0058】
また、イベント1~イベント3の警報音を用いた報知が停止されることで、イベント4~イベント6に関する「ブー」という警報音を用いた報知を実行させることができる。
【0059】
上述した具体例1~具体例3で示したような報知処理が行われることで、非常電話盤300の機能を兼ね備えた火災受信機10において、非常電話と保守電話の着信を識別するとともに、優先順位に応じて、重複して発生した火災関連情報および着信情報を、適切に識別して報知処理することが可能となる。
【0060】
なお、イベントごとにあらかじめ設定された警報音および音声の両方を用いた報知を行うイベントの数は、あらかじめ決められた優先順位による上位から所定数のイベントとして、使用環境等に応じて所望の数を設定することが可能である。
【0061】
以上のように、実施の形態1によれば、非常電話盤の機能を兼ね備え、コストアップおよび設置スペースの増加を抑制することのできる火災受信機を実現できる。さらに、優先順位に従った報知処理を行うことで、非常電話と保守電話の着信識別、および重複して発生した火災関連情報の適切な報知を実現できる。
【符号の説明】
【0062】
10 火災受信機、10a 非常電話親機、11a 通信部、12 記憶制御部、13 火災判定部、14 表示制御部、15 操作制御部、16 記憶部、17 報知部、18 表示部、19 操作部、20 端末機器、30 中継器、50 非常電話用中継器、400a 非常電話子機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7